説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】 電位変動が抑制され、静電潜像のコントラストの低下が抑制された電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供する。
【解決手段】 電子写真感光体の下引き層が結着樹脂および金属酸化物粒子を含有し、電荷発生層が特定の化合物(ベンゾフェノン化合物、アントラキノン化合物)を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニン顔料は、長波長領域から短波長領域までの光に高い感度を有する電荷発生物質として知られている。
【0003】
ところが、電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を用いた電子写真感光体は、優れた感度特性を有している反面、生成したフォトキャリアが残存しやすく、電位変動を起こしやすいという課題があった。
【0004】
電位変動を改善する技術として、特許文献1には、支持体と感光層との間の下引き層に金属酸化物粒子を含有させる技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、電荷発生物質の酸化の抑制や、残留電位の上昇の抑制のため、ベンゾフェノン化合物を電子写真感光体に用いる技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、感度の向上や、感度および帯電電位の安定性の向上のため、アントラキノン化合物を電子写真感光体に用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−191868号公報
【特許文献2】特開平6−273953号公報
【特許文献3】特開平2−97956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、電子写真感光体に関して、様々な改善が試みられている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、電位変動を改善するために下引き層に金属酸化物粒子を含有させると、暗減衰が増加し、静電潜像のコントラストが低下する傾向がある。特に、帯電電位を高めたり、電荷輸送層を薄膜化したりすると、この傾向は顕著である。
【0010】
したがって、近年のさらなる高画質化の要求に対しては、暗減衰の増加による静電潜像のコントラストの低下の改善が望まれている。
【0011】
本発明の目的は、電位変動が抑制され、静電潜像のコントラストの低下が抑制された電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層上に形成された電荷発生層、および、該電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有する電子写真感光体において、
該下引き層が、結着樹脂、および、金属酸化物粒子を含有し、
該電荷発生層が、結着樹脂、フタロシアニン顔料、および、下記式(1)もしくは(2)で示される化合物を含有する
ことを特徴とする電子写真感光体である。
【0013】
【化1】

【0014】
(式(1)および(2)中、R〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアミノ基、または、置換もしくは無置換の環状アミノ基を示す。ただし、R〜R10の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアリール基で置換されたアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基、または、置換もしくは無置換の環状アミノ基を示し、R11〜R18の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアリール基で置換されたアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基、または、置換もしくは無置換の環状アミノ基を示す。Xは、カルボニル基、または、ジカルボニル基を示す。)
また、本発明は、上記電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電手段、該電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成するための現像手段、および、トナー像が転写材に転写された後に該電子写真感光体の表面のトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0015】
また、本発明は、上記電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電手段、帯電された該電子写真感光体の表面に像露光光を照射して静電潜像を形成するための像露光手段、該電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成するための現像手段、および、該電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写するための転写手段を有することを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電位変動が抑制され、静電潜像のコントラストの低下が抑制された電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層上に形成された電荷発生層、および、該電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有する電子写真感光体である。
【0019】
図2は、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。図2中、101は支持体であり、102は下引き層であり、103は電荷発生層であり、104は電荷輸送層である。
【0020】
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)であることが好ましく、例えば、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、亜鉛などの金属、合金製の支持体が挙げられる。
【0021】
支持体の表面には、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制などを目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などの施してもよい。
【0022】
支持体および下引き層との間には、レーザー光などの像露光光の散乱による干渉縞の抑制や、支持体の傷の隠蔽などを目的として、導電層を設けてもよい。
【0023】
導電層は、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物粒子などの導電性粒子を結着樹脂および溶剤とともに分散処理して得られる導電層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
【0024】
導電層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
導電層用塗布液の溶剤としては、例えば、エーテル、アルコール、ケトン、芳香族炭化水素などが挙げられる。
導電層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0025】
支持体(導電層)上には、下引き層(中間層、バリア層とも呼ばれる。)が設けられる。
本発明の電子写真感光体の下引き層には、結着樹脂、および、金属酸化物粒子が用いられる。
下引き層に用いられる金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子などが挙げられる。また、本発明においては、金属酸化物の種類が異なるものや、表面処理の種類や有無が異なるものや、比表面積の異なるものなどの2種類以上を混合して用いることもできる。
【0026】
金属酸化物粒子の中でも、酸化亜鉛粒子は、その酸素欠損の程度を制御することにより、粒子の抵抗を制御しやすいため好ましい。金属酸化物粒子は、その酸素欠損の程度が大きくなるほど、伝導帯のキャリア濃度が大きくなり、粒子の抵抗が低くなる傾向がある。
【0027】
金属酸化物粒子には、支持体から電荷発生層への電荷の注入を抑制するため、シランカップリング剤で表面処理を施すことが好ましい。支持体から電荷発生層に電荷が注入すると、黒点状の画像欠陥が発生する場合がある。
【0028】
シランカップリング剤としては、下記式(7)で示される化合物(アミノシラン化合物)が好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
式(7)中、R33およびR34は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基を示す。R35は、炭素数が1〜3のアルキル基、または、炭素数が1〜3のアルコキシ基を示す。R37は、水素原子、フェニル基、または、炭素数1〜3のアルキル基を示す。R36は、下記式(R36−1)、(R36−2)または(R36−3)で示される2価の基を示す。
【0031】
【化3】

