説明

電子写真感光体、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ

【課題】高い耐摩耗性の維持される最表面層を持つ電子写真感光体を提供する。
【解決手段】基体上に感光層を少なくとも有し、最表面層として、一般式(A)で表される構造単位を持つ結着樹脂と、結着樹脂に対する含有量が15質量%以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤と、を含んで構成された層を有する電子写真感光体。但し、一般式(A)中、R及びRは、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。a及びbは、各々独立に0以上4以下の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式の画像形成装置においては、帯電、露光、現像、転写のプロセスを通じて電子写真感光体の表面上に形成したトナー像を被記録媒体に転写させる。
【0003】
例えば、引用文献1には、感光層が特定のポリカーボネート或いはポリアリレートの構成単位を有する樹脂と、特定のフェノール系酸化防止剤を含有することで、機械的強度、電気特性に有利な電子写真感光体が提案されている。
【0004】
引用文献2には、感光層中に結着樹脂として少なくとも特定のポリカーボネート共重合体と、電荷移動剤として特定のスチルベン化合物と、アミン系酸化防止剤を含有することで、感光層表面のクリーニング性を向上させ、かつ光疲労のない電子写真感光体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−045858号公報
【特許文献2】特開2008−256851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高い耐摩耗性の維持される最表面層を持つ電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
【0008】
請求項1に係る発明は、
基体上に感光層を少なくとも有し、
最表面層として、下記一般式(A)で表される構造単位を持つ結着樹脂と、前記結着樹脂に対する含有量が15質量%以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤と、を含んで構成された層を有する電子写真感光体。
【0009】
【化1】



【0010】
(一般式(A)中、R及びRは、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。a及びbは、各々独立に0以上4以下の整数を表す。)
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記結着樹脂が、前記一般式(A)で表される構造単位と、下記一般式(B)で表される構造単位と、を持つ共重合体である請求項1に記載の電子写真感光体。
【0012】
【化2】



