説明

電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた画像形成装置、およびカートリッジ

【課題】電気特性、諸特性に優れ、かつ、均一な感光層を形成することが可能であって、繰返し特性にも優れた電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた画像形成装置、および電子写真カートリッジを提供すること。
【解決手段】導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が下記一般式(1)で表される化合物を含有するものであって、一般式(1)のArが、炭素数2以上4以下のアルキル基を置換基として有するものであり、かつ、感光層中にオキシチタニウムフタロシアニンを含有することを特徴とする電子写真感光体。


(一般式(1)において、Ar〜Arは置換基を有してもよいアリール基、ArおよびArはそれぞれ独立に置換基を有してもよいアリーレン基を表し、nおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体に関する。より詳しくは、電気特性、安定性、耐久性の良好な電子写真感光体、該感光体を用いた画像形成装置、および電子写真カートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られること等から、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンター、印刷機の分野でも広く使われ応用されてきている。
電子写真技術の中核となる感光体については、その光導電材料として従来からのセレン、ヒ素−セレン合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛といった無機系の光導電体から、最近では、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した感光体の使用が主流となっている。
【0003】
有機感光体の層構成としては、電荷発生物質をバインダー樹脂中に分散させたいわゆる単層型感光体、電荷発生層および電荷移動層を積層した積層型感光体が知られている。積層型感光体は、効率の高い電荷発生物質、および電荷移動物質を別々の層に分けて、最適なものを組み合わせることにより高感度かつ安定な感光体が得られること、材料選択範囲が広く特性の調整が容易なことから多く使用されている。単層型感光体は、電気特性面では積層型感光体にやや劣り、材料選択性も狭いことから、限定的に使用されている。また、電子写真感光体は、電子写真プロセスすなわち帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等のサイクルで繰り返し使用されるためその間様々なストレスを受け劣化する。この内、化学的劣化としては例えば帯電器として普通用いられるコロナ帯電器から発生する強酸化性のオゾンやNOxが感光層にダメ−ジを与えることが挙げられ、繰り返し使用する場合に、帯電性の低下、残留電位の上昇等の電気的安定性の悪化、およびそれに伴う画像不良が起きることがある。これらは、感光層中に多く含まれる電荷輸送物質の化学的劣化に由来するところが大きい。
【0004】
更には、近年の電子写真プロセスの高速化に伴い、高感度化、高速応答化が必要となっている。このうち、高感度化のためには、電荷発生物質の最適化だけでなく、電荷発生物質と組み合わせた際に良好な特性を示す電荷輸送物質の開発が必要であり、高速応答化のためには、高移動度かつ露光時に十分な低残留電位を示す電荷輸送物質の開発が必要である。高感度化、高速応答化に有効な電荷輸送物質として、各種のブタジエン骨格を使用した電荷輸送物質が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−175052号公報
【特許文献2】特開平10−312071号公報
【特許文献3】特開2004−302032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バインダー樹脂に対する電荷輸送材料の含有量を増やせば、高感度化、高速応答化が可能となることが多いが、機械的強度が低下することが多く、耐刷性、耐傷性等の耐久性を低下させる事になる。従って、耐久性を低下させない程度の電荷輸送材料の含有量であっても、高感度化、高速応答化に耐えうるような電子写真感光体が望まれており、前記文献に記載の電荷輸送物質を適用する技術が知られていた。しかしながら、それらの技術では均一な感光層を形成することが困難であるという問題点があり、感光体の長期保存、寒冷地保存、長期使用等において、感光層が不溶成分により濁り、電気特性が悪化するという問題があった。そして、前記文献で開示される技術による感光体は、オゾン等の酸化性物質に弱く、画像形成装置(電子写真装置)内部で繰返し使用した場合に特性が劣化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、前記課題を鑑みてなされたものであり、すなわち、本発明は、電気特性、諸特性に優れ、かつ、均一な感光層を形成することが可能であって、繰返し特性にも優れた電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた画像形成装置、および電子写真カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは、上記の要求を満たす電荷輸送物質について鋭意検討した結果、特定の構造式を有する電荷輸送物質をある一定の部数で使用することにより、電子写真感光体の電気特性、安定性、耐久性を改良することを見出し、本発明に至った
【0009】
すなわち、本発明の第一の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された積層型電子写真感光体において、該感光層が下記一般式(1)で表される化合物を含有し、該感光層に含まれる、一般式(1)で表される化合物重量の、全バインダー樹脂の含有重量に対する比が0.15〜0.6であり、一般式(1)で表される化合物重量が全電荷輸送物質中最大であることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【化1】

(一般式(1)において、Ar〜Arは置換基を有してもよいアリール基、ArおよびArはそれぞれ独立に置換基を有してもよいアリーレン基を表し、nおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。)
【0010】
また、本発明の第二の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が上記一般式(1)で表される化合物を含有し、該感光層に含まれる、一般式(1)で表される化合物重量の、全バインダー樹脂の含有重量に対する比が0.15〜0.9であり、一般式(1)で表される化合物重量が全電荷輸送物質中最大であり、かつ、感光層中にオキシチタニウムフタロシアニンを含有することを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0011】
また、本発明の第三の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物を含有するものであって、一般式(1)のArが、複数のアルキル置換基を有するものであり、かつ、感光層中にオキシチタニウムフタロシアニンを含有することを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0012】
また、本発明の第四の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物を含有するものであって、一般式(1)のArが、炭素数2以上のアルキル基を置換基として有するものであり、かつ、感光層中にオキシチタニウムフタロシアニンを含有することを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0013】
また、本発明の第五の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物、およびポリアリレートを含有することを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0014】
また、本発明の第六の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物、および下記構造単位(P−1)を有するポリカーボネートを含有することを特徴とする電子写真感光体に存する。
【化2】

【0015】
また、本発明の第七の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物、および下記構造単位(P−2)を有するポリカーボネートを含有し、前記一般式(1)で表される化合物重量の、該感光層中の全バインダー樹脂の含有重量に対する比が0.15〜0.9であることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【化3】

【0016】
また、本発明の第八の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物を含有し、かつ、該導電性支持体がアルミニウムまたはアルミニウム合金であって陽極酸化皮膜を有するものであることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0017】
また、本発明の第九の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物を含有し、かつ、導電性支持体と感光層の間に下引き層を有するものであることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0018】
また、本発明の第十の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物、および、下記式(r)で表される電荷輸送物質を含有するものであることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【化4】

(式(r)中、Rは、互いに異なっていてもよい、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはフェニル基を示す。)
【0019】
また、本発明の第十一の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物、並びに、下記式(p)および(q)からなる群から選ばれた少なくとも1つの電荷輸送物質を含有し、前記一般式(1)で表される化合物重量の、該感光層中の全バインダー樹脂の含有重量に対する比が0.15〜0.9であることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【化5】

(式(p)および式(q)中、Rは、互いに異なっていてもよい、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはフェニル基を示す。)
【0020】
また、本発明の第十二の要旨は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が前記一般式(1)で表される化合物を含有し、かつ、接触帯電方式の帯電器により帯電されるものであることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0021】
また、本発明の第十三の要旨は、上記の電子写真感光体を用いた画像形成装置に存する。
【0022】
また、本発明の第十四の要旨は、上記の電子写真感光体を有する電子写真カートリッジに存する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電荷輸送物質を用いることにより、電気特性に優れ、安定性、耐久性の良好な電子写真感光体、該感光体を用いた画像形成装置、および電子写真カートリッジを提供することが可能となる。
より具体的には、高画質のプリンター、ファクシミリ、複写機等の電子写真装置に適応可能な電子写真感光体を提供することができる。そして、環境変動による電気特性の変動が小さく、特に、高温、高湿度下で、繰り返し特性に優れ、しかも機械的な耐久性に優れる上、および、耐刷性の優れた感光体を得る事ができる。また、移動度が速いことが特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜実施することができる。
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を設けたものであれば、その構造は特に制限されない。感光層の構成としては、電荷発生と電荷輸送の機能を分離して電荷発生層と電荷輸送層を積層した、いわゆる積層型感光体と、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有した、いわゆる単層型感光体が、一般に用いられている。そして、積層型感光体の層構成として、電荷輸送層と電荷発生層を導電性支持体側からこの順に積層した順積層型感光層と、逆に積層にした逆積層型感光層が知られているが、本発明の電子写真感光体ではこれらのどのような感光層も採用することができる。
【0026】
感光層の膜厚は、通常5〜50μm、長寿命化、画像安定性の観点からは、好ましくは10〜45μm、高解像度化の観点からは、10〜30μmがより好ましい。
【0027】
<一般式(1)の化合物>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層が形成されたものであって、該感光層が下記一般式(1)で表される化合物を含有する。本発明に係る一般式(1)で表される化合物は、感光層が複数の層により形成されている場合にはそれらの層のうちどの層が含有していてもかまわず、別の層がそれぞれ別の化合物を含有していてもかまわないが、一般式(1)で表される化合物は、通常電荷輸送能を有するため、これらの化合物は、通常電荷を輸送する機能が必要とされる層が含有している。
【0028】
【化6】

