説明

電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】陽極酸化時の硫酸痕除去を充分に行って封孔処理時に、封孔剤がアルマイト層の微細孔内部迄浸透することが可能な電子写真感光体の製造方法を提供する。
【解決手段】図1で示す洗浄、封孔装置を使用することによって、アルミニウム支持体に陽極酸化膜を形成後、超臨界流体によって洗浄し、続いて酢酸ニッケルやフッ化ニッケル等のニッケル化合物を含有する封孔剤を含有した超臨界流体によって封孔処理を行って前記陽極酸化膜中の細孔を封孔した後に、電荷発生層、電荷輸送層等が積層した電子写真感光体とすることによって、感光体の繰り返し使用による微小黒ポチ等の画像欠陥の発生を抑制可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジに係り、特に、アルミニウム支持体上に形成した陽極酸化膜上に感光層を形成する電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた画像形成装置において、高画質化への要請から、画像の有色部に対応して均一表面電荷を有する電子写真感光体に画像露光して表面電荷を消失させて静電潜像を形成し、その露光部の静電潜像にトナー像を形成し、未露光部にはトナー像を形成しない現像法、所謂、反転現像法が主に用いられている。
【0003】
電子写真感光体には、大きく分けて有機電子写真感光体と無機電子写真感光体とがあるが、高生産性、材料設計の容易性および将来性の観点から、有機光導電性物質による有機電子写真感光体の開発が盛んに行われ、支持体上に電荷発生層、電荷輸送層等が積層されたものが一般的に用いられている。
【0004】
有機電子写真感光体(以下、単に電子写真感光体、感光体とも呼ぶ)を反転現像で用いた場合、白地にトナーが局所的に付着する「黒ポチ」、「地汚れ」といった画像欠陥が生じることが知られている。これは導電性支持体からの電荷注入による表面電荷の局部的中和により発生する。
【0005】
この反転現像時に発生する黒ポチや地汚れを防止するために、特許文献1では、表面を陽極酸化処理(電解処理)して生成したアルマイト層を有するアルニウム支持体に、電荷発生層と電荷輸送層とを順に積層した感光層を形成した電子写真感光体が、特許文献2では、陽極酸化して形成されたアルマイト層を有するアルミニウム支持体と、電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニン及び電荷輸送剤としてスチルベン化合物を含有する感光層とを備える電子写真感光体が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−255679号公報
【特許文献2】特開平11−282183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2とも、電解処理時形成される微細孔を封孔する封孔処理時に、アルマイト層を水で洗浄し、その後酢酸ニッケルやフッ化ニッケル等のニッケル化合物を含有する水溶液を使用するために、アルマイト層の微細孔内に残る陽極酸化時の硫酸痕除去が不十分な場合があり、感光体の繰り返し使用によって微小黒ポチ等の画像欠陥が発生するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、陽極酸化時の硫酸痕除去を充分に行って封孔処理時に、封孔剤がアルマイト層の微細孔内部迄浸透することが可能な電子写真感光体の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、他の目的としては、感光体の繰り返し使用によって微小黒ポチ等の画像欠陥の発生を抑制することが可能な電子写真感光体、これを備えた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、アルミニウム支持体上に厚さが2μm〜10μmの陽極酸化膜を形成後、当該陽極酸化膜に封孔処理を行い、しかる後に前記陽極酸化膜上に感光層を形成する電子写真感光体の製造方法において、
前記封孔処理は、当該アルミニウム支持体に陽極酸化膜を形成後、封孔剤を含有した超臨界流体及び亜臨界流体の少なくとも一方の流体中に前記陽極酸化膜を浸漬させて、30℃〜90℃の温度範囲で前記陽極酸化膜中の細孔を封孔することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の電子写真感光体の製造方法において、
前記封孔剤がニッケル化合物であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の電子写真感光体の製造方法において、
前記超臨界流体又は亜臨界流体が二酸化炭素であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明は、アルミニウム支持体上の陽極酸化膜上に感光層を形成した電子写真感光体において、
前記電子写真感光体は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の電子写真感光体の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明は、表面に静電潜像を形成する電子写真感光体と、前記静電潜像にトナーを供給して当該静電潜像をトナー像化する現像装置を備えた画像形成装置において、
前記電子写真感光体は、請求項4記載の電子写真感光体であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項5記載の画像形成装置において、
前記画像形成装置は、複数の現像装置と当該現像装置と対をなす複数の電子写真感光体を有し、それぞれの前記現像装置は、それぞれ異なる色のトナーを収容して、それぞれのトナーを対応する前記電子写真感光体に供給してそれぞれの電子写真感光体表面に異なる色のトナー像を形成し、前記対をなす現像装置と電子写真感光体は、トナー像が転写される転写体の移送方向に沿って配設されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7の発明は、電子写真感光体と、現像装置、クリーニング装置及び帯電装置の少なくとも1種とを一体に構成したプロセスカートリッジにおいて、
前記電子写真感光体は、請求項4記載の電子写真感光体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、封孔処理は、当該アルミニウム支持体に陽極酸化膜を形成後、封孔剤を含有した超臨界流体及び亜臨界流体の少なくとも一方の流体中に前記陽極酸化膜を浸漬させて、30℃〜90℃の温度範囲で前記陽極酸化膜中の細孔を封孔することによって、陽極酸化時の硫酸痕除去を充分に行って封孔処理時に、封孔剤がアルマイト層の微細孔内部迄浸透することが可能な電子写真感光体の製造方法を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、電子写真感光体は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の電子写真感光体の製造方法によって製造された電子写真感光体とすることによって、感光体の繰り返し使用によって、正規現像、反転現像のいずれにおいても微小黒ポチ等の画像欠陥の発生を抑制することが可能な電子写真感光体、これを備えた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者らは、アルミニウム支持体上の陽極酸化膜上に感光層を形成した電子写真感光体における「黒ポチ」、「地汚れ」といった画像欠陥について検討した結果、アルマイト層の微細孔内に残る陽極酸化時の硫酸痕除去が不十分な場合があり、感光体の繰り返し使用によって微小黒ポチ等の画像欠陥が発生することを究明した。
