説明

電子写真感光体及び電子写真装置

【課題】優れた電子写真特性を損なうことなく感光層表面のクリーニング性の向上、画像特性であるメモリー(画像上に記録された文字等が残像として印刷される現象)をなくすとともに、高感度、高応答性を有し、しかも光疲労のない電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも電荷発生剤と電荷移動剤と結着樹脂を有する感光層を形成した電子写真感光体において、該感光層中に結着樹脂として少なくとも特定のポリカーボネート共重合体と、電荷移動剤として特定のスチルベン化合物と、アミン系酸化防止剤を含有することを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機やレーザビームプリンタ等の電子写真装置に用いられる電子写真感光体に関し、特に有機光導電材料を用いた電子写真感光体に係るものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体の光導電材料には、一般的に、セレン(Se)、硫化カドミウム(CdS)、酸化亜鉛(ZnO)、アモルファスシリコン(a−Si)等の無機材料が使用されているが、かかる無機材料を用いた感光体は、暗所で例えば帯電ローラーにより帯電し、次いで、像露光を行い露光部のみの電荷を選択的に消失させて静電潜像を形成し、さらに、現像剤で可視化して画像形成するごとく利用されている。かかる電子写真感光体に要求される基本特性として、(1)暗所で適当な電位に帯電できること、(2)光照射により表面電荷を消失することができる機能を備えていること等であるが、前記無機材料は、各々長所、短所を有している。例えば、セレン(Se)は、前記(1)、(2)の特性は十分満足するが、可撓性がなくフィルム状に加工することが難しく、また、熱や機械的衝撃に鋭敏であるため取扱いに注意を要する等の欠点がある。さらに、アモルファスシリコン(a−Si)は製造条件が難しく、製造コストが高くなるという欠点がある。
このため、近年は、電子写真感光体として、有機光導電物質として知られるフタロシアニンやアゾ化合物を電荷発生層として用い、さらにヒドラゾン化合物等からなる電荷移動層を積層して構成される機能分離型の有機感光体が主流になっている。
【0003】
ところで、従来より、かかる有機感光体の結着樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が最も一般的に用いられている。
しかしながら、結着樹脂としてビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を用いて感光層を形成させる場合には、感光層の塗工液が安定しない等の欠点がある。このため、かかる欠点のない電荷移動層の材料が要望されている。
【0004】
また、この樹脂を用いた感光層は表面の摩擦係数が大きいため、この電子写真感光体を電子写真装置に装着して電子写真プロセスを繰り返した場合、感光層表面の残留トナーのクリーニングに一般的に用いられているクリーニングブレードが反転したり、あるいは異音を発する等の不具合が生じていた。
さらに、このポリカーボネート樹脂は耐油性が悪いため、電子写真装置のメンテナンス時等において、誤って感光層表面に触れてしまい指紋が付いてしまうことがあり、その場合には、指紋が付いた部分にクラックが発生して、その電子写真感光体が使用不可能となってしまうことがしばしばあった。
【0005】
他方、塗工液の安定性を考慮して、電子写真感光体の感光層の材料としてビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を用いることも提案されている。しかし、このビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を用いても摩擦係数が大きいことに起因するブレードの捲(まく)れ、あるいは異音やクラックの発生等の問題解決には至らなかった。
その後、前記ビスフェノールA型、Z型構造のポリカーボネート共重合体と特定の電荷移動剤を組み合わせた例が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、クリーニング性など前記諸問題を全て解決できるものは未だ見出されていない。
【特許文献1】特開平5−257297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、優れた電子写真特性を損なうことなく感光層表面のクリーニング性の向上、画像特性であるメモリー(画像上に記録された文字等が残像として印刷される現象)をなくすとともに、高感度、高応答性を有し、しかも光疲労のない電子写真感光体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、感光層中に結着樹脂として特定の構造のポリカーボネート共重合体と特定の構造の電荷移動剤及び添加剤を用いた電子写真感光体が、前記従来の技術の問題点がなく、しかも長期間にわたって優れた静電特性を維持することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かかる見地に基づいてなされた請求項1記載の発明は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生剤と電荷移動剤と結着樹脂を有する感光層を形成した電子写真感光体において、該感光層中に結着樹脂として少なくとも一般式(I)及び一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート共重合体と、電荷移動剤として一般式(III)で表されるスチルベン化合物と、アミン系酸化防止剤及びトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
一般式(I)
【化1】


