説明

電子写真感光体

【課題】導電性回転基体と導電性支持軸との導通状態を確保することができる電子写真感光体を提供する。
【解決手段】感光体ドラム61は、円筒状の導電性回転基体111と、導電性回転基体111の外周面に露光によって静電潜像が形成される感光層112とを有するドラム本体110と、ドラム本体110の中心軸線上に配置された導電性のドラム軸120と、ドラム軸120に固定され、導電性回転基体111に向けて延びて導電性回転基体111の内周面に摺接することでドラム軸120と導電性回転基体111を導通する導通部材140とを備えている。ドラム本体110は、導通部材140およびドラム軸120に対して相対回転可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザプリンタなどの画像形成装置に備えられる感光体ドラムは、円筒状の導電性回転基体の表面(外周面)に感光層を有するドラム本体と、ドラム本体の両端に係合されるフランジと、ドラム本体の中心軸線に沿うように各フランジに挿入されるドラム軸とを備えている。ドラム軸は画像形成装置本体に支持され、ドラム本体は各フランジを介してドラム軸に相対回転可能に支持されている。
【0003】
ところで、このような感光体ドラムでは、感光層に良好な静電潜像を形成するため、ドラム本体(導電性回転基体)をアースに接続する必要がある。例えば、特許文献1には、ドラム本体の内周面と電気的に接続されたリング状のアース板の内周からドラム軸に向かって延びる板状のアース電極が、ドラム軸と摺接することで、ドラム本体とドラム軸とを導通可能とする構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−181286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来の構成では、板状のアース電極の端部と円柱状の細いドラム軸を摺接させるので、接触面積が小さくなるとともに、摺接が不安定であった。そのため、ドラム軸のアース電極との接触箇所に汚れや錆などが発生したり、異物が付着したりすると、アース電極がドラム軸から瞬間的に離れるなどして、ドラム本体(導電性回転基体)とドラム軸(導電性支持軸)とが容易に不導通になってしまうという問題を有していた。
【0006】
そこで、本発明は、導電性回転基体と導電性支持軸との導通状態を確保することができる電子写真感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するため、本発明は、円筒状の導電性回転基体と、前記導電性回転基体の外周面に露光によって静電潜像が形成される感光層とを有するドラム本体と、前記ドラム本体の中心軸線上に配置された導電性支持軸と、前記導電性支持軸に固定され、前記導電性回転基体に向けて延びて前記導電性回転基体の内周面に摺接することで前記導電性支持軸と前記導電性回転基体を導通する導通部材とを備え、前記ドラム本体は、前記導通部材および前記導電性支持軸に対して相対回転可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された電子写真感光体によれば、導電性支持軸に固定された導通部材の端部が、導通部材および導電性支持軸に対して相対回転する導電性回転基体の内周面に摺接する。これにより、導電性支持軸と導通部材とが摺接する構成と比較して、導通部材と導電性回転基体との接触面積を大きくすることができるとともに、安定して摺接させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子写真感光体によれば、導通部材と導電性回転基体との接触面積を大きくすることができるとともに、安定して摺接させることができるので、導電性回転基体と導電性支持軸との導通状態を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<レーザプリンタの全体構成>
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの全体構成を示す断面図である。
ここで、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって右側を「前」側、紙面に向かって左側を「後」側とし、紙面に向かって奥側を「右」側、紙面に向かって手前側を「左」側とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下」方向とする。
【0011】
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、用紙P(記録シート)を給紙するための給紙部3と、露光装置4と、用紙P上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙P上のトナー像を熱定着させる定着装置8とを主に備えている。