【0020】
この究明に基づいてさらなる検討を行った結果、アルミニウム支持体に陽極酸化膜を形成後、酢酸ニッケルやフッ化ニッケル等のニッケル化合物(封孔剤)を含有した超臨界流体によって封孔処理を行って前記陽極酸化膜中の細孔を封孔した後に、電荷発生層、電荷輸送層等が積層した電子写真感光体とすることによって、感光体の繰り返し使用による微小黒ポチ等の画像欠陥の発生を抑制可能となることを知り、本発明を完成するに至った。
【0021】
先ず、本発明によるアルミニウム支持体上に陽極酸化膜を形成したものを洗浄、封孔処理することについて説明する。
【0022】
図1は、本発明によるの一実施形態に係るアルミニウム支持体上に陽極酸化膜(アルマイト層)を形成したものの洗浄、封孔処理に用いる超臨界流体を使用した洗浄、封孔装置の概略構成を示した図である。
【0023】
先ず、本実施形態に係る図1で示す洗浄、封孔装置を使用することによって、後述する導電性アルミニウム支持体を陽極として酸性溶液中で電解処理をする所謂陽極酸化処理により陽極酸化膜(アルマイト層)を形成したアルミニウム支持体に残存する硫酸痕等の酸性痕を洗浄することについて説明する。
【0024】
図1に示すように、陽極酸化処理によってエッチング処理した後のアルミニウム支持体61を耐圧容器62に配設し、弁68、3方弁70、74を調節し、ポンプ69によりタンク67から超臨界流体または亜臨界流体を耐圧容器62中に導入して、適切にアルミニウム支持体61を洗浄することが可能となる。そして、このような洗浄によって、陽極酸化によって形成された酸化アルミニウムからなるアルマイト層を設けたアルミニウム支持体61と感光層の接着性を向上させることが出来る。
【0025】
このため本発明では、陽極酸化処理によりアルマイト層を形成したアルミニウム支持体(ドラム)61を、前述と同様にして耐圧容器62に配設し、弁68、3方弁70、74を調節し、ポンプ69によりタンク67から超臨界流体または亜臨界流体を耐圧容器62中に導入して、アルミニウム支持体61を洗浄する。
続いて、分散槽65から封孔剤を分散した超臨界流体または亜臨界流体75を弁71、3方弁74を開き、ポンプ72により耐圧容器62中に導入し、アルミニウム支持体61を封孔剤分散超臨界流体または封孔剤分散亜超臨界流体に浸漬する。分散槽65は攪拌機66を備え、封孔剤分散超臨界流体または亜臨界流体を分散槽65内で攪拌することで、封孔剤を均一に分散させる。尚、加熱器73は封孔剤を分散した超臨界流体または亜臨界流体を30〜90℃に加熱して封孔処理を行う。封孔処理後、ポンプ72を逆転させて塗工液(封孔剤を分散した超臨界流体または亜臨界流体)を徐々に耐圧容器62の外に排出し、分散槽65に戻す事によりアルミニウム支持体表面の陽極酸化膜を封孔剤で封孔したアルマイト層を形成する。
【0026】
アルマイト層は陽極酸化により形成するが、陽極酸化処理する前に、酸、アルカリ、有機溶剤、界面活性剤などの各種脱脂洗浄方法によって、脱脂処理を行なうことが望ましい。さらにその後、アルカリ、酸、弗化物等で表面エッチング処理を行なうことが好ましい。
【0027】
陽極酸化処理は、通常、例えば、クロム酸、硫酸、しゅう酸、ほう酸、スルファミン酸などの酸性浴中で、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成された導電性アルミニウム支持体を陽極にして電解処理を行ない、支持体表面にアルマイト層を形成する。この場合、直流交流いずれでもよいが、電圧は2〜160V、電流密度は0.1A/dm〜0.7A/dm、液温10〜40℃が好ましい。陽極酸化膜を封孔処理する事により形成するアルマイト層の膜厚は2〜10μmが好ましく、5〜8μmであることがより好ましい。2μm未満では感光体の繰返使用時に帯電性の低下、局部的な地肌汚れ発生の懸念、また10μmを超えると繰返使用時に露光後電位の上昇が著しい。
【0028】
図2は陽極酸化処理により形成されたアルマイト層の構成を示す斜視概略図であり、図3は陽極酸化処理により形成されたアルマイト層の構成を示す断面概略図である。陽極酸化処理を施されたアルミニウム支持体15は、その表面にアルマイト層16が形成される。そしてアルマイト層16は、図2及び図3示すように、アルミニウム支持体15上に均一に形成された薄いバリヤー層16aを有し、さらにその上層に蜂の巣のような細孔16cを有する六角柱のセル16dの集合体からなる多孔質層16bを有している。無数の微細孔16cは多孔質膜のために封孔処理を施すことが好ましい。
【0029】
封孔処理は、前述した図1の装置を用いて行う。封孔剤としては、酢酸ニッケル、弗化ニッケル等のニッケル化合物が挙げられる。これらの材料は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0030】
本発明で用いる超臨界流体としては、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上、かつ、臨界圧力以上の状態にある流体である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。また、前記亜臨界流体としては、前記臨界点近傍の温度・圧力領域において高圧液体として存在する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。これらの流体の一例としては、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、メタノール、エタノール、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、ベンゼン、クロロトリフロロメタン、ジメチルエーテルなどが好適に挙げられる。これらの超臨界流体及び亜臨界流体は単独でも2種類以上混合して併用する事も出来る。これらの中でも、臨界温度が常温に近く、取扱い性に優れる点で、二酸化炭素が特に好ましい。また、超臨界流体及び亜臨界流体に封孔剤の溶解を助長する有機溶媒(エントレーナー)を混合することもできる。エントレーナーとしてはヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒など、特に制限はない。
【0031】
臨界温度が30℃〜40℃と常温に近い超臨界流体、例えば超臨界二酸化炭素や超臨界一酸化炭素は、20℃〜200℃の温度、及び5MPa〜70MPaの圧力で使用するのが望ましく、30℃〜90℃、7MPa〜60MPaがより好ましい。20℃未満の温度や5MPa未満の圧力では、二酸化炭素や亜酸化窒素は超臨界状態になりにくい事から好ましくない。150℃を超える温度では、感光体の構成材料を溶解する恐れがあり、また、70MPaを超える圧力では流体ポンプ等を具備する装置の運転に支障を生ずる恐れがあるため好ましくない。ちなみに、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.53MPaで、一酸化炭素の臨界温度は37℃、臨界圧力は7.26MPaである。
