説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】表面における摩耗が抑制される電子写真感光体を提供する。
【解決手段】支持体2と、支持体2上に設けられ、少なくとも感光層3を含む1つ以上の層である下引層4、電荷発生層5、及び電荷輸送層6と、を備え、支持体2から最も遠い側に配置される電荷輸送層6は、式「0.45≦(Mv/Mw)≦0.55」を満たすポリカーボネート樹脂と、ブタジエン構造を有する化合物を少なくとも含む2種以上の電荷輸送材料と、を含有する、電子写真感光体であり、上記式中、Mvは粘度平均分子量を表し、Mwは重量平均分子量を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導電性基体上に電荷発生物質、電荷輸送物質および結着樹脂を含有する感光層を有する感光体において、前記結着樹脂の分子量分布の幅を表し、z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比で表される分散度d(d=Mz/Mw)の値が、ポリスチレン標準換算値において1.6以上であることを特徴とする電子写真用感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−265019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、表面における摩耗が抑制される電子写真感光体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1に係る発明は、
支持体と、
前記支持体上に設けられ、少なくとも感光層を含む1つ以上の層と、
を備え、
前記1つ以上の層のうち、前記支持体から最も遠い側に配置される最表面層は、下記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂と、ブタジエン構造を有する化合物を少なくとも含む2種以上の電荷輸送材料と、を含有する、電子写真感光体である。
式(1):0.45≦(Mv/Mw)≦0.55
上記式(1)中、Mvは粘度平均分子量を表し、Mwは重量平均分子量を表す。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記ブタジエン構造を含む化合物は、1分子中にブタジエン構造を3つ有する化合物である、請求項1に記載の電子写真感光体である。
【0007】
請求項3に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段、及び前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を備えるプロセスカートリッジである。
【0008】
請求項4に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を有する画像形成装置である。
【0009】
請求項5に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体の表面を帯電させる帯電工程と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写工程と、
を有する画像形成方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、前記最表面層が、前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂又は前記電荷輸送材料を含有しない場合に比較して、電子写真感光体の表面における摩耗が抑制される。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、前記最表面層が、1分子中にブタジエン構造を3つ有する化合物を含有しない場合に比較して、電子写真感光体の電気特性の低下が抑制される。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、電子写真感光体における前記最表面層が、前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂又は前記電荷輸送材料を含有しない場合に比較して、長期にわたって良好な画像が形成される。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、電子写真感光体における前記最表面層が、前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂又は前記電荷輸送材料を含有しない場合に比較して、長期にわたって良好な画像が形成される。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、前記最表面層が前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂又は前記電荷輸送材料を含有しない電子写真感光体を用いた場合に比較して、長期にわたって良好な画像が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の一部の断面を示す概略図である。
【図2】第1実施形態の画像形成装置の基本構成を示す概略図である。
【図3】第2実施形態の画像形成装置の基本構成を示す概略図である。
【図4】プロセスカートリッジの一例の基本構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する場合がある。
【0017】
本実施形態の電子写真感光体(以下、「感光体」と称する場合がある)は、支持体と、前記支持体上に形成され、少なくとも感光層を含む1つ以上の層と、備える。そして前記1つ以上の層のうち前記支持体から最も遠い側に配置される最表面層は、下記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂と、2種以上の電荷輸送材料と、を含有し、前記2種以上の電荷輸送材料のうち少なくとも1種がブタジエン構造を有する化合物(以下「ブタジエン化合物」と称する場合がある)である。
式(1):0.45≦(Mv/Mw)≦0.55
上記式(1)中、Mvは粘度平均分子量を表し、Mwは重量平均分子量を表す。
【0018】
ここで、上記粘度平均分子量Mvの測定方法としては、例えば、以下の一点測定法が用いられる。具体的には、例えば、まず樹脂1gをメチレンクロライド100cmに溶解し、25℃の測定環境下においてウベローデ粘度計を用いて、その比粘度ηspを測定する。次に、「ηsp/c=〔η〕+0.45〔η〕c」の関係式(ただしcは濃度(g/cm)により極限粘度〔η〕(cm/g)を求める。そしてさらに、H.Schnellによって与えられている式「〔η〕=1.23×10−4Mv0.83」により粘度平均分子量Mvを求める。
【0019】
また、上記重量平均分子量Mwは、例えば、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定して求める。GPCによる分子量測定は、具体的には、例えば、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、カラムとして東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて行う。そしてこの測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して、重量平均分子量Mwを算出する。
【0020】
本実施形態に係る感光体は、上記構成であることにより、前記最表面層が前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂又は前記電荷輸送材料を含有しない場合に比較して、電子写真感光体の表面における摩耗が抑制される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0021】
前記(Mv/Mw)値は、上記の通り、粘度から求めた分子量を重量平均分子量で割った値である。そのため繰り返し単位の数が同じ樹脂を比較すると、前記(Mv/Mw)値が大きい樹脂は、小さい樹脂に比べて、相対的に粘度の大きな樹脂であると考えられる。そして、上記のように粘度の大きな樹脂は、粘度の小さな樹脂に比べて分子間相互作用が大きいため、外部から力が加わっても分子同士が離れにくく、樹脂の一部が引きちぎられることが起こりにくいと考えられる。
【0022】
そのため、本実施形態のように前記(Mv/Mw)値が上記範囲であるポリカーボネート樹脂を用いると、上記範囲よりも小さい樹脂を用いた場合に比べて、例えば研磨剤の存在下で樹脂の表面が他の部材と擦れあっても、樹脂が摩耗しにくいと推測される。
なお、前記(Mv/Mw)値が上記範囲よりも大きいポリカーボネート樹脂は、製造及び入手が困難であると推測される。
【0023】
また本実施形態では、最表面層がポリカーボネート樹脂だけでなく電荷輸送材料も含有する。そのため、ポリカーボネート樹脂単体では摩耗しにくい条件においても、樹脂と電荷輸送材料との相溶性が低い場合には、電荷輸送材料が結晶化して析出し、それに起因して摩耗が生じやすくなる場合がある。特に本実施形態では、樹脂の前記(Mv/Mw)値が上記範囲であり、上記範囲より小さいものに比べて樹脂の分子間相互作用が大きい。そのため、樹脂同士の相溶性が大きすぎることにより、相対的に樹脂と電荷輸送材料との相溶性が下がり、同じ電荷輸送材料を用いても前記(Mv/Mw)値が小さい場合に比べて電荷輸送材料が析出しやすくなることが考えられる。
【0024】
一方本実施形態では、電荷輸送材料として2種以上の電荷輸送材料を用い、かつ、前記2種以上の電荷輸送材料のうち少なくとも1種としてブタジエン化合物を用いている。すなわち、ポリカーボネート樹脂との親和性の高いブタジエン化合物を用いることで樹脂との相溶性を確保しつつ、2種以上の電荷輸送材料を用いることで結晶化を抑制している。そのため本実施形態では、上記のように前記(Mv/Mw)値が上記範囲であり、分子間相互作用の大きなポリカーボネート樹脂を用いても、電荷輸送材料の析出が抑制されると考えられる。