【0012】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に配置され、本体筐体2に対して着脱可能に装着される給紙トレイ31と、給紙トレイ31の前側に設けられた揺動可能な用紙押圧板32と、給紙トレイ31の前側上方に設けられた給紙ローラ33、給紙パット34、紙粉取りローラ35,36およびレジストローラ37とを主に備えている。給紙トレイ31内の用紙Pは、用紙押圧板32によって給紙ローラ33側に寄せられ、給紙ローラ33および給紙パット34で送り出されて、紙粉取りローラ35,36およびレジストローラ37を通った後、一枚ずつ後述するプロセスカートリッジ5に搬送される。
【0013】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、レーザ発光部(図示せず)と、回転駆動するポリゴンミラー41と、レンズ42,43と、反射鏡44,45,46とを主に備えている。レーザ発光部から発せられる画像データに基づくレーザ光は、鎖線で示すように、ポリゴンミラー41、レンズ42、反射鏡44,45、レンズ43、反射鏡46の順に反射または通過して、電子写真感光体の一例としての感光体ドラム61の表面上に高速走査にて照射される。
【0014】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2の前側に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムカートリッジ6と、現像カートリッジ7とから構成されている。
【0015】
ドラムカートリッジ6は、外枠を構成する中空のドラムケース60内に、ドラムケース60に回転可能に支持される感光体ドラム61および転写ローラ62と、帯電器63とを主に備えている。感光体ドラム61の詳細な構成については後述する。
【0016】
現像カートリッジ7は、ドラムカートリッジ6(ドラムケース60)に対して着脱可能に装着される構成となっている。この現像カートリッジ7は、現像ケース70内に、現像ケース70に回転可能に支持される現像ローラ71および供給ローラ72と、層厚規制ブレード73とを主に備え、トナー収容部74を有している。
【0017】
このように構成されたプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が帯電器63により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0018】
このとき、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72上に供給され、供給ローラ72と現像ローラ71とが摺接することで現像ローラ71上に供給される。現像ローラ71上に供給されたトナーは、現像ローラ71の回転により現像ローラ71と層厚規制ブレード73との間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0019】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71と感光体ドラム61とが対向して接触するときに感光体ドラム61の表面上の静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム61の表面上の静電潜像が可視像化され、トナー像が形成される。そして、感光体ドラム61と転写ローラ62との間を用紙Pが搬送されることで感光体ドラム61の表面のトナー像が用紙P上に転写される。
【0020】
定着装置8は、プロセスカートリッジ5の後方(用紙Pの搬送方向下流側)に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81に対向して配置され加熱ローラ81との間で用紙Pを挟持する加圧ローラ82と、加熱ローラ81および加圧ローラ82の用紙Pの搬送方向下流側に設けられた一対の搬送ローラ83とを主に備えている。用紙P上に転写されたトナーは、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過する間に熱定着される。トナー像が熱定着された用紙Pは、搬送ローラ83およびフラッパ84によって排紙経路91に搬送され、排紙経路91から一対の排紙ローラ92により、本体筐体2の上面に形成された排紙トレイ22上に排出される。
【0021】
<感光体ドラムの構成>
