説明

電子写真感光体の製造方法

【課題】複数の感光体を連続して製造する際に、電子写真感光体ごとの表面層硬化度のばらつきを抑制した電子写真感光体の製造方法を提供すること。
【解決手段】硬化性材料を含有する表面層用塗料を被塗布体に塗布する塗布工程と、該被塗布体上に形成された塗布膜に電子線を照射する電子線照射工程と、該電子線照射工程後に該塗布膜を加熱する加熱工程の少なくとも三つの工程を経て順次連続して製造される電子写真感光体の製造方法において、該加熱工程における該塗布膜の最高到達温度を、加熱雰囲気の酸素濃度が低い該被塗布体あるいは該被塗布体の群ほど、低温にすることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線照射処理によって電子写真感光体の表面を硬化させる電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、複写機やレーザープリンターのような画像形成装置の分野で広く利用されている。電子写真感光体(以降、単に「感光体」ともいう)には無機感光体と有機感光体があるが、製造コストが安いことや環境負荷の少ない材料を選択し易いという利点から、現在は有機感光体が主流となっている。近年、画像形成装置の寿命が著しく向上し、また、画像形成装置の小型化に伴う有機感光体の小径化が進んでいることから、搭載される有機感光体には磨耗や傷に対する高い耐久性が要求されている。
【0003】
こうした耐久性を感光体に付与するためには、硬化性の樹脂を主成分とする硬化表面層を感光体最表面に形成する方法が有効である(特許文献1)。さらに、置換ヒドロキシフェニル基及び電荷輸送性構造を有するフェノール化合物を主成分として熱硬化により表面層を形成する方法が開示されている(特許文献2)。また、電荷輸送性構造を有しない3官能性以上のラジカル重合性モノマーと1官能性の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を主成分として紫外線硬化により表面層を形成する方法が開示されている(特許文献3)。さらに、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を主成分として電子線硬化により表面層を形成する方法が開示されている(特許文献4)。これらの方法の中でも、電子線硬化により表面層を形成する方法は、熱や光では達成できない電子線特有の性質を応用できるため、上記した感光体の耐久性をより高いレベルで満足させることができる有用な方法である。さらに、電子線照射をした後に不活性ガス中で加熱することにより表面層を形成する方法が開示されている(特許文献5)。特許文献5の方法では、単に電子線の照射を受けただけの表面層よりも、更に膜強度の強い表面層を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−103741号公報
【特許文献2】特開2003−246771号公報
【特許文献3】特開2004−302450号公報
【特許文献4】特開2000−066425号公報
【特許文献5】特開2004−012986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5に開示されている製造方法で複数の感光体を連続して製造する場合、感光体ごとに表面層の硬化度がばらつく場合がある。この課題は、感光体製造プロセスにおいて不活性ガス中での加熱雰囲気における酸素濃度が、感光体ごとに一定でない場合に発生し易いことが判明した。製造プロセスにおいて感光体を加熱するときの加熱雰囲気における酸素濃度を全ての感光体で一定とすればこの課題は改善される。しかし、複数の感光体を極力早く製造するという高生産性を追及していくと、この酸素濃度を全ての感光体で統一するような製造方法の設計が非常に困難であった。したがって、不活性ガス中での加熱雰囲気における酸素濃度が感光体ごとに異なる製造方法においてでも、感光体ごとに表面層の硬化度をばらつかせないための対策が必要となった。
【0006】
本発明の目的は、複数の感光体を順次連続して製造する際に、電子写真感光体ごとの表面層硬化度のばらつきを抑制した電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性材料を含有する表面層用塗料を被塗布体に塗布する塗布工程と、該被塗布体上に形成された塗布膜に電子線を照射する電子線照射工程と、該電子線照射工程後に該塗布膜を加熱する加熱工程の少なくとも三つの工程を経て順次連続して製造される電子写真感光体の製造方法において、該加熱工程における該塗布膜の最高到達温度を、加熱雰囲気の酸素濃度が低い該被塗布体あるいは加熱雰囲気の酸素濃度が低い該被塗布体の群ほど、低温にすることを特徴とする電子写真感光体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、電子線を照射した後に不活性ガス中で加熱することによって表面層を硬化させる電子写真感光体の製造方法において、製造される感光体ごとの表面層硬化度のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例に使用する、表面層塗布装置を示す図である。
