説明

電子写真感光体の製造方法

【課題】最表面層用塗料に対する溶解性や分散性の悪い添加剤を、硬化性樹脂を用いた表面層に均一に分散させ、なおかつ添加剤を加えたことによる硬化性材料の硬化阻害を抑制できる電子写真感光体の製造方法を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂を含有する最表面層を有する電子写真感光体の製造方法であって、該最表面層を、次の工程、(A)最表面層用塗料の液状成分に不溶な物質を溶剤に溶解させて溶液を作る工程、(B)該溶液に多孔性粒子を浸して該物質を含む多孔性粒子を作る工程、(C)該多孔性粒子を最表面層用塗料の液状成分中に分散させて最表面層用塗料を作る工程、(D)該最表面層用塗料を塗布して塗膜を形成する工程、および(E)該塗膜を硬化させて電子写真感光体の最表面層を形成する工程を経て形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体として、低価格および高生産性などの利点から、光導電性物質(電荷発生物質や電荷輸送物質)として有機材料を用いた感光層(有機感光層)を支持体上に設けてなる電子写真感光体(いわゆる、有機感光体)が、広く普及している。
【0003】
電子写真感光体の表面には帯電、露光、トナー現像、紙への転写、クリーニングといった電子写真プロセスにより電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。具体的には、摺擦による表面の摩耗や傷の発生、帯電プロセスによる表面劣化、感度や帯電能といった電気的特性の劣化に対する耐久性が必要となる。これらの耐久性と出力画像の高画質化を両立させる技術の一つとして感光層の上に保護層を設ける方法も知られており、必要に応じてこの手段が用いられる場合もある。
【0004】
ところで、一般的に有機感光体の表面層は薄い樹脂層からなっているため、表面層に用いられる樹脂の特性が電子写真感光体の耐久性に大きく影響を及ぼす。表面層用の樹脂として広く用いられているものとしてはポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0005】
近年では電子写真装置の高速化が進み、更なる耐久性の向上が求められている。そのためポリカーボネート樹脂のような熱可塑性樹脂よりも機械的強度に勝る硬化性樹脂(あるいは硬化性材料)が結着樹脂として用いられる場合がある。特に、硬化性樹脂を用いた保護層は耐摩耗性に優れているため、有機感光体を長寿命化するのに有効である。ここで、硬化性樹脂とは、重合性官能基を有するモノマーやオリゴマーがエネルギーを受けることによって、該重合性官能基が重合応および/または架橋反応を起こし、もって硬化することによって得られる樹脂のことである。重合性官能基を有するモノマーやオリゴマーに与えるエネルギーとしては、光や熱や放射線のエネルギーを用いることができる。
熱エネルギーを用いて硬化させるものでは、熱硬化性樹脂を表面層に適用する手法が提案されている(特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【0006】
また、放射線の照射により重合させるものとしては、電子線を用いる手法が提案されている(特許文献4参照)。電子線の照射による硬化(以下「電子線硬化」ともいう)には、電子写真感光体の電位特性(感度や残留電位など)に対して悪影響を及ぼす可能性のある重合開始剤を使用しなくてもよいという利点がある。また、短時間で効率的な重合反応を起こすことができるため生産性が高く、電子線の透過性が高いため硬化性材料を含有する層中に微粒子や添加剤などの遮蔽物質が存在していても重合反応および/または架橋反応が阻害されにくいといった利点もある。
【0007】
硬化性樹脂を表面層に用いた場合、使用時の感光体表面の摩耗量が減少するため感光体の長寿命化には有利であるが、その一方で、画像流れが発生しやすいという課題があった。画像流れとは、使用に伴う感光体表面の劣化や、感光体帯電プロセスで発生する帯電生成物の付着によって感光体表面の電気抵抗が低下し、その結果露光プロセスで形成された静電潜像が乱れて画像のボケが起こる現象のことである。感光体表面に生じる劣化部分や付着した帯電生成物は、印刷中に感光体の表面が削れればそれと共に除去されるが、耐摩耗性に優れる表面層を有する感光体の場合は、この摩耗量が小さいために画像流れが起きやすくなると考えられる。
【0008】
このような表面の劣化を抑制する手段としては、添加剤を加える方法が知られており、架橋性を有する樹脂からなる表面層中に酸化防止剤を含有させる技術が提案されている(特許文献5参照)。また、アルキルアミノ基を有する特定構造の化合物を含有させる技術が提案されている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−181299号公報
【特許文献2】特開2002−6526号公報
【特許文献3】特開2002−82465号公報
【特許文献4】特開2000−066425号公報
【特許文献5】特開2004−240047号公報
