説明

電子体温計

【課題】 液密性に優れた電子体温計を提供する。
【解決手段】 体温測定を行うための構成部品が収容され、測温部を含む金属キャップが先端部に取り付けられた筺体204と、該筺体の尾部に着脱可能に取り付けられる筺体キャップ203とを備える電子体温計200であって、電子体温計200は、筺体204と筺体キャップ203との間に挟まれることによって筺体204と筺体キャップ203との間の隙間を塞ぐパッキング205を備え、パッキング205の平面形状は、パッキング205が挟まれる筺体204と筺体キャップ203の部位の形状と同じ形状であり、その断面形状は円形であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の体温を測定する電子体温計に関するものである。特に筐体キャップが着脱可能な電子体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被検者の体温を測定する電子体温計として、プラスチックのような樹脂の筐体と、その尾部に取り付けられる筐体キャップで構成され、筐体の先端部に温度検出部を形成しているような電子体温計が知られている。
【0003】
従来の電子体温計の形の一例として、図1に示されたようなものがある。電子体温計100は、その先端に配置され、被検者に接触する、サーミスタを内蔵する金属製キャップ102と、電子体温計100の尾部に配置される筐体キャップ103と、電子体温計100の本体を形成する筐体104とで構成される。測定結果は表示部101に表示される。このような体温計は人体及び消毒液に頻繁に触れるため、電子部品を液体から守る液密構造を筐体に設ける必要がある。そのため、筐体104にはパッキング105が装着される溝104aが設けられており、パッキング105は筐体キャップ103と筐体104との間に挟まれて変形し、筐体キャップ103と筐体104との間に存在する隙間を密閉する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パッキング105のような従来のパッキング材は、その平面形状が円型をしているため、図1のような断面が四角い筐体104に取り付けられると、パッキング105の場所によってかかる伸縮力が異なる。その結果、パッキング105は均等に伸びることができなくなり、特に角に当たるパッキングの部位が他の部位より伸びて薄くなりやすい。そのような不均一の厚みを持つパッキングでは、完全な液密性が得られなくなる恐れがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、液密性に優れた電子体温計を提供することを目的とする。また、電池交換が可能で、電池交換後も、パッキングによるシールが全周に亙ってほぼ均一で液密性に優れた電子体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電子体温計は以下のような構成を備える。
即ち、体温測定を行うための構成部品が収容され、測温部を含む金属キャップが先端部に取り付けられた筺体と、該筺体の尾部に着脱可能に取り付けられる筺体キャップと、前記筺体と前記筺体キャップとの間に挟まれるパッキングを備えた電子体温計であって、前記パッキングは、前記筺体キャップに設けられた溝に挿入され、前記パッキングの平面形状は、前記パッキングが挟まれる前記筺体と前記筺体キャップの部位の外周形状と、自然状態でほぼ同じ形状であり、前記パッキングの断面形状は円形であることを特徴とする。また、前記溝は、その側面と底面とが曲面により繋がっていることを特徴とする。また、前記溝において、前記筐体キャップの前記筐体への挿入方向の前寄りにおける該側面と該底面のなす角度(θ2)は、前記筐体キャップの前記筐体への挿入方向の後ろ寄りにおける該側面と該底面のなす角度(θ1)よりも大きな鈍角としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パッキングによるシールが全周に亙ってほぼ均一で液密性に優れた電子体温計を提供することが可能となる。また、電池交換が可能で、電池交換後も、パッキングによるシールが全周に亙ってほぼ均一で液密性に優れた電子体温計を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(A)従来の電子体温計100を示す図であり、(B)電子体温計100を組み立てる順序を示す斜視図と断面図である。
【図2】第1の実施形態による電子体温計200の、正面全体図(A)及び拡大分解図(B)である。
【図3】(A)第1の実施形態による電子体温計200の筐体キャップ203と、パッキング205とを示す正面図であり、(B)第1の実施形態による電子体温計200の筐体キャップ203と、パッキング205とを下から見上げた際の平面図である。
【図4】第1の実施形態による電子体温計200の筐体キャップ203に設けられた溝205を拡大して示す図である。
【図5】第1実施形態による電子体温計200の筐体キャップ203と筐体204とを組み合わせる工程を示す断面図である。
【図6】筺体キャップ203を筺体204に固定するためのネジ穴を示した図である。
【図7】筺体204、筺体キャップ203のネジ穴とパッキングとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
<1.電子体温計の外観>
図2は、本発明の一実施形態にかかる電子体温計の外観を示す図であり、(A)は電子体温計200の全体を示す正面図であり、(B)は電子体温計200の筐体204及び筐体キャップ203を分解した状態を拡大して示す図である。
【0011】