【図2】実施例に使用する、電子線照射装置を示す横断図と断面図である。
【図3】実施例に使用する、加熱装置を示す横断図と断面図である。
【図4】実施例に使用する、酸素濃度に基づいて加熱条件を選択するまでの処理手順を示したプログラム流れ図である。
【図5】実施例1及び比較例1における、サンプリングした電子写真感光体の表面層の未硬化残存基IRピーク比を示す図である。
【図6】実施例2及び比較例2における、サンプリングした電子写真感光体の表面層の未硬化残存基IRピーク比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に適用できる被塗布体について説明する。
本発明に適用できる被塗布体は、導電性支持体上に塗布層が形成されたものである。導電性支持体は、導電性を有し、本発明にかかる加熱工程において加熱可能なものであればよい。例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスのような金属やこれらの金属の合金を成形したもの、アルミニウム及び銅のような金属箔をプラスチックにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化錫を円筒状プラスチックに蒸着したもの、導電性物質を単独又は結着樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチック及び紙が挙げられる。
【0011】
本発明においては導電性支持体の上には、バリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。下引き層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、基体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護のために形成される。下引き層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ、ゼラチンが挙げられる。また、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛のような金属酸化物を含有させてもよい。これらの材料は適した溶剤に溶解あるいは分散されて支持体上に塗布される。その際の膜厚としては0.1μm以上30μm以下が好ましい。
【0012】
本発明に適用できる被塗布体は、円筒状の導電性支持体上に感光層として電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型構成、又は逆に電荷輸送層、電荷発生層をこの順に積層した構成をとることも可能である。また、電荷発生物質と電荷輸送物質を結着樹脂中に分散した単層より構成される単層構成をとることも可能である。更に前記感光層上に表面保護層を形成することも可能である。
【0013】
本発明に適用する感光体が機能分離型の感光体である場合には、電荷発生層及び電荷輸送層を積層する。電荷発生層に用いる電荷発生物質としては、ピリリウム、チアピリリウム系染料、各種の中心金属及び結晶系、具体的には例えばα、β、γ、ε、X型のような結晶型を有するフタロシアニン化合物、アンスアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニンが挙げられる。
【0014】
機能分離型感光体の場合、電荷発生層は前記電荷発生物質を質量比で0.3倍量以上4倍量以下の結着樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター又はロールミルの方法で良く分散し、分散液を塗布、乾燥されて形成される。または前記電荷発生物質の蒸着膜、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下、特に0.1μm以上2μm以下の範囲であることが好ましい。
【0015】
また、電荷輸送物質としては、ヒドラゾン系化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアリールメタン系化合物、ポリアリールアルカン類が挙げられる。
【0016】
一般的には、電荷輸送層は上記電荷輸送物質を成膜性の樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート樹脂と混合し、成膜して電荷輸送層とする。その膜厚は40μm以下、特に10μm以上25μm以下の範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明に適用できる表面層用塗料は硬化性材料を含有する。硬化性材料とは、電子線照射あるいは電子線照射に更に熱を加えることで架橋又は重合して、硬化することができる化合物である。硬化性材料としては例えば、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する有機化合物が挙げられる。表面層用溶剤への溶解性、感光体の電気特性、膜強度の確保の観点から、アクリロイルオキシ基を1つあるいは複数有するアリールアミン系化合物であることが好ましい。表面層の膜厚は15μm以下、特に2μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。