【特許文献6】特開2007−272192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、硬化性樹脂を用いた表面層に画像流れ抑制用の添加剤を加える場合、従来の例では添加剤として使用できる材料の選択が難しい。これは、電子写真感光体の耐久性と電気的特性のいずれにも悪影響を及ぼさず、なおかつ表面層用塗料への溶解性や分散性が良い材料を選択する必要があるためである。
耐久性への悪影響とは、添加剤を加えることにより表面層の硬化が阻害され、その結果電子写真感光体の耐摩耗性が低下することを指す。また、電気的特性への悪影響とは、キャリアのトラップによる感度や残留電位の上昇や、連続プリント中の電位変動の増大を指す。
【0011】
また、添加剤は表面層用塗料を作成する段階で添加するため、表面層用塗料の液状成分に溶解しないものや、均一に分散することが困難な添加剤は、塗工性や成膜性に不具合を生じるため使用が困難である。
本発明の目的は、最表面層用塗料に対する溶解性や分散性の低い添加剤を、硬化性樹脂を用いた表面層に均一に分散させる電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、添加剤を加えたことによる硬化性材料の硬化阻害を抑制した電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、硬化性樹脂を含有する最表面層を有する電子写真感光体の製造方法であって、該最表面層を、以下の工程、
(A)硬化性材料を含有する最表面層用塗料の液状成分に不溶な物質を溶剤に溶解させて溶液を作る工程、
(B)工程(A)で得た溶液に多孔性粒子を浸して該物質を含む多孔性粒子を作る工程、
(C)工程(B)で得た多孔性粒子を最表面層用塗料の液状成分中に分散させて最表面層用塗料を作る工程、
(D)工程(C)で得た最表面層用塗料を塗布して塗膜を形成する工程、および
(E)工程(D)で形成した塗膜を硬化させて電子写真感光体の最表面層を形成する工程
を経て形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硬化性材料を含有する最表面層用塗料の液状成分に対する溶解性や分散性の低い添加剤を該最表面層用塗料の液状成分への分散性が良好な多孔性粒子に含浸させ、該多孔性粒子を最表面層中に分散させる。これによって、該添加剤を該多孔性粒子に担持させた形で最表面層中に均一に分布させることができる。また、添加剤を直接投入した時に比べて最表面層の硬化性の低下を抑制することもできる。その結果、塗料中に溶解ないし分散することが困難なため従来使用が困難であった添加剤も使用可能となり、画像流れに有効な添加剤の選択の幅を広げることができる。
【0014】
また、該多孔性粒子を分散させた最表面層の表面を研磨して表面近傍に存在する多孔性粒子を露出させることにより、画像流れ抑制効果を更に発揮しやすくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子写真感光体の製造方法により得られる電子写真感光体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電子写真感光体の製造方法に含まれる各工程について説明する。
まず第一に、最表面層用の塗料の液状成分に不溶な物質を、該物質が可溶な溶剤に溶解させて溶液を作る工程(工程(A))について説明する。本発明において、該物質とは画像流れに対して有効な物質であるという要件を満たせば特に限定されないが、公知の酸化防止剤、アミン化合物を使用することができる。公知の酸化防止剤、アミン化合物の例としては、アルキルアミン化合物、ジアミン化合物、環状アミン化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。以後は簡単のため、該物質のことを単に「有効物質」とも記述する。また、本発明においては、最表面層用塗料の液状成分に不溶であるとは、画像流れに対する効果を発揮するのに必要な量の有効物質を塗料の液状成分に添加した時、該有効物質の溶け残りができることを意味する。ここで、最表面層用塗料の液状成分とは、塗料に溶媒が含まれるならその溶媒と、常温で液状である硬化性材料(重合性官能基を有するモノマーやオリゴマー)の混合液のことを意味する。
重合性官能基を有するモノマーやオリゴマーの例としては、たとえばアクリロイルオキシ基やスチレン基を有する連鎖重合系の材料や、水酸基やアルコキシシリル基やイソシアネート基を有する逐次重合系の材料が挙げられる。電子写真特性、汎用性、材料設計および製造安定性といった観点からは、連鎖重合系の材料が好ましい。
また、重合性のモノマーやオリゴマーとして、電荷輸送性基を有する重合性のモノマーやオリゴマーを用いてもよく、その中でも、同一分子内に正孔輸送性基およびアクリロイルオキシ基を有するモノマーやオリゴマーが好ましい。一例として、下記一般式(A)の化合物を挙げることができる。
【化1】

また、必用に応じて重合性のモノマーやオリゴマーと組み合わせて用いられる溶剤としては、アルコール、ケトンのような極性溶媒、ヘキサンのような無極性溶媒を挙げることができる。
