説明

電子写真感光体

【課題】繰り返し使用しても表面電位変化量が小さく、湿度メモリーの発生が無く、高感度であってかつ耐摩耗性を有する耐久性の高い感光体を提供すること。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも感光層と保護層とを順次積層して成る電子写真感光体において、該保護層は、重合性官能基を7個以上有する化合物(A)と重合性官能基を2個以上4個以下有する化合物(B)と重合性官能基を有する表面処理剤によって表面処理された表面処理金属酸化物微粒子とを用いて作製された重合生成物を含有し、かつ該感光層がブタンジオールとチタニルフタロシアニンとの付加体を含有し、該感光層の反射スペクトルの700nmにおける反射率と780nmにおける反射率との反射率の比が0.8以上1.3以下であることを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体に関し更に詳しくは電子写真方式の画像形成装置に用いられる電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体は有機光導電性物質を含有する有機感光体が広く用いられている。有機感光体は可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料を開発しやすいこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いことなどが無機系の感光体に対して有利な点である。
【0003】
一方、電子写真感光体(以下感光体とも言う)は帯電、露光、現像、転写、クリーニング等により、電気的あるいは機械的な外力を直接受けているため、画像形成が繰り返し行われても帯電安定性、電位保持性など安定して維持する耐久性が求められている。
【0004】
特に近年デジタル化の流れの中で、高精細、高画質の画像への要求が高まり、溶解懸濁トナーや乳化重合凝集トナーなどの重合法による小粒径のトナーが主流になっており、これらの小粒径のトナーは感光体表面への付着力が大きく、感光体表面に付着した転写残トナーなどの残留トナーの除去が不十分となりやすい。ゴムブレードを用いたクリーニング方式では、トナーがブレードを通過する「トナーすり抜け」やブレードが反転する「ブレード捲れ」、あるいは感光体とブレードの擦過音の発生、いわゆる「ブレード鳴き」と言った現象が発生しやすい。上記「トナーすり抜け」を解決するためにはブレードの感光体への当接圧力を高くする必要があるが、繰り返し使用することにより、有機感光体の表面が磨耗し耐久性が不足するという問題を発生する。また帯電時に発生するオゾンや窒素酸化物による劣化に対しても十分な耐久性を有することが求められている。
【0005】
このような経緯から感光体表面に保護層を設けて機械的強度を向上させる技術が提案されている。具体的には、感光体保護層に一般に硬化性化合物と呼ばれる重合性化合物を使用し、塗布した後硬化反応を行うことで、クリーニングブレード等の摩擦による表面の磨耗や傷の発生に対して耐久性を持たせる感光体を作製する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また保護層の耐摩耗性を向上するため1分子中に3つ以上のラジカル重合性基を有する単量体を用いる技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
更にシリカなどの金属酸化物微粒子を保護層に分散させ、機械的強度を向上させる技術が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0008】
一方、電子写真感光体へのトナー付着防止機能や優れたクリーニング性、転写性を付与させるために電子写真感光体表面の低表面エネルギー化技術が提案されている。低表面エネルギー化技術としては、電子写真感光体の最保護層に潤滑剤を添加する技術が提案されており、この潤滑剤として種々のフッ素樹脂やシリコーン化合物を添加する技術が開示されている(例えば特許文献4、5参照)。
【0009】
また、バインダー樹脂構造中に長鎖アルキル基を導入することで、表面摩擦抵抗を下げ、更に画質低下の原因となるイオン性化合物の付着を防止し、耐久性と画像ボケを改善する技術が開示されている(例えば特許文献6参照)。
【0010】
一方、高感度感光体を実現する電荷発生物質として、立体規則性を有した2,3−ブタンジオールのチタニルフタロシアニン付加体が、特に優れた性質をもつものとして報告されており(例えば特許文献7、参照)、中でも、2,3−ブタンジオールのチタニルフタロシアニン付加体と、チタニルフタロシアニンの混晶が高感度を示す顔料として報告されている(例えば特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−288121号公報
【特許文献2】特開2009−251140号公報
【特許文献3】特開2002−333733号公報
【特許文献4】特開昭63−73267号公報
【特許文献5】特開平5−323646号公報
【特許文献6】特開2008−146089号公報
【特許文献7】特開平8−82942号公報
【特許文献8】特開平9−230615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
電子写真感光体(以下感光体ともいう)の表面の耐摩耗性及び耐傷性を向上し、耐久性を高めるためには、重合性化合物の架橋密度を上げ表面保護層の硬度を上げることが有効である。架橋密度を上げ表面保護層の硬度を上げるためには、分子中に重合性官能基を多く有する官能基数の多い重合性化合物を選択することが有効であると考えられる。
【0013】
しかし、感光体に保護層を設けることによって、感光体の耐摩耗性は向上するが、繰り返し使用するに従い、露光後の表面電位が上昇するという欠点を有する。この表面電位の上昇を抑えるためには保護層中に金属酸化物微粒子を添加することが有効であることが分かっている。更にこの金属酸化物微粒子を重合性官能基を有する表面処理剤で処理した表面処理金属酸化物微粒子とすることによって、重合性化合物とも架橋し、保護層の被膜強度を上げることが期待出来る。
【0014】
しかし、表面処理金属酸化物微粒子の添加量を増やすと露光後の表面電位の上昇は抑制出来るが、保護層が脆くなり膜強度が低下してしまう。一方、表面処理金属酸化物微粒子の添加量を少なくすると保護層の膜強度は向上するが、繰り返し使用するに従い露光後の表面電位が、特に低温低湿環境(LL)下で、上昇してしまう。このように感光体の高耐久化のため、耐摩耗性及び耐傷性の向上と露光後の表面電位上昇の防止を両立させることは極めて困難であった。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために成されたもので、耐摩耗性を有し、低温低湿環境下で繰り返し使用しても露光後の表面電位変化量の小さい高耐久感光体を提供することを目的としている。
【0016】
更に本発明のもうひとつの目的は、湿度メモリーの発生が無く、高感度であってかつ耐摩耗性を有する耐久性の高い感光体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記課題は以下の構成とすることによって解決される。
1.
導電性支持体上に少なくとも感光層と保護層とを順次積層して成る電子写真感光体において、該保護層は、重合性官能基を7個以上有する化合物(A)と重合性官能基を2個以上4個以下有する化合物(B)と重合性官能基を有する表面処理剤によって表面処理された表面処理金属酸化物微粒子とを用いて作製された重合生成物を含有し、かつ該感光層が2,3−ブタンジオールとチタニルフタロシアニンとの付加体を含有し、該感光層の反射スペクトルの700nmにおける反射率(R700)と780nmにける反射率(R780)との反射率の比(R700/R780)が0.8以上1.3以下であることを特徴とする電子写真感光体。
【0018】
但し、上記反射率は感光層(電荷発生層)をアルミ支持体上に形成して測定した反射率であり、アルミ支持体の反射率を100%としたときの相対反射率である。
2.
