説明

電子写真感光体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】 クリーニング性に優れ、低表面エネルギーの持続性が著しく、耐摩耗性が高く安定であり、且つ電気的特性が良好であり、特に重合トナー(或いは球形トナー)に好適であり、長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体、および長寿命、高性能の該感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】 導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の表面層が、主としてラジカル反応性及び/又はアミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンをラジカル重合性モノマー中に分散させ、硬化させた架橋樹脂層であることを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング性に優れ、耐摩耗性が高く、且つ電気的特性が良好な感光層を設けることにより、高耐久性を有し、かつ長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体に関する。また、それらの長寿命、高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機感光体(OPC)は良好な性能、様々な利点から、無機感光体に代わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(I)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(II)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(III)材料の選択範囲の広さ、(IV)製造の容易さ、(V)低コスト、(VI)無毒性、等が挙げられる。
一方、最近画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
したがって、有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減することが不可欠であり、これが当分野でもっとも解決が迫られている課題である。
【0003】
感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(1)表面層に硬化性バインダーを用いたもの(例えば、特許文献1参照。)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(例えば、特許文献2参照。)、(3)表面層に無機フィラーを分散させたもの(例えば、特許文献3参照。)等が挙げられる。これらの技術のうち、(1)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いためや重合開始剤、未反応残基などの不純物により残留電位が上昇し画像濃度低下が発生し易い傾向がある。また、(2)の高分子型電荷輸送物質を用いたもの、及び(3)の無機フィラーを分散させたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。さらに(3)の無機フィラーを分散させたものは、無機フィラー表面に存在するトラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にある。これら(1)、(2)、(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
【0004】
更に、(1)の耐摩耗性と耐傷性を改良するために多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させた感光体も知られている(特許文献4参照)。しかし、この感光体においては、感光層上に設けた保護層にこの多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させる旨の記載があるものの、この保護層においては電荷輸送物質を含有せしめてもよいことが記載されているのみで具体的な記載はなく、しかも、単に表面層に低分子の電荷輸送物を含有させた場合には、上記硬化物との相溶性の問題があり、これにより、低分子電荷輸送物質の析出、白濁現象が起こり、機械強度も低下してしまうことがあった。
さらに、この感光体は、具体的には高分子バインダーを含有した状態でモノマーを反応させるため、硬化が充分に進行しないことや、硬化物とバインダー樹脂との相溶性の問題があり、硬化時に相分離による表面凹凸が生じクリーニング不良を引き起こす傾向が見られた。
【0005】
これらに代わる感光層の耐摩耗技術として、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送材及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けることが知られており(例えば、特許文献5参照。)、このバインダー樹脂には、炭素−炭素二重結合を有し、上記電荷輸送材に対して反応性を有するものと、上記二重結合を有せず反応性を有しないものが含まれる。この感光体は耐摩耗性と良好な電気的特性を両立しており注目されるが、バインダー樹脂として反応性を有しないものを使用した場合においては、バインダー樹脂と、上記モノマーと電荷輸送材との反応により生成した硬化物との相溶性が悪く、層分離から架橋時に表面凹凸が生じ、クリーニング不良を引き起こす傾向が見られた。また、上記のように、この場合バインダー樹脂がモノマーの硬化を妨げるほか、この感光体において使用される上記モノマーとして具体的に記載されているものは2官能性のものであり、この2官能性モノマーでは官能基数が少なく充分な架橋密度が得られず、これらの点で耐摩耗性の点では未だ満足するには至らなかった。また、反応性を有するバインダー樹脂を使用した場合においても、上記モノマーおよび上記バインダー樹脂に含有される官能基数の低さから、上記電荷輸送物質の結合量と架橋密度との両立は難しく、電気特性及び耐摩耗性も充分とは言えないものであった。
また、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する感光層も知られている(例えば、特許文献6参照。)。
しかし、この感光層は嵩高い正孔輸送性化合物が二つ以上の連鎖重合性官能基を有するため硬化物中に歪みが発生し内部応力が高くなり、表面層の荒れや経時におけるクラックが発生しやすい場合があり、十分な耐久性を有していない。
【0006】
また、感光体の耐摩耗性を高めることが可能となっても、それによってクリーニング不良、画像ボケ等の異常画像、画質劣化が発生しやすくなったのでは、高耐久化が実現されたことにはならない。特に最近業界では良く使われている重合トナー(或いは球形トナー)は表面エネルギーの高い(或いは摩擦係数が高い)感光体からクリーニングしようとすると、擦り抜きのクリーニング不良が発生しやすい。
感光体表面の表面エネルギーや摩擦係数を低減させるためには、感光体の表面層に各種滑剤を添加する方法が知られている。表面層にフッ素変性シリコーンオイル等の滑剤を含有させる方法が開示されている(例えば、特許文献7、8、9参照。)。この方法は、感光体の表面エネルギーを低減させることにより、クリーニング性や異物除去に対して効果が認められる方法ではあるが、これらのフッ素変性シリコーンオイルは保護層の形成過程で表面近傍に移行するため、繰り返し使用による表面層の極微量な摩耗によって早期にその効果が失われてしまう。従って、高耐久化に対しては十分な効果が得られていないのが実情であった。
【0007】
また、感光体の最表面層に各種微粒子状滑剤を添加する方法に関しても様々な試みがなされている。例えばシリコーン樹脂微粒子、フッ素含有樹脂微粒子(例えば、特許文献10参照。)、メラミン樹脂微粒子(例えば特許文献11参照。)等の添加が挙げられる。表面層にポリエチレン粉体を含有させる方法(例えば、特許文献12参照。)が、表面層に含フッ素樹脂粉体を含有させる方法(例えば、特許文献13参照。)が、表面層にシリコーン微粒子を含有させる方法(例えば、特許文献14、15参照。)が、また、表面層に架橋型有機微粒子を含有させる方法(例えば、特許文献16、17参照。)が開示されている。更に、表面層にメチルシロキサン樹脂微粒子を含有させる方法(例えば、特許文献18参照。)が開示されている。感光体の表面層にこれらの微粒子状滑剤を分散させる方法は、効果の持続性を高める上で有効であり、前記のシリコーンオイル等の添加に比べて高耐久化に対し有効な方法であると言える。しかしながら、これらの感光体は耐摩耗性の不十分な電荷輸送層中に潤滑剤が含有されているため、初期的には各種物質の付着抑制に効果が認められるものの、その長期持続性に関しては不十分である。
更に、表面層にバインダー樹脂との相溶性を持つアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有させる方法(特許文献19参照)が提案され、表面エネルギー低減、クリーニング性、画像ボケ抑制等効果を表した。しかしながら、アクリル架橋系の感光層に従来のアクリル変性ポリオルガノシロキサンを添加した場合、架橋反応そのものが阻害され耐摩耗性の高い感光層が得られないことが分かった。数十%のアクリル変性ポリオルガノシロキサンを添加した場合では架橋反応を長く続けても表面粘着性が消えない。原因は定かでないが、ラジカル連鎖反応がアクリル変性オルガノシロキサンによって抑制されてしまうためと考えられる。
以上のようなことから、これら従来技術における滑剤を含有させた架橋感光層を有する感光体においても、現状では充分な総合特性を有しているとは言えない。
【0008】
【特許文献1】特開昭56−48637号公報
【特許文献2】特開昭64−1728号公報
【特許文献3】特開平4−281461号公報
【特許文献4】特許第3262488号公報
【特許文献5】特許第3194392号公報
【特許文献6】特開2000−66425号公報
【特許文献7】特開平07−295248号公報
【特許文献8】特開平07−301936号公報
【特許文献9】特開平08−082940号公報
【特許文献10】特開昭63−65449号公報
【特許文献11】特開昭60−177349号公報
【特許文献12】特開平02−143257号公報
【特許文献13】特開平02−144550号公報
【特許文献14】特開平07−128872号公報
【特許文献15】特開平10−254160号公報
【特許文献16】特開平2000−010322号公報
【特許文献17】米国特許5,998,072号明細書
【特許文献18】特開平08−190213号公報
【特許文献19】特願2004−011714号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、クリーニング性に優れ、低表面エネルギーの持続性が著しく、耐摩耗性が高く安定であり、且つ電気的特性が良好であり、特に重合トナー(或いは球形トナー)に好適であり、長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体を提供することであり、また、それらの長寿命、高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の表面層にラジカル反応性を有する、若しくはアミン構造を有する、或いは両方を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンを主成分とする共重合体がラジカル重合性モノマー中に分散され、好ましくは少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化した架橋樹脂層とすることにより、前記目的が達成できることを発見して本発明を成すに至った。
すなわち、以下の構成要件を満足することにより、クリーニング性に優れ、低表面エネルギーの持続性が著しく、耐摩耗性が高く安定であり、且つ電気的特性が良好であり、特に重合トナー(或いは球形トナー)に好適であり、長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体を提供することができ、また、それらの長寿命、高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することができる。
【0011】
上記課題は、本発明の(1)「導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の表面層が、主としてラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンをラジカル重合性モノマー中に分散させ、硬化させた架橋樹脂層であることを特徴とする電子写真感光体」;
(2)「導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の表面層が、主としてアミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンをラジカル重合性モノマー中に分散させ、硬化させた架橋樹脂層であることを特徴とする電子写真感光体」;
(3)「導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の表面層が、主としてアミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンとラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンとをラジカル重合性モノマー中に分散させ、硬化させた架橋樹脂層であることを特徴とする電子写真感光体」;
(4)「前記ラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンが、シリコーン主鎖にアクリル単量体をグラフト化させた化合物であることを特徴とする前記第(1)項又は第(3)項に記載の電子写真感光体」;
(5)「前記アミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンが、シリコーン主鎖にアクリル単量体をグラフト化させた化合物であることを特徴とする前記第(2)項又は第(3)項に記載の電子写真感光体」;
(6)「前記アミン構造が二級アミン、三級アミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記第(2)項、第(3)項又は第(5)項に記載の電子写真感光体」;
(7)「前記アミン構造が、下記構造式で表わされるヘキサヒドロフタルイミド構造を有するモノマー、又は下記構造式で表わされるN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドのアミド構造を有するモノマー、或いは下記構造式で表わされるN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのアミン構造を有するモノマー
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

