説明

電子写真現像剤用キャリア粉および当該キャリア粉を含む電子写真現像剤

【課題】電子写真現像機の進歩により、顕在化してきた画像特性の悪化、特にキャリア飛散を抑制する。
【解決手段】電子写真現像剤に用いられるキャリア粒子の内部ポア率を下げることで、一粒子当りの磁力が高く維持され、低磁場側の磁力の立ち上がりを上げることで、当該キャリア粉で形成される磁気ブラシの保持力を向上させ、キャリア飛散を抑制した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリア粉および当該キャリア粉を含む電子写真現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真現像の分野において、近年、高画質化、フルカラー化が進んでいる。当該高画質化、フルカラー化に伴い、電子写真現像剤に用いられるキャリア粉(以下、単に、キャリア粉と記載する場合がある。)への負荷が増大する傾向にある。そのため、このキャリア粉への負荷増大の結果と考えられる「キャリア飛散」の問題が顕在化してきた。このキャリア飛散とは、電子写真上に白筋等の画像欠陥が生じる現象である。当該画像欠陥は、電子写真現像機中の磁気スリーブ上で、前記キャリア粉により形成される磁気ブラシを形成するキャリア粉を構成するキャリア粒子同士の保持力が減退し、当該キャリア粉が感光体に飛散することに起因するものであると考えられている。
そこで、高画質化、フルカラー化した電子写真現像であっても、キャリア飛散を抑制できるキャリア粉が求められた。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子写真現像剤用キャリア粉を構成するキャリア粒子の断面において観察されるポアに関し、その90%以上が外径5μm以下のポアとして形成され、且つ、当該ポア部分の当該粒子断面全体に対する面積率(以下、内部ポア率と記載することがある。)が3〜30%の範囲にある芯材粒子を、少なくとも80%以上含有することにより、電気抵抗の印加電圧依存度の小さいキャリア粉が得られることができる旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2950480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にはキャリア粒子のポア率を調整することにより、当該キャリア粉において電気抵抗の印加電圧依存性が調整可能となり、高濃度でカブリのない鮮明画像が形成できる旨、記載されている。しかし、本発明者らの検討によれば、電子写真の高画質化、フルカラー化、を想定した条件下においては、例え、特許文献1に記載のキャリア粉を用いた電子写真現像剤を用いてもキャリア飛散が発生するという問題があった。
【0006】
上述の現状より、本発明の目的は、高画質化、フルカラー化する電子写真現像機に使用しても、耐キャリア飛散特性を発揮する電子写真現像剤用キャリア粉およびその製造方法、並びに当該キャリア粉を含む電子写真現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来の技術に係るキャリア粉を、高画質化、フルカラー化を想定した条件下においたとき、キャリア飛散が発生するという問題の原因について検討を行った。その検討の結果、当該キャリア粉において、飽和磁化や1kA/m×10/4πといった高磁場(以下、それぞれ、σs、σ1kと記載する場合がある。)における磁力の立ち上がり、さらに、200A/m×10/4π、100A/m×10/4πといった低磁場(以下、それぞれ、σ200、σ100と記載する場合がある。)における磁力の立ち上がり特性が重要なことに想到した。
【0008】
ここで本発明者らは、さらに検討を続け、当該キャリア粉を構成するキャリア粒子において、内部ポア率を所定値以下に低減することで、σs、σ1k、さらには、σ100、σ200といった低磁場における磁力の立ち上がり特性が向上したキャリア粉となることを見出した。さらに、当該所定値以下まで内部ポア率を低減したキャリア粒子を含むキャリア粉を、高い生産性をもって製造できる製造方法にも想到し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、課題を解決するための第1の手段は、