【0032】
式(R36−1)、(R36−2)および(R36−3)中、nは、1〜3の整数である。R38およびR39は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基を示す。
以下に、上記式(7)で示される化合物の具体例(例示化合物)を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
上記式(7)中のR35が炭素数1〜3のアルコキシ基である化合物の例は、例示化合物(X−1)〜(X−6)であり、R35が炭素数1〜3のアルキル基である化合物の例は、例示化合物(X−7)〜(X−12)である。
【0035】
上記式(7)で示される化合物の中でも、繰り返し使用時の明部電位の変動を抑制する観点から、上記式(7)中のR35が炭素数1〜3のアルキル基である化合物、いわゆる2官能型アミノシラン化合物が好ましい。これは、2官能型アミノシラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子では、金属酸化物粒子の表面に2官能型アミノシラン化合物が直鎖上に結合しやすく、これを含有する下引き層と支持体および電荷発生層との密着性が向上し、電荷のやりとりが円滑になるためであると考えられる。
【0036】
金属酸化物を表面処理する方法としては、例えば、乾式法、湿式法などが挙げられる。乾式法は、金属酸化物粒子をヘンシェルミキサーなどの高速攪拌可能なミキサーの中で攪拌しながら、シランカップリング剤の有機溶剤溶液または水溶液を添加し、金属酸化物粒子を分散させた後、乾燥を行う方法である。また、湿式法は、金属酸化物粒子とシランカップリング剤を溶剤中で攪拌する、または、サンドミルなどの分散機を用いて分散処理する方法である。分散処理後は、濾過、減圧留去などにより、溶剤の除去を行う。溶剤の除去後は、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。
【0037】
金属酸化物粒子の比表面積は、14m/g以上25m/g以下であることが好ましい。比表面積が25m/g以下であれば、下引き層における粒子の分散状態が均一になりやすく、良好な画像が得られやすくなる。また、比表面積が14m/g以上であれば、下引き層の膜性が悪化しにくく、繰り返し使用における電位変動がより抑制される。本発明において、比表面積の測定は、(株)島津製作所製の測定装置(商品名:Tristar3000)を用いて行った。具体的には、測定用のガラスセル中に測定対象の金属酸化物粒子200mgを入れ、このガラスセルに150℃で30分間真空乾燥処理を施した後、このガラスセルを上記測定装置に装着して、金属酸化物粒子の比表面積の測定を行った。
【0038】
金属酸化物粒子の表面処理に用いられるシランカップリング剤の量は、金属酸化物粒子の全質量に対する割合(質量比)をA[%]とし、金属酸化物粒子の比表面積をB[m/g]としたとき、A/Bが0.010以上0.050以下となる量であることが好ましい。A/Bが0.010以上0.050以下であれば、下引き層と支持体および電荷発生層の密着性が向上し、繰り返し使用時の明部電位の変動がより抑制される。
【0039】
下引き層に用いられる結着樹脂としては、イソシアネートとポリオールとの硬化物であるウレタン樹脂が好ましい。
イソシアネートとしては、例えば、2,4トリレンジイソシアネート、2,6トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−トリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレン−イソシアヌレート体、ヘキサメチレン−ビウレット体などが挙げられる。
また、イソシアネートは、オキシムなどでブロック安定化したもの(ブロック化イソシアネート)が好ましい。
【0040】
オキシムとしては、例えば、アセトアルドオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどが挙げられる。
ポリオールとしては、例えば、ポリビニルアセタール、ポリフェノールなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアセタールが好ましい。
【0041】
下引き層における金属酸化物粒子と結着樹脂の比率は、金属酸化物粒子:結着樹脂が2:1〜4:1(質量比)であることが好ましい。質量比が2:1〜4:1であれば、繰り返し使用時の明部電位の変動がより抑制され、また、下引き層のクラック(ひび割れ)の発生も抑制される。
【0042】
下引き層は、結着樹脂(またはその原料)および金属酸化物粒子を含有する下引き層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
【0043】
例えば、下引き層に金属酸化物粒子として上記式(7)で示される化合物で表面処理された金属酸化物粒子を含有させ、結着樹脂としてブロック化イソシアネートとポリビニルアセタールとの硬化物であるウレタン樹脂を含有させる場合、下引き層用塗布液は、上記式(7)で示される化合物で表面処理された金属酸化物粒子、ブロック化イソシアネートおよびポリビニルアセタールを溶剤とともに分散処理することによって調製することができる。あるいは、上記式(7)で示される化合物、金属酸化物粒子、ブロック化イソシアネートおよびポリビニルアセタールを溶剤とともに分散処理することによって調製することもできる。
【0044】
下引き層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセロソルブ、メトキシプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジオキサンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0045】
分散処理方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、ペイントシェイカー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機などの分散装置を用いた方法が挙げられる。
【0046】
また、下引き層には、下引き層の表面粗さの調整や、下引き層のクラック(ひび割れ)の抑制などを目的として、有機樹脂粒子や、レベリング剤を含有させてもよい。
【0047】
有機樹脂粒子としては、例えば、シリコーン粒子などの疎水性有機樹脂粒子や、架橋性ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)粒子などの親水性有機樹脂粒子などが挙げられる。これらの中でも、繰り返し使用時の明部電位の変動を抑制する観点から、親水性有機樹脂粒子が好ましく、特にはPMMA粒子が好ましい。この理由として、疎水性有機樹脂粒子と比較して、親水性有機樹脂粒子は水分を吸着しやすく、金属酸化物粒子の水分の吸着を抑制する働きがあるからであると推測している。
【0048】
下引き層の表面粗さは、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で規定されている十点平均粗さRzで0.6μm以上2.0μm以下であることが好ましい。また、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で規定されている凹凸の平均間隔RSmで0.010mm以上0.024mm以下であることが好ましい。RSmが0.010mm以上0.024mm以下であれば、下引き層と電荷発生層との密着性が向上し、繰り返し使用時の明部電位の変動がより抑制される。
【0049】
下引き層の膜厚は、繰り返し使用時の明部電位の変動を抑制する観点から、支持体と下引き層との間に導電層を設ける場合は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上8μm以下であることがより好ましい。支持体と下引き層との間に導電層を設けない場合は、10μm以上40μm以下であることが好ましく、15μm以上25μm以下であることが好ましい。
【0050】
下引き層上には、電荷発生層が設けられる。
【0051】
本発明の電子写真感光体の電荷発生層には、結着樹脂、フタロシアニン顔料、および、下記式(1)もしくは(2)で示される化合物が用いられる。
【0052】
【化4】

