説明

電子写真感光体、該感光体を有する画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジ、及び、電子写真感光体表面層用塗工液

【課題】残留電位の上昇がなく安定して高品質な画像を形成できる高耐久な感光体、感光体を有する画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジおよび、表面層用塗工液を長期間保存してもフィラーが凝集せず保存性に優れる表面層用塗工液を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面層を積層した電子写真感光体であって、表面層は、架橋樹脂とフィラーとを含み、架橋樹脂は、少なくともポリカルボン酸化合物由来の部位と下記一般式(1)で表わされる部位とを有するものであることを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、該感光体を有する画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジ、及び、電子写真感光体表面層用塗工液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式によるレーザープリンタやデジタル複写機等の画像形成装置は、画像品質や画像形成の安定性が向上し、広く普及している。
これらの画像形成装置に使用される像担持体は、帯電及び露光によって表面に静電潜像を形成し、それを現像することによって可視像を形成する機能を有するものであり、電子写真感光体も像担持体に含まれる(以降、像担持体を電子写真感光体あるいは感光体と称する場合がある)。
【0003】
電子写真感光体は、コスト、生産性、材料選択の自由度及び地球環境への影響等の理由から、主として有機材料を用いた有機感光体が広く使用されている。
また、最近では、画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり、感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。
加えて、高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性をあげる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧の上昇が余儀なくされ、感光体の摩耗を促進する要因となっている。
【0004】
したがって、有機感光体の高耐久化においては、前述の摩耗量を低減することが不可欠である。感光体の耐摩耗性を改良する技術としては、表面層に無機微粒子を含有させる技術や、表面に架橋硬化膜を形成することが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1の特開平5−173350号公報には、保護層の抵抗値を調節する目的で導電性金属酸化物微粒子を含有させた硬化性樹脂により、耐久性が向上したとされる電子写真感光体が開示されている。
【0006】
その後、特許文献2の特開2004−302450号公報に記載されるように、無機フィラーを分散させた保護層を有するものは、高い耐摩耗性が発揮されるが、無機フィラー表面に存在するチャージトラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にあることや、フィラーにより感光体表面に凹凸が生じ易く、感光体表面の凹凸が大きい場合には、クリーニング不良が発生し、トナーフィルミングや画像流れの原因となることが分かった。例えば、特許文献3の特開2006−71856号公報には、無機フィラーを含有させた保護層を有するものは残留電位が高くなることが具体的に開示されている。
【0007】
そのため、フィラーを用いる代わりに、硬化組成物中のラジカル硬化性官能基量を多くしてより緻密な3次元架橋構造を形成することが検討された。
例えばアクリル基の場合アクリル当量(モノマー分子量を官能基数で割った値)の小さいモノマーを用い、高い耐摩耗性が達成されたとされる感光体が特許文献4の特許第3262488号公報等に開示されている。しかし、架橋点を多くするため官能基数を多くすると、未反応モノマーや、未反応の官能基が残存し易く、残留電位が上昇することがあった。
【0008】
また、特許文献5の特開2008−197632号公報、特許文献6の特開2008−170977号公報、特許文献7の特開2008−170767号公報には、ビスフェノールA骨格等の特定の構造単位を有するラジカル重合性モノマーにより、直鎖状ポリマーでみられる分子間の絡み合いのような効果を発現させ、帯電器の放電やクリーニング等の熱などにより切断された分子が、クリーニングブレードや現像剤等で引き抜かれることを防止し、摩耗を抑制させることが記載されているが、今後は、残留電位の上昇を防止しつつ、さらなる耐摩耗性の向上が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、残留電位の上昇がなく安定して高品質な画像を形成できる高耐久な感光体、該感光体を有する画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジの提供を目的とする。
また、表面層用塗工液を長期間保存してもフィラーが凝集せず保存性に優れる表面層用塗工液の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはフィラーを含有させ耐摩耗性を向上させた表面層を有する感光体について鋭意検討したところ、特定構造を有するラジカル重合性モノマーとポリカルボン酸化合物を含む表面層用塗工液は、フィラーの凝集・沈降を防止でき、該表面層用塗工液を用いた表面層は、表面層中のフィラーの分散粒径が小さく、かつ均一に分散され、経時によっても残留電位が上昇せず、かつ耐摩耗性を各段に向上できることを見いだした。
本発明は係る知見に基いてなされたものである。
【0011】
すなわち、上記課題は本発明の下記(1)〜(9)によって解決される。
(1)「導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面層を積層した電子写真感光体であって、前記表面層は、架橋樹脂とフィラーとを含み、該架橋樹脂は、少なくともポリカルボン酸化合物由来の部位と下記一般式(1)で表わされる部位とを有するものであることを特徴とする電子写真感光体;
【0012】
【化1】

(式中、R5〜R6は、各々独立に水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。」、
(2)「前記架橋樹脂は、下記一般式(2)で表わされるモノマー由来の部位を有するものであることを特徴とする前記第(1)項に記載の電子写真感光体;
【0013】
【化2】

