説明

電子保存システム

【課題】改竄が困難で且つ伝票1枚あたりの保存データ量が少ない電子保存システムの提供を目的とする。
【解決手段】手書き記入領域を有した伝票における手書き記入領域の画像を読み取るイメージリーダと、手書き記入領域に記入された情報によって特定される取引のためのデータ処理を行うとともに、当該取引に固有の暗証コードを生成するデータ処理装置と、イメージリーダが読み取った画像情報と取引の内容を示す文字情報とを、暗証コードをアクセスキーとする形式で記憶する第1のデータサーバと、暗証コードを含むデータ処理のジャーナルをそれの参照にアクセスキーが必要な形式で記憶する第2のデータサーバとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の取引に用いられる伝票の記入情報をデータ化して保存するための電子保存システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関(例えば銀行)の窓口での取引には必ず伝票が用いられる。この伝票には顧客が取引金額や口座番号などの所定項目の情報を記入する。金融機関には取引日から一定年数が経過するまで伝票を保存する義務が課せられている。伝票そのもの(紙)の保存には相応の場所が必要である。
【0003】
近年、各種書類の電子保存を認める法律が制定されたこともあって、伝票についても電子保存に移行する気運が高まっている。電子保存は紙面の情報を見えるとおりに画像データに変換してデータ記録媒体に記録する保存形態である。電子保存の最大の利点は保管スペースを縮小できることである。
【0004】
しかし、電子保存では、画像情報を保存するので、伝票に記入される文字情報を保存する場合と比べると、伝票1枚当たりのデータ量が大幅に多い。データ記録装置の必要メモリ容量を低減する上でも、データを転送する場合のネットワーク負荷を軽減する上でも、伝票1枚当たりのデータ量の少ないのが望ましい。
【0005】
転送データ量の低減に関する先行技術文献として特開昭62−2355号公報がある。同公報に記載されている銀行用イメージデータ処理装置は、窓口の端末装置から取引を承認する役席者が操作する端末装置へ伝票画像を伝送する際に、伝票全体の画像ではなく記入領域の画像のみを伝送し、伝送先の端末装置で伝票の様式と伝送された画像とを合成して伝票画像を表示する。
【特許文献1】特開昭62−2355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
伝票の電子保存では保存データの改竄の防止が強く求められる。単にデータ記録装置にアクセス制限を付すというだけでは不十分である。例えば、データ記録装置に対して保存データの参照を許可するパスワードを設定した場合、1つのパスワードが漏洩すれば、多数枚の伝票の情報が参照可能になってしまう。改竄抑制の観点では、多数枚の伝票のそれぞれに固有のパスワードを設定するのが望ましい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、改竄が困難で且つ伝票1枚あたりの保存データ量が少ない電子保存システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する電子保存システムは、手書き記入領域を有した伝票における前記手書き記入領域の画像を読み取るイメージリーダと、前記手書き記入領域に記入された情報によって特定される取引のためのデータ処理を行うとともに、当該取引に固有の暗証コードを生成するデータ処理装置と、前記イメージリーダが読み取った画像情報と前記取引の内容を示す文字情報とを、前記暗証コードをアクセスキーとする形式で記憶する第1のデータサーバと、前記暗証コードを含む前記データ処理のジャーナルをそれの参照にアクセスキーが必要な形式で記憶する第2のデータサーバとを備える。
【0009】
手書き記入領域とは、伝票紙面の一部分であって、取引に先立って取引を特定する情報が記入される領域である。手書き記入領域は押印のための領域を含む。手書き記入領域への記入は、手書きに限らず、プリンタ・タイプライタ・チェックライタなどによる印字、ゴム印その他のスタンプの押印などであってもよい。
【0010】
上記電子保存システムでは、保存する画像情報を手書き記入領域の情報に限定するので、伝票全体の画像を保存するものと比べて保存データ量が少ない。
【0011】
複数の伝票の情報を保存するとき、伝票ごとに保存情報に対するアクセスを制限するので、複数枚の伝票に対応する一群の保存情報に対して一括にアクセス制限をするものと比べて、改竄が困難である。