【0018】
本発明の感光体の表面層用塗料には各種添加剤を添加することができる。該添加剤とは重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機顔料、テトラフルオロエチレン樹脂粒子、フッ化カーボンである。
【0019】
また、本発明に適用できる表面層は、導電性支持体上に形成した積層構成又は単層構成の感光層の上に形成することが可能である。
【0020】
本発明の製造方法について、製造工程の順に沿って説明する。
本発明は、硬化性材料を含有する表面層用塗料を被塗布体に塗布する塗布工程と、該被塗布体上に形成された塗布膜に電子線を照射する電子線照射工程と、該電子線照射工程後に該塗布膜を加熱する加熱工程の少なくとも三つの工程を経て順次連続して製造される電子写真感光体の製造方法に関する。この製法において、該加熱工程における該塗布膜の最高到達温度を、加熱雰囲気の酸素濃度が低い該被塗布体あるいは該被塗布体の群ほど、低温にすることを特徴としている。
【0021】
さらに本発明は、上記した塗布工程と、電子線照射工程と、加熱工程の少なくとも三つの工程を経て順次連続して製造される電子写真感光体の製造方法において、該電子線照射工程と該加熱工程との間に、被塗布体毎に加熱開始直前における加熱雰囲気の酸素濃度を測定し、該酸素濃度の値に基づいて所定のテーブルにより被塗布体毎に該加熱工程における該塗布膜の最高到達温度を決定する加熱温度決定工程を有し、該加熱温度決定工程においては、該酸素濃度の値が所定の値(例えば10ppm以上100ppm以下)よりも低い該被塗布体あるいは該酸素濃度の値が所定の値よりも低い該被塗布体の群ほど、該最高到達温度は所定の値よりも低く設定することを特徴としている。
【0022】
まず、本発明における塗布工程について説明する。
塗布工程とは、硬化性材料を含有する表面層用塗料を被塗布体に塗布する工程である。塗布方法としては例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、カーテン塗布法及びスピン塗布法が挙げられるが、効率性や生産性の観点から浸漬塗布法が好ましい。使用する塗布機には必要に応じて、循環ポンプ、攪拌手段、温度調節手段、濾過手段、圧力調整手段のような補助手段を設けてもよい。
【0023】
次に、本発明における電子線照射工程について説明する。
電子線照射工程とは、上述の塗布工程にて被塗布体上に形成された硬化性材料を含有する塗布膜に電子線を照射する工程である。本発明に使用できる電子線照射装置は、スキャニング型、カーテンビーム型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型のいずれのものでもよいが、円筒体の円筒軸方向に均一に電子線を照射するという観点から、カーテンビーム型の電子線照射装置を用いることが好ましい。
【0024】
電子線照射条件としては、加速電圧、ビーム電流、照射距離、電子線照射窓箔の材質、被塗布体が円筒状の場合は円筒の回転速度が挙げられる。加速電圧は150kV以下が好ましく、より好ましくは90kV以下である。加速電圧が150kVを越えると感光体電気特性の劣化が起こることがある。ビーム電流については電子線照射装置の個体差があるが、ビーム電流と吸収線量は概ね比例関係にあり、吸収線量でいえば1kGy以上100kGy以下の範囲が好ましく、更に5kGy以上20kGy以下の範囲が好ましい。吸収線量が1kGyよりも少ない場合には硬化が起こりにくく、吸収線量が100kGyを超える場合には感光体電気特性の劣化が起こることがある。尚、吸収線量の測定には、例えば、米国FAR WEST TECHNOLOGY社のナイロン製の線量測定用フィルムを用いたフォトクロミック法を適用すればよい。照射距離は5mm以上50mm以下の範囲で適宜設定すればよい。電子線照射窓箔の材質は、チタン、シリコン、ベリリウム、アルミニウムから適宜選択できる。円筒状の被塗布体の場合、円筒の回転速度は50rpm以上500rpm以下の範囲で適宜決定すればよい。回転速度が50rpmよりも低い場合には円筒体の周方向における吸収線量を均一にすることが難しく、500rpmを越える場合には回転フレを増大させ易く回転駆動装置の負荷が大きくなり易い。
【0025】
電子線照射の雰囲気に関しては、オゾンの発生抑制及び安定した硬化度を得る観点から、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガス中で行うことが好ましい。不活性ガスのうち、安価である点から窒素を用いることがより好ましい。電子線照射時における雰囲気の酸素濃度は、1ppm以上1000ppm以下の範囲が好ましく、更に1ppm以上500ppm以下の範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明の電子線照射工程に適用できる電子線照射装置の一例を図2に示す。図2において電子線照射ユニット9が電子線を発生させる装置である。電子線照射ユニット9は、電子線を発生するターミナル28と、ターミナル28で発生した電子線を真空空間(加速空間)で加速する加速管31とを有するものである。