一般式(A)の化合物と1−プロパノールの混合液に対して不溶である酸化防止剤やアミン化合物の例としては、下記構造式(B)〜(E)がある。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

第一の工程では、画像流れに対する効果を発揮するのに十分な量の有効物質を、該有効物質が可溶な溶剤に添加して溶解させる。溶剤の種類は該有効物質を可溶なものであれば特に限定されないが、アルコール、ケトンのような極性溶媒、ヘキサンのような無極性溶媒を挙げることができる。ここで選ばれる溶剤は、最表面層用塗料に溶剤が含有される場合、該塗料中の溶剤とは異なるものになる。
【0017】
第二に、上記第一の工程で得られた溶液に多孔性粒子を浸し、有効物質を含む多孔性粒子を作る工程(工程(B))について説明する。この工程では、溶液に多孔性粒子を浸し、多孔性粒子に溶液を染み込ませる。次に、濾過および/または溶剤を乾燥させることによって有効物質を含む多孔性粒子を得る。多孔性粒子としては該溶液および塗料の液状成分に不溶であれば多孔質シリカのような公知の多孔質粒子や中空粒子を使用することができる。ただし、後の工程で最表面層用塗料に該多孔性粒子を分散させる必要があるため、分散性に優れた多孔性粒子であることが好ましい。また、より多くの有効物質を担持可能な粒子であればなお好ましい。スチレン−アクリル共重合樹脂からなる中空粒子は、有効物質を担持する能力と塗料への分散性に優れており、好ましく用いることができる。
【0018】
第三に、第二の工程で得た有効物質を含有する多孔性粒子を最表面層用塗料の液状成分中に分散させて最表面層用塗料を作る工程(工程(C))について説明する。第二の工程で得た多孔性粒子を最表面層用塗料に分散させる方法としては、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルまたは高圧分散機のような公知の分散方法を用いることができる。また、最表面層用塗料には、硬化性樹脂と多孔性粒子のほか、必要に応じて電荷輸送性物質やポリテトラフルオロエチレン粒子のような潤滑剤といった機能性材料を添加してもよい。
【0019】
第四に、第三の工程で得た最表面層用塗料を塗布して塗膜を形成する工程(工程(D))について説明する。塗膜を形成する方法としては、バーコーター、ナイフコーター、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、スプレー塗布、ビーム塗布のような方法が挙げられる。
【0020】
第五に、第四の工程で形成した塗膜を硬化させて電子写真感光体の最表面層を形成する工程(工程(E))について説明する。本発明では最表面層用塗料に硬化性材料が含有されているため、熱や光や放射線によりエネルギーを与えて該硬化性材料を硬化させる。加熱手段としては熱風乾燥炉や高周波電磁誘導加熱手段などを用いることができる。また、光の照射により硬化させる場合は紫外線ランプなどの手段を用いることができる。ここで、ランプの種類としては、蛍光ケミカルランプのような低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプやメタルハライドランプのような高圧放電ランプ、キセノンランプなどのショートアーク放電ランプが挙げられる。また、放射線を用いる場合は、特に電子線が好ましく用いることができる。
【0021】
電子線を用いる場合についてより詳細に説明する。電子線照射に用いる加速器としては、たとえば、スキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型、ラミナー型のような加速器を挙げることができる。電子線の加速電圧は70〜250kVの範囲であることが好ましく、70〜150kVの範囲であることがより好ましい。また、電子線の吸収線量は9×10〜1×10Gyの範囲であることが好ましく、9×10〜5×10Gyの範囲であることがより好ましい。
【0022】
加速電圧が大きすぎると、電子線照射による電子写真感光体の電位特性の劣化が大きくなる傾向にある。一方、加速電圧が小さすぎると、表面層の重合・硬化が不十分となる場合がある。また、吸収線量が少なすぎると、表面層の重合・硬化が不十分となる場合がある。吸収線量が多すぎると、電子写真感光体の電位特性の劣化が大きくなる傾向にある。
【0023】
電子線の吸収線量は、汎用のフィルム線量計(たとえばFar West Technology社製 RADIACHROMIC READERおよびRadiachromic線量計(10μm))により測定することができる。ただし、直接測定できる吸収線量は1×10Gy以下であり、それを超える場合は1×10Gy以下の吸収線量を測定したときの電流値(あるいは時間)より概算する。
【0024】
また、本発明における電子線の吸収線量とは、被照射体の表面での電子線の吸収線量である。そして、上記Radiachromic線量計(10μm)のフィルムを、表面層用塗布液を塗布する前の被照射体の表面に貼り付け、その状態で電子線を照射したときに計測される吸収線量のことを意味する。
【0025】
上記のように、硬化性材料を硬化させる手段は複数挙げられるが、これらの硬化手段は、単独で用いてもよいし、複数の手段を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