【0025】
以上のように本実施形態では、最表面層において、分子間相互作用の大きな樹脂を用いつつ、電荷輸送材料の析出も抑制することで、表面における摩耗が抑制されると推測される。そのため本実施形態では、最表面層の表面に研磨剤が存在し、他の部材(例えば、トナー除去手段、現像手段、被転写媒体等)が研磨剤を介して感光体の表面を摺擦しても、研磨剤による摩耗が抑制される。上記研磨剤としては、例えば、被転写媒体として用いる用紙に含まれる炭酸カルシウム等の他、トナーに含まれる研磨剤(例えば、シリカ、酸化セリウム等)等が挙げられる。
なお、前記(Mv/Mw)値は、上記の通り0.45以上0.55以下である。
【0026】
また本実施形態では、前記ブタジエン化合物として、1分子中にブタジエン構造を3つ有する化合物(以下「トリブタジエン化合物」と称する場合がある)を用いてもよい。電荷輸送材料としてトリブタジエン化合物を用いることにより、ブタジエン構造を1つ又は2つ有する化合物を用いた場合に比べて、最表面層の正孔輸送性が向上するため、感光体の電気特性が良好になり(例えば感光体の残留電位が低減し)、長期にわたって良好な画像が形成される。
【0027】
本実施形態の感光体は、上記の通り摩耗しにくいものであるため、本実施形態の感光体を用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法によれば、上記条件を満たさない感光体を用いた場合に比べて、長期にわたって良好な画像が形成される。
例えば被転写媒体として炭酸カルシウムを含む用紙を用いて画像形成を行うと、炭酸カルシウムの粉末が上記のように研磨剤として働く場合が考えられるが、本実施形態では上記の通り感光体表面の摩耗が抑制されるため、長期にわたって良好な画像が形成される。特に、感光体の表面に形成されたトナー像を、中間転写体等を用いずに、被転写媒体に直接転写する方式(以下「直接転写方式」と称する場合がある)においては、被転写媒体として用いる用紙に含まれる炭酸カルシウム等が、感光体の表面に付着して研磨剤として機能しやすい。また、感光体の表面に形成されたトナー像を、中間転写体を介して被転写媒体に転写する方式(以下「中間転写方式」と称する場合がある)においては、被転写媒体として用いる用紙に含まれる炭酸カルシウム等が、中間転写体を介して感光体の表面に付着して研磨剤として機能することもあると考えられる。
しかしながら本実施形態では、上記の通り感光体表面の摩耗が起こりにくいため、例えば研磨剤として機能する炭酸カルシウムの量が多くなっても、感光体表面の摩耗に起因する画像の劣化(例えば濃度ムラの発生)が抑制され、長期にわたって良好な画像が形成される。
【0028】
なお、本実施形態の感光体を用いることによる上記画像劣化の抑制は、特に、帯電部材に直流電圧のみが印加される接触帯電方式や、非接触帯電方式において(すなわち交流電圧が印加される方式に比べて電気的ストレスが小さい場合において)、顕著に現れると考えられる。
以下、本実施形態の感光体について、更に詳細に説明する。
【0029】
<電子写真感光体>
図1は本実施形態に係る電子写真感光体の一部の断面を概略的に示している。図1に示した電子写真感光体1は電荷発生層5と電荷輸送層6とが別個に設けられた機能分離型の感光層3を備えるもので、導電性支持体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有している。
図1に示す電子写真感光体1においては、導電性支持体2が前記「支持体」であり、下引層4、電荷発生層5、及び電荷輸送層6が「少なくとも感光層を含む1つ以上の層」であり、電荷輸送層6が最表面層(導電性支持体2から最も遠い側に配置される層)である。また詳細は後述するが、最表面層である電荷輸送層6が、特定ポリカーボネート樹脂と、電荷輸送材料と、を含有して構成されている。
なお本明細書において、絶縁性とは、体積抵抗率で1012Ωcm以上の範囲を意味する。一方、導電性とは、体積抵抗率で1010Ωcm以下の範囲を意味する。
以下、感光体1の各要素について説明する。
【0030】
−導電性支持体−
導電性支持体2としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。
支持体2の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0031】
導電性支持体2として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0032】
−下引き層−
下引き層4は、支持体2の表面における光反射の防止、支持体2から感光層3への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。
下引き層4としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性物質等を結着樹脂に分散し、支持体2上に塗布して形成したものが挙げられる。
【0033】
下引き層4に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが用いられる。
下引き層4の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた塗布液(下引き層形成用の塗布液)が使用される。溶媒としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。
【0034】
下引き層形成用の塗布液を支持体2上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
下引き層4の厚さは15μm以上が望ましく、20μm以上50μm以下がより望ましい。
【0035】
−中間層−
電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために、下引き層4上に必要に応じて中間層(図示せず)をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などがある。
中間層の形成は、例えば上記結着樹脂を溶媒に溶解させた塗布液を用いる。塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の公知の方法が用いられる。
中間層の厚さは例えば0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。また、この中間層を下引き層4として使用してもよい。
【0036】
−電荷発生層−
電荷発生層5は、電荷発生材料が結着樹脂中に分散して形成されている。
電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が使用され、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶等が使用される。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が使用される。これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して使用される。
【0037】
電荷発生層における結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が用いられる。これらの結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いられる。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)は、使用する材料にもよるが例えば10:1から1:10の範囲である。
【0038】
電荷発生層5の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた塗布液が使用される。
電荷発生材料を結着樹脂中に分散させるために、塗布液には分散処理が施される。分散手段としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や、液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0039】
このようにして得られる電荷発生層形成用の塗布液を下引き層4上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
電荷発生層5の厚さは、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0040】
−電荷輸送層−
電荷輸送層6は、前述の通り、少なくとも結着樹脂として、前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂と、ブタジエン化合物を少なくとも含む2種以上の電荷輸送材料と、を含有し、必要に応じて、フッ素含有樹脂粒子(以下「フッ素粒子」と称する場合がある)やその他の成分を含んでもよい。
【0041】
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂は、前記式(1)を満たすものであれば特に限定されない。前記式(1)における(Mv/Mw)値は、ポリカーボネート樹脂を構成する繰り返し単位の構造によって決まると考えられる。
前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂の具体例としては、例えば、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂が挙げられ、上記一般式(2)で表される繰り返し単位と、その他の繰り返し単位と、を有する共重合体であってもよい。
【0042】
【化1】