【0032】
本発明による感光層は、図4に示すように、アルミニウム支持体15上に形成され、封孔処理されたアルマイト層16上に電荷発生層17、電荷輸送層18を積層した積層構成からなる。また必要に応じて電荷輸送層18上に保護層を設けたり、電荷発生層17とアルマイト層16の間に下引層を介在させたり、電荷発生層17と電荷輸送層18との間に中間層を介在させることもできる。
【0033】
アルミニウム支持体としては、不純物として鉄、銅を併せて0.3wt%以上含有するアルミニウム、例えばJIS3003、5052、6063等の材質からなるアルミニウムが用いられる。これらのアルミニウムはJIS 1070等の不純物の少ないものに比べて鉄、銅を併せて0.3wt%以上含有することにより同一熱処理条件において機械的強度が向上しており、薄膜軽量化が可能である。
【0034】
アルミニウム支持体の寸法精度としては全フレ量を0.05mm未満とすることが好ましい。全フレ量は感光体と現像手段とのギャップ精度に影響し、全フレ量が0.05mmを越えるとギャップ精度0.1mm未満を維持することが難しい。ギャップ精度が0.1mm以上では偏摩耗による長手方向でのトナー濃度バラツキが起こる場合が有る。アルミニウム支持体の表面粗さRzは、加工性、支持体の反射によるモアレ等を考慮すると0.05μm〜1.5μmが好ましい。アルマイト層を設けることにより表面が荒れるため、鏡面に近い粗さでもモアレは発生しにくい。
【0035】
電荷発生層は電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。 無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物等が挙げられる。
【0036】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。アゾ顔料としては、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、また、アゾ顔料に加えて金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などを1種以上含有しても良い。
【0037】
これら有機系電荷発生材料の中でもチタニルフタロシアニン、特にCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの最大回折ピークを27.2±0.2゜に有するチタニルフタロシアニンが高感度である。特にプロセス速度が1m/秒を越える高速領域ではチタニルフタロシアニンが好適である。
【0038】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、必要に応じて電荷輸送物質を添加してもよい。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。電荷発生層の電荷発生材料と樹脂との比率は重量比で1/1〜10/1であることにより感光層と下引層との接着性向上、露光後電位の安定化させることができる。
【0039】
電荷発生層を形成する方法には、溶液分散系からのキャスティング法が主に用いられる。キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン、メチルエチルケトン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などを用いて行なうことができる。以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0040】
電荷輸送層は帯電電荷を保持させ、かつ露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。さらに電荷輸送層は帯電電荷を保持させる目的達成のために電気抵抗が高いことが要求され、また保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さくかつ電荷移動性が良いことが要求される。これらの要件を満足させるための電荷輸送層は、電荷輸送物質、バインダー樹脂を、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジメトキシメタンなどの環状エーテル系溶剤に溶解した塗工液を塗布して形成される。必要により電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。環境面からはジクロロメタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、トリクロロエタン、トリクロロメタンなどの塩素系溶媒が敬遠されている。これらの環状エーテル系溶剤を用いることにより感光層と支持体又は下引層との接着性を向上させることができる。電荷輸送層中の残留環状エーテル系溶剤量は20ppm〜5000ppmが好ましい。20ppm未満ではアルミニウム支持体、又は下引き層との接着性低下、5000ppmを越えると感光体露光後電位の上昇の不具合が発生してしまう。
【0041】
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、ハイドロキノン系以外のモノフェノール系化合物、高分子フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類等の酸化防止剤も併用して使用しても良い。パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類及び有機隣化合物の具体例を例示すると次の通りである。
【0042】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−tーブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0043】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。電荷輸送層の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
【0044】
電荷輸送層に併用できるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプ)、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダーは、単独または2種以上の混合物として用いることができる。上記バインダー樹脂を含有する電荷輸送層には、バインダー樹脂を可塑化する可塑剤、酸化防止剤等を混入させることができる。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ビスベンジルベンゼン誘導体などの可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0045】
酸化防止剤としては、例えば、以下のモノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、高分子フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類等が好適である。
