電子体温計及び電子体温計の制御方法
【課題】通常体温を有する被検者の体温を計測した場合には一般的な平衡温度の予測により体温計測値を提示し、通常体温の範囲外の被検者に対しても迅速且つ正確な体温計測を行える電子体温計を提供する。
【解決手段】検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測部を有する電子体温計は、実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、予測部による予測処理を実行して予測値を表示部に表示する。上記予測部による予測処理で予測が成立しないと判断された場合には実測値の表示を表示部にて行う。
【解決手段】検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測部を有する電子体温計は、実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、予測部による予測処理を実行して予測値を表示部に表示する。上記予測部による予測処理で予測が成立しないと判断された場合には実測値の表示を表示部にて行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の体温を測定する電子体温計に関するものである。特に、温度測定範囲が広い電子体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より被検者の体温を測定し、得られた温度値から平衡温度を予測して予測値を表示する電子体温計が広く普及している(特許文献1)。この種の電子体温計では、検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測するため、迅速に被検者の体温の計測結果を提示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−024531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子体温計は、通常体温もしくは発熱時において平衡温度を迅速且つ正確に予測できるように予測アルゴリズムが調整されている。従って、その有効な測定温度範囲はおよそ35℃〜42℃となっており、実測値がこの測定温度範囲を下回ったり上回ったりした場合には計測エラーとして終了してしまう。そのため、例えば、低体温症や熱中症に陥った被検者の体温を一般的な平衡温度予測式の電子体温計を用いて測定しようとすると計測エラーとなってしまう。すなわち、低体温症や熱中症に陥った被検者の体温を測定するような用途にそのような電子体温計を用いることができなかった。なお、ここでいう低体温症とは、何らかの原因で体温が35℃以下に低下した病態で、33〜30℃(中度)、30〜25℃(重度)、25〜20℃(重篤:昏睡,仮死)、20℃以下(非常に重篤:ほぼ死亡状態)をいう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、通常体温を有する被検者の体温を計測した場合には一般的な平衡温度の予測により体温計測値を提示し、通常体温の範囲外の被検者に対しても迅速且つ正確な体温計測を行える電子体温計及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による電子体温計は以下の構成を備える。すなわち、
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測手段を有する電子体温計であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測手段による予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御手段と、
前記予測処理における予測が成立したか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記予測処理における予測が成立したと判断された場合には前記実測値を前記表示部に表示する第2表示制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通常体温の範囲外の被検者に対しても迅速且つ正確な体温計測を行える電子体温計を提供できる。また、通常体温を有する被検者の体温を計測した場合には一般的な平衡温度の予測により体温計測値を表示することができ、迅速且つ正確な体温計測を行える電子体温計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態による電子体温計の外観構成を示す図。
【図2】実施形態による電子体温計の機能構成を示す内部ブロック図。
【図3】電子体温計における体温計測処理を示すフローチャート。
【図4】電子体温計における体温計測処理を示すフローチャート。
【図5】電子体温計における体温計測処理を示すフローチャート。
【図6】実測値と体温表示の関係を説明する図。
【図7】通常範囲の体温を有する被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図8】低体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図9】低体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図10】低体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図11】高体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図12】高体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0010】
1.電子体温計の外観構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる電子体温計100の外観構成を示す図であり、図1(a)は平面図を、図1(b)は裏面の平面図をそれぞれ示している。101は本体ケースで、図2により後述する演算制御部220等の電子回路、電池(電源部250)等が収納される。図1(c)は、表示部における表示内容を示している。
【0011】
102は、ステンレス製の金属キャップで、内部には温度を計測するためのサーミスタ213(詳細は図2により後述)等が収納され、液密性を有している。103は本体ケース101のキャップで、本体ケース101にマグネットリードスイッチ260(図2),電子回路が載置された基板、ブザー、電池等を収納した後、103aに沿って超音波により液密に融着される。このため、電子体温計100が永久磁石を内蔵した収納ケース(不図示)から出されるとマグネットリードスイッチ260がONされる。そして、電子体温計100が収納ケースに収納されるまで、図2の電源部250(電池)から演算制御部220等の電子回路、温度計測部210、表示部230等に電源が供給され続け、電子体温計100は電源がON状態となる。なお、電源ON/OFFスイッチ(不図示)を設け、1回押圧すると電源部250がONとなり、再度押圧すると電源部250がOFFとなるようにしてもよい。又、キャップ103を取り外し可能にして、電源部250としての電池を交換できるようにしてもよい。
【0012】
104は表示窓であり、表示窓は透明性のある熱可塑性樹脂で形成され、本体ケース101の開口部104aと2色成形されて液密性を有している。この表示窓104を介して、内部の表示部230(LCD)が被検者の体温を表示する。図1(c)に示すように、表示部230では、数値表示部111により温度計測値が表示される。また、予測マーク112は、数値表示部111が表示している値が予測値である場合に点灯または点滅し、他の場合は消灯する。電池電圧低下マーク113は、電源部250による供給電圧が低下したことを示す。電池電圧低下マーク113が点滅すると電池残量が少ないことを示し、連続点灯時は電池残量が不足して電子体温計100を使用できないことを示す。ワイドレンジマーク114は、計測している温度が検定範囲外であるときまたは測定モードの切り替えを明示的に示すために点灯または点滅する。
【0013】
液密性を有するために、好ましくは、表示窓と本体ケース101は2色成形で形成されている。本体ケース101とキャップ103は、耐衝撃性,耐薬品性がある熱可塑性材料である、スチレン系樹脂(ハイインパクトスチロール,ABS樹脂)、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン,ポリエチレン)等で形成されている。また、抗菌性を持たせるために、リン酸ジルコニウム銀化合物をほぼ1〜2.5重量%含むようにして成形してもよい。なお、本体ケース101の裏面に設けられた101aは本体ケース101の長手方向の中心線に沿って設けられた突起部、101bは本体ケース101の長手方向の中心線に沿って本体ケース101の幅広部に設けられた半月上の平面部であり、突起部101aと平面部101bとの相互作用で、本体ケース101の転がりを防止している。
【0014】
2.電子体温計の機能構成
図2は本実施形態にかかる電子体温計100の機能構成を示す内部ブロック図である。
【0015】
