説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置および積層膜

【課題】 感光体の摩擦力を低減させるとともに、接触部材への傷の発生を抑制する電子写真感光体を提供すること
【解決手段】 電子写真感光体の表面層が、放射状に伸びた6つの延在部を有する星型六角形形状の酸化チタン粒子を含有し、該酸化チタン粒子の数平均粒径が、0.1μm以上1.0μm以下であることを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置および積層膜に関する。
【背景技術】
【0002】
有機光導電性物質を含有する電子写真感光体(有機電子写真感光体)において、電子写真感光体の表面には、接触部材(クリーニングブレードなど)が接触する。そのため、電子写真感光体は、これら接触部材等との接触ストレスによる画像劣化の発生を低減させることが求められ、電子写真感光体の表面の摩擦力を効果的に低減すること求められている。特に、近年、電子写真感光体の耐久性が向上するのに伴い、電子写真感光体には耐摩耗性の高い樹脂が用いられ、より感光体と接触部材との摩擦力を低減させることが求められている。
【0003】
電子写真感光体の摩擦力を低減させる方法として、電子写真感光体の表面層に潤滑性の高い微粒子を含有する方法がある。特許文献1では、電子写真感光体の保護層に潤滑性の微粒子を含有させて、感光体と接触部材との摩擦力を低減させる方法が提案されている。
【0004】
一方、特許文献2では、印刷版材料として、基材上にテトラポット形状を有する微粒子を含有する層を有することにより、耐刷性を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−205171号公報
【特許文献2】特開2004−237484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、特許文献1に記載の方法では、微粒子の形状が球形であるため、接触部材との接触によって微粒子が脱離しやすく、感光体と接触部材との摩擦力の低減させる効果が十分ではない。また、特許文献2に記載されたテトラポット形状を有する微粒子を表面層に含有させると、微粒子の先端が長く尖った形状をしているため、接触部材(クリーニングブレードなど)に傷が発生してしまうことがある。
【0007】
本発明の目的は、感光体の摩擦力を低減させるとともに、接触部材への傷の発生を抑制する電子写真感光体を提供することである。また、本発明の別の目的は、前記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、摩擦力を低減させるとともに、接触部材への傷の発生を抑制する積層膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。
【0009】
本発明は、支持体、および該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、放射状に伸びた6つの延在部を有する星型六角形形状の酸化チタン粒子を含有し、該酸化チタン粒子の数平均粒径が、0.1μm以上1.0μm以下であることを特徴とする電子写真感光体に関する。
【0010】
また、本発明は、前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
【0011】
また、本発明は、前記電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、および転写手段を有する電子写真装置に関する。
【0012】
また、本発明は、支持体、支持体上に形成された中間層、および該中間層上に形成された電荷輸送物質を有する電荷輸送層を有する積層膜において、該電荷輸送層が、放射状に伸びた6つの延在部を有する星型六角形形状の酸化チタン粒子を含有し、該酸化チタンの数平均粒径が、0.1μm以上1.0μm以下であることを特徴とする積層膜に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子写真感光体の摩擦力を低減させるとともに、接触部材への傷の発生を抑制することができる電子写真感光体を提供することができる。また、本発明によれば、前記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ、および電子写真装置を提供することができる。また、本発明によれば、摩擦力を低減させるとともに、接触部材への傷の発生を抑制する積層膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の酸化チタン粒子の一例を示すSEM(走査型電子顕微鏡)画像である。
【図2】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の層構成を説明するための図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の表面層の表面を観察したSEM画像である。
【図5】テトラポット型形状の酸化亜鉛粒子のSEM画像である。