【0013】
(一般式(B)中、R及びRは、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。c及びdは、各々独立に0以上4以下の整数を表す。Xは、−CR−(但し、R及びRは、各々独立に水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO−を表す。)
【0014】
請求項3に係る発明は、
前記結着樹脂が、前記一般式(A)で表される構造単位の共重合比を結着樹脂を構成する全構造単位に対して15モル%以上25モル%以下とした共重合体である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【0015】
請求項4に係る発明は、
前記電子写真感光体の最表面層が、フッ素樹脂粒子を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0016】
請求項5に係る発明は、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光し静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置と、
を備える画像形成装置。
【0017】
請求項6に係る発明は、
画像形成装置に対して着脱自在であり、
請求項1〜4に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電された前記電子写真感光体の表面を露光し静電潜像を形成する潜像形成装置、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置、前記電子写真感光体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置および前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置の群から選ばれる少なくとも1種と、
を備えるプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、最表面層が、一般式(A)で表される構造単位を含む結着樹脂と、結着樹脂に対する含有量が15質量%以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤と、の少なくとも一方を含まない場合に比べ、高い耐摩耗性の維持される最表面層を持つ電子写真感光体が提供できる。
請求項2に係る発明によれば、結着樹脂が一般式(A)で表される構造単位と一般式(B)で表される構造単位と、を持つ共重合体でない場合に比べ、耐摩耗性の高い最表面層を持つ電子写真感光体が提供できる。
請求項3に係る発明によれば、前記一般式(A)で表される構造単位の共重合比が請求項3に記載の範囲外である場合に比べ、耐摩耗性の高い最表面層を持つ電子写真感光体が提供できる。
請求項4に係る発明によれば、最表面層がフッ素樹脂粒子を含まない場合に比べ、耐摩耗性の高い最表面層を持つ電子写真感光体が提供できる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画像形成装置の長寿命化が図られる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、プロセスカートリッジの長寿命化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略断面図である。
【図2】本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略断面図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0022】
本実施形態に係る電子写真感光体は、基体上に感光層を少なくとも有している。
そして、本実施形態に係る電子写真感光体は、最表面層として、下記一般式(A)で表される構造単位を持つ結着樹脂と、前記結着樹脂に対する含有量が15質量%以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤と、を含んで構成された層を有している。
【0023】
ここで、上記一般式(A)で表される構造単位を持つ結着樹脂は、耐磨耗性に優れた材料である。このため、この結着樹脂を電子写真感光体の最表面層を含ませると、層の耐摩耗性が向上する。
【0024】
また、最表面層に酸化防止剤を含めると、繰り返し放電(酸化)により生じうる、結着樹脂の上記構造単位の構造疲労及び破壊が抑制されると考えられる。
一方で、酸化防止剤を最表面層中に多量に含めると、最表面層が脆くなり、耐摩耗性が低下する傾向にある。
【0025】
しかしながら、理由は定かではないが、一般式(A)で表される構造単位を持つ結着樹脂を含む最表面層に含ませる酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を採用すると、酸化防止剤を最表面層中に多量(結着樹脂に対して15質量%以上)に含ませても、最表面層が脆くならないばかりでなく、最表面層の耐摩耗性が向上し、しかもそれが維持されることが見出された。
この理由は定かではないが、フェノール系酸化防止剤は繰り返し放電を受けた際に分子構造がラジカル捕捉機能を奏することで層の酸化劣化を抑制しているが、前記酸化防止剤を最表面層中に多量に含ませると、本来生じてしまうはずの結着樹脂に対するラジカル捕捉作用の影響がほぼ無視できるほど小さくなり、一般式(A)で表される構造単位間の分子間相互作用を損なうことなく、強度形成効果が維持されると推測されるためである。
【0026】
このため、本実施形態に係る電子写真感光体では、上記構成により、高い耐摩耗性の維持される最表面層を持つ電子写真感光体となる。
そして、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置では、長寿命化が実現される。
【0027】
以下、本実施形態に係る電子写真用感光体を図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態に係る電子写真用感光体を示す概略断面図である。図4は、他の本実施形態に係る電子写真用感光体を示す概略断面図である。
【0028】
図3に示す電子写真感光体10Aは、例えば、いわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引き層1が設けられ、その上に電荷発生層2、及び電荷輸送層3が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体10Aにおいては、電荷発生層2及び電荷輸送層3により感光層が構成されている。
そして、図3に示す電子写真感光体10Aにおいては、電荷輸送層3が導電性基体4から最も遠い側に配置される最表面層となっている。
【0029】
図4に示す電子写真感光体10Bは、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層))に含有するものである。
具体的には、図4に示す電子写真感光体10Bにおいては、導電性基体4上に下引き層1が設けられ、その上に単層型感光層6が形成された構造を有するものである。
そして、図4に示す電子写真感光体10Bにおいては、単層型感光層6が導電性基体4から最も遠い側に配置される最表面層となっている。
【0030】
以下、電子写真感光体10における各要素について説明する。なお、符号を省略して説明する。
【0031】
まず、導電性基体について説明する。なお、「導電性」とは、例えば体積抵抗率が1013Ω・cm以下を意味する。
導電性基体としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、薄膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、導電性付与剤を塗布又は含浸させたプラスチックフィルム等が挙げられる。導電性基体の形状は円筒状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0032】
導電性基体として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0033】
次に、下引き層について説明する。
下引き層は、導電性基体表面における光反射の防止、導電性基体から感光層への不要なキャリアの流入の防止などの目的で設けられる。
【0034】
下引き層は、例えば、結着樹脂と、必要に応じてその他添加物とを含んで構成される。
下引き層に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが望ましく用いられる。
【0035】
下引き層には、シリコン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等の金属化合物等を含有してもよい。
金属化合物と結着樹脂との比率は、特に制限されず、所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で設定されることがよい。
【0036】
下引き層には、表面粗さ調整のために下引き層中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂粒子等が挙げられる。なお、表面粗さ調整のために下引き層を形成後、その表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が用いられる。
【0037】
ここで、下引き層の構成として特に好適には、結着樹脂と導電性粒子とを少なくとも含有する構成である。なお、導電性とは、例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。
導電性粒子としては、例えば、金属粒子(アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの粒子)、導電性金属酸化物粒子(酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの粒子)、導電性物質粒子(カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末の粒子)等が挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物粒子が好適である。導電性粒子は、2種以上混合して用いてもよい。
また、導電性粒子は、疎水化処理剤(例えばカップリング剤)等により表面処理を施して、抵抗調整して用いてもよい。
導電性粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが望ましく、より望ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0038】
下引き層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた下引き層形成用塗布液が使用される。また、下引き層形成用塗布液中に粒子を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。ここで、高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0039】
下引き層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0040】
下引き層の体積抵抗率は、体積抵抗率1.0×10Ω・cm以上であるが、望ましくは1.0×10Ω・cm以上1.0×1011Ω・cm以下、より望ましくは1.0×10Ω・cm以上1.0×1010Ω・cm以下である
下引き層の体積抵抗率が高すぎると、残留電位が残り易く、電気特性上不利となることがある。
【0041】
下引き層の体積抵抗率の調整は、例えば、1)下引き層の乾燥温度を調整する方法、2)下引き層中の顔料(例えば酸化亜鉛等)を表面処理する表面処理剤種、量によって調整する方法等により実現される。
【0042】
下引き層の体積抵抗率は、次の測定方法により求められる値である。
下引き層について、対向電極としてφ1mmの金電極を用い、22℃55%RHの環境下で10V/mの電場を印加したときの30秒後の電流値を測定し、体積抵抗率を求める。
【0043】
下引き層の膜厚は、30μm以上であるが、望ましくは30μm以上60μm以下、より望ましくは30μm以上50μm以下である
【0044】
下引き層の膜厚は、渦電流式膜厚計(例えば、Surfix N:PHYNIX社製)により求められる値である。
【0045】
ここで、図示は省略するが、下引き層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウム、又はシリコンを含有する有機金属化合物がよい。
【0046】
中間層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた中間層形成用塗布液が使用される。 中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0047】
中間層の厚みは、例えば、0.1μm以上3μm以下の膜厚範囲に設定することがよい。また、この中間層を下引き層として使用してもよい。
【0048】
次に、電荷発生層について説明する。
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂中とを含んで構成される。かかる電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が挙げられる。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
電荷発生層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
【0050】
電荷発生層の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液が使用される。
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0051】
電荷発生層形成用塗布液を下引き層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0052】
電荷発生層の膜厚は、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0053】
次に、電荷輸送層について説明する。
電荷輸送層は、例えば、結着樹脂と、酸化防止剤と、電荷輸送材料と、を含んで構成されている。
【0054】
結着樹脂としては、下記一般式(A)で表される構造単位(繰り返し単位)を持つ結着樹脂、つまり、下記一般式(A)で表される構造単位(繰り返し単位)を含む共重合体(ポリカーボネート樹脂)が採用される(以下、本結着樹脂を「特定のポリカーボネート樹脂」と称する)。
【0055】
【化3】