前記重合生成物が、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計を100質量部とし、前記表面処理金属酸化物微粒子を50質量部以上250質量部以下にして作製されたものであることを特徴とする前記1に記載の電子写真感光体。
3.
前記重合性官能基を7個以上有する化合物(A)の重合性官能基数が10個以下であることを特徴とする前記1または前記2に記載の電子写真感光体。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以上の構成とすることで、繰り返し使用しても耐摩耗性に優れ、低温低湿環境下で繰り返し使用しても電位変化が小さく、高温高湿環境下におかれても湿度メモリーの発生が無く、環境依存性の少ない高感度高耐久性の感光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係わる感光体の層構成の一例を示す模式図である。
【図2】2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する感光層の反射スペクトルの一例であり、(a)はR700/R780=0.93の反射スペクトル図を表し、(b)はR700/R780=0.72の反射スペクトル図を表す。
【図3】2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルで、(1)ブラッグ角2θ(±0.2°)9.5°に特徴的なピークを有する(9.5°型)フタロシアニンと、(2)8.3°に特徴的なピークを有する(8.3°型)フタロシアニンのスペクトル図。
【図4】本発明の電子写真感光体を用いたカラー画像形成装置の断面構成図の一例である。
【図5】X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θ(±0.2°)27.2°に特徴的なピークを有するY型チタニルフタロシアニンのスペクトル図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の感光体は導電性支持体上に少なくとも感光層と保護層とを順次積層したもので、保護層には重合性官能基を7個以上有する化合物(A)(以下重合性化合物(A)ともいう)と重合性官能基を2個以上4個以下有する化合物(B)(以下重合性化合物(B)ともいう)の重合生成物を含有している。重合性官能基を7個以上有する化合物(A)だけでは、立体障害のために一部の重合性官能基が未反応のまま残ってしまう。そのため、架橋密度が上がらず硬化が不十分で十分な膜強度を有する保護層が得られないため耐久性が劣ってしまう。そこで未反応の重合性官能基が残らないよう重合性官能基数の少ない重合性化合物、即ち重合性官能基を2個以上4個以下有する化合物(B)を添加することで架橋密度を上げるものである。即ち、重合性官能基数の少ない重合性化合物は、分子量が小さいため、立体障害の影響を受けにくく、そのため未反応の重合性官能基が残ることが無く、これによって、架橋密度が上がり硬度の高い膜強度を有する保護層を得ることができるものと考えられる。
【0022】
更に本発明では感光体の電位特性を改善する目的で、重合性官能基を有する表面処理剤で処理されている表面処理金属酸化物微粒子(以下表面処理金属酸化物微粒子ともいう)を含有する。この表面処理金属酸化物微粒子は、繰り返し使用した時の露光後の表面電位の上昇を抑える目的で添加するが、重合性官能基を有する表面処理剤で処理した金属酸化物微粒子を用いることで、重合性化合物と架橋し耐摩耗性を向上する効果をも有する。しかし、従来、電位特性が十分改善出来る量を添加すると保護層の脆性が増し、被膜強度が低下し耐摩耗性が劣ってしまうという問題があった。しかし、本発明では上述のように2種類の重合性化合物を添加することによって未反応の重合性官能基が減少し保護層の架橋密度を上げることが可能になるので、その結果、保護層の耐摩耗性を維持したまま十分電位特性の改善効果が得られるまで添加量を増やすことが可能となったものである。本発明では保護層を上記の構成とすることによって、耐摩耗性に優れ、繰り返し使用しても電位特性の変化が小さい高耐久性の感光体を得ることが出来るようになった。
【0023】
更に本発明では、感光層に2,3−ブタンジオールとチタニルフタロシアニンの付加体(以下単に、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン、若しくはブタンジオール付加体ということがある)を用いることで、湿度メモリーの発生が無く、高感度かつ環境依存性の小さい感光体とすることが出来る。
【0024】
本発明は、上記構成とすることによって、従来技術では得られなかった環境依存性が無く、繰り返し使用しても電位特性の変化が小さく、湿度メモリーの発生が無く高感度にして且つ高耐久性の電子写真感光体を提供することが可能となった。
【0025】
以下本発明の構成について、更に詳細に説明する。
【0026】
〈重合性化合物(A)〉
本発明で用いられる重合性官能基を7個以上有する化合物(A)としては、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、テトラペンタエリスリトールデカメタクリレート、テトラペンタエリスリトールデカアクリレート等のトリペンタエリスリトール或いはテトラペンタエリスリトールの多官能アクリレート又はメタクリレートが好ましく用いられる。
【0027】
ここで、上記の多官能アクリレート又はメタクリレートとは、複数(7個以上)のアクリレート基又はメタクリレート基を意味し、例えば、トリペンタエリスリトール或いはテトラペンタエリスリトールと、アクリル酸あるいはメタクリル酸との縮合反応によって生成した多官能アクリレート又はメタクリレートをいう。また重合性官能基数としては7個以上10個以下が好ましい。
【0028】
重合性官能基数を7個以上10個以下とすることによって、架橋密度が上がり被膜強度の高い保護層とすることがすることが出来る。
【0029】
本発明で用いられる重合性化合物(A)の具体例を以下に例示するが、本発明に用いられる重合性化合物(A)はこれらに限定されるものではない。
【0030】
例示化合物
【0031】
【化1】

【0032】
以上の例示化合物の中で、R、R′は以下の構造で表されるアクリロイル基、メタクリロイル基である。
【0033】
【化2】

【0034】
本発明では上記重合性化合物(A)は1種でも2種以上を併用しても良い。また重合性化合物(A)の添加量は重合性化合物(A)、(B)合計のうち10質量%以上95質量%以下が好ましく、20質量%以上90質量%以下が更に好ましい。10質量%以下では十分な被膜強度が得られないおそれがあり、95質量%以上では、未反応の重合性官能基が残ってしまい十分な耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0035】
本発明の重合性化合物(A)は公知の方法により合成することが出来る。
【0036】
〈重合性化合物(B)〉
本発明で用いられる重合性官能基を2個以上4個以下有する化合物(B)としては、官能基当量(分子量/重合性官能基数)が60〜300が好ましく、70〜150がより好ましい。またペンタエリスリトールあるいはジペンタエリスリトールの官能基数が2個〜4個のアクリレートまたはメタクリレートが好ましい。
【0037】
重合性官能基数は、1個では架橋構造を取ることが出来ず、5個以上では、反応性が劣り架橋密度が上がらないおそれがある。
【0038】
本発明で用いられる重合性官能基を2個以上4個以下有する化合物(B)の具体例としては以下の化合物を例示することが出来るが、本発明に用いられる重合性化合物(B)はこれらに限定されるものではない。
【0039】
例示化合物
【0040】
【化3】

【0041】
本発明では、重合性化合物(B)は1種でも2種以上を併用しても良い。重合性化合物(B)の添加量は重合性化合物(A)、(B)合計のうち5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下が更に好ましい。5質量%以下では、未反応の重合性官能基が残ってしまうおそれがあり、90質量%以上では十分な耐摩耗性が得られず耐久性が劣ってしまうおそれがある。
【0042】
本発明の重合性化合物(B)については、市販品を入手することが出来、例えば化薬サートマー株式会社製のSR−351S(m−4)、SR−350(m−1)等の商品名で販売されている。またその他の重合性化合物については、一般的な光硬化性モノマーの公知の合成法で合成することができる。
【0043】
本発明では少なくとも上記重合性化合物(A)、重合性化合物(B)2種類の重合性化合物を用いることにより、架橋密度の高い耐摩耗性を有する保護層を得ることが出来る。
【0044】
〈表面処理金属酸化物微粒子〉
本発明の保護層は、重合性官能基を有する表面処理剤で表面処理された表面処理金属酸化物微粒子を含有する。
【0045】
本発明の金属酸化物微粒子は、保護層の機械的強度を向上させる目的で添加するが、同時に感光体を繰り返し使用した時の露光後の表面電位の上昇を抑制する効果を有している。 露光後の表面電位が上昇すると未露光部と露光部の表面電位の差が小さくなり、デジタル複写機で一般に行われている反転現像方式による画像形成においては、画像濃度が次第に低下してしまうという不具合を生じる。
【0046】