(式中、R1〜R6は、各々独立に水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。mおよびnは1〜5までの整数を表す。
(3)「前記表面層のフィラーが金属酸化物粒子であることを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の電子写真感光体」、
(4)「前記表面層の樹脂は、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物由来の部位を有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の電子写真感光体」、
(5)「前記表面層の樹脂は、多官能ラジカル重合性モノマー由来の部位を有し、熱、光、または放射線により硬化された架橋樹脂であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに電子写真感光体」、
(6)「前記前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、電子写真感光体上の転写残トナーを取り除くクリーニング手段とを有することを特徴とする画像形成装置」、
(7)「前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の電子写真感光体を用い、電子写真感光体表面上に静電潜像を形成し、前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成し、前記可視像を記録媒体に転写し、クリーニング手段が電子写真感光体表面上の転写残トナーを取り除くことを特徴とする画像形成方法」、
(8)「画像形成装置へ組み込むプロセスカートリッジであって、静電潜像形成手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段の少なくとも1つと、前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の電子写真感光体とが一体に支持されて、画像形成装置に着脱可能なことを特徴とするプロセスカートリッジ」、
(9)「電子写真感光体表面層用塗工液であって、少なくともフィラーと、ポリカルボン酸化合物と、下記一般式(1)で表わされる構造部分を有するラジカル重合性モノマーとを含有することを特徴とする電子写真感光体表面層用塗工液;
【0014】
【化3】

(式中、R5〜R6は、各々独立に水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。)」。
【発明の効果】
【0015】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、残留電位の上昇防止と耐摩耗性の向上をと両立させた電子写真感光体、該感光体を有する画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジを提供できる。
また、表面層用塗工液を長期間保存してもフィラーが凝集せず、保存性に優れる表面層用塗工液を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における感光体の層構成の一例を示した図である。
【図2】画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図3】画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の感光体について詳細に説明する。
本発明の感光体の表面層は、架橋樹脂とフィラーとを含み、該架橋樹脂は、ポリカルボン酸化合物由来の部位と下記一般式(1)で表わされる部位とを有するものである。
【0018】
【化4】

(式中、R5〜R6は、各々独立に水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0019】
表面層用塗工液中のフィラーを安定して分散するには、塗工液を常に循環させ、フィラーの沈降を防止することが考えられる。
しかし、塗工液を循環させても、フィラーを安定して分散させ、凝集を防止することはできず、徐々にフィラーの分散性が低下して凝集が生じ、フィラーが凝集した塗工液では塗工工程において配管(スプレー)が詰まり塗膜欠陥が発生することがある。
また、作製直後の塗工液を用いて表面層を形成しても、塗工・硬化工程でフィラーの凝集が生じ、残留電位の上昇を充分防止できない。
【0020】
本発明においては、前記一般式(1)で表される構造部分を有するラジカル重合性モノマーと、ポリカルボン酸化合物を含む表面層用塗工液は、フィラーの凝集が防止され分散安定性に優れ、塗工液を長期間使用可能であり、塗工・硬化工程を経てもフィラーの凝集が生じ難いものである。
【0021】
本発明の表面層用塗工液がフィラーの凝集を防止できる理由は明らかではないが、ポリカルボン酸化合物を含有することで、フィラー粒子表面にポリカルボン酸が吸着し、フィラーと溶剤との親和性が増すことでフィラーの分散安定性が向上すると考えられる。
さらに、前記一般式(1)の構造中のビスフェノール骨格は嵩高い構造であるため、フィラーの周囲で立体障害効果が起こると考えられる。このとき、フィラー粒子表面にポリカルボン酸化合物が吸着していることで、一般式(1)の構造との立体障害効果が大きくなり、フィラー粒子の間隔が保たれ凝集が防止され、フィラーの分散安定性が飛躍的に向上し、また凝集フィラーの少ない均一な表面層を形成できるものと推測される。
【0022】
さらに、前記表面層用塗工液は、フィラー、ポリカルボン酸、及び、下記一般式(2)のビスフェノール骨格を有するラジカル重合性モノマーを含むと、ため、直鎖状ポリマーでみられる分子間の絡み合いのような効果と、凝集がなく良好に分散したフィラーの効果とが相俟って耐摩耗性が向上し、非常に強固でかつ、残留電位の上昇がない表面層を形成できる。
【0023】
【化5】

(式中、R1〜R6は、各々独立に水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。mおよびnは1〜5までの整数を表す。)
なお、一般式(1)で表される構造部分や、一般式(2)で表されるモノマー由来の構造部分は、感光体の表面層をそのまま、もしくは表面層部分のみを剥離し、FT−IRやガスクロマトグラフ質量分析等の方法で評価することで特定することができる。
【0024】
(ラジカル重合性モノマー)
本発明の架橋樹脂は、以下の表面層用塗工液を後述する外部エネルギーにより硬化させることで形成される。本発明の表面層用塗工液は、前記一般式(1)で表わされる部位を有するラジカル重合性モノマーを含有するものであり、該ラジカル重合性モノマーは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を持つ、一般式(2)で表される2官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましい。
【0025】
【化6】