加速管31の内部は、電子が気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、拡散ポンプ(不図示)により10−4Pa以上10−6Pa以下の真空に保たれている。ターミナル28は、熱電子を放出する線状のフィラメント29と、フィラメント29で発生した熱電子をコントロールするグリッド30とを有する。フィラメント29及びグリッド30の図面奥行き方向の長さは、少なくとも被照射体の電子線が照射されるべき部分の円筒軸方向の長さより長くすれば、被照射体の円筒軸方向は1回の電子線照射で全体が照射可能である。また、電子線照射ユニット9には、フィラメント29を加熱して熱電子を発生させるための加熱用電源(不図示)が設けられている。また、電子線照射ユニット9には、フィラメント29とグリッド30との間に電圧を印加する制御用直流電源(不図示)と、グリッド30と照射窓部に設けられた窓箔15との間に電圧を印加する加速用直流電源(不図示)とが設けられている。なお、加速管31及び電子線照射室10の周囲は、電子線照射時に二次的に発生するX線が外部へ漏出しないように鉛製遮蔽壁25で覆われている。照射窓部は、金属箔からなる窓箔15と、窓箔15を冷却すると共に窓箔15を支持する窓枠支持体32とを有するものである。窓箔15は、電子線発生部の真空雰囲気と電子線照射室10内の不活性ガス雰囲気とを仕切るものであり、また窓箔15を介して電子線照射室10内に電子線を取り出すものである。加熱用電源によりフィラメント29に電流を通じて加熱するとフィラメント29は熱電子を放出し、この熱電子は、フィラメント29とグリッド30との間に印加された制御用直流電源の制御電圧により四方八方に引き寄せられる。このうち、グリッド30を通過したものだけが電子線として有効に取り出される。そして、このグリッド30から取り出された電子線は、グリッド30と窓箔15との間に印加された加速用直流電源の加速電圧により加速管内の加速空間で加速された後、窓箔15を突き抜け、照射窓部の正面の電子線照射室10内にある被照射体に照射される。なお、通常は、加熱用電源と加速用直流電源とを所定の値に設定し、制御用直流電源を可変にすることにより、ビーム電流の調整が可能となる。
【0027】
次に、本発明における加熱工程について説明する。
加熱工程とは、上述の電子線照射工程終了後に被塗布体に形成された塗布膜を加熱する工程である。加熱手段としては、誘導加熱ヒーター、赤外線加熱ヒーターで被塗布体を直接加熱する方法、乾燥炉、熱風で被塗布体の外側あるいは内側の周囲の雰囲気を加熱することで円筒状被塗布体を間接的に加熱する方法が挙げられる。これらの加熱手段のうち、最高到達温度、加熱時間、最高到達温度までの到達時間のような詳細な加熱条件を自在に設計し易く、且、被塗布体を急速に加熱できるという観点から、誘導加熱ヒーターを用いることが好ましい。
【0028】
加熱時における雰囲気に関しては、酸素による硬化阻害を極力防止する観点から、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガス中で行うことが好ましく、その中でも安価な窒素を用いることが好ましい。特に、加熱時における雰囲気の酸素濃度が、10ppmを越えると酸素による硬化阻害が徐々に顕在化してくる傾向にある。
【0029】
加熱条件としては、上述したように最高到達温度、加熱時間、最高到達温度までの到達時間が挙げられる。最高到達温度は80℃以上150℃以下の範囲が好ましい。最高到達温度が80℃未満の場合には、硬化が進みにくく、最高到達温度が150℃より高い場合には、感光体電気特性の劣化が起こることがある。加熱時間は5秒以上60秒以下の範囲であることが好ましい。最高到達温度までの到達時間は、加熱時間と同じ時間に設定してもよいし、加熱時間よりも短い時間に設定してもよい。
【0030】
加熱は被塗布体の表面温度を監視しながら行うのが好ましく、更に、被塗布体の表面温度に基づいて随時加熱出力を調節しながら加熱を行うPID制御(比例制御(Proportional Control)、積分制御(Integral Control)、微分制御(Derivative Control)を組み合わせて設定値に収束させる制御)を併用しながら加熱を行うことが好ましい。また、誘導加熱ヒーターコイルを冷却するための冷却水循環機を別途設けてもよい。
【0031】
ここで、感光体表面の膜強度及び硬化度について説明する。
硬化性材料を硬化して形成した表面層を有する感光体表面の膜強度は、硬化に寄与する官能基の硬化度が高いほど良好である。したがって、硬化後の感光体表面において硬化性材料の未硬化官能基の残存量を評価することによって、膜強度を代用評価することができる。未硬化官能基としてアクリロイルオキシ基の場合、末端オレフィン(CH2=)が挙げられる。この末端オレフィン(CH2=)の残存量を評価する方法には、感光体表面層の断片をサンプルとして使用する赤外分光反射法が挙げられる。赤外分光反射法において、アクリロイルオキシ基の末端オレフィン(CH2=)のピーク面積を分子とし、アクリロイルオキシ基のカルボニル(C=O)のピーク面積を分母としたピーク面積比を算出すればよい(以下、このピーク面積比を未硬化残存基IRピーク比と呼ぶ)。赤外分光スペクトルにおけるピーク波数は、分子構造や硬化による影響を受けるため、硬化性材料によって異なる場合が多い。例えば、硬化されたアクリロイルオキシ基を有するアリールアミン系化合物の場合、アクリロイルオキシ基のカルボニル(C=O)伸縮振動に基づくピークは、1725cm−1付近に見られ、末端オレフィン(CH2=)面内変角振動に基づくピークは1405cm−1付近に見られる。