前述の工程を経て電子写真感光体を製造することにより、最表面層に直接添加することが困難な画像流れに対して有効な物質を、多孔性粒子に担持させた形で最表面層に均一に分散させることができる。また、電子写真感光体の使用に伴い、多孔性粒子が感光体表面に露出し、更に徐々に削られていくことによって画像流れに対する効果を継続的に得ることができる。未使用の感光体でも、あらかじめその表面を研磨して粗面化しておくことにより、多孔性粒子が感光体表面に露出し、その一部が削られた状態にすることができる。すなわち、感光体表面を粗面化処理する工程の追加により、感光体を使用開始した直後の画像流れ抑制効果をより高めることができる。
【0027】
また、添加量が多いと硬化性材料の硬化阻害などを起こす場合がある酸化防止剤のような有効物質を多孔性物質に担持させることにより、このような弊害を抑制する効果もある。このメカニズムの詳細は不明であるが、有効物質が多孔性粒子に担持され留まることにより、硬化性材料と有効物質の混合が抑制され、その結果硬化阻害が生じにくくなるものと推測される。
【0028】
硬化性材料の硬化度を評価する方法としては、硬化後の感光体表面において未硬化官能基の残存程度を評価する方法がある。未硬化官能基としてアクリロイルオキシ基の場合、末端オレフィン(CH=)が挙げられる。この末端オレフィン(CH=)の残存量を評価するには、感光体表面層の断片をサンプルとして赤外分光反射法を用いる方法が挙げられる。赤外分光反射法において、アクリロイルオキシ基の末端オレフィン(CH=)のピーク面積を分子とし、アクリロイルオキシ基のカルボニル(C=O)のピーク面積を分母としたピーク面積比を算出すればよい(以下、このピーク面積比を未硬化残存基IRピーク比と呼ぶ)。赤外分光スペクトルにおけるピーク波数は、分子構造や硬化による影響を受けるため、硬化性材料によって異なる場合が多い。例えば、硬化されたアクリロイルオキシ基を有するアリールアミン系化合物の場合、アクリロイルオキシ基のカルボニル(C=O)伸縮振動に基づくピークは、1725cm−1付近に見られ、末端オレフィン(CH=)面内変角振動に基づくピークは1405cm−1付近に見られる。
【0029】
図1に、本発明の電子写真感光体製造方法により作成される電子写真感光体の代表例の概略図を示す。この電子写真感光体は、導電性支持体1の上へ、導電層2、中間層3、電荷発生層4、電荷輸送層5、最表面層6として第二の電荷輸送層が、この順で形成されている。最表面層としての第二の電荷輸送層には有効物質を含有する多孔性粒子7が均一に分散している。
【0030】
次に、本発明の製造方法で製造される電子写真感光体の構成を具体的に説明する。
電子写真感光体としては、円筒状の支持体上に電荷発生層や電荷輸送層を設けてなる円筒状の感光体が一般的であるが、ベルト状やシート状のものも使用可能である。
【0031】
支持体としては、導電性を示すもの(導電性支持体)であればよく、材質としては、たとえば、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、チタン、鉛、ニッケル、スズ、アンチモン、インジウム、クロム、アルミニウム合金、ステンレスのような金属や合金が挙げられる。また、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化スズ合金を真空蒸着することによって形成した層を有する金属製支持体やプラスチック製支持体を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子のような導電性粒子を適当な結着樹脂とともにプラスチックや紙に含浸した支持体や、導電性結着樹脂を用いて形成したプラスチック製の支持体を用いることもできる。
【0032】
また、支持体の表面は、レーザー光の散乱による干渉縞の防止を目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理を施してもよい。
【0033】
また、支持体と、後述の中間層や電荷発生層との間には、レーザー光の散乱による干渉縞の防止や、支持体の傷の被覆を目的とした導電層を形成してもよい。
【0034】
導電層は、カーボンブラック、導電性顔料や抵抗調節顔料を結着樹脂とともに溶剤に分散および/または溶解させて得られる導電層用塗布液を用いて形成することができる。導電層用塗布液には、加熱や放射線照射によって重合し、硬化物となる化合物(重合性の化合物)を含有させてもよい。導電性顔料や抵抗調節顔料を含有させた導電層は、その表面が粗面化される傾向にある。
【0035】
導電層の層厚は、0.2〜40μmであることが好ましく、1〜35μmであることがより好ましく、5〜35μmであることがより一層好ましい。
【0036】
導電層に用いられる結着樹脂としては、たとえば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンのようなビニル化合物の重合体/共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0037】
