説明

電子写真撮像部材ベルト及びその製造方法

【課題】実質的に継ぎ目がない柔軟な電子写真撮像部材ベルトを製作すること。
【解決手段】柔軟な電子写真撮像部材ベルトの製作方法は、材料の細片を含んだ柔軟基板支持シートを設けるステップであり、以下の3つのステップを有する。(1)その材料が、少なくとも第1および第2の垂直縁部のカーボンブラック充填ポリイミドポリマーを含み、第1の垂直細片縁部、第2の垂直細片縁部、上部像側面および底部非像側面を有する。(2)前記第1の垂直な細片縁部を前記第2の垂直な縁部に超音波溶接して継ぎ目を形成する。(3)前記柔軟基板支持シートの少なくとも前記像側面上の隆起した材料を除去するために、前記継ぎ目をレーザで切除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な種類の実用的な用途のために使用される通常の柔軟なベルトは、一般に、継ぎ目のある又は継ぎ目のないいずれかの構成のベルトとして設けられる。これらの柔軟なベルトは、通常、エレクトロスタトグラフ(electrostatographic)撮像部材ベルト、コンベアベルト、駆動ベルト、中間像転送ベルト、シート搬送ベルト、文書処理ベルト、トナー粒子搬送用供与ベルト、モータ駆動ベルト、トルク支援駆動ベルトやその他など、多数の機能的な目的に合わせたものが使用される。
【背景技術】
【0002】
エレクトロスタトグラフ撮像部材ベルトなどの柔軟なベルトは、本技術で周知である。通常のエレクトロスタトグラフ柔軟撮像部材は、たとえば、電子写真撮像システム用の光受容体、ならびに電子写真撮像システム用の電気受容器またはイオノグラフ撮像部材を含む。電子写真およびエレクトログラフの撮像部材ベルトは、通常、たとえ継ぎ目のない撮像ベルトが好ましくとも、ベルト表面全体が実質的な撮像領域なので、ベルト製作が容易でありコストの観点から継ぎ目のあるベルト構成でともに使用される。
【0003】
柔軟像転送部材は、通常、撮像部材織布から切り出されたシートで製作される。シートは、一般に、形が四角形である。辺すべてが同じ長さでもよく、または1対の平行な辺が他方の対の平行な辺より長くてもよい。本明細書で使用される「四角形」という表現は、辺すべてが同じ長さである、または等しい平行な2辺の長さが、等しい平行な他の2辺と異なる4辺によるシートを含むと企図される。
【0004】
シートは、そのシートの相対する縁の末端領域を重ねることによって、ベルトに製作される。継ぎ目は、通常、接合部位において重なった縁の末端領域中で生じる。接合は、適切な手段によって行うことができる。通常の接合技術は、溶接(超音波溶接など)、接着、テーピング、圧力熱融合(pressure heat fusing)やその他を含む。撮像機械中で一般に使用される通常の継ぎ目があるエレクトロスタトグラフ撮像部材ベルトは、超音波溶接プロセスから形成された溶接継ぎ目を有する。
【0005】
超音波溶接は、柔軟撮像部材を接合するために選択される方法になることがある。というのは、その方法は、迅速で、汚れがなく溶剤不要であり、コストが低いだけでなく、薄くて狭い継ぎ目を生じるからである。さらに、超音波溶接は、好まれることがある。というのは、溶接機用ホーンの機械的な高周波数のパウンディングによって、柔軟撮像シートループの隣接し重なる末端部縁領域において熱が発生させられ、その中にある1つ以上の層が最大限に溶解され、それによって強力で精密に画定された継ぎ目接合が形成される。超音波溶接は、柔軟なポリマーシートを接合するために選択されることもある。なぜならば、その速度および汚れがないこと(溶剤不要)から、および強力な継ぎ目を生じるからである。光伝導性シートの被覆層の溶解によって、基板と基板の相対する末端部の直接の接触が得られ、それらが融合されて継ぎ目になる。
【0006】
超音波溶接は、可聴範囲より高い高周波数の機械的振動を使用するプロセスである。振動は、溶接機用の振動工具(sonotrode)またはホーン(horn)の先端部において発生する。そのようなホーンデバイスから生じる起振力は、互いに接合するように企図された熱可塑性材料要素を軟化させる、または溶解するのに十分高い周波数において、発生することができる。たとえば、そのような周波数は、20、30または40kHzで効力を有することができる。超音波溶接の主な利点の1つは、溶接工程が極めて短いことに見出すことができ、それらの利点は大量生産においてもその有益性を高める。溶接の持続時間は1秒より短くすることができる。したがって、そのプロセスは、多数の産業および用途で使用されてきた。
【0007】
超音波溶接は、ミリメートルの何分の1だけから数センチメートルまでの範囲で、ホーンからの様々な間隔において実施することができる。遠い溶接を実施する場合、ポリマーには、エネルギーを効率的に、すなわち柔軟でありすぎないように、または損失弾性率が高すぎないように送らなければならない。アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレン(ABS)のコポリマー、ならびに高耐衝撃ポリスチレンは、超音波で溶接するのにもっとも容易なポリマーの中に入る。超音波溶接は、通常、半結晶熱可塑性材料より容易にアモルファス熱可塑性材料を接合する。しかし、さらに強力な機械の出現によって、この差がぼやけてきて、現在、半結晶ポリマーは、ごく普通に溶接される。