(式中、R1〜R6は、各々独立に水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。mおよびnは1〜5までの整数を表す。)
【0026】
一般式(2)中、m及びnは、1〜5のものが好ましい。5よりも大きくなると嵩高さが小さくなるため、フィラーの分散安定性の向上が期待できない場合がある。
一般式(2)のラジカル重合性モノマーの添加量は、フィラー1に対して3以上添加することが好ましい。3未満の場合、立体障害効果が小さくなり、分散安定性の向上が期待できない。
【0027】
また、一般式(2)のラジカル重合性モノマーは単独でもよいし、他のラジカル重合性モノマーと混合してもよい。
他のラジカル重合性モノマーとしては、従来公知の材料を使用できるが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシを含むものを好ましく使用できる。
また、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシを含むものとしては、3官能以上の多官能ラジカル重合性モノマーや、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0028】
3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。
また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、重合性官能基を3個以上有する単量体中の重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
【0029】
3官能以上の多官能ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2、2、5、5、−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
3官能以上の多官能ラジカル重合性モノマーを含むと、3次元の網目構造が発達し、架橋密度が高く、高硬度且つ高弾性な層が得られ、高い耐摩耗性及び高い耐傷性が達成される。
【0030】
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とは、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等のホール輸送性構造や、縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送性構造のいずれか、もしくは両方を有し、かつラジカル重合性官能基を有する化合物である。
ラジカル重合性官能基としては、上記のようにアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
表面層が電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含むと、電荷輸送機能を有することにより、電子写真感光体の電気特性が向上する。
【0031】
本発明の表面層に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、官能基の数がいくつのものであってもよいが、1官能のものが静電特性の安定性や膜質の点からより好ましい。
官能基の数が2以上の場合は複数の結合で架橋構造中に固定され架橋密度はより高まるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため層構造の歪みが大きくなり、層の内部応力が高まる原因となる。また、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が発生しやすくなる恐れがある。
電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物の具体的な例としては、特開2004−302450号公報に記載の材料が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、表面層の電荷輸送性能を付与するために重要である。
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本像担持体の表面保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、表面層に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。この成分が20重量%未満では表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの静電特性の劣化が見られる場合がある。また、80重量%以上では電荷輸送構造を有しないラジカル重合性化合物の含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性や耐傷性が発揮されない場合がある。
なお、これらの電荷輸送性構造を有する重合性化合物は、硬化していることにより単離することはできないが、表面層をそのまま、もしくは表面層部分のみを剥離し、FT−IRやガスクロマトグラフ質量分析等の方法を用いることで、電荷輸送性構造として定量化できるため、本発明における電荷輸送物質の濃度比として得ることができる。
【0033】
上記のラジカル重合性化合物以外に、1官能及び2官能の重合性モノマー及び重合性オリゴマーを添加することも可能である。これらの重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
2官能の重合性モノマーとしては、例えば、1、3−ブタンジオールジアクリレート、1、4−ブタンジオールジアクリレート、1、4−ブタンジオールジメタクリレート、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート、1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0034】
(フィラー)
また、本発明の表面層用塗工液は、フィラーを含有するものであり、フィラー含有した架橋表面層を形成することにより高い耐摩耗性を有する感光体を実現することができる。
フィラー微粒子としては、無機フィラー、有機フィラー、カーボン微粒子が使用でき、いずれの種類も使用できるが、より強固な膜を形成するため、高硬度な無機フィラーを使用することが好ましい。
また、フィラー材料は単独もしくは2種類以上混合して使用できる。
【0035】
無機フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる
特に金属酸化物が良好であり、さらには、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンも有効に使用できる。また、コロイダルシリカやコロイダルアルミナなどの微粒子も有効に使用できる。
【0036】
有機フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、カーボン微粒子などが挙げられる。
カーボン微粒子とは、炭素が主成分の構造を有する粒子のことであり、非晶質、ダイヤモンド、グラファイト、無定型炭素、フラーレン、ツェッペリン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の構造を有する粒子であり、中でも、水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する粒子は、機械的及び化学的耐久性に優れるため好ましく使用できる。
前記水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン粒子とは、SP3軌道を有するダイヤモンド構造、SP2軌道を有するグラファイト構造、非晶質カーボン構造などの類似構造が混在した粒子のことである。ダイヤモンド状カーボンもしくは非晶質カーボン微粒子は、炭素だけで構成されるのではなく、水素、酸素、窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素、沃素等の他の元素が含有されていてもかまわない。
【0037】
表面層中のフィラーの濃度が高すぎると残留電位の上昇や、書き込み光透過率の低下など、副作用を生じる場合がある。したがって、耐摩耗性向上とのバランスから、概ね全固形分に対して、1重量%以上30重量%以下、好ましくは20重量%以下であることが好ましい。
【0038】
フィラーの平均一次粒径は、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。0.1μmより小さい場合には粒径が小さすぎるため、フィラーの凝集が起こりやすく、塗工液の長期安定性が期待できない。また感光体においては機械的耐久性の向上が望めないことがある。また1.0μmより大きい場合にはフィラーによる凸形状が大きくなり、クリーニングブレードの挙動を不安定にし、ブレードの劣化やクリーニング不良を引き起こす場合がある。