【図6】本発明の実施例で用いる積層膜を切り取る方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電子写真感光体は、上記のとおり、支持体、および該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、放射状に伸びた6つの延在部を有する星型六角形形状の酸化チタン粒子を含有し、該酸化チタン粒子の数平均粒径が、0.1μm以上1.0μm以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明者らは、本発明の電子写真感光体において、感光体の摩擦力を低減させるとともに、接触部材への傷の発生を抑制することができる理由を以下のように推測している。本発明の電子写真感光体は、表面層に酸化チタン粒子を含有させる。そして、この酸化チタン粒子は、放射状に伸びた6つの延在部を有する星型六角形形状を呈している。星型六角形形状を呈する酸化チタン粒子は、延在部にある6つの頂点によって、6つの突起があるため、多くの酸化チタン粒子の突起と接触部材とが接触することができ、感光体と接触部材との摩擦力を低減することができると考えられる。また、星型六角形形状を呈する酸化チタン粒子は、球状形状の粒子と比較して、接触部材との接触によって粒子が脱離しにくいため、感光体の摩擦力の低減効果をより維持することができると考えられる。
【0017】
さらに、酸化チタン粒子が星型六角形形状を有していることと、数平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下と比較的小さいことにより、突起が長くなり過ぎず、感光体と接触部材との接触によって、接触部材への傷の発生を抑制することができる。
【0018】
これらの理由により、本発明は、感光体の摩擦力を低減させ、接触部材への傷の発生を抑制する効果を奏すると推測される。
【0019】
一方、特開2004−237484号公報に記載のテトラポット型の粒子では、平均粒径が大きくて、鋭く長い突起が接触部材に接触しやすいため、接触部材(クリーニングブレードなど)に傷を発生させてしまうことがある。
【0020】
本発明の電子写真感光体は、支持体、および該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体である。
【0021】
本発明において感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層とが挙げられる。本発明の電子写真感光体は、電子写真特性の観点から、積層型感光層が好ましい。また、電荷発生層や電荷輸送層自体をそれぞれ積層構成とすることができる。
【0022】
本発明における電子写真感光体の好ましい構成の概略が図3に示される。図3に示される電子写真感光体においては、支持体21上に導電層22、導電層上に中間層23、中間層上に電荷発生層24、電荷発生層上に電荷輸送層25が積層されている。また、必要に応じて電荷輸送層上に保護層を設けてもよい。また、電荷輸送層は、積層構造としてもよい。
【0023】
本発明の電子写真感光体の表面層は、電荷輸送層が最表面である場合は、電荷輸送層が表面層であり、電荷輸送層上に保護層が設けられている場合は、保護層が表面層である。
【0024】
本発明の酸化チタン粒子は、図1の酸化チタン粒子のSEM画像に示すような形状を呈している。そして、図1に示す酸化チタン粒子は、6つの延在部を有し、これら6つの延在部はお互いに等間隔で放射状に伸びており、全体として星型六角形形状(六光星形状ということもできる。)を呈している。さらに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有している。
【0025】
酸化チタン粒子の粒径は、数平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。1.0μmよりも大きいと、星型六角形形状の突起が長くなり、接触部材に傷が発生しやすい。0.1μm未満であると、感光体の摩擦力を低減させる効果が十分ではない場合がある。
【0026】
本発明において、酸化チタン粒子の数平均粒径は以下のような方法を用いて求めることができる。作製された感光体から、表面層を溶剤(表面層を溶解可能な溶剤:テトラヒドロフランなど)にて溶解させることで得た酸化チタン粒子を用いて測定する。SEMを用いて、任意に選択された50個の酸化チタン粒子の粒径を測定し、これを平均して数平均粒径を求めた。該酸化チタンの粒径は、星型六角形形状の6つの頂点間の距離のうち、最大のものを粒径とした。
【0027】
酸化チタン粒子の含有量は、表面層の全質量に対して、27℃、1気圧環境下で、0.1体積%以上10体積%以下であることが、感光体の摩擦力を低減させる効果に優れるため好ましい。さらに、0.1体積%以上5体積%以下であると、より好ましい。10体積%よりも多いと、光の散乱の影響が大きくなるため、電子写真特性が十分ではない場合がある。
【0028】
本発明の酸化チタン粒子は、特開2006−076798号公報の記載の方法により製造することができる。
【0029】
本発明の電子写真感光体において、表面層に用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂が挙げられる。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。特には、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましい。これは、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂の硬さと酸化チタン粒子の硬さとのバランスがとれているため、接触部材との接触によって粒子が脱離しにくくなり、優れた感光体の摩擦力の低減効果が得られる。
【0030】
本発明において、表面層に用いられる樹脂の重量平均分子量は、機械的強度の観点から10,000以上200,000以下であることが好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂は、10,000以上60,000以下が好ましく、ポリアリレート樹脂は、80,000以上200,000以下が好ましい。本発明において、樹脂の重量平均分子量とは、常法に従い、特開2009−104145号公報に記載の方法により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0031】