次に、本発明の電子写真感光体の一例としての感光体ドラム61の詳細な構成について説明する。図2は感光体ドラムの外観を示す図であり、図3(a)は感光体ドラムの断面図であり、(b)はドラム軸および導通部材の斜視図であり、図4はドラム本体へ挿入される前の導通部材の外観を示す斜視図である。
【0022】
図2に示すように、感光体ドラム61は、ドラム本体110と、ドラム本体110の中心軸線に沿って配置された導電性支持軸の一例としてのドラム軸120と、ドラム本体110の各端部に係合されたフランジ130,150とを備えている。
【0023】
ドラム本体110は、アルミニウムなどの導電性材料から形成された円筒状(ドラム軸120と同軸の円筒形状)の導電性回転基体111(図3(a)参照)からなる。この導電性回転基体111の外周面には、露光によって静電潜像が形成される感光層112が形成されている。
【0024】
ドラム軸120は、金属などの導電性材料から形成された棒状(略円柱状)の部材であり、両端部がドラムカートリッジ6のドラムケース60に支持されている。そして、ドラムカートリッジ6(プロセスカートリッジ5)が本体筐体2に装着されることで、ドラム軸120が本体筐体2(装置本体)に支持されることとなる。このドラム軸120は電気的に接地されている(図3(a)参照)。
【0025】
フランジ130,150は、絶縁性の樹脂材料から形成され、それぞれ、ドラム本体110の端部に、ドラム本体110に対して回転不能に装着されている。
フランジ130は、図3(a)に示すように、フランジ本体部131と、ドラム軸120が挿通される軸受132とが一体に形成されている。
【0026】
フランジ本体部131は、略円筒状に形成され、ドラム本体110に挿入される挿入部133と、挿入部133から軸方向外側に延び、ドラム本体110の外径よりも大きな外径を有する円筒状のギヤ部134とを有している。挿入部133の内周の一部およびギヤ部134の内周は、連通した貫通孔131Aを形成しており、この貫通孔131Aに軸受132が支持される。ギヤ部134の外周面には、ギヤ歯134A(図2参照)が形成されている。
【0027】
このようにフランジ130,150が、ドラム本体110の両端に回転不能に装着されるとともに、ドラム軸120に回転可能に支持されることで、ドラム本体110は、フランジ130,150を介してドラム軸120に相対回転可能に支持される。そして、フランジ130のギヤ部134に対して、本体筐体2内に設けられた図示しないモータなどの駆動源から駆動力が入力されることで、ドラム本体110およびフランジ130,150(感光体ドラム61)が回転駆動する。
【0028】
図3(a)および(b)に示すように、感光体ドラム61は、前記したドラム本体110、ドラム軸120およびフランジ130,130の他、ドラム本体110とドラム軸120とを導通させる導通部材140を備えている。この導通部材140は、ドラム軸120に固定され、ドラム本体110側に延びるように配置されている。
【0029】
導通部材140は、図4に示すように、ドラム軸120が挿通されるリング状部141と、リング状部141の内周の対向する2箇所から径方向内側に延びる略三角形状の突起部142,142と、リング状部141の外周の各突起部142に対応する2箇所から径方向外側に延びるアーム部143,143とを有する。このような導通部材140は、例えば、りん青銅などの導電性とバネ性を有する材料からなる板状部材を用いて形成される。なお、図4に示す導通部材140は、ドラム本体110へ挿入される前の状態を示している。
【0030】
リング状部141の内径は、ドラム軸120の最大外径よりも大きくなるように形成されるとともに、対向する突起部142,142の先端部142A,142Aの距離は、ドラム軸120の最大外径よりも小さくなるように形成されている。また、各アーム部143の端部は、挿通されるドラム軸120の軸方向の一方に向かって湾曲した湾曲部143Aを有する。一方の湾曲図143Aから他方の湾曲部143Aまでの距離は、ドラム本体110の内径よりも大きくなるように形成されている。
【0031】
ここで、本実施形態の感光体ドラム61の組立手順を説明しながら、導通部材140の各部の作用について説明する。図5は感光体ドラムの組立手順を説明するための図であり、ドラム軸が挿入された導通部材をドラム本体に挿入しようとする様子を示す図(a)と、ドラム軸および導通部材をドラム本体に挿入する様子を示す図(b)と、フランジをドラム本体に取り付ける様子を示す図(c)である。
【0032】
図5(a)に示すように、まず、導通部材140に対してドラム軸120を挿入する。このとき、各突起部142の先端部142A間の距離がドラム軸120の最大外径よりも小さく設定されているので、ドラム軸120は導通部材140に圧入されることとなる。そして、ドラム軸120は、導通部材140の各突起部142とドラム軸120に形成された凹部121,121とが係合する位置まで挿通される。導通部材140の各突起部142とドラム軸120の各凹部121が係合することで、導通部材140はドラム軸120に対して回転不能に支持され、固定される。