電子体温計100は、温度に対応した信号を出力する温度計測部210と、コンピュータを含み、温度計測部210より出力された信号に基づいて各種処理を行い、被検者の体温を演算すると共に電子体温計100全体の動作を制御する演算制御部220と、演算された被検者の体温を表示する表示部230と、ブザー240と、電源部250とを備える。なお、ブザー240に加えて、或いはその代わりに、音声出力部105を設けてもよい。音声出力部105は、演算制御部220における処理に基づいて、音声記憶IC(不図示)に記憶された合成音声により測定された体温値を音声により出力する。上述のように、電源部250はマグネットリードスイッチ260を介して電子体温計100の各部に電力を供給する。
【0016】
温度計測部210は、サーミスタ(測定用抵抗素子)213、基準抵抗素子215、コンデンサ214、R−T変換回路211を含み、温度に対応した時間分のON信号(温度に対応して、ON時間が変わる信号)を出力する。なお、温度計測部210の構成は、このようなR−T変換回路を用いたものに限られるものではない。例えば、サーミスタ213やコンデンサ214を用いてCR発振回路を形成して、温度に対応した周波数信号を取得する構成でも良い。
【0017】
演算制御部220は、温度計測部210より出力される信号のON時間を計測するカウンタ222を備える。カウンタ222は、制御回路221内のクロック発生部228が生成したクロックをカウントし、得られたカウント値と当該クロックの周波数に基づいて上記ON時間を計測する。
【0018】
また、演算制御部220は演算処理部223を備える。演算処理部223は、ROM224に格納されたプログラムを実行することで、カウンタ222により計測された時間に基づいて温度データを算出し、算出された温度データを時系列でRAM226に記憶し、算出された温度データの時間変化に基づいて被検者の体温の予測演算を行うとともに、後述の低体温計測処理を行う。また、音声出力部105を有する構成の場合、EEPROM225には所定の音声データが格納されており、演算処理部223は、この音声データを用いて音声出力部105より音声データの出力を行う。また、演算制御部220は、演算処理部223における演算結果を表示する表示部230を制御するための表示制御部227を備える。更に、演算制御部220は、上記カウンタ222、表示制御部227、演算処理部223、温度計測部210を制御する制御回路221を備える。表示制御部227は、後述する予測値を表示部に表示する第1表示制御手段と実測値を前記表示部に表示する第2表示制御手段としての機能を備えている。
【0019】
3.電子体温計における体温計測処理の流れ
3.1 電子体温計における体温計測処理の全体の流れ
次に、以上説明したような構成を備える本実施形態の電子体温計100における体温計測処理の流れについて説明する。
【0020】
図3〜図5は、電子体温計100における体温計測処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3〜図5を用いて電子体温計100における体温計測処理の流れを説明する。なお、図3〜図5に示す処理は、例えば、各動作工程において判断、制御する演算処理部223によって実行される。
【0021】
マグネットリードスイッチ260がON状態になると、または電源ON/OFFスイッチ(不図示)の手動操作で、電子体温計100の電源部250がONされると、電子体温計100の初期化が行われ、検温素子であるサーミスタ213による温度計測が開始される。例えば、演算処理部223では、所定の時間間隔、例えば、0.5秒おきに温度データの演算が行われる。
【0022】
演算処理部223は、計測された温度値が表示開始温度(本実施形態では20℃とする)以上となるまでの間は、表示部230に、実測温度値とは異なる表示形態、例えば「88.8」を表示させる(ステップS301、S302)。計測された温度値が表示開始温度以上になると、演算処理部223はタイマT1をスタートさせる(ステップS303)。タイマT1は、表示部230への温度表示開始時からの時間を計測する。
【0023】
次に、演算処理部223は、計測された温度値が予測開始温度(本実施形態では30℃とする)以上になったか否かを判断する。予測開始温度に達していなければ予測開始温度未満の処理である“30℃未満時処理”を実行する(ステップS304、S400)。なお、“30℃未満時処理”については図4のフローチャートにより後述する。他方、計測された温度値が予測開始温度以上である場合は、演算処理部223は、体温予測処理を開始する(ステップS305)。体温予測処理は、検温素子(サーミスタ213)により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する処理である。なお、体温予測処理は周知であるため、詳細な説明は省略する。体温予測処理の開始に続いて、演算処理部223は、体温予測処理の開始からの時間を計時するためのタイマT2をスタートさせる(ステップS306)。なお、体温予測開始(S305)は既に体温予測を実行中であればスキップされる。同様に、タイマT2スタート(S306)は、既にタイマT2が起動されていればスキップされる。そして、演算処理部223は、表示部230でワイドレンジマーク114が点灯中または点滅中であればこれを消灯し、ステップS306で開始された体温予測処理による予測値表示を開始する(ステップS307、S308)。なお、予測値表示が行われている間は予測マーク112が点灯する。このワイドレンジマーク114は、“30℃未満時処理”である旨を文字及び/またはキャラクタで表示するものである。
【0024】
体温予測処理により、被検者の体温が通常の予測値範囲(本実施形態では35℃〜42℃とする)未満であると判定された場合(ステップS309)、体温予測の結果が通常の予測範囲になった場合(ステップS310)、体温予測処理が開始されてから所定秒(例えば30秒)が経過した場合(ステップS311)を除いて、処理はステップS304に戻る。こうして、演算処理部223は、体温予測処理が開始されてから所定秒(例えば30秒)が経過するまでに(タイマT2≧25秒)体温予測処理による予測が成立したか否かを判断する。なお、予測成立判断は、予測値が一定範囲に収束したかどうかで行われる。但し、
・予測値が予測範囲(本実施形態では35℃〜42℃)から外れる場合、
・温度上昇カーブのパターン分けにおいて低体温群を示す場合、
は予測不成立となる。予測が成立していると判断された場合、演算処理部223は、ブザー240を鳴動し(ステップS312)、その時点の温度値(予測値)の表示を維持する(ステップS313)。
【0025】
その後、予測開始から所定の経過時間、例えば4分30秒を超えると、表示部230における表示を実測値(温度計測部210により計測された温度値)の表示に切り替える(ステップS314、S315)。この実測値表示は、最高温度値を保持するピークホールド表示とする。更に、その後、予測開始からの経過時間が10分を超えると、演算処理部223は、10分検温が成立したことを通知するためにブザー240を鳴動する(ステップS316、S317)。
【0026】
以上のように、本実施形態の電子体温計100により通常の予測範囲の体温を有する被験者の体温を計測した場合は、一般的な電子体温計と同様の処理が進み、体温の計測が完了することになる。一方、本実施形態の電子体温計100は、通常の予測範囲(本実施形態では35℃〜42℃)外の体温を有する被験者について体温計測を実施した場合でも、その体温計測結果を極力正確に提示するために以下に説明する処理を行う。
【0027】
ステップS304で計測された温度値が30℃未満であった場合、処理は“30℃未満時処理”(ステップS400)に進む。図4は、“30℃未満時処理”を説明するフローチャートである。“30℃未満時処理”において、演算処理部223は、予測処理が起動されている場合は、当該予測処理を停止して待機状態にするとともにタイマT2をリセットする(ステップS401)。そして、演算処理部223は表示部230においてワイドレンジマーク114を点灯し、実測値表示を開始する(ステップS402、S403)。なお、ここでの実測値表示ではピークホールド(最高温度保持機能)を行わない。30℃未満で最高温度保持機能があると、低体温測定時に体温を高く見誤るリスクが有るからである。救急領域での検温は自己測定とは異なり、医療従事者によって行われるため、アーチファクトが入りやすく、例えば、検温開始前に電子体温計100の先端部に医療従事者が触れてしまったような場合には一時的な温度上昇が起きる。そのため、30℃未満ではピークホールドをせず、低体温測定時に体温を高く見誤るリスクを低減している。
【0028】
次に、演算処理部223は、実測値が30℃未満の場合における体温計測の終了判断を行う(ステップS404)。終了判断では、例えば、以下の(1)、(2)のいずれかが成立したことで終了と判定する。
(1)温度表示開始からの経過時間が2分30秒以上になった(タイマT1≧2分30秒)。
(2)温度計測の開始から実測値が所定値(本実施形態の例では4℃とする)を超えており、且つ、現在の実測値が示す温度上昇量が所定の閾値Th1未満である(例えば、0.02(℃/4秒)未満)。
【0029】
終了判定により、終了と判断されなかった場合は、処理はステップS304へ戻る。他方、終了判定により終了と判断された場合、演算処理部223は、ブザー240を鳴動し、表示部230の表示値を固定して処理を終える(ステップS405、S406,S407)。
【0030】