【0043】
ここで上記一般式(2)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。
【0044】
その他の繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(3)で表される繰り返し単位、下記一般式(4)で表される繰り返し単位等が挙げられる。
すなわちポリカーボネート樹脂は、上記一般式(2)で表される繰り返し単位と下記一般式(3)で表される繰り返し単位とを含む共重合体であってもよく、上記一般式(2)で表される繰り返し単位と下記一般式(4)で表される繰り返し単位とを含む共重合体であってもよい。
【0045】
【化2】



【0046】
ここで上記一般式(3)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。
また上記一般式(4)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。
【0047】
ポリカーボネート樹脂が上記一般式(2)で表される繰り返し単位と上記一般式(3)で表される繰り返し単位とを含む共重合体である場合、ポリカーボネート樹脂中における上記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量としては、例えば5モル%以上95モル%以下が挙げられ、5モル%以上50モル%以下であってもよく、15モル%以上25モル%以下であってもよい。
【0048】
また、ポリカーボネート樹脂が上記一般式(2)で表される繰り返し単位と上記一般式(4)で表される繰り返し単位とで構成された共重合体である場合、ポリカーボネート樹脂中における上記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量としては、例えば5モル%以上90モル%以下が挙げられ、5モル%以上50モル%以下であってもよく、15モル%以上30モル%以下であってもよい。
【0049】
上記ポリカーボネート樹脂は、例えば、下記一般式(2’)で表される4,4′−ジヒドロキシビフェニル化合物等の原料を用い、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物との重縮合又はビスアリールカーボネートとのエステル交換反応等の方法によって合成する。
具体的には、一般式(2)で表される繰り返し単位と上記一般式(3)で表される繰り返し単位とで構成されたポリカーボネート樹脂を合成する場合、例えば、下記一般式(2’)で表される4,4′−ジヒドロキシビフェニル化合物及び下記一般式(3’)で表されるビスフェノール化合物を原料として用い、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物との重縮合又はビスアリールカーボネートとのエステル交換反応等の方法によってポリカーボネート樹脂を得る。
【0050】
【化3】