【0039】
また、表面層中のフィラーの分散粒径は、0.2μm以上1.1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
なお、本発明におけるフィラーの分散粒径とは、個数平均径として表される。具体的には、フィラーが含有された感光体を切断し、その断面を電子顕微鏡等によって直接観察することにより得ることができる。
【0040】
(分散剤)
また、フィラーはポリカルボン酸化合物で表面処理することが分散安定性の面から重要である。特に本発明においては、前記一般式(1)で表わされるビスフェノール骨格との相互作用により分散安定性が飛躍的に向上し、感光体においてはフィラーの凝集体が電荷トラップとなり残留電位の上昇を引き起こすことを防止できる。
【0041】
前記ポリカルボン酸化合物は、不飽和ポリカルボン酸であることが好ましい。不飽和ポリカルボン酸であると、前記一般式(2)で表されるラジカル重合性モノマー、または表面層塗液に混合されるラジカル重合性モノマーとの反応により樹脂中に固定され、表面層の耐摩耗性が向上する。
ポリカルボン酸化合物の酸価は150mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が150mgKOH/g未満であるとフィラーの分散性が低下することがあり、500mgKOH/gを超えると、残留電位が上昇することがある。
【0042】
ポリカルボン酸化合物による表面処理量は、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、フィラー質量に対して0.1〜50重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。ポリカルボン酸化合物による表面処理量が0.1重量%よりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また50重量%を超えると残留電位の上昇を引き起こすことがある。
【0043】
(分散方法)
前記フィラー材料は、少なくともポリカルボン酸化合物、有機溶剤、さらに必要であれば他の分散剤と共にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの従来方法を用いて分散できる。
使用されるメディアの材質については、従来使用されているジルコニア、アルミナ、メノウ等のメディアを使用することができるが、フィラーの分散性及び残留電位低減効果の点からアルミナを使用することがより好ましく、耐摩耗性に優れたα型アルミナが特に好ましい。
なお、ポリカルボン酸化合物由来の部位は、感光体の表面層をそのまま、もしくは表面層部分のみを剥離し、FT−IRやガスクロマトグラフ質量分析等の方法を用いて評価することで特定することができる。
【0044】
(重合開始剤)
また、本発明の表面層用塗工液には、必要に応じてこの硬化反応を効率よく進行させるため、重合開始剤を含有させても良い。
熱重合開始剤としては、2、5−ジメチルヘキサン−2、5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2、5−ジメチル−2、5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2、2−ビス(4、4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパンなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4、4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
【0045】
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2、2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1、2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1、4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2、4−ジメチルチオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2、4、6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2、4−ジメトキシベンゾイル)−2、4、4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9、10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独又は上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4、4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
【0046】
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0047】
(その他の添加剤)
更に、本発明の表面層は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上を目的として添加される)、レベリング剤、アルキルアミノ基を有する化合物、酸化防止剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤を含有することができる。
これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10重量%以下に抑えられる。
【0048】
また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマー、あるいは重合するための官能基を有するレベリング剤等も有効に使用することができる。それらの使用量は塗工液の総固形分に対し1重量%以下が適当である。
【0049】
また、酸化防止剤としては、従来公知の材料をいずれも使用することができるが、中でもフェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、ヒンダードアミン類等の材料が有効に使用できる。
酸化防止剤についても、表面保護層に添加することによって高い効果が得られる場合があるが、多量添加は硬化阻害を引き起こしたり、顕著な残留電位上昇を引き起こしたりする恐れがある。添加量としては、塗工液の総固形分に対し3重量%以下、好ましくは2重量%以下が適当である。
【0050】
(表面層の形成)
本発明の表面層は、架橋前のモノマーを含んだ表面層用塗工液を電荷輸送層上に塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液は重合性化合物が液体であり、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。
このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。
【0051】
本発明においては、かかる表面層用塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、表面層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。
熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に硬化反応が終了しない。170℃より高温では硬化反応が不均一に進行し表面層中に大きな歪みや多数の未反応残基、反応停止末端が発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。
光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、表面層表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずる。
また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
【0052】
表面層の膜厚は、1.0μm以上、8.0μm以下が好ましく、より好ましくは2.0μm以上、6.0μm以下である。これよりも膜厚が厚い場合は、前述のようにクラックや膜剥がれが発生しやすくなったり、残留電位上昇が顕著に発生したり、塗膜欠陥の発生により表面形状が制御しにくくなり、本発明の効果が十分に発揮できなくなる恐れがある。一方、これよりも膜厚が薄い場合には、場合によっては塗膜欠陥が発生しやすくなる恐れがある。