【0033】
次に、導通部材140が固定されたドラム軸120を、ドラム本体110に対して挿入する。そうすると、図5(b)に示すように、各アーム部143が挿入方向とは反対側(軸方向外側)に曲がり、各湾曲部143Aがドラム本体110(導電性回転基体111)の内周面110Aに接触する。アーム部143は、ドラム本体110への挿入の過程で曲げられることで、元の形状に戻ろうとする力により、湾曲部143Aを内周面110Aに向かって付勢する板バネとして作用する。これにより、湾曲部143Aは、ドラム本体110の内周面110Aに対して弾性的に接触することとなる。なお、この湾曲部143Aは摺接部の一例である。
【0034】
最後に、図5(c)に示すように、フランジ130,150(図5(c)ではフランジ130のみ図示)を取り付ける。フランジ130は、ドラム軸120を軸受132に挿入し、次いで挿入部133をドラム本体110に挿入して、ドラム本体110の端部に装着する。
【0035】
以上のように構成された感光体ドラム61の作用効果について説明する。図6は従来の感光体ドラムの構成を示す図であり、ドラム軸とアース電極とが摺接する様子を示す図(a)と、アース電極をドラム軸に押し付ける力によりアース電極がドラム軸上から逃げる様子を示す図(b)であり、図7は本実施形態に係る導通部材の湾曲部とドラム本体の内周面とが摺接する様子を示す図である。
【0036】
レーザプリンタ1の動作時において、ギヤ部134に駆動力が入力されると感光体ドラム61(ドラム本体110およびフランジ130,150)が回転する。このとき、回転するドラム本体110の内周面110Aは、ドラム軸120に固定された導通部材140の湾曲部143Aに対して摺動することとなる。このように、ドラム本体110とドラム軸120とが導通部材140を介して電気的に接続されることで、ドラム本体110が電気的に接地される。
【0037】
本実施形態によれば、ドラム軸120に固定された導通部材140の各湾曲部143Aと、導通部材140およびドラム軸120に対して相対回転するドラム本体110の内周面110Aとが摺接する。これにより、ドラム軸とアース電極とが摺接する従来の構成と比較して、導通部材140とドラム本体110との接触面積を大きくすることができるとともに、安定して摺接させることができる。
【0038】
より詳細に述べると、図6(a)に示すように、従来の構成では、略円柱状の細いドラム軸920、すなわち、円弧状の凸部に対して板状のアース電極940を摺接させるので、接触点Cが1箇所となり、接触面積を確保することが困難であった。また、図6(b)に示すように、アース電極940をドラム軸920に押し付ける力が、アース電極940が円弧状の凸部であるドラム軸920上から逃げる力として作用するので、アース電極940とドラム軸920との摺接(接触)が不安定となっていた。
【0039】
一方、本実施形態では、図7に示すように、円筒の内周面110A、すなわち、円弧状の凹部に対して板状の導通部材140(湾曲部143A)を摺接させるので、2箇所の接触点C,Cを確保することができ、接触面積を大きくすることができる。また、湾曲部143Aを内周面110Aに押し付ける力が、湾曲部143Aが円弧状の凹部である内周面110Aに収まろうとする力として作用するので、湾曲部143Aとドラム軸120との摺接(接触)を安定させることができる。
【0040】
これにより、湾曲部143Aと内周面110Aとの接触を確実に確保することができるので、ドラム本体110とドラム軸120との導通状態を良好に確保することができる。その結果、感光体ドラム61の感光層112に良好な静電潜像を形成することが可能となり、このような感光体ドラム61を備えるレーザプリンタ1の画像品質を向上させることが可能となる。
【0041】
また、導通部材140が、ドラム本体110の内周面110Aに摺接する2つ(複数)の湾曲部143A(摺接部)を有するので、仮に1つの摺接部がドラム本体110の内周面110Aとの間の汚れや錆、異物などをかんで不導通状態となっても、残りの摺接部で導通状態を確保することができる。
【0042】
さらに、導通部材140(湾曲部143A)が、ドラム本体110の内周面110Aに対して弾性的に接触するので、湾曲部143Aと内周面110Aとの接触(摺接)をより確実に確保することができる。仮に接触箇所に付着した異物などにより、導通部材140が内周面110Aから瞬間的に飛んだ(離れた)としても、湾曲部143Aを内周面110Aに再び接触させることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0044】