〔式中、RとRは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の置換無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換無置換のアリール基を表す。RとRは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の置換無置換のアルキル基、RとRで形成される炭素数5〜8の1,1−シクロアルキリデン基のいずれかを表し、g及びiは、各々独立に0〜4の整数を表し、hは1〜4の整数を表す。〕
一般式(II)
【化2】


〔R及びRは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の置換無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換無置換のアリール基のいずれかを表し、j及びkは、各々独立に0〜4の整数を表す。〕
一般式(III)
【化3】


(式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を表す。)
【0009】
さらに、請求項1の電子写真感光体において、トリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0010】
さらに、請求項1の電子写真感光体において、前記電荷移動剤が式(IIIa)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
式(IIIa)
【化4】

【0011】
さらに請求項1の電子写真感光体において、前記アミン系酸化防止剤がN−フェニル−1−ナフチルアミンであることを特徴とする電子写真感光体である。
【0012】
さらに請求項1の電子写真感光体において、前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールであることを特徴とする電子写真感光体である。
【0013】
さらに請求項1の電子写真感光体において、該感光層中に結着樹脂として一般式(I)及び一般式(II)及び一般式(IV)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
一般式(IV)
【化5】


〔式中、R10、11は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ルオキシ基のいずれかを表し、aは1〜200の整数であり、Xは、−O−、又は下記一般式(V)若しくは(V’)(式中のR13は、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ルオキシ基のいずれかを表し、b、b’は、各々独立に0〜6の整数、dは0〜4の整数である。)で示される基を表し、Xは、−O−、又は下記一般式(VI)若しくは(VI’)(式中、R14は、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ルオキシ基のいずれかを表す。)で示される基を表し、f、f’は、各々独立に0〜6の整数、lは0〜4の整数である。〕
一般式(V)
【化6】


一般式(V’)
【化7】


一般式(VI)
【化8】


一般式(VI’)
【化9】

【0014】
さらに、請求項1の電子写真感光体において、該感光層中に結着樹脂として一般式(I)及び一般式(II)及び一般式(VII)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
一般式(VII)
【化10】