【0046】
(モノフェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
【0047】
(ビスフェノール系化合物)
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0048】
(高分子フェノール系化合物)
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
【0049】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0050】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0051】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0052】
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0053】
電荷輸送層塗工液中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
電荷輸送層上に保護層を設けても良い。
【0054】
保護層は結着樹脂中に金属、又は金属酸化物の微粒子を分散した層である。結着樹脂としては可視、赤外光に対して透明で電気絶縁性、機械的強度、接着性に優れたものが望ましい。保護層の結着樹脂としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。金属酸化物としては酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。
【0055】
次に、図5〜図8を用いて本発明による一実施形態の電子写真画像形成装置について詳しく説明する。図5は、本発明の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための画像形成部の概略構成を示す概略断面図、図6は、図5における感光体と帯電ローラの関係を示す斜視図、図7は、本発明によるタンデム型画像形成装置の概略構成を示す概略断面図、図8は、本発明による一実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略断面図である。
【0056】
図5によって、本発明による一実施形態の画像形成装置の画像形成部について説明する。この実施形態においては、画像形成装置の画像形成部は、ドラム状感光体1を中心に、帯電ローラ2、現像装置ユニット4、転写前チャージャ26、転写チャージャ29、分離チャージャ30、クリーニング前チャージャ32、ファーブラシ33、クリーニングブレード34及び除電ランプ22を備えている。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電部材、転写前チャージャ26、転写チャージャ29、分離チャージャ30、クリーニング前チャージャ32には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電部材あるいはブラシ状の帯電部材等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。本実施形態においては、帯電部材図6で示すような帯電ローラ2を使用している。
【0057】
帯電部材は、コロナ帯電等の非接触帯電方式やローラあるいはブラシを用いた帯電部材による接触帯電方式が一般的であり、本発明においてはいずれも有効に使用することが可能である。特に、帯電ローラは、コロトロンやスコロトロン等に比べてオゾンの発生量を大幅に低減することが可能であり、感光体の繰り返し使用時における安定性や画質劣化防止に有効である。しかし、感光体と帯電ローラとが接触していることにより、繰り返し使用によって帯電ローラが汚染され、それが感光体に影響を及ぼし異常画像の発生や耐摩耗性の低下等を助長する原因となっていた。特に、耐摩耗性の高い感光体を用いる場合、表面の摩耗によるリフェイスがしにくいことから、帯電ローラの汚染を軽減させる必要があった。
【0058】
そこで、図6のごとく帯電ローラ2の両端の感光体1の非画像形成領域1aに対向する位置にギャップ形成部材2aを取り付け、ギャヤップ形成部材2aを感光体1の表面に当接させることによって、感光体1に対して所定長のギャップG(図5参照)を形成するようにしている。そして、このギャップG介して、帯電ローラ2を感光体1に近接配置させることによって、汚染物質が帯電ローラ2に付着しにくく、あるいは除去しやすくなり、それらの影響を軽減することが可能である。この場合、感光体1と帯電ローラ2とのギャップGは小さい方が好ましく、100μm以下、より好ましくは50μm以下である。しかし、帯電ローラ2を非接触とすることによって、放電が不均一になり、感光体の帯電が不安定になる場合がある。その場合に、直流成分に交流成分を重畳させることによって帯電の安定性を維持し、これによりオゾンの影響、帯電ローラの汚染の影響及び帯電性の影響を同時に軽減することが可能となる。
【0059】
画像露光L、除電ランプ22等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。これらの光源等は、図5に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。但し、除電工程における感光体への露光は、感光体に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。従って、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印可することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
【0060】
感光体1の表面に帯電ローラ2によって正(負)帯電を施し、帯電された感光体1の表面に画像情報に応じた露光Lを照射すると、感光体1の表面上には画像情報に応じた正(負)の静電潜像が形成される。この静電潜像に、現像装置4から帯電ローラ2によって帯電された感光体1の表面の帯電と逆極性の負(正)極性のトナー(検電微粒子)を供給して、静電潜像をトナー像化して現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0061】
転写手段には、一般に、前述の帯電部材を使用することができるが、図5に示されるように感光体1上のトナー像を転写紙P上に効果的に転写させるためのトナーと逆極性の電圧を印加する転写チャージャ29と転写紙Pを感光体1から分離するために電圧を印加する分離チャージャ30を併用したものが効果的である。
【0062】
また、本実施形態においては、このような転写手段を用いて、感光体1からトナー像を転写紙Pに直接転写しているが、本発明においては、感光体上のトナー像を一度中間転写体に転写し、その後中間転写体から紙に転写する中間転写方式を採用した場合の方が、感光体の高耐久化あるいは高画質化においてより好ましい。
【0063】