キャリア粒子によって構成される電子写真現像剤用キャリア粉であって、
キャリア粒子は、一般式:MO・Fe(但し、Mは金属元素である。)で標記され、
内部ポア率が3%未満のキャリア粒子の個数比率が70%以上である、ことを特徴とする電子写真現像剤用キャリア粉である。
【0010】
第2の手段は、
内部ポア率が10%以上のキャリア粒子の個数比率が20%以下である、ことを特徴とする第1の手段に記載の電子写真現像剤用キャリア粉である。
【0011】
第3の手段は、
飽和磁化が87Am/kg以上である、ことを特徴とする第1または第2の手段に記載の電子写真現像剤用キャリア粉である。
【0012】
第4の手段は、
磁場200A/m×10/4πにおける磁力が、18Am/kg以上あることを特徴とする第1から第3の手段のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリア粉である。
【0013】
第5の手段は、
第1から第4の手段のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリアの製造方法であって、
M元素を含む原料とFeとの混合物のスラリーを3回以上湿式粉砕した後、造粒し、得られた造粒粉を、窒素雰囲気下で800℃〜1000℃に加熱して仮焼し、次に、1100℃〜1300℃に加熱して焼成し、得られた焼成物を粉砕することを特徴とする電子写真現像剤用キャリア粉の製造方法である。
【0014】
第6の手段は、
第1から第4の手段のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリアの製造方法であって、
所定量のM元素を含む原料と、Feとの混合物を粉砕し粉砕物を製造する工程と、
当該粉砕物へ、水、バインダー、分散剤を加えてスラリーとし、当該スラリーを3回以上湿式粉砕し、湿式粉砕されたスラリーを製造する工程と、
当該湿式粉砕されたスラリーから造粒粉を製造する工程と、
当該造粒粉を、窒素雰囲気下で800℃〜1000℃に加熱して仮焼し、仮焼品を製造する工程と、
当該仮焼品を、1100℃〜1300℃に加熱して焼成し、焼成物を製造する工程と、
当該焼成物を粉砕し、さらに、非磁性成分を除去する工程と、を有することを特徴とする電子写真現像剤用キャリア粉の製造方法である。
【0015】
第7の手段は、
第1から第4の手段のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリア粉と、トナーとを含むことを特徴とする電子写真現像剤である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電子写真現像剤用のキャリア粉は、高磁場においても低磁場においても磁力の立ち上がりが高い為、当該キャリア粉で形成される磁気ブラシの保持力が向上する結果、たとえ、電子写真現像機が高画質化、フルカラー化しても、耐キャリア飛散特性を有する電子写真現像剤に含まれるキャリア粒子がキャリア飛散を起こすことを抑制することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るキャリア粒子の切断面のSIM像(倍率:1000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、後述する実施例1に係る一般式:MO・Fe(但し、Mは金属元素である。)で標記されるキャリア粉に含まれるキャリア粒子の、断面のSIM(走査イオン顕微鏡)写真(倍率:1000倍)である。
具体的には、実施例1に係るキャリア粒子を、集束イオンビーム試料加工装置(FIB:日本電子製JEM−9310FIB)を用い、当該キャリア粒子において、一番大きな断面積が得られると思われる切断面をいくつかカットし、その中で一番大きい断面積を得ることができた面を切断面とした。そして当該切断面をSIMにて観察した際の写真(以下、当該SIM写真をSIM像という場合がある。)を図1に示す。当該SIMによる観察の結果、本実施の形態に係るキャリア粒子の内部には、外径が5μm以下のポアが点在していることが確認された。
【0019】