硬化度は上述の加熱条件のなかでも、特に感光体表面の最高到達温度に大きく影響を受け、加熱時の最高到達温度が高温であるほど硬化度が良好な表面層が得られる。
【0032】
本発明における感光体ごとの硬化度ばらつきの抑制方法について説明する。
製造された感光体間で硬化率がばらつく理由として、加熱工程における加熱雰囲気の酸素濃度が感光体ごとに一定でないことが挙げられる。感光体製造中において加熱雰囲気の酸素濃度が不安定となる現象は、加熱工程が行われる不活性ガス雰囲気と、酸素濃度が高い外界とを隔てる境界(通常は扉などの隔壁)が、頻繁に開閉したり長時間開放されることが主な原因である。したがって、加熱時において酸素濃度を感光体ごとに統一するためには、加熱工程が行われる不活性ガス雰囲気に感光体を運び入れる、あるいは酸素濃度が高い外界へ運び出した後に、酸素濃度が安定するまでしばらく待機させることが有効である。しかし、複数の感光体を極力早く製造するという高生産性の観点からは、この待機時間は極力省くべきものである。
【0033】
本発明では、加熱雰囲気の酸素濃度が一定でないことによって起こる硬化度のばらつきを抑制するために、製造している1本1本の感光体それぞれの加熱時において酸素濃度を測定し、その値が小さい感光体ほど、加熱工程における最高到達温度を低温にする。
【0034】
加熱時における最高到達温度の制御方法について更に詳しく説明する。
加熱時の酸素濃度が小さい感光体ほど、加熱時における最高到達温度を低温に調節するためには、感光体製造過程において、加熱工程での加熱開始直前に酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段と、その測定された酸素濃度に基づいて所定のテーブルによって加熱条件を決定するプログラム処理手段を併用する方法が好ましい。
【0035】
上記酸素濃度に基づいて加熱条件を決定する処理としては、
(1)予め、ある酸素濃度範囲の場合にはある最高到達温度にまで加熱するという加熱条件を加熱装置に複数記憶させておき、加熱直前に測定された酸素濃度に基づいて加熱条件を選択する方法、
(2)予め、ある酸素濃度を入力すると所望の硬化率を得るための最高到達温度が算出される関数を用意しておき、測定された酸素濃度に基づいて最高到達温度を算出し、その最高到達温度を得るための加熱出力を感光体ごとに設定する方法、が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例1>
先ず、以下の手順により、表面層を塗布するための感光体を作成した。
酸素欠損型酸化スズの被覆層を有する酸化チタン導電性粒子から成る粉体 50質量部
(粉体低効率100Ω・cm)
レゾール型フェノール樹脂 37.7質量部
(商品名:フェノライトJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%)
シリコーンオイル 0.007質量部
(商品名:SH28PA、東レシリコーン(株)製)
真球状シリコーン樹脂微粒子 1.56質量部
(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン合同会社製)
2−メトキシ−1−プロパノール 21.7質量部
メタノール 11.7質量部
上記材料からなる溶液を、ボールミルで20時間分散し導電層用塗料を調製した。
【0038】
温度23℃、相対湿度60%の環境下で熱間押し出しすることにより得られた、長さ357.5mm、直径30mmの円筒状のアルミ製導電性支持体(JIS−A3003、アルミニウム合金のED管、昭和アルミニウム(株)製)上に、上記導電層用塗布液を浸漬塗布し、温度140℃の乾燥機中で1時間加熱することにより、支持体上端から179mmの位置の平均膜厚が25μmの導電層を形成した。
【0039】
N−メトキシメチル化ナイロン 4質量部
(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学産業(株)製)
共重合ナイロン樹脂 2質量部
(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)
上記材料を、メタノール65質量部/n−ブタノール30質量部の混合溶媒に溶解し、中間層用塗布液を調製した。この中間層用塗布液を上記導電層上に浸漬塗布し、温度100℃の乾燥機中で10分間乾燥して、円筒状支持体上端から179mm位置の平均膜厚が0.4μmの中間層を形成した。
【0040】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン 10質量部
(CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強いピークを有する結晶形)
ポリビニルブチラール 5質量部
(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)