〔式中、R21〜R32は、各々独立に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基のいずれかを表し、m〜pは、各々独立に2〜6の整数を表し、qは0〜200の整数を表す。〕
【0015】
さらに請求項1の電子写真感光体において、前記感光層が電荷発生剤が含有される電荷発生層と、その上に少なくとも電荷移動剤が含有される電荷移動層からなることを特徴とする電子写真感光体である。
【0016】
さらに請求項1の電子写真感光体において、前記電荷移動剤に対する結着樹脂の比率が1.25〜2.5(重量比)であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0017】
さらに請求項1の電子写真感光体において、前記電荷発生剤がY型オキシチタニウムフタロシアニンであることを特徴とする電子写真感光体である。
【0018】
さらに感光体、及び該感光体に接触するように配置された電圧が印加される帯電部材を有することを特徴とする前記1〜10のいずれかの感光を含有する電子写真装置である。
【発明の効果】
【0019】
後記の実施例と比較例の特性差からみてもわかるように、本発明の電子写真感光体は、繰り返し安定性を有し、高い市場要求に応えられるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る電子写真感光体の好ましい実施の形態を図面に沿って説明する。図1は本発明の電子写真感光体の構成例を示す断面図である。導電性支持体(1)上に、少なくとも電荷発生剤が含有される電荷発生層(2)が形成され、その上に少なくとも電荷移動剤が含有される電荷移動層(3)が形成される機能分離型電子写真感光体が適用されるものである。この場合、電荷発生層と電荷移動層とにより感光層(4)が形成される。
【0021】
電荷発生層の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、例えばオキシチタニウムフタロシアニン顔料を電荷発生剤として用い、バインダー樹脂とともに適当な溶媒により分散若しくは溶解した塗布液を、所定の下地となる支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。
【0022】
電荷移動層は、少なくとも後述する本発明の電荷移動剤を有するものであり、この電荷移動層は、例えば、その下地となる電荷発生層上に電荷移動剤をバインダー樹脂を用いて結着することにより形成することができる。
【0023】
電荷移動層の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、通常の場合、電荷移動剤をバインダー樹脂とともに適当な溶媒により分散若しくは溶解した塗布液を、下地となる電荷発生層上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
【0024】
また、電荷発生層と電荷移動層を上下逆に積層させた逆積層型電子写真感光体等についても適用することができる。さらに、電荷発生剤と電荷移動剤とを同一層に含有する単層型電子写真感光体にも適用できる。また、必要に応じて導電性支持体と電荷発生層の間に中間層を設けても良いし、感光層上に保護層を設けても良い。
【0025】
本発明に用いることができる導電性支持体としては、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、チタン、金、銀、銅、錫、白金、モリブデン、インジウム等の金属単体やそれらの合金の加工体が挙げられる。形状は、シ−ト状、フイルム状、ベルト状等フレキシブルな形状であればいずれのものでもよく、そして、無端、有端を問わない。また、導電性支持体の直径は、60mm以下、好ましくは30mm以下のものが特に有効である。
【0026】
この中でも、JIS3000系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金が用いられ、EI(Extrusion Ironing)法、ED(Extrusion Drawing)法、DI(Drawing Ironing)法、II(Impact Ironing)法等一般的な方法により成形を行なった導電性支持体が好ましく、さらに、その導電性支持体の表面に、ダイヤモンドバイト等による表面切削加工や研磨、陽極酸化処理等の表面処理、またはこれらの加工、処理を行なわない無切削管などいずれのものでもよい。
【0027】
また、基体として樹脂を用いる場合、樹脂中に金属粉や導電性カーボン等の導電剤を含有させたり、基体形成用樹脂として導電性樹脂を用いることもできる。
【0028】
さらに、基体にガラスを用いる場合、その表面に酸化錫、酸化インジウム、ヨウ化アルミニウムで被覆し、導電性を持たせてもよい。
【0029】
また、支持体上に中間層を形成してもよい。この中間層は接着向上機能、アルミニウム管からの流れ込み電流を防止するバリヤー機能、アルミニウム管表面の欠陥被覆機能等をもつ。この中間層には、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂等の各種樹脂を用いることができる。これらの樹脂層は、単独の樹脂で構成してもよく、2種以上の樹脂を混合して構成してもよい。また、層中に金属化合物、カーボン、シリカ、樹脂粉末等を分散させることもできる。さらに、特性改善のために各種顔料、電子受容性物質や電子供与性物質等を含有させることもできる。
【0030】
これらの中間層は感光層と同様に適当な溶媒、分散、塗工法を用いて形成することができる。中間層の膜厚は、0.1μm〜50μm、好ましくは0.5μm〜20μmが適当である。
【0031】
本発明に用いることができる電荷発生剤としては、オキシチタニウムフタロシアニンが高感度特性を有することから望ましく、中でも図3に示すX線回折ピーク図のY型オキシチタニウムフタロシアニンが本発明の電荷移動剤との組み合わせにおいて相性がよい。さらに本発明はそれに限定されるものではない。その他、例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−砒素、アモルファスシリコン、無金属フタロシアニン、他の金属フタロシアニン顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ポリアゾ顔料、インジゴ顔料、スレン顔料、トルイジン顔料、ピラゾリン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、多環キノン顔料、ピリリウム塩等を用いることができる。
【0032】
これらの電荷発生剤は単体で用いてもよいし、適切な光感度波長や増感作用を得るために2種類以上を混合して用いてもよい。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmである。
【0033】
次に、本発明の感光層に用いられる結着樹脂として、一般式(I)、一般式(II)、一般式(IV)、一般式(V)、一般式(VI)、一般式(VII)の具体例を次に示すが、これらに限定されるものでない。
【0034】
一般式(I)の具体例を以下に示す。
式(Ia)
【化11】