【0053】
上記式(1)および(2)中、R〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアミノ基、または、置換もしくは無置換の環状アミノ基を示す。ただし、R〜R10の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアリール基で置換されたアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基、または、置換もしくは無置換の環状アミノ基を示し、R11〜R18の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアリール基で置換されたアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基、または、置換もしくは無置換の環状アミノ基を示す。Xは、カルボニル基、または、ジカルボニル基を示す。
【0054】
上記式(1)中のR〜R10の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基であることが好ましい。また、当該置換もしくは無置換のアルキル基は、アルコキシ基で置換されたアルキル基、アリール基で置換されたアルキル基、または、無置換のアルキル基であることが好ましい。また、上記式(1)中のR〜R10の少なくとも1つは、ジアルキルアミノ基であることがより好ましく、その中でも、ジメチルアミノ基、または、ジエチルアミノ基であることがより好ましい。
【0055】
また、上記式(1)中のR〜R10の少なくとも1つは、置換もしくは無置換の環状アミノ基であることも好ましく、その中でも、モルホリノ基、または、ピペリジノ基であることがより好ましい。
【0056】
上記式(2)中のR11〜R18の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアルキルで置換されたアミノ基であることが好ましい。また、当該置換もしくは無置換のアルキルは、アルコキシ基で置換されたアルキル基、アリール基で置換されたアルキル基、または、無置換のアルキル基であることが好ましい。また、上記式(2)中のR11〜R18の少なくとも1つは、ジアルキルアミノ基であることがより好ましく、その中でも、ジメチルアミノ基、または、ジエチルアミノ基であることがより好ましい。
【0057】
また、上記式(2)中のR11〜R18の少なくとも1つは、置換もしくは無置換の環状アミノ基であることも好ましく、その中でも、モルホリノ基、または、ピペリジノ基であることがより好ましい。
【0058】
上記式(1)もしくは(2)で示される化合物の中でも、さらに好ましい化合物は、下記式(3)〜(6)のいずれかで示される化合物である。
【0059】
【化5】

【0060】
【化6】

【0061】
式(3)〜(6)中、R21、R23、R25、R27、R29およびR31は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。R22、R24、R26、R28、R30およびR32は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。あるいは、R21とR22は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよく、R23とR24は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよく、R25とR26は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよく、R27とR28は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよく、R29とR30は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよく、R31とR32は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよい。
【0062】
また、上記式(3)〜(6)中のR21〜R26およびR27〜R32は、アルコキシ基で置換されたアルキル基、アリール基で置換されたアルキル基、または、無置換のアルキル基であることが好ましく、その中でも、メチル基、または、エチル基であることがより好ましい。
【0063】
また、上記式(3)〜(6)のR21とR22が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基、R23とR24が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基、R25とR26が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基、R27とR28が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基、R29とR30が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基、R31とR32が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基としては、モルホリノ基、または、ピペリジノ基が好ましい。
【0064】
また、上記式(1)〜(6)における各基が有してもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基や、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジアルキルアミノ基や、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基や、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基などのアリール基や、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子や、ヒドロキシ基や、ニトロ基や、シアノ基や、ハロメチル基などが挙げられる。これらの中でも、アリール基、アルコキシ基が好ましい置換基である。
以下に、上記式(1)もしくは(2)で示される化合物の具体例(例示化合物)を示す。
【0065】
【化7】