【0008】
超音波溶接プロセスは、柔軟撮像部材シートの重なった末端部を平坦な金床表面に対して真空によって押さえつけ、シートの幅全体にわたって横に、重なり合った末端部の上をそれに沿って超音波振動ホーンの先端末端部を誘導することを伴い、それによって溶接継ぎ目を形成することができる。光受容体のベルト/ループ末端部を接合するために加えられる超音波振動周波数は、摩擦熱が材料に接して材料が接合されるように維持される。熱は、接触部分を軟化させる、または溶解し、それによって不要な、隆起し起伏のあるもろい溶接部になるホーンの熱欠陥なしで、接合されるベルトの末端部断片が融合されることになる。
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0079049号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
残念ながら、超音波溶接接合プロセスによって、ベルトの縁部を超えてスラムの重なった領域のどちら側かの上に突き出る、それぞれ、重ね継ぎおよびはねかけが形成されることになり得る。はねかけおよび継ぎ目の重なりがあることによって生じる、光受容体ベルトの継ぎ目領域における過大な厚さのため、継ぎ目が各支持ローラの上を通過するとき、光受容体ベルトの他の残された部分より継ぎ目において、誘起曲げひずみがより大きくなり得る。さらに、継ぎ目厚さが過大であり、はねかえりの突起部が不ぞろいであるため、電子写真撮像および洗浄のサイクル中に、クリーニングブレードに対して大きな横方向の摩擦力が、発現されることになり得る。撮像ベルトの寿命に厳しく影響し、ブレードの磨耗を激化し、ベルト循環中のベルト速度の変動を誘起する、機械的な干渉が観察されてきた。
【0011】
継ぎ目における重ね継ぎは、たとえば、往復運動するパンチまたは切り欠きデバイスを使用して、ベルトのどちらかの縁部から除去することができる。往復運動パンチは、小さな円形断面を有し、重ね継ぎおよび継ぎ目の部分を除去して、ベルトのどちら側かの縁部中に一般に半円形の切り欠きを形成する。研磨による継ぎ目表面の平滑化などの継ぎ目のモルフォロジを改良するために、他の革新的な取り組みが行われてきており、継ぎ目の上部表面をスクライビングして曲げストレス/ストレスを除去することによる継ぎ目寿命の延長、ならびに重ね合わせおよび溶接の前の機械的研磨による撮像シート末端部の形状変更は、すべて良好であることが実証されているが、とはいっても、これらの技術は、扱いにくく、実施するには極めてコストがかかる。将来のエレクトロスタトグラフ撮像要求を満足する機械的にロバストな撮像部材ベルトを提供するために、柔軟なベルトの継ぎ目に関する欠点をなくすことに対し、継ぎ目のない撮像部材ベルトを設けることが重要であることは、それゆえ明らかになっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願で開示される態様は、以下を含む。
【0013】
実質的に継ぎ目がない柔軟な電子写真撮像部材ベルトを製作するための方法であって、材料の細片(strip)を含んだ柔軟基板支持シートを設け、前記材料は、少なくとも第1および第2の垂直縁部のカーボンブラック充填ポリイミドポリマーを含み、第1の垂直な細片縁部と第2の垂直な細片縁部と表面撮像面および裏面非撮像面とを有する柔軟基板支持シートを設けるステップと、前記第1の垂直細片縁部を前記第2の垂直縁部に超音波溶接して継ぎ目を形成するステップと、前記柔軟基板支持シートの少なくとも前記像側面上の隆起した材料を除去するために、前記継ぎ目をレーザで切除するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【0014】
カーボンブラック充填ポリイミドポリマーの未溶解の光分解された継ぎ目を有した柔軟基板細片材料を含んだ継ぎ目のない柔軟電子写真撮像部材を含むシステム。
【0015】
未溶解の光分解された継ぎ目を有したカーボンブラック充填ポリイミドポリマーから構成されたベルトの電子写真撮像部材を含んだ電子写真印刷システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記に述べた様々な、ならびに他の特徴および利点は、添付した図面を含め、その実施形態の本記述からよりよく理解される。
【0017】
実施形態では、実質的に継ぎ目がない柔軟な電子写真撮像部材ベルトを製作するための方法であって、材料の細片(strip)を含んだ柔軟基板支持シートを設け、前記材料は、少なくとも第1および第2の垂直縁部のカーボンブラック充填ポリイミドポリマーを含み、第1の垂直な細片縁部と第2の垂直な細片縁部と表面撮像面および裏面非撮像面とを有する柔軟基板支持シートを設けるステップと、前記第1の垂直細片縁部を前記第2の垂直縁部に超音波溶接して継ぎ目を形成するステップと、前記柔軟基板支持シートの少なくとも前記像側面上の隆起した材料を除去するために、前記継ぎ目をレーザで切除するステップと、を含む方法が示される。
【0018】
一実施形態では、カーボンブラック充填ポリイミドポリマーは、Kapton(登録商標)であり、それは、細片材料全体または継ぎ目領域について支配的な材料とすることができる。継ぎ目は、形が直線、湾曲、曲線、またはパズル切断形など任意の形状とすることができる。超音波溶接は、たとえば、本技術の1つ以上の超音波溶接ホーンを使用して、形成することができる。
