説明

電子写真感光体、これを用いた画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】繰り返し使用しても地汚れ等の発生がなく安定に画像を形成可能な電子写真感光体とこれを用いた画像形成装置、及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】導電性支持体(31)上に、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°,13.2°,13.2°,15.1°,15.6°,16.1°,20.7°,23.2°,27.1°,28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含む感光層(33)と、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層(34)を順次設けて電子写真感光体とする。これを用いて画像形成装置、及び画像形成装置用プロセスカートリッジを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真技術に関し、詳しくは、特定の結晶構造を持つチタニルフタロシアニン結晶を含む感光層と、特定構造の樹脂硬化物からなる保護層を順次備え、繰り返し使用においても摩耗や静電特性などが極めて少なく、安定した高画質の画像形成(例えば、高速、フルカラー印刷等)が可能な電子写真感光体と、該電子写真感光体を用いた画像形成装置、及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
なお、電子写真感光体に関して、以下、「静電潜像担持体」、「感光体」、「光導電性絶縁体」と称することがある。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行う光プリンターは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術はプリンターのみならず通常の複写機にも応用され所謂デジタル複写機が開発されている。また、従来からあるアナログ複写にこのデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるために今後その需要性が益々高まっていくと予想される。更に、パーソナルコンピュータの普及、及び性能の向上にともない、画像及びドキュメントのカラー出力を行うためのデジタルカラープリンターの進歩も急激に進んでいる。
【0003】
このようなデジタル方式の画像形成装置は、年々その機能を向上させ、高耐久・高安定は勿論のこと、更にその高画質化が同時に求められている。高速カラー化のためには、1本の感光体に対して帯電、露光、現像、クリーニング、除電などの画像形成に必要な部材を1つずつ取り付けた画像形成要素を複数用いたタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましく、現在の主流となっている。タンデム方式のカラー画像形成装置では、通常イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の画像形成要素を搭載し、各々のトナー像を4つの画像形成要素で並列に作成し、転写体(転写紙)もしくは中間転写体上で重なり合わせることで、高速にカラー画像を作成する。
【0004】
このため、感光体及びその周りの部材をコンパクトにしないと画像形成装置が非常に大きなものになってしまうため、画像形成要素の中心に配置される感光体を小径化することがまずは必須の要請事項であるが、感光体を小径化することにより、画像形成装置がコンパクトになったとしても、大口径の場合よりも極端にその寿命が短くなる場合には、小径化したメリットが存在しない。このため、小径化と共に、従来の感光体よりも感光体の寿命を延ばす(長寿命化する)ことがこの技術の課題となる。
【0005】
感光体の寿命には2つの律速課程が存在し、1つは静電疲労であり、いま1つは表面層の摩耗である。いずれも現在の主流である有機系感光体にとっては大きな課題である。
前者(静電疲労)は、帯電・露光などの画像形成プロセスの繰り返しによる感光体の表面電位(帯電電位と露光部電位)の変化であり、概ね有機系材料を用いた場合には帯電電位の低下、もしくは露光部電位の上昇(残留電位と呼ぶ場合がある)が問題となる。
後者(表面層の摩耗)は、感光体を構成する最表面に位置する層がクリーニング部材などの摺察により機械的に摩耗を生ずる現象である。この摩耗により感光体表面層の膜厚が減少すると、表面に生じる傷、感光層膜厚減少による電界強度の上昇、静電疲労の促進などを生じることになり、感光体の寿命を著しく低減する要因となる。従って、感光体の寿命を向上するためには、上記2つの課題を同時に解消しなくてはならない。
【0006】
また、現在では電子写真方式の画像形成装置も高速化の実現により、印刷分野に進出しつつあり、高画質化及び高安定化が求められている。前者(高画質化)に関しては画像書き込みにおける解像度として600dpiが最低品質の状況になり、解像度が非常に向上してきた。後者(高安定化)においては原稿情報を直接印字できるという電子写真の特長を生かして、多量印刷が得意な分野の出力原稿の一部に、多様でしかも1枚ずつ異なる情報も追加できるようになってきた。すなわち、同じ原稿を非常に大量に処理すると同時に、1枚1枚わずかに異なる情報をも入力するという多種多様の書き込み、現像が行われることになり、システムとしての安定性が非常に求められるようになった。これらに対しては、画像形成要素の繰り返し使用における安定性は当然求められることとして、更に異常画像が発生しないということも極めて重要なことである。
【0007】
このような画像形成装置の寿命及び安定性は、画像形成において中心となるものであり、画像形成動作中にその他の部材と常に関連動作を行う感光体が最も重要な鍵を握ることになる。これまでの感光体のあらゆる精力的な開発によって、感光体の静電特性及び表面の摩耗に関しては、幾つかの技術が完成されつつある。
例えば、静電特性の改良に関しては、光キャリア発生効率の大きな電荷発生物質の開発及び移動度の大きな電荷輸送物質の開発が挙げられる。これらを組み合わせることによって、光減衰における大きなゲインとレスポンスを得ることができ、システム全体として、帯電電位の低減化、書き込み光量の低減化、現像バイアスの低減化、転写バイアスの低減化、除電プロセスの不要性などを生み出し、システム設計に余裕度を生み出すことになる。これらは全て感光体に付加されるハザードの低減化につながり、感光体自身にも余裕度が生まれることになる。
【0008】
しかしながら、上述のようにアナログ方式の画像形成装置や、モノクロ方式の画像形成装置での感光体の使用方法が、高速フルカラー機の出現によって一変し、多種多様な光書き込みなどの使われ方がなされるようになった。このような場合、異常画像の発生の原因は感光体であることが最も大きな問題となる。
異常画像の発生は様々なケースがあるが、大きく2つに大別できる。1つは感光体表面に発生する傷などに起因した異常画像であり、いま1つは感光体の静電疲労により発生する異常画像である。前者に関しては、感光体表面層の改良(例えば保護層の使用)や感光体当接部材の改良によりかなりの場合対応が可能である。後者に関しては、感光体そのものの劣化に起因するものであるが、現在最も大きな課題となっているものは反転現像(ネガ・ポジ現像)における地汚れである。
【0009】
上記地汚れの発生原因としては、導電性支持体の汚れや欠陥、感光層の電気的な絶縁破壊、支持体からのキャリア(電荷)注入、感光体の暗減衰増大、感光層における熱キャリア生成などが挙げられる。このうち、支持体の汚れや欠陥に関しては、感光層を塗布する前にそのような支持体を排除することで対応が可能であり、ある意味においてはエラーによって生じるものであり、発生原因の本質ではない。従って、感光体の耐電圧性、支持体からの電荷注入性、静電的疲労の低下を改良することが、この問題の根本的な解決方法であると考えられる。
【0010】
感光層の静電的疲労に対応する手法としては、例えば、特許文献1〜特許文献5等に記載されているチタニルフタロシアニン(TiOPcと略記される)を用いることが挙げられる。TiOPcは、600〜800nmの長波長光に対して高感度を示すため、光源がLEDやLDである電子写真プリンターやデジタル複写機用の感光体用材料として極めて重要かつ有用である。
しかしながら、これらの技術を用いても、長期間の繰り返し使用に対しては、十分なものではなかった。
【0011】
地汚れの本質を考えると、支持体からの電荷注入性を抑制することが根本的な解決方法であるが、電荷注入性は感光体に印加される電界強度に依存し、電界強度が大きいほど、電荷注入量が大きくなる。通常の電子写真プロセスでは、感光体に印加される表面電位は一定の表面電位が与えられる。従って、感光体の繰り返し使用後では、初期状態よりも表面層の摩耗が生じて、全体の膜厚が薄くなっている。このため、感光体は繰り返し使用されるほど、印加される電界強度が大きくなり、電荷注入量が大きくなってしまう。前述のように、繰り返し使用における静電疲労もこの電荷注入を促進させるため、摩耗と静電疲労により地汚れの発生は加速度的に大きくなる。
【0012】
この様な観点から、感光体の表面に表面保護層を設ける試みがなされてきた。これにより、感光体表面の摩耗速度を低減し、電界強度上昇速度も抑制できる。感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(i)架橋型電荷輸送層に硬化性バインダーを用いたもの(例えば、特許文献6参照)、(ii)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(例えば、特許文献7参照)、(iii)架橋型電荷輸送層に無機フィラーを分散させたもの(例えば、特許文献8参照)等が挙げられる。更に、(i)の耐摩耗性と耐傷性を改良するために多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させた感光体も知られている(例えば、特許文献9参照)。
また、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送材及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けることが知られている(例えば、特許文献10参照)。更に、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する感光層も知られている(例えば、特許文献11参照)。
【0013】
上記のような表面保護層の技術から、感光体の繰り返し使用における耐摩耗性が向上し、電界強度の上昇割合が小さくなり、電荷リーク現象に基づく画像欠陥の発生は確かに緩和されるようになった。
しかしながら、保護層固有の問題も新たに発生した。例えば、摩耗量が小さくなったため、感光体の繰り返し使用時に表面に堆積する物質が増加し、その結果、画像ボケ等の異常画像が発生するようになった。この点に関しては、保護層の改良や感光体の使用方法、例えば、ドラムヒーターの採用等により解決される。
【0014】
このような更なる表面保護層の改良、感光体の使いこなし技術の開発により、感光体の耐摩耗性は更に向上し、感光体の寿命は明らかに延びた。この結果、保護層を用いない状況下では考えられないような長い期間に亘って感光体が使用されるようになり、感光体摩耗・電荷リークに基づく画像欠陥等の範疇では予測の付かなかった、所謂、感光体の静電疲労が律速となる寿命を迎えるようになってきた。
上記状況から、繰り返し使用、特に、反転現像(ネガ・ポジ現像)しても地汚れなどの異常画像を発生することがない耐摩耗性と静電特性が優れた感光体及びそれを用いた画像形成装置が望まれていた。
【0015】
【特許文献1】特公平3−27897号公報
【特許文献2】特公平5−31137号公報
【特許文献3】特公平3−5745号公報
【特許文献4】特開平1−204969号公報
【特許文献5】特許第2821765号公
【特許文献6】特開昭56−48637号公報
【特許文献7】特開昭64−1728号公報
【特許文献8】特開平4−281461号公報
【特許文献9】特許第3262488号公報
【特許文献10】特許第3194392号公報
【特許文献11】特開2000−66425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、繰り返し使用しても安定な画像を形成することのできる電子写真感光体を提供することにある。具体的には、繰り返し使用における地汚れ発生の低減、残留電位の防止、接触帯電部材あるいは近接配置した帯電部材による帯電に際して絶縁破壊発生を低減することを可能にした高耐久で静電特性の安定した電子写真感光体を提供することにある。
また、上記感光体を用いることにより、繰り返し画像形成(出力)を行っても異常画像発生の少ない画像形成装置を提供することにある。具体的には、反転現像(ネガ・ポジ現像)での使用時における最大の課題である地汚れや濃度低下などを解決した高耐久で、安定動作が可能な画像形成装置を提供することにある。
更には、上記感光体を用い、高耐久で取扱いが良好な画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
有機顔料を電荷発生物質として用いた電子写真感光体においては、その静電特性が電荷発生物質によって左右されると言っても過言ではない。特に、本発明で使用するチタニルフタロシアニン結晶のような結晶多型である材料においては、その結晶型により特性が大きく異なる。
そこで本発明者らは、特定結晶型のチタニルフタロシアニン結晶を用いることにより良好な静電特性を確保し、この技術を基盤に本発明を達成するための検討を加えた。すなわち、本発明者らは、ネガ・ポジ現像を用いた画像形成装置用感光体において、高耐久でかつ高信頼性である感光体技術に関して鋭意検討を行い、以下の〔1〕〜〔17〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0018】
〔1〕:上記課題は、導電性支持体上に、少なくとも感光層及び保護層を順に積層してなる電子写真感光体において、
前記感光層が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含み、かつ前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなることを特徴とする電子写真感光体により解決される。
【0019】
〔2〕:上記〔1〕に記載の電子写真感光体において、前記感光層が、電荷発生層と電荷輸送層からなる積層構成であることを特徴とする。
【0020】
積層構成とすることにより、感光体の機能向上が図れる。また、感光体設計、材料選定に対する余裕度が大きくなる。
【0021】
〔3〕:上記〔1〕又は〔2〕に記載の電子写真感光体において、前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物が、下記一般式(1)又は(2)で表される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする。
【0022】
【化1】

【0023】
[一般式(1)、(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。m、nは0〜3の整数を表す。]
【0024】
〔4〕:上記〔3〕に記載の電子写真感光体において、前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)で表される少なくとも一種の化合物あることを特徴とする。
【0025】
【化2】

【0026】
[一般式(3)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、下記式(4)、(5)、(6)で表される2価基を表す。]
【化3】