【0066】
【化8】

【0067】
【化9】

【0068】
【化10】

【0069】
上記例示化合物中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示し、n−Prはn−プロピル基を示す。
【0070】
上記式(1)もしくは(2)で示される化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記式(1)もしくは(2)で示される化合物は、非晶質であっても結晶質であってもよい。
【0072】
上記式(1)もしくは(2)で示される化合物は、市販品として入手することもできるが、以下のようにして合成することもできる。
【0073】
原料としてアミノベンゾフェノンまたはアミノアントラキノンを用い、アミノベンゾフェノンまたはアミノアントラキノンとハロゲン化物との置換反応によって、アミノベンゾフェノンまたはアミノアントラキノンのアミノ基に置換基を導入することができる。その中でも、金属触媒を用い、アミノベンゾフェノンまたはアミノアントラキノンと芳香族ハロゲン化物とを反応させる方法が、アミノベンゾフェノンまたはアミノアントラキノンのアミノ基にアリール基を置換基として導入する方法として有効な方法である。また、還元的アミノ化を用いた反応が、アミノベンゾフェノンまたはアミノアントラキノンのアミノ基にアルキル基を置換基として導入する方法として有効な方法である。
【0074】
以下に、例示化合物(24)の具体的な合成例を示す。合成例において、「部」は「質量部」を意味する。
【0075】
N,N−ジメチルアセトアミド50部を入れた3径フラスコに、4,4’−ジアミノベンゾフェノン5.0部、ヨードトルエン25.7部、銅粉9.0部および炭酸カリウム9.8部を添加して、20時間リフラックスをした後、熱時濾過で固形成分を除去した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラム(溶媒はトルエン)にて精製し、例示化合物(24)を8.1部得た。
【0076】
以下に、測定により得られたIR(赤外線)吸収スペクトルおよびH−NMR(核磁気共鳴)スペクトルの特徴的なピークを示す。なお、IR吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(商品名:FT/IR−420、日本分光(株)製)を用いて測定した。また、H−NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(商品名:EX−400、日本電子(株)製)を用いて測定した。
【0077】
IR(cm−1,KBr):1646,1594,1508,1318,1277,1174
H−NMR(ppm,CDCL3,40℃):δ=7.63(d,4H),7.11(d,8H),7.04(d,8H),6.93(d,4H),2.33(s、12H)
電荷発生層に用いられるフタロシアニン顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニンが挙げられる。これらは、軸配位子や置換基を有してもよい。
【0078】
フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン、ガリウムフタロシアニンは、高い感度を有する反面、生成したフォトキャリアが残存しやすく、電位変動を起こしやすいため、本発明が有効に作用し、好ましい。
【0079】
ガリウムフタロシアニンの中でも、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンが好ましい。
【0080】
ヒドロキシガリウムフタロシアニンの中でも、CuKα線のX線回折におけるブラッグ角2θの7.4°±0.3°および28.2°±0.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が好ましく、その中でも、ブラッグ角2θ±0.2°の7.3°、24.9°および28.1°に強いピークを有し、かつ28.1°に最も強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、ブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が好ましい。
【0081】
クロロガリウムフタロシアニンの中でも、ブラッグ角2θ±0.2°の7.4°、16.6°、25.5°および28.3°に強いピークを有する結晶形のクロロガリウムフタロシアニン結晶が好ましい。
【0082】
オキシチタニウムフタロシアニンの中でも、ブラッグ角2θの27.2°±0.2°に強いピークを有する結晶形のオキシチタニウムフタロシアニン結晶が好ましい。
【0083】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、ポリビニルベンザールなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザールが好ましい。 電荷発生層における上記式(1)もしくは(2)で示される化合物の含有量は、電荷発生層の全質量に対して0.05質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、電荷発生層における上記式(1)もしくは(2)で示される化合物の含有量は、電荷発生層に含有されるフタロシアニン顔料に対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0084】
電荷発生層におけるフタロシアニン顔料の含有量は、電荷発生層の全質量に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、50質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0085】
電荷発生層は、上記式(1)もしくは(2)で示される化合物およびフタロシアニン顔料を結着樹脂および溶剤とともに分散処理して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0086】
電荷発生層の膜厚は、0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.3μm以下であることがより好ましい。
【0087】
電荷発生層上には、電荷輸送層が設けられる。
【0088】
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0089】
電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
【0090】
電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリルメタン化合物などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物が好ましい。
【0091】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体などの樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート、ポリアリレートが好ましい。
【0092】
電荷輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0093】
電荷輸送層上には、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)を保護することを目的として、保護層を設けてもよい。
【0094】
保護層は、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリカーボネート(ポリカーボネートZや変性ポリカーボネートなど)、ナイロン、ポリイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマーなどの樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる保護層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。塗膜を硬化させる場合には、加熱、電子線、紫外線によって硬化させることができる。
【0095】
また、保護層には、導電性粒子、紫外線吸収剤、潤滑性粒子を含有させてもよい。導電性粒子としては、例えば、酸化スズ粒子などの金属酸化物粒子が挙げられる。潤滑性粒子としては、例えば、フッ素原子含有樹脂粒子などが挙げられる。
保護層の膜厚は、0.05μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0096】