感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質には、転写紙Pから発生する紙粉もその一つであり、それらが感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。従って、上記の理由により感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
【0064】
また、中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。しかし、中間転写方式は、一枚のフルカラー画像を得るのに4回のスキャンが必要となるため、感光体の耐久性が大きな問題となっていた。本発明における感光体は、ドラムヒーターなしでも画像ボケが発生しにくいことから中間転写方式の画像形成装置に組み合わせて用いることが容易であり、特に有効かつ有用である。中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
【0065】
現像装置ユニット4により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙Pに転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ33あるいはブレード34によって感光体1から除去される。このクリーニング工程は、クリーニングブラシ33だけで行なわれたり、ブレード34と併用して行なわれることもあり、クリーニングブラシ33にはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。 クリーニングは、前述のとおり転写後に感光体1上に残ったトナー等を除く工程であるが、上記のブレード34あるいはブラシ33等によって感光体1が繰り返し擦られることにより、感光体1の摩耗が促進されたり、傷が入ったりすることによって異常画像が発生することがある。また、クリーニング不良によって感光体1の表面が汚染されたりすると異常画像の発生の原因となるだけでなく、感光体1の寿命を大幅に低減させることにつながる。特に、耐摩耗性の向上のために顔料を含有させた層を最表面に形成された感光体の場合には、感光体表面に付着した汚染物質が除去されにくいことから、フィルミングや異常画像の発生を助長することになる。従って、感光体のクリーニング性を高めることは感光体の高耐久化及び高画質化に対し非常に有効である。
【0066】
感光体のクリーニング性を高める手段としては、感光体表面の摩擦係数を低減させる方法が知られている。感光体表面の摩擦係数を低減させる方法としては、各種の潤滑性物質を感光体表面に含有させる方法と、外部より感光体表面に潤滑性物質を供給させる方法とに分類される。前者はエンジン廻りのレイアウトの自由度が高いため、小径感光体には有利であるが、繰り返し使用によって摩擦係数は顕著に増加するため、その持続性に課題が残されている。一方、後者は潤滑性物質を供給する部品を備える必要があるが、摩擦係数の安定性は高いことから感光体の高耐久化に対しては有効である。その中で、潤滑性物質を現像剤に含有させることによって現像時に感光体に付着させる方法は、エンジン廻りのレイアウトにも制約を受けずに、感光体表面の摩擦係数低減効果の持続性も高いため、感光体の高耐久化及び高画質化に対しては非常に有効な手段である。
【0067】
これらの潤滑性物質としては、シリコーンオイル、フッ素オイル等の潤滑性液体、PTFE、PFA、PVDF等の各種フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコングリース、フッ素グリース、パラフィンワックス、脂肪酸エステル類、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑性液体や固体、粉末等が挙げられるが、特に現像剤に混合させる場合には粉末状である必要があり、特にステアリン酸亜鉛は悪影響が少なく、極めて有効に使用することができる。ステアリン酸亜鉛粉末をトナーに含有させる場合には、それらのバランスやトナーに与える影響を考慮する必要があり、トナーに対して0.01〜0.5重量%が好ましく、0.1〜0.3重量%がより好ましい。
【0068】
本発明による感光体は、繰り返し使用による地汚れや残留電位上昇の抑制を実現し耐久性に優れた感光体であるので、小径感光体に適用できる。従って、上記の感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像装置及びこれらの現像装置に対して対応した複数の感光体を具備し、それによって並列処理を行なう、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に極めて有効に使用される。上記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナーをそれぞれ収容する複数の現像装置とこれらの現像装置と対をなす複数の感光体を備え、これらの対をなす現像装置と感光体を中間転写体や転写紙等の転写体の移送方向に配置している。そして、各現像装置からそれぞれの色のトナーを、対をなす感光体に供給してそれぞれの感光体上にそれぞれの色のトナー像を形成し、これらのトナー像を順次重ねて転写体に転写することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べ極めて高速なフルカラー印刷を可能としている。
【0069】
図7は、本発明による一実施形態のタンデム方式のフルカラー電子写真画像形成装置を説明するための概略断面図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。図7において、符号1C,1M,1Y,1Kは、ドラム状の感光体であり、感光体は本発明による感光体である。この感光体1C,1M,1Y,1Kは、図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電ローラ2C,2M,2Y,2K、現像装置4C,4M,4Y,4K、クリーニング装置5C,5M,5Y,5Kが配置されている。帯電ローラ2C,2M,2Y,2Kは、感光体1C,1M,1Y,1Kのそれぞれの表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。
【0070】
この帯電部材2C,2M,2Y,2Kと現像装置4C,4M,4Y,4Kの間の感光体に、図示しない露光部材からのレーザー光LC,LM,LY,LKが照射され、感光体1C,1M,1Y,1Kにそれぞれの色画像に対応する静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体1C,1M,1Y,1Kを中心とした4つの画像形成要素6C,6M,6Y,6Kが、転写体搬送手段である中間転写搬送ベルト10に沿って並置されている。中間転写搬送ベルト10は、各画像形成ユニット6C,6M,6Y,6Kの現像装置4C,4M,4Y,4Kとクリーニング部材5C,5M,5Y,5Kの間で感光体1C,1M,1Y,1Kに当接しており、中間転写搬送ベルト10の裏面には転写バイアスを印加するための転写ブラシ11C,11M,11Y,11Kが配置されている。各画像形成要素6C,6M,6Y,6Kは、現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0071】