更に、金属酸化物微粒子を重合性官能基を有する表面処理剤で表面処理することにより、本発明の重合性化合物(A)および重合性化合物(B)とも架橋反応を起こし、より緻密な保護膜を形成することが出来るので耐摩耗性が向上し、更に電位変動を最小限にすることが出来るため感光体の耐久性を大幅に向上させることが出来る。
【0047】
本発明の保護層に用いられる金属酸化物微粒子としては遷移金属も含めた金属酸化物微粒子が好ましい。例えば、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の金属酸化物微粒子が例示されるが、中でも、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫等の粒子が好ましい。
【0048】
上記金属酸化物微粒子は、公知の方法、例えば気相法、塩素法、硫酸法、プラズマ法、電解法等の一般的な製造法で作製されたものが好ましい。
【0049】
上記金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は1〜300nmの範囲が好ましい。特に好ましくは3〜100nmである。
【0050】
上記金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ)ソフトウエアバージョン Ver.1.32を使用して数平均一次粒径を算出した。
【0051】
上記金属酸化物微粒子の表面処理に用いる重合性官能基を有する表面処理剤としては、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基等と反応性を有する表面処理剤であればよく、例えば、重合性官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。重合性官能基としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましく、このような重合性官能基を有する表面処理剤としては、下記に例示するような化合物が例示される。
【0052】
S−1:CH=CHSi(CH)(OCH
S−2:CH=CHSi(OCH
S−3:CH=CHSiCl
S−4:CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
S−5:CH=CHCOO(CHSi(OCH
S−6:CH=CHCOO(CHSi(OC)(OCH
S−7:CH=CHCOO(CHSi(OCH
S−8:CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S−9:CH=CHCOO(CHSiCl
S−10:CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S−11:CH=CHCOO(CHSiCl
S−12:CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S−13:CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S−14:CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S−15:CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S−16:CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S−17:CH=C(CH)COO(CHSiCl
S−18:CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S−19:CH=C(CH)COO(CHSiCl
S−20:CH=CHSi(C)(OCH
S−21:CH=C(CH)Si(OCH
S−22:CH=C(CH)Si(OC
S−23:CH=CHSi(OCH
S−24:CH=C(CH)Si(CH)(OCH
S−25:CH=CHSi(CH)Cl
S−26:CH=CHCOOSi(OCH
S−27:CH=CHCOOSi(OC
S−28:CH=C(CH)COOSi(OCH
S−29:CH=C(CH)COOSi(OC
S−30:CH=C(CH)COO(CHSi(OC
S−31:CH=CHCOO(CHSi(CH(OCH
S−32:CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCOCH
S−33:CH=CHCOO(CHSi(CH)(ONHCH
S−34:CH=CHCOO(CHSi(CH)(OC
S−35:CH=CHCOO(CHSi(C1021)(OCH
S−36:CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
又、表面処理剤としては、前記S−1からS−36以外でも、ラジカル重合可能な反応性有機基を有するシラン化合物を用いてもよい。これらの表面処理剤の重合性官能基は、重合性官能基を7個以上有する化合物(A)及び重合性官能基を2個以上4個以下有する化合物(B)と架橋反応し強固な保護膜を形成することができる。
【0053】
上記表面処理金属酸化物微粒子の量は、重合性化合物(A)、(B)の合計100質量部に対し、50〜250質量部が好ましい。
【0054】
表面処理金属酸化物微粒子は50質量部以上にすることで保護層の電気抵抗が高くなりすぎず、残留電位の上昇やカブリの発生を防止でき、250質量部より少なくすることで耐摩耗性を確保することができる。これらの表面処理剤は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0055】
〔表面処理金属酸化物微粒子の作製〕
表面処理するに際し、金属酸化物微粒子100質量部に対し、表面処理剤を0.1〜100質量部、溶媒50〜5000質量部を用いて湿式メディア分散型装置を使用して処理することが好ましい。また、乾式でも処理することができる。
【0056】
以下に、均一に表面処理剤で表面処理された金属酸化物微粒子を製造する表面処理方法について説明する。
【0057】
即ち、金属酸化物微粒子と表面処理剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式粉砕することにより、金属酸化物微粒子を微細化すると同時に微粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化することで均一に表面処理剤により表面処理された金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0058】
本発明において用いられる表面処理装置である湿式メディア分散型装置とは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた攪拌ディスクを高速回転させることにより、金属酸化物の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置であり、その構成としては、金属酸化物微粒子に表面処理を行う際に金属酸化物微粒子を十分に分散させ、かつ表面処理できる形式であれば問題なく、たとえば、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が採用できる。具体的にはサンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミル等が使用できる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズ等の粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、剪断、ズリ応力等により微粉砕、分散が行われる。
【0059】
上記湿式メディア分散型装置で用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料とした粉砕媒体が使用可能であるが、特にジルコニア製やジルコン製のものが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1〜2mm程度のものを使用するが、本発明では0.1〜1.0mm程度のものを用いるのが好ましい。
【0060】
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製など種々の素材のものが使用できるが、本発明では特にジルコニアまたはシリコンカーバイドといったセラミック製のディスクや容器内壁が好ましい。
【0061】
以上のような湿式処理により、表面処理剤による表面処理により、反応性アクリロイル基、反応性メタクリロイル基と反応可能な反応性有機基を有する金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0062】
さらに、本発明に係わる保護層は、反応して得られた化合物とともに公知の樹脂を併用して形成することができる。公知の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂等を挙げることができる。本発明にかかわる保護層には、これらの他に必要に応じて重合開始剤、フィラー、滑剤粒子等を含有させて形成してもよい。
【0063】
〈重合生成物〉
本発明の保護層を構成する重合生成物は、感光層の上に重合性化合物(A)と重合性化合物(B)と表面処理金属酸化物微粒子を含有する塗布液を塗設して保護層を形成した後、硬化反応させて作製される。硬化反応は電子線開裂反応を利用する方法や光や熱の存在下でラジカル重合開始剤を利用する方法等によりを行うことができる。ラジカル重合開始剤を用いて硬化反応を行う場合、重合開始剤として光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。また、光、熱の両方の開始剤を併用することもできる。