の少なくとも1種から由来するものであることを特徴とする前記第(2)項、第(3)項又は第(5)項に記載の電子写真感光体」;
(8)「前記ラジカル重合性モノマーの全部または一部に、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のモノマーが使用されることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項の何れかに記載の電子写真用感光体」;
(9)「前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーにおける官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が、250以下であることを特徴とする前記第(8)項に記載の電子写真感光体」;
(10)「前記ラジカル重合性モノマーのラジカル重合性基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基の何れか又は混合であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(9)項の何れかに記載の電子写真感光体」;
(11)「前記ラジカル重合性モノマーに更に電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーが使用されることを特徴とする前記第(1)項乃至第(10)項の何れかに記載の電子写真感光体」;
(12)「前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーが、1官能であることを特徴とする前記第(11)項に記載の電子写真感光体」;
(13)「前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーのラジカル重合性基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基の何れか又は混合であることを特徴とする前記第(11)項又は第(12)項に記載の電子写真感光体」;
(14)「前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーの電荷輸送構造が、トリアリールアミン構造であることを特徴とする前記第(11)項乃至第(13)項の何れかに記載の電子写真感光体」;
(15)「前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(1)又は(2)で表わされるモノマーの一種以上であることを特徴とする前記第(11)項乃至第(14)項の何れかに記載の電子写真感光体
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

{式(1)及び(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR(Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR(R及びRは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar、Arは置換基を有してもよいアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar、Arは置換基を有してもよいアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zはアルキレン基、アルキレンエーテル基、アラルキレン基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。}」;
(16)「前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(3)で表わされるモノマーの一種以上であることを特徴とする前記第(15)項に記載の電子写真感光体
【0016】
【化5】

