説明

電子写真用トナーおよび画像形成方法

【課題】色再現性、耐光性、耐オゾン性に優れる画像を与える、電子写真用トナーおよび画像形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、2種類の金属含有フタロシアニン化合物を着色剤として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真による画像形成に用いられる電子写真用トナーおよび電子写真方式による画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分光された光を感光体上に露光して原稿の静電潜像を形成せしめ、これを各色のカラートナーで現像して色付きの複写画像を得、或いは各色の複写画像を重ね合わせてフルカラーの複写画像を得るカラー複写の方法が実用化され、これに用いるカラートナーとしてバインダー樹脂中に各色の着色剤を分散せしめてなるイエロー、マゼンタ、シアンなどのカラートナーが製造されている。
【0003】
電子写真式カラー画像形成装置が広く普及するに従い、その用途も多種多様に広がり、その画像品質への要求も厳しくなってきている。一般の写真、カタログ、地図の如き画像の複写では、微細な部分に至るまで、極めて微細に且つ忠実に再現することが求められており、それに伴い、色の鮮やかさに対する要求も高まっており、色再現範囲を拡張することが望まれている。特に、印刷分野への進出が著しい昨今、電子写真方式においても印刷の品質と同等以上の高精細性が要求されるようになっている。
【0004】
従来から電子写真用トナーに使用される着色剤としては、有機顔料および油溶性染料が使用されているが、それぞれに種々の欠点を有している。
【0005】
例えば有機顔料は油溶性染料に比べて一般的に耐熱性や耐光性に優れているがトナー中において粒子状で分散された状態で存在するため隠蔽力が強くなってしまい透明性が低下してしまう。また、一般に顔料の分散性は悪いため、透明性が損なわれ、彩度が低下し、画像の色再現性を阻害する。また、色重ねされたトナーのうち最下層のものが、それより上層のものに隠蔽されず、最下層のトナーの色彩を視覚により確認することが可能となるようにするためには、定着されたトナーの透明性が必要とされ、原稿の色再現性を保つためには、着色剤の良好な分散性や着色力が必要となる。
【0006】
顔料の欠点を解消する方法としては、例えば、特開平9−26673号公報、特開平11−160914号公報に記載のような、顔料分散の手法としてフラッシング法を用いることにより、凝集二次粒子のない一次粒子によるサブミクロンオーダーの顔料分散径を達成することにより、透明性を向上させる手段や、顔料粒子を結着樹脂および外殻樹脂で被覆することにより帯電性、定着性、画像均一性を改良する手段が提案されている。
【0007】
しかしながら、これらにおいて提案されたトナーによって出力した場合においても、顔料使用トナーの場合、未だ十分な色相、透明性を得ることは困難である。
【0008】
また、カラー画像形成装置においては、原理的には全ての色再現をイエロー、マゼンタ、シアンの3原色による減法混色により行うことができるが、現実には、熱可塑性樹脂に顔料を分散したときの分光特性、異なる色のトナー同士を重ね合わせた時の混色性によって、色再現可能な範囲や彩度が低下させられるので、原稿の色を忠実に再現することには、まだまだ課題が多く残されている。
【0009】
フルカラーの画像は前述したように、重ね合わせた2色以上のカラートナーの混色により発色するため、バランスの取れた色相を得ることが必要であり、例えば、特開2004−126248号公報に記載のような、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のカラートナーにおける各顔料およびその含有量を適宜選択したカラートナーセットが提案されている。
【0010】
また、特開2000−347476号公報に記載のように、ベタ部を濃い色のトナー(濃トナー)、ハイライト部はそれより濃度の薄いトナー(淡トナー)を用いて画像を形成する方法も提案されている。
【0011】
しかしこれらの方法を用いても、混色時の色再現性はいまだに不十分である。
【0012】
またトナー単色ではなく各色のトナーを混色したときに起こる特有の問題として、例えばマゼンタトナーとシアントナーを混色したときにシアントナーの耐光性が劣化するという現象が起こることがある。これはマゼンタ色素が吸収した光エネルギーがシアン色素に移動することに起因している。一般的にシアン色素としてフタロシアニン顔料を用いると耐光性が強いのでこのような現象は起こりにくい。しかしながらフタロシアニン系の顔料は耐オゾン性が低いため、マゼンタトナーとシアントナーを混色して印刷物の状態にしたときの耐光性と耐オゾン性を両立することが困難であるのでこれらの特性を満足するトナーセットの開発が望まれている。
【0013】
前述のフタロシアニン系顔料としては、C.Iピグメントブルー15.3に代表される銅フタロシアニン系顔料がある。銅フタロシアニン系顔料を用いたトナーは、汎用性があり、優れた耐光性を有するものの、画像の反射スペクトルにおいて長波長側のベースラインが高く、色濁りを感じさせる色合いの画像が形成される傾向が見られた。したがって、企業のロゴマークのプリント等に代表される高度な色再現性が要求される様な画像形成には向いていないとされていた。
【0014】
そこで、例えば、特開2005−215013号公報、特開2005−220253号公報に記載のように、銅フタロシアニン系顔料を改良することで色濁りを発生させないトナーの開発が検討されたが、色濁りを十分に解消させるまでには至っていない。
【0015】
また、銅フタロシアニン系着色剤等の顔料を用いたトナーは、印刷インクで作製される画像レベルの画質の得られる汎用性を有するものの、写真画像同等の色再現性を発現することが難しかった。そこで、特開2006−63171号公報に記載のように、銅フタロシアニン系着色剤に代えて、写真画像の色再現に最適な色相角を発現することが可能な着色剤を含有するトナーの検討が行われたが、やはり、耐光性等の画像耐久性において十分に満足の行くものとは成り得なかった。
【0016】
さらに、近年、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ上での画像の画像処理、電子データによる入稿やパーソナルユース等でも表示装置上の画像をプリントする需要が急速に拡大しているが、当該分野における標準的な色空間であるsRGB(“A Standard Default Color Space for the Internet−sRGB” Michael Stokes,Matthew Anderson,Srinivasan Chandrasekar,and Ricardo Mott a:http://www.color.org/contrib/sRGB.htm)へ良好な対応ができ、高い色再現性を有するトナーセットが求められている。
【0017】
これに対して、従来用いられている、C.Iピグメントブルー15.3に加えて、亜鉛フタロシアニンを使用する方法(特許文献1参照)、特定の置換基を有するフタロシアニンを使用する方法(特許文献2参照)、特定の銅フタロシアニン2種使用する方法(特許文献3参照)が知られている。