次に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
【0032】
本発明の電子写真感光体は、支持体、および該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体である。
【0033】
〔導電性支持体〕
本発明の電子写真感光体に用いられる支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスなどが挙げられる。アルミニウム、またはアルミニウム合金製の支持体の場合は、ED管、EI管や、これらを切削、電解複合研磨、湿式または乾式ホーニング処理した支持体を用いることもできる。また、金属支持体、樹脂支持体上にアルミニウム、アルミニウム合金、または酸化インジウム−酸化スズ合金等の導電性材料の薄膜を形成したものも挙げられる。支持体の表面は、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などを施してもよい。
【0034】
また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子のような導電性粒子を樹脂などに含浸した支持体や、導電性樹脂を有するプラスチックを用いることもできる。
【0035】
支持体と感光層(電荷発生層、電荷輸送層)または後述の中間層との間には、レーザー光などの散乱による干渉縞の防止や、支持体の傷の被覆を目的とした導電層を設けてもよい。
【0036】
本発明の電子写真感光体において、支持体上に導電性粒子と樹脂を有する導電層を設けてもよい。導電層は、導電性粒子を樹脂に分散させた導電層用塗布液を用いて形成される層である。導電性粒子としては、カーボンブラック、アセチレンブラックや、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉や、導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体が挙げられる。
【0037】
導電層用塗布液の溶剤としては、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、および芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましい。さらには5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明の電子写真感光体では、支持体または導電層と、電荷発生層との間に中間層を設けてもよい。
【0039】
中間層は、樹脂を含有する中間層用塗布液を支持体上、または導電層上に塗布し、これを乾燥または硬化させることによって形成することができる。
【0040】
中間層に用いられる樹脂としては、ポリアクリル酸類、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。中間層に用いられる樹脂は熱可塑性樹脂が好ましく、具体的には、熱可塑性のポリアミド樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂としては、溶液状態で塗布できるような低結晶性または非結晶性の共重合ナイロンが好ましい。
【0041】
中間層の膜厚は、0.05μm以上40μm以下であることが好ましく、0.1μm以上30μm以下であることがより好ましい。また、中間層には、半導電性粒子、電子輸送物質、あるいは電子受容性物質を含有させてもよい。
【0042】
〔電荷発生層〕
本発明の電子写真感光体において、支持体、導電層または中間層上には、電荷発生層が設けられる。
【0043】
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷発生物質としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料およびペリレン顔料が挙げられる。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、特にオキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンなどが高感度であるため好ましい。
【0044】
電荷発生層に用いられる樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、および尿素樹脂が挙げられる。これらの中でも、ブチラール樹脂が特に好ましい。これらの樹脂は、単独、混合、または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0045】
電荷発生層は、電荷発生物質を樹脂および溶剤とともに分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることにより形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。
【0046】
分散方法としては、たとえば、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルを用いた方法が挙げられる。
【0047】
電荷発生物質と樹脂との割合は、樹脂1質量部に対して、電荷発生物質が0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.25質量部以上4質量部以下がより好ましい。
【0048】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
【0049】