筐体キャップ203は、耐衝撃性の熱可塑性樹脂、例えばハイインパクト・スチロール樹脂で形成されている。筐体204は、耐衝撃性の熱可塑性樹脂、例えばブチレン、スチレン樹脂で形成されている。筺体キャップ203を筐体204から外すことで、中に挿入された電池の交換や、部品の取り出しなどができるようになる。
【0012】
<2.キャップと筐体の嵌合>
次に、電子体温計200の筐体キャップ203と筐体204との嵌合について説明する。図2(B)は、本実施形態にかかる電子体温計200の、筐体キャップ203と筐体204とを示す正面図である。
【0013】
筐体キャップ203は、筐体204の内部に挿入される挿入部203aと、その挿入方向の先端に弾性のパッキング(O−リング)205を装着する溝203b(不図示)を備えている。パッキング205が装着された状態で挿入部203aが一対の突起部203cの案内で筐体204の内部に挿入されると、パッキング205は挿入部203aと筐体204の内壁との間に挟まれて変形し、挿入部203aと筐体204の内壁との間に存在する隙間を埋めることによって電子体温計200を液密状態に保つ。パッキング205はシリコーンゴムなどの弾性の素材で作られており、その断面は直径1mm程度の円形で、筐体204の内壁による力がかかると簡単に変形し、その表面に密着する。
【0014】
筐体204には、筐体キャップ203の挿入部203aが挿入される挿入口と、その挿入口から筐体の先端部に向って形成された案内部204a及び嵌合部204bとを備える。図2(B)から明らかであるように、案内部204aは、嵌合部204bより広く設計されており、挿入部203a及びパッキング205の外周よりも一回り広くなっている。つまり、挿入部203aは案内部204aでは筐体204に対して嵌合されない。案内部204aは、挿入部203aとパッキング205が筐体204に対して嵌合される嵌合部204bにまで挿入部203aを案内する。その後、案内部204aと嵌合部204bとの間にある段差においてパッキング205の全体が筐体204の内壁に初めて接触することになる。
【0015】
嵌合部204bは、挿入部203aを収容できる最小限の内周長、つまり挿入部203aの外周長とほぼ同じ大きさを持っている。又、図3(C)に示されているように、嵌合部204bはパッキング205の外周長よりは小さくなっているため、挿入部203aが完全に挿入されるとパッキング205を圧縮し、変形させ、挿入部203aと嵌合部204bとの間にあるわずかな隙間を塞いで液密状態に密閉する。この段差においてパッキング205の全体が一斉に圧縮されるため、均一な圧力がパッキング205のほぼ全周にかかり、容易に液密状態が得られるようになる。
【0016】
<3.パッキングの形状と装着>
次に、本実施形態にかかるパッキング205の形状及びその装着について説明する。図3は本実施形態にかかる筐体キャップ203とパッキング205を示す図である。
【0017】
図3に示されているように、パッキング205の断面形状は、挿入部203a及び溝203bの外周の形状と同じである。即ち、パッキング205の外形寸法は、挿入部203aの外周寸法をある比率で縮小させると得られるようなものである。したがって、D1/D1’の比率は、D2/D2’の比率と同じである。そして、パッキング205の4つの辺の屈曲は、挿入部203a及び溝203bの4つの対応する辺の屈曲と夫々同じである。このような形状を持つパッキング205は、溝203bに装着されるとその全域にわたって同じ力がかかり、均等に伸びるようになる。従来の円形パッキングは、パッキング205のように筐体の形状に沿ったものではないため、角のようなところで曲がり、その形状が変わってしまう。そのような個所においてパッキングに係る力は他の個所とは異なり得るため、局所的に薄く、又は厚くなる恐れがある。それに比べ、パッキング205は、自然状態(溝203bに装着前の状態)では溝203bの外周と同じ形状をしているため、形状は変わらず均等に伸びる(拡大する)ことになる。したがって、角においても曲がることなく、全体的に同じ形状及び均等な厚みを保つことが可能となる。
【0018】
次に、挿入部203aに設けられた溝203bの形状及びパッキング205の装着、並びに筐体キャップ203と筐体204との組み立てについて図4及び図5を用いて説明する。図4は挿入部203aに設けられた溝203bを拡大して示す図である。図4に示されているように、溝203bの対面する側壁は、その高さがD3の差分(段差)で異なり、それぞれの傾きであるθ1(筐体キャップ203の筐体204への挿入方向の後ろ寄り)及びθ2(筐体キャップ203の筐体204への挿入方向の前寄り)も異なるように構成されている。
【0019】
パッキング205が挿入される方向における1番目の側壁をより低くし、2番目の壁を高くすることで、パッキング205の挿入が容易になり、パッキング205が2番目の壁を超えてさらに奥に進むことを防ぐ。また、θ2の角度をθ1より大きな鈍角にし、θ1の角度を、より鋭角に近い角度(105度程度)にすることで、筐体キャップ203を筐体204へ組合せる時に、予め溝203bに装着されたパッキング205が挿入方向の反対方向に外れにくくしている。
【0020】
また、溝203bの側壁と底面とは曲線(面取り)a,bで繋ながっており、圧力がかかってつぶれたパッキング205がほぼ隙間なく塞ぐ。これによって液密性の改善がさらに期待できる。
【0021】
図5は、筐体キャップ203と筐体204とを組み合わせる工程を示す図である。筐体キャップ203の突起部203cを筐体204の内部空間に向けて差し込むと(A)、筐体キャップ203の溝203bに装着されたパッキング205は、筐体204の案内部204aと嵌合部204bとの境目で初めて筐体204と接触するようになる(B)。その状態でさらに筐体キャップ203を筐体204に差し込むと、パッキング205は変形し、筐体キャップ203と筐体204との間に存在する隙間を全周に亙ってほぼ完全に塞ぐ。