【0056】
一般式(A)中、R及びRは、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。
a及びbは、各々独立に0以上4以下の整数を表す。
【0057】
一般式(A)中、R及びRは、各々独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基を表すことが望ましく、さらに、メチル基を表すことがより望ましい。
一般式(A)中、a,及びbは、各々独立に0以上2の整数を表すことが望ましい。
【0058】
一般式(A)で表される構造単位として、具体的には、下記構造式(A1)で表される構造単位であることが望ましい。
【0059】
【化4】



【0060】
特定のポリカーボネート樹脂は、一般式(A)で表される構造単位を含んでいれば、特に制限はないが、さらに、最表面層の機械的強度を向上させ磨耗をより抑制する観点から、一般式(A)で表される構造単位と、下記一般式(B)で表される構造単位と、含む共重合体であることがよい。
【0061】
【化5】



【0062】
一般式(B)中、R及びRは、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。
c及びdは、各々独立に0以上4以下の整数を表す。
Xは、−CR−(但し、R及びRは、各々独立に水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO−を表す。)
【0063】
一般式(B)中、R及びRは、各々独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基を表すことが望ましく、さらに、メチル基を表すことがより望ましい。
c及びdは、各々独立に0以上2の整数を表すことが望ましい。
【0064】
一般式(B)中、Xは、−CR−、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基が好ましく、−CR−がより望ましい。また、−CR−中のR及びRは、各々独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基又は炭素数6以上12以下のアリール基が望ましく、その中でもメチル基又はフェニル基がより望ましい。
【0065】
一般式(B)で表される構造単位として、具体的には、下記構造式(B1)〜(B3)で表される構造単位であることが望ましい。
【0066】
【化6】