各層用の塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法(ディッピング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法などが挙げられる。
【0097】
図1は、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【0098】
円筒状(ドラム状)の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。
【0099】
電子写真感光体1の表面は、回転過程において、帯電手段3により、正または負の所定電位に帯電される。次いで、電子写真感光体1の表面には、像露光手段(不図示)から像露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成されていく。像露光光4は、例えば、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段から出力される、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された光である。
【0100】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像(正規現像または反転現像)され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写されていく。このとき、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。また、転写材7が紙である場合、転写材7は給紙部(不図示)から取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して給送される。
【0101】
電子写真感光体1からトナー像が転写された転写材7は、電子写真感光体1の表面から分離されて、像定着手段8へ搬送されて、トナー像の定着処理を受けることにより、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置の外へプリントアウトされる。
【0102】
転写材7にトナー像を転写した後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9により、トナー(転写残トナー)などの付着物の除去を受けて清浄される。近年、クリーナレスシステムも開発され、転写残トナーを現像器などで除去、回収することもできる。
【0103】
さらに、電子写真感光体1の表面は、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光手段は必ずしも必要ではない。
【0104】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などから選択される構成要素のうち、複数の構成要素を容器に納めて一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、このプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成することができる。例えば、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9を電子写真感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段12を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0105】
像露光光4は、電子写真装置が複写機である場合には、原稿からの反射光や透過光であってもよい。または、センサーで原稿を読み取り、信号化し、この信号にしたがって行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動もしくは液晶シャッターアレイの駆動などにより放射される光であってもよい。
【0106】
本発明の電子写真感光体1は、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶プリンターおよびレーザー製版などの電子写真応用分野にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0107】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例および比較例において、「部」は「質量部」を意味する。また、実施例および比較例の膜厚は、渦電流式膜厚計(Fischerscope、フィッシャーインスツルメント社製)または単位面積当たりの質量から比重換算で求めた。
【0108】
〔実施例1〕
支持体として、直径30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを用いた。
次に、酸化亜鉛粒子(比表面積:20m/g、粉体抵抗:4.7×10Ω・cm)100部をトルエン500部と撹拌混合し、これに例示化合物(X−7)(商品名:KBM602、信越化学工業(株)製)0.50部を添加し、6時間攪拌した。その後、トルエンを減圧留去し、130℃で6時間加熱乾燥させることによって、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。この表面処理された酸化亜鉛粒子における例示化合物(X−7)の含有量は0.50質量%であった。したがって、酸化亜鉛粒子に対する例示化合物(X−7)の表面処理量(A/B)は、A/B=0.50/20=0.025である。
【0109】
次に、ポリオールとしてブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学工業(株)製)15部およびブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン(株)製)15部をメチルエチルケトン73.5部/1−ブタノール73.5部の混合溶剤に溶解させた。この溶液に、上記表面処理された酸化亜鉛粒子81部およびアリザリン(東京化成工業(株)製)0.8部を加え、これを、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置を用い、23±3℃雰囲気下で3時間分散処理した。分散処理後、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レダウコーニング(株)製)0.01部、架橋性ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)粒子(平均一次粒径2.5μm、商品名:TECHPOLYMERSSX−102、積水化成品工業(株)製)を5.6部加えて攪拌し、下引き層用塗布液を調製した。下引き層用塗布液におけるPMMA粒子の含有量は、下引き層用塗布液に含有される固形分に対して5質量%である。
【0110】
この下引き層用塗布液を上記支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で乾燥させることによって、膜厚が20μmの下引き層を形成した。
【0111】
形成された下引き層の表面粗さを下記条件で測定したところ、Rz=1.1μm、RSm=0.016mmであった。RzおよびRSmの測定は、(株)小坂研究所製の表面粗さ測定器(商品名:SE−3400)を用いて行った。RzおよびRSmの測定は、JISB0601:2001(ISO4287:1997)の規定に従い、形成された下引き層の表面を、支持体の中央部を長手方向(軸方向)に掃引することで行った。
【0112】
次に、CuKα線のX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)10部、例示化合物(1)(製品コード:159400050、アクロスオルガニクス(株)製)0.2部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部、および、シクロヘキサノン250部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、1時間分散処理し、これに酢酸エチル250部を加えて希釈することによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0113】
この電荷発生層用塗布液を上記下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.18μmの電荷発生層を形成した。
【0114】
次に、下記構造式(B)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)50部、下記構造式(C)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)50部、
【0115】
【化11】