【0029】
一般式(1)において、Ar〜Arは置換基を有してもよいアリール基、ArおよびArはそれぞれ独立に置換基を有してもよいアリーレン基を表し、nおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。そして、該感光層に含まれる、一般式(1)で表される化合物重量の、全バインダー樹脂の含有重量に対する比が、0.15〜0.9である。
【0030】
一般式(1)中、Ar〜Arのアリール基としては、芳香属性を有する環であれば特に制限されるものではないが、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられる。このうち、分子内共役拡張、分子の永久双極子モーメント低減の観点から、フェニル基、またはナフチル基が好ましい。
Ar〜Arのアリール基が有していてもよい置換基に特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;インドリル基、キノリル基、カルバゾリル基等の複素環基が挙げられる。また、これら置換基は、連結基、または直接結合して環を形成してもよい。
【0031】
また、これらの置換基は、炭素数が大きなものを採用することで、分子内電荷バランスを改善することにより電荷移動度を増大させる効果がある一方で、大きくなりすぎると、分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げるため、好ましくは炭素原子数2以上、より好ましくは3以上であって、好ましくは炭素原子数10以下、より好ましくは炭素原子数6以下、特には炭素原子数4以下である。
【0032】
また、置換基を有する場合はその数が多いほうが好ましく、複数の置換基を有するのがよいが、多すぎると分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げるため、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。そして、感光層中における安定性を向上させ、感光層の濁り現象を防止するため、立体的に嵩高いものが好ましく、直鎖構造のものよりも分岐鎖を有する構造の置換基が好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基またはメトキシ基が好ましい。
【0033】
更にはAr〜Arは置換基を有さず、Arは置換基を有することが好ましいが、より好ましくは、Arは複数の置換基を有する。また、Arが有する置換基としては、感光層中での化合物(1)の安定性向上の為、アルキル基が好ましく、より好ましくは分岐鎖を有するアルキル基、炭素原子数2以上のアルキル基、および/または複数個のアルキル基である。更に、分岐鎖を有するアルキルの場合の炭素原子数は3以上が好ましく、7以下が好ましい。より好ましくは、4以下であり、イソプロピルが好ましい。
【0034】
ArおよびArはそれぞれ独立に置換基を有してもよいアリーレン基であり、アリーレン基としては、芳香属性を有する環であれば特に制限されるものではなく、フェニレン基、インデニレン基、ナフチレン基、アセナフチレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基等が挙げられ、結合位置にも制限は無いが、分子サイズをなるべくコンパクトにし、分子内立体反発を少なくする観点から、p−フェニレン、m−フェニレン、1,3−ナフチレン、1,4−ナフチレン基が好ましく、特にはp−フェニレン基が好ましい。
【0035】
Ar〜Arが有してもよい置換基としては特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;インドリル基、キノリル基、カルバゾリル基等の複素環基が挙げられる。また、これら置換基は、連結基、または直接結合して環を形成してもよい。
【0036】
これらの置換基は、電子供与性効果により電荷移動度を増大させる効果はあるものの、あまり置換基サイズが大きくなると、分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を減少させるため、好ましくは炭素原子数10以下、より好ましくは炭素原子数6以下であり、特にはメチル基またはメトキシ基が好ましい。置換基の数も、多くすることにより電荷移動度を増大させる効果はあるものの、多すぎると分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によって電荷移動度を下げるので、好ましくは3個以下、更に好ましくは2個以下である。
【0037】
一般式(1)中、nおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表すが、製造の安定性、電気特性の安定性等の点から、nおよびnの少なくとも一方は、1である事が好ましい。また、移動度を上げる観点から、nおよびnの少なくとも一方は、2以上である事が好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物は、二重結合を有する部分において立体異性体が存在するものであるが、当該部分の立体異性体に関しては、異性体の混合物であっても単独の立体構造からなっていても、本発明においては1種の化合物とみなし、バインダー樹脂に対する重量比率や、他の電荷輸送物質に対する重量比率を算出する。
【0038】
一般式(1)で表される化合物には下記一般式(2)であらわされるように、(a)〜(d)の4箇所の二重結合、または二重結合群が存在するものであるが、nおよびnがともに1である場合、または、nとnとが異なる場合には、何れかの異性体成分が全立体異性体に対して、80モル%以上である事が好ましく、より好ましくは90モル%以上である。また、nおよびnが同じであり、かつ2〜3の場合は、何れかの異性体成分が全立体異性体に対して、30モル%以上80%モル以下である事が好ましく、40モル%以上70モル%以下であることが更に好ましい。電気特性を鑑みた場合、トランス体が多いことが好ましい。
【0039】
【化7】

【0040】
およびnの数、並びにArの置換基の有無および種類によらず、(a)がトランス体である異性体成分の和と、(b)がトランス体である異性体成分の和とが、それぞれ40モル%以上である事が好ましく、特には50モル%以上であることが好ましいが、感光層中での一般式(1)で表される化合物の安定性の観点から、それぞれ98モル%以下である事が好ましく、より好ましくは90モル%以下であり、特に好ましくは80モル%以下である。この場合、一般式(1)で表される化合物とは異なる電荷輸送物質を併用することが好ましい。
より具体的には、nおよびnがともに1である場合であって、Arが置換基を有する場合には、(c)がトランス体である異性体成分の和と、(d)がトランス体である異性体成分の和とが、それぞれ90モル%以上である事が好ましく、特には95%以上である事が好ましい。また、(a)がトランス体である異性体成分の和と、(b)がトランス体である異性体成分の和とが、それぞれ70モル%以上である事が好ましく、特には80モル%以上である事が好ましい。
【0041】
Arの有する置換基がアルキル基である場合には、(a)がトランス体である異性体成分の和と、(b)がトランス体である異性体成分の和とが、それぞれ85モル%以上である事が好ましく、特には90モル%以上である事が好ましい。分岐鎖を有するアルキル基である場合には、(a)がトランス体である異性体成分の和と、(b)がトランス体である異性体成分の和とが、それぞれ90モル%以上である事が好ましく、特には95モル%以上である事が好ましい。
【0042】
Arが置換基を有さない場合には、(c)がトランス体である異性体成分の和と、(d)がトランス体である異性体成分の和とが、それぞれ85モル%以上トランス体である事が好ましく、特には90モル%以上である事が好ましい。
【0043】
以下に、本発明に係る一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。一般式(1)で表される化合物は電荷輸送能を示し、電子写真感光体の電荷輸送物質として使用できる。以下に、例示化合物1〜例示化合物20を示す。
【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
本発明の電子写真感光体が有する感光層は、通常バインダー樹脂により結着されてなる。この場合、感光層は前記一般式(1)とバインダー樹脂を、溶剤に溶解あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。バインダー樹脂としては、例えばブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。このうちポリカーボネート、ポリアリレートが好ましく、特には下記構造単位を有するポリカーボネート、ポリアリレートが好ましい。そのうち、下記右側の構造単位を有するポリカーボネートが更に好ましく、また、下記左側の構造単位を有するポリカーボネートを含有し、かつ、前記一般式(1)で表される化合物重量の、該感光層中の全バインダー樹脂の含有重量に対する比が0.15〜0.9であることも更に好ましい。
【化11】