【0053】
<感光体の層構成について>
本発明における感光体の層構成の一例を示す。
本発明の感光体は図1に示すように、感光層(202)上に表面層(205)を設けた構成である。
図1−Aは、単層構造の感光層(202)上に表面層(205)を設けた場合であり、図1−Bは、電荷発生層(203)と電荷輸送層(204)とが積層された積層型の感光体であり、電荷輸送層(204)上に表面層(205)を設けた場合を示す。
また本発明は導電性支持体と感光層との間に、帯電性の向上や、地肌汚れの抑制のため、下引き層を設けてもよい。
下引き層の構成は単層でも複数層でもよい。
なお、これらの層構成は代表的なものを示したものであって、本発明はこれらの層構成に限定されるものではない。
【0054】
<感光層について>
本発明の感光層は単層構造でも、積層構造でもよい。
積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて説明する。
【0055】
(積層構造の感光層)
(電荷発生層)
電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0056】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0057】
有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0058】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0059】
電荷発生層には低分子電荷輸送物質を含有させることもできる。電荷発生層に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。低分子電荷輸送物質は公知の材料が使用でき、例えば、後述する電荷輸送層で挙げた材料が使用できる。
【0060】
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
溶液分散系からのキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。
また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0061】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は電荷輸送機能を有する層であり、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成する。
電荷輸送物質としては、電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
【0062】
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0063】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0064】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0065】
電荷輸送物質の含有量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
【0066】
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
【0067】
(その他の添加剤)
電荷輸送層には、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、を添加することもできる。電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
【0068】
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が適当である。
【0069】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、ヒンダードアミン類等の従来公知の材料が使用でき、繰り返し使用に対する静電特性の安定化に有効である。
【0070】
電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
【0071】
<感光層が単層のもの>
単層構造の感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層で、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。
【0072】
また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤については、それぞれ、前記電荷発生層、電荷輸送層において既に述べたものと同様なものが使用できる。
結着樹脂としては、先に電荷輸送層の項で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能できる。感光層の膜厚は、5〜30μm程度が適当であり、好ましくは10〜25μm程度が適当である。また、感光層の形成には前記電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
【0073】
<画像形成方法及び画像形成装置>
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、本発明は前記表面架橋層を有する感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。
場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
【0074】
図2は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解する様な帯電手段を用いた場合に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
【0075】
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、 ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0076】
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0077】
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0078】
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0079】
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
【0080】
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
【0081】
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
【0082】
<プロセスカートリッジ>
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図3に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
【0083】
図3に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明は、平滑な電荷輸送性表面架橋層を有する感光体と帯電、現像、転写、クリーニング、除電手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を、実施例によりさらに詳説するが、本発明は以下の実施例に制約されるものではない。なお、部はすべて重量部である。
【0085】
<実施例1>
下記組成の表面層用塗工液を作製した。70ccのガラスポットにφ5mmのアルミナボールを入れ、さらに下記のフィラー、分散剤及びシクロペンタノン、テトラヒドロフランを入れ、ボールミルにより24時間のフィラー分散(150rpm)を行い、ミルベースを作製した。
その後、表面層用塗工液のその他の材料とミルベースを混合することによって表面層用塗工液1を作製した。
【0086】
(ミルベース)
フィラー: 8部
(アルミナフィラー(平均一次粒径:0.1μm、スミコランダムAA−01、住友化学工業社製)
分散剤: 0.2部
(不飽和ポリカルボン酸化合物:酸価365mgKOH、BYK−P105、BYKケミー社製)
シクロペンタノン: 8部
テトラヒドロフラン: 12部
【0087】
(表面保護層用塗工液1)
下記構造式(A)の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
【0088】
【化7】