導電層に用いられる導電性顔料および抵抗調節顔料としては、たとえば、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀、ステンレスのような金属や合金の粒子や、これらを樹脂の粒子の表面に蒸着したものが挙げられる。また、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズのような金属酸化物の粒子でもよい。これらの粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合するだけでもよいし、固溶体や融着の形にしてもよい。
【0038】
支持体または導電層と電荷発生層との間には、バリア機能や接着機能を有する中間層を形成してもよい。中間層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護のために形成される。
【0039】
中間層の材料としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ、ゼラチンが挙げられる。
【0040】
中間層は、上記の材料を溶剤に溶解させて得られる中間層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
中間層の層厚は0.05〜7μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましい。
【0041】
支持体、導電層または中間層の上には、電荷発生層が形成される。
電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、たとえば、ピリリウム、チアピリリウム系染料、各種の中心金属および各種の結晶系(α、β、γ、ε、X型など)を有するフタロシアニン顔料、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニン顔料が挙げられる。また、アモルファスシリコンであってもよい。これらの電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0042】
電荷発生層の形成方法としては、電荷発生層用塗布液を塗布、乾燥する方法や、電荷発生物質の蒸着膜を形成する方法が挙げられる。
【0043】
電荷発生層用塗布液は、電荷発生物質を0.3〜4倍量(質量比)の結着樹脂及び溶剤とともに、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルまたは高圧分散機を用いる方法で分散して得ることができる。結着樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンのようなビニル化合物の重合体及び共重合体が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂及びエポキシ樹脂が挙げられる。
【0044】
電荷発生層の層厚は5μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。
【0045】
電荷発生層の上には、電荷輸送層が形成される。本発明では、電荷輸送層が最表面層である場合、結着樹脂として硬化性樹脂が含有されるため、電荷輸送層用塗料中には硬化性材料として、前記工程(A)の説明で述べた重合あるいは架橋性のモノマーやオリゴマーが含有される。
【0046】
なお、電荷輸送層の上に最表面層を形成する場合は当該電荷輸送層には上記硬化性樹脂は必ずしも含有される必要はなく、その場合、電荷発生層用結着樹脂と同様のものを使用することができる。
【0047】
電荷輸送層には、そこに含有される結着樹脂自体が電荷輸送能を持つ場合を除き、電荷輸送物質が含有される。電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリスチリルアントラセンのような複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、カルバゾールのような複素環化合物、トリフェニルメタンのようなトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンのようなトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体のような低分子化合物が挙げられる。
【0048】
電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂とを溶剤に溶解させて得られた電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布、乾燥させて形成することができる。本発明では、電荷輸送層が最表面層である場合、電荷輸送層中に含まれる電荷輸送物質の量は20〜70質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。ただし、硬化性樹脂自体が電荷輸送能を有する場合、それ以外の電荷輸送物質の添加量は0〜50質量%でよい。また、電荷輸送層の上に硬化性樹脂を含む最表面層を形成する場合は、電荷輸送層中に含まれる電荷輸送物質の量は、30〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましい。