【0116】
および、ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学(株)製)100部を、クロロベンゼン650部/ジメトキシメタン150部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0117】
この電荷輸送層用塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間110℃で乾燥させることによって、膜厚が21μmの電荷輸送層を形成した。
【0118】
次に、下記構造式(D)で示される化合物45部
【0119】
【化12】

【0120】
をn−プロパノール55部に溶解させることによって、保護層用塗布液(第二電荷輸送層用塗布液)を調製した。
【0121】
この保護層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を5分間50℃で乾燥させた。乾燥後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、吸収線量8000Gyの条件で1.6秒間、シリンダーを回転させながら電子線を塗膜に照射した。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜が130℃になる条件で3分間加熱処理を行った。なお、電子線の照射から3分間の加熱処理までの酸素濃度は20ppmであった。次に、大気中において、塗膜が100℃になる条件で30分加熱処理を行い、膜厚が5μmである保護層を形成した。
【0122】
このようにして、支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層(第二電荷輸送層)を有する電子写真感光体を製造した。
【0123】
〔電子写真感光体の評価〕
評価装置としては、キヤノン(株)製の電子写真複写機(商品名:GP405、プロセススピードは300mm/secになるように改造、帯電手段は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧をローラー型の接触帯電部材(帯電ローラー)に印加する方式)を用いた。この評価装置のプロセスカートリッジに、上述の電子写真感光体を装着して、以下の評価を行った。
【0124】
〔評価1:低温低湿環境における電位安定性〕
15℃/10%RHの低温低湿環境下に上記評価装置を設置した。帯電条件としては、帯電ローラーに印加する交流成分をピーク間電圧1500V、周波数1500Hzとし、直流成分を−850Vとした。また、像露光条件としては、レーザー露光光を照射した場合の繰り返し使用前の初期明部電位(Vla)が、−200Vになるように像露光条件を調整した。また、前露光条件としては、像露光光の3倍に相当する光量の前露光光が電子写真感光体の表面に照射されるよう調整した。
【0125】
電子写真感光体の表面電位は、評価装置から現像器を抜き取り、そこに電位プローブ(商品名:model6000B−8、トレック社製)を固定し、表面電位計(model344:トレック社製)を使用して測定した。電位測定装置は、現像器の現像位置に電位測定プローブを配置することで構成されており、電子写真感光体に対する電位測定プローブの位置は、電子写真感光体の長手方向(軸方向)の中央、電子写真感光体の表面からのギャップを2mmとした。
【0126】
上記の評価条件のもとで、前露光−帯電−像露光のサイクルを1000回転連続で行い、100回転後の明部表面電位(Vlb)を測定し、繰り返し使用時の明部電位の変動量(ΔVl=|Vlb|−|Vla|)を算出した。結果を表2に示す。
【0127】
〔評価2:高温常湿環境における暗減衰〕
38℃/30%RHの高温常湿環境下に上記評価装置を設置した。それ以外の評価条件は評価1と同様とした。
【0128】
上記の評価条件のもとで、前露光−帯電のサイクルを2回転連続で行い、電子写真感光体を停止させた。停止直前の暗部表面電位(Vda)および停止してから1秒後の暗部表面電位(Vdb)を測定し、暗部電位の減衰量(Vdd=|Vda|−|Vdb|)を算出した。結果を表2に示す。
【0129】
〔評価3:常温高湿環境における電位安定性〕
30℃/85%RHの常温高湿環境下に上記評価装置を設置した。それ以外の評価条件は評価1と同様とした。
【0130】
製造した電子写真感光体を30℃/85%RHの常温高湿環境下で72時間放置した。電子写真感光体を装着したプロセスカートリッジを上記評価装置に取り付け、50000枚の通紙による電子写真感光体の繰り返し使用を行った。50000枚通紙後、5分間放置し、現像器を電位測定装置に付け替え、繰り返し使用(50000枚通紙)後における明部電位(Vlb)を測定した。そして、繰り返し使用時の明部電位の変動量(ΔVl=|Vlb|−|Vla|)を算出した。Vlaは繰り返し使用前の明部電位である。結果を表2に示す。
【0131】
〔比較例1〕
支持体として、実施例1と同様、直径30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを用いた。
【0132】
次に、10質量%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子50部、レゾール型フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部、および、シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、2時間分散処理することによって、導電層用塗布液を調製した。
【0133】
この導電層用塗布液を、上記支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間140℃で乾燥および硬化させることによって、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0134】
次に、6−66−610−12四元系ポリアミド共重合体5部をメタノール70部/ブタノール25部の混合溶剤に溶解させることによって、下引き層用塗布液を調製した。
【0135】
この下引き層用塗布液を上記導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって、膜厚が1μmの下引き層を形成した。
【0136】
以降、実施例1と同様にして電荷発生層、電荷輸送層および保護層(第二電荷輸送層)を形成し、電子写真感光体を製造した。
製造した電子写真感光体を、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0137】
〔比較例2〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0138】
〔実施例2〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)の使用量を0.2部から0.1部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0139】
〔実施例3〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)の使用量を0.2部から1.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0140】
〔実施例4〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(2)(製品コード:B1275、東京化成工業(株)製)0.3部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0141】
〔実施例5〕
実施例4において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(2)の使用量を0.2部から0.1部に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0142】
〔実施例6〕
実施例4において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(2)の使用量を0.2部から1.0部に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0143】
〔実施例7〕
実施例4において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(2)の使用量を0.2部から0.03部に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0144】
〔実施例8〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(3)(製品コード:B1212、東京化成工業(株)製)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0145】
〔実施例9〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(4)(製品コード:B1433、東京化成工業(株)製)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0146】
〔実施例10〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(5)(製品コード:D2561、東京化成工業(株)製)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0147】
〔実施例11〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を上記合成例で得られた例示化合物(24)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0148】
〔実施例12〕
実施例1において、下引き用塗布液を調製する際に使用した酸化亜鉛粒子を酸化チタン粒子(比表面積21m/g)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0149】
〔実施例13〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用したCuKα線のX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶10部を、ブラッグ角2θ±0.2°の9.0°、14.2°、23.9°および27.1°に強いピークを有する結晶形のオキシチタニウムフタロシアニン結晶10部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0150】
〔実施例14〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(25)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0151】
〔実施例15〕
実施例14において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(25)の使用量を0.2部から0.1部に変更した以外は、実施例14と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0152】
〔実施例16〕
実施例14において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(25)の使用量を0.2部から1.0部に変更した以外は、実施例14と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0153】
〔実施例17〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(26)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0154】
〔実施例18〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(27)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0155】
〔実施例19〕
実施例18において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(27)の使用量を0.2部から1.0部に変更した以外は、実施例18と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0156】
〔実施例20〕
実施例18において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(27)の使用量を0.2部から0.03部に変更した以外は、実施例18と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0157】
〔実施例21〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(34)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0158】
〔実施例22〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(37)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0159】
〔実施例23〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(42)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0160】
〔実施例24〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(45)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0161】
〔実施例25〕
実施例4において、酸化亜鉛粒子の表面処理を行う際に使用した例示化合物(X−7)0.50部を例示化合物(X−1)(商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)0.50部に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0162】
〔実施例26〕
実施例4において、酸化亜鉛粒子の表面処理を行う際に使用した例示化合物(X−7)の使用量を0.50部から0.20部に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0163】
〔実施例27〕
実施例4において、酸化亜鉛粒子の表面処理を行う際に使用した例示化合物(X−7)の使用量を0.50部から1.00部に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0164】
〔実施例28〕
実施例4において、酸化亜鉛粒子の表面処理を行う際に使用した例示化合物(X−7)の使用量を0.50部から0.10部に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0165】
〔実施例29〕
実施例4において、酸化亜鉛粒子の表面処理を行う際に使用した例示化合物(X−7)の使用量を0.50部から2.00部に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0166】
〔実施例30〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を例示化合物(71)2.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0167】
〔比較例3〕
実施例12において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を使用しなかった以外は、実施例12と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0168】
〔比較例4〕
実施例13において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を下記式(E)で示されるビスアゾ顔料3部
【0169】
【化13】