下記構造式(I)のラジカル重合性モノマー 10部
【0089】
【化8】

(SR349 サートマー社製)

ミルベース 3部
光重合開始剤(イルガキュア184 チバスペシャリティケミカルズ製) 1部
テトラヒドロフラン 120部
【0090】
<実施例2>
表面層用塗工液1において、フィラーをアルミナフィラー(平均一次粒径0.3μm、スミコランダムAA−03 住友化学工業社製)に変更した以外は全て表面層用塗工液1と同様にして表面層用塗工液2を作製した。
【0091】
<比較例1>
表面層用塗工液2において、分散剤をなしに変更した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液3を作製した。
【0092】
<実施例3>
表面層用塗工液1において、フィラーを酸化チタンフィラー(平均一次粒径0.25μm、CR−EL 石原産業社製)に変更した以外は全て表面層用塗工液1と同様にして表面層用塗工液4を作製した。

【0093】
<実施例4>
表面層用塗工液2において、ラジカル重合製モノマーを下記構造式(II)に変更し、フィラーを有機微粒子(メラミン・ホルムアミド縮合物、平均一次粒径0.3〜0.6μm、エポスターS6、日本触媒製)に変更した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液5を作製した。
【0094】
【化9】

(SR601 サートマー社製)
【0095】
<比較例2>
表面層用塗工液5において、分散剤をジメチルジメトキシシラン(KBM−22 信越シリコーン製)に変更した以外は全て表面層用塗工液5と同様にして表面層用塗工液6を作製した。
【0096】
<実施例5>
表面層用塗工液2において、ラジカル重合製モノマーを下記構造式(III)に変更し、分散剤を不飽和ポリカルボン酸化合物(酸価180mgKOH、BYK−P104 BYKケミー社)に変更した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液7を作製した。
【0097】
【化10】

(SR602 サートマー社製)
【0098】
<実施例6>
表面層用塗工液7において、フィラーをアルミナフィラー(平均一次粒径1.0μmスミコランダムAA−10 住友化学工業社製)に変更した以外は全て表面層用塗工液7と同様にして表面層用塗工液8を作製した。
【0099】
<実施例7>
表面層用塗工液作製例2において、ラジカル重合製モノマーを下記構造式(IV)に変更した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液9作製した。
【0100】
【化11】

(SR348 サートマー社製)
【0101】
<比較例3>
表面層用塗工液9において、分散剤をなしに変更した以外は全て表面層用塗工液9と同様にして表面層用塗工液10を作製した。
【0102】
<実施例8>
表面層用塗工液2において、ラジカル重合製モノマーを下記構造式(V)に変更した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液11を作製した。
【0103】
【化12】

(SR480 サートマー社製)
【0104】
<実施例9>
表面層用塗工液2において、下記構造式(I)のラジカル重合性モノマーを8部とし、下記構造式(VI)のラジカル重合性モノマー2部を追加した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液12を作製した。
【0105】
【化13】


(SR349 サートマー社製)
【0106】
【化14】

(SR355 サートマー社製)
【0107】
<実施例10>
表面層用塗工液12において、下記構造式(I)のラジカル重合性モノマーを3部とし、構造式(VI)のラジカル重合性モノマー7部とした以外は全て表面層用塗工液12と同様にして表面層用塗工液13を作製した。
【0108】
【化15】


(SR349 サートマー社製)
【0109】
【化16】

(SR355 サートマー社製)
【0110】
<実施例11>
表面層用塗工液2において、下記構造式(I)のラジカル重合性モノマーを5部とし、下記構造式(VII)のラジカル重合性モノマー5部を追加した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液14を作製した。
【0111】
【化17】


(SR349 サートマー社製)
【0112】
【化18】

(KAYARAD TMPTA 日本化薬社製)
【0113】
<実施例12>
表面層用塗工液2において、下記構造式(I)のラジカル重合性モノマーを5部とし、構造式(VII)のラジカル重合性モノマー3部、下記構造式(VIII)のラジカル重合性モノマー2部とした以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液15を作製した。
【0114】
【化19】


(SR349 サートマー社製)
【0115】
【化20】


(KAYARAD TMPTA 日本化薬社製)
【0116】
【化21】


(KAYARAD DPCA−120 日本化薬社製)
【0117】
<実施例13>
表面層用塗工液15において、構造式(I)のラジカル重合性モノマーを構造式(II)のラジカル重合性モノマーに変更し、分散剤を不飽和ポリカルボン酸化合物(酸価180mgKOH、BYK−P104 BYKケミー社)に変更した以外は全て表面層用塗工液15と同様にして表面層用塗工液16を作製した。
【0118】
【化22】


(SR601 サートマー社製)
【0119】
<実施例14>
表面層用塗工液16において、フィラーを酸化チタンフィラー(平均一次粒径0.25μm、CR−EL 石原産業社製)に変更した以外は全て表面層用塗工液16と同様にして表面層用塗工液17を作製した。
【0120】
<比較例4>
表面層用塗工液1において構造式(I)のラジカル重合性モノマーを構造式(VII)のラジカル重合性モノマーに変更した以外は全て表面層用塗工液1と同様にして表面層用塗工液18を作製した。
【0121】
【化23】

(KAYARAD TMPTA 日本化薬社製)
【0122】
<比較例5>
表面層用塗工液2において構造式(I)のラジカル重合性モノマーを下記構造式(VII)のラジカル重合性モノマーに変更した以外は全て表面層用塗工液作製例2と同様にして表面層用塗工液19を作製した。
【0123】
【化24】