【0018】
しかし、これらの方法に用いられているトナーを使用してもまだ、色再現性としては十分なものではなく、耐光性、耐オゾン性についても充分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2003−302792号公報
【特許文献2】特開2003−238864号公報
【特許文献3】特開2003−302792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、色再現性、保存性に優れる画像を与える、電子写真用トナーおよび画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の上記目的は、下記の手段により達成される。
【0022】
1.下記一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを含有することを特徴とする電子写真用トナー。
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、MおよびM′は金属原子を表す。R〜R16およびR′〜R′16は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。n〜n16およびn′〜n′16は0または1を表す。
【0025】
但しn〜n16が全て0であることはなく、またn′〜n′16が全て0であることはない。またn〜n16の合計の値Nは1〜1〜15であり、n′〜n′16の合計の値N′は2〜16であり、かつN<N′である。)
2.前記一般式(1)および一般式(2)において、Nが1〜3の整数であり、N′が2〜4の整数であることを特徴とする前記1に記載の電子写真用トナー。
【0026】
3.前記一般式(1)および一般式(2)において、R〜R16およびR′〜R′16が、アルキル基またはアルコキシ基であることを特徴とする前記1または2に記載の電子写真用トナー。
【0027】
4.前記アルキル基またはアルコキシの炭素数が、1〜5であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【0028】
5.前記MおよびM′が、MgまたはZnであることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【0029】
6.前記一般式(1)および一般式(2)において、MとM′は同一であり、前記一般式(1)のn〜n16が1であるR〜R16で表される置換基は、全てn′〜n′16が1であるR′〜R′16で表される置換基に含まれる、ことを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【0030】
7.潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
該潜像保持体の表面に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、
該潜像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体の表面に転写する転写工程、
および前記被転写体の表面に転写されたトナー像を定着する定着工程を含む画像形成方法であって、
該トナーが、前記1から6のいずれか1項に記載の電子写真用トナーであることを特徴とする画像形成方法。
【0031】
8.前記画像形成方法がフルカラー画像形成方法であって、前記トナーが、シアントナーであり、さらにマゼンタトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程およびイエロートナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程を有することを特徴とする前記7に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、色再現性に優れ、耐光性、耐オゾン性が良好で保存性に優れる画像を与える、電子写真用トナーおよび画像形成方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の画像形成方法に用いられる、画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の画像形成方法に用いられる、画像形成装置の他の例を示す概略図である。
【図3】現像装置(トナーカートリッジ)の一例を示す概略図である。
【図4】ベルト定着方式の定着装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、電子写真用トナーであって、上記一般式(1)で表される化合物と上記一般式(2)で表される化合物とを着色剤として含有することを特徴とする。
【0035】
本発明では、特に一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物と、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物より置換基の数の多い一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物とを組み合わせ含有したトナーを持いることにより、良好な色調を有し、耐光性、耐オゾン性に優れる画像が得られる。
【0036】
(一般式(1)、一般式(2)で表される化合物)
本発明に係る電子写真用トナー(以下単にトナーとも称する。)は、上記一般式(1)で表される化合物と上記一般式(2)で表される化合物とを着色剤として有する。
【0037】
一般式(1)および(2)中、MおよびM′は金属原子を表し、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物は、所謂金属フタロシアニン化合物である。
【0038】
金属原子としてはLi、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biが挙げられる。
【0039】
前記金属原子の内で本発明として好ましくは、Mg、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Al、Si、Snであり、より好ましくは、Mg、Ti、Cu、Zn、Al、Siであり、Mg、Zn、が特に好ましい。
【0040】
MおよびM′がAl、Si等の金属原子がある場合、一般に軸配位子が形成される。その際の軸配位子の例としては、ハロゲン原子、酸素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、シロキシ基が上げられ、好ましくは、酸素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シロキシ基である。
【0041】
〜R16およびR′〜R′16は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。n〜n16およびn′〜n′16は0または1を表す。
【0042】
但しn〜n16が全て0であることはなく、またn′〜n′16が全て0であることはない。またn〜n16の合計の値Nは1〜1〜15であり、n′1〜n′16の合計の値N′は2〜16であり、かつN<N′である。