式(Ib)
【化12】


式(Ic)
【化13】


式(Id)
【化14】


式(Ie)
【化15】


式(If)
【化16】


式(Ig)
【化17】


式(Ih)
【化18】

【0035】
一般式(II)の具体例を以下に示す。
式(IIa)
【化19】


式(IIb)
【化20】


式(IIc)
【化21】

【0036】
一般式(IV)の具体例を以下に示す。
式(IVa)
【化22】


式(IVb)
【化23】


式(IVc)
【化24】


式(IVd)
【化25】

【0037】
一般式〔VII〕の具体例を以下に示す。
式〔VIIa〕
【化26】

【0038】
一方、本発明の電子写真感光体においては、感光層中に、上述した特定のポリカーボネート共重合体以外の結着樹脂を含有させることもできる。
【0039】
感光層を形成するために用いることができる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、EVA(エチレン・酢酸ビニル・共重合体)樹脂、ACS(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、エポキシアリレート等の光硬化樹脂等がある。これらは、1種でも2種以上混合して使用することも可能である。また、分子量の異なった樹脂を混合して用いれば、硬度や耐摩耗性を改善できるのでより好ましい。
【0040】
なお、感光層が電荷発生層と電荷移動層とからなる場合には、前記樹脂はどちらの層にも適用できる。
【0041】
結着樹脂の量は、電荷発生剤100重量部に対し、10〜500重量部、好ましくは25〜300重量部が適当である。
【0042】
次に本発明の電子写真感光体には、電荷移動剤として一般式(III)で表される化合物が含有される。
一般式(III)
【化27】


〔式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ル基を表す。〕
【0043】
上記電荷移動剤は、本発明のバインダー樹脂との相性がよく、耐環境性に強い電子写真感光体を提供できるものである。
【0044】
一般式(III)に示す化合物において、特に式(IIIa)〜(IIId)で表される化合物が本発明のバインダー樹脂との相性がよく好ましい。
以下、具体的化合物を示すがこれらに限定されるものではない。
式(IIIa)
【化28】