(KAYARAD TMPTA 日本化薬社製)
【0124】
<比較例6>
表面層用塗工液19において、分散剤をなしに変更した以外は全て表面層用塗工液19と同様にして表面層用塗工液20を作製した。
【0125】
<比較例7>
表面層用塗工液4において構造式(I)のラジカル重合性モノマーを下記構造式(VII)のラジカル重合性モノマーに変更した以外は全て表面層用塗工液4と同様にして表面層用塗工液21を作製した。
【0126】
【化25】

(KAYARAD TMPTA 日本化薬社製)
【0127】
<比較例8>
表面層用塗工液6において構造式(I)のラジカル重合性モノマーを構造式(VII)のラジカル重合性モノマーに変更した以外は全て表面層用塗工液6と同様にして表面層用塗工液22を作製した。
【0128】
【化26】

(KAYARAD TMPTA 日本化薬社製)
【0129】
<比較例9>
表面層用塗工液2において構造式(I)のラジカル重合性モノマーを構造式(VIII)のラジカル重合性モノマーに変更した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液23を作製した。
【0130】
【化27】

(KAYARAD DPCA−120 日本化薬社製)
【0131】
<比較例10>
表面層用塗工液2において構造式(I)のラジカル重合性モノマーを構造式(VI)のラジカル重合性モノマーに変更した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液24を作製した。
【0132】
【化28】


(SR355 サートマー社製)
【0133】
<比較例11>
表面層用塗工液2において構造式(I)のラジカル重合性モノマーをなくし、構造式(VII)のラジカル重合性モノマー5部と構造式(VIII)のラジカル重合性モノマー5部に変更した以外は全て表面層用塗工液2と同様にして表面層用塗工液25を作製した。
【0134】
【化29】

(KAYARAD TMPTA 日本化薬社製)
【0135】
【化30】


(KAYARAD DPCA−120 日本化薬社製)
【0136】
<比較例12>
表面層用塗工液4において構造式(I)のラジカル重合性モノマーをなくし、構造式VII)のラジカル重合性モノマー5部と構造式(VIII)のラジカル重合性モノマー5部に変更した以外は全て表面層用塗工液4と同様にして表面層用塗工液26を作製した。
【0137】
【化31】


(KAYARAD TMPTA 日本化薬社製)
【0138】
【化32】


(KAYARAD DPCA−120 日本化薬社製)
【0139】
<実施例15>
表面層用塗工液作製例2において構造式(A)の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物をなしとし、構造式(I)のラジカル重合性モノマーを20部に変更した以外は全て表面層用塗工液作製例2と同様にして表面層用塗工液27を作製した。
【0140】
【化33】


(SR349 サートマー社製)
【0141】
以上のように作製した実施例1〜15及び比較例1〜12の表面層用塗工液1〜27について液循環試験を行った。液循環試験はテフロンマグネットポンプ(IFP−611 アズワン社製)を用いて7日間の液循環行い、液循環試験前及び3日後、7日後のフィラーの平均粒径を測定した。フィラーの平均粒径は自然/遠心沈降式粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所社製)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
本発明の一般式(1)で表わされるラジカル重合性モノマー及びポリカルボン酸化合物を含有する実施例1〜15の表面層用塗工液中のフィラーは、平均粒径が液循環7日後も循環前とほぼ同等であり、フィラーが良好に分散していることが確認された。
一方、本発明のポリカルボン酸化合物が入っていない比較例1〜3、本発明の一般式(1)で表わされるラジカル重合性モノマーが含有されていない比較例4〜12は、液循環試験3日後及び7日後でフィラーの平均粒径が大きくなっており、循環試験によってフィラーが凝集していることが確認された。この結果より、本発明の表面層用塗工液は循環後においても良好な分散安定性を有することが示された。
【0144】
<実施例16>
外径40mmのアルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を用いて、浸漬塗工法により順次塗布し、オーブンで乾燥を行い、3.0μmの下引き層と、0.2μmの電荷発生層と、23μmの電荷輸送層を形成した。各層の乾燥条件は、下引き層は120℃、10分、電荷発生層は90℃、20分、電荷輸送層は120℃、20分とした。
(下引き層用塗工液)
酸化チタンA: 70部
(CR−EL、石原産業社製)
酸化チタンB: 20部
(PT−401M、石原産業社製)
アルキッド樹脂: 14部
(ベッコライトM6401−50、固形分:50%、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂: 8部
(L−145−60、固形分:60%、大日本インキ化学工業社製)
2−ブタノン: 70部
(電荷発生層用塗工液)
下記構造式(B)のチタニルフタロシアニン: 8部
【0145】
【化34】

ポリビニルブチラール: 4部
(BX−1、積水化学工業社製)
2−ブタノン: 400部
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノン溶液及び上記チタニルフタロシアニンを投入し、ローター回転数1200rpmにて30分間分散を行い、電荷発生層用塗工液を作製した。

(電荷輸送層用塗工液)
ビスフェノールZポリカーボネート:10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(C)の低分子電荷輸送物質:10部
【0146】
【化35】