【0027】
上記〔3〕、〔4〕によれば、耐摩耗性と電気特性がバランス良く両立し、長期の繰り返し使用においても感度低下や残留電位上昇などがなく、電気特性が良好に持続する。
【0028】
〔5〕:上記請求項1乃至4の何れかに記載の電子写真感光体において、前記樹脂硬化物からなる保護層が、加熱手段又は光エネルギー照射手段の少なくとも何れかにより硬化、形成されたことを特徴とする。
【0029】
上記加熱又は光エネルギーの照射によれば、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物が容易に架橋結合して硬化樹脂となり、高速、繰り返し使用においても高耐久性を保持すると共に、高画質が得られる表面層が形成される。
【0030】
〔6〕:上記〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載の電子写真感光体において、前記感光層に含まれるチタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得られたものであることを特徴とする。
【0031】
〔7〕:上記〔6〕に記載の電子写真感光体において、前記結晶変換処理が、有機溶媒を用いて結晶変換を行うものであることを特徴とする。
【0032】
〔8〕:上記〔7〕に記載の電子写真感光体において、前記結晶変換処理に使用する有機溶媒が、ケトン系溶媒又はエーテル系溶媒の中から選ばれる少なくとも一種の溶媒を含むことを特徴とする。
【0033】
〔9〕:上記〔6〕乃至〔8〕の何れかに記載の電子写真感光体において、前記結晶変換処理に際して、機械的なエネルギーが付与されることを特徴とする。
【0034】
〔6〕乃至〔8〕により上記チタニルフタロシアニン結晶(前駆体)を結晶変換処理すれば、確実かつ簡便に本発明で用いる〔1〕に記載の特定の結晶構造を有するチタニルフタロシアニン結晶が得られ、更に有機溶媒の使用と併せて機械的なエネルギーを付与すれば所望とする結晶型への結晶転移を加速することができ結晶変換処理が効率的に施せる。
【0035】
〔10〕:上記〔6〕乃至〔9〕の何れかに記載の電子写真感光体において、前記CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶が、
CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有する不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で有機溶媒により結晶変換して得られたものであることを特徴とする。
【0036】
〔11〕:上記〔10〕に記載の電子写真感光体において、前記不定形チタニルフタロシアニンの7.0〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上であることを特徴とする。
【0037】
〔12〕:上記〔10〕又は〔11〕に記載の電子写真感光体において、前記不定形チタニルフタロシアニンの結晶変換に用いられる有機溶媒が、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる少なくとも一種の溶媒を含むことを特徴とする。
【0038】
〔10〕乃至〔11〕により上記不定形チタニルフタロシアニンを結晶変換すれば、確実かつ容易にチタニルフタロシアニン結晶(前駆体)が得られ、上記溶媒を含むことによって効果的に結晶変換処理が施せる。
【0039】
〔13〕:上記〔10〕乃至〔12〕の何れかに記載の電子写真感光体において、前記不定形チタニルフタロシアニンが、ハロゲン化チタンを用いずに合成されたものであることを特徴とする。
【0040】
ハロゲン化チタンを用いずに不定形チタニルフタロシアニンを合成すれば、生成物中に不純物(ハロゲン化置換されたチタニルフタロシアニン)が残存せず、これを順次結晶変換して〔1〕に記載の特定の結晶構造を有するチタニルフタロシアニン結晶とすれば、帯電性能や光感度を悪化することがなく、長期使用において静電特性が良好に保持されて異常画像などの発生を起生することがない。
【0041】
〔14〕:上記課題は、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が〔1〕乃至〔13〕の何れかに記載の感光体であることを特徴とする画像形成装置により解決される。
【0042】
〔15〕:上記課題は、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体からなる画像形成要素が複数配列されてなる画像形成装置において、該電子写真感光体が〔1〕乃至〔13〕の何れかに記載の感光体であることを特徴とする画像形成装置により解決される。
【0043】
〔16〕:上記課題は、〔1〕乃至〔13〕の何れかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする画像形成装置により解決される。
【0044】
〔17〕:上記課題は、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段から選ばれる1つの手段と、電子写真感光体とが一体となった画像形成装置用プロセスカートリッジにおいて、該電子写真感光体が〔1〕乃至〔13〕の何れかに記載の感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジにより解決される。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、特定結晶構造のチタニルフタロシアニン結晶を感光層に含むことによって、長期間の使用、例えば、反転現像(ネガ・ポジ現像)においても高感度で静電特性が良好に維持され、更に少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層を備えることによってクラックや膜剥がれが発生せず、非常に高い耐摩耗性が達成されると共に、耐摩耗性と電気特性が両立し、長期の繰り返し使用においても感度低下や残留電位上昇などがなく、地汚れなどの発生のない高耐久で安定した電子写真感光体が提供される。
すなわち、本発明の電子写真感光体によれば、繰り返し使用における地汚れ発生の低減、残留電位の防止、接触帯電部材あるいは近接配置した帯電部材による帯電に際して絶縁破壊発生を低減することが可能で静電特性と高耐久性が発揮され安定な画像を形成することができる。
本発明の画像形成装置によれば、反転現像(ネガ・ポジ現像)により繰り返し画像形成(出力)を行っても地汚れや濃度低下など異常画像発生がなく、高耐久かつ信頼性のある動作によっていつでも高画質画像を安定に出力可能である。特に、本発明のタンデム方式の画像形成装置によれば、フルカラーで高精細の画像が出力でき、感光体の経時変化(劣化)が少ないため、繰り返し使用しても安定した画像を形成することができる。
本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジによれば、高耐久かつ高安定な画像出力が可能で、しかも取扱いが良好でありメンテナンス性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
前述のように本発明における電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層及び保護層を順に積層してなる電子写真感光体において、
前記感光層が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含み、かつ前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなることを特徴とするものである。
先ず、本発明の電子写真感光体について説明する。
【0047】
本発明において感光層に含まれるチタニルフタロシアニン結晶は、特徴的な方法で合成することができる。すなわち、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶(前駆体)を原料に用い、これを結晶転移させること(結晶変換処理)で得られるものである。
以下に、前駆体としての特定結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶の合成法を述べ、次いで、これを本発明の結晶型に転移させる方法について順に述べる。
【0048】
[1]前駆体(27.2゜に最大回折ピークを有する前記チタニルフタロシアニン結晶)の合成方法:
前記チタニルフタロシアニン結晶の合成方法としては、例えば、特開平6−293769号公報に記載されているようなハロゲン化チタンを原料に用いない方法が良好に用いられる。すなわち、この合成方法の最大の利点(メリット)は、合成されたチタニルフタロシアニン結晶がハロゲン化フリーであることである。チタニルフタロシアニン結晶中に、不純物であるハロゲン化チタニルフタロシアニン結晶を含むと、これを用いた感光体の静電特性において光感度の低下や帯電性の低下などの悪影響を及ぼす場合が多い(Japan Hardcopy ’89論文集 p.103 1989年参照)。
本発明においても、限定されるものではないが特開2001−19871号公報に記載されているようなハロゲン化フリーのチタニルフタロシアニン結晶を主な対象として捉えており、これらの材料が有効に使用される。つまり、前記ハロゲン化フリーのチタニルフタロシアニンを合成するためには、チタニルフタロシアニン合成の際の原材料に、ハロゲン化された材料を使用しないことである。具体的には、以下の方法が用いられる。
【0049】
ここで、まず、前記特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶の合成方法について述べる。
〔チタニルフタロシアニン結晶の合成粗品の合成法〕
初めにチタニルフタロシアニン結晶の合成粗品の合成法について述べる。
フタロシアニン類の合成方法は古くから知られており、例えば、特開平6−293769号公報、Moser等による「Phthalocyanine Compounds」(1963年)、「The Phthalocyanines」(1983年)、等に記載されている。以下に、その例を挙げる。
第1の方法は、無水フタル酸類、金属あるいはハロゲン化金属及び尿素の混合物を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒が併用される。
第2の方法は、フタロニトリル類とハロゲン化金属を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この方法は、第1の方法で製造できないフタロシアニン類、例えば、アルミニウムフタロシアニン類、インジウムフタロシアニン類、オキソバナジウムフタロシアニン類、オキソチタニウムフタロシアニン類、ジルコニウムフタロシアニン類等に用いられる。
第3の方法は、無水フタル酸あるいはフタロニトリル類とアンモニアとを先ず反応させて、例えば1,3−ジイミノイソインドリン類等の中間体を製造し、次いでハロゲン化金属と高沸点溶媒中で反応させる方法である。
第4の方法は、尿素等存在下で、フタロニトリル類と金属アルコキシドを反応させる方法である。
上記方法の中でも、第4の方法はベンゼン環への塩素化(ハロゲン化)が起こらず、電子写真用材料の合成法としては、極めて有用な方法であり、本発明においては極めて有効に使用される。
【0050】
〔不定形チタニルフタロシアニンの調製法〕
次に、不定形チタニルフタロシアニン(以降、低結晶性チタニルフタロシアニンと称することがある。)の調製法について述べる。この方法は、フタロシアニン類を硫酸に溶解した後、水で希釈し、再析出させる方法であり、アシッドペースト法あるいはアシッドスラリー法と呼ばれるものが使用できる。
【0051】
具体的な方法としては、上記のチタニルフタロシアニン結晶の合成粗品を10〜50倍量の濃硫酸に溶解し、必要に応じて不溶物を濾過等により除去し、これを硫酸の10〜50倍量の充分に冷却した水もしくは氷水にゆっくりと投入し、チタニルフタロシアニンを再析出させる。析出したチタニルフタロシアニンを濾過した後、イオン交換水で洗浄及び濾過を行い、濾液が中性になるまで充分にこの操作を繰り返す。最終的に、綺麗なイオン交換水で洗浄した後、濾過を行い、固形分濃度で5〜15質量%程度の水ペーストを得る。
【0052】
この際、析出したチタニルフタロシアニンをイオン交換水で十分に洗浄し、可能な限り濃硫酸を残さないことが重要である。具体的には、洗浄後のイオン交換水が以下のような物性値を示すことが好ましい。即ち、硫酸の残存量を定量的に表せば、洗浄後のイオン交換水のpHや比伝導度で表すことができる。
【0053】
pHで表す場合には、pHが6〜8の範囲であることが好ましい。この範囲であることにより、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断できる。このpH値は市販のpHメーターで簡便的に測定することができる。
【0054】
また比伝導度で表せば、8μS/cm以下が好ましく、5μS/cm以下がより好ましく、3μS/cm以下が特に好ましい。比伝導度が8μS/cm以下であれば、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断できる。この比伝導度は市販の電気伝導率計で測定することが可能である。比伝導度の下限値は、洗浄に使用した後のイオン交換水の比伝導度ということになる。いずれの測定においても、上記範囲を逸脱する範囲では、硫酸の残存量が多く、感光体の帯電性が低下したり、光感度が悪化したりする場合がある。
【0055】
上記のように作製したものが本発明に用いる不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)である。この場合、不定形チタニルフタロシアニンが、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有するものであることが好ましい。特に、その回折ピークの半値巾が1゜以上であることがより好ましい。更に、一次粒子の平均粒子径が0.1μm以下であることが好ましい。
【0056】
次に、不定形チタニルフタロシアニンの結晶変換方法について述べる。
結晶変換は、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、かつ、26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶(前駆体)に変換する工程である。
上記具体的な方法としては、前記不定形チタニルフタロシアニンを乾燥せずに、水の存在下で有機溶媒と共に混合及び撹拌することにより、前記結晶型を得るものである。
【0057】
この際、使用される有機溶媒は、所望の結晶型を得られるものであれば、いかなる有機溶媒も使用できるが、特にテトラヒドロフラン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる1種を選択すると、良好な結果が得られる。これら有機溶媒は単独で用いることが好ましいが、これらの有機溶媒を2種以上混合するか、あるいは他の溶媒と混合して用いることも可能である。結晶変換に使用される前記有機溶媒の量は、不定形チタニルフタロシアニン(以降、不定形乃至低結晶性チタニルフタロシアニンと称することがある。)の質量の10倍以上、好ましくは30倍以上の質量であることが好ましい。
【0058】
これは、結晶変換を素早く十分に起こさせると共に、不定形乃至低結晶性チタニルフタロシアニンに含まれる不純物を十分に取り除く効果が発現されるからである。なお、ここで使用する不定形乃至低結晶性チタニルフタロシアニンは、アシッドペースト法により作製するものであるが、前述のように硫酸を十分に洗浄したものを使用することが好ましい。
硫酸が残存するような条件で結晶変換を行うと、結晶粒子中に硫酸イオンが残存し、出来上がった結晶を水洗処理のような操作をしても完全には取り除くことができない。
【0059】
硫酸イオンが残存した場合には、感光体の感度低下、帯電性低下を引き起こすなど、好ましい結果を得られない。例えば、特開平8−110649号公報には、硫酸に溶解したチタニルフタロシアニンをイオン交換水と共に有機溶媒に投入して結晶変換を行う方法が記載されている。この際、本発明で得られるチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルに類似した結晶を得ることができるが、チタニルフタロシアニン中の硫酸イオン濃度が高く、光減衰特性(光感度)が悪いものであるため、本発明のチタニルフタロシアニンの製造方法としては良好なものではない。
【0060】
[2]本発明に用いるチタニルフタロシアニン結晶の合成方法:
上述のように合成した特定結晶型のチタニルフタロシアニン結晶(前駆体)を、適当な方法により結晶転移させることにより、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を合成するものである。
ここで言う本発明のチタニルフタロシアニン結晶とは、前述のように、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するものである。
【0061】
次に前駆体を結晶転移する方法について述べる。前駆体は、熱的、機械的、化学的エネルギーを与えることにより、結晶転移することができる。
熱的エネルギー付与の方法としては、前駆体を100℃以上の高温下で、熱処理する方法が挙げられる。例えば、前駆体の粉末を電気炉などの加熱手段により、200℃以上の高温下で数時間加熱処理することで所望の結晶型へ転移することができる。この際、あまりにも高温であるとチタニルフタロシアニン結晶そのものが分解してしまうような現象を生じるため、400℃程度を加熱温度の上限とするものである。また、加熱処理は暗所で行うことが望ましく、遮光した状態で加熱処理を行う。更に、加熱処理は大気下で行ってもよいが、減圧下(例えば、10mmHg以下)で行ってもよい。
【0062】
機械的エネルギー付与の方法としては、前駆体に機械的剪断力を与えるような方法が望ましい。例えば、ミキサーのようなもので剪断力を与える方法、乾式ボールミルのようなもので剪断力を与える方法、乳鉢のようなもので剪断力を与える方法などが挙げられる。
【0063】
化学的エネルギー付与の方法としては、2つに大別できる。一方は乾式法によるものであり、真空蒸着法のような方法により結晶型を転移させるものである。この場合、前駆体は一度、分子状態までバラバラになり、対向基板上で所望の結晶型になるものである。
他方は湿式法によるものであり、前駆体を有機溶媒によって処理するものである。具体的には前駆体を有機溶媒に浸漬して、1日以上の期間放置しておくものである。これにより所望の結晶型に転移するものである。
この際、有機溶媒としては前駆体を所望の結晶型に結晶転移できるものであれば有効に使用できるが、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒から選ばれる1種が有効に使用できる。エーテル系溶媒としては、炭素数が1〜5の分岐もしくは直鎖状エーテル、及び環状エーテルが有効に用いられ、中でもテトラヒドロフランが特に好ましく用いられる。ケトン系溶媒としては、炭素数が1〜5の分岐もしくは直鎖状ケトンが用いられるが、中でも2−ブタノンが特に好ましく用いられる。