そして、当該写真へ市販の画像解析ソフト(オリンパス製analySISFIVE)を適用し、当該キャリア粒子の断面積におけるポアの占める面積の比率を「内部ポア率」として算出したところ、0.69〜2.1%であった。
【0020】
ここで、本発明者らが各種のキャリア粉試料を製造し、当該各試料の内部ポア率を測定した結果、当該各試料において所定の内部ポア率を有するキャリア粒子の存在比率と、当該各試料との磁気特性との関係を見出した。さらに、これら所定の内部ポア率を有するキャリア粒子の存在比率や磁気特性と、当該キャリア粉試料から製造した電子写真現像剤試料が発揮する画像特性との関係も見出した。
【0021】
それに拠れば、内部ポア率が3%未満のキャリア粒子の個数比率が70%以上であり、且つ、内部ポア率が10%以上のキャリア粒子の個数比率が20%以下であるとき、当該キャリア粒子を含むキャリア粉の磁気特性を評価したところ、飽和磁化σsは87.2〜92.2Am/kg、σ1kは73.6〜74.8Am/kg、σ100は0.76〜1.03Am/kg、σ200は18.5〜20.2Am/kgであった。
【0022】
以上のことから、本実施の形態に係るキャリア粒子は内部ポア率が低く、σs、σ1K、σ100、σ200の値が高いことが判明した。そして、当該当該キャリア粒子を含むキャリア粉を電子写真現像剤として使用した場合、特にキャリア飛散特性が優れていることも判明した。具体的には、キャリア粉の内部ポア率が1%以下の粒子を65%以上含有するキャリア粉であれば、その磁気特性が、σ100が0.7Am/kg以上であり、σ200が17Am/kg以上となる。さらに、当該キャリア粒子の粒径を30μm以下と小粒径化してもキャリア飛散が抑制され、電子写真現像機が、高画質化、フルカラー化した場合であっても、良好な画像特性を発揮するキャリア粉を得ることができた。
【0023】
次に、本発明に係るキャリア粉の製造方法について説明する。
[秤量・混合]
本発明に係るキャリア粉が含むキャリア粒子に用いられる磁性酸化物(ソフトフェライトであることが好ましい。)は、一般式:MO・Feであらわされる。ここでMとは、例えば、Fe、Mn、Mg等の金属である。当該Fe、Mn、Mg等の金属は、単独使用も可能だが、混合組成とすることで、キャリア粒子における磁気的特性の制御可能範囲が広くなることから好ましい構成である。
【0024】
ここで、FeであればFeが好適に使用できる。Mの原料として、M元素の含有量(純度)がより高い化合物を用いることが望ましく、好ましくは、70質量%以上である化合物を用いると良い。MnであればMnが好適に使用できるが、これに限られることなくMnCO等も使用可能であり、MgであればMg(OH)が好適に使用でき、さらにMgCOも好適に使用できる。
これらの原料の配合比を、該磁性酸化物の目的組成と一致させて秤量、混合して、金属原料混合物を得る。
【0025】
[粉砕・造粒]
秤量・混合したMおよびFeの金属原料混合物を、振動ミル等の粉砕機中に導入し、粒径2μm〜0.2μm、好ましくは粒径0.5μmに粉砕する。次いで、この粉砕物へ、水、バインダー0.5〜2wt%、分散剤0.5〜2wt%を加えることで、固形分濃度が50〜90wt%のスラリーとし、該スラリーをボールミル等で湿式粉砕する。ここで、バインダーとしては、ポリビニルアルコール等が好ましく、分散剤としては、ポリカルボン酸アンモニウム系等が好ましい。
ここで、当該湿式粉砕の回数を増やすことにより、造粒時の粒子密度が向上し、焼成時の内部ポアの抑制に寄与する。従って、その回数は3回以上、好ましくは5回程度繰り返す。
【0026】
造粒工程では、当該湿式粉砕されたスラリーを噴霧乾燥機に導入して温度100℃〜300℃の熱風中に噴霧して乾燥させ、粒径10μm〜200μmの造粒粉を得る。得られた造粒粉は、製品最終粒径を考慮して、それに外れる粗粒および微粉を、振動ふるいで除外して粒度調整する。詳細な理由は後述するが、製品最終粒径は20μm以上、50μm以下であることが好ましいことから、当該造粒粉の粒径は10μm〜100μmに調整しておくことが好ましい。
【0027】
[仮焼]
粒度調整された造粒粉を、800℃〜1000℃に加熱した炉に投入し、窒素雰囲気下で1時間〜5時間、好ましくは3時間、仮焼して仮焼品とする。このとき、窒素雰囲気下で仮焼することで、キャリア粒子内部のポア発生量を削減できる。