図7に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素6C,6M,6Y,6Kにおいて、感光体1C,1M,1Y,1Kが矢印方向(感光体と連れ周り方向)に回転する帯電ローラ2C,2M,2Y,2Kにより帯電され、次に感光体の外側に配置された露光部(図示しない)でレーザー光LC,LM,LY,LKにより、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0072】
次に、現像装置4C,4M,4Y,4Kによって感光体1C,1M,1Y,1K上に形成されたそれぞれの色に対応する静電潜像に対してそれぞれの色のトナーを供給して当該静電潜像を現像してトナー像が形成される。現像装置4C,4M,4Y,4Kは、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像装置で、4つの感光体1C,1M,1Y,1K上で作られた各色のトナー像は転写紙P上で重ねられる。転写紙Pは、給紙コロ8によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ9で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて中間転写搬送ベルト10に送られる。中間転写搬送ベルト10上に保持された転写紙Pは搬送されて、各感光体1C,1M,1Y,1Kとの当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行なわれる。感光体上のトナー像は、転写ブラシ11C,11M,11Y,11Kに印加された転写バイアスと感光体1C,1M,1Y,1Kとの電位差から形成される電界により、転写紙P上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた転写紙Pは、定着装置12に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体1C,1M,1Y,1K上に残った残留トナーは、クリーニング装置5C,5M,5Y,5Kで回収される。
【0073】
なお、図7の例では、画像形成要素6C,6M,6Y,6Kは転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素6C,6M,6Yが停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。更に、図7において帯電ローラ2C,2M,2Y,2Kは感光体1C,1M,1Y,1Kと当接しているが、図6に示したような帯電機構にすることにより、両者の間に適当なギャップ(10〜
200μm程度)を設けてやることにより、両者の摩耗量が低減できると共に、帯電部材へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
【0074】
以上に示すような画像形成装置は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、各々の画像形成要素6C,6M,6Y,6Kは、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。
【0075】
上記のタンデム方式による画像形成装置は、複数のトナー像を一度に転写できるため高速フルカラー印刷が実現される。しかし、感光体が少なくとも4本を必要とすることから、装置の大型化が避けられず、また使用されるトナー量によっては、各々の感光体の摩耗量に差が生じ、それによって色の再現性が低下したり、異常画像が発生したりするなど多くの課題を有していた。それに対し、本発明による感光体は、高耐久化が実現されたため小径感光体でも適用可能であり、かつ残留電位上昇や地汚れ等の影響が低減されたことから、4本の感光体の使用量が異なっていても、残留電位や感度の繰り返し使用経時における差が小さく、長期繰り返し使用しても色再現性に優れたフルカラー画像を得ることが可能となる。
【0076】
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態でも可能である。以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図8に示すものが挙げられる。即ち、感光体1を中心として、ハウジング4b内に収容したトナーを攪拌、搬送する搬送スクリュー4cと搬送スクリュー4cで攪拌、搬送されたトナーを汲み上げて感光体1に対してトナーを供給する現像ローラ4aを有する現像装置4、帯電ローラ2及び感光体1の表面に残存するトナーを削り落とすクリーニングブレード34を有するクリーニング装置5を感光体1と一体に構成されている。そして、これらの構成部品を一体として画像形成装置から着脱自在となして、必要に応じて、これらの構成部品の修理、点検、交換等を各画像形成要素6C,6M,6Y,6Kから外すた状態で行うことを可能としたものである。この場合に、プロセスカートリッジとしては、常に現像装置4、帯電ローラ2及びクリーニング装置5を感光体1と一体とする必要はなく、必要に応じて、現像装置ユニット4、帯電ローラ2及びクリーニング装置5の少なくと1つの構成部品と感光体1とを一体にすることが可能であるが、本発明に置いては、感光体1とその上にトナー像を形成する少なくとも現像装置ユニット4と感光体1とを一体にしたプロセスカートリッジが好適である。なお、図8中、符号19は、レジストローラ19によって搬送される転写紙Pに対して、感光体1上に形成されたトナー像を転写するための転写ローラである。
【実施例】
【0077】
次に、本発明による感光体の具体的な構成および製法について、実施例に基づいて説明する。なお、下記実施例における「部」は重量部を意味する。
【0078】
〔実施例1〕
直径(φ)30mm×長さ(L)256mm、厚さ0.75mm、表面粗さRz:0.8μm、全フレ量0.03mmの円筒状アルミニウム支持体表面を脱脂洗浄し、以下の浴組成及び条件中で5分間浸漬しエッチング処理を行った。
【0079】
水酸化ナトリウム 5%
弗化ソーダ 2%
蒸留水 残部
浴温 60℃
【0080】
その後、水洗いを繰り返した。次に、15%の硫酸電解液(溶存アルミニウム濃度5g/l)を使用し、浴温21℃、1.5A/dmの直流電流密度で陽極酸化を行った。
【0081】
次に、図1に示す洗浄、封孔装置を用いて、35℃、8MPaの超臨界二酸化炭素流体中に15分間浸漬、接触させ洗浄を行った。続いて1L(1リットル)に対して酢酸ニッケル5g、ほう酸5gを含有した温度80℃、15MPaの超臨界二酸化炭素流体中に1時間浸漬、接触させ、陽極酸化膜の微細孔を封孔した。その後、温度80℃を保持したまま、圧力を10MPaまで低下させ、この圧力を維持したまま加圧ポンプと排圧弁を使用して、流量8L/minで30分間、二酸化炭素流体を流すことによって、陽極酸化膜の微細孔に注入されなかった封孔剤を耐圧セルから除去した。除去後、温度・圧力を徐々に大気圧雰囲気まで低下させることによって、アルミニウム支持体表面の陽極酸化膜を酢酸ニッケルで封孔したアルマイト層を形成した。封孔処理後,アルマイト層の厚さは5.5μmであった。
【0082】
感光層の形成に先立ち、弁68及び3方弁70、74を調節し、ポンプ69によりタンク67から35℃、8MPaの超臨界二酸化炭素流体を耐圧容器62中に導入して、アルミニウム支持体1を30分間洗浄した。