【0012】
保存情報にアクセスするための暗証コードを取引のためのデータ処理のジャーナルに組み入れることによって、保存情報と暗証コードとの対応づけがなされる。そして、ジャーナルに対してアクセス制限を付すことによって、改竄がより難しくなる。
【0013】
保存情報の検索は、暗証コードを検索キーとすることによって容易になる。
【0014】
より好ましい電子保存システムは、前記伝票の様式を示す様式ファイルと、前記第1データサーバと前記様式データファイルとを参照して、前記画像情報および前記文字情報を記入した状態の伝票紙面を表す伝票画像を出力する伝票出力装置とを備える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1ないし請求項3の発明によれば、改竄が困難で且つ伝票1枚あたりの保存データ量が少ない電子保存システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ここでは銀行の窓口での取引に係る伝票記入情報の保存を例に挙げる。ただし、本発明に係る取引は窓口での取引に限らない。官公庁での各種証明書の発行も取引に含まれる。
【0017】
図1は電子保存システムの構成を示す。
【0018】
電子保存システム1は、窓口に設置される端末装置10、端末装置10に組み付けられたイメージリーダ20、データサーバとして機能するストレージ30、および保存された伝票記入情報の閲覧を可能にする伝票復元装置40を備える。これらの構成要素は所定のデータ転送が可能なようにネットワーク接続されている。
【0019】
端末装置10は、キーボード、ディスプレイ、および通帳記入が可能なプリンタを含むデータ処理装置であり、汎用のコンピュータと同様に自己の動作履歴を残すログ機能を備える。端末装置10は、入出金および振込みを主とする窓口での取引に用いられる。
【0020】
イメージリーダ20は、あらかじめ様式が決められた伝票5を走査し、伝票5の画像をデータ化する。図示の伝票5の様式は、電子保存を行わずに紙のままで保存する場合にも適用可能な様式であり、顧客が記入する手書き記入領域51とともに、銀行が記入すべき事項をプリンタが印字する下り電文印字領域52を有したものである。ただし、イメージリーダ20によってデータ化されるのは手書き記入領域51の画像のみである。なお、イメージリーダ20は大判サイズの書面を読み取るためのオーバヘッド型撮像部を備えている。
【0021】
ストレージ30は、1台または複数台のメモリ装置からなるデータ蓄積手段である。ストレージ30は、伝票記入情報を記憶する伝票サーバ31、および端末装置10の動作の履歴情報であるジャーナルを記憶するジャーナルサーバ32として機能する。伝票サーバ31およびジャーナルサーバ32は、例えば端末装置10が設置された営業店の中に設置される。複数の営業店から情報を収集する事務センタに設置してもよい。必ずしも伝票サーバ31とジャーナルサーバ32とを同じ場所に設置する必要はない。
【0022】
伝票復元装置40は、キーボードおよびディスプレイを含むマンマシンインタフェースを備えたデータ処理装置であり、伝票復元機能を有している。伝票復元機能とは、伝票サーバ31が記憶する伝票記入情報とあらかじめ様式ライブラリ60に納められている所定の様式データとを取得し、これらを合成した伝票画像5Gを表示する機能である。様式ライブラリ60を伝票復元装置40が記憶してもよいし、ストレージ30または他の機器が記憶してもよい。このような伝票復元装置40は、例えば端末装置10が設置された営業店の中に設置される。この場合、伝票復元機能を実現するプログラムを端末装置10に組み入れることによって、端末装置10が伝票復元装置40を兼ねるシステム構成とすることもできる。
【0023】
以下、取引の手順と合わせて、電子保存システム1の動作をさらに詳しく説明する。
【0024】
顧客は窓口担当者である端末装置10のオペレータに伝票5を渡す。これによって取引が始まる。伝票5を受け取ったオペレータは、所定事項の記入漏れのないことを確認した後、伝票5をイメージリーダ20に読み取らせる。伝票5はイメージリーダ20の内部に取り込まれ、それによって顧客の個人情報の漏洩が防止される。イメージリーダ20は伝票5を走査し、手書き記入領域51の画像データ(イメージ)を端末装置10に送る。画像データは端末装置10で一時的に記憶され、その時点またはその後に伝票5はイメージリーダ20が内蔵するシュレッダによって自動的に廃棄される。