【0067】
ここで、一般式(A)で表される構造単位と、一般式(B)で表される構造単位と、含む共重合体であるポリカーボネート樹脂は、例えば、下記一般式(2A)で表される4,4′−ジヒドロキシビフェニル化合物及び下記一般式(2B)で表されるビスフェノール化合物を原料として用い、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物との重縮合又はビスアリールカーボネートとのエステル交換反応等の方法によって得られる。
【0068】
【化7】



【0069】
一般式(2A)及び(2B)中、R、R、R、R、a、b、c、d、Xは、一般式(A)及び(B)中のものと同様である。
【0070】
ここで、一般式(2A)で表される4,4′−ジヒドロキシビフェニル化合物として具体的には、例えば、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルビフェニル、4,4′−ジヒドロキシ−2,2′−ジメチルビフェニル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジシクロヘキシルビフェニル、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジヒドロキシビフェニル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジフェニルビフェニル等が挙げられる。
【0071】
一方、一般式(2B)で表されるビスフェノール化合物として具体的には、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(2−tert−アミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらビスフェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
【0072】
特定のポリカーボネート樹脂において、一般式(A)で表される構造単位の共重合比は、ポリカーボネート樹脂を構成する全構造単位に対して5モル%以上95モル%以下の範囲がよく、最表面層の機械的強度を向上させ耐磨耗性を高める観点から、望ましくは5モル%以上50モル%以下の範囲、さらに望ましくは15モル%以上25モル%以下の範囲である。
【0073】
特定のポリカーボネート樹脂の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、例示化合物中、m、nは共重合比を示す。
【0074】
【化8】