【0083】
このようにして、表面に封孔処理されたアルマイト層上に次のようにして電荷発生層および電荷輸送層を形成して電子写真感光体を調製した。
【0084】
[電荷発生層の形成]
化学式(1)の電荷発生物質2部、固形分濃度2wt%のポリビニルブチラール樹脂(BX−1;積水化学製)/メチルエチルケトン溶液60部からなる混合物をボールミルポットに取り直径2mmのYTZボールを使用し24時間ボールミリングして電荷発生層塗布液を調整した。この塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で20分間乾燥し、厚さ0.1μmの電荷発生層を形成した。なお、化学式(1)の電荷発生物質はX線回折測定で27.2°にピークを有していた。
【0085】
【化1】

【0086】
[電荷輸送層の形成]
次いで、下記組成により電荷輸送層用塗工液を調製し、この塗工液を用いて上記形成した電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃で25分間乾燥し、厚さ32μmの電荷輸送層を形成した。
【0087】
<電荷輸送層用塗工液の組成>
下記化学式(2)の電荷輸送物質(リコー社製) 7部
ポリカーボネート樹脂(TS−2050:帝人化成社製) 10部
シリコーンオイル(KF−50:信越化学社製) 0.002部
テトラヒドロフラン(関東化学社製) 77.4部
【0088】
【化2】

【0089】
〔実施例2〕
実施例1において封孔処理後のアルマイト層の膜厚を8μmに変えた以外は実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作成した。
【0090】
〔実施例3〕
実施例1において封孔処理に用いた酢酸ニッケルを弗化ニッケルに変えた以外は実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作成した。
【0091】
〔実施例4〕
アルミニウム支持体上に実施例1と全く同様にして陽極酸化、水洗を行った後、実施例1と同様に超臨界二酸化炭素中で封孔処理を行った。その後、再び十分な水洗を行ない自然乾燥させ、膜厚5.5μmのアルマイト層を形成した。続いて電荷発生層、電荷輸送層を実施例1と全く同様にして設け電子写真感光体を形成した。
【0092】
〔比較例1〕
実施例1においてアルマイト層の膜厚を12μmに変えた以外は実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作成した。
【0093】
〔比較例2〕
実施例1においてアルマイト層の膜厚を1.5μmにした以外は実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作成した。
【0094】
〔比較例3〕
実施例1において封孔処理時の温度を120゜Cに変えた以外は実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作成した。
【0095】
〔比較例4〕
実施例1において封孔処理を行わなかった以外は実施例1と全く同様にして感光層を設け電子写真感光体を作成した。
【0096】
〔比較例5〕
実施例1と全く同一にしてエッチング処理、陽極酸化、超臨界二酸化炭素による洗浄を行った後、酢酸ニッケル5g、ほう酸5gを蒸留水1リットルに溶解し浴温100℃に保った中に25分間浸漬して封孔処理を行った。その後、超臨界二酸化炭素による洗浄を行ない5.5μmのアルマイト層を形成した。続いて実施例1と全く同様にして電荷発生層、電荷輸送層を設け電子写真感光体を作成した。
【0097】
〔比較例5〕
実施例1と全く同一にしてエッチング処理、陽極酸化、超臨界二酸化炭素による洗浄を行った後、アルマイト層を設けないで電荷発生層、電荷輸送層を実施例1と全く同様にして設け電子写真感光体を形成した。
【0098】
上記実施例及び比較例で作成された電子写真感光体を用いて画像形成を行った。画像形成で使用されるトナー、キャリア及び現像剤は、次のようにして作製した。
【0099】
〔トナーの作製〕
(ポリエステル樹脂の合成例)
攪拌装置、温度計、窒素導入口、流下式コンデンサー、冷却管付き4つ口セパラブルフラスコに、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン740g、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェ
ニル)プロパン300g、テレフタル酸ジメチル466g、イソドデセニル無水コハク酸80g、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリn−ブチル114gをエステル化触媒とともに加えた。窒素雰囲気下で前半210℃まで常圧昇温し、後半210℃減圧にて撹拌しつつ反応させた。酸価2.3KOHmg/g、水酸基価28.0 KOHmg/g、軟化点106℃、Tg62℃のポリエステル樹脂を得た。
【0100】
(母体トナーの製造例)
組成
結着樹脂 :ポリエステル樹脂 85.6部
着色剤 :カーボンブラック 8.6部
帯電制御剤 :サリチル酸の亜鉛化合物 0.9部
離型剤 :カルナバロウ 4.3部
上記組成の原材料を下記1〜4に記載の手順に従い母体トナーを作製し体積平均粒径:6.8μmのブラック母体トナーを得た。
手順1.上記組成の原材料を、ヘンシェルミキサーにより混合する。
手順2.120℃に設定したブスコニーダー(ブス社製)によって溶融混練する。
手順3.混練物を冷却後、ターボミル(ターボ工業社製)を用いた粉砕機によって微粉砕する。
手順4.風力分級機を用いて、分級する。
【0101】
(製品トナーの製造例)
母体トナーの製造例で得られた母体トナーに対し、シリカ(AEROSILTT600:日本アエロジル社製)を1.5重量%、酸化チタン(MT−150M:テイカ社製)を0.7重量%添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)により1000rpmで10分間混合して、目開き50μmの篩を通過させ電子写真用トナーを得た。
【0102】
(キャリアの製造例)
シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニングシリコーン社製:SR−2411)100gにトルエン100gを加えてコート液とした。この溶液をキャリア芯材(平均粒径60μmCu−Znフェライト)1kgに流動床コーティング法によりスプレー塗布後、約5分間乾燥させ、200℃にて1時間加熱し、冷却後篩にて篩い、本発明のキャリアを製造した。 キャリアの平均粒径を変更してコーティングするときは、膜厚を一定にするために表面積換算してシリコーン樹脂量を調整した。
【0103】
(現像剤の製造例)
上記電子写真用トナー4部および上記キャリア96部をターブラーミキサーにて10分混合して現像剤を作成した。
【0104】
この様にして作成した電子写真感光体4本を反転現像方式のリコー製デジタル式カラープリンターIPSIO SP C411に取り付けた。現像ローラをはずして電位計のプローブを取り付けたユニットで初期の帯電電位VD、露光後電位VLを測定した。
【0105】