(式中、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
【0017】
【化6】

を表わす。o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、s、tは0〜3の整数を表わす。)」;
(17)「前記アクリル変性ポリオルガノシロキサン化合物が、粒状に分散されていることを特徴とする前記第(1)項乃至第(16)項の何れかに記載の電子写真感光体」;
(18)「前記表面層の硬化手段が、加熱又は光エネルギー照射手段であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(17)項の何れかに記載の電子写真感光体」;
(19)「前記感光層が、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層、表面層の積層構成であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(18)項の何れかに記載の電子写真感光体」により達成される。
また、上記課題は、本発明の(20)「前記第(1)項乃至第(19)項の何れかに記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行なうことを特徴とする画像形成方法」により達成される。
また、上記課題は、本発明の(21)「前記第(1)項乃至第(19)項の何れかに記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置」;
(22)「前記第(1)項乃至第(19)項の何れかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段および除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段を有するものであって、画像形成装置本体に着脱可能としたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ」により達成される。
【0018】
上記第(1)項の電子写真感光体に関しては、従来技術に記載したように従来のアクリル変性ポリオルガノシロキサンを滑剤として感光体の表面層に添加する際、アクリル硬化系の樹脂中に添加すると架橋反応自体が進まず、使用することができなかった。そこでアクリル変性ポリオルガノシロキサン中にラジカル反応性を持たせることで架橋反応の抑制効果を防止できないかと考え、また、アクリル変性ポリオルガノシロキサンが化学結合によって架橋樹脂と一体化することで、高い耐摩耗性と低表面エネルギー持続性を両立できるのではないかと考え、新たにラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンを検討したところ、上記第(1)項の電子写真感光体により、架橋反応の阻害もなく架橋膜の形成が可能であり、低エネルギーと耐摩耗性が両立する感光体を実現することができる。
上記第(2)、(3)項の電子写真感光体に関しては、従来技術に記載したようにアクリル変性ポリオルガノシロキサンを滑剤として感光体の表面層に添加する際、バインダー樹脂との相溶性を持つため、表面層に均一分散され、持続的な低エネルギーを提供できたが、架橋反応を促進する構造を有しないので、表面層の強度を下げられ、摩耗しやすくなった。そこで上記第(2)、(3)項の電子写真感光体により、本発明のアミン構造、或いはさらにラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンを添加する場合に、ラジカルを消費する酸素を還元する作用が働くので、架橋速度を上げられ、バインダー樹脂との相分離が発生する前に、アクリル変性ポリオルガノシロキサンが一次粒子のサイズで均一分散している強固的な架橋膜が形成できる。得られた表面層は持続的な低表面エネルギーを有すると同時に耐摩耗性が落ちない。つまり、低エネルギーと耐摩耗性が両立する感光体は実現できる。
上記第(4)、(5)項の電子写真感光体により、本発明のアクリル変性ポリオルガノシロキサンは、そのシロキサン構造部で滑り性や低表面エネルギー化を発揮すると共に、そのグラフトされたアクリル重合体部でバインダー樹脂との相溶性を持つので、感光体の電子写真特性への副作用が少なく、膜中に十分な量を含有させることが出来る。このようなアクリル変性ポリオルガノシロキサンの添加は、感光体の低表面エネルギーの持続性を向上させ、クリーニング性に効果を有する。
上記第(6)、(7)項の電子写真感光体により、より効果的に架橋反応を促進し、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを均一分散させることができ、強固な感光体表面層が実現できる。
上記第(8)項の電子写真感光体により、本発明で使用されるラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンとアミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンは機械的強度には弱い材料であるが、架橋用モノマーとして3官能以上のモノマーを使用することで耐摩耗性低下を防止できる。
上記第(9)項の電子写真感光体により、3官能モノマーの官能基数当たりの分子量を250以下にすることで架橋密度が高く、均一な膜が可能となり表面平滑性に優れた感光体が提供できる。
上記第(10)項の電子写真感光体において、均一な膜を作製するには速い架橋速度が必要であり、そのためには上記のラジカル重合性基が優れている。
上記第(11)、(12)項の電子写真感光体において、電荷輸送性構造を含むラジカル重合性モノマーの導入により、表面層に電荷トラップが少なくなり、耐摩耗性と電気特性の両立ができる。表面層が厚くなっても電気特性が変わらないので、用途に応じ感光体の寿命設計に対しては余裕度がある。
上記第(13)項の電子写真感光体において、均一な膜を作製するには速い架橋速度が必要であり、そのためには上記のラジカル重合性基が優れている。
上記第(14)、(15)、(16)項の電子写真感光体は、さらに感度、残留電位等の電気特性が良好に持続される。
上記第(17)項の電子写真感光体に関しては、アクリル変性ポリオルガノシロキサンは上記したようにオルガノシロキサン部で滑り性や低表面エネルギー性を発現させ、アクリル重合部で相溶性を発現させるものであるが、感光体の滑り性を上げるためにはシロキサン部が低濃度で均一な膜よりも部分的に高濃度なところが不均一に分散されている膜のほうが同一濃度で比較すると有利と考え、その方法として、組成比を調整し、相溶性のコントロールをすること、或いは更に分散処理を行なうことにより、アクリル変性ポリオルガノシロキサン化合物を粒状に分散させることが挙げられる。上記第(17)項の電子写真感光体により、このような分散膜とすることで比較的添加量の少ない系においても良好な滑り性やクリーニング性が達成される。
【0019】
上記第(18)項の電子写真感光体においては、その表面層の硬化手段として加熱又は光エネルギー照射手段を採用することができる。
上記第(19)項の電子写真感光体においては、機能分離型の感光層を設けたものとすることができる。
上記第(20)、(21)、(22)項の画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジは、上記第(1)〜第(19)項の何れかの電子写真感光体を使用したことにより、本発明の上記優れた作用効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、該感光層の表面層にラジカル反応性を有する、若しくはアミン構造を有する、或いは両方を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンをラジカル重合性モノマー中に分散され、好ましくは少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー、及び/又は、好ましくは電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーと共に硬化した架橋樹脂層とすることにより、クリーニング性に優れ、耐摩耗性が高く、良好な電気特性を有し、更に長期にわたって低表面エネルギーを維持する、高耐久、高性能な感光体が得られる。したがって、この感光体を用いることにより良好な画像を長期にわたり提供できる高性能で且つ信頼性の高い画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の表面層がラジカル反応性を有する、或いはアミン構造を有するポリオルガノシロキサンをラジカル重合性モノマー中に分散させ、硬化させた架橋樹脂層であることにより、クリーニング性に優れ、耐摩耗性が高く、安定であり、かつ長期間にわたり高画質化を実現する電子写真感光体が達成されるものである。
この理由としては以下の要因が挙げられる。
【0022】
本発明の架橋表面層に、ラジカル反応性を有する、若しくはアミン構造を有する、或いは両方を有するポリオルガノシロキサンが主成分とする共重合体が含有されていることによって、放電生成物、トナー外添剤、紙粉等の異物が感光体表面から除去しやすくなったのは、言うまでもなく感光体の表面エネルギーが低下し、離型性が向上したことによる。さらに、前記ポリオルガノシロキサン共重合体がラジカル反応性を有する、若しくは架橋促進に有効なアミン構造を有するので、ラジカル重合性モノマーと架橋反応し、若しくはラジカル重合性モノマーの架橋反応を促進することにより、得られた架橋膜にはポリオルガノシロキサン共重合体の凝集性が顕著に低下するとともに、分散性、低摩擦の持続性が大幅に向上し、感光体の表面平滑性の著しい向上、耐摩耗性と低表面エネルギーの両立が実現される。これに対し、反応性とアミン構造を有しないアクリル変性ポリオルガノシロキサンはラジカル重合性モノマーの架橋障害になりやすく、架橋反応と伴い凝集も激しくなるので、平滑に強固な表面層が実現できなかった。
また、前記アクリル変性ポリオルガノシロキサンは、シロキサン鎖が主鎖となりアクリル鎖が側鎖としてグラフト共重合され、架橋樹脂との相溶性を高められることにより、安定性が良く、より持続的な低表面エネルギーの表面層を提供できる。
【0023】
更に、本発明の感光体は、表面層に、ラジカル重合性モノマーを用いており、これにより立体的な網目構造が発達し、架橋度が非常に高い高硬度架橋表面層が得られ、高い耐摩耗性が達成される。その中、3官能以上のラジカル重合性モノマーが強固な3次元の網目構造の構築に対して、より好ましい。上記ラジカル重合性モノマーに更に電荷輸送構造を有するモノマーを使用するのは高画質に有効である。
その結果、感光体表面に付着する放電生成物やトナー外添剤、紙粉等の異物が付着しにくいあるいは付着しても除去しやすい効果を発揮し、さらにその効果の安定性を大幅に高めたことによって、画像ボケの抑制だけでなく、転写効率の向上、クリーニング性の向上、フィルミングや異物付着による異常画像の抑制、耐摩耗性の向上等が実現され、高耐久化及び高画質化に対して多くの効果を併せ持っている。
【0024】
次に、本発明の架橋表面層塗布液の構成材料について説明する。
先ず、本発明において用いられる前記ラジカル反応性を有する、若しくはアミン構造を有する、或いは両方を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンについて述べる。
これらのアクリル変性ポリオルガノシロキサンは、例えば下記一般式(4)
【0025】
【化7】

[式中のR10、R11、R12はそれぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、Yはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を有する有機基、Z、Zはそれぞれ同一又は異なる水素原子、低級アルキル基又は下記式
【0026】
【化8】


(式中のR13、R14はそれぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭素水素、R15は炭素数1〜20の炭化水素基もしくはハロゲン化炭化水素基、あるいはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を有する有機基である)で表わされるトリオルガノシリル基、uは10,000以下の正の整数、vは1以上の整数である。]
で表わされるポリオルガノシロキサンに、好ましくは下記一般式(5)
【0027】
【化9】