シクロヘキサノン 250質量部
上記材料を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1時間分散し、次に、酢酸エチル250質量部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を上記中間層上に浸漬塗布し、温度100℃の乾燥機中で10分間乾燥して、円筒状支持体上端から179mm位置の平均膜厚が0.18μmの電荷発生層を形成した。
【0041】
下記構造式(CTM−1)で示される電荷輸送物質 5質量部
【化1】

下記構造式(CTM−2)で示される電荷輸送物質 5質量部
【化2】

結着樹脂としてポリカーボネート樹脂 10質量部
(商品名:ユーピロンZ−400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)[粘度平均分子量(Mv)40,000]
上記材料を、クロロベンゼン70質量部及びジメトキシメタン30質量部の混合溶媒に溶解し、電荷輸送層用塗布液を調合した。この電荷輸送層用塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、温度100℃の乾燥機中で60分間乾燥して、円筒状支持体上端から179mm位置の平均膜厚が18μmの電荷輸送層を形成した。
ここまでで、導電性円筒状支持体上に導電層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を積層した電子写真感光体を製造した(以下、上記にしたがって製造した、円筒状支持体に導電層から電荷輸送層まで積層した感光体を四層感光体と呼ぶ)。
【0042】
下記構造式(CTM−3)で示される硬化性材料 30質量部
【化3】

1−プロパノール 35質量部
上記材料を1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)35質量部に溶解した後にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の0.5μmメンブレンフィルターで加圧濾過を行い、表面層用塗料を調製した。
【0043】
以下の手順により、図1に示す表面層塗布装置を用いて、四層感光体上に上記表面層用塗料を浸漬塗布した。
図1の表面層塗布装置は、塗料循環機1と円筒体昇降機2から構成されている。塗料循環機1は、ポンプ3によって表面層用塗料4を矢印Aの方向に押し出し、塗料は4本ある塗布ポット5の上端部から溢れ出て、塗料タンク6に回収され、再びポンプによって矢印Aの方向へ送り出される構造になっている。
【0044】
4本の被塗布体7の円筒内面部を把持具8で把持し、塗布ポット5に4本同時に沈めて400mm/分の速度で4本同時に引き上げることで表面層塗膜を形成した。その後、感光体下端部及び感光体内面に付着した余分な表面層塗膜をゴムブレードで擦りながらn−プロパノールでリンスすることによって洗浄した。その後、円筒体昇降機2で4本の感光体をベルトコンベア(図1では不図示)に載せ、図2に示す電子線照射装置へと運んだ。
【0045】
続いて、以下の手順により図2に示す電子線照射装置を用いて、表面層塗膜を有する感光体に電子線を照射した。
図2の電子線照射装置は、カーテンビーム型であり電子線照射ユニット9と電子線照射室10から構成されている。電子線照射ユニット9は、岩崎電気(株)製の最大電子線加速電圧が150kV、電子線照射窓箔15が厚さ8μmのチタン箔である電子線照射装置を用いた。電子線照射室10は鉛製遮蔽壁25で覆われている。電子線照射室10の入口部と出口部にはシャッター式の扉12と17があり、入口から出口にかけてベルトコンベア13が貫通している。更に電子線照射室10内には、位置Bに運ばれてきた感光体を把持して電子線照射窓箔15の正面の照射位置Cに移動させる動作及び電子線照射終了後に感光体を把持してベルトコンベア上の位置Dに戻す動作を行う回転動作アーム14、照射位置Cにて感光体を回転させる動作を行う照射用回転駆動機16を備えている。尚、電子線照射室10内にはガス流入口11から窒素ガスが吹き込まれている。
【0046】
電子線照射室入口扉12を開け、ベルトコンベア13により表面層塗膜を有する4本の感光体をまとめて電子線照射室10に運び入れ、速やかに電子線照射室入口扉12を閉めた。続いて、位置Bに運ばれてきた1本目の感光体を回転動作アーム14によって照射位置Cに移動させ、照射用回転駆動機16に感光体をセットし、感光体を300rpmの速度で回転させながら感光体に電子線を照射して、照射終了後、回転動作アーム14によって感光体をベルトコンベア上の位置Dに移動させた。2本目から4本目の感光体にも順次同様に電子線を照射した。このときの電子線の照射は、照射距離が30mm、電子線加速電圧が70kV、電子線ビーム電流が8mA、電子線照射時間が1.6秒の条件で行った。
電子線照射が終了した後、電子線照射室出口扉17を開け、ベルトコンベア13により感光体を4本まとめて図3に示す加熱装置へと運んだ。
【0047】
続いて、以下の手順により図3に示す加熱装置を用いて、電子線を照射された表面層塗膜を有する感光体を加熱した。