【0064】
〔重合開始剤〕
本発明で使用出来る重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルアゾビスバレロニリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物等の熱重合開始剤が挙げられる。
【0065】
また、光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(イルガキュアー369:BASFジャパン社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。
【0066】
その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュアー819:BASFジャパン社製)、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0067】
本発明に用いられる重合開始剤としては光重合開始剤が好ましく、アルキルフェノン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物が好ましく、更に好ましくはα−ヒドロキシアセトフェノン構造、或いはアシルフォスフィンオキサイド構造を有する開始剤が好ましい。
【0068】
これらの重合開始剤は1種または2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対し0.1〜40質量部、好ましくは0.5〜20質量部である。
【0069】
〔滑剤粒子〕
また、保護層に各種の滑剤粒子を含有させることも可能である。例えば、フッ素原子含有樹脂微粒子を加えることができる。フッ素原子含有樹脂粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが好ましいが、特に四フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0070】
〔溶媒〕
保護層の形成に使用される溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
〔保護層の形成〕
保護層は、重合性化合物、表面処理金属酸化物微粒子、必要に応じて公知の樹脂、重合開始剤、滑剤粒子、酸化防止剤等を添加して調製した塗布液を、公知の方法により感光層表面に塗布し、自然乾燥または熱乾燥を行い、その後硬化して作製することができる。
【0072】
塗布方法としては、ディップ塗布法、円形量規制型塗布法など公知の方法を用いることができる。ここでは円形量規制型塗布方法が最も好ましい。
【0073】
保護層の膜厚は、0.2〜10μmが好ましく、0.5〜6μmがより好ましい。
【0074】
本発明では、保護層の硬化は、塗布膜に活性線を照射してラジカルを発生して重合し、かつ分子間及び分子内で架橋反応による架橋結合を形成して硬化し、硬化樹脂を生成することが好ましい。活性線としては、紫外線、可視光などの光や電子線が好ましく、使い易さ等の見地から紫外線が特に好ましい。
【0075】
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン、紫外線LED等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常1〜20mJ/cm、好ましくは5〜15mJ/cmである。光源の出力電圧は、好ましくは0.1〜5kWであり、特に好ましくは、0.5〜3kWである。
【0076】
電子線源としては、電子線照射装置に格別の制限はなく、一般にはこのような電子線照射用の電子線加速機として、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式のものが有効に用いられる。電子線照射の際の加速電圧は、100〜300kVであることが好ましい。吸収線量としては0.005Gy〜100kGy(0.5〜10Mrad)であることが好ましい。
【0077】
活性線の照射時間は、活性線の必要照射量が得られる時間であり、具体的には0.1秒〜10分が好ましく、硬化効率または作業効率の観点から1秒〜5分がより好ましいとされる。
【0078】
本発明では、活性線の照射前後、及び、活性線を照射中に保護層を乾燥処理することができ、乾燥を行うタイミングは活性線の照射条件と組み合わせて適宜選択することができる。保護層の乾燥条件は、塗布液に使用する溶媒の種類や保護層の膜厚などにより適宜選択することが可能である。また、乾燥温度は、室温〜180℃が好ましく、80℃〜140℃が特に好ましい。また、乾燥時間は、1分〜200分が好ましく、5分〜100分が特に好ましい。
【0079】
〈ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン〉
本発明の感光層に用いられる2,3−ブタンジオールとチタニルフタロシアニンとの付加体は、チタニルフタロシアニンと、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールの少なくともいずれか(以下、ブタンジオール化合物ともいう)とを反応させることによって得ることができる。
【0080】
本発明の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンは、そのブタンジオール付加比率の違いにより2種の結晶型を有する。
【0081】
チタニルフタロシアニンと、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールの少なくともいずれかを過剰に反応させると、X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θ(±0.2°):9.5°に特徴的なピークを有する(以下、9.5°型と略)図3(1)に示す顔料が得られる。該9.5型のブタンジオール付加チタニルフタロシアニン原顔料は9.5以外にも16.4°、19.1°、24.7°、26.5°にピークがみられる。
【0082】
該顔料の構造はIRスペクトルで970cm−1付近のTi=O吸収が消失し、630cm−1付近にO−Ti−Oの吸収が現れること、熱分析(TG)で390〜410℃に約11%の質量減少があること(熱分解によるブチレンオキシドの脱離のためと考えられる)、及び質量分析の結果から、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールが、1:1で脱水縮合した構造と考えられている。
【0083】
一方、チタニルフタロシアニン1モルに対し、ブタンジオール化合物を1モル以下で反応させると、粉末X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θ:8.3°(±0.2°)に特徴的なピーク有する(以下、8.3°型と略)、図3(2)に示す顔料が得られる。該8.3°型のブタンジオール付加チタニルフタロシアニン顔料は8.3°以外にも24.7°、25.1°、26.5°にピークがみられる。該顔料は、IRスペクトルで970cm−1付近にTi=O、630cm−1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れる。また、熱分析で390〜410℃にて質量減少が11%未満あること、及び質量分析の結果から、ブタンジオール/チタニルフタロシアニン=1/1付加体とチタニルフタロシアニンとが、ある割合で混晶(単に、1つの顔料粒子中に2つ以上の化合物が混在するという意味)を形成していると推測している。ブタンジオール付加比率は、熱分析における390〜410℃の質量減少から、40〜70モル%と推測される。
【0084】
尚、X線回折スペクトルにおいて前記特徴的なピークとは、バックグラウンドのバラツキを超える明確に異なるピークを言う。
【0085】
本発明においては、良好な感度、繰り返し電位安定性が得られる点で、前記顔料が、X線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)の8.3°に特徴的なピークを有する8.3°型を用いることがより好ましい。
【0086】
〔2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料の作製方法〕
本発明のチタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールの少なくともいずれかとの付加体を含有する顔料は、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール、又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールとを各種溶媒中で室温あるいは加熱下で反応させことで合成することができる。原料であるチタニルフタロシアニンは、フタロニトリルと四塩化チタンから得る合成法、ジイミノイソインドリンとアルコキシチタンから得る合成法、フタロニトリルと尿素とアルコキシチタンから得る合成法等通常知られている。何れの合成法も用いることが出来るが、特にはジイミノイソインドリンとアルコキシチタンから得られる塩素含有量の少ない高純度なチタニルフタロシアニンが好ましい。またチタニルフタロシアニンはアシッドペースト処理等の方法により無定形化してからブタンジオール化合物と反応させるものが好ましい。無定形チタニルフタロシアニンとブタンジオール化合物との付加反応には、通常5〜30倍の溶媒が使用される。溶媒には特に制限はなくクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、クロロナフタレン、キノリンなどの芳香族溶媒からメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジグライムなどのエーテル系溶媒、さらにはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、その他ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒など多数を挙げることができる。