(式中のR16は水素原子又はメチル基、R17はアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。)
で表わされる(メタ)アクリル酸エステル及び所望に応じて用いられる共重合可能な単量体を、乳化重合法により、グラフト重合させることにより製造される。
【0028】
前記一般式(4)で表わされるポリオルガノシロキサンにおいては、R10、R11及びR12は、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基やフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基などの炭素数1〜20の炭化水素基又はこれらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも1つをハロゲン原子で置換した炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基であって、R10、R11及びR12は、それぞれ同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、Yはビニル基、アリル基、γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基などのラジカル反応性基、SH基またはその両方を有する有機基である。Z及びZは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基又は前記式で示されるトリオルガノシリル基であり、このトリオルガノシリル基におけるR13及びR14は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、R15は炭素数1〜20の炭化水素基もしくはハロゲン化炭化水素基、あるいはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を有する有機基である。該トリオルガノシリル基における炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基及びラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を有する有機基としては、前記に例示したものを挙げることができる。該ZとZは、それぞれ同一であってもよいし、たがいに異なるものであってもよい。さらに、uは10,000以下の正の整数、好ましくは500〜8,000の範囲の整数であり、vは1以上の整数、好ましくは1〜500の範囲の整数である。
【0029】
前記一般式(4)で表わされるポリオルガノシロキサンは、環状ポリオルガノシロキサン、分子鎖両末端が水酸基で封鎖された液状ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端がアルコキシ基で封鎖された液状ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサンなどを、またラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を導入するためのシラン類或いはシラン類の加水分解生成物などを、さらに所望に応じ、本発明の目的を損なわない量の三官能性のトリアルコキシシラン及びその加水分解生成物などを用い、 反応させることにより製造することができる。
【0030】
次に、一般式(4)で表わされるポリオルガノシロキサンの製造方法の異なった例について説明する。まず、第1の方法は、原料として、例えば前記のオクタメチルシクロテトラシロキサンのような環状低分子シロキサンとラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つジアルコキシシラン化合物やその加水分解物を用い、強アルカリ性又は強酸性触媒の存在下に重合させることにより高分子量のポリオルガノシロキサンを得る方法である。このようにして得られた高分子量のポリオルガノシロキサンは、次工程の乳化グラフト共重合に供するために、適当な乳化剤の存在下に水性媒体中に乳化分散させる処理が施される。
【0031】
次に、第2の方法は、原料として、例えば前記の低分子ポリオルガノシロキサンと、ラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方をもつジアルコキシシランやその加水分解物とを用い、スルホン酸系界面活性剤や硫酸エステル系界面活性剤の存在下に、水性媒体中において乳化重合させる方法である。この乳化重合の場合、同様な原料を用い、アルキルトリメチルアンモニウムクロリドやアルキルベンジルアンモニウムクロリドなどのカチオン性界面活性剤により、水性媒体中に乳化分散させたのち、適当量の水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの強アルカリ性化合物を添加して重合させることもできる。
【0032】
このようにして得られた前記一般式(4)で表わされるポリオルガノシロキサンは、その分子量が小さいと、組成物から得られる成形体に持続性のある摺動性、耐摩耗性などを付与する効果が劣るようになるので、分子量ができるだけ大きい方が好ましい。このため、第1の方法においては、重合においてポリオルガノシロキサンを高分子量のものとしておき、これを乳化分散することが必要であり、また第2の方法においては、乳化重合後に施される熟成処理の際に、温度を低くすればポリオルガノシロキサンの分子量が大きくなるので、熟成温度は30℃以下、好ましくは15℃以下とするのが有利である。
【0033】
本発明において、前記一般式(4)で示されるポリオルガノシロキサンにグラフト重合させる、前記一般式(5)で示される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、所望に応じ、これらの(メタ)アクリル酸エステルと共に用いられる共重合可能な単量体としては、多官能性単量体や各種官能基含有不飽和単量体、及びエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。該単量体としては、例えば、1,3,5,7−テトラメチル−3,5,7−トリビニルシクロテトラシロキシプロピルメタクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどの複数の不飽和基を持った多官能性単量体、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテルなどのオキシラン基含有不飽和単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有不飽和単量体、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、(メタ)アクリル酸のエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物などのポリアルキレンオキシド基含有不飽和単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールと(メタ)アクリル酸との完全エステル、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのエチレン性不飽和アミド及びエチレン性不飽和アミドのアルキロール又はアルコキシアルキル化物、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基及び(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどのイミド基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、アミンの添加は、硬化による架橋樹脂層を形成する場合、発生したラジカルを消費する酸素を還元する作用もあるので硬化速度を速めるには効果的である。その中、2、3級アミンの効果は最も著しい。特にヘキサヒドロフタルイミドは架橋促進に優れている。これらの多官能性単量体は、アクリル変性ポリオルガノシロキサンにおけるポリマー間の架橋に関与することによって表面層に弾性、耐久性、耐熱性などを付与する効果を有している。
【0035】
一方、エチレン性不飽和単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどが挙げられる。これらの単量体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、これらの単量体1種以上と前記官能性単量体1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記所望に応じて用いられる共重合可能な単量体の使用量は、一般式(5)で表わされる(メタ)アクリル酸エステルと該共重合可能な単量体との合計重量に基づき、0.1重量%〜30重量%の範囲で選ぶことが好ましい。この量が30重量%を超えると、得られるアクリル変性ポリオルガノシロキサンと結着樹脂との混和性が低下するし、0.1重量%未満では、弾性、耐久性、耐熱性等を付与できない。
また、前記一般式(5)で表わされる成分のグラフト共重合用単量体は、成形膜により優れた摺動性、耐摩耗性を付与するためには、そのポリマー化物のガラス転移温度が20℃以上のものが好ましく、より好ましくは30℃以上のものが望ましい。
【0037】
本発明におけるアクリル変性ポリオルガノシロキサンは、前記一般式(4)で表わされるポリオルガノシロキサンと一般式(5)で表わされる成分の単量体とを、好ましくは重量比5:95ないし95:5の割合で用いて、乳化重合法により、グラフト共重合させることにより得られる。一般式(4)のポリオルガノシロキサンの使用割合が前記範囲より少ないと、得られるアクリル変性ポリオルガノシロキサンはポリオルガノシロキサン自体がもつ効果を十分に発揮することができず、かつアクリル系ポリマーの欠点である粘着感が生じるようになるし、前記範囲より多いと該アクリル変性ポリオルガノシロキサンは架橋膜樹脂との混和性が低下し、架橋膜表面にブリードしやすくなり、摺動性、耐摩耗性などが経時により低下しやすくなる傾向がみられる。
前記一般式(4)で表わされる成分と一般式(5)で表わされる成分との乳化グラフト共重合は、例えば一般式(4)で表わされる成分としてポリオルガノシロキサンの水性エマルジョンを用い、通常のラジカル開始剤を使用して、公知の乳化重合法によって行うことができる。
アクリル変性ポリオルガノシロキサンは、乳化重合法によって得られたエマルジョンに塩析剤を投入し、析出・水洗・乾燥を行うことによって得たり、スプレードライヤー等の噴霧乾燥によっても得ることができ、例えば、平均粒子径が約10μm〜500μmの粒子として得ることが出来る。本発明では、この粒子を溶解及び/又は分散により更に細かくし、好ましくは平均粒子径約0.01μm〜5μm、より好ましくは0.05μm〜0.5μmの粒子状に分散させて使用する。
【0038】
また、本発明に用いられるアクリル変性ポリオルガノシロキサンにおいて、重合時に用いる乳化剤、凝集剤等不純物の残留は電気特性を問題とする電子写真用感光体においてはその電気特性を損なう恐れがあるため、必要に応じて精製して用いることが好ましい。精製法としては酸、アルカリ水溶液、水およびアルコールなどで攪拌洗浄処理する方法またソックスレー抽出等による固液抽出法が挙げられる。
【0039】
本発明に用いられる電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
【0040】
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表わされる官能基が挙げられる。
【0041】
【化10】

{ただし、式(6)中、Xは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R18)−基(R18は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、または−S−基を表す。}
これらの置換基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
【0042】
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表わされる官能基が挙げられる。
【0043】
【化11】