図3に戻り、体温予測処理により低体温群であると判断した場合(ステップS309でYES)、または、予測開始から30秒が経過したが予測が成立していない場合(ステップS310でNO且つステップS311でYES)、演算処理部223は“低体温/高体温処理”を実行する(ステップS500)。以下、図5のフローチャートにより、“低体温/高体温処理”を説明する。
【0031】
“低体温/高体温処理”において、演算処理部223は、体温予測処理が動作中であればこれを停止する(ステップS501)。そして、演算処理部223は、表示部230において実測値表示を開始する(S502)。ここでの実測値表示では、ピークホールドを行う。また、演算処理部223は、実測値が43℃を超えていればワイドレンジマーク114を点灯する(ステップS503、S504)。
【0032】
続いて、演算処理部223は、タイマT1の値、実測値に基づいて終了判断を行う(ステップS505)。この終了判断では、例えば以下の(1)〜(3)のいずれかが成立したことで終了と判断する。
(1)温度表示開始からの経過時間が2分30秒以上になった(タイマT1≧2分30秒)。
(2)現在の実測値が示す温度上昇量が所定の閾値Th2未満である(例えば、0.02℃/4秒未満)。
(3)現在の実測値がピーク値よりも所定温度(本例では0.4℃)以上低下した。
なお、条件(2)や(3)において、低体温の場合(35℃未満)と高体温の場合(42℃以上)の場合とで、上述の所定の閾値や所定温度を変えてもよい。
【0033】
終了判定により、体温計測が終了したと判断されると、演算処理部223は、ブザー240を鳴動し、表示部230の表示を固定して本処理を終了する(ステップS506、S507,S508)。他方、終了判断により体温計測が終了していないと判断された場合は、処理はステップS503に戻る。これにより、終了判断により体温計測の終了が判断されるのを待って、ステップS507、S508が実行されることになる。
【0034】
以上説明した処理による表示内容と計測された温度値との関係を示すと図6のようになる。本実施形態では、表示開始温度を20℃、体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲を30℃〜42℃、予測値として成立する温度範囲を35℃〜42℃とする。なお、これらの温度値の設定は一例であり、これに限定されるものではない。また、表示部230においては、表示制御部227は、予測値を表示部230に表示する第1表示制御手段として機能し、予測中ないし成立した予測値表示中は予測マーク112を表示部230に点灯または点滅させる。実測値が予測範囲外であって予測実行温度範囲にある場合は、ピークホールドによる実測値表示が行われる。また、実測値が予測実行温度範囲よりも低い場合は、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ピークホールドなしの実測値表示とともに、ワイドレンジマーク114を表示部230に点灯または点滅させる。更に、予測実行温度範囲よりも高い場合は、ピークホールドによる実行値表示とともに、ワイドレンジマーク114を点灯または点滅させる。
【0035】
上述した処理にあてはめると、実測値が20℃以上になると温度表示が開始され(S302)、30℃以上になると予測処理の開始とともに予測値表示が開始される(S304)。実測値が、20℃〜30℃の範囲の場合は、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ワイドレンジマーク114は点灯または点滅するとともにピークホールドなしの実測値表示が行われる(S403)。また、予測値が30℃〜35℃の範囲で確定した場合(低体温)、その予測は不成立となり、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ピークホールド有りの実測値表示に切り替わる(S309,S311,S501)。この範囲では、ワイドレンジマーク114は点灯または点滅しない。また、予測値或いは実測値が42℃を超えるような高体温の場合も、体温予測は不成立となり、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ピークホールド有りの実測値表示に切り替わる(S309,S311,S501)。ここで、実測値が43℃を超えた場合には、ワイドレンジマーク114が点灯または点滅する(S504)。
【0036】
以下、図7〜図12に示す具体的なケースについて、説明する。これらのグラフは概要を模式的に示すものであり、スケールのリニアリティは考慮していない。また、サンプリング時間も実際とは異なっている。また、図7〜図12において、「W」と記載されている表示区間はワイドレンジマーク114を点灯もしくは点滅させる区間である。
【0037】
図7の(A)は、被検者の体温が予測値範囲(本実施形態では35℃〜42℃)である場合の例を示す。電子体温計100が被測定部位に装着されて、温度計測部による210による温度計測が開始される。実測値が20℃〜29.9℃の間は、演算処理部223の制御により、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、表示部230において最高温度保持機能なし(ピークホールドなし)の実測値表示を行い、ワイドレンジマーク114を点灯または点滅させる。(S403)。その後、実測値が30℃以上になると、演算処理部223は体温予測処理を開始し、表示部230に予測値を表示するとともにワイドレンジマーク114を消灯する。予測開始から30秒が経過すると、演算処理部223は予測が成立したことを判断し、表示制御部227は、予測値を表示部230に表示する第1表示制御手段として機能し、表示部230にその予測結果を表示し、ブザー240を鳴動する(S312,S313)。さらに、予測開始から4分30秒が経過すると、演算処理部223の制御により表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、表示部230の表示を実測値表示に切り替え、更に予測開始から10分が経過すると10分検温成立を通知するべくブザー240を鳴動する(S314〜S317)。このように、被検者の体温が予測値範囲(35℃〜42℃)では、既存の予測式体温計とほぼ同じ仕様となるので、使用者の混乱を避けることができる。
【0038】
図7の(B)は、実測値が30℃を超えて一旦は体温予測処理が開始されたものの、実測値が30℃を下回るという事態が発生したケースを示している。救急領域での検温は自己測定とは異なり、医療従事者によって行われるため、アーチファクトが入りやすい。例えば、検温開始前に電子体温計100の先端部に医療従事者が触れてしまったような場合には一時的な温度上昇が起きる。これが30℃を超えてしまい、室温により再び実測値が30℃を下回るような場合に、電源の切り、投入が必要になると、慌しい現場での治療の妨げとなる可能性が有る。そこで、本実施形態では、予測開始から30秒以内に実測値が30℃以上の状態(期間701)から30℃未満の状態(期間702)への移行が発生した場合には、体温予測処理を初期化して自動的に体温予測処理を再起動するようにしている(S311でNO、S304でNO、S401)。したがって、再び実測値が30℃以上になると、演算処理部223は、タイマT2を0に戻して再起動し、予測処理を初期状態からやり直す。なお、期間702ではワイドレンジマークの表示が行なわれる(S504)。
【0039】
図8の(A)(B)は、被検者の体温が30℃〜35℃の低体温であった場合の動作例を示している。上述したように、実測値が30℃以上になると体温予測処理が実行されるが、ステップS310で予測不成立と判断された場合は、演算処理部223の制御により表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、最高温度を保持した実測値表示となる(ステップS502、期間801)。期間801においては、低体温を出来る丈速やかに確定させるために、ステップS505で説明した終了判断を行う。特に、図8の(B)の時点802では、ピークホールドされた実測値から現在の実測値が0.4℃以上低下しており、ステップS505の終了判定で終了と判定されることになる。終了と判断されると、演算処理部223は、ブザー240を鳴動し温度表示を固定して、処理を終了する(ステップS507、S508)。
【0040】
図9の(A),(B)は、被験者の体温が30℃未満の場合の動作例を示している。実測値が30℃に達しないままステップS404の終了判断で終了と判断されるケースである。図9の(A)では、計測開始時の実測値から4℃以上の温度上昇が有り(時点901)、温度上昇量が所定値(Th1)未満となったことが検出された(時点902)ことにより、測定を終了する様子が示されている(ステップS404〜S407)。温度上昇量により計測終了を判断することにより、迅速に低体温計測結果を提示できる。
【0041】
また、図9の(B)では、実測値がだらだらと上がるケースで、計測開始時の実測値から4℃以上の温度上昇が有ったものの温度上昇量が所定値(Th1)未満とはならず、温度表示開始から所定時間(本実施形態では2分30秒)が経過したことにより測定終了と判断された様子(時点903)を示している。復温処置を施している場合など、体温がだらだらと上昇する場合が有り、そうした状況下では平衡温を測るという考えはどちらかというと不適切である。本実施形態では、処置前後の効果の測定として、変化の途中であってもより短時間の検温結果を得ることの方が有用であるとの観点から、時間制限により計測終了を行っている。