【0087】
チタニルフタロシアニンとブタンジオール化合物との反応は下記反応式(1)に示すが、広範囲な温度条件下で行うことができ、反応温度は25〜300℃の範囲が好ましく、BET比表面積が20m/g以上の顔料を合成するためには、30〜100℃の範囲であることがより好ましい。
【0088】
【化4】

【0089】
また、反応溶媒は上記の中ではo−ジクロロベンゼンが特に好ましく、加水分解後はアルコール、若しくはアルコールと水の混合溶媒で置換し、室温から70℃でゆっくり乾燥することが好ましい。この時のアルコールと水の割合はメタノール100質量部に対して水0〜100質量部が好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが好ましい。
【0090】
ブタンジオール化合物はチタニルフタロシアニン1モルに対して通常0.2〜2.0モルの割合で添加される。等モルの付加体であるためには、ジオール化合物を前記割合で1.0モル以上使用することが必要である。ジオール化合物を前記割合で1.0モル以下の添加量の場合には、得られた付加体はチタニルフタロシアニンとの混晶となる。本発明の分散吸収を満たすかぎり混晶も本発明の範囲に入る。
【0091】
更に、チタニルフタロシアニンとブタンジオール化合物との反応物を水の存在下、溶媒中で処理することが好ましい。水処理を行うことにより、熱的に安定な状態のジオール付加比率を有する2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する混晶顔料を安定的に得ることができる。
【0092】
以上のようにして得られた2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料が高感度で電位安定性に優れ、湿度メモリーなどの湿度依存性が無く、極めて優れた電子写真特性を有している。
【0093】
〔2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料の分散〕
本願発明の顔料(チタニルフタロシアニンと2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する顔料)を用いて、電荷発生層等の分散液を作るには、これらの顔料を溶媒中で分散する。溶媒としては特に制限はなくメチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジグライムなどのエーテル系溶媒、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブタノールなどのアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸t−ブチルなどのエステル系溶媒、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香属溶媒、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン系溶媒など多数を挙げることが出来る。
【0094】
分散液中にはバインダーを添加することが出来る。バインダーとしては使用する溶媒に溶解する範囲で広く選ぶことが出来る。例えばポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルおよびこれらのコポリマーなど多数に上る。バインダーと顔料の比率は特に制限はないが通常1/10から10/1である。バインダーが少ないと分散液が不安定になり、多すぎると電気抵抗がたかくなって電子写真感光体にしたとき繰り返しで残留電位が上昇するなどの欠点が起きやすい。
【0095】
本願発明に好ましく用いられる分散手段は、前記した低シェア分散(低剪断の分散)であるが、該低シェア分散としては、超音波分散や比重の小さいメディア(ガラス(比重:2.5)ビーズ等)を用いたメディア分散が好ましい。
【0096】
分散状態の指標としては、電荷発生層の反射スペクトルの比(R700/R780)が0.8〜1.3の範囲にある必要がある。これらの反射スペクトルの比(R700/R780)の制御は、分散時の分散液にかかるシェアを調整することにより行うことができる。具体的には、分散方法や分散時に用いるメディアの径や量、分散時間などにより制御することができる。反射スペクトルの比(R700/R780)は図2に示した。
【0097】
本願発明の顔料の分散においては、二次凝集の分散や結晶の破砕が進むにつれて780nm近辺の反射率が増大し、比(R700/R780)が減少する。
【0098】
比(R700/R780)が0.8未満の場合、過度の分散シェアにより顔料結晶が破砕されたことを示し、結晶の欠陥箇所における2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンの分解が起こりやすくなり、その結果感度や繰り返し特性が悪化する。
【0099】
又、比(R700/R780)が1.3を超える場合、分散不良の二次凝集した粒子や粗大粒子が存在することを示し、画像濃度低下などの画像欠陥を生じることとなる。
【0100】
本願発明において、感光層の反射スペクトルは、アルミ支持体上に電荷発生層を0.3μmの乾燥膜厚で形成した試料で測定する。また、該反射スペクトルは、アルミ支持体の反射率を100%としたときの相対反射率として測定する。得られた反射スペクトルの干渉縞による凹凸除去するために、測定データを685〜715nm、765〜795nmの範囲でそれぞれ二次の多項式で近似し、反射率(R700)と反射率(R780)との比(R700/R780)を算出する。
【0101】
上記反射スペクトルは光学式膜厚測定装置「Solid Lambda Thickness(スペクトラコープ社製)」を用いて測定した。
【0102】
〈感光体の作製〉
本発明の電子写真感光体の作製に当たっては有機感光体の公知の技術をそのまま使うことが出来る。以下、本発明に用いられる有機感光体の構成について記載する。
【0103】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0104】
上記有機感光体の層構成は、特に限定はないが、例えば以下に示すものがある。
(1)導電性支持体上に、感光層(電荷発生層と電荷輸送層)、及び、保護層を順次積層した層構成
(2)導電性支持体上に、感光層(電荷輸送材料と電荷発生材料とを含有する単層)、及び、保護層を順次積層した層構成
(3)導電性支持体上に、中間層、感光層(電荷発生層と電荷輸送層)、及び、保護層を順次積層した層構成
(4)導電性支持体上に、中間層、感光層(電荷輸送材料と電荷発生材料とを含有する単層)、及び、保護層を順次積層した層構成
本発明の感光体は、上記(1)〜(4)いずれの層構成のものでもよく、これらの中でも、導電性支持体上に、中間層、感光層(電荷発生層と電荷輸送層)、保護層を順次設けて作製された層構成のものが特に好ましい。
【0105】
以下に本発明に用いられる具体的な感光体の構成について記載する。層構成の一例を図1に示した。
【0106】
〔導電性支持体〕
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状或いは円筒状の導電性支持体が用いられる。
【0107】
本発明の円筒状の導電性支持体とは回転することによりエンドレスで画像形成を行う必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0108】
導電性支持体の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗10Ω・cm以下が好ましい。
【0109】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/l、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0110】
〔中間層〕
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることが好ましく、特にはポリアミド等のバインダー樹脂中に酸化チタン粒子を分散含有させる中間層が好ましい。該酸化チタン粒子の平均粒径は、数平均一次粒径で10nm以上400nm以下の範囲が良く、15nm〜200nmが好ましい。10nm未満では中間層によるモアレ発生の防止効果が小さい。一方、400nmより大きいと、中間層塗布液の酸化チタン粒子の沈降が発生しやすく、その結果中間層中の酸化チタン粒子の均一分散性が悪く、又黒ポチも増加しやすい。数平均一次粒径が前記範囲の酸化チタン粒子を用いた中間層塗布液は分散安定性が良好で、且つこのような塗布液から形成された中間層は黒ポチ発生防止機能の他、環境特性が良好で、且つ耐クラッキング性を有する。