式(IIIb)
【化29】


式(IIIc)
【化30】


式(IIId)
【化31】

【0045】
本発明は、電荷移動剤に対する結着樹脂の比率は、1.25〜2.5(重量比)の範囲が好ましい。さらに好ましくは1.5から2.0(重量比)がよい。2.5(重量比)より多いと、残留電位が上昇するなど電気特性が悪化する。他方、1.25(重量比)より少ないと、耐摩耗性等の機械特性が低下する。
【0046】
さらに、一般式(III)で表される化合物と他の電荷移動剤とを混合して用いることもできる。この場合、一般式(III)の化合物と他の化合物の含有比率は、(III):他の化合物=50:50〜5:95、好ましくは30:70〜5:95の範囲がよい。
【0047】
他の電荷移動剤としては、ポリビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリヘプタジイエン、ポリピリジンジイル、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリフタロシアニン等の導電性高分子化合物を用いることができる。又、低分子化合物として、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノン及びこれらの誘導体、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベン等を使用することができる。また、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の高分子化合物にLiイオン等の金属イオンをドープした高分子固体電解質等も用いることができる。さらに、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタンで代表される電子供与性化合物と電子受容性化合物で形成された有機電荷移動錯体等も用いることができ、これらを1種だけ添加して又は2種以上の化合物を混合して添加して、所望の感光体特性を得ることができる。
【0048】
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、リングコート、バーコートスピナーコート等の方法を用いることができる。
【0049】
塗布液に使用する溶剤には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、メトキシエタノール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、あるいはアニソール等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等がある。特にその中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、あるいはハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0050】
本発明の電子写真感光体を製造するための塗布液には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤等を添加して、感光体の特性、耐久性、機械特性の向上を図ることができる。特に、酸化防止剤と紫外線吸収剤との併用は感光体の耐久性向上に寄与し有用である。その中でも該感光層にアミン系酸化防止剤が好ましく、例えば、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−エチル−2−メチル−p−フェニレンジアミン、N−エチル−N−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジアリル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、4,4′−ジオクチル−ジフェニルアミン、4,4′−ジオクチル−ジフェニルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0051】
フェノール系酸化防止剤は、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピオン酸ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、α−トコフェロール、β−トコフェロール、n−オクタデシル−3−(3’−5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のポリフェノール系等が好ましく、これらを1種若しくは2種以上を同時に感光層中に含有することができる。
【0052】
紫外線吸収剤は、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル、サリチル酸−p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸−p−オクチルフェニル等のサリチル酸系が好ましく、特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。以上の酸化防止剤を1種若しくは2種以上を同時に感光層に含有することができる。
【0053】
本発明の電子写真感光体に添加されるアミン系酸化防止剤の添加量は、結着樹脂に対して3〜20重量%の範囲であることが好ましい。一方、紫外線吸収剤の添加量は、結着樹脂に対して3〜30重量%とすることが好ましい。
【0054】
加えて、感光層の上に、ポリビニルホルマール樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の有機薄膜や、シランカップリング剤の加水分解物で形成されるシロキサン構造体から成る薄膜を成膜して表面保護層を設けてもよく、その場合には、感光体の耐久性が向上するので好ましい。この表面保護層は、耐久性向上以外の他の機能を向上させるために設けてもよい。
保護層の膜厚は、0.1〜20μmが適当である。
【0055】