【0028】
[焼成]
次に、該仮焼品を、1100℃〜1300℃に加熱した炉に投入し3時間〜30時間、焼成してフェライト化し焼成物とする。当該焼成時の雰囲気は、金属原料Mの種類により適宜選択される。例えば、金属原料MがFeまたはFeとMn(モル比100:0〜50:50)の場合は窒素雰囲気が求められる。金属原料Mが、Fe、Mn、Mgの場合は、窒素雰囲気またはO分圧を1〜5%、好ましくは3%に調整した酸素分圧調整雰囲気が好ましい。一方、金属原料Mが、FeとMnとMgとの混合物である場合であって、Mgのモル比が30%を超える場合は大気雰囲気でもよい。
【0029】
[解砕、分級]
得られた焼成物をハンマーミル解粒等で粗粉砕し、次に、当該粗粉砕物を気流分級機で1次分級した。この1次分級物を、さらに振動ふるいまたは超音波ふるいにて粒度をそろえた後、磁場選鉱機にかけ、非磁性成分を除去して、本発明に係る電子写真現像剤用キャリア粉を製造した。
ここで、キャリア粒子の最終粒径は10μm以上、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、30μm以下である。これは当該最終粒径が10μm以上であれば、小粒径用に設計され製造されたトナーと組み合わせて、高画質を得ることのできる電子写真現像剤を製造することが出来るからである。一方、当該最終粒径が50μm以下、より好ましくは30μm以下であれば、当該キャリア粒子のトナー保持能力が高く保たれる。そしてトナー保持能力が高く保たれることで、現像される電子写真においてトナー飛散が抑制され、カブリが少ない、優れた画像を得ることができるからである。
以上のように、当該キャリア粉と、適宜な粒径を有するトナーとを混合することで電子写真現像剤を製造することができる。
【0030】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
キャリア粉の原料として、微粉砕したFeとMnとを準備し、モル比でFe:Mn=55:45となるように秤量した。この際、Mn原料は,Mn元素の含有量(純度)として70質量%以上のものを準備し、予め、振動ミル等の破砕処理により、個数平均粒径0.6μmに調整しておいたものを使用した。
一方、水中へ分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤)を1.5wt%、湿潤剤(サンノプコ(株)製、SNウェット980)を0.05wt%、バインダー(ポリビニルアルコール)を0.02wt%添加したものを準備し、ここへ、先程秤量したFeおよびMnを投入・攪拌し、濃度70wt%のスラリーを得た。
当該スラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕し、この当該湿式粉砕操作を3回繰り返し行った。当該湿式粉砕物をさらに攪拌した後、スプレードライヤーにて噴霧し、粒径10μm〜100μmの乾燥造粒品を製造した。
当該乾燥造粒品から、網目75μmの篩網を用いて粗粒を分離した後、当該造粒品を窒素雰囲気下で900℃に加熱して3時間仮焼し、その後、1180℃、窒素雰囲気下で5時間焼成し、フェライト化させて焼成品を得た。
このフェライト化した焼成品をハンマーミルで解砕し、次に、風力分級機を用いて微粉を除去し、さらに網目37μmの振動ふるいで粒度調整し、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック、Model9320−X100)により測定した個数平均粒径(D50)が、25.4μmである実施例1に係るキャリア芯材を得た。(尚、以下に記載する各実施例および各比較例においても、同様の方法で個数平均粒径(D50)を測定した。)
【0031】
次に、シリコーン系樹脂(商品名:KR251、信越化学製)を、トルエンに50重量%溶解してなるコーティング樹脂溶液を準備した。そして、実施例1に係るキャリア芯材と当該樹脂溶液とを重量比で、芯材:樹脂溶液=9.1:0.9の割合にて撹拌機に導入し、樹脂溶液にキャリア芯材を3時間浸漬しながら150℃〜250℃にて加熱撹拌した。この結果、実施例1に係るキャリア芯材には、当該樹脂が芯材重量に対し1.0重量%の割合でコーティングされた。この樹脂コートされたキャリア芯材を熱風循環式加熱装置に設置し、250℃で5時間加熱を行い、当該樹脂コートを硬化させてキャリア粉試料1を得た。