【0025】
端末装置10は、画像データに対して光学文字認識を行い、認識結果と元の画像(手書き記入領域51のイメージ)とを表示する。オペレータは認識結果を確認し、認識された情報以外であってデータ処理に必要な情報をキー入力する。
【0026】
続いて、オペレータが送信指示操作を行うと、端末装置10は専用回線網70を介して接続されたホスト8に取引処理依頼文82を送る。これを受けて、ホスト8は顧客マスタ72を参照するとともに取引に応じたデータ更新を行う。そして、ホスト8は、ホスト8での処理の詳細および認証を示す下り電文82を端末装置19に送る。
【0027】
端末装置10は、下り電文82に基づいて図示しない取引明細書をプリントアウトする。オペレータは取引明細書を顧客に手渡す。これによって取引が終わる。
【0028】
取引が終わるごとに、端末装置10は伝票の電子保存のための動作を行う。すなわち、端末装置10は、下り電文82で特定される取引に固有の暗証コード91を含んだジャーナル90を記憶するとともに、イメージリーダ20が読み取った画像情報51Gと下り電文82が示す文字情報とを対応づけた伝票記入情報50を記憶する。
【0029】
暗証コード91は端末装置10において生成される。ただし、その生成の形態は、端末装置10が独自に生成するものでもよいし、ホスト8が生成したコードをそのまま流用しまたは変更するものでもよい。
【0030】
伝票記入情報50は、暗証コードをアクセスキーとする形式のデータファイルである。すなわち、伝票記入情報50を閲覧が可能な状態にするには(ファイルを開くには)、暗証コードを入力しなければならない。
【0031】
ジャーナル90および伝票記入情報50は、生成後に直ちにまたはバッチ処理を実行するときに、端末装置10からストレージ30に転送される。ジャーナル90はジャーナルサーバ32によって保存され、伝票記入情報50は伝票サーバ31によって保存される。
転送が完了した時点で端末装置10において転送済みデータを消去するのが、情報の漏洩を防ぐ上で望ましい。
【0032】
ここで、ジャーナルサーバ32にはアクセスに暗証コード320の入力を必要とするアクセス制限がかけられている。したがって、例えば上位役席者が暗証コード320を管理するようにシステム運用を取り決めた場合、他の者は上位役席者から暗証コード320を入手しなければジャーナル90を閲覧することができない。ジャーナル90を閲覧しなければ、伝票記入情報50を閲覧することもできない。暗証コード320を分割して複数の上位役席者がそれぞれ暗証コード320の一部を管理すれば、改竄がより難しくなる。
【0033】
このようにして取引が行われるごとに各取引に用いられた伝票に対応する伝票記入情報50が改竄な困難な状態で保存される。保存は少なくとも保存が義務づけられている期間(現状では10年間)にわたる。
【0034】
電子保存システム1においては、伝票サーバ31で蓄積された情報の中の任意の伝票記入情報50を伝票復元装置40によって閲覧することができる。ただし、上述したとおり閲覧者は暗証コード320を知り得た者に限られる。伝票復元装置40は閲覧者が入力した暗証コード320をジャーナルサーバ32に伝え、アクセス制限を解除する。閲覧者は、取引を特定する情報(顧客番号、口座番号、取引種別、日付など)をキーとしてジャーナルサーバ32の蓄積情報を検索し、所望の伝票に対応する暗証コード91を調べる。閲覧者が暗証コード91を入力すると、伝票復元装置40は伝票サーバ31から該当する伝票記入情報50を取り込む。これは、例えば暗証コード91を検索キーとするデータベースを伝票サーバ31に構築しておけば容易である。
【0035】
伝票復元装置40は取り込んだ伝票記入情報50に対するアクセス制限を暗証コード91によって解除し、伝票記入情報50の内容を取得する。そして、上述のとおり、様式ライブラリ60を参照し、伝票5の様式と伝票記入情報50(手書き記入領域のイメージと下り電文)とを合成することによって、伝票記入情報50を記入した状態の伝票紙面を表す伝票画像5Gを表示する。伝票画像5Gをプリントアウトしてもよい。
【0036】
以上の実施形態によれば、伝票5に対して光学文字認識(OCR)を行うので、顧客が記入した事項をオペレータがキー入力する手間が省かれる。これに加えて、下り電文82を印字した最終状態の伝票5をデータ化する一般的な電子保存とは違って、最終状態の伝票5をイメージリーダ20に読み取らせる必要がないので、オペレータの作業を簡素化することができる。