【0048】
これらのバインダー樹脂は2種類以上を混合して用いることもできる。また、適当な硬化剤等を用いて熱、光等によりバインダー樹脂を架橋させて用いる事もできる。
【0049】
本発明の電子写真感光体が有する感光層において、バインダー樹脂と一般式(1)で表される化合物との重量割合は、感光層に含まれる、一般式(1)で表される化合物重量の、全バインダー樹脂の含有重量に対する比、すなわち感光層における一般式(1)で表される化合物重量の値を全バインダー樹脂の含有重量で除した値が、0.15〜0.9であることが好ましいが、電子写真感光体の残留電位を下げる観点からすれば、0.20以上であることが好ましく、繰り返し使用した際の安定性と、電荷移動度の観点からすれば、0.25以上であることがより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は0.9以下であって、感光層中での一般式(1)の化合物の安定性の観点から、好ましくは0.8以下、更に画像形成の際の耐久性の観点から、より好ましくは0.65以下で、更に好ましくは0.6以下で、耐傷性の観点からは、0.4以下が特に好ましい。
【0050】
本発明の電子写真感光体が有する感光層は、ポリアリレートを含有していることも好ましい。該ポリアリレートは結着樹脂として機能する。ポリアリレートはポリエステルの一種であり、芳香族性を有する環を持つ2価アルコールと、芳香族性を有する環を持つ2価カルボン酸との縮合によりなる。
本発明の電子写真感光体が有する感光層がポリアリレートを含有している場合には、バインダー樹脂と一般式(1)で表される化合物との重量割合はどのような比であっても構わないが、感光層に含まれる、一般式(1)で表される化合物重量の、全バインダー樹脂の含有重量に対する比、すなわち感光層における一般式(1)で表される化合物重量の値を全バインダー樹脂の含有重量で除した値が、0.15〜0.9であることが好ましい。電子写真感光体の残留電位を下げる観点からすれば、0.20以上であることが好ましく、繰り返し使用した際の安定性と、電荷移動度の観点からすれば、0.25以上であることがより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は0.9以下であって、感光層中での一般式(1)の化合物の安定性の観点から、好ましくは0.8以下、更に画像形成の際の耐久性の観点から、より好ましくは0.65以下で、更に好ましくは0.6以下で、耐傷性の観点からは、0.4以下が特に好ましい。
【0051】
該ポリアリレートの粘度平均分子量は、特に限定されないが、通常、10,000以上、好ましくは15,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、但し、通常、300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。粘度平均分子量が過度に小さいと、感光層の機械的強度が低下し実用的ではない。また、粘度平均分子量が過度に大きいと、感光層を適当な膜厚に塗布形成する事が困難である。
【0052】
芳香族性を有する環を持つ2価アルコールとしては、通常ポリアリレートの製造に用いられる如何なるものも使用可能であるが、好ましくはビスフェノール類、および/またはビフェノール類が用いられる。これらのビスフェノール類、およびビフェノール類はそれらが有する芳香族環上に各々独立に置換基を有していてもよく、より具体的には、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、またはアルコキシ基を有していてもよい。感光層用バインダー樹脂としての機械的特性と、感光層形成用塗布液を調製する際の溶媒に対する溶解性を勘案すると、アルキル基としては炭素数6以下のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、アリール基としては芳香族環数が3以下のアリール基が好ましく、より好ましくはフェニル基、ナフチル基が挙げられ、ハロゲン基としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が好ましく、アルコキシ基としては、アルコキシ基中のアルキル基部分の炭素数が1〜10のアルコキシ基が好ましく、更に好ましくは炭素数が1〜8のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数が1〜2のアルコキシ基であって、特にはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が好ましい。
【0053】
具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン;3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル;が好ましい。これらの二価フェノール成分は、複数組み合わせて用いることも可能である。
【0054】
これらの中でも特に、下記構造の2価アルコールを繰り返し単位構造として有するポリアリレートである事が好ましい。
【0055】
【化12】

【0056】
芳香族性を有する環を持つ2価カルボン酸としては、通常ポリアリレートの製造に用いられる如何なるものも使用可能であるが、より具体的には、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられる。好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられ、特に好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸は、複数組み合わせて用いることも可能である。
【0057】
本発明に係るポリアリレートの製造方法としては、特に限定されず、例えば、界面重合法、溶融重合法、溶液重合法等の公知の重合方法を用いることができる。
界面重合法による製造の場合は、例えば、二価フェノール成分をアルカリ水溶液に溶解した溶液と、芳香族ジカルボン酸クロライド成分を溶解したハロゲン化炭化水素の溶液とを混合する。この際、触媒として、四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩を存在させることも可能である。重合温度は0〜40℃の範囲、重合時間は2〜20時間の範囲であるのが生産性の点で好ましい。重合終了後、水相と有機相を分離し、有機相中に溶解しているポリマーを公知の方法で、洗浄、回収することにより、目的とするポリアリレートを得られる。
【0058】
界面重合法で用いられるアルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等を挙げることができる。アルカリの使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1.01〜3倍当量の範囲が好ましい。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロルベンゼン等を挙げることができる。触媒として用いられる四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩としては、例えば、トリブチルアミンやトリオクチルアミン等の三級アルキルアミンの塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩;ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロマイド、N−ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピコリニウムクロライド等が挙げられる。
【0059】
また、界面重合法では、分子量調節剤を使用することができる。分子量調節剤としては、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体、2−メチルフェノール誘導体等のアルキルフェノール類;o,m,p−フェニルフェノール等の一官能性のフェノール;酢酸クロリド、酪酸クロリド、オクチル酸クロリド、塩化ベンゾイル、ベンゼンスルフォニルクロリド、ベンゼンスルフィニルクロリド、スルフィニルクロリド、ベンゼンホスホニルクロリドまたはそれらの置換体等の一官能性酸ハロゲン化物等が挙げられる。これら分子量調節剤の中でも、分子量調節能が高く、かつ溶液安定性の点で好ましいのは、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体、2−メチルフェノール誘導体である。特に好ましくは、p−(tert−ブチル)フェノール、2,3,6−テトラメチルフェノール、2,3,5−テトラメチルフェノールである。
【0060】
本発明に係る感光層は、ポリアリレートをバインダーとして用いるときは、前記一般式(1)の化合物と、ポリアリレートと、必要に応じて他のバインダー樹脂とを、溶剤に溶解あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。バインダー樹脂としては、例えばブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。
【0061】
また、ポリアリレートとポリカーボネートが、共重合したものや、ブレンドしたものも好ましい。更に、これらの樹脂を適当な硬化剤等を用いて熱、光等により架橋させて用いる事もできる。これらのバインダーは2種類以上をブレンドして用いることもできる。
【0062】
一般式(1)で表される化合物のArが置換基を有する場合には、バインダー樹脂と一般式(1)で表される化合物との重量割合は、感光層に含まれる、一般式(1)で表される化合物重量の、全バインダー樹脂の含有重量に対する比、すなわち感光層における一般式(1)で表される化合物重量の値を全バインダー樹脂の含有重量で除した値が、0.20〜0.7が好ましく、より好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.4以下である。
【0063】
良好な画像形成の目的において、一般式(1)で示される化合物は複数種類用いることも好ましい。また、同様の目的で、感光層中には、一般式(1)で示される化合物の他に、公知の電荷輸送物質を含有する(併用する)ことが好ましい。この場合、感光層中に含まれる、一般式(1)で示される化合物と電荷輸送物質の総量との和は、バインダー樹脂100重量部に対して25重量部以上、更に残留電位低減の観点から35部以上が好ましく、更に繰り返し使用した際の安定性、電荷移動度の観点から、40部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は100重量部以下、更に電荷輸送材料とバインダー樹脂の相溶性の観点から好ましくは75重量部以下、更に耐刷性の観点から60重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは、50重量部以下が最も好ましい。
【0064】
使用することが可能な(併用されうる)電荷輸送物質としては、電荷輸送能を有するものであれば、どのようなものでも構わない。この場合、一般式(1)で表される化合物の含有重量が、全電荷輸送物質中、最大量となるか、感光体に含まれる電荷輸送物質の最大含有成分と比較して、重量比にして90%以上含まれていることが好ましい。ここで、上記含有重量の算定において、幾何異性体は同一化合物とみなす。
【0065】
なお、併用可能な電荷輸送物質の、好ましい例としては、以下の化合物が挙げられるが、本発明の要旨を超えない限りこれらの例示化合物に制限されるものではない。
【0066】
【化13】