【0051】
ここで上記一般式(2’)及び一般式(3’)中、R、R、R、及びRは、それぞれ前記一般式(2)及び一般式(3)中におけるR、R、R、及びRと同様である。
【0052】
前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量としては、例えば、20000以上100000以下が挙げられ、30000以上8「0000以下であってもよく、40000以上70000以下であってもよい。
【0053】
前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、本実施形態の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂以外の樹脂(すなわち、他のポリカーボネート樹脂や他の樹脂等)を結着樹脂成分として含有させてもよい。
前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂以外の樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。
電荷輸送層6中に、前記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含有させる場合の含有量としては、電荷輸送層6全体に対し、例えば50質量%以下の範囲が挙げられる。
【0054】
(電荷輸送材料)
電荷輸送材料としては、一般的に、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。
【0055】
本実施形態では、上記の通り、電荷輸送材料として少なくとも2種以上の電荷輸送材料を用い、その2種以上の電荷輸送材料のうち少なくとも1種としてブタジエン化合物を用いる。
上記ブタジエン化合物としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物、又は下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
なお、電荷輸送材料としては、ブタジエン化合物を2種以上用いてもよいし、ブタジエン化合物とブタジエン化合物以外のその他の電荷輸送材料とを併用してもよい。この場合の、ブタジエン化合物とその他の電荷輸送材料の質量比としては、例えば1:5から5:1の範囲が挙げられる。すなわち、ブタジエン化合物とその他の電荷輸送材料とを併用する場合、電荷輸送材料全体におけるブタジエン化合物の含有量としては、例えば17質量%以上83質量%以下の範囲が挙げられる。
【0056】
【化4】

【0057】
上記一般式(5)中、R、R、R、R10、R11、R12、及びR13は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基(すなわち炭素数1以上20以下のアルキル基)、アルコキシ基(例えば炭素数1以上20以下のアルコキシ基)、ハロゲン原子、又は置換若しくは無置換のアリ−ル基を示す。nは0又は1を示す。前記アリール基を置換する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基が挙げられる。
【0058】
【化5】