【0170】
に変更した以外は、実施例12と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0171】
〔比較例5〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を下記式(F)で示される化合物(化合物名:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、製品コード:126217、シグマアルドリッチ社製)0.2部
【0172】
【化14】

【0173】
に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0174】
〔比較例6〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を下記式(G)で示される化合物(化合物名:4,4’−ジアミノベンゾフェノン、製品コード:378259、シグマアルドリッチ社製)0.2部
【0175】
【化15】

【0176】
に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0177】
〔比較例7〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を下記式(H)で示される化合物(化合物名:3,3’−ジニトロベンゾフェノン、製品コード:D1688、東京化成工業(株)製)0.2部
【0178】
【化16】

【0179】
に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0180】
(H)
〔比較例8〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を下記式(I)で示される化合物(化合物名:ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メタン、製品コード:B0483、東京化成工業(株)製)0.2部
【0181】
【化17】

【0182】
に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0183】
〔比較例9〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を下記式(J)で示される化合物(化合物名:ベンゾフェノン、製品コード:B0083、東京化成工業(株)製)0.2部
【0184】
【化18】

【0185】
に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0186】
〔比較例10〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を下記式(K)で示される化合物(化合物名:1,4−ビス(ジメチルアミノ)5,8−ジヒドロキシアントラセン−9,10ジオン)0.2部
【0187】
【化19】

【0188】
に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0189】
〔比較例11〕
実施例1において、電荷発生層用塗布液を調製する際に使用した例示化合物(1)0.2部を下記式(L)で示される化合物(化合物名:プルプリン)0.2部
【0190】
【化20】