【0049】
電荷輸送層の層厚は、5μm以上、50μm以下であることが好ましく、さらには8μm以上、35μm以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明では、必要に応じて電荷輸送層上に硬化性樹脂を含有する最表面層を設ける。この最表面層は、感光体表面の保護が主目的となるため保護層としても良いが、電荷輸送能を持たせたものは第二の電荷輸送層と考えることもできる。ここでは第二の電荷輸送層について説明する。
【0051】
第二の電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、前記電荷輸送層(第一の電荷輸送層)に用いられる電荷輸送物質として例示したものと同様のものが挙げられる。また、第二の電荷輸送層に含有される硬化性樹脂としては、前記工程(A)の説明において述べた重合性あるいは架橋性のモノマーやオリゴマーを用いることができる。
【0052】
第二の電荷輸送層に用いられる硬化性樹脂が電荷輸送能を有する場合、電荷輸送物質は必ずしも含有させる必要はない。電荷輸送物質を含有させる場合には、第二の電荷輸送層中の添加量は10〜50質量%であることが好ましい。
【0053】
第二の電荷輸送層の層厚は0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
【0054】
本発明では、最表面層となる第二の電荷輸送層に対し、または第二の電荷輸送層を設けない場合に最表面層となる第一の電荷輸送層に対し、前述の方法により多孔性粒子を分散させ、最表面層を硬化させて電子写真感光体を得る。更に、必要に応じてその表面を粗面化処理してもよい。粗面化処理方法としては、砥粒を含有する研摩シートに感光体を摺擦させて研磨するラッピング法や、サンドブラスト法のような公知の手段を用いることができる。
【0055】
本発明の製造方法により製造される電子写真感光体の各層には、各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤や紫外線吸収剤のような劣化防止剤や、フッ素原子含有樹脂粒子のような潤滑剤が挙げられる。
【0056】
また、導電層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層の塗布方法としては、たとえば、バーコーター、ナイフコーター、ロールコーター、を用いた塗布、浸漬塗布、スプレー塗布、ビーム塗布、静電塗布、粒子塗布のような方法が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0058】
〔実施例1〕
<電子写真感光体の作成>
外径30mm、長さ370mmのアルミニウムシリンダーを支持体(円筒状支持体)とした。
酸化スズの被覆層を有する硫酸バリウム粒子からなる粉体(商品名:パストランPC1、三井金属鉱業(株)製) 60部
酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製) 15部
レゾール型フェノール樹脂(商品名:フェノライト J−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%) 43部
2−メトキシ−1−プロパノール 50部
メタノール 50部
次に、上記の材料からなる溶液を直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散処理を施し、分散液を調製した。
【0059】
シリコーン樹脂(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製) 3.6部
シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レシリコーン(株)製) 0.015部
次に、上記の材料をこの分散液に添加して攪拌し、導電層用塗布液を調製した。
この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、温度140℃のオーブンで1時間加熱硬化させることにより、層厚が15μmの導電層を形成した。
【0060】
共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製) 10部
メトキシメチル化6ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学(株)製)
30部
次に、上記の材料をメタノール400部/n−ブタノール200部の混合溶剤に溶解させて中間層用塗布液を調製した。
この中間層用塗布液を、導電層上に浸漬塗布し、30分間温度100℃のオーブンで乾燥(加熱乾燥)させることにより、層厚が0.4μmの中間層を形成した。
【0061】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン(CuKα特性X線回折において、7.4°および28.2°(ブラッグ角2θ±0.2°))に強いピークを有するもの) 20部