【0059】
上記一般式(6)中、R14、R15、R16、R17、R18、及びR19は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、低級アルキル基(すなわち炭素数1以上20以下のアルキル基)、アルコキシ基(例えば炭素数1以上20以下のアルコキシ基)、ハロゲン原子、又は置換若しくは無置換のアリ−ル基を示す。m及びnは0又は1を示す前記アリール基を置換する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基が挙げられる。
【0060】
上記一般式(5)中のR、R、R、R10、R11、R12、及びR13は、上記の中でも、水素原子、低級アルキル基、又はアルコキシ基が好ましく、水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。また、上記一般式(5)中のnは1が好ましい。
上記一般式(6)中のR14、R15、R16、R17、R18、及びR19は、上記の中でも、水素原子、低級アルキル基、又はアルコキシ基が好ましく、水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。また、上記一般式(6)中のmは1が好ましく、nは1が好ましい。
【0061】
上記一般式(5)で表される化合物の好ましい具体例である例示化合物1−1から1−32と、上記一般式(6)で表される化合物の好ましい具体例である例示化合物2−1から2−20と、における置換基等(すなわち、RからR19で示される置換基、並びにm及びnで示される数)を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、上記トリブタジエン化合物は、一般式(6)で表される化合物のうち、m=1かつn=1である化合物である。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
電荷輸送層中における結着樹脂と電荷輸送材料との質量比としては、例えば2:8からい8:2の範囲が挙げられる。すなわち、電荷輸送層6全体に対する電荷輸送材料の含有量としては、例えば20質量%以上80質量%以下の範囲が挙げられ、40質量%以上60質量%以下の範囲であってもよい。
【0065】
(電荷輸送層形成用の塗布液)
電荷輸送層6は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用の塗布液を用いて形成される。
上記溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。混合して使用される溶剤は、混合溶剤として結着樹脂を溶解するものであれば、いかなるものでもよい。
【0066】
(フッ素粒子)
電荷輸送層6は、上記の通りフッ素粒子を含んでもよい。
フッ素粒子としては、例えばフッ素樹脂の粒子が挙げられ、フッ素樹脂としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体等が挙げられる。これらの中でも特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0067】
フッ素粒子の一次粒径としては、例えば0.05μm以上1μm以下の範囲が挙げられ、0.1μm以上0.5μm以下の範囲であってもよい。
電荷輸送層6中におけるフッ素粒子の含有量としては、例えば2質量%以上15質量%以下の範囲が挙げられる。
【0068】
上記電荷輸送層形成用の塗布液中にフッ素粒子を分散させるための分散方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等のメディアレス分散機を利用する方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0069】
また、塗布液中におけるフッ素粒子の分散安定剤として、例えば、フッ素系界面活性剤や、フッ素系グラフトポリマーを用いてもよい。フッ素系グラフトポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチルメタクリレートよりグラフト重合された樹脂等が挙げられる。
上記フッ素系界面活性剤やフッ素系グラフトポリマーの添加量としては、例えば、フッ素粒子の質量に対して1%以上5%以下の質量が挙げられる。
【0070】
画像形成装置中で発生するオゾンや窒素酸化物、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層3を構成する各層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。
【0071】
(電荷輸送層の形成方法)
電荷輸送層6の形成方法としては、例えば、下引き層4及び電荷発生層5が形成された導電性支持体2の電荷発生層5上に、上記電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより、電荷発生層6を形成する方法が挙げられる。
上記電荷輸送層形成用の塗布液を電荷発生層5上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
そして上記塗布液を電荷発生層5上に塗布した後、加熱乾燥工程により塗布液中の溶剤を除去する。電荷輸送層6の膜厚としては、例えば5μm以上50μm以下の範囲が挙げられ、10μm以上40μm以下の範囲であってもよい。
【0072】
なお、本実施形態の感光体1は、電荷発生層5と電荷輸送層6を有する機能分離型であり、電荷輸送層6が最表面層であるが、例えば電荷発生層と電荷輸送層とを兼ねた一層の感光層を有する機能一体型を採用してもよい。すなわち本実施形態の感光体は、例えば、導電性支持体上に、下引き層と、電荷発生層及び電荷輸送層を兼ねた一層の感光層と、がこの順序で積層された構造であってもよく、その場合は感光層が上記最表面層となる。また本実施形態の感光体は、下引き層を有さない構成であってもよい。
さらに、本実施形態の感光体1は、電荷輸送層6が最表面層であるが、電荷輸送層上にさらに保護層が形成された構成であってもよく、その場合は保護層が上記最表面層となる。
【0073】
また上記感光体1の製造方法は、導電性支持体2を準備する支持体準備工程と、下引き層4を形成する工程と、電荷発生層5を形成する工程と、下引き層4及び電荷発生層5が形成された導電性支持体2上に電荷輸送層形成用の塗布液を塗布する塗布工程と、導電性支持体2上に塗布された塗布液を乾燥して最表面層を形成する最表面層形成工程と、を有するが、支持体準備工程、塗布工程、及び最表面層形成工程を含めば特に限定されない。
【0074】
次に、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0075】
<画像形成装置>
−第1実施形態−
図2は、第1実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。図2に示す画像形成装置は、感光体の表面に形成されたトナー像を直接被転写媒体に転写し、中間転写体等を用いない直接転写方式である。また図2に示す画像形成装置は、直流電圧のみが印加される接触帯電方式である。
【0076】
図2に示す画像形成装置200は、例えば、上記実施形態の電子写真感光体1と、電源209に接続され、電子写真感光体1を帯電させる接触帯電方式の帯電装置208(帯電手段)と、帯電装置208により帯電された電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成する露光装置210(静電潜像形性手段)と、露光装置210により形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211(現像手段)と、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する転写装置212(転写手段)と、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213(トナー除去手段)と、電子写真感光体1の残留電位を除去する除電器214(除電手段)と、被転写媒体500に転写されたトナー像を被転写媒体500に定着させる定着装置215(定着手段)と、を備える。なお、例えば、除電器214は必ずしも設けられている必要はない。
【0077】
帯電装置208は帯電部材を有しており、感光体1を帯電させる際には帯電部材に電圧が印加される。電圧の範囲としては、直流電圧を印加する場合、要求される感光体帯電電位に応じて、正又は負の50V以上2000V以下が挙げられ、100V以上1500V以下であってもよい。
なお、本実施形態では直流電圧のみを印加する形態であるが、交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧として、例えば400V以上1800V以下が挙げられ、望ましくは800V以上1600V以下、さらに望ましくは1200V以上1600V以下が挙げられる。交流電圧の周波数は、例えば50Hz以上20000Hz以下が挙げられ、望ましくは100Hz以上5000Hz以下が挙げられる。
【0078】
帯電部材としては、例えば、ローラ、ブラシ、フィルム等が挙げられる。その中でもローラ状の帯電部材(以下、「帯電ローラ」と称する場合がある)としては、例えば電気抵抗が10Ω以上10Ω以下の範囲に調整された材料から構成されるものが挙げられる。また帯電ローラは、単層でもよく、複数の層から構成されていてもよい。
帯電部材として帯電ローラを用いる場合、感光体1に接触する圧力としては、例えば、250mgf以上600mgf以下の範囲が挙げられる。
【0079】
帯電部材を構成する材質としては、例えば、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等からなるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を適量配合したもの等が挙げられる。
さらにナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を適量配合し、得られた塗料をデイッピング、スプレー、ロールコート等の手法により、積層して用いてもよい。
【0080】
帯電部材として帯電ロールを用いる場合、帯電ロールを感光体1の表面に接触させることにより、帯電手段が駆動手段を有していなくても感光体1に従動して回転するが、帯電ロールに駆動手段を取り付け、感光体1と異なる周速度で回転させてもよい。
【0081】
露光装置210としては、公知の露光手段が用いられる。具体的には、例えば、半導体レーザ、LED(Light Emitting Diode)、液晶シャッター等の光源により露光する光学系装置等が用いられる。書きこみ時の光量としては、例えば、感光体表面上で0.5mJ/m以上5.0mJ/mの範囲が挙げられる。
【0082】
現像装置211としては、例えば、キャリアとトナーとからなる現像剤が付着した現像ブラシ(現像剤保持体)を静電潜像保持体に接触させて現像させる二成分現像方式の現像手段、導電ゴム弾性体搬送ロール(現像剤保持体)上にトナーを付着させ静電潜像保持体にトナーを現像する接触式一成分現像方式の現像手段等が挙げられる。
トナーとしては、公知のトナーであれば特に限定されない。具体的には、例えば、少なくとも結着樹脂が含まれ、必要に応じて着色剤、離型剤等が含まれたトナーであってもよく、無機粒子からなる研磨剤が添加されたトナーであってもよい。トナーに用いられる研磨剤の具体例は前記の通りである。
トナーを製造する方法は、特に制約されるものではないが、例えば、通常の粉砕法、分散媒中で作製する湿式溶融球形化法、懸濁重合、分散重合、乳化重合凝集法等の既知の重合法によるトナー製造法等が挙げられる。