【0067】
式中、Rは、1つの式中で異なっていてもよい、水素原子または置換基を示し、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基等が好ましい。特に好ましくは、メチル基である。この中でも特に、ベンジジン構造を有する化合物、ブタジエン骨格を有する化合物は、一般式(1)で表される化合物と併用した際に優れた性能を発揮するため、非常に有効である。
【0068】
<導電性支持体>
本発明の電子写真感光体に係る導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでもよい。
【0069】
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでもよい。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
【0070】
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理を施してから用いることが好ましい。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが好ましい。これによって、本発明の電子写真感光体を用いて画像形成を行なう際、画像特性の改良や電気特性の安定化を行なうことができるようになる。
【0071】
陽極酸化処理は、任意の方法により行なうことができるが、通常は、導電性支持体を電極として酸性浴中で通電することにより行なう。酸性浴について特に制限はないが、例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴が挙げられる。この中でも、硫酸中での陽極酸化を行なうことが最も良好な結果を与える。
【0072】
例えば、硫酸中で、アルミニウム製の導電性支持体に対して陽極酸化処理を行なう場合について処理条件を挙げると、硫酸濃度は100g/L〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2g/L〜15g/L、液温は15℃〜30℃、電解電圧は10V〜20V、電流密度は0.5A/dm2〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましい。ただし、陽極酸化処理時の処理条件は、これに限られるものではない。
このように陽極酸化処理を行なうことによって、導電性支持体の表面には、陽極酸化被膜が形成される。
【0073】
本発明の導電性支持体には、陽極酸化処理によって表面に陽極酸化被膜が形成された後で、封孔処理が施される。封孔処理は任意の方法により行なうことができるが、通常は、封孔剤を含有した封孔剤水溶液(封孔液)中に導電性支持体を浸漬させることにより行なう。その代表的なものとしては、低温下で導電性支持体を封孔剤水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは、高温下で導電性支持体を封孔剤水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が挙げられる。
【0074】
(低温封孔処理)
低温封孔処理は、上記のように、導電性支持体を低温下で封孔剤水溶液中に浸漬することにより行なう。
低温封孔処理では、封孔剤としては、通常、フッ化ニッケルを主成分として用いる。
この際、低温封孔処理の場合に使用される封孔剤水溶液中の封孔剤の濃度は任意であるが、通常は、3g/L〜6g/Lの範囲で行なうことが最も効果的である。
また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下である。
【0075】
更に、封孔剤水溶液のpHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上、また、通常6.5以下、好ましくは6.0以下である。なお、pHを調整する際に用いるpH調節剤に制限はなく任意のものを用いることができるが、例えば、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。
また、処理時間も任意であるが、被膜の膜厚1μm当り通常1分〜3分の範囲内で処理するのが好ましい。
【0076】
ただし、封孔剤水溶液は、封孔剤以外の物質を含有していてもよい。例えば、被膜物性を更に改良するため、フッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル等の金属塩や、界面活性剤等を添加剤水溶液に混合しておいてもよい。
浸漬を行なった後、水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
【0077】
(高温封孔処理)
一方、高温封孔処理は、導電性支持体を高温下で封孔剤水溶液中に浸漬することにより行なう。
低温封孔処理では、封孔剤としては酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩を用いることができるが、通常は、酢酸ニッケルを主成分として用いる。
この際、高温封孔処理の場合に使用される封孔剤水溶液中の封孔剤の濃度は任意であるが、通常は、5g/L〜20g/Lの範囲で行なうことが最も効果的である。
また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、通常80℃以上、好ましくは85℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは98℃以下である。
【0078】
更に、封孔剤水溶液のpHは、通常4.5以上、好ましくは5.0以上、また、通常6.5以下、好ましくは6.0以下である。なお、pHを調整する際に用いるpH調節剤に制限はなく任意のものを用いることができるが、例えば、低温封孔処理の場合と同様のものを用いることができる。
また、処理時間も任意であるが、被膜の膜厚1μm当り通常1秒以上、好ましくは2秒以上処理するのが好ましい。
【0079】
ただし、低温封孔処理の場合と同様、高温封孔処理においても、封孔剤水溶液は、封孔剤以外の物質を含有していてもよい。例えば、被膜物性を更に改良するため、酢酸ナトリウム、有機カルボン酸塩等や、アニオン系またはノニオン系の界面活性剤等を添加剤水溶液に混合しておいてもよい。
浸漬を行なった後、水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
【0080】
なお、陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。したがって、生産性が低下すると共に、被膜表面にしみ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥が生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、好ましくは7μm以下で形成されることが望ましい。
【0081】
(粗面化)
また、導電性支持体の表面は、平滑であってもよいが、陽極酸化処理の前に、予め粗面化しておいてもよい。粗面化の方法は任意であるが、例えば、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化することができる。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化することも可能である。更に、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま導電性支持体として使用することも可能である。特に、引抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム基体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等がなくなり、均一で清浄な導電性支持体が得られるので好ましい。
【0082】
<下引き層>
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層とは、導電性支持体と感光層との間に設けられ、導電性支持体と感光層との接着性の改善、導電性支持体の汚れや傷等の隠蔽、不純物や表面物性の不均質化によるキャリヤ注入の防止、電気特性の不均一性の改良、繰り返し使用による表面電位低下の防止、画質欠陥の原因となる局所的な表面電位変動の防止等の機能の少なくとも何れか1つを有し、光電特性の発現に必須ではない層である。
【0083】
下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。一種類の粒子のみを用いてもよいし複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
【0084】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性および液の安定性の面から、平均一時粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上50nm以下である。
【0085】
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
【0086】
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選べるが、10wt%から500wt%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性および塗布性から0.1μmから20μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加してもよい。前記導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層と、電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる積層型が好ましい。
【0087】
<電荷発生物質>
電荷発生物質としては例えばセレニウムおよびその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、更にはフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。これらの微粒子をたとえばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。積層型感光体の場合の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して30から500重量部の範囲で使用され、より好ましくは、40から200重量部の範囲で使用される。また、その膜厚は通常0.1μmから1μm、好ましくは0.15μmから0.6μmが好適である。
【0088】
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(「チタニルフタロシアニン」の別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。なお、これらのフタロシアニンのうち、A型(β型)、B型(α型)、および粉末X線回折の回折角2θ(±0.2゜)が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とするD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
【0089】
このなかでも、CuKα特性X線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)27.3°にピークを有する結晶型オキシチタニウムフタロシアニンを含有することが好ましく、ブラッグ角(2θ±0.2゜)9.5°、24.1°および27.3°にピークを有する結晶型オキシチタニウムフタロシアニンを含有することが好ましい。該結晶型オキシチタニウムフタロシアニンとしては、特に硫酸による酸ペースト処理を経て、作成されたものを使用することが好ましい。塩素置換チタニルフタロシアニンを含有していても構わないが、少ないものが好ましく、マススペクトルの強度比で、チタニルフタロシアニンに対して、0.005以下にあるものが、好ましい。また、非ハロゲン化合物を使用して、合成された原料を使用することが好ましい。結晶性安定の観点からは、ジフェニルメタンを反応溶媒として合成された原料を使用することが好ましい。
【0090】
感光層中にオキシチタニウムフタロシアニンを含有する場合には、一般式(1)で表される化合物重量の全バインダー樹脂の含有重量に対する比率は、0.15〜0.9が好ましく、0.2〜0.6が特に好ましく、0.3〜0.5が更に好ましい。感光層中にオキシチタニウムフタロシアニンを含有しない積層型感光層の場合には、一般式(1)で表される化合物重量の全バインダー樹脂の含有重量に対する比率は、0.15〜0.6が好ましく、0.2〜0.55が特に好ましく、0.3〜0.5が更に好ましい。
【0091】
フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いてもよいし、いくつかの混合あるいは混晶状態でもよい。ここでのフタロシアニン化合物は結晶状態に置ける混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に摩砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
【0092】
電荷発生物質としてアゾ顔料を使用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。
【0093】
<酸化防止剤>
本発明の電子写真感光体が有する感光層は、酸化防止剤を含有していることも好ましい。酸化防止剤は、感光層が含有する材料の酸化を防止するために添加される。酸化防止剤は、ラジカル補足剤としての機能があるものが好ましく、具体的には、フェノール誘導体、アミン化合物、ホスホン酸エステル、硫黄化合物、ビタミン、ビタミン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、フェノール誘導体、アミン化合物、ビタミン等が好ましく用いられる。更に好ましくは、嵩高い置換基をヒドロキシ基近辺に有する、ヒンダードフェノール、またはトリアルキルアミン誘導体が用いられる。中でも、ヒドロキシ基から見て2−位にt−ブチル基を有するアリール化合物誘導体が好ましく用いられ、特にはヒドロキシ基から見て2−位にt−ブチル基を2つ有するアリール化合物誘導体が好ましい。
【0094】
また、酸化防止剤の分子量は大きすぎると、酸化防止の機能に問題が生じることがあるため、分子量1500以下の化合物が好ましく、分子量1000以下の化合物が更に好ましい。また同様の理由により、分子量100以上の化合物が好ましく、更に好ましくは分子量150以上の化合物であって、特には分子量200以上が好ましい。
【0095】
本発明に使用できる酸化防止剤としては、プラスチック、ゴム、石油、油脂類の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤として公知のものを用いる事ができる。とりわけ次に示す化合物群より選ばれる材料が好ましく使用できるが、本発明の電子写真感光体に使用可能な酸化防止剤は、これらの例示に限るものではない。
(1)特開昭57−122444号公報に記載のフェノール類、特開昭60−188956号公報に記載のフェノール誘導体および特開昭63−18356号公報に記載のヒンダードフェノール類。
(2)特開昭57−122444号公報に記載のパラフェニレンジアミン類、特開昭60−188956号公報に記載のパラフェニレンジアミン誘導体および特開昭63−18356号公報に記載のパラフェニレンジアミン類。
(3)特開昭57−122444号公報に記載のハイドロキノン類、特開昭60−188956号公報に記載のハイドロキノン誘導体および特開昭63−18356号公報に記載のハイドロキノン類。
(4)特開昭57−188956号公報に記載のイオウ化合物および特開昭63−18356号公報に記載の有機イオウ化合物類。
(5)特開昭57−122444号公報に記載の有機リン化合物および特開昭63−18356号公報に記載の有機リン化合物類。
(6)特開昭57−122444号公報に記載のヒドロキシアニソール類。
(7)特開昭63−18355号公報に記載の特定の骨格構造を有するピペリジン誘導体およびオキソピペラジン誘導体。
(8)特開昭60−188956号公報に記載のカロチン類、アミン類、トコフェロール類、Ni(II)錯体、スルフィド類等。
【0096】
また、特に好ましくは、以下に示す、嵩高い置換基を、ヒドロキシル基近辺に有する、ヒンダードフェノール類が好ましい。ジブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、α−トコフェノール、β−トコフェノール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、ペンタエリスチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソール。
【0097】
また、ヒンダードフェノール類の中でも、特には、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(チバガイギー社製、商品名:Irganox1076)が好ましい。これらの化合物はゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品として手に入るものもある。
【0098】
本発明の感光体において表面層中の前記酸化防止剤の量は、特に制限されないが、バインダ樹脂100重量部当り0.1重量部以上、20重量部以下が好ましい。この範囲以外の場合、良好な電気特性が得られない場合がある。酸化防止剤の効果を充分得るために、特に好ましくは、1重量部以上である。また、多すぎると、電気特性だけでなく、耐刷性に対しても悪影響がある場合があるので、好ましくは、15重量部以下であり、更に好ましくは、10重量部以下である。
【0099】
<添加物>