【0075】
ここで、上記例示化合物中、m、nは共重合比(モル比)を示すが、m:n=95:5から5:95以下の範囲、50:50から5:95の範囲、更に好ましくは、15:85から25:75の範囲が挙げられる。
【0076】
特定のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量としては、20000以上1200000以下の範囲が望ましく、40000以上100000以下の範囲がさらに望ましく、60000以上80000以下の範囲が特に望ましい。
【0077】
なお、機能を損ねない範囲で、特定のポリカーボネート樹脂と共に、他の結着樹脂を併用してもよい。当該他の結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらの他の結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
【0078】
ここで、特定のポリカーボネート樹脂は、最表面層(電荷輸送層)の固形分全量に対して例えば10質量%以上90質量%以下であることよく、望ましくは30質量%以上90質量%以下であり、望ましくは50質量%以上90質量%以下である。
また。結着樹脂(特定のポリカーボネート樹脂+他の結着樹脂)と電荷輸送材料との配合比(質量比)は10:1乃至1:5が望ましい。
【0079】
酸化防止剤について説明する。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が採用される。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)[=2,2−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)]、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
これらの中でも、最表面層の機械的強度を向上させ耐磨耗性を高める観点から、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)[=2,2−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)]等がよい。
【0080】
酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)の含有量としては、結着樹脂に対して15質量%以上である必要があるが、望ましくは15質量%以上30質量%以下、より望ましくは15質量%以上25質量%以下、さらに望ましくは16質量%以上22質量%以下である。
酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)の含有量を上記範囲とすることにより、最表面層の耐摩耗性が向上する。一方で、本含有量が多すぎると、最表面層が脆くなる傾向となる。
【0081】
電荷輸送性材料について説明する。
電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、及び上記した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。
これら電荷輸送材料としては、芳香族3級アミン化合物、芳香族3級ジアミン化合物が望ましく、特に、一般式(1)で表される電荷輸送材料と併用することによる相溶性の観点から、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジンが望ましい。
これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
その他添加物について説明する。
電荷輸送層には、最表面層の機械的強度を向上させ耐磨耗性を高める観点から、フッ素樹脂粒子を含むことがよい。
フッ素樹脂粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体の粒子の中から1種又は2種以上を選択するのが望ましい。これらの中も、フッ素樹脂粒子としては、特に、4フッ化エチレン樹脂粒子、フッ化ビニリデン樹脂粒子が望ましい。
【0083】
フッ素樹脂粒子の一次粒径は、0.05μm以上1μm以下であることがよく、望ましくは0.1μm以上0.5μm以下であることがよい。
なお、この一次粒子は、電子写真感光体の最表面層(電荷輸送層)から試料片を得て、これをSEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、一次粒子状態のフッ素樹脂粒子の最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値とする。なお、SEMとして日本電子製JSM-6700Fを使用し、加速電圧5kVの二次電子画像を観察する。
【0084】
フッ素樹脂粒子は、分散剤としてフッ素系グラフトポリマーを併用することがよい。この分散剤の量は、特に規定するものではないが、フッ素樹脂粒子に対して0.1質量%以上10質量%以下であることがよい。
【0085】
フッ素樹脂粒子の含有量は、電荷輸送層(最表面層)の固形分全量に対して2質量%以上15質量%以下であることが望ましく、より望ましくは4質量%以上12質量%以下であり、さらに望ましくは6質量%以上10質量%以下である。
【0086】
また、電荷輸送層には、必要に応じて、さらにフッ素変性シリコーンオイルを含んでもよい。このフッ素変性シリコーンオイルは、例えば、オルガノポリシロキサンの置換基の一部又は全部がフルオロアルキル基(例えば炭素数1以上10以下のフルオロアルキル基)で置換されたフッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。
フッ素変性シリコーンオイルの含有量は、例えば、0.1ppm以上1000ppm以下の範囲がよく、望ましくは0.5ppm以上500ppm以下の範囲である。
【0087】
電荷輸送層は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。 電荷輸送層形成用塗布液中に粒子(例えばフッ素樹脂粒子)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
なお、電荷輸送層形成用塗布液中に例えばフッ素樹脂粒子を分散させる場合、つまり電荷輸送層にフッ素樹脂粒子を含ませる場合、フッ素樹脂粒子の分散安定剤として、フッ素系界面活性剤やフッ素系グラフトポリマーを併用することがよい。フッ素系グラフトポリマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチルメタクリレートよりグラフト重合された樹脂が挙げられる。
フッ素系界面活性剤やフッ素系グラフトポリマーの含有量は、例えば、フッ素樹脂粒子に対して1質量%以上5質量%以下であることがよい。
【0088】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0089】
電荷輸送層の膜厚は、上述のように25μm以上であることがよいが、例えば5μm以上25μm未満であってもよい。
【0090】
次に、単層型感光層について説明する。
単層型感光層は、例えば、電荷発生材料と、結着樹脂と、一般式(1)で表される電荷輸送材料と、を含んで構成される。
【0091】
単層型感光層中の電荷発生材料の含有量は、10質量%以上85質量%以下程度、望ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。
単層型感光層の膜厚は、上述のように25μm以上であることがよいが、例えば5μm以上25μm未満であってもよい。
【0092】
なお、上記感光層を構成する各層中には、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を含んでもよい。例えば、酸化防止剤としては、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
【0093】
また、感光層を構成する各層には、少なくとも1種の電子受容性物質を含んでもよい。電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等が挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系やCl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に望ましい。
【0094】
なお、電子写真感光体10は、感光層上に別途保護層を設けた形態であってもよく、本形態の場合、当該保護層が最表面層に相当し、上記組成で構成される。
【0095】
(画像形成装置/プロセスカートリッジ)
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、帯電された前記電子写真感光体の表面を露光し静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置と、を備える。
そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体10が適用される。
【0096】
なお、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、電子写真感光体と、帯電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電された電子写真感光体の表面を露光し静電潜像を形成する潜像形成装置、電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置および電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置の群から選ばれる少なくとも1種と、をカーリッジ化して、これをプロセスカートリッジとして備えてもよい。
【0097】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図1に示すように、電子写真感光体10を備え、その周囲に、電子写真感光体10を帯電する帯電装置52と、帯電装置52により帯電された電子写真感光体10を露光して潜像を形成する潜像形成装置54と、潜像形成装置54により形成した静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置56と、現像装置56により形成したトナー像を記録媒体Pに転写する転写装置58と、転写後の電子写真感光体10の表面の残留トナーや紙粉等の付着物をクリーニングするクリーニング部材62を有するクリーニング装置60と、を備えている。
また、画像形成装置100は、転写装置58により記録媒体Pに転写されたトナー像を定着する定着装置40を備えている。
【0098】
なお、本実施形態に係る画像形成装置100は、上記構成に限られず、例えば、中間転写体を利用した中間転写方式の画像形成装置、各色のトナー像を形成する画像形成ユニットを並列配置させた所謂タンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0099】
以下、本実施形態に係る画像形成装置100における主な構成部材の詳細について説明する。
【0100】
帯電装置52としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置20としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。
【0101】
潜像形成装置54としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザー光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザーの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0102】
現像装置56は、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤、またはトナーを含む1成分現像剤を収容し、該現像剤に含まれるトナーを、電子写真感光体10の表面に供給することで、電子写真感光体10上に形成された静電潜像をトナーによって現像してトナー像を形成する。
【0103】
転写装置58としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0104】
クリーニング装置60は、電子写真感光体10の表面に付着しているトナーや、紙粉や、キャリア等の付着物を電子写真感光体10の表面からクリーニングする装置である。クリーニング装置60は、クリーニング部材62を含んで構成されており、このクリーニング部材62によって電子写真感光体10上の付着物をクリーニングする。このクリーニング部材62としては、板状部材(所謂、クリーニングブレード)が挙げられる。
【0105】
このクリーニング部材62としての板状部材は、電子写真感光体10の回転軸に沿った方向に延びた板状のものであって、電子写真感光体10における帯電装置52によって帯電される位置より電子写真感光体10の回転方向(矢印a)の上流側に、先端部(以下、エッジ部という)が圧力を掛けつつ接触されるように設けられている。
【0106】
板状部材(クリーニング部材62)は、電子写真感光体10が矢印a方向に回転することによって、転写装置58により記録媒体Pに転写されずに電子写真感光体10上に残った未転写残留トナーや、紙粉等をクリーニングする。
【0107】
この板状部材の材質としては公知の弾性を有する材質が挙げられ、例えばウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。その中でも、特にポリウレタンゴムがよい。
【0108】
なお、クリーニング部材62としては、ブラシ状部材や、円柱状部材であってもよい。ブラシ状部材としては、導電性の樹脂繊維や動物の毛を導電性基体の外周面に有する円柱状の部材が挙げられ、電子写真感光体10上に保持されているトナーと逆極性の電圧を該導電性基体に印加することで、電子写真感光体10上の付着物をクリーニングする部材が挙げられる。また、円柱状部材としては、内部に磁石を固定配置し、その外周に回転される円筒状の非磁性のスリーブを設けた構成とし、該スリーブ表面に磁性のキャリアを保持させて電子写真感光体12上のトナーを回収する部材が挙げられる。クリーニング部材62として、この円柱状部材を用いる場合には、前処理用にコロトロンを別途備えた構成であってもよい。
【0109】
次に、本実施形態に係る画像形成装置100の動作について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置100では、電子写真感光体10が回転(図1中、矢印a方向)される。そして、電子写真感光体10の帯電装置52によって帯電された電子写真感光体10の表面には、潜像形成装置54によって静電潜像が形成される。そして、この静電潜像の形成された領域が、電子写真感光体10の回転によって現像装置56の設けられた位置まで達すると、現像装置56から供給されたトナーによって静電潜像が現像されて、トナー像が形成される。さらに、この電子写真感光体10のトナー像の形成された領域が、電子写真感光体10の回転によって転写装置58の設けられた位置に達すると、転写装置58によって、図示を省略した搬送装置によって搬送された記録媒体Pに、電子写真感光体10上のトナー像が転写される。トナー像を転写された記録媒体Pは、図示を省略する搬送装置によって搬送されて定着装置40の設けられている位置にまで達すると、該定着装置40によって定着されて、記録媒体P上に画像が形成される。
【0110】
そして、電子写真感光体10上に残留したトナーや、付着したキャリアや、紙粉等は、クリーニング装置60のクリーニング部材62によってクリーングされる。
【0111】
なお、本実施形態に係る画像形成装置100は、例えば、図2に示すように、筐体24内に、電子写真感光体10、帯電装置52、現像装置56、及びクリーング装置60を一体に収容させたプロセスカートリッジ102を備えた形態であってもよい。
このプロセスカートリッジ102は、複数の部材を一体的に収容し、画像形成装置100に脱着させるものである。
このプロセスカートリッジ102の構成は、これに限られず、例えば、少なくとも、電子写真感光体10と、帯電装置52、潜像形成装置54、現像装置56、転写装置58及びクリーニング装置60の群から選ばれる少なくとも1種と、を有する構成であればよい。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0113】
(電子写真感光体1の作製)
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)100質量部をメタノール500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、KBM603(信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛粒子60質量部と、アリザリン0.6質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ23μmの下引層を得た。
【0114】
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部およびn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層用の塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を前記下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
【0115】
次いで、電荷輸送層を形成する材料として、A液:4フッ化エチレン樹脂粒子(平均粒径:0.2μm)1.0質量部、フッ素系グラフトポリマー(GF300、東亜合成社製、重量平均分子量30,000)0.01質量部を、テトラヒドロフラン4質量部、トルエン1質量部とともに20℃の液温に保ち、48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を得た。次に、B液:電荷輸送物質としてN,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン4質量部と、以下に示す構造式(A−1)、共重合比m:n=25:75のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂(重量平均分子量62,000)を6質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(S1)として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1.0質量部を混合してテトラヒドロフラン24質量部及びトルエン11質量部を混合溶解した。
このB液に前記A液を加えて攪拌混合した後、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、500kgf/cmまで昇圧しての分散処理を6回繰り返した液に、フッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL−100 信越シリコーン社製)を10ppm添加し、撹拌して電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布して115℃で40分間乾燥し、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体1を作製した。
【0116】
【化9】