現像剤がトナーとキャリアとからなる二成分現像剤である場合、キャリアとしては特に制限はなく、例えば、酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物などの芯材のみからなるキャリア(ノンコートキャリア)、これら芯材の表面に樹脂層を設けた樹脂コートキャリア等が挙げられる。二成分現像剤では、例えばトナーとキャリアとの混合比(質量比)として、トナー:キャリア=1:100から30:100の範囲が挙げられ、3:100から20:100の範囲であってもよい。
【0083】
転写装置212としては、ローラー状の接触型帯電部材の他、ベルト、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、あるいはコロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0084】
トナー除去装置213は、転写工程後の電子写真感光体1の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体1は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。トナー除去装置213としては、異物除去部材(クリーニングブレード)の他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等が用いられるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
なお、例えば感光体1の表面にトナーが残留しにくい場合など、残留トナーが問題にならない場合は、トナー除去装置213は設ける必要がない。
【0085】
除電器214は、感光体1の残留電位を除電することで、残留電位が次のサイクルに持ち込まれるのを防止するためのものである。例えば残留電位が生じにくい感光体を用いた場合など、残留電位が問題とならない場合は、除電器214を設けなくてもよい。
【0086】
被転写媒体500としては、例えば、普通紙、再生紙、OHPシート等が挙げられる。また被転写媒体500としては、例えば、白色顔料として炭酸カルシウムを用いたコート紙が挙げられる。
コート紙全体に対する炭酸カルシウムの含有量としては、例えば1質量%以上25質量%以下が挙げられ、5質量%以上20質量%以下であってもよい。
【0087】
画像形成装置200の基本的な作像プロセスについて説明する。
まず、帯電装置208が感光体1の表面を、定められた電位に帯電させる。次に、帯電された感光体1の表面を、画像信号に基づいて、露光装置210によって露光して静電潜像を形成する。
【0088】
次に、現像装置211の現像剤保持体上に現像剤が保持され、保持された現像剤が感光体1まで搬送され、現像剤保持体と感光体1とが近接(又は接触)する位置で静電潜像に供給される。これによって静電潜像は顕像化されてトナー像となる。
現像されたトナー像は、転写装置212の位置まで搬送され、転写装置212によって被転写媒体500に直接転写される。
【0089】
次いで、トナー像が転写された被転写媒体500は、定着装置215まで搬送され、定着装置215によってトナー像が被転写媒体500に定着される。定着温度としては、例えば100℃以上180℃以下が挙げられる。
【0090】
一方、トナー像が被転写媒体500に転写された後、転写されずに感光体1に残留したトナー粒子がトナー除去装置213との接触位置まで運ばれ、トナー除去装置213によって回収される。
そして残留トナーが回収された後、除電器214によって、感光体1に残留した残留電位が除電される。
以上のようにして、画像形成装置200による画像形成が行われる。
【0091】
−第2実施形態−
図3は第2実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。図3に示す画像形成装置220は中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体1a,1b,1c,1dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。例えば、感光体1aがイエロー、感光体1bがマゼンタ、感光体1cがシアン、感光体1dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成する。
【0092】
ここで、画像形成装置220に搭載されている電子写真感光体1a,1b,1c,1dは、それぞれ本実施形態の電子写真感光体である。
電子写真感光体1a,1b,1c,1dはそれぞれ一方向(紙面上は反時計回り)に回転し、その回転方向に沿って帯電ロール402a,402b,402c,402d、現像装置404a,404b,404c,404d、1次転写ロール410a,410b,410c,410d、クリーニングブレード415a,415b,415c,415dが配置されている。現像装置404a,404b,404c,404dはそれぞれトナーカートリッジ405a,405b,405c,405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーを供給し、また、1次転写ロール410a,410b,410c,410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体1a,1b,1c,1dに接している。
【0093】
さらに、ハウジング400内にはレーザ光源(露光装置)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体1a,1b,1c,1dの表面に照射する。これにより、電子写真感光体1a,1b,1c,1dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニング(トナー等の異物除去)の各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。中間転写ベルト409は駆動ロール406、背面ロール408及び支持ロール407によって張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転する。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介して背面ロール408と接するように配置されている。背面ロール408と2次転写ロール413とに挟まれた位置を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406と対向して配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0094】
また、ハウジング400内には被転写媒体を収容する容器411が設けられており、容器411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413とに挟まれた位置、さらには相互に接する2個の定着ロール414に挟まれた位置に順次移送された後、ハウジング400の外部に排出される。
【0095】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよいし、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合、中間転写体の基材を構成する樹脂材料としては、公知の樹脂が用いられる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。さらに、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いてもよい。
【0096】
また、上記実施形態にかかる被転写媒体とは、電子写真感光体上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。
また上記実施形態においては、帯電手段として帯電ロールを用いているが、これに限られず、スコロトロン等のコロナ放電方式等、非接触方式の帯電手段を用いてもよい。
【0097】
<プロセスカートリッジ>
図4は、本実施形態の電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジの一例の基本構成を概略的に示している。このプロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1と共に、電子写真感光体1を帯電させる接触帯電方式の帯電装置208、露光により電子写真感光体1上に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213、露光のための開口部218、及び、除電露光のための開口部217を、取り付けレール216を用いて組み合わせて一体化したものである。
【0098】
そして、このプロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する転写装置212と、被転写媒体500に転写されたトナー像を被転写媒体500に定着させる定着装置215と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成する。
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例A]
<実施例1>
−下引き層の形成−
酸化亜鉛粒子(テイカ社製、平均粒子径:70nm、比表面積値:15m/g)100質量部をメタノール500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、KBM603(信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて除去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛粒子を得た。
【0100】
前記シランカップリング剤で表面処理を施した酸化亜鉛粒子60質量部と、アリザリン0.6質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引き層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの下引き層を得た。
【0101】
−電荷発生層の形成−
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層用の塗布液を得た。この電荷発生層形成用の塗布液を前記下引き層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
【0102】
−電荷輸送層の形成−
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子(平均粒径:0.2μm)0.6質量部及びフッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー(重量平均分子量:30000)0.015質量部を、テトラヒドロフラン4質量部、トルエン1質量部とともに20℃の液温に保ち、48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を得た。
【0103】
次に、結着樹脂として下記構造式(7)で表される繰り返し単位及び下記構造式(8)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(粘度平均分子量:58,000、重量平均分子量:128,000、Mv/Mw:0.45)6質量部と、電荷輸送物質として下記化合物(A)を3質量部及び前記一般式(6)で表される化合物の具体例で示した例示化合物2−11を1質量部と、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1質量部と、を混合して、テトラヒドロフラン31質量部及びトルエン4質量部を混合した溶剤に溶解し、溶液を得た。
なお、上記ポリカーボネート重合体を構成する繰り返し単位全体に対し、下記構造式(7)で表される繰り返し単位の含有量は15モル%であり、下記構造式(8)で表される繰り返し単位の含有量は85モル%であった。
【0104】
【化6】