【0019】
継ぎ目のある柔軟なベルトおよびそのベルトを製作するためのプロセスが開示される。エキシマレーザによる切除技術を使用し、撮像部材の2つの相対する末端部の底部および上部から正確な量の材料を除去し、2つの切断され相対した末端部を重ね合わせ、重ね合わせ部を超音波で溶接して溶接継ぎ目を形成することによって、複数層の電子写真撮像部材ベルトが作製される。そのようにして得られたその結果の複数層の撮像部材ベルトは、溶接継ぎ目の厚さがほとんど増加せず、継ぎ目のはねかえり形成部の量が減少する。
【0020】
使用されるレーザは、エキシマレーザなど、本技術で知られたいくつかのレーザのどの1つでもよい。一実施形態では、レーザは、ポリイミドの分子結合エネルギーより高いが、その材料を溶解する、または蒸発させることを伴うエネルギーより低い光子エネルギーを発生する。カーボンブラック充填ポリイミドがKapton(登録商標)であるとき、光子エネルギーは、赤外線(溶解を引き起こすことができる)の範囲外とすることができ、約100nmから約690nm、あるいは約180nmから約400nmとすることができる。193nm、248nmや351nmなど、紫外線の範囲にある光子エネルギーでは、決して平滑でない継ぎ目を伴うことがある材料の溶解または蒸発がなく、分子結合の破壊が可能になり得る。その下にある材料に影響を及ぼすことなく、継ぎ目領域を切除することが、アイデアである。処理速度については、滑らかな継ぎ目を得るために、10パルスより少ないレーザを使用することが、役に立つことがある。継ぎ目のどちら側かの上にマスクを使用して、継ぎ目を囲繞する材料にすべての企図しない影響を防止することができる。
【0021】
他の実施形態では、カーボンブラック充填ポリイミドポリマーの未溶解の光分解された継ぎ目を有した柔軟基板細片材料を含んだ、継ぎ目のない柔軟電子撮像部材が開示される。そのような実質的に継ぎ目のない(すなわち、継ぎ目の各側面上の材料がほぼ同じ高さにある、隆起がない滑らかな継ぎ目を有する)柔軟基板細片を、電子写真システムなどの電子写真印刷システム中に使用することができる。やはり、その継ぎ目ラインは、直線、湾曲、曲線やパズル形状などのどのような形状も取ることができ、横方向の切断は、実質的な垂直または傾斜を含め、任意の角度において行うことができる。
【0022】
ここで図面を参照すると、図1に、ベルト型光受容体8を示す。基板材料10が切断され、その末端部が接合され接着されて、ベルトが形成される。次いで、ベルトは、層で被覆され、光受容体が形成される。
【0023】
図2は、継ぎ目が、ベルト(図1)の2つの末端部の超音波溶接によって形成され、その後、継ぎ目ラインの上のすべての材料がレーザによって切除された、Kapton(登録商標)を含んだカーボンブラック充填イミドポリマーの走査式電子顕微鏡写真の図である。この電子顕微鏡写真に見ることができるように、継ぎ目は、実質的に滑らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】継ぎ目のある中間転送ベルトの等角図である。
【図2】継ぎ目ラインの上の隆起した部分のレーザによる切除がその後に続く、超音波溶接によって形成されたカーボンブラック充填ポリイミドの継ぎ目の走査式電子顕微鏡写真の図である。
【符号の説明】
【0025】
8 ベルト型光受容体、10 基板材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に継ぎ目がない柔軟な電子写真撮像部材ベルトを製作するための方法であって、
材料の細片(strip)を含んだ柔軟基板支持シートを設け、前記材料は、少なくとも第1および第2の垂直縁部のカーボンブラック充填ポリイミドポリマーを含み、第1の垂直な細片縁部と第2の垂直な細片縁部と表面撮像面および裏面非撮像面とを有する柔軟基板支持シートを設けるステップと、
前記第1の垂直細片縁部を前記第2の垂直縁部に超音波溶接して継ぎ目を形成するステップと、
前記柔軟基板支持シートの少なくとも前記像側面上の隆起した材料を除去するために、前記継ぎ目をレーザで切除するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記材料の細片が、カーボ充填(carbo-loaded)ポリイミドポリマーを支配的に含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
カーボンブラック充填ポリイミドポリマーの未溶解の光分解された継ぎ目を有した柔軟基板細片材料を含むことを特徴とする、継ぎ目のない柔軟電子写真撮像部材。
【請求項4】
未溶解の光分解された継ぎ目を有したカーボンブラック充填ポリイミドポリマーから構成されたベルト電子写真撮像部材を含むことを特徴とする、電子写真印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−4159(P2007−4159A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165482(P2006−165482)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】