図3の加熱装置は、加熱ユニット18と加熱室19から構成されている。加熱ユニット18は、誘導加熱型ヒーターコイル21を有する。加熱ユニット18は、感光体を加熱する加熱条件を複数記憶することができ、後述する酸素濃度計26から入力される値を基に、所定のテーブルから加熱温度を決定する機能を有する。誘導加熱型ヒーターコイル21は、水温23℃の冷却水循環機(不図示)によって冷却されている。加熱室19は図2に示される電子線照射室10と隣接しており、ステンレス製の壁27で覆われている。加熱室19の入口部と出口部にはそれぞれシャッター式の扉17と24があり、入口から出口にかけてベルトコンベア13が貫通している。更に加熱室19内には、ベルトコンベア上の位置Eに運ばれてきた感光体を把持して誘導加熱型ヒーターコイル21に挟まれる加熱位置Fに移動させる動作及び加熱が終了した感光体を把持してベルトコンベア上の位置Eに戻す動作を行う伸縮動作アーム20、加熱位置Fで感光体を回転させる動作を行う加熱用回転駆動機22、加熱室内の酸素濃度を計測する機能と加熱装置へ酸素濃度の値を伝送する機能を有する酸素濃度計26、誘導加熱型ヒーターコイルに挟まれた位置に在るときの感光体の表面温度を計測する放射温度計23、を具備している。尚、加熱室19内にはガス流入口11から窒素ガスが吹き込まれている。
【0048】
電子線を照射された表面層塗膜を有する感光体を4本まとめてベルトコンベア13によって電子線照射室出口扉17から運び入れ、電子線照射室出口扉17を閉めた。続いて、位置Eにある1本目の感光体を伸縮動作アーム20によって感光体を加熱位置Fに移動させ、回転駆動機22によって感光体を50rpmの速度で回転させながら、誘導加熱型ヒーターで感光体を加熱した。
【0049】
ここで、加熱を開始するにあたって、感光体ごとに加熱開始直前の酸素濃度計26により測定された酸素濃度の測定値に基づいて、予め記憶させておいた複数の加熱条件から所望の加熱条件を選択した。予め記憶させておいた加熱条件は、以下の4条件である。
加熱条件1:加熱開始時における酸素濃度が20ppm未満の場合は感光体表面到達温度が110℃に30秒かけて到達する加熱条件、
加熱条件2:加熱開始時における酸素濃度が20ppm以上40ppm未満の場合は感光体表面到達温度が113℃に30秒かけて到達する加熱条件、
加熱条件3:加熱開始時における酸素濃度が40ppm以上60ppm未満の場合は感光体表面到達温度が119℃に30秒かけて到達する加熱条件、
加熱条件4:加熱開始時における酸素濃度が60ppm以上の場合は感光体表面到達温度が130℃に30秒かけて到達する加熱条件。
【0050】
加熱直前における酸素濃度に基づいて加熱条件を選択するまでの処理手順を示したプログラム流れ図(テーブル)を図4に示す。4本の感光体を加熱室19に運び入れ、1本目の感光体が加熱位置Fにセットされると図4のプログラム処理が開始される。まず、加熱位置Fにおいて感光体の有無判別を行う。加熱位置Fに感光体がセットされると、その時点で酸素濃度計26に表示される値が加熱ユニット18に入力される処理が働く。その後、図4に示すテーブルにしたがって、加熱位置Fにセットされたときの酸素濃度に基づいて、酸素濃度が20ppm未満であれば加熱条件1、20ppm以上40ppm未満であれば加熱条件2、40ppm以上60ppm未満であれば加熱条件3、60ppm以上であれば加熱条件4を選択する処理が働く。これらの加熱条件によって加熱が終了した感光体は、位置Gへ移送される。このようにして、2〜4本目の感光体についても同様に加熱を行った。尚、酸素濃度の値は1〜4本目の感光体についてそれぞれ、71ppm、32ppm、17ppm、8ppmであった。
【0051】
4本の感光体への加熱を終了した後、加熱室出口扉24を開け、ベルトコンベア13により感光体を4本まとめて加熱室19から排出し、速やかに加熱室出口扉24を閉めた。以上のようにして、円筒状支持体上端から179mm位置の平均膜厚が4μmの表面層を形成した。
【0052】
上述の連続した工程に被塗布体を4本ずつ流し、感光体を4本ずつ順次連続して合計100本の感光体を製造した。製造した100本の感光体のうち1本目から3本毎にサンプリングし、サンプリングした合計34本の感光体について、感光体の上端から179mmの位置の表面層をカミソリで剥ぎとり、その表面層断片について赤外分光全反射測定を行い、未硬化残存基IRピーク比を算出した。赤外分光測定機は、Perkin Elmer Instrments製の、Spectrum One FT−IR Spectrometerを使用した。未硬化残存基IRピーク比は、1400.32cm−1以上1413.82cm−1以下の波数範囲をアクリロイルオキシ基の末端オレフィン(CH2=)のピーク面積、1699.29cm−1以上1770.65cm−1以下の波数範囲をアクリロイルオキシ基のカルボニル(C=O)のピーク面積として算出した。
【0053】
<比較例1>
実施例1において、加熱ユニット18への酸素濃度値の入力をせずに加熱条件を加熱条件1に固定した以外は、上記と同様に連続して合計100本の感光体を製造した。製造中において、酸素濃度計26は5ppm〜80ppmの間で値が振れていた(一定でなかった)。製造した100本の感光体のうち1本目から3本毎にサンプリングし、合計34本の感光体について実施例1と同じ測定条件により未硬化残存基IRピーク比を算出した。