下記構造式(1)で示されるカリックスアレーン化合物 0.2部
【化6】

ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学製) 10部
シクロヘキサノン 600部
次に、上記の材料に、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散処理を施し、その後酢酸エチル700部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、10分間温度85℃のオーブンで乾燥(加熱乾燥)させることにより、層厚が0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0062】
下記構造式(2)で示されるトリアリールアミン化合物(電荷輸送物質) 70部
【化7】

ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製) 100部
次に、上記の材料をモノクロロベンゼン600部/メチラール200部の混合溶剤に溶解させて、第一の電荷輸送層用塗布液を調製した。
この第一の電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、60分間100℃のオーブンで乾燥(加熱乾燥)させることにより、層厚が15μmの第一の電荷輸送層を形成した。
【0063】
下記構造式(3)で示される正孔輸送性化合物 100部
【化8】

次に、上記の材料を1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン50部/1−プロパノール50部の混合溶剤に添加して第二の電荷輸送層用塗料の液状成分を調製した。
【0064】
下記構造式(4)で示される化合物 10部
【化9】

次に、第二の電荷輸送層用塗料の液状成分に不溶な物質である上記の材料をアセトン90部に溶解させて溶液を調製した。
この溶液を、多孔性構造を有する架橋スチレン−アクリル中空粒子(粒子外径1.1μm、内径0.9μm)15部に少量ずつ添加してアセトンを自然乾燥させ、構造式(4)を含有する多孔性粒子粉末を得た。
【0065】
次いで、この多孔性粒子粉末を前述の第二の電荷輸送層用塗料の液状成分に添加し、20分間の超音波分散処理を施し、第二の電荷輸送層用塗料を調製した。この時、塗料中の多孔性粒子の分散性は良好であった。
【0066】
この塗料を用いて、前記第一の電荷輸送層上に第二の電荷輸送層を塗布し塗膜を形成した後、大気中にて温度50℃のオーブンで10分間の前乾燥を行った。その後、酸素濃度を15ppm以下に保った窒素雰囲気中にて加速電圧70kV、ビーム電流6.0mAの条件でシリンダーを300rpmで回転させながら1.6秒間電子線照射を行った。引き続いて、窒素中において温度25℃から110℃まで30秒かけて昇温させ硬化反応を行なった。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ15×10Gyであった。また、加熱硬化反応雰囲気の酸素濃度は15ppm以下であった。その後、これを大気中に取り出し、温度25℃まで自然冷却してから温度100℃のオーブンで30分間の後加熱処理を行なって膜厚5μmの第二の電荷輸送層を形成し、第二の電荷輸送層を最表面層とする電子写真感光体を得た。
【0067】
<画像評価>
このようにして得た電子写真感光体を用い、温度32.5℃/湿度80%RHの環境で画像流れの評価を行った。なお、電子写真感光体は、該環境に15時間以上放置してから評価に使用した。
画像流れの評価には、像露光量が調節できるように改造したキヤノン(株)製の電子写真複写機iR2870改造機を使用した。帯電方式は、AC/DCバイアスを重畳して印加した帯電ローラを用いる接触帯電方式であり、ACバイアスは2.5kHz、1.7kVppとした。暗部電位(VD)の調整はDCバイアスを調節することにより行い、明部電位(VL)の調整は像露光量を調節することにより行った。表面電位は、市販の表面電位計(商品名:表面電位計 MODEL344、トレック・ジャパン(株)製)を使用して測定した。
この改造機に感光体を装着し、VDが−700V、VLが−200Vになるよう帯電条件と像露光量の調整を行い、印字率1%、A4紙サイズにて1000枚の連続印刷を行った。次いで、全面文字パターンを印刷し、印刷された文字の画像品位を目視により以下のように評価した。結果を表1に示す。
A=画像欠陥が無く良好な状態
B=若干の文字のボケがあるが実使用上問題無い状態
C=文字のボケが画像の一部に見られる状態
D=画像の全面で文字のボケが発生し、実使用上問題となる状態
【0068】
【表1】

【0069】
<硬化度の評価>
感光体の上端から180mmの位置の表面層をカミソリで剥ぎとり、その表面層断片について赤外分光全反射測定を行い、未硬化残存基IRピーク比を算出した。赤外分光測定機は、Perkin Elmer Instrments製の、Spectrum One FT−IR Spectrometerを使用した。未硬化残存基IRピーク比は、1400.32cm−1以上1413.82cm−1以下の波数範囲をアクリロイルオキシ基の末端オレフィン(CH=)のピーク面積、1699.29cm−1以上1770.65cm−1以下の波数範囲をアクリロイルオキシ基のカルボニル(C=O)のピーク面積として算出した。結果を表1に示す。