なお、感光層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤等の添加物を含有させてもよい。感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けてもよい。また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいてもよい。
【0100】
<感光層の形成方法>
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により順次塗布して形成される。
【0101】
塗布液の作製に用いられる溶媒あるいは分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸エチル、等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類;アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を併用して用いられる。なお、塗布液あるいは分散液の作製において、積層型感光層の電荷発生層の場合には、固形分濃度を好ましくは15重量%以下、更に好ましくは1〜10重量%、粘度を好ましくは0.1〜10mPa・s、更に好ましくは1〜5mPa・sとする。
【0102】
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0103】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1,帯電装置2,露光装置3および現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5,クリーニング装置6および定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5およびクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0104】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等が用いられる。接触型帯電装置により帯電させれば、オゾン等の酸化性ガスの発生を低減させることが可能となるが、一般には感光層のひび割れ等が発生しやすくなる。前記一般式(1)で表される化合物を感光層中に含有する場合は、接触型帯電装置(接触帯電方式の帯電器)により帯電した場合でも、感光層のひび割れ等が発生し難いという点で特に好ましい。
なお、電子写真感光体1および帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1,帯電装置2,トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
【0105】
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば、波長が700nm〜850nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長300nm〜500nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。
【0106】
特に、電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を使用する電子写真感光体の場合には、波長700nm〜850nmの単色光を用いることが好ましく、アゾ化合物を用いる電子写真感光体の場合には、波長700nm以下の単色光を用いることが好ましい。電荷発生物質として本発明に係る一般式(4)で表されるアゾ化合物を用いる電子写真感光体の場合には、波長500nm以下の単色光を光入力用光源としても充分な感度を有するため、波長300nm〜500nmの単色光を光入力用光源として用いることは、特に好適である。
【0107】
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、および、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0108】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケル等の金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1および供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43および現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0109】
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼,アルミニウム,銅,真鍮,リン青銅等の金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0110】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
【0111】
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
【0112】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
【0113】
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71および下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71または72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部および下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0114】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0115】
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
【0116】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
【0117】
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0118】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
【実施例】
【0119】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0120】
製造例1A(例示化合物1の製造)
4,4’−ジホルミルトリフェニルアミン15.1gと、1,1−ジフェニルメチルホスホン酸ジエチル30.4gを、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記することがある)0.1Lに溶解し、これにカリウムt−ブトキシド16.8gを25℃〜35℃で添加した。添加後、室温で3時間攪拌した。反応液を、メタノール0.2L中に放出することにより析出した固体を濾過し、得られた個体をDMFに再度溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、例示化合物1を28g得た。
【0121】
高速液体クロマトグラフ(移動相:アセトニトリル、カラム:ジーエルサイエンス社製、Inertsil ODS−3V)にて分析したところ、一般式(2)で示した(a)(b)(c)(d)の二重結合における立体異性体は、何れも99%以上がトランス体であった。
【0122】
製造例1B(例示化合物1の製造)
4,4’−ジホルミルトリフェニルアミン15.1gと、1,1−ジフェニルメチルホスホン酸ジエチル25g、シンナミルトリフェニルホスフォニウムクロライド10gをDMF1Lに溶解し、これにカリウムt−ブトキシド16.8gを25℃〜35℃で添加した。添加後、室温で3時間攪拌した。反応液を、メタノール2L中に放出することにより析出した固体を濾過し、得られた個体をDMFに再度溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、例示化合物1を25g得た。
【0123】
高速液体クロマトグラフ(移動相:アセトニトリル、カラム:ジーエルサイエンス社製、Inertsil ODS−3V)にて分析したところ、一般式(2)で示した(a)(b)の二重結合における立体異性体は、74%がトランス体であり、(c)(d)の二重結合における立体異性体は、98%以上がトランス体であった。
【0124】
製造例1C(例示化合物1の製造)
4,4’−ジホルミルトリフェニルアミン15.1gと、シンナミルトリフェニルホスフォニウムクロライド40gをDMF/トルエン混合溶液(DMF:トルエン=2:1)0.1Lに溶解し、これにナトリウムメトキシドメタノール溶液を25℃〜35℃で添加した。添加後、室温で3時間攪拌した。反応液を、メタノール2L中に放出することにより析出した固体を濾過し、得られた個体をDMFに再度溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、例示化合物1を25g得た。
【0125】
高速液体クロマトグラフ(移動相:アセトニトリル、カラム:ジーエルサイエンス社製、Inertsil ODS−3V)にて分析したところ、一般式(2)で示した(a)(b)の二重結合における立体異性体は、45%がトランス体であり、(c)(d)の二重結合における立体異性体は、98%以上がトランス体であった。
【0126】
製造例1D(例示化合物1の製造)
4,4’−ジホルミルトリフェニルアミン15.1gと、シンナミルトリフェニルホスフォニウムクロライド40gをDMF0.1Lに溶解し、これにナトリウムメトキシドメタノール溶液を25℃〜35℃で添加した。添加後、室温で3時間攪拌した。反応液を、メタノール2L中に放出し、析出した固体を濾過しようとしたところハルツ化した為、クルード(未精製物)をそのまま、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、例示化合物1を20gを得た。高速液体クロマトグラフ(移動相:アセトニトリル、カラムODS−3V)にて分析したところ、一般式(2)において、(a)(b)の幾何異性体は、平均して24%がトランス体であり、(c)(d)の幾何異性体は、平均して98%以上がトランス体であった。
【0127】
製造例2A(例示化合物2の製造)
4,4’−ジホルミルトリフェニルアミンの代わりに、4,4’−ジホルミル−4”−メチルトリフェニルアミンを使用する以外は、製造例1Aと同様にして例示化合物2を作製した。一般式(2)において、(a)(b)(c)(d)の幾何異性体は、何れも99%以上がトランス体であった。
【0128】
製造例2B(例示化合物2の製造)
4,4’−ジホルミルトリフェニルアミンの代わりに、4,4’−ジホルミル−4”−メチルトリフェニルアミンを使用する以外は、製造例1Aと同様にして例示化合物2を作製した。一般式(2)において、(a)(b)の幾何異性体は、平均して85%がトランス体であり、(c)(d)の幾何異性体は、平均して98%以上がトランス体であった。
【0129】
製造例3A(例示化合物3の製造)
4,4’−ジホルミルトリフェニルアミンの代わりに、4,4’−ジホルミル−4”−イソプロピルトリフェニルアミンを使用する以外は、製造例1Aと同様にして例示化合物3を作製した。一般式(2)において、(a)(b)(c)(d)の幾何異性体は、何れも99%以上がトランス体であった。
【0130】
製造例3B(例示化合物3の製造)
4,4’−ジホルミルトリフェニルアミンの代わりに、4,4’−ジホルミル−4”−イソプロピルトリフェニルアミンを使用し、DMF/トルエン=2/1(重量比)混合溶液の代わりに、DMF/トルエン=1/2(重量比)混合溶液を使用する以外は、製造例1Aと同様にして例示化合物3を作製した。一般式(2)において、(a)(b)の幾何異性体は、平均して89%がトランス体であり、(c)(d)の幾何異性体は、平均して98%以上がトランス体であった。
【0131】
比較製造例1
特開2005−134709号公報に記載の合成例(3)に従って、電荷輸送物質組成物を製造した(以下、電荷輸送物質Xと略記することがある)。電荷輸送物質X中には、例示化合物2で表される化合物が、波長254nmのUV検出器によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(gel permeation chromatography)によるピーク面積比率で、全組成物に対して約30%含まれており、電荷輸送物質X中に含まれる最大量の化合物に対する例示化合物2で表される化合物のピーク面積比率は、約60%であった。
【0132】
電荷発生物質製造例1
特開平10−7925号公報の「粗TiOPcの製造例」、および「実施例1」の記載に従ってβ型オキシチタニウムフタロシアニンを製造した。得られたβ型オキシチタニウムフタロシアニン18重量部と、−10℃以下に冷却した95%濃硫酸720重量部とを混合した。このとき硫酸溶液の温度が−5℃を超えないように、オキシチタニウムフタロシアニンを、ゆっくりと添加した。混合終了後、濃硫酸溶液を−5℃以下で2時間撹拌し、撹拌後、該濃硫酸溶液を焼結ガラスフィルターで濾過し、不溶分を濾別後、氷水10800重量部中に放出することにより、オキシチタニウムフタロシアニンを析出させ、放出後1時間撹拌した。撹拌後、溶液を濾別し、得られたウエットケーキと水900重量部とを1時間時間混合した後に、濾過を行った。この操作を濾液のイオン伝導度が0.5mS/mになるまで繰り返すことにより、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキ185重量部を得た(オキシチタニウムフタロシアニン含有率9.5重量%)。
【0133】
得られた低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキ93重量部と水190重量部とを混合し、室温で30分撹拌した。その後、該混合溶媒にo−ジクロロベンゼン39重量部を加え、更に室温で1h撹拌した。撹拌後、水を分離し、MeOH134重量部を添加し、室温で1時間撹拌洗浄した。洗浄後、濾別し、再度MeOH134重量部を用いて1時間撹拌洗浄後、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを7.8量部得た(以下、電荷発生物質1と略記することがある)。得られたオキシチタニウムフタロシアニンに含まれるクロロオキシチタニウムフタロシアニンの含有量を、特開2001−115054号公報に記載の手法(マススペクトル)を用いて測定したところ、オキシチタニウムフタロシアニンに対し、強度比0.003以下であった。
【0134】
電荷発生物質製造例2
電荷発生物質製造例1で得られた低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキ50重量部を、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記することがある)500重量部中に分散し、室温で1h攪拌する以外は、製造例1と同様にして、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3重量部得た(以下、電荷発生物質2と略記することがある)。
【0135】
得られたオキシチタニウムフタロシアニンに含まれるクロロオキシチタニウムフタロシアニンの含有量を、特開2001−115054号公報に記載の手法(マススペクトル)を用いて測定したところ、オキシチタニウムフタロシアニンに対し、強度比0.003以下であった。
【0136】
電荷発生物質製造例3
β型オキシチタニウムフタロシアニンとして、特開2001−115054号公報の、実施例1に記載の方法で製造されたβ型オキシチタニウムフタロシアニンを使用する以外は、電荷発生物質製造例1と同様にしてCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3重量部得た(以下、電荷発生物質3と略記することがある)。
【0137】
得られたオキシチタニウムフタロシアニンに含まれるクロロオキシチタニウムフタロシアニンの含有量を、特開2001−115054号公報に記載の手法(マススペクトル)を用いて測定したところ、オキシチタニウムフタロシアニンに対し、強度比0.05であった。
【0138】
<感光体A1〜A23,P1〜P16の作製>
実施例1
電荷発生物質製造例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン10重量部と、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン150重量部とを混合し、サンドグラインドミルにより1時間粉砕分散処理を行い、顔料分散液を作製した。
【0139】
また、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)の濃度が5重量%の1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部と、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)の濃度が5重量%の1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部とを混合して、バインダー樹脂溶液を作製した。
先に作製した顔料分散液160重量部と、バインダー樹脂溶液100重量部と、適量の1,2−ジメトキシエタンとを混合し、最終的に固形分濃度4.0%の電荷発生層形成用塗布液を調製した。
【0140】
得られた電荷発生層形成用分散液を、表面にアルミを蒸着した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥後の膜厚が0.3μmになるように塗布して電荷発生層を設けた。
次にこのフィルム上に、製造例(1A)で作製された例示化合物1の化合物を20重量部、下記構造の化合物(A)を20重量部、
【0141】
【化14】