次に、現像ローラを取り付け、A4縦サイズで3万枚の繰返印字を行い画像品質(微小黒ポチ、細線の再現性)の評価、帯電電位VD、露光後電位VLを測定した。続いて30℃、90%RHの環境下でさらに1万枚連続印字を行なった後、画像品質(微小黒ポチ、細線の再現性)、帯電電位VD、露光後電位VLの測定を行った。
【0106】
これらの結果を図9に示す。なお、細線の再現性は1ドッド斜めラインを印字させてその再現性を評価した。細線の再現性の評価基準を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
また、黒ポチの評価はカラーイメージプロセッサーSPICCA(日本アビオニクス社製)を用いて黒ポチの大きさと個数を測定し、1cmあたりでの直径0.05mm以上の黒ポチ数により判定した。黒ポチ評価の判定基準を表2に示す。なお、判定における◎、○、△は実用上特に問題のないことを、×の場合は実用に適さないことを意味する。
【0109】
【表2】

【0110】
図9に示す評価結果から明らかなように、比較例6で示すアルマイト層を形成しないで電荷発生層及び電荷輸送層を形成した場合には、初期の段階で微小黒ポチが発生して実用に耐えず、比較例4で示す封孔処理なしの場合は、3万枚の印字後微小黒ポチが多く発生して実用に耐えなくなる。また、比較例5で示す封孔剤を蒸留水で溶解して封孔処理を行った場合には、3万枚の印字後微小黒ポチが初期の場合に比して低下し、さらに30℃90%RH下で1万枚印字後には、細線再現性も低下する。
【0111】
これに対し、本発明による実施例1〜3のものでは、3万枚の印字後の微小黒ポチ特性及び30℃90%RH下で1万枚印字後の黒ポチ特性並びに細線再現性とも良好な特性を示すことが明らかである。しかし、実施例4で示す超臨界二酸化炭素での洗浄、超臨界二酸化炭素中で封孔処理後水洗を行った場合には、30℃90%RH下で1万枚印字後に微小黒ポチが僅かに発生するのが認められるが、比較例4,5に比べ良好な黒ポチ特性を示す。この実施例4の結果から実施例1〜3と同様に超臨界二酸化炭素での洗浄、超臨界二酸化炭素中で封孔処理後も超臨界二酸化炭素で洗浄する方がより好適であることが明らかである。
【0112】
また、比較例1、2に示すように、アルマイト層の厚みが12μm、1.5μmと2μm〜10μmの範囲を逸脱する場合には、30℃90%RH下で1万枚印字後の細線再現性や黒ポチ特性が低下するので、アルマイト層の厚みを2μm〜10μmの範囲にすることが好ましい。
【0113】
また、比較例3で示すように、封孔処理時の温度を120℃で行う場合には、アルマイト層に微小クラックが発生するので、30℃〜90℃の範囲内で封孔処理を行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明による一実施形態に係る洗浄、封孔装置の概略構成を示した断面図である。
【図2】本発明による一実施形態に係る陽極酸化処理により形成されたアルマイト層の構成を示す概略斜視図である。
【図3】本発明による一実施形態に係る陽極酸化処理により形成されたアルマイト層の構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明による一実施形態に係る感光体の概略断面図である。
【図5】本発明の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための画像形成部の概略構成を示す概略断面図である。
【図6】図5における感光体と帯電ローラの関係を示す斜視図である。
【図7】本発明によるタンデム型画像形成装置の概略構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明による一実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略断面図である。
【図9】本発明による各実施例及び比較例の感光体についての評価結果を示す表図である。
【符号の説明】
【0115】
1、1K、1Y、1M、1C 感光体
2、2K、2Y、2M、2C 帯電ローラ
L、LK、LY、LM、LC 露光
4、4K、4Y、4M、4C 現像装置
5、5K、5Y、5M、5C クリーニング装置
10 転写ベルト
12 定着装置
15、61 アルミニウム支持体
16 アルマイト層
16a バリア層
16b 多孔質層
16c 孔
16d セル
17 電荷発生層
18 電荷輸送層
62 耐圧容器
63 蓋
64 ドラム支持台
65 分散槽
66 攪拌機
67 タンク
68、71 弁
69、72 ポンプ
70、74 三方弁
73 加熱機
75 封孔剤を分散した超臨界流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム支持体上に厚さが2μm〜10μmの陽極酸化膜を形成後、当該陽極酸化膜に封孔処理を行い、しかる後に前記陽極酸化膜上に感光層を形成する電子写真感光体の製造方法において、
前記封孔処理は、当該アルミニウム支持体に陽極酸化膜を形成後、封孔剤を含有した超臨界流体及び亜臨界流体の少なくとも一方の流体中に前記陽極酸化膜を浸漬させて、30℃〜90℃の温度範囲で前記陽極酸化膜中の細孔を封孔することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電子写真感光体の製造方法において、
前記封孔剤がニッケル化合物であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電子写真感光体の製造方法において、
前記超臨界流体又は亜臨界流体が二酸化炭素であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項4】
アルミニウム支持体上の陽極酸化膜上に感光層を形成した電子写真感光体において、
前記電子写真感光体は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の電子写真感光体の製造方法によって製造されたことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項5】
表面に静電潜像を形成する電子写真感光体と、前記静電潜像にトナーを供給して当該静電潜像をトナー像化する現像装置を備えた画像形成装置において、
前記電子写真感光体は、請求項4記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記画像形成装置は、複数の現像装置と当該現像装置と対をなす複数の電子写真感光体を有し、それぞれの前記現像装置は、それぞれ異なる色のトナーを収容して、それぞれのトナーを対応する前記電子写真感光体に供給してそれぞれの電子写真感光体表面に異なる色のトナー像を形成し、前記対をなす現像装置と電子写真感光体は、トナー像が転写される転写体の移送方向に沿って配設されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
電子写真感光体と、現像装置、クリーニング装置及び帯電装置の少なくとも1種とを一体に構成したプロセスカートリッジにおいて、
前記電子写真感光体は、請求項4記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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