また、使用する有機溶媒中には、水やその他の成分を極力含まないことが重要である。有機溶媒中に水を多く含んでいると、結晶転移速度が低下するので好ましくない。
【0064】
湿式法による溶媒処理においては、機械的ネルギーを併用することで、より効率的に結晶転移させることができる。例えば、前駆体を前記有機溶媒と共にミリング装置等(例えば、ボールミル装置)に投入し、所定時間、機械的剪断力を付与することにより、所望結晶型への結晶転移を加速することができる。
【0065】
以下、本発明の電子写真感光体について、図面を用いて詳しく説明する。
図1は、本発明に用いられる電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、導電性支持体(以降、支持体と略称することがある)31上に、前記少なくとも特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層34と、感光層上に、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層39を積層した構成をとっている。
【0066】
図2は、本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、支持体31上に、少なくとも特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層37と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層38とが積層され、更に電荷輸送層上に少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層39を積層した構成をとっている。
【0067】
図3は、本発明に用いられる電子写真感光体の更に別の構成例を示す断面図であり、支持体31上に、中間層32と、少なくとも特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層37と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層38とが積層され、更に電荷輸送層上に少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層39を積層した構成をとっている。
【0068】
図4は、図3における中間層が電荷ブロッキング層35とモアレ防止層36から構成され、この中間層上に少なくとも特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層37と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層38とが積層され、更に電荷輸送層上に少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層39を積層した構成をとっている。
【0069】
上記導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチックや紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及び、それらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などにより表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0070】
また、上記の中でも陽極酸化皮膜処理を簡便に行うことのできるアルミニウムからなる円筒状支持体が最も良好に使用できる。ここで言うアルミニウムとは、純アルミ系あるいはアルミニウム合金のいずれをも含むものである。具体的には、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金が最も適している。
陽極酸化皮膜は、各種金属あるいは各種合金を電解質溶液中において陽極酸化処理したものであるが、中でもアルミニウムもしくはアルミニウム合金を電解質溶液中で陽極酸化処理を行ったアルマイトと呼ばれる被膜が本発明に用いる感光体として最も適している。特に、反転現像(ネガ・ポジ現像)に用いた際に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止する点で優れている。
【0071】
陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行われる。このうち、硫酸浴による処理が最も適している。一例を挙げると、硫酸濃度:10〜20%、浴温:5〜25℃、電流密度:1〜4A/dm2、電解電圧:5〜30V、処理時間:5〜60分程度の範囲で処理が行われるが、これに限定するものではない。このように作製される陽極酸化皮膜は、多孔質であり、また絶縁性が高いため、表面が非常に不安定な状況である。このため、作製後の経時変化が存在し、陽極酸化皮膜の物性値が変化しやすい。これを回避するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが望ましい。
封孔処理には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。このうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最も好ましい。封孔処理に引き続き、陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。これは、封孔処理により付着した金属塩等の過剰なものを除去することが主な目的である。
【0072】
付着した金属塩等が支持体(陽極酸化皮膜)表面に過剰に残存すると、この上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまうため、逆に地汚れの発生原因にもなってしまう。洗浄は純水1回の洗浄でも構わないが、通常は多段階の洗浄を行う。この際、最終の洗浄液が可能な限りきれいなもの(脱イオンされたもの)であることが好ましい。また、多段階の洗浄工程のうち1工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことが望ましい。
以上のようにして形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、5−15μm程度が望ましい。これより薄すぎる場合には陽極酸化皮膜としてのバリア性の効果が十分でなく、これより厚すぎる場合には電極としての時定数が大きくなりすぎて、残留電位の発生や感光体のレスポンスが低下する場合がある。
【0073】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。
このような導電性層は、上記導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0074】
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0075】
次に、電荷ブロッキング層について述べる。
電荷ブロッキング層は、感光体の帯電時に電極(導電性支持体)に誘起される逆極性の電荷が、支持体から感光層に注入するのを防止する機能を有する層である。負帯電の場合には正孔注入防止の機能を、また正帯電の場合には電子注入防止の機能を有する。
電荷ブロッキング層としては、酸化アルミ層に代表される陽極酸化被膜、SiOに代表される無機系の絶縁層、金属酸化物のガラス質ネットワークから形成される層(例えば、特開平3―191361号公報に記載)、ポリフォスファゼンからなる層(例えば、特開平3―141363号公報に記載)、アミノシラン反応生成物からなる層(例えば、特開平3―101737号公報に記載)が挙げられ、この他にも絶縁性の結着剤樹脂からなる層、硬化性の結着剤樹脂からなる層等が挙げられる。
中でも湿式塗工法で形成可能な絶縁性の結着樹脂あるいは硬化性の結着樹脂から構成される層が良好に使用できる。電荷ブロッキング層は、その上にモアレ防止層や感光層を積層するものであるから、これらを湿式塗工法で設ける場合には、これらの塗工溶媒により塗膜が侵されない材料あるいは構成からなることが肝要である。
【0076】
使用できる結着剤樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、例えば、活性水素(−OH基、−NH2基、−NH基等の水素)を複数個含有する化合物とイソシアネート基を複数個含有する化合物及び/又はエポキシ基を複数個含有する化合物とを熱重合させた熱硬化性樹脂等も使用できる。
この場合、活性水素を複数個含有する化合物としては、例えば、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ヒドロキシエチルメタアクリレート基等の活性水素を含有するアクリル系樹脂等が挙げられる。また、イソシアネート基を複数個含有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等とこれらのプレポリマー等が挙げられる。エポキシ基を複数有する化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、成膜性、環境安定性、溶剤耐性の点などから、ポリアミドが最も良好に用いられる。
【0077】
また、オイルフリーアルキド樹脂とアミノ樹脂、例えば、ブチル化メラミン樹脂等を熱重合させた熱硬化性樹脂、あるいは不飽和結合を有するポリウレタン、不飽和ポリエステル等の不飽和結合を有する樹脂と、チオキサントン系化合物、メチルベンジルフォルメート等の光重合開始剤とを組合せた光硬化性樹脂等も結着剤樹脂として使用できる。また、整流性のある導電性高分子や、帯電極性に合わせてアクセプター(ドナー)性の樹脂や化合物などを加えて、基体からの電荷注入を制抑するなどの機能を持たせてもよい。
【0078】
また、前記電荷ブロッキング層の膜厚は0.1μm以上2.0μm未満、好ましくは0.3μm以上1.0μm以下程度が適当である。電荷ブロッキング層が厚くなると、帯電と露光の繰返しによって、特に低温低湿で残留電位の上昇が著しく、また、膜厚が薄すぎるとブロッキング性の効果が小さくなる。
また、電荷ブロッキング層には、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進材等を加えて、常法により、ブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法などにより支持体上に形成される。塗布後は乾燥や加熱、光等の硬化処理により、乾燥あるいは硬化させる。
【0079】
次に、モアレ防止層について述べる。
モアレ防止層は、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込みを行う際に、感光層内部での光干渉によるモアレ像の発生を防止する機能を有する層である。基本的には、前記書き込み光の光散乱を起こす機能を有する。このような機能を発現するために、モアレ防止層は屈折率の大きな材料を有することが有効である。一般には、無機顔料とバインダー樹脂を含有し、無機顔料がバインダー樹脂に分散された構成からなる。特に、無機顔料の中でも白色の顔料が有効に使用され、例えば、酸化チタン、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどが良好に用いられる。中でも、隠蔽力の大きな酸化チタンが最も有効に使用できる。
【0080】
また、電荷ブロッキング層を用いる場合には、支持体からの電荷注入を電荷ブロッキング層にて防止するものであるから、モアレ防止層においては少なくとも感光体表面に帯電される電荷とは同極性の電荷を移動できる機能を有することが残留電位防止の観点から好ましい。このため、例えば、負帯電型感光体の場合、モアレ防止層には電子伝導性を付与することが望ましく、使用する無機顔料に電子伝導性を有するものを使用するか、導電性のものを使用することが望ましい。あるいは、モアレ防止層に電子伝導性の材料(例えば、アクセプター)などを使用することは本発明の効果を一層顕著なものにするものである。
【0081】
モアレ防止層のバインダー樹脂としては、電荷ブロッキング層と同様のものを使用できるが、モアレ防止層の上に感光層を積層することを考慮すると、感光層の塗工溶媒に侵されないことが肝要である。
バインダー樹脂としては、熱硬化型樹脂が良好に使用される。特に、アルキッド/メラミン樹脂の混合物が最も良好に使用される。この際、アルキッド/メラミン樹脂の混合比は、モアレ防止層の構造及び特性を決定する重要な因子である。両者(アルキッド/メラミン)の比(重量比)が5/5〜8/2の範囲が良好な混合比の範囲として挙げることができるる。5/5よりもメラミン樹脂がリッチであると、熱硬化の際に体積収縮が大きくなり塗膜欠陥を生じやすくなったり、感光体の残留電位を大きくする方向にあり望ましくない。また、8/2よりもアルキッド樹脂がリッチであると、感光体の残留電位低減には効果があるものの、バルク抵抗が低くなりすぎて地汚れが悪くなる方向になり望ましくない。
【0082】
モアレ防止層においては、無機顔料とバインダー樹脂の容積比が重要な特性を決定する。このため、無機顔料とバインダー樹脂の容積比が1/1乃至3/1の範囲であることが重要である。両者の容積比が1/1未満である場合には、モアレ防止能が低下するだけでなく、繰り返し使用における残留電位の上昇が大きくなる場合が存在する。一方、容積比が3/1以上の領域ではバインダー樹脂における結着能が劣るだけでなく、塗膜の表面性が悪化し、上層の感光層の成膜性に悪影響を与える場合がある。この影響は感光層が積層タイプで構成され、電荷発生層のような薄層を形成する場合に深刻な問題になり得るものである。また容積比が3/1以上の場合には、無機顔料表面をバインダー樹脂が覆い尽くせない場合が存在し、電荷発生物質と直接接触することで、熱キャリア生成の確率が大きくなり、地汚れに対して悪影響を与える場合がある。
【0083】
更に、モアレ防止層には、平均粒径の異なる2種類の酸化チタンを用いることで、導電性基体に対する隠蔽力を向上させモアレを抑制することが可能となるとともに、異常画像の原因となるピンホールをなくすことができる。このためには、用いる2種の酸化チタンにおける平均粒径の比が一定の範囲内(0.2≦D2/D1≦0.5)にあることが重要である。なお、D2<D1である。
本発明で規定する上記範囲外の粒径比の場合、すなわち一方の酸化チタン(T1)の平均粒径に対する他方の酸化チタン(T2)の平均粒径の比が小さすぎる場合(0.2>D2/D1)は、酸化チタン表面での活性が増加し電子写真感光体としたときの静電的安定性が著しく損なわれるようになる。また、一方の酸化チタン(T1)の平均粒径に対する他方の酸化チタン(T2)の平均粒径の比が大きすぎる場合(D2/D1>0.5)は、導電性基体に対する隠蔽力が低下し、モアレや異常画像に対する抑制力が低下する。ここで言う平均粒径は、水系で強分散を行なったときに得られる粒度分布測定から得られる。
【0084】
また、粒径の小さい方の酸化チタン(T2)における平均粒径(D2)の大きさが重要な因子であり、0.05μm≦D2≦0.20μmであることが重要である。0.05μmよりも小さい場合には隠蔽力が低下し、モアレを発生させる場合がある。一方、0.20μmよりも大きな場合には、モアレ防止層の酸化チタンの充填率を低下させ、地汚れ抑制効果が十分に発揮できない。
【0085】
また、2種の酸化チタンの混合比率(重量比)も重要な因子である。T2/(T1+T2)が0.2よりも小さい場合には、酸化チタンの充填率がそれほど大きくなく、地汚れ抑制効果が十分に発揮出来ない。一方、0.8よりも大きな場合には、隠蔽力が低下し、モアレを発生させる場合がある。従って、0.2≦T2/(T1+T2)≦0.8であることが重要である。
【0086】
また、モアレ防止層の膜厚は1〜10μm、好ましくは2〜5μmとするのが適当である。膜厚が1μm未満では効果の発現性が小さく、10μmを越えると残留電位の蓄積を生じるので望ましくない。
【0087】
上記無機顔料は溶剤と結着剤樹脂と共に常法、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライラー等により分散し、また、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進剤等を加えて、ブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法等、常法により、基体上に形成される。塗布後は乾燥や加熱、光等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させる。
【0088】
次に、感光層について説明する。前述のように感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする単層の感光層から構成される場合と、電荷発生物質を主要成分とする電荷発生層と電荷輸送物質を主要成分とする電荷輸送層の積層構成からなる場合がある。ここでは説明の都合上、積層構成からなる場合を先に説明する。
【0089】
電荷発生層は、電荷発生材料として、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を主成分として含む層である。
電荷発生層は、上記顔料(チタニルフタロシアニン結晶)を必要に応じてバインダー樹脂(結着樹脂)とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
【0090】
必要に応じて電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
【0091】
ここで用いられる溶剤としては、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0092】
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0093】
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電荷輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0094】
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
【0095】
電荷輸送層用の結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0096】
電荷輸送物質の量は、結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。
上記電荷輸送物質及び結着樹脂を溶解ないし分散する適当な溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
【0097】
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。
これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。このような高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、下記一般式(I)〜(X)式で表される高分子電荷輸送物質が良好に用いられ、これらを以下に例示し、具体例を示す。
【0098】
【化4】