(ただし、式(7)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR19基(R19は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR2021(R20およびR21は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わし、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、Xは上記一般式(6)のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y,Xの少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。)
これらの置換基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
【0044】
なお、これらX、X、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なっても良い。
【0045】
電荷輸送性構造を有しない3官能以上の具体的なラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA(2−ヒドロキシプロピルアクリレート)変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
【0046】
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、HPA、EO、PO等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。また、架橋表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、架橋表面層全量に対し好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%である。モノマー成分が20重量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80重量%より多いと電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
【0047】
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーとは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を1以上有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先のラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基が有用である。また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造の効果が高く、1官能の化合物が好ましい。
【0048】
さらに、下記一般式(1)又は(2)で表わされる化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が特に良好に持続される。
【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

{式(1)及び(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR(Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR(R及びRは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar、Arは置換基を有してもよいアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar、Arは置換基を有してもよいアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zはアルキレン基、アルキレンエーテル基、アラルキレン基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。)
【0051】
以下に前記、一般式(1)、(2)で表わされる化合物の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、Rの置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていても良い。
の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
【0052】
置換もしくは未置換のAr、Arはアリール基であり、アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。
該縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
【0053】
該非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
【0054】
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
【0055】
また、前記Ar、Arで表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
(2)アルキル基、好ましくは、C〜C12とりわけC〜C、さらに好ましくはC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR)であり、Rは(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C〜Cのアルコキシ基、C〜Cのアルキル基またはハロゲン原子等を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)下記一般式で表わされるアミノ基が挙げられる。
【0056】
【化14】


(式中、R及びRは各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC〜Cのアルコキシ基、C〜Cのアルキル基またはハロゲン原子等を置換基として含有してもよい。またR及びRは共同で環を形成してもよい)
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)スチリル基、β−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0057】
前記Ar、Arで表わされるアリーレン基としては、前記Ar、Arで表わされるアリール基から誘導される2価基である。
前記Xは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
アルキレン基としては、C〜C12、好ましくはC〜C、さらに好ましくはC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基等で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
シクロアルキレン基としては、C〜Cの環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基等を有していても良い。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
アルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基のアルキレン基部分はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
ビニレン基は、
【0058】
【化15】

で表わされ、
は水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar、Arで表わされるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
【0059】
前記Zはアルキレン基、アルキレンエーテル基、アラルキレン基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。
アルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
アルキレンエーテル基としては、前記Xのアルキレンエーテル基が挙げられる。
アラルキレン基としては、上記アルキレン基と前記Ar、Arのアリーレン基が結合したものが挙げられる。
アルキレンオキシカルボニル基としては、カプロラクトン変性基等が挙げられる。
、R、Rのアルキル基、アラルキル基のアリーレン基部分、アリール基は、それぞれ前記に説明したものと同様の基が挙げられる。
また、本発明の1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物として更に好ましくは、下記一般式(3)の構造の化合物が挙げられる。
【0060】
【化16】

(式中、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
【0061】
【化17】

を表わす。o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、s、tは0〜3の整数を表わす。)
上記一般式で表わされる化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
【0062】
本発明で用いる上記一般式(1)及び(2)、特に(3)の1官能性の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
【0063】
本発明の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーの具体例を以下に示すが、これらの構造のモノマーに限定されるものではない。
【0064】
【表1−1】