【0043】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0044】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基が挙げられる。
【0045】
上記の置換基は、さらに置換されていてもよく、好ましい置換基の例としては、上記の置換基の例が全てあげられる。
【0046】
本発明において、R〜R16およびR′〜R′16としては、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、中でも、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基またはアルコキシ基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基)が好ましい。
【0047】
本発明においては、n〜n16全て0であることはなく、またn′〜n′16が全て0であることはない。即ち、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物は少なくとも上記の置換基を有している。
【0048】
また、n〜n16の合計の値Nは1〜1〜15であり、n′1〜n′16の合計の値N′は2〜16であり、かつN<N′である。即ち、一般式(2)で表される化合物の置換基の数が、一般式(1)で表される化合物の置換基の数より多い。
【0049】
本発明においては、Nが1〜3で、N′が、2〜4の整数である態様が好ましい態様である。
【0050】
本発明においては、一般式(2)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物に、更に上記置換基が置換したものであることが好ましい態様である。即ち、一般式(1)および一般式(2)において、MとM′は同一であり、一般式(1)のn〜n16が1であるR〜R16で表される置換基は、全てn′〜n′16が1であるR′〜R′16で表される置換基に含まれる態様が好ましい態様である。
【0051】
本発明に係る一般式(1)、(2)で表される化合物としては、(1)β−位置換型:(2およびまたは3位、6およびまたは7位、10およびまたは11位、14およびまたは15位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)、(2)α−位置換型:(1およびまたは4位、5およびまたは8位、9およびまたは12位、13およびまたは16位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)、(3)α,β−位混合置換型:(1〜16位に規則性なく、特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)がある。本発明においては、(1)、および(2)が好ましく用いられ特に(1)β−位置換型が好ましく用いられる。
【0052】
好ましい構造であるβ−位置置換型およびその他の具体的な構造を示すが、本発明の化合物はこれらに限られたものではない。
【0053】
【化2】

【0054】
【化3】

【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
【化6】

【0058】
一般式(1)、(2)で表される化合物は、例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(P.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行‘Phthalocyanines−Properties and Applications’(P.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに類似の方法を組み合わせて合成することができる。
【0059】
本発明の一般式(1)および(2)で表される化合物をトナー中に含有させる場合には、予め、別途合成しておいたそれぞれの化合物をトナー製作時に任意の比率で混合しても良いし、一般式(1)および(2)の化合物合成時に任意の比率となるように調整し合成又は製造しても良い。
【0060】
特に、任意の比率で製造する場合には、一般式(1)および(2)の化合物は2種以上混合される場合があり、さらに、無置換のフタロシアニン化合物が混合される場合があるが、この状態もまた好ましい形態の一つである。
【0061】
またその混合比率は、組成物に要求される色調を満たす範囲で任意に調整してよい。
【0062】
本発明の電子写真用トナーにおいては、一般式(1)および(2)で表される化合物を含むことを特徴とするが、さらに、本発明においては着色剤としてシリコンフタロシアニンを併用していることが好ましい。
【0063】
シリコンフタロシアニンの例としては、特開2009−75520号公報の(表1)や(化11)〜(化17)に挙げられた化合物、および、特開2009−265227号公報の(化2)〜(化8)で挙げられた化合物が好ましい。
【0064】
本発明に係るトナー(トナーについては、下述する)は、上記のような一般式(1)および(2)で表される化合物を含有することにより、耐光性、耐オゾンガス性に優れ従来のトナー画像や印刷インクを用いた画像よりも広く安定した色再現性を発現することが可能になった。
【0065】
特に、近年ではコンピュータ画面に表示した画像をプリントアウトするケースが多いが、従来のカラー印刷の色域はコンピュータのディスプレイの色域よりもはるかに狭かったため、ディスプレイ上の画像とプリント出力したものとの色合いに大きな差があらわれた。
【0066】
そして、本発明に係るトナーを用いることにより、従来よりもコンピュータのディスプレイの色域に近いプリント画像が得られる様になる。この様に、本発明に係るトナーは、プリント画像における色域の拡大に大きく貢献しているものといえる。
【0067】
以下に、本発明の電子写真用トナーについて説明する。
【0068】
《トナー》
本発明のトナーは、バインダー樹脂と、着色剤である一般式(1)で表される化合物および一般式(2)で表される化合物を含み、従来のトナー製造方法により作製することが可能である。
【0069】
すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法によるトナー製造方法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法によるトナーの製造方法(たとえば、乳化重合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法等)を適用することにより作製可能である。
【0070】
好ましい製造方法である重合法について説明する。
【0071】
重合法は、重合性単量体を懸濁重合法により重合して樹脂粒子を調製し、あるいは、必要な添加剤の乳化液を加えた液中(水系媒体中)にて単量体を乳化重合、あるいはミニエマルジョン重合を行って微粒の樹脂粒子を調製し、必要に応じて荷電制御性樹脂粒子を添加した後、有機溶媒、塩類などの凝集剤等を添加して当該樹脂粒子を凝集、融着する方法で製造するものである。
【0072】
〈懸濁重合法〉