【0032】
得られたキャリア試料1の内部ポア観察結果を図1に記載した。使用原料の種類、使用原料の組成比、M元素(Mn)原料の純度と粒径、スラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕した回数、仮焼の際の雰囲気について表1に記載した。製造されたキャリア粉試料1において、所定の内部ポア率(0〜0.5%、0.5〜1%、1〜1.5%、1.5〜2%、2〜2.5%、2.5〜3%、3〜5%、5〜10%、〜20%、〜30%、〜50%)を有するキャリア粒子の存在比率を表2に、磁気特性測定結果を表3に記載した。
ここで、図1はキャリア粉試料1に係るフェライト粒子を、集束イオンビーム試料加工装置を用い、当該キャリア粒子において、一番大きな断面積をえることができると思われる切断面をいくつかカットし、その中で一番大きい断面積を得ることができた面を切断面とし、現れた切断面をSIMにて観察した写真(SIM像)(倍率:1000倍)である。当該写真データへ、上述した市販の画像解析ソフトを適用し、当該キャリア粒子の断面積におけるポアの占める面積の比率を「内部ポア率」として算出したところ、0.69%であった。
尚、当該内部ポア率の算出の際、当該キャリア粉体全体の平均値を得る為、当該キャリア粒子の60粒子当りの平均値をもって、当該キャリア粒子の内部ポア率とした。
【0033】
さらに、キャリア粉試料1を、粒径1μm程度の市販トナーとを混合して、現像剤試料1を製造した。所定のデジタル反転現像方式を採用する40枚機を評価機として使用し、当該現像剤試料1の初期画像を評価し、その結果を表4に記載した。キャリア飛散はみられず良好であり、耐スペント性も良好であり、画像濃度は適正であり、カブリ濃度はなく、細線再現性も良好で、画質も良好であった。
尚、表4の実施例1〜3、比較例1〜3の評価において、◎は非常に良好なレベルを示し、○は良好なレベルを示し、×は実用上使用不可能なレベルを示す。
【0034】
(実施例2)
実施例1のキャリア粉の製造工程において、キャリア粉の原料としてFeとMnモル比をFe:Mn=60:40となるように秤量して使用した以外は、実施例1と同様の条件にて、個数平均粒径D50が26.2μmである実施例2に係るキャリア芯材を得、さらにキャリア粉試料2を得た。
【0035】
実施例1と同様に、得られたキャリア粉試料2の使用原料の種類、使用原料の組成比、M元素(Mn)原料の純度と粒径、スラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕した回数、仮焼の際の雰囲気について表1に、製造されたキャリア粉試料2における所定の内部ポア率を有するキャリア粒子の存在比率を表2に、磁気特性測定結果を表3に記載した。
【0036】
さらに、実施例1と同様に現像剤試料2を製造した。所定のデジタル反転現像方式を採用する40枚機を評価機とし、現像剤試料2を使用して、初期画像を評価し、その結果を表4に記載した。キャリア飛散、耐スペント性、画像濃度、カブリ濃度、細線再現性とも良好であり、画質も良好であった。
【0037】
(実施例3)
実施例1のキャリア粉の製造工程において、キャリア粉の原料としてFeとMnモル比をFe:Mn=65:35となるように秤量して使用した以外は、実施例1と同様の条件にて、個数平均粒径D50が26.6μmである実施例3に係るキャリア芯材を得、さらにキャリア粉試料3を得た。
【0038】
実施例1と同様に、得られたキャリア粉試料3の使用原料の種類、使用原料の組成比、M元素(Mn)原料の純度と粒径、スラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕した回数、仮焼の際の雰囲気について表1に、製造されたキャリア粉試料3における所定の内部ポア率を有するキャリア粒子の存在比率を表2に、磁気特性測定結果を表3に記載した。
【0039】
さらに、実施例1と同様に現像剤試料3を製造した。所定のデジタル反転現像方式を採用する40枚機を評価機とし、現像剤試料3を使用して、初期画像を評価し、その結果を表4に記載した。キャリア飛散、耐スペント性、画像濃度、カブリ濃度、細線再現性とも良好であり、画質も良好であった。