電荷発生層の膜厚は、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。また、電荷発生層において電荷の流れが滞らないようにするために、電荷発生層には、電子輸送物質、または電子受容性物質を含有させてもよい。
【0050】
〔電荷輸送層〕
本発明の電子写真感光体において、電荷発生層上には電荷輸送層が設けられる。
【0051】
電荷輸送層は、電荷輸送物質を樹脂および溶剤とともに分散して得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0052】
本発明において、電荷輸送層が表面層である場合は、電荷輸送物質と上記酸化チタン粒子と樹脂を含有する。電荷輸送層に用いられる樹脂としては、上記の表面層で用いられる樹脂を有する。
【0053】
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷輸送物質としては、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリルメタン化合物などが挙げられる。これら電荷輸送物質は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0054】
分散方法としては、たとえば、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、アトライターを用いた方法が挙げられる。
【0055】
電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、結着樹脂1質量部に対して、電子輸送物質が0.5質量部以上2質量部以下が好ましい。
【0056】
電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、エーテル系溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で使用してよいが、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0057】
電荷輸送層の膜厚は5〜30μmであることが好ましく、6〜25μmであることがより好ましい。また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。
【0058】
本発明の電子写真感光体において、電荷輸送層上に保護層を設けてもよい。この場合、電子写真感光体の表面層は、保護層となる。
【0059】
保護層は、結着樹脂および必要に応じて電荷輸送物質を溶剤に分散させて得られる保護層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0060】
保護層に用いられる電荷輸送物質としては、上述の電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質と同様のものを用いることができる。
【0061】
保護層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、テトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
【0062】
保護層の膜厚は0.01μm以上10以下μmであることが好ましく、0.1μm以上10μm以下であることがより好ましい。また、保護層には、レベリング剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて含有させてもよい。
【0063】
上記各層の塗布液を塗布する際には、浸漬コーティング法(浸漬塗布法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0064】
〔電子写真装置〕
図2に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0065】
図2において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度をもって回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面は、回転過程において、帯電手段(一次帯電手段:帯電ローラーなど)3により、負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0066】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーで反転現像により現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に給送される。また、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
【0067】
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ搬入されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ搬送される。
【0068】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(転写残トナー)の除去を受けて清浄面化される。次いで、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図2に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0069】