【0065】
【表1−2】

【0066】
【表1−3】

【0067】
【表1−4】

【0068】
【表1−5】

【0069】
【表1−6】

【0070】
【表1−7】

【0071】
【表1−8】

【0072】
【表1−9】

【0073】
【表1−10】

【0074】
【表1−11】

【0075】
【表1−12】

【0076】
本発明の2官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0077】
【表2−1】

【0078】
【表2−2】

【0079】
【表2−3】

【0080】
【表2−4】

【0081】
【表2−5】

【0082】
【表2−6】

【0083】
【表2−7】

【0084】
【表2−8】

【0085】
【表2−9】

【0086】
【表2−10】

【0087】
【表2−11】

【0088】
【表2−12】

【0089】
【表2−13】

【0090】
【表2−14】

【0091】
【表2−15】

【0092】
【表2−16】

【0093】
【表2−17】

【0094】
【表2−18】

【0095】
【表2−19】

【0096】
【表2−20】

【0097】
【表2−21】

【0098】
【表2−22】

【0099】
【表2−23】

【0100】
【表2−24】

【0101】
【表2−25】

【0102】
【表2−26】

【0103】
【表2−27】

【0104】
【表2−28】

【0105】
【表2−29】

【0106】
【表2−30】

【0107】
【表2−31】

【0108】
【表2−32】

【0109】
【表2−33】

【0110】
【表2−34】

【0111】
【表2−35】

【0112】
【表2−36】

【0113】
【表2−37】

【0114】
【表2−38】

【0115】
【表2−39】

【0116】
【表2−40】

【0117】
【表2−41】

【0118】
【表2−42】

【0119】
【表2−43】

【0120】
【表2−44】

【0121】
【表2−45】

【0122】
【表2−46】

【0123】
【表2−47】

【0124】
【表2−48】

【0125】
【表2−49】

【0126】
【表2−50】

【0127】
【表2−51】

【0128】
【表2−52】

【0129】
【表2−53】

【0130】
【表2−54】

【0131】
【表2−55】

【0132】
【表2−56】

【0133】
本発明の3官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0134】
【表3−1】

【0135】
【表3−2】

【0136】
【表3−3】

【0137】
【表3−4】

【0138】
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーは、架橋表面層に電荷輸送性能を付与するためには重要であり、この成分は架橋表面層全量に対し好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%である。この成分が20重量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、80重量%より多いと電荷輸送構造を有しない3官能モノマー等の含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
【0139】
本発明の表面層の形成には前記アクリル変性ポリオルガノシロキサンと共にラジカル重合性モノマーを用いるものであり、好ましいものは、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能以上のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマー等を併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
また、上記アクリル変性ポリオルガノシロキサンはラジカル反応性を有するものとアミン構造を有するものとの併用も可能であり、その場合に両者の使用割合は重量比で1/9〜9/1が好ましい。
【0140】
以下、ラジカル重合性モノマーの具体例を例示する。
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
【0141】
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0142】
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
【0143】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このため所望の特性を求めるために必要によりこれらのモノマーやオリゴマーを添加することができる。これらのモノマーやオリゴマーの添加量としては、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.1〜30重量部に制限される。
【0144】
また、本発明の表面層の好ましいものは少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために架橋表面層中に重合開始剤を使用してもよい。
【0145】
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
【0146】
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン、1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0147】
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、通常0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0148】
更に、本発明の塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
【0149】
本発明の架橋表面層を形成するに際して、先ず前記アクリル変性ポリオルガノシロキサン及び前記ラジカル重合性モノマーを、有機溶剤とともに混合し、必要に応じて分散処理を行ない分散液が作製される。場合によっては、前記アクリル変性ポリオルガノシロキサンと有機溶剤とによって分散を行ない、その後ラジカル重合性モノマーを添加する方法を用いることも可能である。また、これらの分散液に必要に応じて電荷輸送物質や各種添加剤を添加することが可能である。分散手段としてはボ−ルミル、アトライタ−、サンドミル、ビーズミル、超音波、高圧液体衝突等、従来公知の分散手段をすべて用いることが可能である。
表面保護層中のアクリル変性ポリオルガノシロキサン濃度は、高いほど低表面エネルギーの安定性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、保護層の硬度が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、50重量%以下、好ましくは30重量%以下程度である。
【0150】
本発明の架橋表面層は、少なくとも電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有する塗工液を塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
【0151】
本発明においては、かかる塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、架橋表面層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。170℃より高温では反応が不均一に進行し架橋表面層中に大きな歪みが発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、原材料のラジカル重合性含有物質や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、架橋表面層の荒れが激しくなる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
【0152】
本発明の架橋表面層の膜厚は、架橋表面層が用いられる感光体の層構造によって異なるため、層構造とともに以下に記載する。
架橋表面層塗工液に含有される組成物においては、バインダー樹脂を含有させることも感光体表面の平滑性、電気特性、あるいは耐久性を損なわない範囲であれば可能である。しかし塗工液にバインダー樹脂などの高分子材料を含有させると、ラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマー及び電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物等)の硬化反応より生成した高分子との相溶性の悪さから相分離が生じ、架橋表面層表面の凹凸が激しくなる。したがって、バインダー樹脂は使用しない方が好ましい。
【0153】
本発明の架橋表面層においては、電気的特性を維持するためには嵩高い電荷輸送性構造を含有させ、且つ高強度化のため架橋結合密度を高める必要がある。このような架橋表面層塗工後の硬化にあたっては、非常に高いエネルギーを外部から加え急激に反応を進めると、硬化が不均一に進行し架橋膜表面の凹凸が激しくなる。このため加熱条件、光の照射強度、重合開始剤量により反応速度制御が可能な熱や光の外部エネルギーを用いたものが好ましい。
【0154】
本発明の架橋表面層形成材料を用いた具体的な塗工方法について例示すると、例えば、塗工液として、アミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンと、3つのアクリロイルオキシ基を有するアクリレートモノマーと、一つのアクリロイルオキシ基を有するトリアリールアミンモノマーを使用する場合、使用割合はアクリル変性ポリオルガノシロキサンとアクリレートモノマーとの重量比が3:97〜30:70であり、その中、アクリレートモノマーとトリアリールアミンモノマーとの重量比が7:3〜3:7であり、また、重合開始剤をこれらアクリレートモノマー全量に対し3〜20重量%添加し、さらに溶媒を加えて塗工液を調製する。例えば、架橋表面層の下層となる電荷輸送層において、電荷輸送物質としてトリアリールアミン系ドナー、及びバインダー樹脂としてポリカーボネートを使用し、架橋表面層をスプレー塗工により形成する場合、上記塗工液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、酢酸エチル等が好ましく、その使用割合は、アクリレート化合物全量に対し好ましくは3倍量〜10倍量である。
硬化し、作製された表面架橋層は、有機溶媒に対して、不溶であることが好ましい。硬化が充分でない膜は、有機溶媒に対して可溶であり、且つ架橋密度が低いため、機械的耐久性も低くなる。
次いで、例えば、アルミシリンダー等の支持体上に、下引き層、電荷発生層、上記電荷輸送層を順次積層した感光体上に、上記調製した塗工液をスプレー等により塗布する。その後、比較的低温で短時間乾燥し(25〜80℃、1〜10分間)、UV照射あるいは加熱して硬化させる。
UV照射の場合、メタルハライドランプ等を用いるが、照度は50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、例えば700mW/cmのUV光を照射する場合、例えば硬化に際し、ドラムを回転して全ての面を均一に20秒〜600秒程度照射すればよい。このときドラム温度は50℃を越えないように制御する。
熱硬化の場合、加熱温度は100〜170℃が好ましく、例えば加熱手段として送風型オーブンを用い、加熱温度を150℃に設定した場合、加熱時間は20分〜3時間である。
硬化終了後は、残留溶媒低減のため、例えば100〜150℃で10分〜30分加熱して、本発明の感光体を得る。
【0155】
以下、本発明をその層構造に従い説明する。
<電子写真感光体の層構造について>
本発明に用いられる電子写真感光体を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層が設けられた単層構造の感光体である。架橋表面層が感光層全体の場合を示したのが図1Aであり、架橋表面層が感光層の表面部分である場合を示したのが図1Bである。
図2は、導電性支持体上に、電荷発生機能を有する電荷発生層と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層とが積層された積層構造の感光体である。架橋表面層が電荷輸送層全体の場合を示すのが図2Aであり、架橋表面層が電荷輸送層の表面部分である場合を示すのが図2Bである。
【0156】
<導電性支持体について>
導電性支持体としては、体積抵抗1×1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0157】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0158】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0159】
<感光層について>
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。
積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
【0160】
以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
<感光層が積層構成のもの>
(電荷発生層)
電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0161】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0162】
前者の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0163】
また、電荷発生層には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
電荷発生層に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0164】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0165】
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが代表的な方法として挙げられる。
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いて、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0166】
(電荷輸送層について)
電荷輸送層は電荷輸送機能を有する層で、本発明の電荷輸送性構造を有する架橋表面層は電荷輸送層としても有用に用いられる。架橋表面層が電荷輸送層の全体である場合、前述の架橋表面層作製方法に記載したように電荷発生層上に本発明のラジカル重合性組成物(電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマー及び電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマー;以下同じ)と本発明のアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。このとき、架橋表面層の膜厚は、好ましくは10〜30μm、より好ましくは10〜25μmである。10μmより薄いと充分な帯電電位が維持できず、30μmより厚いと硬化時の体積収縮により下層との剥離が生じやすくなる。
また、架橋表面層が電荷輸送層の表面部分に形成され、電荷輸送層が積層構造である場合、電荷輸送層の下層部分は電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成し、この上に上記本発明のラジカル重合性組成物とアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有する塗工液を塗布し、外部エネルギーにより架橋硬化させる。
【0167】
電荷輸送物質としては、前記電荷発生層で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。前述したように高分子電荷輸送物質を用いることにより、表面層塗工時の下層の溶解性を低減でき、とりわけ有用である。
【0168】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、好ましくは20〜300重量部、より好ましくは40〜150重量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
電荷輸送層の下層部分の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の下層部分の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
【0169】
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層の下層部分に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層の下層部分に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
電荷輸送層の下層部分の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
【0170】
架橋表面層が電荷輸送層の表面部分である場合、前述の架橋表面層作製方法に記載したように、かかる電荷輸送層の下層部分上に本発明のラジカル重合性組成物を含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、熱や光の外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。このとき、架橋表面層の膜厚は、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性がバラツキ、20μmより厚いと電荷輸送層全体の膜厚が厚くなり電荷の拡散から画像の再現性が低下する。
【0171】
<感光層が単層のもの>
単層構造の感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層で、本発明の電荷輸送性構造を有する架橋表面層は電荷発生機能を有する電荷発生物質を含有させることにより、単層構造の感光層として有用に用いられる。上記の電荷発生層のキャスティング形成方法に記載したように、電荷発生物質をラジカル重合性組成物を含有する塗工液と共に分散し、電荷発生層上に塗布、必要に応じて乾燥後、外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。なお、電荷発生物質はあらかじめ溶媒と共に分散した液を本架橋表面層用塗工液に加えてもよい。このとき、架橋表面層の膜厚は、好ましくは10〜30μm、より好ましくは10〜25μmである。10μmより薄いと充分な帯電電位が維持できず、30μmより厚いと硬化時の体積収縮により導電性基体または下引き層との剥離が生じやすくなる。
【0172】
また、架橋表面層が単層構造の感光層の表面部分である場合、感光層の下層部分は電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤のそれぞれは前記電荷発生層、電荷輸送層において既に述べたものと同様なものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層の項で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能で、架橋表面層への下層感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。かかる感光層の下層部分の膜厚は、好ましくは5〜30μm程度が適当であり、より好ましくは10〜25μm程度が適当である。
架橋表面層が単層構造の感光層の表面部分である場合、前述のようにかかる感光層の下層部分上に本発明のラジカル重合性組成物と電荷発生物質を含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、熱や光の外部エネルギーにより硬化し、架橋表面層を形成する。このとき、架橋表面層の膜厚は、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性のバラツキが生じる。
単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30重量%が好ましく、感光層の下層部分に含有される結着樹脂は全量の20〜80重量%、電荷輸送物質は10〜70重量部が良好に用いられる。
【0173】
<中間層について>
本発明の感光体においては、架橋表面層が感光層の表面部分となる場合、架橋表面層への下層成分混入を抑える又は下層との接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。この中間層はラジカル重合性組成物を含有する最表面層中に下部感光層組成物の混入により生ずる、硬化反応の阻害や架橋表面層の凹凸を防止する。また、下層の感光層と表面架橋層の接着性を向上させることも可能である。
中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗工法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0174】
<下引き層について>
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0175】
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0176】
<各層への酸化防止剤の添加について>
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋表面層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
【0177】
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]グリコールエステル、トコフェロール類など。
【0178】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0179】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0180】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3′−チオジプロピオネートなど。
【0181】
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0182】
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%が適当である。
【0183】
<画像形成方法及び装置について>
次に、図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、本発明の前記平滑な電荷輸送性架橋表面層を有する感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。
場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
【0184】
図3は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
【0185】
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0186】
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0187】
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0188】
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0189】
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
【0190】
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置に関するものである。
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図4に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
【0191】
図4に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、時計廻り方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
【0192】
本発明は、前記特定の架橋表面層を有した感光体と帯電、現像、転写、クリーニング、除電の各手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
【0193】
<電荷輸送性構造を有する化合物の合成例>
本発明における電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。また、下記にこの一例を示す。
【0194】
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。
融点:64.0〜66.0℃
元素分析値(%)
【0195】
【表4】