【0105】
【化7】

【0106】
得られた上記溶液に前記4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を加えて攪拌混合した縣濁液を、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、500kgf/cmまで昇圧しての分散処理を6回繰り返した液に、フッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL−100 信越シリコーン社製)を5ppmとなるように添加し、撹拌して電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を電荷発生層上に塗布して135℃で30分間乾燥し、膜厚が25μmの電荷輸送層を形成し、実施例1の電子写真感光体を得た。
【0107】
<実施例2>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、結着樹脂を、下記構造式(9)で表される繰り返し単位及び下記構造式(10)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(粘度平均分子量:45,000、重量平均分子量:89,000、Mv/Mw:0.51)に代えた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調整し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例2の電子写真感光体を得た。
なお、上記ポリカーボネート重合体を構成する繰り返し単位全体に対し、下記構造式(9)で表される繰り返し単位の含有量は25モル%であり、下記構造式(10)で表される繰り返し単位の含有量は75モル%であった。
【0108】
【化8】

【0109】
<実施例3>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、結着樹脂を、下記構造式(11)で表される繰り返し単位及び下記構造式(12)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(粘度平均分子量:41200、重量平均分子量:76400、Mv/Mw:0.54)に代えた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調整し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例3の電子写真感光体を得た。
なお、上記ポリカーボネート重合体を構成する繰り返し単位全体に対し、下記構造式(11)で表される繰り返し単位の含有量は30モル%であり、下記構造式(12)で表される繰り返し単位の含有量は70モル%であった。
【0110】
【化9】

【0111】
<実施例4>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、結着樹脂を、下記構造式(13)で表される繰り返し単位及び下記構造式(14)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(粘度平均分子量:62500、重量平均分子量:140000、Mv/Mw:0.45)に代えた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調整し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例4の電子写真感光体を得た。
なお、上記ポリカーボネート重合体を構成する繰り返し単位全体に対し、下記構造式(13)で表される繰り返し単位の含有量は30モル%であり、下記構造式(14)で表される繰り返し単位の含有量は70モル%であった。
【0112】
【化10】

【0113】
<実施例5>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質として、前記化合物(A)を3質量部及び前記一般式(5)で表される化合物の具体例で示した例示化合物1−17を1質量部用いた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調整し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例5の電子写真感光体を得た。
【0114】
<比較例1>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質として、前記化合物(A)を4質量部用いた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調整し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例1の電子写真感光体を得た。
【0115】
<比較例2>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質として、前記一般式(5)で表される化合物の具体例で示した例示化合物1−17を4質量部用いた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調整し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例2の電子写真感光体を得た。
【0116】
<比較例3>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、結着樹脂を、下記構造式(15)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(粘度平均分子量:60,000、重量平均分子量:147,000、Mv/Mw:0.41)に代えた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調整し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例3の電子写真感光体を得た。
【0117】
【化11】

【0118】
<比較例4>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、結着樹脂を、下記構造式(16)で表される繰り返し単位及び下記構造式(17)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(粘度平均分子量:73,000、重量平均分子量:190,500、Mv/Mw:0.38)に代えた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調整し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例4の電子写真感光体を得た。
なお、上記ポリカーボネート重合体を構成する繰り返し単位全体に対し、下記構造式(16)で表される繰り返し単位の含有量は50モル%であり、下記構造式(17)で表される繰り返し単位の含有量は50モル%であった。
【0119】
【化12】