サンプリングした合計34本について算出した未硬化残存基IRピーク比を、製造した感光体の本数目を横軸にしてプロットした結果を、実施例1と比較例1とをあわせて図5に示す。
図5のグラフから明らかなように、実施例1では、加熱条件を固定した比較例1と比べて、感光体ごとの未硬化残存基IRピーク比のばらつきが低減されることが示された。
【0054】
<実施例2>
実施例1において、加熱装置に予め記憶させておく加熱条件を、以下の4条件に変更した。
加熱条件1:加熱開始時における酸素濃度が40ppm未満の場合は感光体表面到達温度が110℃に11秒かけて到達する加熱条件、
加熱条件2:加熱開始時における酸素濃度が40ppm以上60ppm未満の場合は感光体表面到達温度が117℃に11秒かけて到達する加熱条件、
加熱条件3:加熱開始時における酸素濃度が60ppm以上80ppm未満の場合は感光体表面到達温度が128℃に11秒かけて到達する加熱条件、
加熱条件4:加熱開始時における酸素濃度が80ppm以上の場合は感光体表面到達温度が144℃に11秒かけて到達する加熱条件。
上記した加熱条件以外は、実施例1と同様に連続して合計100本の感光体を製造した。最初の4本の感光体の加熱時における酸素濃度の値は、1〜4本目の感光体についてそれぞれ、108ppm、76ppm、57ppm、43ppmであった。
製造した100本の感光体のうち1本目から3本毎にサンプリングし、合計34本の感光体について実施例1と同じ測定条件により未硬化残存基IRピーク比を算出した。
【0055】
<比較例2>
実施例2において、加熱ユニット18への酸素濃度値の入力をせずに加熱条件を加熱条件1に固定した以外は、実施例1と同様に連続して合計100本の感光体を製造した。製造中、酸素濃度計26は40ppm〜120ppmの間で値が振れていた(一定でなかった)。製造した100本の感光体のうち1本目から3本毎にサンプリングし、合計34本の感光体について実施例1と同じ測定条件により未硬化残存基IRピーク比を算出した。
サンプリングした合計34本について算出した未硬化残存基IRピーク比を、製造した感光体の本数目を横軸にしてプロットした結果を、実施例2と比較例2とをあわせて図6に示す。
図6のグラフから明らかなように、実施例2では、加熱条件を固定した比較例2と比べて、感光体ごとの未硬化残存基IRピーク比のばらつきが低減されることが示された。
【符号の説明】
【0056】
9 電子線照射ユニット
10 電子線照射室
13 ベルトコンベア
14 回転動作アーム
15 電子線照射窓箔
16 照射用回転駆動機
18 加熱ユニット
19 加熱室
20 伸縮動作アーム
21 誘導加熱型ヒーターコイル
22 加熱用回転駆動機
23 放射温度計
26 酸素濃度計
28 ターミナル
29 フィラメント
30 グリッド
31 電子線発生加速管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性材料を含有する表面層用塗料を被塗布体に塗布する塗布工程と、該被塗布体上に形成された塗布膜に電子線を照射する電子線照射工程と、該電子線照射工程後に該塗布膜を加熱する加熱工程の少なくとも三つの工程を経て順次連続して製造される電子写真感光体の製造方法において、
該加熱工程における該塗布膜の最高到達温度を、加熱雰囲気の酸素濃度が低い該被塗布体あるいは加熱雰囲気の酸素濃度が低い該被塗布体の群ほど、低温にすることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項2】
前記加熱雰囲気の酸素濃度が、10ppm以上100ppm以下である請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項3】
硬化性材料を含有する表面層用塗料を被塗布体に塗布する塗布工程と、該被塗布体上に形成された塗布膜に電子線を照射する電子線照射工程と、該電子線照射工程後に該塗布膜を加熱する加熱工程の少なくとも三つの工程を経て順次連続して製造される電子写真感光体の製造方法において、
該電子線照射工程と該加熱工程との間に、被塗布体毎に加熱開始直前における加熱雰囲気の酸素濃度を測定し、該酸素濃度の値に基づいて所定のテーブルにより被塗布体毎に該加熱工程における該塗布膜の最高到達温度を決定する加熱温度決定工程を有し、
該加熱温度決定工程においては、該酸素濃度の値が所定の値よりも低い該被塗布体あるいは加熱雰囲気の酸素濃度が低い該被塗布体の群ほど、該最高到達温度は所定の値よりも低く設定することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項4】
前記加熱雰囲気の酸素濃度が、10ppm以上100ppm以下である請求項4に記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−145597(P2011−145597A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8047(P2010−8047)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】