前記した実施形態では、ドラム本体110へ挿入される前の導通部材140の各アーム部143は、図5(a)に示すように、リング状部141とともに側面視直線状をなしているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、各アーム部143は、ドラム本体110へ挿入される前に挿入方向とは反対側に若干曲がっている形状であってもよい。
【0045】
前記した実施形態では、ドラム軸120を圧入するため、リング状部141に2つの突起部142を設け、リング状部141の外周からアーム部143を延ばした形状の導通部材140を例示したが、導通部材の形状は、これに限定されるものではない。例えば、いわゆるEリングの外周からアーム部を延ばしたような形状としてもよい。
【0046】
前記した実施形態では、ドラム軸120が導通部材140に圧入され、突起部142と凹部121が係合することで導通部材140がドラム軸120に固定される例を示したが、導通部材の固定方法は、これに限定されるものではない。例えば、図8(a)および(b)に示す導通部材240のように、正面視円弧状(ドラム軸120の外周面に沿う形状)の接続部241を、ドラム軸120に対して溶接することで固定してもよい。また、接続部241を、ドラム軸120に対して導電性を有する接着剤やテープなどにより接着することで固定してもよい。なお、導通部材240は、接続部241と、接続部241の軸方向の一端から延びる1つのアーム部143とから構成されており、図8(a)および(b)では、2つの導通部材240が各接続部241の円周方向の端部を互いに対向させた状態でドラム軸120に固定されている。
【0047】
前記した実施形態では、導通部材140,240を例示したが、本発明の導通部材は、これに限定されるものではない。以下、導通部材の変形例について簡単に説明する。なお、以下の説明において、前記した実施形態と同様の構成については同一符号を付して、その説明を省略することとする。
【0048】
例えば、図9(a)に示す導通部材340のように、3つのアーム部143を有し、各アーム部143がドラム軸120を中心として互いに当角度(120度)となるように放射状に延びた構成としてもよい。また、図9(b)に示す導通部材440のように、4つのアーム部143を有し、各アーム部143がドラム軸120を中心として互いに当角度(90度)となるように放射状に延びた構成としてもよい。これによれば、各アーム部143が、内周面110Aやドラム軸120を押す力を均一にすることができるので、ドラム本体110やドラム軸120の変形を防止することができる。なお、同様の効果は、前記した実施形態の導通部材140,240にもいえる。また、アーム部143の数は、5つ以上であってもよい。
【0049】
また、複数の摺接部を確保する構成の他の例として、図10(a)に示す導通部材540のように、1つのアーム部541の端部から枝分かれして設けられた複数の摺接部542を有する構成としてもよい。これによれば、仮に一方の摺接部542が不導通状態となっても、他方の摺接部542で導通状態を確保することができる。また、図10(b)に示す導通部材540Aのように、アーム部541を複数有していてもよい。この場合、複数のアーム部541がドラム軸120を中心として互いに当角度となるように放射状に延びた構成とすることが望ましい。
【0050】
また、摺接部の他の例として、図11(a)に示す導通部材640のように、アーム部641の端部に設けられた導通性を有するブラシ642を弾性的に接触させる構成としてもよい。なお、このような構成の場合、少なくともブラシ642と内周面110Aとが摺接すればよいので、アーム部641は内周面110Aに届かない長さであってもよい。
【0051】
また、摺接部の別の例として、図11(b)に示す導通部材740のように、ドラム軸120からドラム本体110側に多数の導電性の毛742(導電性繊維)を延ばした構成としてもよい。詳細には、導通部材740は、導電性を有するシート状の基部741と、基部741から生えるように設けられた多数の毛742とを主に備えている。基部741は、ドラム軸120に対して導電性を有する接着剤やテープなどにより接着されている。各毛742は、基部741がドラム軸120に接着されても、内周面110Aと摺接できるように十分な長さを有している。なお、多数の毛742は、ドラム本体110内にある程度充満させることが望ましい。
【0052】