【0142】
下記バインダー樹脂(B1)(m:n=51:49,粘度平均分子量30,000)100重量部、
【化15】

【0143】
酸化防止剤(チバガイギー社製:商品名IRGANOX1076)8重量部、およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部を、THF/トルエン=8/2(混合重量比)640重量部に溶解させた液(以下、電荷輸送層形成用塗布液ということがある)を塗布し、125℃で20分間乾燥して乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を設け、電子写真感光体A1を得た。
【0144】
実施例2
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、製造例(1B)で製造された例示化合物1を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A2を得た。
実施例3
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、製造例(1B)で製造された例示化合物1を40重量部使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A3を得た。
【0145】
実施例5
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、製造例(2A)で製造された例示化合物2を15重量部使用し、かつ、化合物(A)の代わりに、化合物(B)15重量部を使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A5を得た。
【0146】
【化16】

【0147】
実施例6
実施例5で使用した製造例(2A)で製造された例示化合物2に代えて、製造例(2B)で製造された例示化合物2を20重量部使用し、化合物(B)の使用量を20重量部とする以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体A6を得た。
実施例7
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、製造例(3A)で製造された例示化合物3を20重量部使用し、かつ、化合物(A)の代わりに、下記化合物(C)20重量部を使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A7を得た。
【0148】
【化17】

【0149】
実施例8
実施例7で使用した化合物(C)の代わりに、化合物(A)20重量部を使用する以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A8を得た。
実施例9
実施例8で使用した、化合物(A)のかわりに、化合物(B)を使用する以外は、実施例8と同様にして電子写真感光体A9を得た。
【0150】
実施例10
実施例7で使用した、例示化合物3の使用量を50重量部とする以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A10を得た。
実施例11
実施例7で使用した、例示化合物3の使用量を40重量部とし、化合物(C)の使用量を40重量部とする以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A11を得た。
【0151】
実施例12
実施例7で使用した、化合物(C)の使用量を50重量部とする以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A12を得た。
実施例13
実施例7で使用した、例示化合物3の使用量を45重量部とし、化合物(C)を使用する代わりに、化合物(B)を50重量部使用する以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A13を得た。
【0152】
実施例14
実施例13で使用した、化合物(B)の代わりに、化合物(A)を使用する以外は、実施例13と同様にして電子写真感光体A14を得た。
実施例15
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、製造例(3B)で製造された例示化合物3を50重量部使用し、かつ、化合物(A)を使用しない以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A15を得た。
【0153】
実施例16
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、製造例(3B)で製造された例示化合物3を20重量部使用し、かつ、化合物(A)の代わりに化合物(C)を使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A16を得た。
実施例17
実施例16で使用した電荷発生物質製造例1で製造された電荷発生物質1に代えて、電荷発生物質製造例2で製造された電荷発生物質2を使用する以外は、実施例16と同様にして電子写真感光体A17を得た。
【0154】
実施例18
実施例16で使用した電荷発生物質製造例1で製造された電荷発生物質1に代えて、電荷発生物質製造例3で製造された電荷発生物質3を使用する以外は、実施例16と同様にして電子写真感光体A18を得た。
実施例19
実施例7で使用したバインダー樹脂の代わりに、下記バインダー樹脂(B2)(粘度平均分子量40,000)を使用する以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A19を得た。
【0155】
【化18】

【0156】
実施例20
実施例7で使用したバインダー樹脂の代わりに、下記バインダー樹脂(B3)(粘度平均分子量40,000、m:n=9:1)を使用する以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A20を得た。
【0157】
【化19】

【0158】
実施例21
実施例16で使用した、電荷発生物質製造例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニンを使用する代わりに、特開平8−123052号公報の製造例に記載の方法で得られたオキシチタニウムフタロシアニン(以下、電荷発生物質4と略記することがある)を使用する以外は、実施例16と同様にして電子写真感光体A21を得た。
【0159】
実施例22
実施例16で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3の使用量を90重量部とし、化合物(C)の使用量を10重量部とする以外は、実施例16と同様にして電子写真感光体A22を得た。
実施例23
実施例22で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3の使用量を65重量部とする以外は、実施例22と同様にして電子写真感光体A23を得た。
実施例24
実施例13で使用した、製造例(3A)で製造された例示化合物3の代わりに、製造例(1A)で製造された例示化合物1を40重量部使用する以外は、実施例13と同様にして電子写真感光体A24を得た。
【0160】
比較例1
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、製造例(1A)で製造された例示化合物1を100重量部使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P1を得たが、感光体全面に結晶の析出が認められた。
比較例2
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、製造例(2A)で製造された例示化合物2を100重量部使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P2を得たが、感光体全面に結晶の析出が認められた。
【0161】
比較例4
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、製造例(1B)で製造された例示化合物1を100重量部使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P4を得たが、感光体端に結晶の析出が認められた。
【0162】
比較例5
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、製造例(1D)で製造された例示化合物1を100重量部使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P5を得た。
比較例6
実施例1で使用した製造例(1A)で製造した例示化合物1を20重量部使用する代わりに、100重量部使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P6を得たが、感光体の端の一部に結晶の析出が認められた。
【0163】
比較例7
実施例5で使用した、製造例(2A)で製造された例示化合物2を15重量部使用する代わりに、100重量部使用する以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体P7を得たが、感光体の端の一部に結晶の析出が認められた。
比較例8
実施例5で使用した、製造例(2A)で製造された例示化合物2を15重量部使用する代わりに、10重量部使用する以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体P8を得た。
【0164】
比較例10
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、下記化合物(D)を使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P10を得た。
【0165】
【化20】

比較例11
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、下記化合物(E)を使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P11を得た。
【0166】
【化21】

比較例12
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、下記化合物(F)を使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P12を得た。
【0167】
【化22】

比較例13
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、下記化合物(G)を使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P13を得た。
【0168】
【化23】

比較例14
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、化合物(C)を使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P14を得た。
【0169】
比較例15
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、化合物(H)を使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P15を得ようとしたが、感光体上に析出が認められた。
【0170】
【化24】