【0042】
図10の(A)は、被検者の体温が30℃未満の場合であって、例えば図7の(B)で説明したようなアーチファクトにより実測値が一旦は30℃を超えたものの、その後実測値が30℃未満となってしまうケースである。この場合、演算処理部223の制御により表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ピークホールドなしの実測値表示とワイドレンジマーク114の点灯または点滅を継続させ、ステップS404の終了判断により体温計測の判断を判定する。
【0043】
図10の(B)は、被験者の体温が30℃〜34℃の低体温であって、体温予測処理の開始から20秒で低体温群と判断されたケースを示している。この場合、体温予測処理の開始から30秒後の予測成立の判断を待たずに、ステップS500の処理が開始される(ステップS309でYES)。その後の終了判断は、ステップS505で説明したとおりである。
【0044】
次に、図11、図12を用いて、被検者の体温が42℃を超える高体温であった場合を説明する。図11の(A)は、被検者の体温が43℃を超える場合の動作例である。期間1101において、体温予測処理の予測値が42℃を超えると、演算処理部223は、表示部230の表示を42℃に固定する。そして、体温予測処理の開始から30秒が経過して、予測不成立と判断されると、ピークホールドによる実測値表示が開始される(ステップS502)。そして、時点1102のように、実測値が43℃を超えると、ワイドレンジマーク114が点灯または点滅する(ステップS503、S504)。そして、ステップS505の終了判断により体温計測を終了する。図11の(A)では、温度表示開始からの経過時間が2分30秒を超えたことにより体温計測の終了と判断されている。このように、温度がだらだら上がる場合でも、一定時間(2分30秒)で測定値を確定し、表示を固定している。熱中症などで温度調整機能が破綻している場合、平衡温よりも、一定時間での測定結果を経時的に測定する方が有用であるとの観点からこのような時間制限を設けている。
【0045】
なお、高温時の実測値表示においてピークホールドを行うのは例えば以下の理由による。すなわち、ピークホールドを行わないと、腋下への電子体温計100の挟み方が甘かったり、電子体温計100の位置がずれたりした場合に、高体温患者の体温を低く見誤るリスクが生じるからである。
【0046】
図11の(B)は、図11の(A)と同様であるが、時点1103において温度の上昇量が所定値未満となったことで体温計測が終了したと判定された様子を示している。なお、図11の(B)では、実測値が43℃を超えておらず、ワイドレンジマーク114は表示されていない。このように、実測値の安定を終了判断に加えることにより、体温変化が早期に安定するケースでは、より迅速に救急現場に検温値を提供することが可能になる。また、図12は図11の(B)と同様であるが、時点1201において実測値がピークホールドされている値よりも0.4℃以上低下したことで体温計測が終了したと判定された様子を示している。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、通常の予測式体温計としての機能を維持しながら、予測値範囲外の低体温或いは高体温の状態にある被検者の体温を計測することが可能な電子体温計が提供される。
なお、予測機能を備えず、単に、実測式の電子体温計として、実測値の表示開始温度を20℃とした電子体温計としてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の体温を測定する電子体温計に関するものである。特に、温度測定範囲が広い電子体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より被検者の体温を測定し、得られた温度値から平衡温度を予測して予測値を表示する電子体温計が広く普及している(特許文献1)。この種の電子体温計では、検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測するため、迅速に被検者の体温の計測結果を提示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−024531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子体温計は、通常体温もしくは発熱時において平衡温度を迅速且つ正確に予測できるように予測アルゴリズムが調整されている。従って、その有効な測定温度範囲はおよそ35℃〜42℃となっており、実測値がこの測定温度範囲を下回ったり上回ったりした場合には計測エラーとして終了してしまう。そのため、例えば、低体温症や熱中症に陥った被検者の体温を一般的な平衡温度予測式の電子体温計を用いて測定しようとすると計測エラーとなってしまう。すなわち、低体温症や熱中症に陥った被検者の体温を測定するような用途にそのような電子体温計を用いることができなかった。なお、ここでいう低体温症とは、何らかの原因で体温が35℃以下に低下した病態で、33〜30℃(中度)、30〜25℃(重度)、25〜20℃(重篤:昏睡,仮死)、20℃以下(非常に重篤:ほぼ死亡状態)をいう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、通常体温を有する被検者の体温を計測した場合には一般的な平衡温度の予測により体温計測値を提示し、通常体温の範囲外の被検者に対しても迅速且つ正確な体温計測を行える電子体温計及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による電子体温計は以下の構成を備える。すなわち、
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測手段を有する電子体温計であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測手段による予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御手段と、
前記予測処理における予測が成立したか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記予測処理における予測が成立したと判断された場合には前記実測値を前記表示部に表示する第2表示制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通常体温の範囲外の被検者に対しても迅速且つ正確な体温計測を行える電子体温計を提供できる。また、通常体温を有する被検者の体温を計測した場合には一般的な平衡温度の予測により体温計測値を表示することができ、迅速且つ正確な体温計測を行える電子体温計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態による電子体温計の外観構成を示す図。
【図2】実施形態による電子体温計の機能構成を示す内部ブロック図。
【図3】電子体温計における体温計測処理を示すフローチャート。
【図4】電子体温計における体温計測処理を示すフローチャート。
【図5】電子体温計における体温計測処理を示すフローチャート。
【図6】実測値と体温表示の関係を説明する図。
【図7】通常範囲の体温を有する被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図8】低体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図9】低体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図10】低体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図11】高体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【図12】高体温時の被験者を測定した場合の動作例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0010】
1.電子体温計の外観構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる電子体温計100の外観構成を示す図であり、図1(a)は平面図を、図1(b)は裏面の平面図をそれぞれ示している。101は本体ケースで、図2により後述する演算制御部220等の電子回路、電池(電源部250)等が収納される。図1(c)は、表示部における表示内容を示している。
【0011】
102は、ステンレス製の金属キャップで、内部には温度を計測するためのサーミスタ213(詳細は図2により後述)等が収納され、液密性を有している。103は本体ケース101のキャップで、本体ケース101にマグネットリードスイッチ260(図2),電子回路が載置された基板、ブザー、電池等を収納した後、103aに沿って超音波により液密に融着される。このため、電子体温計100が永久磁石を内蔵した収納ケース(不図示)から出されるとマグネットリードスイッチ260がONされる。そして、電子体温計100が収納ケースに収納されるまで、図2の電源部250(電池)から演算制御部220等の電子回路、温度計測部210、表示部230等に電源が供給され続け、電子体温計100は電源がON状態となる。なお、電源ON/OFFスイッチ(不図示)を設け、1回押圧すると電源部250がONとなり、再度押圧すると電源部250がOFFとなるようにしてもよい。又、キャップ103を取り外し可能にして、電源部250としての電池を交換できるようにしてもよい。