【0099】
[式(I)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式(a):
【0100】
【化5】

【0101】
〔式(a)中、R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)または、下記一般式(b)で表される2価基を表す。
【0102】
【化6】

【0103】
(式(b)中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す。)ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。〕で表される2価基を表す。]
【0104】
【化7】

【0105】
〔式(II)中、R7、R8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1、Ar2、Ar3は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
【0106】
【化8】

【0107】
〔式(III)中、R9、R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4、Ar5、Ar6は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
【0108】
【化9】

【0109】
〔式(IV)中、R11、R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7、Ar8,Ar9は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
【0110】
【化10】

【0111】
〔式(V)中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10、Ar11、Ar12は同一又は異なるアリレン基、X1、X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
【0112】
【化11】

【0113】
〔式(VI)中、R15、R16、R17、R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y1、Y2、Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
【0114】
【化12】

【0115】
〔式(VII)中、R19、R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
【0116】
【化13】

【0117】
〔式(VIII)中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
【0118】
【化14】

【0119】
〔式(IX)中、R22、R23、R24、R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
【0120】
【化15】

【0121】
〔式(X)中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29、Ar30、Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
【0122】
また、電荷輸送層に使用される高分子電荷輸送物質としては、上述の高分子電荷輸送物質の他に、電荷輸送層の成膜時には電子供与性基を有するモノマーあるいはオリゴマーの状態で、成膜後に硬化反応あるいは架橋反応をさせることで、最終的に2次元あるいは3次元の架橋構造を有する重合体も含むものである。
【0123】
これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層、あるいは架橋構造を有する重合体は耐摩耗性に優れたものである。通常、電子写真プロセスにおいては、帯電電位(未露光部電位)は一定であるため、繰り返し使用により感光体の表面層が摩耗すると、その分だけ感光体にかかる電界強度が高くなってしまう。この電界強度の上昇に伴い、地汚れの発生頻度が高くなるため、感光体の耐摩耗性が高いことは、地汚れに対して有利である。これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層は、自身が高分子化合物であるため成膜性に優れ、低分子分散型高分子からなる電荷輸送層に比べ、電荷輸送部位を高密度に構成することが可能で電荷輸送能に優れたものである。このため、高分子電荷輸送物質を用いた電荷輸送層を有する感光体には高速応答性が期待できる。
【0124】
その他の電子供与性基を有する重合体としては、公知単量体の共重合体や、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーや、例えば、特開平3−109406号公報、特開20000−206723号公報、特開2001−34001号公報等に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることも可能である。この場合にも、先の移動度を満足できるような材料が有効に使用できる。
【0125】
本発明において、電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
【0126】
次に、単層感光層の場合について説明する。
結着樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂をそのまま用いられるほかに、電荷発生層で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は、5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、更に好ましくは50〜150重量部である。
単層感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を、必要ならば電荷輸送物質と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等により分散した塗工液を用いて、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどで塗工して形成することができる。単層感光層の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
【0127】
次に、保護層について説明する。
本発明の電子写真感光体には、感光層保護の目的で保護層が感光層の上に設けられる。近年、日常的にコンピュータの使用が行なわれるようになり、プリンタによる高速出力と共に装置の小型も望まれている。すなわち、本発明の構成からなる保護層を設けて耐久性を向上させた高感度で異常欠陥のない感光体は、前記要請に応えるものとして有用に用いることができる。
【0128】
本発明に用いられる有効な保護層としては、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成される構成(樹脂硬化物)からなるものである。以降、「保護層」を「架橋型保護層」と呼ぶ場合がある。また、「ラジカル重合性モノマー」や「ラジカル重合性化合物」を、「反応性モノマー」あるいは単に「モノマー」という場合がある。
架橋構造の形成に関しては、1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用し、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を起こさせ、3次元の網目構造を形成するものである。この網目構造がバインダー樹脂として機能し、高い耐摩耗性を発現するものである。
【0129】
また、上記反応性モノマーとして、全部もしくは一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用することは非常に有効な手段である。このようなモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位が形成され、保護層としての機能を十分に発現することが可能となる。電荷輸送能を有するモノマーとしては、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーが有効に使用される。
【0130】
なお、上記のような網目構造を有する保護層は、耐摩耗性が高い反面、架橋反応時に体積収縮が大きく、あまり厚膜化するとクラックなどを生じる場合がある。このような場合には、保護層を積層構造として、下層(感光層側)には低分子分散ポリマーの保護層を使用し、上層(表面側)に架橋構造を有する保護層を形成してもよい。架橋型保護層の中でも本発明における特定の構成からなる保護層は、特に有効に使用される。
【0131】
特定の架橋型保護層とは、前述のように、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層である。
本発明における保護層は、3官能以上のラジカル重合性モノマーを硬化した架橋構造を有するため、3次元の網目構造が発達して架橋密度が非常に高く、高硬度、かつ高弾性な特性を有する表面層であり、しかも均一で平滑性も高く、高い耐摩耗性、耐傷性が達成される。この様に感光体表面においては、架橋密度、即ち、単位体積あたりの架橋結合数を増加させることが重要であるが、硬化反応により樹脂硬化物(保護層を構成)を形成する際に、瞬時に多数の結合を形成させると体積収縮による内部応力が発生する。
この内部応力は架橋型保護層の膜厚が厚くなるほど増加し、厚膜状態で保護層全層を硬化させると、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる。この現象は初期状態では現れなくても、電子写真プロセス上で繰り返し使用され、帯電、現像、転写、クリーニングのハザード及び熱変動の影響を受けることにより、経時で発生しやすくなることもある。
【0132】
この問題を解決する方法としては、(1)架橋層及び架橋構造に高分子成分を導入する、(2)1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーを多量に用いる、(3)柔軟性基を有する多官能モノマーを用いる、などの硬化樹脂層を柔らかくする手法が挙げられるが、何れも架橋層の架橋密度が希薄となり、飛躍的な耐摩耗性が達成されない。
【0133】
これに対し、本発明の感光体においては、電荷輸送層上に3次元の網目構造が発達した架橋密度の高い架橋型保護層を好ましくは1μm以上、10μm以下の膜厚で設けることで、前記のクラックや膜剥がれが発生せず、かつ非常に高い耐摩耗性が達成される。かかる架橋型保護層の膜厚を2μm以上、8μm以下の膜厚にすることにより、更に上記問題に対する余裕度が向上することに加え、更なる耐摩耗性向上に繋がる高架橋密度化の材料選択が可能となる。
【0134】
本発明の感光体がクラックや膜剥がれを抑制できる理由としては、架橋型保護層を薄膜化できるため内部応力が大きくならないこと、下層に感光層もしくは電荷輸送層を有するため、表面の架橋型保護層の内部応力を緩和できることなどによる。このため、架橋型保護層に高分子材料を多量に含有させる必要がなく、この時生ずる、高分子材料とラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマーや電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の反応より生じた硬化物との不相溶が原因の傷やトナーフィルミングも起こりにくい。
さらに、保護層全層にわたる厚膜を光エネルギー照射により硬化する場合、電荷輸送性構造による光吸収によって内部への光透過が制限され、硬化反応が十分に進行しない現象が起こることがある。
本発明の架橋型保護層においては、好ましくは10μm以下の薄膜とすることにより内部まで均一に硬化反応が進行し、保護層表面と同様に保護層内部でも高い耐摩耗性が維持される。
【0135】
また、本発明の架橋型保護層の形成においては、上記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(3官能性ラジカル重合性モノマー)に加え、更に、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)を含有しており、これが上記3官能以上のラジカル重合性モノマー硬化時に架橋結合中に取り込まれる。これに対し、官能基を有しない低分子電荷輸送物質を架橋表面層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、架橋表面層の機械的強度も低下する。一方、2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定され架橋密度はより高まるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため硬化樹脂構造の歪みが非常に大きくなり、架橋型保護層の内部応力が高まる原因となる。
【0136】
更に、本発明の感光体は良好な電気的特性を有し、このため繰り返し安定性に優れており高耐久化並びに高安定化が実現される。これは架橋型保護層の構成材料として1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用い、架橋結合間にペンダント状に固定化したことに起因する。上記のように官能基を有しない電荷輸送物質は析出、白濁現象が起こり、感度の低下、残留電位の上昇等繰り返し使用における電気的特性の劣化が著しい。
2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすい。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字細り等の画像として現れる。更に、本発明の感光体においては、下層の電荷輸送層として従来感光体の電荷トラップの少ない高移動度な設計が適応可能で、架橋型保護層の電気的副作用を最小限に抑えることができる。
【0137】
更に、本発明の上記架橋型保護層形成において、架橋型保護層が有機溶剤に対し不溶性にすることにより、特にその飛躍的な耐摩耗性が発揮される。本発明の架橋型保護層は電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を硬化することにより形成され、層全体としては3次元の網目構造が発達して高い架橋密度を有するが、上記成分以外の含有物(例えば、1または2官能モノマー、高分子バインダー、酸化防止剤、レベリング剤、可塑剤などの添加剤及び下層からの溶解混入成分)や硬化条件により、局部的に架橋密度が希薄になったり、高密度に架橋した微小な硬化物の集合体として形成されることがある。
このような架橋型保護層は、硬化物間の結合力は弱く有機溶剤に対し溶解性を示し、かつ電子写真プロセス中で繰り返し使用される中で、局部的な摩耗や微小な硬化物単位での脱離が発生しやすくなる。本発明のように架橋型保護層を有機溶剤に対し不溶性にせしめることにより、本来の3次元の網目構造が発達し高い架橋度を有することに加え、連鎖反応が広い範囲で進行し硬化物が高分子量化するため、飛躍的な耐摩耗性の向上が達成される。
【0138】
次に、本発明の架橋型保護層塗布液の構成材料について説明する。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
【0139】
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(7)で表される官能基が挙げられる。
【0140】
【化16】

【0141】
[ただし、一般式(7)中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基〔R10は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。〕、または−S−基を表す。]
【0142】
上記の官能基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
【0143】
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(8)で表される官能基が挙げられる。
【0144】
【化17】

【0145】
[ただし、一般式(8)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基〔R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR1213(R12及びR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)を表す。〕、また、X2は上記一般式(7)のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。]
【0146】
上記の官能基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX1、X2、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0147】
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
【0148】
電荷輸送性構造を有しない3官能以上の具体的なラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
【0149】
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、架橋型保護層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋型保護層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下する傾向が出てくるため、上記例示したモノマー等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくない。
【0150】
また、架橋型保護層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、架橋型保護層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。モノマー成分が20重量%未満では架橋型保護層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成にくくなる傾向がある。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる傾向がある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本感光体の架橋型保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
【0151】
本発明の架橋型保護層に用いられる電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)とは、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば、縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つ1個のラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先のラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が高い効果を有し、中でも下記一般式(1)又は(2)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
【0152】
【化18】

【0153】
[一般式(1)、(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。m、nは0〜3の整数を表す。]
【0154】
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
【0155】
Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表すが、本発明においては該アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基を含むものであり、以下の基が挙げられる。
【0156】
上記縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
【0157】
上記非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
上記複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
【0158】
また、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基は、例えば、以下に示すような置換基を有してもよい。
〔1〕ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
〔2〕アルキル基、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、更に好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
〔3〕アルコキシ基(−OR2)であり、R2は〔2〕で定義したアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
〔4〕アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
〔5〕アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
〔6〕下記一般式(9):
【0159】
【化19】

【0160】
[一般式(9)中、R3及びR4は各々独立に水素原子、前記〔2〕で定義したアルキル基、又はアリール基を表す。アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R3及びR4は共同で環を形成してもよい。]で表される基が挙げられる。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
【0161】
〔7〕メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
〔8〕置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0162】
前記Ar1、Ar2で表されるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
【0163】
前記Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
【0164】
上記置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、更に好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。
具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
【0165】
上記置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していてもよい。
具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
【0166】
上記置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
【0167】
上記ビニレン基としては、下記一般式(10)又は(11):
【0168】
【化20】