【0037】
伝票5がイメージリーダ20に取り込まれて廃棄されるので、顧客の個人情報の漏洩が防止される。このイメージリーダ20の機能は、処理の所要時間の長い取引において特に有用である。応用として、例えばローンの申し込みのように処理の完了までに数日を要する場合にも、申し込み伝票をイメージリーダ20に取り込ませることが考えられる。この場合、申し込み伝票から読み取った画像を一時的に記憶しておくとともに、処理が未完であることを示すフラグを設ければ、中断した処理を容易に再開することができる。
【0038】
以上の実施形態において、電子保存システム1のネットワーク構成、各部の機器構成、動作手順などは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。
【0039】
伝票5の様式は下り電文印字領域52を省略したものであってもよい。下り電文印字領域52を省略すれば、伝票5のサイズを縮小し、それによって用品費用を削減することができる。または、下り電文印字領域52を省略した分だけ手書き記入領域51を拡げ、高齢者や障害者にも書き易い様式にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、データ処理を伴う各種取引に用いる伝票の電子保存の実用性を高めることができるので、金融機関、官公庁、一般企業、商店などにおける伝票処理業務の改善に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】電子保存システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 電子保存システム
50 伝票記入情報
51 手書き記入領域
5 伝票
20 イメージリーダ
10 端末装置(データ処理装置)
91 暗証コード
51G 画像情報
82 下り電文(文字情報)
31 伝票サーバ(第1のデータサーバ)
90 ジャーナル
320 暗証コード(アクセスキー)
32 ジャーナルサーバ(第2のデータサーバ)
60 様式ライブラリ(様式ファイル)
50 伝票復元装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝票記入情報を記憶する電子保存システムであって、
手書き記入領域を有した伝票における前記手書き記入領域の画像を読み取るイメージリーダと、
前記手書き記入領域に記入された情報によって特定される取引のためのデータ処理を行うとともに、当該取引に固有の暗証コードを生成するデータ処理装置と、
前記イメージリーダが読み取った画像情報と前記取引の内容を示す文字情報とを、前記暗証コードをアクセスキーとする形式で記憶する第1のデータサーバと、
前記暗証コードを含む前記データ処理のジャーナルをそれの参照にアクセスキーが必要な形式で記憶する第2のデータサーバとを備える
ことを特徴とする電子保存システム。
【請求項2】
前記イメージリーダは、前記伝票における前記手書き記入領域の画像を選択的に読み取る
請求項1に記載の電子保存システム。
【請求項3】
前記第1のデータサーバにおいて、前記画像情報および前記文字情報が前記暗証コードをキーとして検索が可能なように記憶されている
請求項1または請求項2に記載の電子保存システム。
【請求項4】
前記伝票の様式を示す様式ファイルと、
前記第1データサーバと前記様式データファイルとを参照して、前記画像情報および前記文字情報を記入した状態の伝票紙面を表す伝票画像を出力する伝票復元装置とを備え、
前記伝票復元装置は、前記第2のデータサーバにアクセスして前記暗証コードを取得し、前記暗証コードを用いて前記第1のデータサーバから前記画像情報および前記文字情報を取得し、前記様式ファイルを参照し、前記様式と前記画像情報と前記文字情報とを合成することによって前記伝票画像を生成する
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子保存システム。


【図1】
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【公開番号】特開2007−265297(P2007−265297A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92548(P2006−92548)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】