【0171】
比較例16
実施例15で使用した製造例(3B)で製造された例示化合物3に代えて、比較製造例1で製造された電荷輸送物質Xを使用する以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体P16を得たが、感光体を室温にて1日放置したところ、結晶の析出が認められた。
【0172】
<感光体の電気特性の評価>
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体を(作製後1週間後に)、アルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、初期表面電位を−700Vとし、露光には780nmの、除電には660nmの単色光を用いた。780nmの光を1.0μJ/cm照射した時点の表面電位(VL)、および感度を表す指標として、表面電位を−350Vとするまでに必要な露光量(半減露光量)を測定した。半減露光量およびVLの測定に際しては、露光−電位測定に要する時間を100msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%下(環境N/N)および、温度5℃、相対湿度10%下(環境L/L)で行った。感度(半減露光量)およびVLの値の絶対値が小さいほど電気特性が良好であることを示す。結果を表1(環境N/N)、表2(環境L/L)に示す。
【0173】
<移動度の評価>
実施例15と同様にして、電荷発生層を作製した。次にこのフィルム上に、製造例(3A)で作製された例示化合物3を20重量部、化合物(C)を20重量部、前記ポリカーボネート樹脂(B1)(m:n=51:49、粘度平均分子量30,000)を100重量部、およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部を、THF640重量部に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を塗布し、125℃で20分間乾燥し、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を設け、電子写真感光体M1を得た。
【0174】
また、電荷輸送層として、化合物(C)の使用量を40重量部とする以外は、感光体M1と同様にして得られた液を塗布し、感光体MP1を得た。
【0175】
得られた感光体の電荷輸送層の移動度を、TOF(Time of flight)法に基づいて、780nm露光による電荷発生物質励起により、21±0.5℃、2.0×10(V/cm)で、測定した。得られた結果を表3に示す。
【0176】
【表1】

【0177】
【表2】

【0178】
【表3】

【0179】
【表4】

【0180】
表の結果より、本発明の電子写真感光体は、低温かつ低湿度の環境条件においても、高感度でしかもVLが低く、良好な電気特性を示すことがわかった。また、種々のバインダー樹脂に対する相溶性にも優れる事がわかった。また、移動度も非常に速い感光体である事がわかった。
【0181】
<画像形成試験、および感光体の安定性、耐久性試験>
実施例25
硫酸水溶液中で陽極酸化することで表面に陽極酸化処理を施し、酢酸ニッケル水溶液中で90℃で低温封孔処理を施した直径30mm、長さ254mmのアルミニウムチューブ上に、実施例7と同様に作製した電荷発生層形成用塗布液および電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層25μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、ヒューレットパッカード社製レーザープリンタ、レーザージェット4(LJ4)に搭載し画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1万枚連続プリントを行ったが、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、また、リークによる画像欠陥も発生していなかった。
【0182】
実施例26
硫酸水溶液中で陽極酸化することで表面に陽極酸化処理を施し、酢酸ニッケル水溶液中で90℃で低温封孔処理を施した直径20mm、長さ251mmのアルミニウムチューブ上に、実施例8と同様に作製した電荷発生層形成用塗布液および電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、富士ゼロックス社製タンデムカラーレーザープリンタ、C1616に4本搭載し、温度35℃、湿度85%下(H/H環境ということがある)で、画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1000枚連続プリントを行ったが、リーク、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、安定していた。
【0183】
比較例17
硫酸水溶液中で陽極酸化することで表面に陽極酸化処理を施し、酢酸ニッケル水溶液中で90℃で低温封孔処理を施した直径20mm、長さ251mmのアルミニウムチューブ上に、比較例8と同様に作製した電荷発生層形成用塗布液および電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、富士ゼロックス社製タンデムカラーレーザープリンタ、C1616に4本搭載し、H/H環境にて、画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1000枚連続プリントを行ったところ、濃度低下による画像劣化が見られた。
【0184】
実施例27
直径20mm、長さ251mmのアルミニウムチューブ上に、特開2005−99791 実施例13の手法に記載の手法を用いて下引きを作製した後、実施例8と同様に作製した電荷発生層用塗布液および電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、富士ゼロックス社製タンデムカラーレーザープリンタ、C1616に4本搭載し、温度35℃、湿度85%下(H/H環境ということがある)で、画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1000枚連続プリントを行ったが、リーク、ゴースト、カブリ、濃度低下等の画像劣化は見られず、安定していた。
【0185】
実施例28
実施例7で使用したバインダーの代わりに、下記バインダー(B4)(粘度平均分子量70,000;m:n=9:1)を使用する以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A28を得た。
【化25】

【0186】
実施例29
実施例7で使用したバインダーの代わりに、下記バインダー(B5)(粘度平均分子量40,000)を使用する以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A29を得た。
【化26】

【0187】
実施例30
実施例7で使用したバインダーの代わりに、下記バインダー(B6)(粘度平均分子量60,000;m:n=6:4)を使用する以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A30を得た。
【化27】

【0188】
実施例31
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、例示化合物15を60重量部使用し、化合物(A)を使用しない以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A31を得た。
【0189】
実施例32
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、例示化合物17を30重量部使用し、化合物(A)を30重量部使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A32を得た。
【0190】
実施例33
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、例示化合物18を20重量部使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A33を得た。
【0191】
実施例34
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、例示化合物8を30重量部使用し、例示化合物18を30重量部使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A34を得た。
【0192】
実施例35
実施例1で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、例示化合物15を90重量部使用し、化合物(A)を使用しない以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A35を得た。
【0193】
感光体A1〜A24、P1〜P16と同様にして、環境N/Nの半減露光量およびVLを測定した。結果を表4に示す。
【0194】
【表5】

【0195】
<実写評価>
実施例36
実施例1で使用した電荷発生層形成用塗布液を、硫酸水溶液中で陽極酸化することで表面に陽極酸化処理を施し、酢酸ニッケル水溶液中で90℃で低温封孔処理を施した直径30mm、長さ254mmのアルミニウムチューブ(導電性支持体)上に、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように浸漬塗布し、乾燥させて電荷発生層を形成した。この上に、実施例31と同様に、電荷輸送層を作成し、電子写真感光体ドラムを作成した。このドラムを、ヒューレットパッカード社製レーザープリンタ、レーザージェット4(LJ4)に搭載し画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1万枚連続プリントを行ったが、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、また、リークによる画像欠陥も発生していなかった。
【0196】
実施例37
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部を混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
【0197】
前記酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、および、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、75%/9.5%/3%/9.5%/3%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の重量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0重量%の下引き層形成用塗布液Aを得た。
【0198】
【化28】

【0199】
下引き層形成用塗布液Aを、径30mm、長さ285mm、肉厚0.8mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2.4μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。この下引き層の上に、電荷発生層、電荷輸送層を実施例36と同様に作成した。
【0200】
作製した感光体を、セイコーエプソン株式会社製カラープリンター(製品名:InterColor LP−1500C)のカートリッジに装着し、フルカラー画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。
【0201】
実施例41
電荷発生物質製造例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン10重量部と、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン150重量部とを混合し、サンドグラインドミルにより1時間粉砕分散処理を行い、顔料分散液を作製した。
【0202】
また、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)の濃度が5重量%の1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部と、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)の濃度が5重量%の1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部とを混合して、バインダー樹脂溶液を作製した。
先に作製した顔料分散液160重量部と、バインダー樹脂溶液100重量部と、適量の1,2−ジメトキシエタンとを混合し、最終的に固形分濃度4.0%の電荷発生層形成用塗布液を調製した。
【0203】
得られた電荷発生層形成用分散液を、表面にアルミを蒸着した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥後の膜厚が0.3μmになるように塗布して電荷発生層を設けた。
次にこのフィルム上に、製造例(3A)で作製された例示化合物3の化合物を40重量部、下記構造のポリアリレート(BA1)(粘度平均分子量40,000)100重量部、
【0204】
【化29】

【0205】
およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部をTHF/トルエン=8/2(混合重量比)640重量部に溶解させた液(以下、電荷輸送層形成用塗布液ということがある)を塗布し、125℃で20分間乾燥して乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を設け、電子写真感光体A41を得た。
実施例42
実施例41で使用したポリアリレート(BA1)に代えて、下記構造のポリアリレート(BA2)(粘度平均分子量40,000、n:m=1:1)を使用した以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A42を得た。
【0206】
【化30】

【0207】
実施例43
実施例42で使用したポリアリレート(BA2)に代えて、下記構造のポリアリレート樹脂(BA3)(粘度平均分子量40,000、n:m=7:3)を使用した以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A43を得た。
【0208】
【化31】

【0209】
実施例44
実施例41で使用したバインダー(BA1)に代えて、下記構造のポリアリレート樹脂(BA4)(粘度平均分子量40,000、n:m=7:3)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A44を得た。
【0210】
【化32】