テトラヒドロフラン:80部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液:0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
【0147】
次に液循環試験前(作製直後)の表面層用塗工液2を用いて表面層を形成した感光体、及び、循環7日後の表面層用塗工液2を用いて架橋表面層を形成した感光体を作製した。
表面層の形成は、電荷輸送層上に表面層用塗工液2をスプレー塗工法により膜厚5μmとなるように塗工し、Fusion社製UV照射装置にて600mW/cmで60秒のUV照射し、UV照射後に130℃20分の乾燥して行った。
【0148】
<実施例17>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液9に変えた以外は全て実施例16と同様にして、本発明の電子写真感光体を作製した。
【0149】
<実施例18>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液12に変えた以外は全て実施例16と同様にして、本発明の電子写真感光体を作製した。
【0150】
<実施例19>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液16に変えた以外は全て実施例16と同様にして、本発明の電子写真感光体を作製した。
【0151】
<実施例20>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液27に変え、架橋表面層の膜厚を2μmとした以外は全て実施例16と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0152】
<比較例13>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液3に変えた以外は全て実施例16と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0153】
<比較例14>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液6に変えた以外は全て実施例16と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0154】
<比較例15>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液10に変えた以外は全て実施例16と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0155】
<比較例16>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液19に変えた以外は全て実施例16と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0156】
<比較例17>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液21に変えた以外は全て実施例16と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0157】
<比較例18>
実施例16において表面層用塗工液2を表面層用塗工液25に変えた以外は全て実施例16と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0158】

(評価内容)
実施例16〜20、比較例13〜18の電子写真感光体について実機通紙評価を行った。実機通紙評価は、感光体をプロセスカートリッジに装着し、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段、クリーニング手段、滑剤塗布手段、除電手段を搭載したリコー製デジタルフルカラー複写機imagioMPC5000(タンデム方式)を用いた。
実機通紙評価は、常温常湿環境(23℃55%RH)にて、1万枚の通紙(フルカラー、A4、画像面積率5%)を行い、通紙前及び1万枚通紙後の感光体の露光部電位を測定した。感光体の露光部電位は、現像部に電位センサ(TREK社製 Model344)を搭載して画像面積率100%の画像を書き込みしたときの感光体の表面電位を露光部電位として評価を行った。表2に露光部電位(−V)の結果を示す。
【0159】
【表2】


上記の結果より本発明の表面層用塗工液を用いて作製した実施例16〜20の電子写真感光体は液循環試験後の表面層用塗工液を用いた場合においても、露光部電位は安定していることが確認された。一方、比較例13〜18は循環後の塗工液を用いた場合、露光部電位が高く、特に1万枚通紙後の露光部電位の上昇が大きいことが確認された。
【符号の説明】
【0160】
(図1について)
201 導電性支持体
202 感光層
203 電荷発生層
204 電荷輸送層
205 表面保護層

(図2について)
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 定着ローラ
9 転写体
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード

(図3について)
101 感光体
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリーニング手段

【先行技術文献】
【特許文献】
【0161】
【特許文献1】特開平5−173350号公報
【特許文献2】特開2004−302450号公報
【特許文献3】特開2006−71856号公報
【特許文献4】特許第3262488号公報
【特許文献5】特開2008−197632号公報
【特許文献6】特開2008−170977号公報
【特許文献7】特開2008−170767号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面層を積層した電子写真感光体であって、前記表面層は、架橋樹脂とフィラーとを含み、該架橋樹脂は、少なくともポリカルボン酸化合物由来の部位と下記一般式(1)で表わされる部位とを有するものであることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】


(式中、R5〜R6は、各々独立に水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記架橋樹脂は、下記一般式(2)で表わされるモノマー由来の部位を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化2】

(式中、R1〜R6は、各々独立に水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。mおよびnは1〜5までの整数を表す。
【請求項3】
前記表面層のフィラーが金属酸化物粒子であることを特徴とする請求項1または2記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記表面層の樹脂は、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物由来の部位を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記表面層の樹脂は、多官能ラジカル重合性モノマー由来の部位を有し、熱、光、または放射線により硬化された架橋樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに電子写真感光体。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、電子写真感光体上の転写残トナーを取り除くクリーニング手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体を用い、電子写真感光体表面上に静電潜像を形成し、前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成し、前記可視像を記録媒体に転写し、クリーニング手段が電子写真感光体表面上の転写残トナーを取り除くことを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
画像形成装置へ組み込むプロセスカートリッジであって、静電潜像形成手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段の少なくとも1つと、請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体とが一体に支持されて、画像形成装置に着脱可能なことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
電子写真感光体表面層用塗工液であって、少なくともフィラーと、ポリカルボン酸化合物と、下記一般式(1)で表わされる構造部分を有するラジカル重合性モノマーとを含有することを特徴とする電子写真感光体表面層用塗工液。
【化3】


(式中、R5〜R6は、各々独立に水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−64991(P2013−64991A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180349(P2012−180349)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】