【0111】
本発明に用いられる酸化チタン粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状の酸化チタン粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型で且つ粒状のものが最も良い。
【0112】
本発明の酸化チタン粒子は表面処理されていることが好ましい。中でも複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うものが好ましい。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理を行い、最後に反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うことが好ましい。
【0113】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とは酸化チタン粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を言い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0114】
この様に、酸化チタン粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、酸化チタン粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理された酸化チタン粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0115】
表面処理に用いる好ましい反応性有機ケイ素化合物としてはメチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキチシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等の各種アルコキシシラン及びメチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0116】
〔感光層〕
本発明の電子写真感光体の感光層の構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0117】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0118】
〔電荷発生層〕
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0119】
本発明の有機感光体には、電荷発生物質として前述のブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを使用するが、他のフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを併用して用いることができる。
【0120】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.1μm〜2μmが好ましい。
【0121】
〔電荷輸送層〕
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0122】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、任意のバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0123】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0124】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0125】
以上、本発明の最も好ましい感光体の層構成を例示したが、本発明では上記以外の感光体層構成でも良い。
【0126】
感光層の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0127】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0128】
〈画像形成装置〉
図4は、本発明の製造方法で製造された電子写真感光体を用いたカラー画像形成装置の断面構成図の一例である。
【0129】
この画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜850nmの半導体レーザー又は発光ダイオードを、像露光光源として用いるのが望ましい。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)から2400dpi、あるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0130】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を言う。
【0131】
用いられる光ビームとしては半導体レーザーを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0132】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0133】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0134】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
【0135】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0136】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Y(以下、単にクリーニング手段6Y、あるいは、クリーニングブレード6Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0137】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0138】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいは、レーザー光学系などが用いられる。
【0139】
この画像形成装置では、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0140】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0141】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された画像支持体(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての画像支持体Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、画像支持体P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された画像支持体Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や画像支持体等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と言う。
【0142】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより画像支持体Pにカラー画像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0143】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0144】
二次転写ローラ5bは、ここを画像支持体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0145】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0146】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0147】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0148】
この画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0149】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施の態様はこれらに限定されるものではない。
【0150】
(合成例)
上記重合性化合物(A)の合成については、公知の方法によって行うことができ、例示化合物M−1の合成方法を例として以下に記載する。
【0151】
(合成例1:M−1の合成)