本発明において、上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6、およびクリーニング手段7などの構成要素の中から複数のものを選択し、これらを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持して構成してもよい。そして、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図2では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5、およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
【実施例】
【0070】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、「質量部」を意味する。
【0071】
(実施例1)
まず、短辺12cm、長辺24cm、厚さ0.05cmのアルミニウム製シートを用意し、これを支持体とした。
【0072】
次に、共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)8部とN−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学産業(株)製)24部とを、メタノール614部およびn−ブタノール155部の混合溶剤に溶解させて、中間層用塗布液を調製した。この中間層塗布液を上記アルミニウム製シート上に、メイヤーバー装置(#12)で塗布し、90℃で10分間乾燥させて、膜厚が1μmの中間層を形成した。
【0073】
次に、図1に示されるような星型六角形形状の酸化チタン粒子(商品名:ST−K4、住友大阪セメント社製)20部に、テトラヒドロフラン80部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカー(東洋精機製作所製)で2時間分散した。分散後、ナイロンメッシュ#100(東京スクリーン社製)で分散液をろ過し、ろ液を酸化チタン粒子分散液とした。一方、下記構造式(A)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学(株)製、重量平均分子量39,000)100部、下記構造式(3)の化合物(電荷輸送物質)90部、及び、トルエン572部を混合して溶解し、電荷輸送物質溶液を調製した。なお、上記酸化チタン粒子の数平均粒径は0.5μmであった。
【0074】
【化1】

【0075】
【化2】

【0076】
次に、酸化チタン粒子分散液0.33部、および電荷輸送物質溶液80.05部に、固形分濃度が20質量%になるようにテトラヒドロフランを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで1時間分散した。分散後、この分散液をナイロンメッシュ#100(東京スクリーン社製)でろ過し、ろ液を電荷輸送層用塗布液とした。この電荷輸送層用塗布液を上記中間層上にメイヤーバー装置(#60)で塗布し、120℃で1時間乾燥させて、膜厚が約20μmの電荷輸送層を形成した。形成された電荷輸送層の酸化チタン粒子の含有量は、電荷輸送層の全体積に対して、27℃、1気圧環境下で、0.1体積%(電荷輸送層の全質量に対しては、0.3質量%)である。なお、酸化チタンの密度は3.9g/cm、電荷輸送層の密度は1.2g/cmである。このようにして、支持体(アルミニウム製シート)、中間層、および電荷輸送層を有する積層膜(膜)を作製した。
【0077】
(実施例2〜5)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液中の酸化チタン粒子分散液、および電荷輸送物質溶液の含有量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして積層膜を作製した。
【0078】
(実施例6)
下記構造式(4)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂100.1部(重量平均分子量120,000)と上記構造式(3)の化合物(電荷輸送物質)90.06部、及び、トルエン570.24部を混合して溶解し、電荷輸送物質溶液を調製した。この電荷輸送物質溶液、および酸化チタン粒子分散液(微粒子分散液)の含有量を表1のように変更し、それ以外は、実施例1と同様に積層膜を作製した。なお、ポリアリレート樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名:HLC−8120、東ソー(株)製)で測定し、ポリスチレン換算で計算した。ポリアリレート樹脂のイソフタル酸/テレフタル酸の比率は、1/1である。
【0079】
形成された電荷輸送層の酸化チタン粒子の含有量は、電荷輸送層の全体積に対して、27℃、1気圧環境下で、1体積%(電荷輸送層の全質量に対しては、2.6質量%)である。なお、酸化チタンの密度は3.9g/cm、電荷輸送層の密度は1.2g/cmである。
【0080】
【化3】

【0081】
(実施例7)
実施例8において、電荷輸送層用塗布液中の酸化チタン粒子分散液、および電荷輸送物質溶液の含有量を表1のように変更した以外は、実施例8と同様にして積層膜を作製した。
【0082】
(比較例1)
実施例1において、酸化チタン粒子を、直径0.5μmのシリカ粒子(商品名:ハイプレシカFR、宇部日東化成社製)に変更し、電荷輸送層用塗布液中のシリカ粒子分散液(微粒子分散液)、および電荷輸送物質溶液の含有量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、積層膜を作製した。形成された電荷輸送層のシリカ粒子の含有量は、電荷輸送層の全体積に対して、27℃、1気圧環境下で、1体積%(電荷輸送層の全質量に対しては、1.9質量%)である。なお、シリカの密度は2.2g/cm、電荷輸送層の密度は1.2g/cmである。
【0083】
(比較例2〜4)
比較例1において、電荷輸送層用塗布液中のシリカ粒子分散液、および電荷輸送物質溶液の含有量を表1のように変更した以外は、比較例1と同様にして積層膜を作製した。