導通部材640,740によれば、内周面110Aとの接触点を多数確保することができるので、ドラム本体110とドラム軸120との導通状態を確実に確保することができる。また、摺接部と内周面110Aとの負荷を軽減することができるので、感光体ドラム(導電性回転基体)の回転トルクを小さくすることができる。さらに、摺接部と内周面110Aとの摩擦音を軽減することができるので、騒音の発生を抑制することができる。
なお、このような摺接部は、ブラシ642や毛742に限定されず、例えば、導電性不織布や導電性シート、導電性フィルムなどであってもよい。
【0053】
また、導通部材(摺接部)は、前記した構成のように複数に限定されず、1つであってもよい。例えば、前記した導通部材240を1つだけ備える構成としてもよい。
【0054】
前記した実施形態では、感光体ドラム61(電子写真感光体)が備えられる画像形成装置の一例として、単色画像を形成するレーザプリンタ1を例示したが、電子写真感光体が備えられる画像形成装置はこれに限定されるものではない。例えば、単色画像を形成する複写機や複合機などであってもよいし、多色画像(カラー画像)を形成するプリンタや複写機、複合機などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの全体構成を示す断面図である。
【図2】感光体ドラムの外観を示す図である。
【図3】(a)は感光体ドラムの断面図であり、(b)はドラム軸および導通部材の斜視図である。
【図4】ドラム本体へ挿入される前の導通部材の外観を示す斜視図である。
【図5】感光体ドラムの組立手順を説明するための図であり、ドラム軸が挿入された導通部材をドラム本体に挿入しようとする様子を示す図(a)と、ドラム軸および導通部材をドラム本体に挿入する様子を示す図(b)と、フランジをドラム本体に取り付ける様子を示す(c)である。
【図6】従来の感光体ドラムの構成を示す図であり、ドラム軸とアース電極とが摺接する様子を示す図(a)と、アース電極をドラム軸に押し付ける力によりアース電極がドラム軸上から逃げる様子を示す図(b)である。
【図7】本発明の実施形態に係る導通部材の湾曲部とドラム本体の内周面とが摺接する様子を示す図である。
【図8】(a)は変形例に係る導通部材を備える感光体ドラムの断面図であり、(b)はドラム軸および変形例に係る導通部材の斜視図である。
【図9】(a)および(b)は他の変形例に係る導通部材を備える感光体ドラムの断面図である。
【図10】(a)および(b)は別の変形例に係る導通部材を備える感光体ドラムの断面図である。
【図11】(a)および(b)はさらに別の変形例に係る導通部材を備える感光体ドラムの断面図である。
【符号の説明】
【0056】
61 感光体ドラム
110 ドラム本体
110A 内周面
111 導電性回転基体
112 感光層
120 ドラム軸
140 導通部材
143 アーム部
143A 湾曲部
240 導通部材
340 導通部材
440 導通部材
540 導通部材
540A 導通部材
542 摺接部
640 導通部材
642 ブラシ
740 導通部材
742 毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の導電性回転基体と、前記導電性回転基体の外周面に露光によって静電潜像が形成される感光層とを有するドラム本体と、
前記ドラム本体の中心軸線上に配置された導電性支持軸と、
前記導電性支持軸に固定され、前記導電性回転基体に向けて延びて前記導電性回転基体の内周面に摺接することで前記導電性支持軸と前記導電性回転基体を導通する導通部材とを備え、
前記ドラム本体は、前記導通部材および前記導電性支持軸に対して相対回転可能に構成されていることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記導通部材は、前記導電性回転基体の内周面に摺接する複数の摺接部を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記導通部材は、前記導電性回転基体の内周面に対して弾性的に接触することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記導通部材は、前記導電性支持軸と前記摺接部を導通する複数のアーム部を有し、
前記アーム部は、前記導電性支持軸を中心として、前記導電性支持軸から前記導電性回転基体に向かって互いに等角度となるように放射状に延びていることを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−251441(P2009−251441A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101433(P2008−101433)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】