【0040】
(比較例1)
キャリア粉の原料として、微粉砕したFeとMnとを準備し、モル比でFe:Mn=55:45となるように秤量した。この際、Mn原料は,Mn元素の含有量(純度)として68質量%のものを準備し、予め、振動ミル等の破砕処理により、個数平均粒径2.5μmに調整しておいたものを使用した。
一方、水中へ分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤)を1.5wt%、湿潤剤(サンノプコ(株)製、SNウェット980)を0.05wt%、バインダー(ポリビニルアルコール)を0.02wt%添加したものを準備し、ここへ先程、秤量したFeおよびMnを投入・攪拌し、濃度70wt%のスラリーを得た。
当該スラリーを湿式ボールミルにて1回湿式粉砕し、さらに攪拌した後、スプレードライヤーにて該スラリーを噴霧し、粒径10μm〜100μmの乾燥造粒品を製造した。
当該乾燥造粒品から、網目75μmの篩網を用いて粗粒を分離した後、当該造粒品を大気雰囲気下で900℃に加熱して仮焼し、その後、1180℃、窒素雰囲気下で5時間焼成し、フェライト化させて焼成品を得た。
このフェライト化した焼成品をハンマーミルで解砕し、風力分級機を用いて微粉を除去し、網目37μmの振動ふるいで粒度調整し、個数平均粒径D50が26.3μmである比較例1に係るキャリア芯材を得、さらにキャリア粉試料4を得た。
【0041】
実施例1と同様に、得られたキャリア粉試料4の使用原料の種類、使用原料の組成比、M元素(Mn)原料の純度と粒径、スラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕した回数、仮焼の際の雰囲気について表1に、製造されたキャリア粉試料4における所定の内部ポア率を有するキャリア粒子の存在比率を表2に、磁気特性測定結果を表3に記載した。
【0042】
さらに、実施例1と同様に現像剤試料4を製造した。所定のデジタル反転現像方式を採用する40枚機を評価機とし、現像剤試料4を使用して、初期画像を評価し、その結果を表4に記載した。耐スペント性、画像濃度、カブリ濃度、細線再現性は良好であったが、キャリア飛散は実用上使用不可能のレベルであり、画質も実用上使用不可能のレベルであった。
【0043】
(比較例2)
実施例4のキャリア粉の製造工程において、キャリア粉の原料としてFeとMnモル比をFe:Mn=50:50となるように秤量した。そして、造粒粉の仮焼成工程を省略し、すぐに本焼成を行った以外は、実施例1と同様の条件にて試料を製造し、個数平均粒径D50が35.2μmである比較例2に係るキャリア芯材を得、さらにキャリア粉試料5を得た。
【0044】
実施例1と同様に、使用原料の種類、使用原料の組成比、M元素(Mn)原料の純度と粒径、スラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕した回数について表1に、製造されたキャリア粉試料5における所定の内部ポア率を有するキャリア粒子の存在比率を表2に、磁気特性測定結果を表3に記載した。
【0045】
さらに、実施例1と同様に現像剤試料5を製造した。所定のデジタル反転現像方式を採用する40枚機を評価機とし、現像剤試料5を使用して、初期画像を評価し、その結果を表4に記載した。耐スペント性、画像濃度は良好であったが、キャリア飛散、カブリ濃度、細線再現性は実用上使用不可能のレベルであり、画質も実用上使用不可能のレベルであった。
【0046】
(比較例3)
比較例2のキャリア粉の製造工程において、原料スラリーを湿式粉砕する工程を省略した以外は、比較例2と同様の条件にて製造を実施し、個数平均粒径D50が36.4μmである比較例3に係るキャリア芯材を得、さらにキャリア粉試料6を得た。
【0047】
実施例1と同様に、使用原料の種類、使用原料の組成比、M元素(Mn)原料の純度と粒径について表1に、製造されたキャリア粉試料6における所定の内部ポア率を有するキャリア粒子の存在比率を表2に、磁気特性測定結果を表3に記載した。
【0048】