【0084】
(比較例5、6)
実施例6において、酸化チタン粒子を数平均粒径0.5μmのシリカ粒子(商品名:ハイプレシカFR、宇部日東化成社製)に変更し、電荷輸送層用塗布液中のシリカ粒子分散液(微粒子分散液)、および電荷輸送物質溶液の含有量を表1に示すように変更した以外は実施例6と同様にして、積層膜を作製した。なお、シリカの密度は2.2g/cm、電荷輸送層の密度は1.2g/cmである。
【0085】
(比較例7、8)
実施例1において、酸化チタン粒子を図5に示すようなテトラポッド型酸化亜鉛粒子(商品名:パナテトラWZ−05E1、Panasonic(株)製)に変更し、電荷輸送層用塗布液中のテトラポット型酸化亜鉛粒子分散液、および電荷輸送物質溶液の含有量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、積層膜を作製した。なお、テトラポッド型酸化亜鉛の密度は5.78g/cm、電荷輸送層の密度は1.2g/cmである。なお、テトラポッド型酸化亜鉛粒子の数平均粒径は、10μmである。
【0086】
(比較例9)
酸化チタン粒子(商品名:ST−K4、住友大阪セメント社製)6部に、テトラヒドロフラン194部を混合し、直径30μmのジルコニアビーズ(商品名:ニイミNZビーズ30、ニイミ産業社製)を用いたペイントシェーカーで4時間分散した。分散後、分散液をナイロン製のマイクロメッシュでろ過し、ろ液を直径0.1μmのオムニポアメンブレン(日本ミリポア製)で減圧ろ過した。このろ液をエバポレーターにて濃縮し、固形分が5.0質量%になるように調製した。さらに、5.0質量%のろ液20部にジルコニアビーズを加えて、ペイントシェーカーにて1時間分散した。分散液をろ過し、5.0質量%の小径星型酸化チタン粒子分散液を調製した。この小径星型酸化チタン粒子分散液、および電荷輸送物質溶液の含有量を表1のように変更し、それ以外は、実施例1と同様に積層膜を作製した。なお、酸化チタンの密度は3.9g/cm、電荷輸送層の密度は1.2g/cmである。小径星型酸化チタンの数平均粒径は、0.06μmである。
【0087】
(比較例10)
実施例1において、酸化チタン粒子を用いずに、電荷輸送物質溶液の含有量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、積層膜を作製した。
【0088】
(比較例11)
実施例6において、酸化チタン粒子を用いずに、電荷輸送物質溶液の含有量を表1に示すように変更した以外は実施例6と同様にして、積層膜を作製した。
【0089】
【表1】

【0090】
実施例1〜7、および比較例1〜11の積層膜の評価方法については、以下の通りである。評価結果を表2に示す。
【0091】
(動摩擦係数の測定)
実施例、および比較例で作製した短辺12cm、長辺24cmの積層膜を、図7に示すように薄い灰色の部分をカッターで切断し、これを摩擦試験用試料とした。
【0092】
動摩擦係数の測定は、摩耗摩擦試験機(商品名:HEIDON Type20、新東科学社製)を用いて行った。摩擦試験用試料(積層膜)をステージに置き、テープで摩擦試験用試料の周囲を張り付けて固定し、厚さ2mm、幅10mm、長さ9mmのウレタン製ゴム(JIS−A硬度:70度)を、摩擦試験用試料平面から24°(ウレタン製ゴムと膜試料が平行で接する時を0°とする)の角度で当接させた。ウレタン製ゴムに垂直荷重30gの荷重をかけ、ステージを回転させて、摩擦試験用試料とウレタン製ゴムとの間にかかる力を測定し、条件1,2の2つの条件で動摩擦係数を求めた。条件1では、ウレタン製ゴムの回転半径25mm、ステージの回転数114.7(rpm)、回転速度300mm/秒の条件で、60分間測定し、55〜60分の5分間の摩擦係数を算出した。条件2では、ウレタン製ゴムの回転半径25mm、ステージの回転数114.7(rpm)、回転速度300mm/秒の条件で、20分間測定し、17〜20分の3分間の摩擦係数を算出した。結果を表2に示す。
【0093】
(ゴム当接面の観察)
動摩擦試験後のウレタン製ゴムの当接部分を、ハイロックスジャパン社製デジタルマイクロスコープKH−7700を用いて観察した。表面の傷の状態を以下の基準で評価を行い、得られた結果を表2に示す。本発明においては、下記の評価基準で○は本発明の効果が得られているレベルである。一方、△及び×は本発明の効果が得られていないレベルと判断した。結果を表2に示す。
【0094】
○:傷も欠けもなし。
【0095】
△:目立った欠けはないが、傷がある。
【0096】
×:傷も欠けもあり。
【0097】
【表2】

【0098】
(実施例21)
実施例2の積層膜を摩擦試験用試料とし、ウレタン製ゴムの垂直荷重を60gに変更し、さらに次のように動摩擦係数の測定条件を変更して、動摩擦係数を測定した。ウレタン製ゴムの回転半径25mm、ステージの回転数114.7(rpm)、回転速度300mm/秒の条件で、10分間測定し、8〜10分の2分間の摩擦係数を算出した。結果を表3に示す。
【0099】
(比較例22)
比較例1の積層膜を摩擦試験用試料とし、動摩擦係数の測定条件を実施例21と同様の条件で摩擦係数を測定した。結果を表3に示す。
【0100】
(比較例23)
比較例7の積層膜を摩擦試験用試料とし、動摩擦係数の測定条件を実施例21と同様の条件で摩擦係数を測定した。結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
(実施例31)
実施例1と同様に、アルミニウムシート上に中間層を形成した。