【0012】
104は表示窓であり、表示窓は透明性のある熱可塑性樹脂で形成され、本体ケース101の開口部104aと2色成形されて液密性を有している。この表示窓104を介して、内部の表示部230(LCD)が被検者の体温を表示する。図1(c)に示すように、表示部230では、数値表示部111により温度計測値が表示される。また、予測マーク112は、数値表示部111が表示している値が予測値である場合に点灯または点滅し、他の場合は消灯する。電池電圧低下マーク113は、電源部250による供給電圧が低下したことを示す。電池電圧低下マーク113が点滅すると電池残量が少ないことを示し、連続点灯時は電池残量が不足して電子体温計100を使用できないことを示す。ワイドレンジマーク114は、計測している温度が検定範囲外であるときまたは測定モードの切り替えを明示的に示すために点灯または点滅する。
【0013】
液密性を有するために、好ましくは、表示窓と本体ケース101は2色成形で形成されている。本体ケース101とキャップ103は、耐衝撃性,耐薬品性がある熱可塑性材料である、スチレン系樹脂(ハイインパクトスチロール,ABS樹脂)、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン,ポリエチレン)等で形成されている。また、抗菌性を持たせるために、リン酸ジルコニウム銀化合物をほぼ1〜2.5重量%含むようにして成形してもよい。なお、本体ケース101の裏面に設けられた101aは本体ケース101の長手方向の中心線に沿って設けられた突起部、101bは本体ケース101の長手方向の中心線に沿って本体ケース101の幅広部に設けられた半月上の平面部であり、突起部101aと平面部101bとの相互作用で、本体ケース101の転がりを防止している。
【0014】
2.電子体温計の機能構成
図2は本実施形態にかかる電子体温計100の機能構成を示す内部ブロック図である。
【0015】
電子体温計100は、温度に対応した信号を出力する温度計測部210と、コンピュータを含み、温度計測部210より出力された信号に基づいて各種処理を行い、被検者の体温を演算すると共に電子体温計100全体の動作を制御する演算制御部220と、演算された被検者の体温を表示する表示部230と、ブザー240と、電源部250とを備える。なお、ブザー240に加えて、或いはその代わりに、音声出力部105を設けてもよい。音声出力部105は、演算制御部220における処理に基づいて、音声記憶IC(不図示)に記憶された合成音声により測定された体温値を音声により出力する。上述のように、電源部250はマグネットリードスイッチ260を介して電子体温計100の各部に電力を供給する。
【0016】
温度計測部210は、サーミスタ(測定用抵抗素子)213、基準抵抗素子215、コンデンサ214、R−T変換回路211を含み、温度に対応した時間分のON信号(温度に対応して、ON時間が変わる信号)を出力する。なお、温度計測部210の構成は、このようなR−T変換回路を用いたものに限られるものではない。例えば、サーミスタ213やコンデンサ214を用いてCR発振回路を形成して、温度に対応した周波数信号を取得する構成でも良い。
【0017】
演算制御部220は、温度計測部210より出力される信号のON時間を計測するカウンタ222を備える。カウンタ222は、制御回路221内のクロック発生部228が生成したクロックをカウントし、得られたカウント値と当該クロックの周波数に基づいて上記ON時間を計測する。
【0018】
また、演算制御部220は演算処理部223を備える。演算処理部223は、ROM224に格納されたプログラムを実行することで、カウンタ222により計測された時間に基づいて温度データを算出し、算出された温度データを時系列でRAM226に記憶し、算出された温度データの時間変化に基づいて被検者の体温の予測演算を行うとともに、後述の低体温計測処理を行う。また、音声出力部105を有する構成の場合、EEPROM225には所定の音声データが格納されており、演算処理部223は、この音声データを用いて音声出力部105より音声データの出力を行う。また、演算制御部220は、演算処理部223における演算結果を表示する表示部230を制御するための表示制御部227を備える。更に、演算制御部220は、上記カウンタ222、表示制御部227、演算処理部223、温度計測部210を制御する制御回路221を備える。表示制御部227は、後述する予測値を表示部に表示する第1表示制御手段と実測値を前記表示部に表示する第2表示制御手段としての機能を備えている。
【0019】
3.電子体温計における体温計測処理の流れ
3.1 電子体温計における体温計測処理の全体の流れ
次に、以上説明したような構成を備える本実施形態の電子体温計100における体温計測処理の流れについて説明する。
【0020】
図3〜図5は、電子体温計100における体温計測処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3〜図5を用いて電子体温計100における体温計測処理の流れを説明する。なお、図3〜図5に示す処理は、例えば、各動作工程において判断、制御する演算処理部223によって実行される。
【0021】
マグネットリードスイッチ260がON状態になると、または電源ON/OFFスイッチ(不図示)の手動操作で、電子体温計100の電源部250がONされると、電子体温計100の初期化が行われ、検温素子であるサーミスタ213による温度計測が開始される。例えば、演算処理部223では、所定の時間間隔、例えば、0.5秒おきに温度データの演算が行われる。
【0022】
演算処理部223は、計測された温度値が表示開始温度(本実施形態では20℃とする)以上となるまでの間は、表示部230に、実測温度値とは異なる表示形態、例えば「88.8」を表示させる(ステップS301、S302)。計測された温度値が表示開始温度以上になると、演算処理部223はタイマT1をスタートさせる(ステップS303)。タイマT1は、表示部230への温度表示開始時からの時間を計測する。
【0023】
次に、演算処理部223は、計測された温度値が予測開始温度(本実施形態では30℃とする)以上になったか否かを判断する。予測開始温度に達していなければ予測開始温度未満の処理である“30℃未満時処理”を実行する(ステップS304、S400)。なお、“30℃未満時処理”については図4のフローチャートにより後述する。他方、計測された温度値が予測開始温度以上である場合は、演算処理部223は、体温予測処理を開始する(ステップS305)。体温予測処理は、検温素子(サーミスタ213)により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する処理である。なお、体温予測処理は周知であるため、詳細な説明は省略する。体温予測処理の開始に続いて、演算処理部223は、体温予測処理の開始からの時間を計時するためのタイマT2をスタートさせる(ステップS306)。なお、体温予測開始(S305)は既に体温予測を実行中であればスキップされる。同様に、タイマT2スタート(S306)は、既にタイマT2が起動されていればスキップされる。そして、演算処理部223は、表示部230でワイドレンジマーク114が点灯中または点滅中であればこれを消灯し、ステップS306で開始された体温予測処理による予測値表示を開始する(ステップS307、S308)。なお、予測値表示が行われている間は予測マーク112が点灯する。このワイドレンジマーク114は、“30℃未満時処理”である旨を文字及び/またはキャラクタで表示するものである。
【0024】
体温予測処理により、被検者の体温が通常の予測値範囲(本実施形態では35℃〜42℃とする)未満であると判定された場合(ステップS309)、体温予測の結果が通常の予測範囲になった場合(ステップS310)、体温予測処理が開始されてから所定秒(例えば30秒)が経過した場合(ステップS311)を除いて、処理はステップS304に戻る。こうして、演算処理部223は、体温予測処理が開始されてから所定秒(例えば30秒)が経過するまでに(タイマT2≧25秒)体温予測処理による予測が成立したか否かを判断する。なお、予測成立判断は、予測値が一定範囲に収束したかどうかで行われる。但し、
・予測値が予測範囲(本実施形態では35℃〜42℃)から外れる場合、
・温度上昇カーブのパターン分けにおいて低体温群を示す場合、
は予測不成立となる。予測が成立していると判断された場合、演算処理部223は、ブザー240を鳴動し(ステップS312)、その時点の温度値(予測値)の表示を維持する(ステップS313)。
【0025】
その後、予測開始から所定の経過時間、例えば4分30秒を超えると、表示部230における表示を実測値(温度計測部210により計測された温度値)の表示に切り替える(ステップS314、S315)。この実測値表示は、最高温度値を保持するピークホールド表示とする。更に、その後、予測開始からの経過時間が10分を超えると、演算処理部223は、10分検温が成立したことを通知するためにブザー240を鳴動する(ステップS316、S317)。