本発明の電子写真感光体が搭載される電子写真装置としては、少なくとも帯電、露光、転写工程など通常用いられる方法を有する。詳細には帯電方式はブラシ、ローラーなどの接触式、スコロトロン、コロトロン等の非接触式の、いずれの方式でもよく、正負いずれの帯電電荷でもよい。露光方式は、LED,LD等いずれでもよい。現像方式は、2成分、1成分、磁性/非磁性いずれでもよい。転写方式もローラー、ベルト等いずれでもよい。クリーニング方式はブレードクリーニング、ブラシクリーニング、帯電部や現像部をクリーニング工程として兼用してもよい。また、クリーニング工程や除電工程を省略した方式でもよい。
【0056】
次に、本発明の電子写真装置について説明する。図2は、本発明の電子写真装置の概略構成図である。11は感光体であって、それと接触して帯電部材12が設けられている。帯電部材には、接触型で電源13から電圧が供給されるようになっている。感光体の周囲には、露光装置14、現像装置15、転写装置16、クリーニング装置17、除電装置18および19は定着装置である。
【0057】
以下、本発明に係る電子写真感光体の実施例を実験例、比較例とともに詳細に説明する。
【実施例1】
【0058】
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルキド樹脂(ベッコライトM−6401−50大日本インキ化学工業社製)とアミノ樹脂(スーパーベッカミンG−821−60大日本インキ化学工業社製)を65:35の割合で混合し、さらに前記混合樹脂と酸化チタン(CR−EL石原産業社製)を1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液として、1.5μmの膜厚で形成した。
【0059】
次に、図3のX線回折角Cukα(2θ±0.2度)27.3度に最大ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン粉末10gをガラスビ−ズと1,3ジオキソラン500mlにポリビニルブチラール樹脂(BX−1積水化学工業社製)10gを溶解した液を加え、サンドミル分散機で20時間分散し、得られた分散液をろ過してガラスビ−ズを取り去り、電荷発生層用塗布液を作成した。これを前記下引層上に浸漬塗工し乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0060】
次にバインダー樹脂として式(Ia)、式(IIa)を87.50:12.50のモル比(mol%)で、粘度平均分子量(Mv:40,000)のポリカーボネート共重合体と、電荷移動剤として、式(IIIa)で表される化合物と、芳香族アミン系酸化防止剤としてN−フェニル−1−ナフチルアミン、紫外線吸収剤として2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールとを、重量比1.67:1.0:0.05:0.05で用意し、テトラヒドロフランに溶解し、電荷移動層用塗工液を調製した。電荷発生層を形成した基体を該電荷移動層用塗工液に浸漬塗工し、130℃で60分乾燥し膜厚25.0μmの電荷移動層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【実施例2】
【0061】
実施例1で用いたポリカーボネート共重合体を式(Ib)、式(IIa)とし、式(IIIb)で表される電荷移動剤に代え、電荷移動層の膜厚を28μmにした以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例3】
【0062】
実施例1で用いたポリカーボネート共重合体を式(Ic)、式(IIa)とし、式(IIIc)で表される電荷移動剤に代えた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例4】
【0063】
実施例1で用いたポリカーボネート共重合体を式(Id)、式(IIa)とした電荷移動剤に代えて、式(IIId)で表される電荷移動剤に代え、電荷移動剤に対する結着樹脂の比率を1.25重量比に代えた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例5】
【0064】
実施例1で用いたY型オキシチタニウムフタロシアニン顔料に代えて、図4に示すα型オキシチタニウムフタロシアニン顔料に代えた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例6】
【0065】
実施例1で用いたY型オキシチタニウムフタロシアニン顔料に代えて、図5に示すβ型オキシチタニウムフタロシアニン顔料に代えた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例7】
【0066】
実施例1で用いた電荷移動剤に対する結着樹脂の比率を2.50重量比に代えた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例8】
【0067】
実施例1で用いた電荷移動剤に対する結着樹脂の比率を1.0重量比に代え、電荷移動層の膜厚を18μmとした以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例9】
【0068】
実施例1で用いたポリカーボネート共重合体を、式(Ia)、式(IIa)、式(IVa)、モル比85.0:14.9:0.1のモル比(mol%)で、粘度平均分子量(Mv:40,000)のポリカーボネート共重合体に代えた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例10】
【0069】
実施例1で用いられた紫外線吸収剤2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールを除いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0070】
(比較例1)
実施例1で用いられた電荷移動剤に代えて、式(B)で表される電荷移動剤を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
式(B)
【化32】