【0103】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)10部を用意した。それに、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業社製)5部、及びシクロヘキサノン260部を加え、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で、1.5時間分散した。ガラスビーズをメッシュ濾過により分離し、酢酸エチル240部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を上記中間層上にメイヤーバー#8で塗布し、これを90℃で10分間乾燥させて、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0104】
形成された電荷発生層上に、実施例1と同様にして膜厚が20μmの電荷輸送層を形成し、積層膜を作製した。
【0105】
(参考例1)
実施例31において、電荷輸送層に酸化チタン粒子を含有させなかった以外は、実施例31と同様にして、積層膜を作製した。
【0106】
実施例31および参考例1の評価は、露光性の評価、電子写真感光体の感度の評価を行った。
【0107】
ヒューレッドパッカード製のレーザービームプリンター(商品名:Color LaserJetCP2025)を用い、マゼンタ色用のプロセスカートリッジCC533Aから電子写真感光体を取り出した。電子写真感光体の中央部分を紙やすり(#400)でこすり、アルミ面(支持体表面、幅5cmで一周分)を露出させた。アルミ面にカーボンペーストを塗った上に、幅5センチ、長さ7.5センチに切った積層膜を巻きつけ、積層膜の四辺(幅1ミリ)をテトラフルオロエチレンテープで貼り、固定した。積層膜を固定した電子写真感光体をマゼンタ色用のプロセスカートリッジCC533Aに装着し、マゼンタのプロセスカートリッジを装置に装着した。
【0108】
(露光性の評価)
露光性の評価は、電子写真感光体を300mm/秒で回転させ、カートリッジ内に取り付けられている帯電ローラーにより−1.3kVの直流電圧を印加して、積層膜を帯電させた。次に、白色光を照射した後、−300Vの現像バイアスを印加し、電子写真感光体の回転を止めた。現像性の評価と同様にマクベス反射濃度計を用いて、白地部分(画像濃度が0.0)と積層膜との画像濃度差を測定し、以下の評価基準で判定し、露光性の評価をした。また、上述のように積層膜を帯電させた後、白色光を照射させずに−300Vの現像バイアスを印加し、電子写真感光体の回転を止めた。そして、マクベス反射濃度計を用いて、白地部分と積層膜との画像濃度差を測定した。結果を表4に示す。
【0109】
A:画像濃度差が1.20以上
B:画像濃度差が1.00以上1.20未満
C:画像濃度差が1.00未満。
【0110】
D:トナーの付着なし。
【0111】
(感度の評価)
感度の評価は、作製した積層膜を、10cmのNESAガラスを用いる直接電圧印加方式の電子写真感光体測定装置を使用して測定した。表面電位が−700Vになるように印加電圧Vaを積層膜に印加し、積層膜の表面電位が−700Vになった20ミリ秒後、露光波長778nmの光を100ミリ秒間照射し、95ミリ秒後に積層膜の表面電位を測定した。光源としては、ハロゲンランプを波長778nmの干渉フィルターで単色化したものを用いた。光感度(EΔ500V)は、積層膜の表面電位が露光によって−200Vになるときの光量(cJ/m)から求めた。
【0112】
【表4】

【0113】
表4より、実施例31の電子写真特性(露光性、感度)は、参考例1と同等のレベルである。よって、本発明の電子写真感光体は、摩擦力を低減させるとともに、接触部材への傷の発生を抑制し、電子写真特性も満足するものであると考えられる。
【0114】
実施例と比較例1〜6との比較により、表面層に球形のシリカ粒子を含有させた場合は、シリカ粒子の形状が球形であるため、接触部材との接触によってシリカ粒子が脱離しやすく、摩擦力の低減効果が十分に得られていない。
【0115】
実施例と比較例7、8との比較により、表面層にテトラポット型の酸化亜鉛粒子を含有させた場合は、酸化亜鉛粒子の平均粒径が大きく、テトラポット形状であるため、鋭くて長い突起が接触部材に接触しやすいことにより、接触部材に傷が発生しやすい。
【0116】
実施例と比較例9との比較により、星型六角形形状の酸化チタン粒子の平均粒径が、小さいと摩擦力の低減効果が十分に得られない。
【0117】
実施例と比較例10、11との比較により、表面層に星型六角形形状の酸化チタン粒子を含有させないと、摩擦力の低減効果が得られない。
【0118】
(実施例32)
(電子写真感光体の製造)
直径24mm、長さ257mmのアルミニウムシリンダーを支持体とした。
【0119】
次に、SnOコート処理硫酸バリウム(導電性粒子)10部、酸化チタン(抵抗調節用顔料)2部、フェノール樹脂6部、シリコーンオイル(レベリング剤)0.001部およびメタノール4部/メトキシプロパノール16部の混合溶剤を用いて導電層用塗布液を調製した。
【0120】
この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを140℃で30分間加熱することによって、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0121】
次に、実施例1で調製した中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、100℃で10分間乾燥させることによって、膜厚が0.7μmの中間層を形成した。
【0122】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン(電荷発生物質)10部を、シクロヘキサノン250部にポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1.積水化学工業(株)製)5部を溶解させた液に加えた。これを、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下1時間分散した。分散後、酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0123】