【0026】
以上のように、本実施形態の電子体温計100により通常の予測範囲の体温を有する被験者の体温を計測した場合は、一般的な電子体温計と同様の処理が進み、体温の計測が完了することになる。一方、本実施形態の電子体温計100は、通常の予測範囲(本実施形態では35℃〜42℃)外の体温を有する被験者について体温計測を実施した場合でも、その体温計測結果を極力正確に提示するために以下に説明する処理を行う。
【0027】
ステップS304で計測された温度値が30℃未満であった場合、処理は“30℃未満時処理”(ステップS400)に進む。図4は、“30℃未満時処理”を説明するフローチャートである。“30℃未満時処理”において、演算処理部223は、予測処理が起動されている場合は、当該予測処理を停止して待機状態にするとともにタイマT2をリセットする(ステップS401)。そして、演算処理部223は表示部230においてワイドレンジマーク114を点灯し、実測値表示を開始する(ステップS402、S403)。なお、ここでの実測値表示ではピークホールド(最高温度保持機能)を行わない。30℃未満で最高温度保持機能があると、低体温測定時に体温を高く見誤るリスクが有るからである。救急領域での検温は自己測定とは異なり、医療従事者によって行われるため、アーチファクトが入りやすく、例えば、検温開始前に電子体温計100の先端部に医療従事者が触れてしまったような場合には一時的な温度上昇が起きる。そのため、30℃未満ではピークホールドをせず、低体温測定時に体温を高く見誤るリスクを低減している。
【0028】
次に、演算処理部223は、実測値が30℃未満の場合における体温計測の終了判断を行う(ステップS404)。終了判断では、例えば、以下の(1)、(2)のいずれかが成立したことで終了と判定する。
(1)温度表示開始からの経過時間が2分30秒以上になった(タイマT1≧2分30秒)。
(2)温度計測の開始から実測値が所定値(本実施形態の例では4℃とする)を超えており、且つ、現在の実測値が示す温度上昇量が所定の閾値Th1未満である(例えば、0.02(℃/4秒)未満)。
【0029】
終了判定により、終了と判断されなかった場合は、処理はステップS304へ戻る。他方、終了判定により終了と判断された場合、演算処理部223は、ブザー240を鳴動し、表示部230の表示値を固定して処理を終える(ステップS405、S406,S407)。
【0030】
図3に戻り、体温予測処理により低体温群であると判断した場合(ステップS309でYES)、または、予測開始から30秒が経過したが予測が成立していない場合(ステップS310でNO且つステップS311でYES)、演算処理部223は“低体温/高体温処理”を実行する(ステップS500)。以下、図5のフローチャートにより、“低体温/高体温処理”を説明する。
【0031】
“低体温/高体温処理”において、演算処理部223は、体温予測処理が動作中であればこれを停止する(ステップS501)。そして、演算処理部223は、表示部230において実測値表示を開始する(S502)。ここでの実測値表示では、ピークホールドを行う。また、演算処理部223は、実測値が43℃を超えていればワイドレンジマーク114を点灯する(ステップS503、S504)。
【0032】
続いて、演算処理部223は、タイマT1の値、実測値に基づいて終了判断を行う(ステップS505)。この終了判断では、例えば以下の(1)〜(3)のいずれかが成立したことで終了と判断する。
(1)温度表示開始からの経過時間が2分30秒以上になった(タイマT1≧2分30秒)。
(2)現在の実測値が示す温度上昇量が所定の閾値Th2未満である(例えば、0.02℃/4秒未満)。
(3)現在の実測値がピーク値よりも所定温度(本例では0.4℃)以上低下した。
なお、条件(2)や(3)において、低体温の場合(35℃未満)と高体温の場合(42℃以上)の場合とで、上述の所定の閾値や所定温度を変えてもよい。
【0033】
終了判定により、体温計測が終了したと判断されると、演算処理部223は、ブザー240を鳴動し、表示部230の表示を固定して本処理を終了する(ステップS506、S507,S508)。他方、終了判断により体温計測が終了していないと判断された場合は、処理はステップS503に戻る。これにより、終了判断により体温計測の終了が判断されるのを待って、ステップS507、S508が実行されることになる。
【0034】
以上説明した処理による表示内容と計測された温度値との関係を示すと図6のようになる。本実施形態では、表示開始温度を20℃、体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲を30℃〜42℃、予測値として成立する温度範囲を35℃〜42℃とする。なお、これらの温度値の設定は一例であり、これに限定されるものではない。また、表示部230においては、表示制御部227は、予測値を表示部230に表示する第1表示制御手段として機能し、予測中ないし成立した予測値表示中は予測マーク112を表示部230に点灯または点滅させる。実測値が予測範囲外であって予測実行温度範囲にある場合は、ピークホールドによる実測値表示が行われる。また、実測値が予測実行温度範囲よりも低い場合は、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ピークホールドなしの実測値表示とともに、ワイドレンジマーク114を表示部230に点灯または点滅させる。更に、予測実行温度範囲よりも高い場合は、ピークホールドによる実行値表示とともに、ワイドレンジマーク114を点灯または点滅させる。
【0035】
上述した処理にあてはめると、実測値が20℃以上になると温度表示が開始され(S302)、30℃以上になると予測処理の開始とともに予測値表示が開始される(S304)。実測値が、20℃〜30℃の範囲の場合は、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ワイドレンジマーク114は点灯または点滅するとともにピークホールドなしの実測値表示が行われる(S403)。また、予測値が30℃〜35℃の範囲で確定した場合(低体温)、その予測は不成立となり、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ピークホールド有りの実測値表示に切り替わる(S309,S311,S501)。この範囲では、ワイドレンジマーク114は点灯または点滅しない。また、予測値或いは実測値が42℃を超えるような高体温の場合も、体温予測は不成立となり、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ピークホールド有りの実測値表示に切り替わる(S309,S311,S501)。ここで、実測値が43℃を超えた場合には、ワイドレンジマーク114が点灯または点滅する(S504)。
【0036】
以下、図7〜図12に示す具体的なケースについて、説明する。これらのグラフは概要を模式的に示すものであり、スケールのリニアリティは考慮していない。また、サンプリング時間も実際とは異なっている。また、図7〜図12において、「W」と記載されている表示区間はワイドレンジマーク114を点灯もしくは点滅させる区間である。
【0037】
図7の(A)は、被検者の体温が予測値範囲(本実施形態では35℃〜42℃)である場合の例を示す。電子体温計100が被測定部位に装着されて、温度計測部による210による温度計測が開始される。実測値が20℃〜29.9℃の間は、演算処理部223の制御により、表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、表示部230において最高温度保持機能なし(ピークホールドなし)の実測値表示を行い、ワイドレンジマーク114を点灯または点滅させる。(S403)。その後、実測値が30℃以上になると、演算処理部223は体温予測処理を開始し、表示部230に予測値を表示するとともにワイドレンジマーク114を消灯する。予測開始から30秒が経過すると、演算処理部223は予測が成立したことを判断し、表示制御部227は、予測値を表示部230に表示する第1表示制御手段として機能し、表示部230にその予測結果を表示し、ブザー240を鳴動する(S312,S313)。さらに、予測開始から4分30秒が経過すると、演算処理部223の制御により表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、表示部230の表示を実測値表示に切り替え、更に予測開始から10分が経過すると10分検温成立を通知するべくブザー240を鳴動する(S314〜S317)。このように、被検者の体温が予測値範囲(35℃〜42℃)では、既存の予測式体温計とほぼ同じ仕様となるので、使用者の混乱を避けることができる。
【0038】
図7の(B)は、実測値が30℃を超えて一旦は体温予測処理が開始されたものの、実測値が30℃を下回るという事態が発生したケースを示している。救急領域での検温は自己測定とは異なり、医療従事者によって行われるため、アーチファクトが入りやすい。例えば、検温開始前に電子体温計100の先端部に医療従事者が触れてしまったような場合には一時的な温度上昇が起きる。これが30℃を超えてしまい、室温により再び実測値が30℃を下回るような場合に、電源の切り、投入が必要になると、慌しい現場での治療の妨げとなる可能性が有る。そこで、本実施形態では、予測開始から30秒以内に実測値が30℃以上の状態(期間701)から30℃未満の状態(期間702)への移行が発生した場合には、体温予測処理を初期化して自動的に体温予測処理を再起動するようにしている(S311でNO、S304でNO、S401)。したがって、再び実測値が30℃以上になると、演算処理部223は、タイマT2を0に戻して再起動し、予測処理を初期状態からやり直す。なお、期間702ではワイドレンジマークの表示が行なわれる(S504)。