【0169】
[一般式(10)又は(11)中、R5は水素、アルキル基(前記〔2〕で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar3、Ar4で表されるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表す。]で表わされる基が挙げられる。
【0170】
前記Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル2価基が挙げられる。
アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン2価変性基が挙げられる。
【0171】
また、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)として更に好ましくは、下記一般式(3)で表される構造の化合物が挙げられる。
【0172】
【化21】

【0173】
[一般式(3)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、下記構造式(4)、(5)、(6)で表される2価基を表す。]
【0174】
【化22】

【0175】
上記一般式(3)で表される化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
【0176】
本発明で用いる上記一般式(1)及び(2)特に(3)の1官能性の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中、すなわち硬化樹脂中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)する。
このように、1官能性の電荷輸送構造を持つラジカル重合性化合物が、主鎖中に存在する場合であっても、また架橋鎖中に存在する場合であっても、主鎖または架橋鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、主鎖または架橋鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能である。そのため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
本発明の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を下記、No.1〜No.161に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0177】
【化23】

【0178】
【化24】

【0179】
【化25】

【0180】
【化26】

【0181】
【化27】

【0182】
【化28】

【0183】
【化29】

【0184】
【化30】

【0185】
【化31】

【0186】
【化32】

【0187】
【化33】

【0188】
【化34】

【0189】
また、本発明に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、架橋型保護層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋型保護層に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。この成分が20重量%未満では架橋型保護層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる傾向がある。また、80重量%を超えると電荷輸送性構造を有しない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮しにくい傾向がある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本発明における感光体の架橋型保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
【0190】
本発明の電子写真感光体を構成する架橋型保護層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋型保護層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー、機能性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
【0191】
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
【0192】
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0193】
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
【0194】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0195】
但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋型保護層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し50重量部以下、好ましくは30重量部以下であればより好ましい。
【0196】
また、本発明の架橋型保護層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなるものであるが、必要に応じてこの硬化反応を効率よく進行させるために架橋型保護層塗布液中に重合開始剤を含有させてもよい。
【0197】
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパンなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
【0198】
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、などが挙げられる。
【0199】
また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
【0200】
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0201】
更に、本発明の架橋型保護層形成用塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10重量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
【0202】
本発明の架橋型保護層は、少なくとも上記の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有する塗工液を、例えば、前述の電荷輸送層上に塗布、硬化することにより形成される。
かかる塗工液は、用いるラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。
【0203】
このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
【0204】
本発明においては、かかる架橋型保護層塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、架橋型保護層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。
熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。
加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に硬化反応が終了しない傾向がある。170℃を超える高温では硬化反応が不均一に進行し架橋型保護層中に大きな歪みや多数の未反応残基、反応停止末端が発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。
光のエネルギーとしては主に紫外光領域に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。
照射光量は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、50mW/cm2未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、架橋型保護層表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずる。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
【0205】
本発明の架橋型保護層の膜厚は、好ましくは1μm以上、10μm以下、更に好ましくは2μm以上、8μm以下である。10μmより厚い場合、前述のようにクラックや膜剥がれが発生しやすくなり、8μm以下ではその余裕度がさらに向上するため架橋密度を高くすることが可能で、さらに耐摩耗性を高める材料選択や硬化条件の設定が可能となる。
一方、ラジカル重合反応は酸素阻害を受けやすく、すなわち大気に接した表面では酸素によるラジカルトラップの影響で架橋が進まなかったり、不均一になりやすい。この影響が顕著に現れるのは表層1μm未満の場合で、この膜厚以下の架橋型保護層は耐摩耗性の低下や不均一な摩耗が起こりやすい。また、架橋型保護層塗工時において下層の電荷輸送層成分の混入が生じ、特に、架橋型保護層の塗布膜厚が薄いと層全体に混入物が拡がり、硬化反応の阻害や架橋密度の低下をもたらす。これらの理由から、本発明の架橋型保護層は1μm以上の膜厚で良好な耐摩耗性、耐傷性を有するが、繰り返しの使用において局部的に下層の電荷輸送層まで削れた部分ができるとその部分の摩耗が増加し、帯電性や感度変動から中間調画像の濃度むらが発生しやすい。従って、より長寿命、高画質化のためには架橋型保護層の膜厚を2μm以上にすることが望ましい。
【0206】
本発明の電子写真感光体の電荷ブロッキング層、モアレ防止層、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)、架橋型保護層を順次積層した構成において、最表面の架橋型保護層が有機溶剤に対し不溶性である場合、飛躍的な耐摩耗性、耐傷性が達成されることを示している。
この有機溶剤に対する溶解性を試験する方法としては、感光体表面層上に高分子物質に対する溶解性の高い有機溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等を1滴滴下し、自然乾燥後に感光体表面形状の変化を実体顕微鏡で観察することで判定できる。
溶解性が高い感光体は液滴の中心部分が凹状になり周囲が逆に盛り上がる現象、電荷輸送物質が析出し結晶化による白濁やくもり生ずる現象、表面が膨潤しその後収縮することで皺が発生する現象などの変化がみられる。それに対し、不溶性の感光体は上記のような現象がみられず、滴下前と全く変化が現れない。
【0207】
本発明の構成において、架橋型保護層を有機溶剤に対し不溶性にするには、(1)架橋型保護層塗工液の組成物、それらの含有割合の調整、(2)架橋型保護層塗工液の希釈溶媒、固形分濃度の調整、(3)架橋型保護層の塗工方法の選択、(4)架橋型保護層の硬化条件の制御、(5)下層の電荷輸送層の難溶解性化など、これらをコントロールすることが重要であるが、一つの因子で達成される訳ではない。
【0208】
架橋型保護層塗工液の組成物としては、前述した電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー及び1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物以外に、ラジカル重合性官能基を有しないバインダー樹脂、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤を多量に含有させると、架橋密度の低下、反応により生じた硬化物と上記添加物との相分離が生じ、有機溶剤に対し可溶性となる傾向が高い。
具体的には塗工液の総固形分に対して上記総含有量を20重量%以下に抑えることが重要である。また、架橋密度を希薄にさせないために、1官能または2官能のラジカル重合性モノマー、反応性オリゴマー、反応性ポリマーにおいても、総含有量を3官能ラジカル重合性モノマーに対し20重量%以下とすることが望ましい。更に、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を多量に含有させると、嵩高い構造体が複数の結合により架橋構造中に固定されるため歪みを生じやすく、微小な硬化物の集合体となりやすい。このことが原因で有機溶剤に対して可溶性となることがある。化合物構造によって異なるが、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物に対し10重量%以下にすることが好ましい。
【0209】
架橋型保護層塗工液の希釈溶媒に関しては、蒸発速度の遅い溶剤を用いた場合、残留する溶媒が硬化の妨げとなったり、下層成分の混入量を増加させることがあり、不均一硬化や硬化密度低下をもたらし、これによって有機溶剤に対して可溶性になりやすくなる。
具体的には、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとメタノール混合溶媒、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エチルセロソルブなどが有用であるが、塗工法と併せて選択される。
【0210】
また、固形分濃度に関しては、同様な理由で低すぎる場合、有機溶剤に対し可溶性となりやすい。逆に膜厚、塗工液粘度の制限から上限濃度の制約を受ける。
具体的には、10〜50重量%の範囲で用いることが望ましい。架橋型保護層の塗工方法としては、同様な理由で塗工膜形成時の溶媒含有量、溶媒との接触時間を少なくする方法が好ましく、具体的にはスプレーコート法、塗工液量を規制したリングコート法が好ましい。また、下層成分の混入量を抑えるためには、電荷輸送層として高分子電荷輸送物質を用いること、感光層(もしくは電荷輸送層)と架橋型保護層の間に、架橋型保護層の塗工溶媒に対し不溶性の中間層を設けることも有効である。
【0211】
架橋型保護層の硬化条件としては、加熱又は光照射のエネルギーが低いと硬化が完全に終了せず、有機溶剤に対し溶解性が上がる。逆に、非常に高いエネルギーにより硬化させた場合、硬化反応が不均一となり未架橋部やラジカル停止部の増加や微小な硬化物の集合体となりやすい。このため有機溶剤に対して溶解性を示すことがある。有機溶剤に対して不溶性化するには、熱硬化の条件としては100〜170℃、10分〜3時間が好ましく、UV光照射による硬化条件としては50〜1000mW/cm2、5秒〜5分で、かつ温度上昇を50℃以下に制御し、不均一な硬化反応を抑えることが望ましい。
【0212】
本発明の電子写真感光体を構成する架橋型保護層を、有機溶剤に対して不溶性にする手法について例示する。
例えば、塗工液として、3個のアクリロイルオキシ基を有するアクリレートモノマーと、一個のアクリロイルオキシ基を有するトリアリールアミン化合物を使用する場合、これらの使用割合は7:3〜3:7であり、また、重合開始剤をこれらアクリレート化合物全量に対し3〜20重量%添加し、更に溶媒を加えて塗工液を調製する。
【0213】
例えば、架橋型保護層の下層となる電荷輸送層において、電荷輸送物質としてトリアリールアミン系ドナー、及びバインダー樹脂として、ポリカーボネートを使用し、表面層をスプレー塗工により形成する場合、上記塗工液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、酢酸エチル等が好ましく、その使用割合は、アクリレート化合物全量に対し3倍量〜10倍量である。
【0214】
例えば、アルミシリンダー等の支持体上に、中間層、電荷発生層、上記電荷輸送層を順次積層した感光体上に、上記調製した塗工液をスプレー等により塗布する。その後、自然乾燥又は比較的低温で短時間乾燥し(25〜80℃、1〜10分間)、UV照射あるいは加熱して硬化させる。
UV照射の場合、メタルハライドランプ等を用いるが、照度は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下、時間としては5秒から5分程度が好ましく、ドラム温度は50℃を越えないように制御する。
熱硬化の場合、加熱温度は100〜170℃が好ましく、例えば加熱手段として送風型オーブンを用い、加熱温度を150℃に設定した場合、加熱時間は20分〜3時間である。
硬化終了後は、更に残留溶媒低減のため、100〜150℃で10分〜30分加熱して、本発明の感光体を得る。
【0215】
上述のように、感光層上に保護層層を形成する場合、適正な保護層を選定しないと除電光が感光層に十分に届かずに、除電作用が明確には働かない場合が存在する。また、保護層が除電光を吸収することにより、劣化しやすくなり、逆に残留電位上昇を生み出す場合が存在する。従って、上述したいずれの保護層においても、除電光に対する透過率が30%以上、好ましくは50%以上、更に望ましくは85%以上であることが望ましい。
【0216】
上述したように、感光体の表面に保護層を設けることは、各々の感光体の耐久性(耐摩耗性)を高めるだけでなく、後述のようなタンデム型フルカラー画像形成装置中で使用される場合には、モノクロ画像形成装置にはない新たな効果をも生み出すものである。
【0217】
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、保護層、電荷輸送層、電荷発生層、電荷ブロッキング層、モアレ防止層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。以下に具体例を示す。
【0218】
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
【0219】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0220】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0221】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3'−チオジプロピオネートなど。
【0222】
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0223】
上記化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
【0224】
次に、画像形成技術について述べる。
フルカラーの画像の場合、様々な形態の画像が入力されるが、逆に定型的な画像も入力される場合がある。例えば、日本語の文書等における検印の存在などである。検印のようなものは通常、画像領域の端のほうに位置され、また使用される色も限定される。
ランダムな画像が常に書き込まれているような状態においては、画像形成要素中の感光体には、平均的に画像書き込み、現像、転写が行なわれることになるが、上述のように特定の部分に数多くの画像形成が繰り返されたり、特定の画像形成要素ばかり使用された場合には、その耐久性のバランスを欠くことにつながる。このような状態で表面の耐久性(物理的・化学的・機械的)の小さな感光体が使用された場合には、この差が顕著になり、画像上の問題になりやすい。一方、感光体を高耐久化した場合には、このような局所的な変化量が小さく、結果的に画像上の欠陥として現われにくくなるため、高耐久化を実現すると共に、出力画像の安定性をも増すことになり、非常に有効である。
【0225】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、少なくとも導電性支持体上に、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含む感光層と、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層を有する電子写真感光体(静電潜像担持体)と、帯電手段と、書き込み手段(露光手段)と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0226】
本発明の画像形成方法は、帯電工程と書き込み工程(露光工程)と、現像工程と、転写工程、定着工程とを少なくとも含んでなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程等を含んでなる。
【0227】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記帯電工程は前記帯電手段により行うことができ、前記書き込み工程は前記書き込み手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記除電工程は前記除電手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0228】
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体(静電潜像担持体)と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成するための帯電手段と、静電潜像を形成するための書き込み手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する。
【0229】
<静電潜像形成>
前記静電潜像の形成は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光(書き込み)することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0230】
<帯電手段>
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器(感光体表面と帯電器との間に100μm以下の空隙を有する近接方式の非接触帯電器を含む)などが挙げられる。
【0231】
前記帯電器により静電潜像担持体に印加される電界強度としては、20〜60V/μmが好ましく、30〜50V/μmがより好ましい。感光体に印加される電界強度は高いほどドット再現性が良好になるが、電界強度が高すぎると感光体の絶縁破壊や現像時のキャリア付着等の問題が発生する場合がある。
なお、前記電界強度は、下記数式(1)で表される。
電界強度(V/μm)=SV/G …(1)
ただし、上記数式(1)中、SVは、現像位置における静電潜像担持体の未露光部における表面電位(V)を表す。Gは、少なくとも感光層(電荷発生層及び電荷輸送層)を含む感光層の膜厚(μm)を表す。
【0232】
<書き込み手段>
前記書き込みは、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。前記露光器の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0233】
光源としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。使用する光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。しかしながら、解像度を高くして書き込みを行うとそれだけ書き込みに時間がかかることになるため、書き込み光源が1つであると書き込みがドラム線速(プロセス速度)の律速になってしまう。従って、書き込み光源が1つの場合には2400dpi程度の解像度が上限となる。書き込み光源が複数の場合には、それぞれが書き込み領域を分担すればよく、実質的には「2400dpi×書き込み光源個数」が上限となる。これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く良好に使用される。
【0234】
<現像手段>
前記現像は前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成することにより行うことができる。前記トナーは、感光体の帯電極性と同極性のトナーが用いられ、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって静電潜像が現像される。また、トナーのみで現像を行う1成分方式と、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
【0235】
<転写手段>
前記転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段であるが、感光体表面から記録媒体に可視像を直接転写する方法と、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を第一次転写手段によって一次転写した後に、該可視像を第二次転写手段によって前記記録媒体上に二次転写する方法がある。いずれの態様も良好に使用することができるが、高画質化に際して転写による悪影響が大きいような場合には、転写回数が少ない前者(直接転写)の方法が好ましい。
【0236】