【0196】
【化18】

【0197】
【化19】

【0198】
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(表1中の例示化合物No.54)
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして例示化合物No.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。
融点:117.5〜119.0℃
元素分析値(%)
【0199】
【表5】

【0200】
(製造例1−1)
アミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンの製造例を具体的に説明するが、本発明は下記の製造例に制限されるものではない。なお、例中の部及び%はそれぞれ重量部と重量%を示す。
<オルガノポリシロキサンの調製>
オクタメチルシクロテトラシロキサン1,500部、ビニルジメトキシメチルシラン8.8部、及びイオン交換水1,500部を混合し、これにラウリル硫酸ナトリウム15部、ドデシルベンゼンスルホン酸10部を添加してからホモミキサーで攪拌して乳化した後、圧力3,000barのホモジナイザーに2回通して安定なエマルジョンを作った。次いで、これをフラスコに仕込み70℃で12時間加熱し、25℃まで冷却して24時間熟成した後、炭酸ナトリウムを用いてこのエマルジョンのpHを7に調整し、4時間窒素ガスを吹き込んでから水蒸気蒸留して揮発性のシロキサンを留去し、次にイオン交換水を加えて不揮発分を45%に調整し、ポリシロキサンのエマルジョンを得た。
<共重合エマルジョンの製造>
攪拌機、コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入口を備えた2Lの三ッ口フラスコに、上記で得たエマルジョンを778部(シロキサン分350部)とイオン交換水322部を仕込み、窒素ガス気流下に器内を30℃に調整した後、t−ブチルヒドロパーオキサイド1.0部、L−アスコルビン酸0.5部、硫酸第一鉄7水和物0.002部を加え、次いで器内温を30℃に保ちながら、メチルメタアクリレート112.4部、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート7.5部、アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド30部を5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間攪拌を続けて反応を完結させた。得られた共重合エマルジョンの固形分濃度は39.6%であった。
次いで、このエマルジョン1000部を攪拌機付きフラスコに仕込み80℃に加熱し、ここに硫酸ナトリウム70部をイオン交換水280部に溶解した溶液を加えて、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを析出させ、濾過・水洗を繰り返してから80℃で乾燥して、アクリル変性ポリオルガノシロキサンポリマー(ポリマー1−1)を得た。
【0201】
(製造例1−2)
製造例1−1において、アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドをN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドに代えた他は、製造例1−1と同じにしてアクリル変性ポリオルガノシロキサンポリマー(ポリマー1−2)を得た。
【0202】
(製造例1−3)
製造例1−1において、アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドをアクリルアミドに代えた他は、製造例1−1と同じにしてアクリル変性ポリオルガノシロキサンポリマー(ポリマー1−3)を得た。
【0203】
(製造例2)
ラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンの製造例を具体的に説明するが、本発明は下記の製造例に制限されるものではない。なお、例中の部及び%はそれぞれ重量部と重量%を示す。
上記製造例1−1の<共重合エマルジョンの製造>段階に、メチルメタアクリレート112.4部、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート7.5部、アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド30部に変えて、メチルメタアクリレート78部、エチルアクリレート13.5部、ブチルアクリレート13.5部、1,3,5,7−テトラメチル−3,5,7−トリビニルシクロテトラシロキシプロピルメタクリレート15部、アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド30部を5時間かけて滴下した他は、製造例1−1と同様の方法でアクリル変性ポリオルガノシロキサンポリマー(ポリマー2)を得た。
【実施例】
【0204】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて重量部を表わす。
【0205】
実施例1
Al製支持体(外径30mmφ)に、乾燥後の膜厚が3.5μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
・下引き層用塗工液
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン 40部
(CR−EL:石原産業)
メチルエチルケトン 50部
この下引き層上に下記構造のビスアゾ顔料を含む電荷発生層塗工液に浸漬塗工し、加熱乾燥させ、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
・電荷発生層用塗工液
下記構造のビスアゾ顔料 2.5部
【0206】
【化20】

ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) 0.5部
シクロヘキサノン 200部
メチルエチルケトン 80部
この電荷発生層上に下記構造の電荷輸送層用塗工液を用いて、浸積塗工し、加熱乾燥させ、膜厚22μmの電荷輸送層とした。
・電荷輸送層用塗工液
ビスフェーノールZ型ポリカーボネート 10部
下記構造の低分子電荷輸送物質 10部
【0207】
【化21】