【0117】
(電子写真感光体2の作製)
前記電子写真感光体1に記載の4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体2を作製した。
【0118】
(電子写真感光体3の作製)
ビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂の代わりに、前記構造式(A−1)で示され、共重合比m:n=15:85(重量平均分子量52,000)のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体3を作製した。
【0119】
(電子写真感光体4の作製)
前記電子写真感光体1に記載のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂の代わりに、前記構造式(A−1)で示され、共重合比m:n=5:95(重量平均分子量48,000)のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体4を作製した。
【0120】
(電子写真感光体5の作製)
前記電子写真感光体1に記載のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂の代わりに、前記構造式(A−1)で示され、共重合比m:n=0:100(重量平均分子量40,000)のポリカーボネート樹脂を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体5を作製した。
【0121】
(電子写真感光体6の作製)
前記電子写真感光体1に記載の酸化防止剤の代わりにヒンダードフェノール系酸化防止剤(S2)スミライザーMDP−S(住友化学社製:2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)[=2,2−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)]))1.0質量部を用いたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体6を作製した。
【0122】
(電子写真感光体7の作製)
前記電子写真感光体1に記載の酸化防止剤の代わりにヒンダードフェノール系酸化防止剤(S2)スミライザーMDP−S(住友化学社製::2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)[=2,2−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)]))1.0質量部を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体7を作製した。
【0123】
(電子写真感光体8の作製)
前記電子写真感光体1に記載のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂の代わりに、下記構造式(A−2)で示され、共重合比m:n=25:75(重量平均分子量74,000)のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂を用いたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体8を作製した。
【0124】
【化10】