前記転写は、前記転写手段により行うことができる。例えば、転写帯電器によって前記静電潜像担持体(電子写真感光体)を帯電することにより、前記可視像を転写することができる。なお、転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写手段の中から適宜選択することができ、例えば、記録媒体の搬送も同時に行うことのできる転写搬送ベルト等が好適に挙げられる。
【0237】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体(電子写真感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写帯電器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。前記転写帯電器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0238】
また、転写帯電器は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが望ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより望ましい。このような転写部材は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
【0239】
転写後の感光体表面電位(除電部に突入する差異の表面電位)によって、画像形成1サイクルあたりの感光体通過電荷量が大きく異なる。これが大きいほど、繰り返し使用における感光体の静電疲労に大きな影響を及ぼす。
【0240】
この通過電荷量とは、感光体の膜厚方向を流れる電荷量に相当する。感光体の画像形成装置中の動作として、メイン帯電器により所望の帯電電位に帯電され(ほとんどの場合負帯電される)、原稿に応じた入力信号に基づき光書き込みが行われる。この際、書き込みが行われた部分は光キャリアが発生し、表面電荷を中和し、電位減衰する。この時、光キャリア発生量に依存した電荷量が感光体膜厚方向に流れる。一方、光書き込みが行われない領域、所謂、非書き込み部は、現像工程及び転写工程を経て除電工程に進む(必要に応じて、その前にクリーニング工程が施される)。ここで、感光体の表面電位がメイン帯電により施された電位に近い状態(暗減衰分は除く)であると、光書き込みが行われた領域とほぼ同じ量の電荷量が感光体膜厚方向に流れることになる。一般的に、現在の原稿は書き込み率が低いため、この方式であると繰り返し使用における感光体の通過電荷量は除電工程で流れる電流がほとんどであり、例えば、書き込み率が10%であるとすると、除電工程で流れる電流は全体の9割を占めることになる。
【0241】
上記通過電荷は、感光体を構成する材料の劣化を引き起こす等、感光体静電特性に大きく影響を及ぼす。その結果、通過電荷量に依存して、特に電子写真感光体の残留電位を上昇させる。感光体の残留電位が上昇すると、本発明で使用される反転現像(ネガ・ポジ現像)では、画像濃度が低下することになり、大きな問題となる。従って、画像形成装置内での感光体の長寿命化(高耐久化)を狙うためには、如何に感光体の通過電荷量を小さくするかという課題が存在する。
【0242】
これに対して、光除電を行わないという考え方もあるが、メイン帯電器の帯電器能力が大きくないと帯電の安定化が図れず、残像のような問題を生じる場合がある。感光体の通過電荷は、感光体表面に帯電された電位(すなわち電位で生じた電界)により、光照射によって発生した光キャリアが移動することで生じる。従って、感光体表面電位を光以外の手段で減衰させることができれば、感光体1回転(画像形成1サイクル)あたりの通過電荷量を低減することができる。
【0243】
このためには、転写工程において転写バイアスを調整することにより、感光体通過電荷量を制御することが有効である。即ち、メイン帯電により帯電され、書き込みが行われない非書き込み部は、暗減衰量を除き、帯電された電位に近い状態で転写工程に移行する。この際、メイン帯電器により帯電された極性側の絶対値として100V以下まで低減することにより、引き続く除電工程に移行しても光キャリア発生がほとんど行われず、通過電荷が生じない。この値は、0Vにより近いほど好ましい。
【0244】
更には、転写バイアスの調整により、メイン帯電により施される帯電極性とは逆極性に感光体表面電位が帯電するように転写バイアスを印加させれば、光キャリアが絶対に発生しないため、より望ましい。但し、逆極性にまで帯電するような転写条件では、場合により転写チリを多く発生させたり、次の画像形成プロセス(サイクル)のメイン帯電が追いつかない場合が出てくる。その場合には、残像のような不具合が発生する場合があるため、逆極性の絶対値として100V以下であることが好ましい。
以上のような制御を加えることは、本発明における効果を顕著なものとして、有効に使用できるものである。
【0245】
<定着手段>
前記定着は、記録媒体に転写された可視像を、定着装置を用いて定着され、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0246】
<除電手段>
前記除電手段としては、前記静電潜像担持体に対して除電を行うことができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができる。例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0247】
<その他>
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真用のトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0248】
前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した、例えば、前記電子写真用カラートナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0249】
前記制御手段は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0250】
ここで、本発明の画像形成装置における一の態様について、図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図であり、後に示すような変形例も本発明の範疇に属するものである。
【0251】
図5において、静電潜像担持体としての感光体(1)は、導電性支持体上に、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含む感光層と、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層が設けられてなる。
感光体(1)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
【0252】
帯電手段である帯電部材(帯電器)(3)には、ワイヤー方式の帯電器やローラ形状の帯電器が用いられる。高速帯電が必要とされる場合にはスコロトロン方式の帯電器が良好に使用され、コンパクト化や後述の感光体を複数使用するタンデム方式の画像形成装置においては、酸性ガス(NOx、SOx等)やオゾン発生量の少ないローラ形状の帯電器が有効に使用される。この帯電器により、感光体には帯電が施されるが、感光体に印加される電界強度は高いほどドット再現性が良好になるため、20V/μm以上の電界強度が印加されることが望ましい。しかしながら、感光体の絶縁破壊や現像時のキャリア付着の問題を生み出す可能性があり、上限値は概ね60V/μm以下、より好ましくは50V/μm以下である。
【0253】
また、露光手段である画像露光部(5)には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。しかしながら、解像度を高くして書き込みを行うとそれだけ書き込みに時間がかかることになるため、書き込み光源が1つであると書き込みがドラム線速(プロセス速度)の律速になってしまう。従って、書き込み光源が1つの場合には1200dpi程度の解像度が上限となる。書き込み光源が複数の場合には、それぞれが書き込み領域を負担すれば良く、実質的には「1200dpi×書き込み光源個数」が上限となる。これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、良好に使用される。
【0254】
現像手段である現像ユニット(6)は、少なくとも1つの現像スリーブを有する。現像ユニット(6)では、感光体の帯電極性と同極性のトナーが使用され、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって、静電潜像が現像される。先の画像露光部に使用する光源によっても異なるが、近年使用するデジタル光源の場合には、一般的に画像面積率が低いことに対応して、書込部分にトナー現像を行う反転現像方式が光源の寿命等を考慮すると有利である。また、トナーのみで現像を行う1成分方式と、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
【0255】
また、転写手段である転写チャージャー(10)としては、転写ベルトや、転写ローラを用いることも可能であり、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが望ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより望ましい。特に、転写部材に電荷を供給する電源供給用部材(高圧電源)から出力された電流のうち、転写部材に関連する部分に流れ、感光体に流れ込まない電流を差し引くことにより、感光体への電流値を制御する方法が好ましい。
【0256】
転写電流は、感光体に静電的に付着しているトナーを引きはがし、被転写体(転写紙もしくは中間転写体など)へ移行させるために与える必要電荷量に基づく電流である。転写残などの転写不良を回避するためには、転写電流を大きくすれば良いことになるが、ネガ及びポジ現像を用いた場合には、感光体の帯電極性と逆極性の帯電を与えることになり、感光体の静電疲労が著しいものとなる。転写電流は大きいほど、感光体−トナー間の静電付着力を上回る電荷量を与えられるため有利であるが、ある閾値を越えると転写部材−感光体間で放電現象を生じてしまい、微細に現像されたトナー像を散らせる結果になる。このため、上限値としてはこの放電現象を起こさない範囲ということになる。この閾値は転写部材−感光体間の空隙(距離)、両者を構成する材料などによって変わるものであるが、概ね200μA以下程度で使用することにより、放電現象を回避できる。従って、転写電流の上限値は200μA程度である。
【0257】
また、感光体上に形成されたトナー像は、転写紙に転写されることで転写紙上の画像となるものであるが、この際、2つの方法がある。1つは図5に示すような感光体表面に現像されたトナー像を転写紙に直接転写する方法と、もう1つは感光体から中間転写体にトナー像が一旦、転写され、これを転写紙に転写する方法である。いずれの場合も本発明において用いることができる。このような転写部材は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
また、前述のように転写電流を制御することで、転写後の感光体表面電位(書き込み光の未露光部)を低下させておくことは、画像形成1サイクルあたりの感光体通過電荷量を低減することが出来、本発明においては有効に使用される。
【0258】
除電ランプ(2)等の光源には、前記静電潜像担持体に対し除電を行うことができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等が好適に挙げられる。特に、前記感光体の中間層に含有される金属酸化物が吸収しない波長を有する光源を使用することは、本発明の効果を一層顕著なものとし、有益に使用できる。
【0259】
半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等、あるいは蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、キセノンランプ等を用いることができる。また、波長を特定化するために、先の光源と組み合わせて、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0260】
図5中、符号8はレジストローラ、11は分離チャージャー、12は分離爪である。
また、現像ユニット(6)により感光体(1)上に現像されたトナーは、転写紙(9)に転写されるが、感光体(1)上に残存するトナーが生じた場合、クリーニング手段であるファーブラシ(14)及びブレード(15)により、感光体から除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行われることもあり、このようなクリーニングブラシとしてはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0261】
次に、図6は、本発明のタンデム型のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図6において、符号(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)はドラム状の感光体であり、感光体は少なくとも導電性支持体上に、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含む感光層と、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層が設けられてなる。
【0262】
この感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)は図6中の矢印方向に回転可能であり、その周りに少なくとも回転順に帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)、少なくとも1つの現像スリーブを有する現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)、クリーニング部材(20Y)、(20M)、(20C)、(20K)、除電手段(27Y)、(27M)、(27C)、(27K)が配置されている。帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)は、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電器である。この帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)と現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)の間の感光体表面側より、露光器(18Y)、(18M)、(18C)、(18K)からのレーザー光が照射され、感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)に静電潜像が形成されるようになっている。
そして、このような感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)を中心とした4つの画像形成要素(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(22)に沿って並置されている。転写搬送ベルト(22)は各画像形成ユニット(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)の現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)とクリーニング部材(20Y)、(20M)、(20C)、(20K)の間で感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)に当接しており、転写搬送ベルト(22)の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ(21Y)、(21M)、(21C)、(21K)が配置されている。各画像形成要素(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0263】
図6に示す構成のフルカラー画像形成装置において、画像形成動作は次のようにして行われる。まず、各画像形成要素(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)において、感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)に静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)が回転し、帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)により、感光体が帯電される。この際、高精細の潜像を形成するためには、感光体の電界強度が20V/μm以上、好ましくは60Vμm以下、より好ましくは50V/μm以下になるように帯電が施される。
【0264】
次に、感光体の外側に配置された露光部(18Y)、(18M)、(18C)、(18K)でレーザー光により、1200dpi以上、好ましくは2400dpi以上の解像度で書き込みが行われ、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。この書き込み光源としては前述の様に、任意の感光体に適した光源が用いられる。この場合にも書き込み光源1つに対して2400dpiの書き込みが概ね上限となる。
【0265】
次に、現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)は、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナーで現像を行う現像手段で、4つの感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙(26)は給紙コロ(図示せず)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(23)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト(22)に送られる。転写搬送ベルト(22)上に保持された転写紙(26)は搬送されて、各感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)との当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行われる。
【0266】
感光体上のトナー像は、転写ブラシ(21Y)、(21M)、(21C)、(21K)に印加された転写バイアスと感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)との電位差から形成される電界により、転写紙(26)上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙(26)は定着装置(24)に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。
【0267】
また、転写部で転写されずに各感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)上に残った残留トナーは、クリーニング装置(20Y)、(20M)、(20C)、(20K)で回収される。
続いて、除電部材(27Y)、(27M)、(27C)、(27K)により、感光体上の余分な残留電荷が除去される。この後再び、帯電器で均一に帯電が施されて、次の画像形成が行われる。
【0268】
なお、図6の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものではなく、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素((25Y)、(25M)、(25C))が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
【0269】
また、先に述べたように転写後の感光体表面が、主帯電器により帯電させた極性側に100V以下に帯電させることが好ましく、逆極性側に帯電させることがより好ましく、逆極性側に100V以下に帯電させることが特に好ましい。これにより、感光体の繰り返し使用における残留電位の上昇を低減化することができる。
【0270】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図7に示すものが挙げられる。
感光体(101)は、導電性支持体上に、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含む感光層と、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなる保護層が設けられてなる。
【0271】
画像露光部(103)には、書き込みを行うことのできる光源が用いられ、帯電器(102)には、任意の帯電器が用いられる。図7中、符号104は少なくとも1つの現像スリーブを有する現像手段、105は転写体、106は転写手段、107はクリ−ニング手段、108は除電部材である。
【実施例】
【0272】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」はすべて質量部である。
【0273】
(合成例1)
[チタニルフタロシアニン結晶前駆体の合成]
特開2001−19871号公報に記載の合成方法に準じて顔料を作製した。
すなわち、、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。
粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過し、次いで、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。なお、前記洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった。
この不定形チタニルフタロシアニンのCu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピークとして、7.0°〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上であった。
【0274】
得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行った後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末(前駆体)を得た。
前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で33倍の量を用いた。なお、合成例1の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、市販のX線回折装置(理学電機:RINT1100)により、下記の測定条件によりX線回折スペクトル(XDスペクトル)を測定したところ、Cu−Kα線(CuKαの特性X線)(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2゜に最大ピークと最低角7.3±0.2゜にピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないものであった。その結果X線回折スペクトル(XDスペクトル)を図8に示す。
また、得られた水ペーストの一部を80℃の減圧下(5mmHg)で、2日間乾燥して、低結晶性チタニルフタロシアニン粉末を得た。水ペーストの乾燥粉末のX線回折スペクトル(XDスペクトル)を図9に示す。
【0275】
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
【0276】
[前駆体の結晶変換によるチタニルフタロシアニン結晶の合成]
次いで、上記で得た前駆体の有機溶媒処理を行った。上記により合成した前駆体40gを、400gのテトラヒドロフラン中に、暗所にて1週間浸漬・放置した。1週間後、チタニルフタロシアニン結晶を濾過分別して、100℃にて1日間真空乾燥を行い、本発明に用いるチタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶1とする)。
得られた結晶1を先の条件と同様にして測定したX線回折スペクトルを図10に示す。
この図10のX線回折スペクトルは、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、及び28.3°にもピークを有することが分かった。
【0277】
(合成例2〜7)
合成例1における前駆体合成において、テトラヒドロフランの代わりに下記表1に記載の有機溶媒をそれぞれ用いた以外は、合成例1と同様にしてチタニルフタロシアニン結晶を合成した。合成例2〜合成例7に対応して、それぞれ結晶2〜結晶7とする。
【0278】
【表1】