【0071】
(比較例2)
実施例1で用いられた電荷移動剤に代えて、式(C)で表される電荷移動剤を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
式(C)
【化33】

【0072】
(比較例3)
実施例1で用いられたポリカーボネート共重合体に代えて、式(Ih)粘度平均分子量(Mv:50,000)のみのポリカーボネート樹脂を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0073】
(比較例4)
実施例1で用いられたポリカーボネート共重合体に代えて、モル比0.5:0.5の式(Ia)、式(Ig)粘度平均分子量(Mv:50,000)のポリカーボネート共重合体を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0074】
(比較例5)
実施例1で用いられた芳香族アミン系酸化防止剤と紫外線吸収剤に代えて、フェノール系酸化防止剤2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールのみを用いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0075】
(比較例6)
実施例1で用いられた芳香族アミン系酸化防止剤N−フェニル−1−ナフチルアミンを除いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0076】
感光体評価
<簡易測定器での電気特性評価>
実施例1〜10及び比較例1〜6で作製した機能分離型感光体に、感光ドラム評価装置(ダイナミックモード測定)を使用し、以下の条件で電子写真特性を評価した。
【0077】
電子写真感光体評価装置(山梨電子工業社製)を用い、実施例、比較例で作製された電子写真感光体を3環境(温度10℃/湿度10%、温度23℃/湿度50%、温度35℃/湿度80%)下で、スコロトロン方式で感光体の表面電位が−700Vになるように放電電流を調節し、電子写真感光体を帯電させ、波長780nmの半導体レーザーで照射した際、露光エネルギー量で感光体の表面電位が1/2(−350V)に減衰調整した。また、残留露光電位を1.0μJ/cmの露光エネルギー量で感光体残留電位(VL)とした。除電は波長660nmのLED(20μW)を用いた。電子写真感光体のドラム回転数は150rpmとし、レーザー光照射してから電位を測定するまでの時間(露光位置から測定位置までの移動時間=周速)は0.06秒であった。結果を表1に示す。数値は3環境測定結果の平均値である。
【0078】
<感度評価>
E1/2(μJ/cm):表面電位が1/2の−350Vに減衰させた時の露光エネルギー値
【0079】
<応答性評価>
0.4μJ/cmの露光時の電位(感光体周速を0.06〜0.10secに振った時の絶対値電位)
【0080】


感光体の表面電位が−700Vになるように放電電流を調節し、電子写真感光体を帯電させ、光暴露後1時間放置した時の表面電位
【0081】
<実機での画像評価>
実施例1〜10、比較例1〜6で作製した電子写真感光体をリコー社製CX3000に搭載して画像評価した。
【0082】
<光暴露特性>
照射光白色蛍光灯1000lux、照射時間を5分、10分、30分、60分と振った後、ハーフトーン画像での濃度変化を目視評価した。○は濃度変化なし、△は一部濃度変化あり。
【0083】
<メモリー>
温度23℃、湿度50%の常温環境で、4000枚印刷後の画像上の残像有無を目視評価した。5段階評価で残像が全くみられないものをランク5、薄く残像が見られる程度のものをランク3、残像がはっきり見られるものをランク1とした。
【0084】
<クリーニング性>
4000枚印刷(1枚間欠モード)後の感光体表面のトナー汚れ有無、および帯電ローラのトナー汚れ有無を目視観察した。両者に汚れがないものを○、部分的に汚れがあるものを△、全体的に汚れたものを×とした。
【0085】
【表1】

【0086】
表1から明らかなように、実施例1〜10は、本願発明の結着樹脂と電荷移動剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤との組み合わせにより、環境依存性評価として、簡易測定器での感光体電気特性評価では、E1/2=感度電位、応答性とも良好なものであった。また、実機プリンターでの画像特性評価では、光暴露特性、光暴露後の帯電性、メモリー、クリーニング性の各評価において大きな変化がなく、感光体特性として良好なものであった。実施例5,6は電荷発生剤を変えたものであるが、感度が多少低いレベルではあるが感度域の異なる電子写真装置では使用可能である。実施例7は電荷移動剤の比率が樹脂に対して多い場合応答性が若干悪くなる。実施例8は電荷移動剤の比率が樹脂に対して少ない場合、耐摩耗性等の機械特性が低下し、メモリー、クリーニング性が悪くなる。
【0087】
また、電荷移動層の膜厚が薄いと感度も落ちるがいずれも使用可能な範囲である。実施例9は電荷移動層の膜厚が厚い場合は応答性が若干悪くなるが十分使用可能なレベルである。実施例10は紫外線吸収剤を含有しない場合は光疲労後の帯電電位が若干落ち込む程度で使用可能である。
【0088】
これに対し、比較例1及び2は、他の電荷移動剤との組み合わせにより、感度電位、応答性が低く、感光体特性として満足できるものでなかった。さらに比較例3及び4は、他の結着樹脂と本願発明の電荷移動剤との組み合わせによると、クリーニング性のいずれも悪く、感光体特性として満足できるものでなかった。さらに、比較例5は他の酸化防止剤を適用した場合、光暴露特性が悪かった。比較例6は本発明の酸化防止剤を含有しない場合、光暴露特性、メモリー特性が悪い結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の電子写真感光体の断面図を示す。
【図2】本発明の電子写真装置の概略構成図を示す。
【図3】Y型オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折ピーク図を示す。
【図4】α型オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折ピーク図を示す。
【図5】β型オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折ピーク図を示す。
【符号の説明】
【0090】
1 導電性支持体
2 電荷発生層
3 電荷移動層
4 感光層
11 感光体
12 帯電部材
13 電源
14 露光装置
15 現像装置
16 転写装置
17 クリーニング装置
18 除電装置
19 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも電荷発生剤と電荷移動剤と結着樹脂を有する感光層を形成した電子写真感光体において、該感光層中に結着樹脂として少なくとも一般式(I)及び一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート共重合体と、電荷移動剤として一般式(III)で表されるスチルベン化合物と、アミン系酸化防止剤を含有することを特徴とする電子写真感光体。
一般式(I)
【化1】