【0039】
図8の(A)(B)は、被検者の体温が30℃〜35℃の低体温であった場合の動作例を示している。上述したように、実測値が30℃以上になると体温予測処理が実行されるが、ステップS310で予測不成立と判断された場合は、演算処理部223の制御により表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、最高温度を保持した実測値表示となる(ステップS502、期間801)。期間801においては、低体温を出来る丈速やかに確定させるために、ステップS505で説明した終了判断を行う。特に、図8の(B)の時点802では、ピークホールドされた実測値から現在の実測値が0.4℃以上低下しており、ステップS505の終了判定で終了と判定されることになる。終了と判断されると、演算処理部223は、ブザー240を鳴動し温度表示を固定して、処理を終了する(ステップS507、S508)。
【0040】
図9の(A),(B)は、被験者の体温が30℃未満の場合の動作例を示している。実測値が30℃に達しないままステップS404の終了判断で終了と判断されるケースである。図9の(A)では、計測開始時の実測値から4℃以上の温度上昇が有り(時点901)、温度上昇量が所定値(Th1)未満となったことが検出された(時点902)ことにより、測定を終了する様子が示されている(ステップS404〜S407)。温度上昇量により計測終了を判断することにより、迅速に低体温計測結果を提示できる。
【0041】
また、図9の(B)では、実測値がだらだらと上がるケースで、計測開始時の実測値から4℃以上の温度上昇が有ったものの温度上昇量が所定値(Th1)未満とはならず、温度表示開始から所定時間(本実施形態では2分30秒)が経過したことにより測定終了と判断された様子(時点903)を示している。復温処置を施している場合など、体温がだらだらと上昇する場合が有り、そうした状況下では平衡温を測るという考えはどちらかというと不適切である。本実施形態では、処置前後の効果の測定として、変化の途中であってもより短時間の検温結果を得ることの方が有用であるとの観点から、時間制限により計測終了を行っている。
【0042】
図10の(A)は、被検者の体温が30℃未満の場合であって、例えば図7の(B)で説明したようなアーチファクトにより実測値が一旦は30℃を超えたものの、その後実測値が30℃未満となってしまうケースである。この場合、演算処理部223の制御により表示制御部227は、実測値を表示部230に表示する第2表示制御手段として機能し、ピークホールドなしの実測値表示とワイドレンジマーク114の点灯または点滅を継続させ、ステップS404の終了判断により体温計測の判断を判定する。
【0043】
図10の(B)は、被験者の体温が30℃〜34℃の低体温であって、体温予測処理の開始から20秒で低体温群と判断されたケースを示している。この場合、体温予測処理の開始から30秒後の予測成立の判断を待たずに、ステップS500の処理が開始される(ステップS309でYES)。その後の終了判断は、ステップS505で説明したとおりである。
【0044】
次に、図11、図12を用いて、被検者の体温が42℃を超える高体温であった場合を説明する。図11の(A)は、被検者の体温が43℃を超える場合の動作例である。期間1101において、体温予測処理の予測値が42℃を超えると、演算処理部223は、表示部230の表示を42℃に固定する。そして、体温予測処理の開始から30秒が経過して、予測不成立と判断されると、ピークホールドによる実測値表示が開始される(ステップS502)。そして、時点1102のように、実測値が43℃を超えると、ワイドレンジマーク114が点灯または点滅する(ステップS503、S504)。そして、ステップS505の終了判断により体温計測を終了する。図11の(A)では、温度表示開始からの経過時間が2分30秒を超えたことにより体温計測の終了と判断されている。このように、温度がだらだら上がる場合でも、一定時間(2分30秒)で測定値を確定し、表示を固定している。熱中症などで温度調整機能が破綻している場合、平衡温よりも、一定時間での測定結果を経時的に測定する方が有用であるとの観点からこのような時間制限を設けている。
【0045】
なお、高温時の実測値表示においてピークホールドを行うのは例えば以下の理由による。すなわち、ピークホールドを行わないと、腋下への電子体温計100の挟み方が甘かったり、電子体温計100の位置がずれたりした場合に、高体温患者の体温を低く見誤るリスクが生じるからである。
【0046】
図11の(B)は、図11の(A)と同様であるが、時点1103において温度の上昇量が所定値未満となったことで体温計測が終了したと判定された様子を示している。なお、図11の(B)では、実測値が43℃を超えておらず、ワイドレンジマーク114は表示されていない。このように、実測値の安定を終了判断に加えることにより、体温変化が早期に安定するケースでは、より迅速に救急現場に検温値を提供することが可能になる。また、図12は図11の(B)と同様であるが、時点1201において実測値がピークホールドされている値よりも0.4℃以上低下したことで体温計測が終了したと判定された様子を示している。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、通常の予測式体温計としての機能を維持しながら、予測値範囲外の低体温或いは高体温の状態にある被検者の体温を計測することが可能な電子体温計が提供される。
なお、予測機能を備えず、単に、実測式の電子体温計として、実測値の表示開始温度を20℃とした電子体温計としてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測手段を有する電子体温計であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測手段による予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御手段と、
前記予測処理における予測が成立したか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記予測処理における予測が成立しなかったと判断された場合に前記実測値を前記表示部に表示する第2表示制御手段とを備えることを特徴とする電子体温計。
【請求項2】
前記実測値が前記予測実行温度範囲の値となった後、前記判断手段によって前記判断がなされる前に前記実測値が前記予測実行温度範囲外の値となり、再び前記実測値が前記予測実行温度範囲の値となった場合には、前記予測手段による予測処理が初期状態から再起動されることを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記第2表示制御手段は、前記実測値をピークホールドして表示することを特徴とする請求項2に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記第2表示制御手段は、更に、前記実測値の所定時間あたりの温度上昇量が閾値以下である場合、または、実測値がピークホールドされている値よりも所定値以上低下した場合に体温計測の終了と判定し実測値の表示内容を固定することを特徴とする請求項3に記載の電子体温計。
【請求項5】
前記実測値が、前記予測実行温度範囲よりも低い表示開始温度以上となった場合に前記表示部への表示が開始されるとともに、表示開始からの経過時間が計時され、
前記第2表示制御手段は、前記経過時間が所定時間を超えたことにより体温計測を終了と判断し、実測値の表示内容を固定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子体温計。
【請求項6】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測手段を有する電子体温計であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測手段による予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御手段と、
前記実測値が前記予測実行温度範囲外にある場合に、前記実測値の表示を前記表示部にて行う第3表示制御手段とを備えることを特徴とする電子体温計。
【請求項7】
第3表示制御手段が、前記実測値が予測実行温度範囲外であることを通知する表示を行うことを特徴とする請求項6に記載の電子体温計。
【請求項8】
前記第3表示制御手段は、前記実測値が前記予測実行温度範囲よりも低い場合にはピークホールドをせずに実測値の表示を行い、前記実測値が前記予測実行温度範囲よりも高い場合にはピークホールドをして実測値の表示を行うことを特徴とする請求項6または7に記載の電子体温計。
【請求項9】
前記実測値が、前記予測実行温度範囲よりも低い表示開始温度以上となった場合に前記表示部への表示が開始されるとともに、表示開始からの経過時間が計時され、