【0279】
合成例2〜7において得られた前駆体は、全て合成例1の前駆体と同様に、図8に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルを示した。
また、得られた結晶2〜7を先の条件にてX線回折スペクトルの測定を行い、何れの結晶も図10に示すX線回折スペクトルとほぼ同様のスペクトルを得た。
【0280】
(合成例8)
合成例1と同様にして得られた前駆体を、以下のように有機溶媒処理を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た。
合成例1で合成した前駆体40gを2−ブタノン400gと共に、直径150mmのボールミルポットに投入した。この中に、直径2mmのジルコニアボール3.5kgを投入して、24時間ミリング処理を行った。
有機溶媒処理後、チタニルフタロシアニン結晶を濾過分別して、100℃にて1日間真空乾燥を行い、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶8とする)。
得られた結晶8を先と同じ条件にてX線回折スペクトルの測定を行い、図10に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルを得た。
【0281】
(合成例9)
合成例1と同様にして得られた前駆体を、以下のような結晶変換処理を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た。
得られた前駆体40gを、直径150mmのボールミルポットに投入した。この中に、直径2mmのジルコニアボール3.5kgを投入して、48時間ミリング処理を行った。
結晶変換処理後、チタニルフタロシアニン結晶をボールから分別して、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶9とする)。
得られた結晶9を先と同じ条件にてX線回折スペクトルの測定を行い、図10に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルを得た。
【0282】
(合成例10)
合成例1における前駆体合成において、テトラヒドロフランの代わりに2−ブタノンを用いた以外は、合成例1と同様にチタニルフタロシアニン結晶を合成した(結晶10とする)。
得られた前駆体を先と同じ条件にて測定したX線回折スペクトルを図11に示す。また、得られたチタニルフタロシアニン結晶を先と同じ条件にて測定したX線回折スペクトルを図12に示す。
図12に示すX線回折スペクトルは、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、及び28.3°にもピークを有し、図10に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルである。
【0283】
(合成例11)
特公平5−31137号公報に記載の製造例1に準じてチタニルフタロシアニン結晶を合成した。
即ち、フタロジニトリル97.5gをα−クロロナフタレン750ml中に加え、次に窒素雰囲気下で四塩化チタン22mlを滴下する。滴下後昇温し、撹拌しながら200〜220℃で3時間反応させた後、放冷し、100〜130℃で熱時濾過し、100℃に加熱したα−クロロナフタレン200mlで洗浄した。
得られた粗ケーキを。α−クロロナフタレン300ml、次にメタノール300mlで室温にて懸洗し、更にメタノール800mlで1時間熱懸洗を3回行い、得られたケーキを水700mlに懸濁させ、2時間熱懸洗を行った。熱懸洗濾液のpHがおよそ7になるまで熱懸洗を繰り返した。この後、140〜145℃のN−メチルピロリドン700ml中で、2時間熱懸洗を行う操作を4回実施した。次いで、メタノール800mlで2回熱懸洗を行い、濾過し、1日間80℃真空乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶11とする)。
得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルは、特公平5−31137号公報の図−1と同様のものであり、本発明における合成例1の図10に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルが得られた。
【0284】
上記合成例11の製造方法は合成例1の製造方法と異なる。すなわち、7.0〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上である不定形チタニルフタロシアニンを結晶変換して得られた、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を前駆体としない点で、合成例1とは製造方法が大きく異なる。また、合成例11の原材料にはハロゲン化チタンを含有している。
【0285】
(合成例12)
特公平5−31137号公報に記載の製造例4に準じてチタニルフタロシアニン結晶を合成した。
即ち、フタロジニトリル46gをα−クロロナフタレン250ml中に仕込み、加熱溶解した後、四塩化チタンを10ml滴下し、150℃で30分間撹拌を行い、次いで徐々に昇温し、220℃で2時間加熱撹拌を行った。その後、撹拌しながら放冷し、反応系の温度が100℃に下がった時点で熱濾過し、次いでメタノール600mlで熱懸濁、熱水煮沸懸濁をそれぞれ1回ずつ行った後、600mlのN−メチルピロリドンにより、120℃で1時間熱懸濁を行い、熱濾過後、800mlのメタノールで熱懸濁し、濾過後、1日間80℃真空乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶12とする)。
得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルは、特公平5−31137号公報の図−7と同様のものであり、本発明における合成例1の図10に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルが得られた。
【0286】
上記合成例12の製造方法は合成例1の製造方法と異なる。すなわち、7.0〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上である不定形チタニルフタロシアニンを結晶変換して得られた、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を前駆体としない点で、合成例1とは製造方法が大きく異なる。また、合成例12の原材料にはハロゲン化チタンを含有している。
【0287】
(比較合成例1)
特開昭61−239248号公報の実施例に記載の合成方法に準じて、α型チタニルフタロシアニン結晶を合成した。
即ち、フタロジニトリル40gと4塩化チタン18g及びα−クロロナフタレン500mの混合物を窒素気流下240〜250℃で3時間加熱撹拌して反応を完結させた。その後濾過し、生成物であるジクロロチタニウムフタロシアニンを得た。得られたジクロロチタニウムフタロシアニンを濃アンモニア水300m及びピリジン300mと共に1時間加熱還流し、目的物であるα型チタニルフタロシアニン18gを得た。生成物はアセトンにより、ソックスレー抽出器で充分洗浄を行った。洗浄後、60℃で1日間真空乾燥を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶13とする)。
【0288】
〔X線回折スペクトルの測定〕
図12は、合成例10で得られた前駆体のX線回折スペクトルの一例を示した図である。図12から明らかなように、合成例10で得られた前駆体は、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θ(±0.2°)の回折ピークとして、27.2°に最大回折ピークを有するが、最も低角側の回折ピークとして7.5°に回折ピークを有している。
【0289】
合成例1で得られた前駆体と、合成例10で得られた前駆体に、それぞれ比較合成例1で作製した結晶13を3質量%添加し、乳鉢で混合して、混合粉末を得た。それぞれを先と同じ条件によりX線回折スペクトルを測定した。
合成例1の前駆体を含む粉末のX線回折スペクトルを図13に、合成例10の前駆体を含む粉末のX線回折スペクトルを図14に示す。図13のスペクトルにおいては、低角側に7.3°と7.5°の2つにピークが存在し、少なくとも7.3°と7.5°のピークは異なるものであることが分かる。一方、図14のスペクトルにおいては、低角側のピークは7.5°のみに存在し、図13のスペクトルとは明らかに異なっている。
【0290】
(製造例1)
[分散液1の作製]
次に、本発明で合成したチタニルフタロシアニン結晶の分散液を作製した。下記組成の分散液を下に示す条件のビーズミリングにより作製した。
・顔料作製例1で作製したチタニルフタロシアニン結晶(結晶1)・・・48質量部
・ポリビニルブチラール(積水化学株式会社製、BX−1)・・・32質量部
・2−ブタノン・・・720質量部
【0291】
市販のビーズミル分散機(VMA−GETZMANN GMBH製、DISPERMAT SL、ローターの直径は50mm、分散室容量は125ml)に直径0.5mmのジルコニアボールを用いた。
先ずポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノン溶液を循環タンクに投入し、循環を行い、樹脂液が循環系に満たされ、循環タンクに戻ってくるのを確認した。次いで、顔料を循環タンクに全て投入し、循環タンクで撹拌を行った後、ローター回転数3000r.p.m.にて300分間循環分散を行った。
【0292】
分散終了後、ビーズミル分散機よりミルベースを払い出し、更に2060質量部の2−ブタノンを投入し、希釈と同時に分散機に残ったミルベースをすべて払い出し、分散液を作製した(以下、「分散液1」とする)。
作製した分散液1の一部をドライアップして粉末とした。これを用いて前記と同じ条件でX線回折スペクトルを測定した。得られたスペクトルは「結晶1」と同様であり、分散を行っても結晶が安定であることが分かった。
【0293】
(製造例2〜12)
[分散液2〜12の作製]
製造例1において、使用したチタニルフタロシアニン結晶を「結晶1」から「結晶2」〜「結晶12」に変更した以外は、製造例1と同様にして分散液2〜12を作製した。なお、作製した分散液は、使用した結晶番号2〜12に応じて、それぞれ分散液2〜12とした。
【0294】
(製造例13)
[分散液13の作製]
製造例1において、使用したチタニルフタロシアニン結晶を「結晶1」から、合成例10の前駆体に変更した以外は、製造例1と同様にして分散液13を作製した。
【0295】
(製造例14)
[分散液14の作製]
製造例1において、使用したチタニルフタロシアニン結晶を「結晶1」から、「結晶13」に変更した以外は、製造例1と同様にして分散液14を作製した。
【0296】
次に、架橋型電荷輸送層に用いられる電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(1官能の電荷輸送性構造を有する化合物)の合成例について述べる。
(1官能の電荷輸送性構造を有する化合物の合成例)
以下により、1官能の電荷輸送性構造を有する化合物を合成した、(なお、本発明における1官能の電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば、特許第3164426号公報記載の方法にて合成することができる。)
【0297】
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物[下記構造式(B)]の合成
下記構造式(A)で表されるメトキシ基置換トリアリールアミン化合物113.85部(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138部(0.92mol)にスルホラン240部を加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99部(0.91mol)を1時間かけて滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。
【0298】
【化35】

【0299】
上記反応液にトルエン約1500部を加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。
上記により下記構造式(B)の白色結晶88.1部(収率=80.4%)を得た。
【0300】
【化36】

【0301】
得られた白色結晶の融点は、64.0〜66.0℃であった。また、白色結晶の元素分析値を計算値と共に下記表2に示す。
【0302】
【表2】

【0303】
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物の合成例(前記例示化合物No.54に相当の化合物)
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物[構造式(B)]82.9部(0.227mol)をテトラヒドロフラン400部に溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4部,水:100部)を滴下した。
この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2部(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。
この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。
上記により下記構造式(54)で示される1官能の電荷輸送性構造を有するトリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(前記例示化合物No.54に相当する化合物)の白色結晶80.73部(収率=84.8%)を得た。
【0304】
【化37】

【0305】
得られた白色結晶の融点は、117.5〜119.0℃であった。また、白色結晶の元素分析値を計算値と共に下記表3に示す。
【0306】
【表3】

【0307】
−電子写真感光体の作製−
(実施例1)
直径30mmのアルミドラム(JIS1050)に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、電荷輸送層塗工液、及び保護層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層、5μmの保護層を形成して積層感光体を作製した(これを感光体1とする)。
下引き層、電荷発生層、電荷輸送層はいずれも浸漬塗工法により形成したが、保護層は下記のように形成した。
保護層塗工液を電荷輸送層上にスプレー塗工し、20分間自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行なうことによって塗布膜を硬化させた。さらに、130℃で20分間の乾燥工程を加え5μmの保護層を形成した。
なお、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、及び保護層の塗工にはそれぞれ下記組成の塗工液を用いた。
【0308】
(下引き層塗工液)
酸化チタン(CR−EL;石原産業社製): 70部
アルキッド樹脂〔ベッコライトM6401−50−S
(固形分50%)、大日本インキ化学工業製〕: 15部
メラミン樹脂〔スーパーベッカミンL−121−60
(固形分60%)、大日本インキ化学工業製〕: 10部
2−ブタノン: 100部
【0309】
(電荷発生層塗工液)
前記の分散液1を用いた。
【0310】
(電荷輸送層塗工液)
ポリカーボネート(ユーピロンZ300:三菱ガス化学社製): 10部
下記構造式(C)で示される電荷輸送物質: 7部
【化38】