【0022】
<筺体203キャップを取り付けるための構成>
次に、筺体キャップ203を筺体204に取り付け、ねじ留めするための構成について説明する。図6は、筺体キャップ203を筺体204に取り付け、ねじ留めする際に、筺体204のねじ穴204aに対応する位置に設けられたねじ穴601の構成を説明するための図であり、(A)は筺体キャップ203を裏側から見た場合の平面図を、(B)は筺体キャップ203のA−A断面図をそれぞれ示している。
【0023】
図6(A)に示すように、ねじ穴601は筺体キャップ203の挿入部203aの裏側の面に設けられている。また、ねじ穴601は、挿入部203aが筺体204の内壁面に嵌合した際に、挿入部203aと筺体204の内壁面との間を液密にするためのパッキング205よりも挿入方向上流側に設けられている。
【0024】
また、図6(B)に示すように、ねじ穴601の底面は、挿入部203aの裏側内壁面に設けられたリブ602内に位置している。リブ602により筺体キャップ203は、この部分が他の部分の肉厚より2倍程度厚くなっており、その厚みはねじ穴601の深さより厚い。つまり、ねじ穴601は、挿入部203aを貫通しておらず、有底のねじ穴構造となっている。
【0025】
<ねじ穴601の機能>
次に、筺体キャップ203に設けられたねじ穴601の機能について説明する。図7は、筺体キャップ203のねじ穴601の機能を説明するための図であり、(A−1)は、筺体キャップ203を筺体204に取り付ける前の様子を示しており、(A−2)は、筺体キャップ203を筺体204に取り付けた後の様子を示している。また、(B−1)は、(A−2)におけるA−A断面図であって、筺体204と筺体キャップ203とをねじ止めする前の状態を示しており、(B−2)は、(A−2)におけるA−A断面図であって、筺体204と筺体203とをねじ止めした後の状態を示している。
【0026】
図7(A−1)に示すように、筺体キャップ203の挿入部203aの裏側には、筺体204のねじ穴204aに対応する位置にねじ穴601が設けられているため、筺体キャップ203を筺体204に取り付けた際、図7(A−2)に示すように、ねじ穴204aとねじ穴601とは重なることとなる。
【0027】
また、図7(B−1)に示すように、挿入部203aに設けられたねじ穴601は有底のねじ穴であり、かつ、パッキング205に対して、挿入方向上流側に設けられている。このため、図7(B−2)に示すように、電子体温計200の内部への液体の流入経路としては、流入経路701及び702のみとなる。つまり、ねじ穴601が有底であるため、流入経路703及び704による電子体温計200の内部への液体の流入は回避することができる。
【0028】
また、流入経路701及び702による電子体温計200の内部への流入は、パッキング205により抑えることができる。つまり、挿入部203aにおいて、ねじ穴601よりも挿入方向下流側に設けたパッキング205のみで、電子体温計200の内部への液体の流入を回避すること可能となり、液密性を実現することが可能となる。
【0029】
なお、図7(B−1)、(B−2)に示すねじ700は、磁力に吸着するSUS材により構成されているものとする。また、ねじのピッチ幅を従来のものよりも大きくし、ねじ切れを防止するとともに、ねじ頭を従来のものよりも大きくし、ガタつきを防止したものとなっている。こうして、筺体キャップ203と筺体204とをねじ止めすることで、不用意に、筺体キャップ203が外れることがなく、パッキング205によるシール性と併せて液密性を維持することができる。
【0030】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、電子体温計200の筐体キャップ203と筐体204との間に挟まれるパッキング205の平面形状を、そのパッキング205が装着される挿入部203a及び溝203bの部位の形状と同じ様に構成し、パッキング205の断面形状を円形にした。
【0031】
この結果、液密性に優れた電子体温計を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体温測定を行うための構成部品が収容され、測温部を含む金属キャップが先端部に取り付けられた筺体と、該筺体の尾部に着脱可能に取り付けられる筺体キャップと、前記筺体と前記筺体キャップとの間に挟まれるパッキングを備えた電子体温計であって、
前記パッキングは、前記筺体キャップに設けられた溝に挿入され、
前記パッキングの平面形状は、前記パッキングが挟まれる前記筺体と前記筺体キャップの部位の外周形状とほぼ同じ形状であり、前記パッキングの断面形状は円形であることを特徴とする電子体温計。
【請求項2】
前記溝は、その側面と底面とが曲面により繋がっていることを特徴とする、請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記溝において、前記筐体キャップの前記筐体への挿入方向の前寄りにおける該側面と該底面のなす角度(θ2)は、前記筐体キャップの前記筐体への挿入方向の後ろ寄りにおける該側面と該底面のなす角度(θ1)よりも大きな鈍角としたことを特徴とする請求項2に記載の電子体温計。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−191072(P2011−191072A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55108(P2010−55108)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)