【0191】
に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0192】
以上の電子写真感光体を評価した結果を表2に記す。表2中に記載した評価ランクの基準を以下に示す。いずれも、ランクの数字が大きいほど良好である。
【0193】
〔評価1:低温低湿環境における電位安定性〕
0V≦ΔVL<10V:ランク5
10V≦ΔVL<30V:ランク4
30V≦ΔVL<50V:ランク3
50V≦ΔVL<100V:ランク2
100V≦ΔVL:ランク1
【0194】
〔評価2:高温常湿環境における暗減衰〕
0V≦Vdd<60V:ランク6
60V≦Vdd<80V:ランク5
80V≦Vdd<100V:ランク4
100V≦Vdd<120V:ランク3
120V≦Vdd<150V:ランク2
150V≦Vdd:ランク1
【0195】
〔評価3:常温高湿環境における電位安定性〕
0V≦ΔVL<10V:ランク5
10V≦ΔVL<30V:ランク4
30V≦ΔVL<50V:ランク3
50V≦ΔVL<100V:ランク2
100V≦ΔVL:ランク1
【0196】
【表2】

【0197】
表2中、※1の「A/B」は、金属酸化物粒子の表面処理に用いられるシランカップリング剤(例示化合物)の量を意味し、金属酸化物粒子の全質量に対する割合をA[%]とし、金属酸化物粒子の比表面積をB[m/g]としたときのA/Bの値である。※2のフタロシアニン顔料の「HOGaPC」は、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを意味し、「TiOPC」は、オキシチタニウムフタロシアニンを意味する。※3の「量」は、フタロシアニン顔料の使用量に対する量[質量%]を意味する。
【符号の説明】
【0198】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 像露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
101 支持体
102 下引き層
103 電荷発生層
104 電荷輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層上に形成された電荷発生層、および、該電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有する電子写真感光体において、
該下引き層が、結着樹脂、および、金属酸化物粒子を含有し、
該電荷発生層が、結着樹脂、フタロシアニン顔料、および、下記式(1)もしくは(2)で示される化合物を含有する
ことを特徴とする電子写真感光体。
【化1】


(式(1)および(2)中、R〜R10およびR11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアミノ基、または、置換もしくは無置換の環状アミノ基を示す。ただし、R〜R10の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアリール基で置換されたアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基、または、置換もしくは無置換の環状アミノ基を示し、R11〜R18の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアリール基で置換されたアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基、または、置換もしくは無置換の環状アミノ基を示す。Xは、カルボニル基、または、ジカルボニル基を示す。)
【請求項2】
前記R〜R18の少なくとも1つが、置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基における置換もしくは無置換のアルキル基が、アルコキシ基で置換されたアルキル基、アリール基で置換されたアルキル基、または、無置換のアルキル基である請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記置換もしくは無置換のアルキル基で置換されたアミノ基が、ジアルキルアミノ基である請求項2または3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記ジアルキルアミノ基が、ジメチルアミノ基、または、ジエチルアミノ基である請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記R〜R18の少なくとも1つが、置換もしくは無置換の環状アミノ基である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記置換もしくは無置換の環状アミノ基が、モルホリノ基、または、ピペリジノ基である請求項6に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記電荷発生層が、前記式(1)で示される化合物を含有し、前記式(1)で示される化合物が、下記式(3)もしくは(4)で示される化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。
【化2】


(式(3)および(4)中、R21、R23およびR25は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。R22、R24およびR26は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。あるいは、R21とR22は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよく、R23とR24は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよく、R25とR26は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよい。)
【請求項9】
前記R21〜R26が、アルコキシ基で置換されたアルキル基、アリール基で置換されたアルキル基、または、無置換のアルキル基である請求項8に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記R21〜R26が、メチル基、または、エチル基である請求項8または9に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記R21とR22が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基、R23とR24が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基、および、R25とR26が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基が、モルホリノ基、または、ピペリジノ基である請求項8に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
前記電荷発生層が、前記式(2)で示される化合物を含有し、前記式(2)で示される化合物が、下記式(5)もしくは(6)で示される化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。
【化3】


(式(5)および(6)中、R27、R29およびR31は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。R28、R30およびR32は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。あるいは、R27とR28は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよく、R29とR30は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよく、R31とR32は互いに結合して置換もしくは無置換の環状アミノ基を形成してもよい。)
【請求項13】
前記R27〜R32が、アルコキシ基で置換されたアルキル基、アリール基で置換されたアルキル基、または、無置換のアルキル基である請求項12に記載の電子写真感光体。
【請求項14】
前記R27〜R32が、メチル基、または、エチル基である請求項12または13に記載の電子写真感光体。
【請求項15】
前記R27とR28が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基、R29とR30が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基、および、R31とR32が互いに結合して形成される置換もしくは無置換の環状アミノ基が、モルホリノ基、または、ピペリジノ基である請求項12に記載の電子写真感光体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電手段、該電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成するための現像手段、および、該トナー像が転写材に転写された後に該電子写真感光体の表面のトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電手段、帯電された該電子写真感光体の表面に像露光光を照射して静電潜像を形成するための像露光手段、該電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成するための現像手段、および、該電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写するための転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−114178(P2013−114178A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262130(P2011−262130)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】