テトラヒドロフラン: 80部
【0311】
(保護層塗工液)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー〔
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD;
TMPTA、日本化薬製)、分子量;296、官能基数;3官能、
分子量/官能基数=99〕: 10部
前記構造式(54)で示される1官能の電荷輸送性構造を有する
ラジカル重合性化合物(例示化合物No.54): 10部
光重合開始剤〔1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)〕: 1部
テトラヒドロフラン: 100部
【0312】
(実施例2〜12)
実施例1において、電荷発生層の形成に使用した分散液1の代わりに、分散液2〜12を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を形成した(分散液番号に応じて、感光体2〜12とする)。
【0313】
(比較例1〜2)
実施例1において、電荷発生層の形成に使用した分散液1の代わりに、分散液13〜14を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を形成した(分散液番号に応じて、感光体13〜14とする)。
【0314】
(実施例13)
以上のように作製した感光体1を図5に示すような画像形成装置に搭載し、以下の条件で評価した。なお、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)とし、帯電部材としてスコロトロン帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として660nmLEDを用いた。
試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続2万枚印刷を行った。試験環境は、23℃、55%RHである。
【0315】
感光体帯電電位(未露光部電位):−900V
現像バイアス:−650V(ネガ・ポジ現像)
露光部表面電位:−120V
【0316】
評価として、2万枚の画像印刷前後における感光体帯電電位及び露光部電位を測定した。
初期は、上記の帯電電位、露光後表面電位になるように、帯電条件、書き込み条件(露光量)を感光体ごとに決定した。2万枚印刷後においては、初期状態で決定した帯電条件と書き込み条件の値に固定して電位測定を実施した。
測定方法としては、図5に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体を帯電した後、上記半導体レーザーでベタ書込みを行い、現像部位における未露光部表面電位及び露光部電位を測定した。結果を下記表4に示す。
【0317】
(実施例14〜24、比較例3〜4)
実施例13で使用した感光体1の代わりに、感光体2〜14を用いた以外は実施例1と同様に評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0318】
【表4】

【0319】
(実施例25〜36、比較例5〜6)
実施例25〜36、比較例5〜6の試験を、10℃、15%RHの環境下で行った以外は、実施例13〜24、比較例3〜4と同様に評価を行った。結果を下記表5に示す。
【0320】
【表5】

【0321】
(実施例37〜48、比較例7〜8)
実施例37〜48、比較例7〜8の試験を、30℃、90%RHの環境下で行った以外は、実施例13〜24、比較例3〜4と同様に評価を行った。結果を下記表6に示す。
【0322】
【表6】

【0323】
上記評価結果から、本発明の感光体1〜9を用いた場合には、繰り返し使用後にも良好な特性を示し、環境が変動しても、実機内電位の変化量が小さい。
感光体10〜12を用いた場合には、繰り返し使用、環境変動において、感光体1〜9を用いた場合と比較すると、実機内電位の変動がやや大きい。
一方、比較例の感光体13を用いた場合には、本発明の感光体1〜12を用いた場合よりも、更に繰り返し使用、環境変動において、実機内電位の変動が大きい。
同様に比較例の感光体14を用いた場合には、本発明の感光体1〜12を用いた場合よりも、更に繰り返し使用、環境変動において、実機内電位の変動が大きい。
上記評価により、本発明の感光体を用いた場合には、耐久性を有すると共に静電特性も安定しており、繰り返し使用しても安定な画像を形成できることが分かった。
【0324】
(実施例49)
実施例8における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例8と同様に感光体を作製した(感光体15とする)。
【0325】
(保護層塗工液)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー〔
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SR−295;
化薬サートマー製)、分子量;352、官能基数;4官能、
分子量/官能基数=88〕: 10部
前記構造式(54)で示される1官能の電荷輸送性構造を有する
ラジカル重合性化合物(例示化合物No.54): 10部
光重合開始剤〔1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)〕: 1部
テトラヒドロフラン: 100部
【0326】
(実施例50)
実施例8における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例8と同様に感光体を作製した(感光体16とする)。
【0327】
(保護層塗工液)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー〔
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−60;日本化薬製)、
分子量;1263、官能基数;6官能、分子量/官能基数=211〕: 10部
光重合開始剤〔2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
(イルガキュア651;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
前記構造式(54)で示される1官能の電荷輸送性構造を有する
ラジカル重合性化合物(例示化合物No.54): 10部
テトラヒドロフラン: 100部
【0328】
(実施例51)
実施例8における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例8と同様に感光体を作製した(感光体17とする)。
【0329】
(保護層塗工液)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー〔
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD
TMPTA;日本化薬製)、分子量;296、官能基数;3官能、
分子量/官能基数=99〕: 10部
下記構造式(161)で示される1官能の電荷輸送性構造を有する
ラジカル重合性化合物(前記例示化合物No.161に相当の化合物):10部
【化39】


光重合開始剤〔1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)〕: 1部
テトラヒドロフラン: 100部
【0330】
(実施例52)
実施例8における電荷輸送層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例8と同様に電子写真感光体を作製した(感光体18とする)。
【0331】
(電荷輸送層塗工液)
下記構造式(12)で示される高分子電荷輸送物質
(重量平均分子量:125000): 15部
【化40】


下記構造式(13)で示される可塑剤: 0.5部
【化41】


テトラヒドロフラン: 100部
【0332】
(比較例9)
実施例8における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例8と同様に感光体を作製した(感光体19とする)。
【0333】
(保護層塗工液)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー〔
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD
TMPTA;日本化薬製)、分子量;296、官能基数;3官能、
分子量/官能基数=99〕: 10部
下記構造式(14)で示される2官能の電荷輸送性構造を有する
ラジカル重合性化合物: 10部
【化42】


光重合開始剤〔1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)〕: 1部
テトラヒドロフラン: 100部
【0334】
(比較例10)
実施例8において、電荷輸送層の膜厚を25μmとし、保護層を設けない以外は、実施例8と同様に感光体を作製した(感光体20とする)。
【0335】
(実施例53)
前記のように作製した感光体8を図5に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材としてスコロトロン帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として660nmLEDを用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続10万枚印刷を行った。試験環境は、23℃、55%RHである。
帯電条件:
DCバイアス:−6.5kV
グリッド電圧:−930V
【0336】
その後の白ベタ及びハーフトーン画像を出力、評価し、地汚れの有無、画像濃度を確認した(試験環境は、22℃−55%RHである)。
なお、地汚れ画像評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表した。以上の結果を下記表7に示す。
また、10万枚前後にて、感光体の膜厚測定を実施した。長手方向1cm間隔で測定し、その平均値を感光体の膜厚とした。10万枚試験前膜厚と10万枚試験後の膜厚の差から、摩耗量を求めた。結果を下記表7に示す。
【0337】
(実施例54〜57、比較例11〜12)
実施例53において使用した感光体8を、感光体15〜20に変更した以外は、実施例53と同様に試験を行った。結果を下記表7に示す。
【0338】
【表7】

【0339】
上記評価結果から、本発明の感光体を用いた場合には、10万枚の画像出力後においても地汚れや画像濃度、及び摩耗量はいずれも良好であることが分かった。
【0340】
(実施例58)
前記のように作製した感光体8を図7に示すようなプロセスカートリッジに装着し、図6に示すような画像形成装置に搭載して評価した。なお、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)とし、帯電部材として帯電ローラの両端部に厚さ50μmの絶縁テープを巻き付けた近接配置用の帯電部材(感光体と帯電部材表面間の空隙が50μm)を用い、下記の帯電条件にて、帯電を行った。また、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として660nmLED(日亜化学製)を用いた。
試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続10万枚印刷を行った。
帯電条件:
DCバイアス:−900V
ACバイアス:2.0kV(Peak to peak)、周波数:2.0kHz
【0341】
評価は、10万枚の印刷後において、黒ステーションにて白ベタを出力、評価し、地汚れの有無を確認した(試験環境は、22℃−55%RHである)。なお、地汚れ画像評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表した。
また、10万枚の印刷前後において、ISO/JIS−SCID画像N1(ポートレート)を出力して、カラー色の再現性について評価した。以上の結果を下記表8に示す。
【0342】
(実施例59〜62、比較例13〜14)
実施例58において使用した感光体8を、感光体15〜20に変更した以外は、実施例58と同様に試験を行った。結果を下記表8に示す。
【0343】
【表8】

【0344】
上記評価結果から、本発明の感光体を用いた場合には、10万枚の画像出力後においても地汚れやカラー再現性はいずれも良好であることが分かった。
【0345】
上記評価結果から分かるように、本発明によれば、繰り返し使用しても安定な画像を形成することのできる電子写真感光体が得られ、これを用いれば、例えば、反転現像(ネガ・ポジ現像)においても地汚れや濃度低下などがなく高耐久かつ安定動作が可能な画像形成装置、及び高耐久で取扱いが良好な画像形成装置用プロセスカートリッジが構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0346】
【図1】本発明における電子写真感光体の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明における電子写真感光体の別の構成例を示す断面図である。
【図3】本発明における電子写真感光体の更に別の構成例を示す断面図である。
【図4】本発明における電子写真感光体のまた更に別の構成例を示す断面図である。
【図5】本発明の画像形成装置を説明するための概略図である。
【図6】本発明のタンデム型のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図である。
【図7】本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジを説明するための概略図である。
【図8】合成例1で得られたチタニルフタロシアニン粉末(前駆体)のXDスペクトルを示す図である。
【図9】合成例1で得られた水ペースト乾燥粉末のXDスペクトルを示す図である。
【図10】合成例1で得られたチタニルフタロシアニン結晶(結晶1)のXDスペクトルを示す図である。
【図11】合成例9で得られたチタニルフタロシアニン粉末(前駆体)のXDスペクトルを示す図である。
【図12】合成例9で得られたチタニルフタロシアニン結晶(結晶10)のXDスペクトルを示す図である。
【図13】合成例1の前駆体と比較合成例1の結晶13との混合粉末(質量比97:3)のXDスペクトルの一例を示した図である。
【図14】合成例10の前駆体と比較合成例1の結晶13との混合粉末(質量比97:3)のX線回折スペクトルの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0347】
(図1-図4)
31 導電性支持体
32 中間層
34 感光層
35 電荷ブロッキング層
36 モアレ防止層
37 電荷発生層
38 電荷輸送層
39 保護層
(図5)
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電部材
5 画像露光部
6 現像ユニット
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
(図6)
16K、16C、16M、16Y 感光体
17K、17C、17M、17Y 帯電部材
18K、18C、18M、18Y 画像露光部材
19K、19C、19M、19Y 現像部材
20K、20C、20M、20Y クリーニング部材
21K、21C、21M、21Y 転写部材
22 転写ベルト
23 レジストローラ
24 定着部材
25K、25C、25M、25Y 画像形成要素
26 転写紙
27K、27C、27M、27Y 除電部材
(図7)
101 感光体
102 帯電部材
103 画像露光部材
104 現像部材
105 転写紙
106 転写部材
107 クリーニング部材
108 除電部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、少なくとも感光層及び保護層を順に積層してなる電子写真感光体において、
前記感光層が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含み、かつ前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた樹脂硬化物からなることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記感光層が、電荷発生層と電荷輸送層からなる積層構成であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物が、下記一般式(1)又は(2)で表される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【化1】


[一般式(1)、(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。m、nは0〜3の整数を表す。]
【請求項4】
前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)で表される少なくとも一種の化合物あることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【化2】


[一般式(3)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、下記式(4)、(5)、(6)で表される2価基を表す。]
【化3】

【請求項5】
前記樹脂硬化物からなる保護層が、加熱手段又は光エネルギー照射手段の少なくとも何れかにより硬化、形成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記感光層に含まれるチタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得られたものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記結晶変換処理が、有機溶媒を用いて結晶変換を行うものであることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記結晶変換処理に使用する有機溶媒が、ケトン系溶媒又はエーテル系溶媒の中から選ばれる少なくとも一種の溶媒を含むことを特徴とする請求項7に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記結晶変換処理に際して、機械的なエネルギーが付与されることを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶が、
CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有する不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で有機溶媒により結晶変換して得られたものであることを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記不定形チタニルフタロシアニンの7.0〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上であることを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
前記不定形チタニルフタロシアニンの結晶変換に用いられる有機溶媒が、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる少なくとも一種の溶媒を含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の電子写真感光体。
【請求項13】
前記不定形チタニルフタロシアニンが、ハロゲン化チタンを用いずに合成されたものであることを特徴とする請求項10乃至12の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項14】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1乃至13の何れかに記載の感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体からなる画像形成要素が複数配列されてなる画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1乃至13の何れかに記載の感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項1乃至13の何れかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段から選ばれる1つの手段と、電子写真感光体とが一体となった画像形成装置用プロセスカートリッジにおいて、該電子写真感光体が請求項1乃至13の何れかに記載の感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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