【0211】
実施例45
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、製造例(3B)で製造された例示化合物3を使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A45を得た。
実施例46
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、製造例(2A)で製造された例示化合物2を20重量部使用し、更に、前記化合物(A)を20重量部使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A46を得た。
【0212】
実施例47
実施例46で使用した製造例(2A)で製造された例示化合物2に代えて、製造例(2B)で製造された例示化合物2を使用する以外は、実施例46と同様にして電子写真感光体A47を得た。
実施例48
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、製造例(1A)で製造された例示化合物1を40重量部使用し、更に、前記化合物(C)を20重量部使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A48を得た。
【0213】
実施例49
実施例48で使用した製造例(1A)で製造された例示化合物1に代えて、製造例(1B)で製造された例示化合物1を使用する以外は、実施例48と同様にして電子写真感光体A49を得た。
実施例50
実施例41で使用した電荷発生物質製造例1で製造された電荷発生物質1に代えて、電荷発生物質製造例2で製造された電荷発生物質2を使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A50を得た。
【0214】
実施例51
実施例41で使用した電荷発生物質製造例1で製造された電荷発生物質1に代えて、電荷発生物質製造例3で製造された電荷発生物質3を使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A51を得た。
実施例52
実施例41で使用したポリアリレート(BA1)を50重量部使用し、かつ、前記ポリカーボネート(B3)(粘度平均分子量40,000、m:n=9:1)(前記バインダー樹脂(B3))を50重量部使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A52を得た。
【0215】
実施例53
実施例41で使用した、電荷発生物質製造例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニンを使用する代わりに、電荷発生物質4を使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A53を得た。
【0216】
比較例27
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、前記化合物(C)を使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体P27を得た。
【0217】
比較例28
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、前記化合物(E)を使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体P28を得た。
比較例29
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、前記化合物(F)を使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体P29を得た。
【0218】
比較例30
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、前記化合物(G)を使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体P30を得た。
【0219】
比較例31
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、前記化合物(H)を使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体P31を得ようとしたが、感光体上に析出が認められ、特性評価はできなかった。
【0220】
比較例32
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、比較製造例1で製造された電荷輸送物質Xを使用する以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体P32を得た。
【0221】
感光体A1〜A24、P1〜P16と同様に感光体の電気特性の評価を行い、半減露光量およびVLを測定した。結果を表5(環境N/N)、表6(環境L/L)に示す。
【0222】
【表6】

【0223】
表5の結果より、本発明の電子写真感光体は、高感度かつ低VLで、良好な電気特性を示すことがわかった。また、種々のバインダーに対する相溶性にも優れる事がわかった。
【0224】
【表7】

【0225】
表6の結果より、本発明の電子写真感光体は、低温かつ低湿度の環境条件においても、高感度でしかもVLが低く、良好な電気特性を示すことがわかった。また、種々のバインダー樹脂に対する相溶性にも優れる事がわかった。
【0226】
<画像形成試験、および感光体の安定性、耐久性試験>
実施例54
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径30mm、長さ254mmのアルミニウムチューブ上に、実施例47と同様に作製した電荷発生層形成用塗布液および電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層25μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、ヒューレットパッカード社製レーザープリンタ、レーザージェット4(LJ4)に搭載し画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1万枚連続プリントを行ったが、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、また、リークによる画像欠陥も発生していなかった。
【0227】
実施例55
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径20mm、長さ251mmのアルミニウムチューブ上に、実施例48と同様に作製した電荷発生層形成用塗布液および電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、富士ゼロックス社製タンデムカラーレーザープリンタ、C1616に4本搭載し、気温35℃、湿度85%下(H/H環境ということがある)で、画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1000枚連続プリントを行ったが、リーク、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、安定していた。
【0228】
比較例33
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径20mm、長さ251mmのアルミニウムチューブ上に、比較例28と同様に作製した電荷発生層形成用塗布液および電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、富士ゼロックス社製タンデムカラーレーザープリンタ、C1616に4本搭載し、H/H環境にて、画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1000枚連続プリントを行ったところ、カブリによる画像劣化が見られた。
【0229】
実施例56
直径20mm、長さ251mmのアルミニウムチューブ上に、特開2005−99791 実施例13の手法に記載の手法を用いて下引きを作製した後、実施例48と同様に作製した電荷発生層用塗布液および電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、富士ゼロックス社製タンデムカラーレーザープリンタ、C1616に4本搭載し、気温35℃、湿度85%下(H/H環境ということがある)で、画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1000枚連続プリントを行ったが、リーク、ゴースト、カブリ、濃度低下等の画像劣化は見られず、安定していた。
【0230】
<移動度の評価>
得られた感光体A41およびA44の電荷輸送層の移動度を、前記電子写真感光体M1、MP1と同様の方法で、TOF法に基づいて、780nm露光による電荷発生物質励起により、21±0.5℃、2.0×10(V/cm)で、測定した。結果を表7に示す。
【0231】
【表8】

【0232】
実施例57
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、例示化合物15を40重量部使用し、化合物(A)を使用しない以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A57を得た。
【0233】
実施例58
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、例示化合物16を40重量部使用し、化合物(A)を使用しない以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A58を得た。
【0234】
実施例59
実施例41で使用した製造例(3A)で製造された例示化合物3に代えて、例示化合物18を40重量部使用し、化合物(A)を使用しない以外は、実施例41と同様にして電子写真感光体A59を得た。
【0235】
感光体A1〜A24、P1〜P16と同様に感光体の電気特性の評価を行い、環境N/Nの半減露光量およびVLを測定した。結果を表8に示す。
【0236】
【表9】

【0237】
表8の結果より、本発明の電子写真感光体は、高感度かつ低VLで、良好な電気特性を示すことがわかった。
【0238】
実施例60
外径30mm、長さ244mm、肉厚0.75mmのアルミニウム合金よりなるシリンダー上に、特開2005−099791号公報の実施例13に記載の手法を用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように浸漬塗布、乾燥して下引き層を設けた。
【0239】
次に、5重量部の電荷発生物質4をトルエン70重量部と共にサンドグラインドミルにより分散し、分散液を得た。同様にして、下記構造で示される電子輸送物質8重量部をトルエン112重量部と共にサンドグラインドミルにより分散し、分散液を得た。一方で、製造例3Aで作製された得た例示化合物3の化合物を30重量部、実施例1で用いた化合物(A)を30重量部、バインダー樹脂(B1)100重量部、酸化防止剤(チバガイギー社製:商品名IRGANOX1076)8重量部およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部を、トルエン420重量部に溶解し、該溶液と前記の2種の分散液とを、ホモジナイザーにより混合した。このように調製した塗布液を、前記下引き層上に、乾燥後の膜厚が25μmになるように浸漬塗布し、正帯電単層型の電子写真感光体A60を得た。
【0240】
(電子輸送物質)
【化33】

【0241】
<電気特性の評価>
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。その際、感光体の初期表面電位が+900Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.0μJ/cmで露光したときの露光後表面電位(以下、「VL」と略記する)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行なった。
【0242】
その結果、VLは+65Vという十分に低い表面電位を示し、電子写真用の感光体として極めて好適であることがわかった。
【0243】
<画像形成試験>
上記電子写真感光体A60を、正帯電で使用される市販のレーザープリンタHL−5140(ブラザー製)のドラムカートリッジ(DR510)に装着し、ハーフトーン画像を出力し、標準ドラム(DR510純正)を用いた画像との濃度差と黒点発生の有無を確認した。
【0244】
その結果、画像濃度は標準ドラムと同等であり、また、黒点が発生することもなく、画像形成装置として好適に作動することがわかった。
【符号の説明】
【0245】
1. 感光体
2. 帯電装置(帯電ローラ)
3. 露光装置
4. 現像装置
5. 転写装置
6. クリーニング手段
7. 定着手段
41.現像槽
42.アジテータ
43.供給ローラ
44.現像ロータ
45.規制部材
71.上部定着部材
72.下部定着部材
73.加熱装置
T トナー
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体において、該感光層が下記一般式(1)で表される化合物を含有するものであって、一般式(1)のArが、炭素数2以上4以下のアルキル基を置換基として有するものであり、かつ、感光層中にオキシチタニウムフタロシアニンを含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

(一般式(1)において、Ar〜Arは置換基を有してもよいアリール基、ArおよびArはそれぞれ独立に置換基を有してもよいアリーレン基を表し、nおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)のArが、分岐アルキル基を置換基として有するものである請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
該オキシチタニウムフタロシアニンが、CuKα特性X線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)27.3°にピークを有する結晶型オキシチタニウムフタロシアニンであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
該感光層がポリアリレートを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
該感光層が下記構造単位(P−1)を有するポリカーボネートを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。

【請求項6】
該感光層が下記式(r)で表される電荷輸送物質を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化2】

(式(r)中、Rは、互いに異なっていてもよい、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはフェニル基を示す。)
【請求項7】
該感光層が下記式(p)および(q)からなる群から選ばれた少なくとも1つの電荷輸送物質を含有し、一般式(1)で表される化合物重量の、該感光層中の全バインダー樹脂の含有重量に対する比が0.15〜0.9であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化3】

(式(p)および式(q)中、Rは、互いに異なっていてもよい、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはフェニル基を示す。)
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いた画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を有する電子写真カートリッジ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−197694(P2011−197694A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132514(P2011−132514)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【分割の表示】特願2006−263952(P2006−263952)の分割
【原出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】