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、これを100℃で10分間乾燥させることによって、膜厚が0.26μmの電荷発生層を形成した。
【0124】
次に、実施例1で調製した電荷輸送層用塗布液を、液体循環させる装置を付した塗布装置に入れて、液体を循環させながら、電荷発生層上に浸漬塗布し、これを120℃で1時間乾燥することにより、電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を製造した。浸漬の条件は、乾燥後の電荷輸送層の膜厚が20μmになるように調整した。
【0125】
(実施例33〜38)
実施例32において、電荷輸送層用塗布液を、実施例2〜7に記載の電荷輸送層用塗布液に変更した以外は、実施例32と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0126】
(画像評価)
製造した電子写真感光体をキヤノン(株)製レーザービームプリンター(商品名:LBP−2510)に装着し、画像形成を行って、得られた画像の評価を行った。評価にあたり780nmのレーザー光源の露光量(画像露光量)については、電子写真感光体の表面での光量が0.3μJ/cmとなるように改造して用いた。また、評価は、温度23℃、湿度15%環境下で行った。画像評価としては、A4サイズの普通紙を用いて単色のハーフトーン画像を出力し、出力された画像を目視にて以下に示す基準で評価した。
【0127】
ランクA:全面均一な画像である
ランクB:ごく一部に軽微な画像ムラがある
ランクC:画像ムラがある
評価結果を表5に示す。
【0128】
(通紙耐久前後の動摩擦係数の測定)
製造した電子写真感光体の表面(周面)の動摩擦係数の測定は、摩耗摩擦試験機(商品名:HEIDON Type14FW、新東科学社製)を用いて行った。留め具を設置し、電子写真感光体を置いてテープで固定し、厚さ2mm、幅10mm、長さ9mmのウレタン製ゴム(JIS−A硬度:70度)を、摩擦試験用試料の稜線から24°(ウレタン製ゴムとステージが平行で接する角度を0°とする)の角度で電子写真感光体の表面(周面)に当接させた。ウレタン製ゴムに垂直荷重30gの荷重をかけ、ステージを速度300mm/秒で5cm動かし、摩擦試験用試料とウレタン製ゴムとの間にかかる力を測定し、動摩擦係数を求めた。同様に、電子写真感光体をキヤノン(株)製レーザービームプリンター(商品名:LBP−2510)において連続5,000枚通紙した後の電子写真感光体の表面の動摩擦係数を測定した。通紙前の動摩擦係数を1としたときの、連続5,000枚通紙後の電子写真感光体の表面の比動摩擦係数を以下のように算出し、評価を行った。評価は、以下の基準で行い、得られた結果を表5に示す。本発明においては、下記の評価基準でA及びBは本発明の効果が得られているレベルであり、その中でもAは優れているレベルと判断した。一方、Cは本発明の効果が得られていないレベルと判断した。
【0129】
比動摩擦係数=(連続5,000枚通紙した後の電子写真感光体の表面の動摩擦係数)/(連続5,000枚通紙する前の電子写真感光体の表面の動摩擦係数)
A:比動摩擦係数が1.2未満
B:比動摩擦係数が1.2以上1.4未満
C:比動摩擦係数が1.4以上
【0130】
【表5】

【符号の説明】
【0131】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光(画像露光光)
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
11 前露光光
P 転写材
21 支持体
22 導電層
23 中間層
24 電荷発生層
25 電荷輸送層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、および該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体の表面層が、放射状に伸びた6つの延在部を有する星型六角形形状の酸化チタン粒子を含有し、
該酸化チタン粒子の数平均粒径が、0.1μm以上1.0μm以下である
ことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記酸化チタン粒子の含有量が、表面層の全体積に対して0.1体積%以上10体積%以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記表面層が、ポリカーボネート樹脂、およびポリアリレート樹脂の少なくとも一方を含有する請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項6】
支持体、該支持体上に形成された中間層、および該中間層上に形成された電荷輸送物質を有する電荷輸送層を有する積層膜において、
該電荷輸送層が、放射状に伸びた6つの延在部を有する星型六角形形状の酸化チタン粒子を含有し、
該酸化チタンの数平均粒径が、0.1μm以上1.0μm以下である
ことを特徴とする積層膜。


【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11885(P2013−11885A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127133(P2012−127133)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】