反応器にトリペンタエリスリトール100g、アクリル酸181g、酢酸18g、シクロヘキサン91g、濃硫酸8.0g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.2gを仕込み、空気を10ml/分で吹き込みながら、80℃〜90℃で8時間反応した。反応終了後、反応混合物にトルエン530gを添加し、得られた有機層を25質量%の水酸化ナトリウム水溶液、次いで10質量%の硫酸ナトリウム水溶液により洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥後、重合禁止剤(ハイドロキノンモノメチルエーテル)0.2gを添加して濃縮し、乾燥して「M−1」153gを得た。得られた「M−1」は、通常トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の混合物として得られるが、各々を分留によりわけることができる。
【0152】
(表面処理金属酸化物の作製)
(表面処理金属酸化物微粒子1の作製)
金属酸化物微粒子として数平均一次粒径17nmの「酸化スズ」100質量部、表面処理剤として「例示化合物S−13」30質量部、メチルエチルケトン1000質量部を湿式サンドミル(径0.5mmのアルミナビーズ)に入れ、30℃にて6時間混合、その後、メチルエチルケトンとアルミナビーズを濾別し、60℃にて乾燥し「表面処理金属酸化物微粒子1」を調製した。
【0153】
(表面処理金属酸化物微粒子2の作製)
表面処理金属酸化物微粒子1の作製において、金属酸化物微粒子として数平均一次粒径30nmの「アルミナ」を用い、表面処理剤として「例示化合物S−13」を用いた他は同様にして「表面処理金属酸化物微粒子2」を作製した。
【0154】
(表面処理金属酸化物微粒子3の作製)
表面処理金属酸化物微粒子1の作製において、金属酸化物微粒子として数平均一次粒子径6nmの「二酸化チタン」を用いた他は同様にして「表面処理金属酸化物微粒子3」を作製した。
【0155】
(表面処理金属酸化物微粒子4の作製)
表面処理金属酸化物微粒子1の作製において、表面処理剤を「例示化合物S−28」に変更した他は同様にして「表面処理金属酸化物微粒子4」を作製した。
【0156】
(表面処理金属酸化物微粒子5の作製)
表面処理金属酸化物微粒子1の作製において、表面処理剤を「例示化合物S−29」に変更した他は同様にして「表面処理金属酸化物微粒子5」を作製した。
【0157】
(合成例2:CG−1の合成)
(1)無定形チタニルフタロシアニンの合成
1,3−ジイミノイソインドリン;29.2gをo−ジクロロベンゼン200mlに分散し、チタニウムテトラ−n−ブトキシド;20.4gを加えて窒素雰囲気下に150〜160℃で5時間加熱した。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムで洗浄、2%塩酸水溶液で洗浄、水洗メタノール洗浄して、乾燥後、26.2g(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
【0158】
ついで粗チタニルフタロシアニンを5℃以下で濃硫酸250ml中で1時間攪拌して溶解し、これを20℃の水5リットルに注いだ。析出した結晶をろ過し、充分に水洗してウエットペースト品225gを得た。
【0159】
ついでウエットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、ろ過、乾燥してチタニルフタロシアニン−アモルファス品24.8g(収率86%)を得た。
【0160】
(2)(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン(CG−1)の合成
1リットルの4ツ口フラスコに温度計、冷却管、メカニカルスターラを設置し、前述の無定形チタニルフタロシアニン10.0gと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール1.30g(0.83当量比)(当量比はチタニルフタロシアニンに対する当量比、以後同じ)をo−ジクロロベンゼン(ODB)200ml中に混合し、60〜70℃で6.0時間加熱撹拌を行った。)
続いて反応液を一晩放置後、該反応液に水100mlを加え60〜70℃で6.0時間加熱撹拌し加水分解反応を行なった(加水分解工程)。付加反応及び加水分解工程の撹拌速度は、300rpmで撹拌した。
【0161】
該加水分解反応後、反応液を放冷し、メタノールを加えて生じた結晶をろ過し、ろ過後の結晶をメタノールで洗浄後、ろ過した後、60℃の乾燥箱にて一晩乾燥を行った。(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する顔料CG−1:10.3gを得た。CG−1のX線回折スペクトルを図3の(2)に示す。8.3°に特徴的なピークがある。マススペクトルにおいて576と648にピークがあり、IRスペクトルでは970cm−1付近のTi=O、630cm−1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れる。
【0162】
また熱分析(TG)では390〜410℃に約7%の質量減少があることから、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体(前記化1で示した脱水縮合構造)と非付加体(付加していない)チタニルフタロシアニンの混晶と推定される。
【0163】
(合成例3:CG−2の合成)
(3)(2S,3S)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン(CG−2)の合成
合成例2のCG−1の合成において、(2R,3R)−2,3−ブタンジオールを(2S,3S)−2,3−ブタンジオールに換えた他は合成例1と同様に付加反応および加水分解工程を行い、メタノールで洗浄を行った後、メタノール/水=7/3の溶媒でメタノールを置換し、ろ過後、60℃の乾燥箱中で一晩乾燥し(2S,3S)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する顔料CG−2:10.6gを得た。CG−2のX線回折スペクトルを測定すると8.3°に特徴的なピークが見られ、マススペクトルにおいて576と648にピークがあり、IRスペクトルではCG−1同様970cm−1付近のTi=O、630cm−1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れる。また熱分析(TG)では390〜410℃に約7%の質量減少があることから、チタニルフタロシアニンと(2S,3S)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体(前記反応式(1)で示した脱水縮合構造)と非付加体(付加していない)チタニルフタロシアニンの混晶と推定される。
【0164】
(合成例4:CG−3(Y型チタニルフタロシアニン)の合成)
ジイミノイソインドリンとチタニウムテトラブトキシドからチタニルフタロシアニン粗品を合成し、これを硫酸に溶かし水に注いで生じた沈殿を濾過し水で十分に洗って無定型チタニルフタロシアニン顔料含水ペーストを得た。この顔料含水ペースト(固形分換算約10g)をオルトジクロロベンゼン100mlと水100mlの混合液(水層は分離している)に分散し、70℃で6時間加熱後、メタノールに注いで生じた結晶を濾過し、乾燥してY型チタニルフタロシアニンを得た。
【0165】
≪実施例1〜19≫
〈感光体1の作製〉
(導電性支持体の準備)
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を準備した。
【0166】
(中間層の形成)
下記組成の分散液を同じ混合溶媒にて2倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュ5μmフィルター使用)し、中間層塗布液を作製した。
【0167】
ポリアミド樹脂(CM8000:東レ社製) 1質量部
酸化チタン(SMT500SAS:テイカ社製) 3質量部
メタノール 10質量部
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行った。
【0168】
上記塗布液を前記導電性支持体上に、乾燥膜厚2μmとなるよう浸漬塗布法で塗布、乾燥して「中間層」を形成した。
【0169】
(電荷発生層の形成)
〔電荷発生層塗布液CGL−1〕
下記組成を混合し、循環式超音波ホモジナイザーRUS−600TCVP(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz,600W)にて循環流量40L/Hで0.5時間分散し、電荷発生層塗布液CGL−1を作製した。
【0170】
電荷発生物質:CG−1 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12質量部
3−メチル−2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 400質量部
この電荷発生層塗布液CGL−1を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布、乾燥して、乾燥膜厚0.3μmの「電荷発生層」を形成した。
【0171】
この電荷発生層の反射率比は1.00であった。
【0172】
(電荷輸送層の形成)
下記組成を混合、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。
【0173】
電荷輸送物質(下記CTM−1) 225質量部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300質量部
酸化防止剤(Irganox1010:BASFジャパン社製) 6質量部
テトラヒドロフラン 1600質量部
トルエン 400質量部