さらに、実施例1と同様に現像剤試料6を製造した。所定のデジタル反転現像方式を採用する40枚機を評価機とし、現像剤試料6を使用して、初期画像を評価し、その結果を表4に記載した。耐スペント性は良好であったが、キャリア飛散、画像濃度、カブリ濃度、細線再現性とも実用上使用不可能のレベルであり、画質も実用上、使用不可能のレベルであった。
【0049】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0050】
実施例1〜3および比較例1〜3の結果から、次のことが判明した。
本発明に係る製造方法により製造した試料1〜3はいずれも、内部ポア率が3%未満のキャリア粒子の個数比率が90%以上であり、内部ポア率が10%以上のキャリア粒子の個数比率が2%程度であった。
そして当該試料1〜3の飽和磁化は87.2Am/kg以上であった。さらにσ200は、18.5Am/kg以上であった。
この結果、当該試料1〜3とトナーとを混合して製造した現像剤試料1〜3を用いた場合、初期画像の評価結果において、キャリア飛散、耐スペント性、画像濃度、カブリ濃度、細線再現性とも良好であり、画質も良好であった。
【0051】
これに対し、従来の技術に係る比較例1の試料4では、内部ポア率が3%未満のキャリア粒子の個数比率が70%未満であった。
この為、当該試料4の飽和磁化は83.2Am/kgであり、σ200は15.4Am/kgと、実施例1〜3より低かった。
この結果、当該試料4とトナーとを混合して製造した現像剤試料4を用いた、初期画像の評価結果において、キャリア飛散は実用上使用不可能のレベルであり、画質も実用上使用不可能のレベルであった。
【0052】
さらに、従来の技術に係る比較例2、3の試料5、6では、内部ポア率が3%未満のキャリア粒子の個数比率が20%未満、内部ポア率が10%以上のキャリア粒子の個数比率が20%以上であった。
この結果、当該試料5、6とトナーとを混合して製造した現像剤試料5、6を用いた、初期画像の評価結果において、キャリア飛散、画像濃度、カブリ濃度、細線再現性とも実用上使用不可能のレベルであり、画質も実用上使用不可能のレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア粒子によって構成される電子写真現像剤用キャリア粉であって、
キャリア粒子は、一般式:MO・Fe(但し、Mは金属元素である。)で標記され、内部ポア率が3%未満のキャリア粒子の個数比率が70%以上であり、飽和磁化が87Am/kg以上であることを特徴とする電子写真現像剤用キャリア粉。
【請求項2】
キャリア粒子の個数平均粒径が10μm以上、50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像剤用キャリア粉。
【請求項3】
キャリア粒子の個数平均粒径が10μm以上、30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像剤用キャリア粉。
【請求項4】
内部ポア率が10%以上のキャリア粒子の個数比率が20%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリア粉。
【請求項5】
磁場200A/m×10/4πにおける磁力が、18Am/kg以上あることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリア粉。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリア粉と、トナーとを含むことを特徴とする電子写真現像剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−141635(P2012−141635A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−68089(P2012−68089)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2006−269603(P2006−269603)の分割
【原出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【出願人】(000224802)DOWA IPクリエイション株式会社 (96)
【Fターム(参考)】