【0070】
〔実施例2〕
実施例1で得た電子写真感光体の表面を、以下の研磨シートおよび研磨条件で粗面化処理し、表面が粗面化された電子写真感光体を得た。
研磨シート: 幅=360mm、基材の材質=ポリエチレン、厚さ=75μm、
研磨砥粒=SiC
研磨条件 : 研磨シートテンション=1mN、研磨時間=12秒、
シート送り時間=400mm/min、ワーク回転数=240rpm、
ワーク押込み量=3.0mm
なお、ワーク押込み量とは、研磨の際、ワーク側から見てシートを挟んで対向する位置に置いてあるアスカーC硬度20°のスポンジローラに対してワークを押し込む量である。
得られた電子写真感光体の表面粗さを以下の測定機及び条件で測定したところ、Rz(十点平均面粗さ)は0.38μmであった。
測定機: 接触式面粗さ測定機(商品名:サーフコーダSE3500、(株)小坂研究所製)
測定条件: 検出器=R2μm、0.7mNのダイヤモンド針、
フィルタ=2CR、カットオフ値=0.8mm、測定長さ=2.5mm、
送り速さ=0.1mm、JIS規格1982で十点平均面粗さRzのデータ
を処理する。
得られた電子写真感光体を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0071】
〔比較例1〕
実施例1で、第二の電荷輸送層用塗料として液状成分のみを用い、構造式(4)の化合物と中空粒子を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0072】
〔比較例2〕
実施例1で、構造式(4)の化合物を用いず、第二の電荷輸送層用塗料として液状成分に中空粒子だけを分散した塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0073】
〔比較例3〕
実施例1で、構造式(4)の化合物30部を第二の電荷輸送層用塗料の液状成分600部に添加して攪拌した後静置したところ、該化合物の沈降が生じた。この液体および沈降物を直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置にて1時間分散処理し、メッシュによりガラスビーズを分離した。更に、ポリフロンフィルター(商品名:PF−020、アドバンテック東洋(株)製)で濾過を行い、第二の電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0074】
〔比較例4〕
比較例3で、構造式(4)の化合物10部を第二の電荷輸送層用塗料の液状成分200部に添加して攪拌した後静置し、次いで沈降した該化合物を取り除くため、ポリフロンフィルター(商品名:PF−020、アドバンテック東洋(株)製)で濾過を行い、第二の電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
表1から、本発明の電子写真感光体製造方法で作成された電子写真感光体が画像流れ抑制効果を有しており、最表面層の硬化阻害も抑制されていることが分かる。また、最表面層に粗面化処理を施すことにより、画像流れ抑制効果が増していることも分かる。
【符号の説明】
【0075】
1‥‥導電性支持体
2‥‥導電層
3‥‥中間層
4‥‥電荷発生層
5‥‥電荷輸送層
6‥‥第二の電荷輸送層(最表面層)
7‥‥有効物質を含有する多孔性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を含有する最表面層を有する電子写真感光体の製造方法であって、該最表面層を、以下の工程、
(A)硬化性材料を含有する最表面層用塗料の液状成分に不溶な物質を溶剤に溶解させて溶液を作る工程、
(B)工程(A)で得た溶液に多孔性粒子を浸して該物質を含む多孔性粒子を作る工程、
(C)工程(B)で得た多孔性粒子を最表面層用塗料の液状成分中に分散させて最表面層用塗料を作る工程、
(D)工程(C)で得た最表面層用塗料を塗布して塗膜を形成する工程、および
(E)工程(D)で形成した塗膜を硬化させて電子写真感光体の最表面層を形成する工程
を経て形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項2】
該多孔性粒子がスチレン−アクリル共重合樹脂で形成されている粒子であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項3】
さらに、工程(E)で形成した電子写真感光体の最表面層の表面を研磨して粗面化処理する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−118046(P2011−118046A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273627(P2009−273627)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】