【0125】
(電子写真感光体9の作製)
前記電子写真感光体1に記載のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂の代わりに、前記構造式(A−2)で示され、共重合比m:n=25:75(重量平均分子量74,000)のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体9を作製した。
【0126】
(電子写真感光体10の作製)
前記電子写真感光体1に記載のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂の代わりに、前記構造式(A−2)で示され、共重合比m:n=15:85(重量平均分子量52,000)のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体10を作製した。
【0127】
(電子写真感光体11の作製)
前記電子写真感光体1に記載のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂の代わりに、前記構造式(A−2)で示され、共重合比m:n=5:95(重量平均分子量63,000)のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体11を作製した。
【0128】
(電子写真感光体12の作製)
前記電子写真感光体1に記載のビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂の代わりに、前記構造式(A−2)で示され、共重合比m:n=0:100(重量平均分子量60,000)で示されるポリカーボネート樹脂を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体12を作製した。
【0129】
(電子写真感光体13の作製)
前記電子写真感光体1に記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤(S1)を1.285質量部用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体13を作製した。
【0130】
(電子写真感光体14の作製)
前記電子写真感光体1に記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤(S1)を0.85質量部用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体14を作製した。
【0131】
(電子写真感光体15の作製)
前記電子写真感光体1に記載の酸化防止剤の代わりにヒンダードフェノール系酸化防止剤(S2)スミライザーMDP−S(住友化学社製::2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)[=2,2−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)]))0.85質量部を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体15を作製した。
【0132】
(電子写真感光体16の作製)
前記電子写真感光体1に記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤(S1)を0.5質量部用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体16を作製した。
【0133】
(電子写真感光体17の作製)
前記電子写真感光体1に記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤(S1)を0.1質量部用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体17を作製した。
【0134】
(電子写真感光体18の作製)
前記電子写真感光体1に記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤(S1)の代わりに、硫黄系酸化防止剤(S3)スミライザーTPM(住友化学社製)1.0質量部を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体18を作製した。
【0135】
(電子写真感光体19の作製)
前記電子写真感光体1に記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤(S1)の代わりに、リン系酸化防止剤(S4)IRGAFOS168(BASF社製)1.0質量部を用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体19を作製した。
【0136】
(電子写真感光体20の作製)
前記電子写真感光体1に記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤(S1)を1.5質量部用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体20を作製した。
【0137】
(電子写真感光体21の作製)
前記電子写真感光体1に記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤(S1)を1.7質量部用い、4フッ化エチレン樹脂粒子の量を0質量部(フッ素を含有しない状態)としたこと以外は、電子写真感光体1と同様の方法で電子写真感光体21を作製した。
【0138】
以上、上記各電子写真感光体の作製に用いたポリカーボネートの構造式、共重合比m:n、酸化防止剤種、酸化防止剤量、フッ素樹脂粒子量について表1にまとめる。
【0139】
【表1】