前記第3表示制御手段は、前記実測値が前記予測実行温度範囲よりも低い場合において、前記経過時間が所定時間を超えた場合、または、温度の計測開始時の実測値より現在の実測値が所定値以上上昇しており、かつ現在の実測値の所定時間あたりの温度上昇量が閾値以下である場合に体温計測の終了と判定し、実測値の表示内容を固定することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電子体温計。
【請求項10】
前記実測値が、前記予測実行温度範囲よりも低い表示開始温度以上となった場合に前記表示部への表示が開始されるとともに、表示開始からの経過時間が計時され、
前記第3表示制御手段は、前記実測値が前記予測実行温度範囲よりも高い場合において、
・前記経過時間が所定時間を超えた場合、
・現在の実測値の所定時間あたりの温度上昇量が閾値以下である場合、
・実測値がピークホールドされている値よりも所定値以上低下した場合、
のいずれかにより体温計測の終了と判断し、実測値の表示内容を固定することを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の電子体温計。
【請求項11】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測手段を有する電子体温計であって、
前記実測値の表示開始温度が20℃であることを特徴とする電子体温計。
【請求項12】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値を表示する電子体温計であって、
前記実測値の表示開始温度が20℃であることを特徴とする電子体温計。
【請求項13】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測処理を実行する電子体温計の制御方法であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御工程と、
前記予測処理における予測が成立したか否かを判断する判断する判定工程と、
前記判定工程で前記予測処理における予測が成立しなかったと判断された場合には前記実測値を前記表示部に表示する第2表示制御工程とを備えることを特徴とする電子体温計の制御方法。
【請求項14】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測処理を実行する電子体温計の制御方法であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御工程と、
前記実測値が前記予測実行温度範囲外にある場合に、前記実測値の表示を前記表示部にて行う第3表示制御工程とを備えることを特徴とする電子体温計の制御方法。
【請求項1】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測手段を有する電子体温計であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測手段による予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御手段と、
前記予測処理における予測が成立したか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記予測処理における予測が成立しなかったと判断された場合に前記実測値を前記表示部に表示する第2表示制御手段とを備えることを特徴とする電子体温計。
【請求項2】
前記実測値が前記予測実行温度範囲の値となった後、前記判断手段によって前記判断がなされる前に前記実測値が前記予測実行温度範囲外の値となり、再び前記実測値が前記予測実行温度範囲の値となった場合には、前記予測手段による予測処理が初期状態から再起動されることを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記第2表示制御手段は、前記実測値をピークホールドして表示することを特徴とする請求項2に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記第2表示制御手段は、更に、前記実測値の所定時間あたりの温度上昇量が閾値以下である場合、または、実測値がピークホールドされている値よりも所定値以上低下した場合に体温計測の終了と判定し実測値の表示内容を固定することを特徴とする請求項3に記載の電子体温計。
【請求項5】
前記実測値が、前記予測実行温度範囲よりも低い表示開始温度以上となった場合に前記表示部への表示が開始されるとともに、表示開始からの経過時間が計時され、
前記第2表示制御手段は、前記経過時間が所定時間を超えたことにより体温計測を終了と判断し、実測値の表示内容を固定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子体温計。
【請求項6】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測手段を有する電子体温計であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測手段による予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御手段と、
前記実測値が前記予測実行温度範囲外にある場合に、前記実測値の表示を前記表示部にて行う第3表示制御手段とを備えることを特徴とする電子体温計。
【請求項7】
第3表示制御手段が、前記実測値が予測実行温度範囲外であることを通知する表示を行うことを特徴とする請求項6に記載の電子体温計。
【請求項8】
前記第3表示制御手段は、前記実測値が前記予測実行温度範囲よりも低い場合にはピークホールドをせずに実測値の表示を行い、前記実測値が前記予測実行温度範囲よりも高い場合にはピークホールドをして実測値の表示を行うことを特徴とする請求項6または7に記載の電子体温計。
【請求項9】
前記実測値が、前記予測実行温度範囲よりも低い表示開始温度以上となった場合に前記表示部への表示が開始されるとともに、表示開始からの経過時間が計時され、
前記第3表示制御手段は、前記実測値が前記予測実行温度範囲よりも低い場合において、前記経過時間が所定時間を超えた場合、または、温度の計測開始時の実測値より現在の実測値が所定値以上上昇しており、かつ現在の実測値の所定時間あたりの温度上昇量が閾値以下である場合に体温計測の終了と判定し、実測値の表示内容を固定することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電子体温計。
【請求項10】
前記実測値が、前記予測実行温度範囲よりも低い表示開始温度以上となった場合に前記表示部への表示が開始されるとともに、表示開始からの経過時間が計時され、
前記第3表示制御手段は、前記実測値が前記予測実行温度範囲よりも高い場合において、
・前記経過時間が所定時間を超えた場合、
・現在の実測値の所定時間あたりの温度上昇量が閾値以下である場合、
・実測値がピークホールドされている値よりも所定値以上低下した場合、
のいずれかにより体温計測の終了と判断し、実測値の表示内容を固定することを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の電子体温計。
【請求項11】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測手段を有する電子体温計であって、
前記実測値の表示開始温度が20℃であることを特徴とする電子体温計。
【請求項12】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値を表示する電子体温計であって、
前記実測値の表示開始温度が20℃であることを特徴とする電子体温計。
【請求項13】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測処理を実行する電子体温計の制御方法であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御工程と、
前記予測処理における予測が成立したか否かを判断する判断する判定工程と、
前記判定工程で前記予測処理における予測が成立しなかったと判断された場合には前記実測値を前記表示部に表示する第2表示制御工程とを備えることを特徴とする電子体温計の制御方法。
【請求項14】
検温素子により検出した被測定部位における温度の実測値の経時変化に基づいて平衡温度を予測する予測処理を実行する電子体温計の制御方法であって、
前記実測値が体温予測を実行可能な温度範囲である予測実行温度範囲にある場合に、前記予測処理を実行して予測値を表示部に表示する第1表示制御工程と、
前記実測値が前記予測実行温度範囲外にある場合に、前記実測値の表示を前記表示部にて行う第3表示制御工程とを備えることを特徴とする電子体温計の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−137328(P2012−137328A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288508(P2010−288508)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
[ Back to top ]