〔式中、RとRは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の置換無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換無置換のアリール基を表す。RとRは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の置換無置換のアルキル基、RとRで形成される炭素数5〜8の1,1−シクロアルキリデン基のいずれかを表し、g及びiは、各々独立に0〜4の整数を表し、hは1〜4の整数を表す。〕
一般式(II)
【化2】


〔R及びRは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の置換無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換無置換のアリール基のいずれかを表し、j及びkは、各々独立に0〜4の整数を表す。〕
一般式(III)
【化3】


(式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を表す。)
【請求項2】
請求項1の電子写真感光体において、トリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項3】
請求項1の電子写真感光体において、前記電荷移動剤が式(IIIa)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
式(IIIa)
【化4】

【請求項4】
請求項1の電子写真感光体において、前記アミン系酸化防止剤がN−フェニル−1−ナフチルアミンであることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項5】
請求項1の電子写真感光体において、前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールであることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1の電子写真感光体において、該感光層中に結着樹脂として一般式(I)及び一般式(II)及び一般式(IV)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
一般式(IV)
【化5】


〔式中、R10、11は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ルオキシ基のいずれかを表し、aは1〜200の整数であり、Xは、−O−、又は下記一般式(V)若しくは(V’)(式中のR13は、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ルオキシ基のいずれかを表し、b、b’は、各々独立に0〜6の整数、dは0〜4の整数である。)で示される基を表し、Xは、−O−、又は下記一般式(VI)若しくは(VI’)(式中、R14は、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ−ルオキシ基のいずれかを表す。)で示される基を表し、f、f’は、各々独立に0〜6の整数、lは0〜4の整数を表す。〕
一般式(V)
【化6】


一般式(V’)
【化7】


一般式(VI)
【化8】


一般式(VI’)
【化9】

【請求項7】
請求項1の電子写真感光体において、該感光層中に結着樹脂として一般式(I)及び一般式(II)及び一般式(VII)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
一般式(VII)
【化10】


〔式中、R21〜R32は、各々独立に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基のいずれかを表し、m〜pは、各々独立に2〜6の整数を表し、qは0〜200の整数を表す。〕
【請求項8】
請求項1の電子写真感光体において、前記感光層が電荷発生剤が含有される電荷発生層と、その上に少なくとも電荷移動剤が含有される電荷移動層からなることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項9】
請求項1の電子写真感光体において、前記電荷移動剤に対する結着樹脂の比率が1.25〜2.5(重量比)であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項10】
請求項1の電子写真感光体において、前記電荷発生剤がY型オキシチタニウムフタロシアニンであることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項11】
感光体、及び該感光体に接触するように配置された電圧が印加される帯電部材を有することを特徴とする前記1〜10のいずれかの感光を含有する電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−256851(P2008−256851A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97549(P2007−97549)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000180128)山梨電子工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】