シリコーンオイル(KF−54:信越化学社製) 1質量部
この電荷輸送層塗布液を前記電荷発生層の上に円形量規制型塗布機を用いて塗布し、乾燥して乾燥膜厚20μmの「電荷輸送層」を形成した。
【0174】
【化5】

【0175】
(保護層の形成)
下記組成を溶解、分散して保護層塗布液を調製した。
【0176】
表面処理金属酸化物微粒子1 100質量部
重合性化合物(A)(M−2) 30質量部
重合性化合物(B)(m−1) 70質量部
重合開始剤(イルガキュアー819:BASFジャパン社製) 15質量部
sec−ブタノール 500質量部
この保護層塗布液を上記電荷輸送層の上に円形量規制型塗布装置を用いて塗布し、保護層を形成した。
【0177】
形成した保護層を乾燥後、メタルハライドランプを用いて窒素気流下、光源から感光体表面までの距離を100mmに設置し、ランプ出力4kWで紫外線を1分間照射して、乾燥膜厚2.0μmの「保護層」を形成し、「感光体1」を作製した。
【0178】
〈感光体2〜7、9、10、12〜19の作製〉
感光体1の作製において、保護層の表面処理金属酸化物微粒子、重合性化合物(A)、重合性化合物(B)の種類と添加量を表1のようにして「感光体2〜7、9、10、12〜19」を作製した。
【0179】
〈感光体8の作製〉
感光体1の作製において、電荷発生層として下記電荷発生層塗布液CGL−2を用いた他は同様にして「感光体8」を作製した。
【0180】
〔電荷発生層塗布液CGL−2〕
電荷発生層塗布液CGL−1の作製において、分散条件を超音波ホモジナイザー(超音波工業UH−3C、25kHz、150W)にて1.5時間分散に変更した以外は同様にして電荷発生層塗布液CGL−2を作製した。
【0181】
〈感光体11の作製〉
感光体1の作製において、電荷発生層として下記電荷発生層塗布液CGL−3を用いた他は感光体1と同様にして「感光体11」を作製した。
【0182】
〔電荷発生層塗布液CGL−3〕
電荷発生層塗布液CGL−1の作製において、分散時間を2.5時間に変更した以外は同様にして電荷発生層塗布液CGL−3を作製した。
【0183】
≪比較例1〜4≫
〈感光体20の作製〉
感光体1の作製において、電荷発生層として下記電荷発生層塗布液CGL−6を用い、保護層に重合性化合物(A)を添加しなかった他は、感光体1と同様にして「感光体20」を作製した。
【0184】
〔電荷発生層塗布液CGL−6〕
電荷発生層塗布液CGL−1の作製において、電荷発生層のCG−1をCG−3(Y型チタニルフタロシアニン)に代えた以外は同様にして電荷発生層塗布液CGL−6を作製した。尚、Y型チタニルフタロシアニンはX線回折スペクトル(図5)で、27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料であり、下記合成例により合成した顔料である。
【0185】
〈感光体21の作製〉
感光体1の作製において、電荷発生層として下記電荷発生層塗布液CGL−4を用い、保護層に重合性化合物(A)を添加しなかった他は感光体1と同様にして、「感光体21」を作製した。
【0186】
〔電荷発生層塗布液CGL−4〕
電荷発生層塗布液CGL−1の作製において、下記条件のサンドミル分散に変更した以外は同様にして電荷発生層塗布液CGL−4を作製した。
【0187】
分散メディアとして外径1mmのガラスビーズを用い、ビーズ充填率80体積%、回転数800rpmの条件のサンドミルにて1時間分散を行った。
【0188】
〈感光体22の作製〉
感光体1の作製において、電荷発生層として下記電荷発生層塗布液CGL−5を用い、保豪層に重合性化合物(A)を添加しなかった他は同様にして「感光体22」を作製した。
【0189】
〔電荷発生層塗布液CGL−5〕
電荷発生層塗布液CGL−1の作製において、分散条件を超音波ホモジナイザー(超音波工業UH−3C、25kHz、150W)にて30分間分散に変更した以外は同様にして電荷発生層塗布液CGL−5を作製した。
【0190】
〈感光体23の作製〉
感光体1の作製において、電荷発生層として前記電荷発生層塗布液CGL−4を用い、保護層に重合性化合物(A)として下記構造式の重合性官能基数が6個のM−8を用いた他は同様にして「感光体23」を作製した。
【0191】
【化6】

【0192】
【表1】

【0193】
(評価方法)
以上のようにして作製した電子写真感光体1〜23について以下のようにして評価を行った。なお、実施例1〜19の「感光体1〜19」は本発明の感光体、「感光体20〜23」は比較用として評価した。
《評価》
<環境メモリー>
デジタル複写機bizhub920を高温高湿(HH)環境下(33℃;80%)24時間放置後、低湿低温下(LL:10℃、20RH%)に置き、30分後、コピーした。オリジナル画像で0.4の濃度のハーフトーン画像を0.4の濃度にコピーして、コピー画像の濃度差(ΔHD=最大濃度−最小濃度)を求め、下記評価基準に則り評価して、環境メモリーを表す指標として示す。
【0194】
◎:ΔHDが0.05以下(良好)
○:ΔHDが0.05より大で0.1未満(実用上問題なし)
×:ΔHDが0.1以上(実用上問題あり)
<耐久試験後画像評価>
高温高湿(HH)環境下(33℃;80%)にて5万回の実写試験及び低温低湿(LL)環境下(15℃;30%)にて5万回の実写試験を行い、画像評価を行った。
【0195】
各評価項目及び判定基準は、下記に示す通りである。なお、ここでは○以上を合格と判定した。
【0196】
<画像濃度>
白地のA4紙に黒ベタ画像を作製し、マクベス社製RD−918を使用して画像濃度を測定した。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した。多数枚のコピーで露光後の表面電位が上昇すると、画像濃度が低下する。
【0197】
◎:黒ベタ画像の画像濃度が1.2以上(良好)
○:黒ベタ画像の画像濃度が1.0〜1.2未満(実用上問題なし)
×:黒ベタ画像の画像濃度が1.0未満(実用上問題有り)
<耐摩耗性>
環境条件30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験の前後の膜厚差で評価した。感光層の膜厚は均一膜厚部分(感光体の両端は膜厚が不均一になりやすいので、少なくとの両端3cmは除く)をランダムに10箇所測定し、その平均値を感光層の膜厚とする。膜厚測定器は渦電流方式の膜厚測定器EDDY560C(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いて行い、耐刷試験前後の感光層膜厚の差を膜厚減耗量とする。
【0198】
◎:減耗量が0.7μm以下(良好)
○:減耗量が0.8μm〜2μm(実用上問題なし)
×:減耗量が2μmより大きい(実用上問題有り)
結果を表2に示した。
【0199】
【表2】

【0200】
以上の結果から明らかなように本発明の感光体1〜19は比較用の感光体20〜23に比べて、高感度であり、且つ高湿環境下でのメモリーの発生もなく、繰り返し使用しても残留電位の上昇が無く、その結果画像濃度が安定しており、耐摩耗性にも優れた高耐久性を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0201】
1A 導電性支持体
2A 感光層
3A 中間層
4A 電荷発生層
5A 電荷輸送層
6A 保護層
7A 表面処理金属酸化物微粒子
1Y、1M、1C、1Bk 感光体ドラム
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 像露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
6Y、6M、6C、6Bk クリーニング手段
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層と保護層とを順次積層して成る電子写真感光体において、該保護層は、重合性官能基を7個以上有する化合物(A)と重合性官能基を2個以上4個以下有する化合物(B)と重合性官能基を有する表面処理剤によって表面処理された表面処理金属酸化物微粒子とを用いて作製された重合生成物を含有し、かつ該感光層が2,3−ブタンジオールとチタニルフタロシアニンとの付加体を含有し、該感光層の反射スペクトルの700nmにおける反射率(R700)と780nmにける反射率(R780)との反射率の比(R700/R780)が0.8以上1.3以下であることを特徴とする電子写真感光体。
但し、上記反射率は感光層(電荷発生層)をアルミ支持体上に形成して測定した反射率であり、アルミ支持体の反射率を100%としたときの相対反射率である。
【請求項2】
前記重合生成物が、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計を100質量部とし、前記表面処理金属酸化物微粒子を50質量部以上250質量部以下にして作製されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記重合性官能基を7個以上有する化合物(A)の重合性官能基数が10個以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−123238(P2012−123238A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274482(P2010−274482)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】