【0120】
<比較例5>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質として、前記化合物(A)を2質量部と、下記化合物(B)を2質量部と、を用いた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調整し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例5の電子写真感光体を得た。
【0121】
【化13】

【0122】
<感光体の評価>
−感光体表面の耐久性評価(摩耗量評価および画像評価)−
実施例及び比較例の電子写真感光体を富士ゼロックス製DocuprintA505に装着し、低温低湿(10℃、20%RH)の環境下にて2万枚の画像形成テストを行い、次に、高温高湿(28℃、75%RH)の環境下で2万枚の画像形成テストを行った。なお上記画像形成テストに用いた被転写媒体は、モノクロコピー/プリンター用紙(富士ゼロックス社製、型番:P)であり、用紙全体に対する炭酸カルシウムの含有量は9質量%である。
その後、50%ハーフトーン(黒)の画像形成を行い、得られた画像を下記指標で評価し、画像評価を行った。結果を表3に示す。
また、上記画像形成テスト後に電子写真感光体を取り外し、電子写真感光体の膜厚を渦電流式膜厚計を用いて測定し、画像形成テスト前後での膜厚の変化を測定することにより、感光体表面の摩耗量を測定した。結果を表3に示す。
【0123】
−画像評価の評価指標−
A:良好(画像濃度の低下、画像濃度ムラ、及び画質欠陥が観測されない)
B:僅かに画像濃度が低下
C:画像濃度ムラが発生
D:画質欠陥が発生
E:画像濃度ムラ及び画像欠陥が発生
【0124】
【表3】

【0125】
−異なる用紙を用いた感光体表面の耐久性評価(摩耗量評価)−
実施例1、実施例3、比較例1、及び比較例3の電子写真感光体を富士ゼロックス製DocuCentreColor1250に装着し、用いる用紙を代えた以外は、前記画像形成テストと同様にして画像形成テストを行った後、上記と同様にして感光体表面の摩耗量を評価した。結果を表4に示す。
なお上記画像形成テストに用いた被転写媒体は、コピー/プリンター用紙(用紙2、ゼロックスコーポレーション社製、型番:XeroxBusinessMultipurposeCopyPaper4200、炭酸カルシウム17質量%)、及びカラーコピー/プリンター用紙両面コートタイプ(用紙3、富士ゼロックス社製、型番:JD COAT157、炭酸カルシウム20質量%)である。
【0126】
【表4】

【0127】
[実施例B]
<実施例B1>
前記実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を用いないこと以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例B1の電子写真感光体を得た。
【0128】
<実施例B3>
前記実施例3の電荷輸送層形成用塗布液において、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を用いないこと以外は、実施例3と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例3と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例B3の電子写真感光体を得た。
【0129】
<比較例B1>
前記比較例1の電荷輸送層形成用塗布液において、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を用いないこと以外は、比較例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて比較例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例B1の電子写真感光体を得た。
【0130】
<比較例B3>
前記比較例3の電荷輸送層形成用塗布液において、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を用いないこと以外は、比較例3と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて比較例3と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例B3の電子写真感光体を得た。
【0131】
<感光体の評価>
−感光体表面の耐久性評価(摩耗量評価)−
前記実施例Aと同様にして、感光体表面の摩耗量を測定した。結果を表5に示す。
【0132】
【表5】

【0133】
上記評価結果より、実施例の電子写真感光体は、比較例の電子写真感光体に比べ、摩耗量が少なく、長期使用後に形成された画像の画質が良好であることが確認された。特に実施例の電子写真感光体は、炭酸カルシウムを多く含む用紙を用いて画像形成テストを行った場合においても、比較例の電子写真感光体に比べ摩耗量が少ないことが確認された。
【0134】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、これらに限定されない。例えば、本実施形態に係る電子写真感光体は、図2から図4に示した画像形成装置に限定されず、電子写真方式等の画像形成方法を採用し、カラーや白黒の画像を形成する複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に使用される。
【符号の説明】
【0135】
1,1a,1b,1c,1d 電子写真感光体、2 支持体、3 感光層、4 下引き層、5 電荷発生層、6 電荷輸送層、200 画像形成装置、208 帯電装置、210 露光装置、211 現像装置、212 転写装置、213 トナー除去装置、214 除電器、215 定着装置、220 画像形成装置、300 プロセスカートリッジ、404a,404b,404c,404d 現像装置、500 被転写媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体上に設けられ、少なくとも感光層を含む1つ以上の層と、
を備え、
前記1つ以上の層のうち、前記支持体から最も遠い側に配置される最表面層は、下記式(1)を満たすポリカーボネート樹脂と、ブタジエン構造を有する化合物を少なくとも含む2種以上の電荷輸送材料と、を含有する、電子写真感光体。
式(1):0.45≦(Mv/Mw)≦0.55
[上記式(1)中、Mvは粘度平均分子量を表し、Mwは重量平均分子量を表す。]
【請求項2】
前記ブタジエン構造を含む化合物は、1分子中にブタジエン構造を3つ有する化合物である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段、及び前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を備えるプロセスカートリッジ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体の表面を帯電させる帯電工程と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写工程と、
を有する画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−47751(P2013−47751A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186256(P2011−186256)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】