テトラヒドロフラン 80部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
電荷輸送層上に下記構成の架橋表面層塗工液を用いて、スプレー塗工し、メタルハライドランプ、照射強度:500mW/cm、照射時間:200秒の条件で光照射を行ない、更に130℃で30分乾燥を加え4.0μmの架橋表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
・架橋表面層塗工液
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 9部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:382、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマー 9部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1.8部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
アクリル変性ポリオルガノシロキサン(ポリマー1−1) 1.8部
テトラヒドロフラン 100部
【0208】
実施例2
実施例1の架橋表面層塗工液材料のアクリル変性ポリオルガノシロキサンとしてポリマー1−2を用いること以外は全て実施例1と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚を4.0μmとした。
【0209】
実施例3
実施例1の架橋表面層塗工液材料のアクリル変性ポリオルガノシロキサンとしてポリマー1−3を用いること以外は全て実施例1と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚を4.0μmとした。
【0210】
実施例4
実施例1の架橋表面層塗工液材料のアクリル変性ポリオルガノシロキサンとしてポリマー2を用いること以外は全て実施例1と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚を4.0μmとした。
【0211】
実施例5
実施例1の架橋表面層塗工液材料の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを使用しないこと以外は全て実施例1と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚を1.0μmとした。
【0212】
実施例6
実施例4の架橋表面層塗工液材料の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを使用しないこと以外は全て実施例4と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚を1.0μmとした。
【0213】
実施例7
実施例1の架橋表面層塗工液中の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーとして例示化合物No.182を用いたこと以外は全て実施例4と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚は4.0μmとした。
【0214】
実施例8
実施例1の架橋表面層塗工液中の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーとして例示化合物No.363を用いたこと以外は全て実施例1と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚は4.0μmとした。
【0215】
実施例9
実施例1の架橋表面層塗工液中の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーとして例示化合物No.1を用いたこと以外は全て実施例1と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚は4.0μmとした。
【0216】
実施例10
実施例1の架橋表面層塗工液中の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーとして例示化合物No.53を用いたこと以外は全て実施例1と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚は4.0μmとした。
【0217】
実施例11
実施例1の架橋表面層塗工液中の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーとして例示化合物No.161を用いたこと以外は全て実施例1と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚は4.0μmとした。
【0218】
実施例12
実施例1の架橋表面層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記のモノマーに変えた以外は全て実施例1と同じにして電子写真感光体を作製した。架橋表面層の膜厚は4.0μmとした。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−60、日本化薬製)
分子量:1263、官能基数:6官能、分子量/官能基数=211
【0219】
実施例13
実施例1〜10の感光体の架橋表面層切片をルテニウム酸蒸気で染色して、透過型電子顕微鏡(H−9000NAR)によりモルフォロジーを観察した。
いずれも架橋表面層のマトリックス相に、平均粒径0.2〜0.4μmのアクリル変性ポリオルガノシロキサン分散相が均一に分布されているいわゆるミクロ相分離構造を呈することが分かる。
【0220】
比較例1
実施例1において架橋表面層塗工液に含有されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを無添加とした以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0221】
比較例2
実施例1において架橋表面層塗工液に含有されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを、ラジカル反応性とアミン構造を有しない、主鎖がポリオルガノシロキサンであり側鎖がアクリルであるアクリル変性ポリオルガノシロキサン(アクリルとポリオルガノシロキサンの重量比3/7)の市販品(シャリーヌR−170、日信化学工業株式会社製)とした以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0222】
比較例3
実施例1において、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを、ポリシロキサン微粒子(トレフィルR−902A東レシリコン社製)に代えた他は、実施例1と同様にして電子写真用感光体を作製した。
【0223】
比較例4
実施例1において、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを、四フッ化エチレン樹脂粒子(ルブロンL−2、ダイキン工業(株)製)に代えた他は、実施例1と同様にして電子写真用感光体を作製した。
【0224】
比較例5
実施例1において、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを、下記構造式で表わされる液体反応性シリコーン:比重0.98、分子量5,000の液体(両末端サイラプレーン、FM−7721、窒素株式会社製)に代えた他は、実施例1と同様にして電子写真用感光体を作製した。
【0225】
【化22】

【0226】
(実機通紙試験)
各実施例及び比較例で作製した電子写真感光体を、リコー製imagio MF2200改造機(画像露光光源として655nmの半導体レーザー)を用いて、15万枚の実機通紙試験(A4、NBSリコー製MyPaper、スタート時帯電電位−700V)を実施し、摩耗特性、機内電位、画像評価を行った。摩耗量、機内電位、画像特性の各結果を表6、7、8に示す。
【0227】
【表6】

【0228】
【表7】

【0229】
【表8】


スジ画像 : ○→良好、△→局部的に発生、×→画像全面に発生
画像濃度 : ○→良好、△→わずかに画像濃度定価、×→画像濃度低下
【0230】
比較例1は本発明のアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有しないので、クリーニング不良が発生し、5万枚通紙試験でスジ画像が全面に発生し、画像濃度も低下した。
比較例2はアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有するが、ラジカル反応性とアミン構造を持っていないので、得られた架橋膜の架橋度が低くて、摩耗量が大きかった。
比較例3は良く使われている潤滑剤のポリシロキサン微粒子を架橋膜に添加したが、該微粒子と架橋膜樹脂の間に相溶性が欠けるので、クリーニング不良が発生し、5万枚通紙試験でスジ画像が全面に発生し、画像濃度も低下した。
比較例4は初期より露光部電位が大きく、画像濃度低下が見られた。
比較例5は表面が平滑な感光体を得られたが、反応性シリコーンがバインダー樹脂と相溶性構造を持っていないので、架橋表面層を乾燥する時、最表面層に遷移し、持続的なクリーニング性が足りなかった。
【0231】
したがって、本発明の該感光層の表面層にラジカル反応性及び/又はアミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンがラジカル重合性モノマー中に分散され、好ましくはさらに少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化した架橋樹脂層とすることにより、良好な画像を長期間維持できる長寿命で且つ高性能な感光体を提供できることが判明した。また併せて、本発明の感光体を用いた画像形成プロセス、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジが高性能、高信頼性を有していることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】本発明の電子写真感光体の断面図の一例である。
【図2】本発明の電子写真感光体の断面図の他の例である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0233】
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写体
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
101 感光ドラム
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリーニング手段(ブレード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の表面層が、主としてラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンをラジカル重合性モノマー中に分散させ、硬化させた架橋樹脂層であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の表面層が、主としてアミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンをラジカル重合性モノマー中に分散させ、硬化させた架橋樹脂層であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項3】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の表面層が、主としてアミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンとラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンとをラジカル重合性モノマー中に分散させ、硬化させた架橋樹脂層であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項4】
前記ラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンが、シリコーン主鎖にアクリル単量体をグラフト化させた化合物であることを特徴とする請求項1又は3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記アミン構造を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンが、シリコーン主鎖にアクリル単量体をグラフト化させた化合物であることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記アミン構造が二級アミン、三級アミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2、3又は5に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記アミン構造が、下記構造式で表わされるヘキサヒドロフタルイミド構造を有するモノマー、又は下記構造式で表わされるN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドのアミド構造を有するモノマー、或いは下記構造式で表わされるN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのアミン構造を有するモノマー
【化1】

【化2】

の少なくとも1種から由来するものであることを特徴とする請求項2,3又は5に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記ラジカル重合性モノマーの全部又は一部に、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のモノマーが使用されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の電子写真用感光体。
【請求項9】
前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーにおける官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が、250以下であることを特徴とする請求項8に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記ラジカル重合性モノマーのラジカル重合性基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基の何れか又は混合であることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記ラジカル重合性モノマーに更に電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーが使用されることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項12】
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーが、1官能であることを特徴とする請求項11に記載の電子写真感光体。
【請求項13】
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーのラジカル重合性基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基の何れか又は混合であることを特徴とする請求項11又は12に記載の電子写真感光体。
【請求項14】
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーの電荷輸送構造が、トリアリールアミン構造であることを特徴とする請求項11乃至13の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項15】
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(1)又は(2)で表わされるモノマーの一種以上であることを特徴とする請求項11乃至14の何れかに記載の電子写真感光体。
【化3】

【化4】

{式(1)及び(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR(Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR(R及びRは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar、Arは置換基を有してもよいアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar、Arは置換基を有してもよいアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zはアルキレン基、アルキレンエーテル基、アラルキレン基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。}
【請求項16】
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(3)で表わされるモノマーの一種以上であることを特徴とする請求項15に記載の電子写真感光体。
【化5】

(式中、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
【化6】

を表わす。o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、s、tは0〜3の整数を表わす。)
【請求項17】
前記アクリル変性ポリオルガノシロキサン化合物が、粒状に分散されていることを特徴とする請求項1乃至16の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項18】
前記表面層の硬化手段が、加熱又は光エネルギー照射手段であることを特徴とする請求項1乃至17の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項19】
前記感光層が、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層、表面層の積層構成であることを特徴とする請求項1乃至18の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れかに記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行なうことを特徴とする画像形成方法。
【請求項21】
請求項1乃至19の何れかに記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項22】
請求項1乃至19の何れかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段および除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段を有するものであって、画像形成装置本体に着脱可能としたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−47949(P2006−47949A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319768(P2004−319768)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000226666)日信化学工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】