【0140】
(実施例1〜13、比較例1〜8)
表2に示す電子写真感光体を、それぞれ実施例1〜13、比較例1〜8とした。
【0141】
(評価試験)
各例の電子写真感光体を、富士ゼロックス社製Docu Print 505のドラムカートリッジに装着し、耐摩耗性評価試験を行った。上記評価試験は、10℃、15RH%の環境下で、A4用紙上に画像平均密度10%の画質パターンを、50000枚、および100000枚連続印刷した後の像保持体を取り出し、評価試験前後の像保持体の膜厚差を元に、摩耗率(像保持体1000回転あたりの摩耗量)を求め、耐摩耗性を評価した。
また、以下の評価基準に基づいて摩耗安定性の評価を行った。
【0142】
(摩耗安定性評価基準)
G1:0枚から50000枚までの摩耗率と50000枚から100000枚までの摩耗率の増分が5%以下
G2:0枚から50000枚までの摩耗率と50000枚から100000枚までの摩耗率の増分が5%以上10%以下
G3:0枚から50000枚までの摩耗率と50000枚から100000枚までの摩耗率の増分が10%以上15%以下
G4:0枚から50000枚までの摩耗率と50000枚から100000枚までの摩耗率の増分が15%以上
【0143】
以上の評価結果を表2に示した。
【0144】
【表2】

【0145】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、磨耗率が低く、しかもその変動が少ない(磨耗安定性が良好)ことがわかる。
【符号の説明】
【0146】
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 基体、6 感光層、7 単層型感光層、10 像保持体、10A 像保持体、10B 電子写真感光体、52 帯電装置、54 潜像形成装置、56 現像装置、58 転写装置、62 クリーング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に感光層を少なくとも有し、
最表面層として、下記一般式(A)で表される構造単位を持つ結着樹脂と、前記結着樹脂に対する含有量が15質量%以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤と、を含んで構成された層を有する電子写真感光体。
【化1】



(一般式(A)中、R及びRは、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。a及びbは、各々独立に0以上4以下の整数を表す。)
【請求項2】
前記結着樹脂が、前記一般式(A)で表される構造単位と、下記一般式(B)で表される構造単位と、を持つ共重合体である請求項1に記載の電子写真感光体。
【化2】



(一般式(B)中、R及びRは、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。c及びdは、各々独立に0以上4以下の整数を表す。Xは、−CR−(但し、R及びRは、各々独立に水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO−を表す。)
【請求項3】
前記結着樹脂が、前記一般式(A)で表される構造単位の共重合比を結着樹脂を構成する全構造単位に対して15モル%以上25モル%以下とした共重合体である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記電子写真感光体の最表面層が、フッ素樹脂粒子を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光し静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置に対して着脱自在であり、
請求項1〜4に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電された前記電子写真感光体の表面を露光し静電潜像を形成する潜像形成装置、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置、前記電子写真感光体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置および前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置の群から選ばれる少なくとも1種と、
を備えるプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104974(P2013−104974A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247890(P2011−247890)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】