本発明のトナーを製造する方法の一例としては、重合性単量体中に荷電制御性樹脂を溶解させ、上記の着色剤や必要に応じて離型剤、さらに重合開始剤等の各種構成材料を添加し、ホモジナイザー、サンドミル、サンドグラインダー、超音波分散機などで重合性単量体に各種構成材料を溶解あるいは分散させる。
【0073】
この各種構成材料が溶解あるいは分散された重合性単量体を、分散安定剤を含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させる。その後、攪拌機構が後述の攪拌翼である反応装置(攪拌装置)へ移し、加熱することで重合反応を進行させる。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過、洗浄し、さらに乾燥することで本発明のトナーを調製する。
【0074】
〈乳化重合法〉
また、本発明のトナーを製造するその他の方法として樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させて調製する方法が好ましい。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号、同6−329947号、同9−15904号に示す方法等を挙げることができる。すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法、特に水中に、これらを、乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0075】
トナーの製造方法においては、重合性単量体に結晶性物質を溶かした後、重合性単量体を重合させる工程を経て形成した複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる方法が好ましく用いられる。重合性単量体に結晶性物質を溶かすとき、結晶性物質を溶解させて溶かしても、溶融して溶かしてもよい。
【0076】
また、本発明のトナーの製造方法としては、多段重合法によって得られる複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる工程を有する方法が好ましく用いられる。ここで、多段重合法について以下に説明する。
【0077】
(多段重合法により得られる複合樹脂粒子の製造方法)
多段重合法を用いる場合、本発明のトナーの製造方法は、以下に示す工程より構成されることが好ましい。
1:多段重合工程
2:複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させてトナー粒子を得る塩析/融着工程
3:トナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過・洗浄工程
4:洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程、
5:乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程
から構成される。
【0078】
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0079】
〔多段重合工程〕
多段重合工程とは、オフセット発生防止したトナーを得るべく樹脂粒子の分子量分布を拡大させるために行う重合方法である。すなわち、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行うものであって、得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量勾配を形成させる様に意図して行うものである。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに重合性単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られている。
【0080】
本発明においては、製造の安定性および得られるトナーの破砕強度の観点から三段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。この様な多段階重合反応によって得られたトナーでは破砕強度の観点から表層程低分子量のものが好ましい。
【0081】
〈二段重合法〉
二段重合法は、結晶性物質を含有する高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0082】
この方法を具体的に説明すると、先ず、結晶性物質を単量体に溶解させて単量体溶液を調製し、この単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第一段重合)することにより、結晶性物質を含む高分子量の樹脂粒子の分散液を調製するものである。
【0083】
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第二段重合)を行うことにより、樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する方法である。
【0084】
〈三段重合法〉
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)、結晶性物質を含有する中間層および低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。本発明のトナーでは上記の様な複合樹脂粒子として存在するものである。
【0085】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第一段重合)により得られた樹脂粒子の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に、結晶性物質を単量体に溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、樹脂粒子(核粒子)の表面に、結晶性物質を含有する樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層(中間層)を形成して、複合樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。
【0086】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、複合樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第三段重合)することにより、複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する。上記方法において、中間層を組み入れることにより、結晶性物質を微細かつ均一に分散することができ好ましい。
【0087】
また、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48℃〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52℃〜64℃である。
【0088】
また、複合樹脂粒子の軟化点は95℃〜140℃の範囲が好ましい。
【0089】
本発明のトナーは、樹脂および着色粒子の表面に、塩析/融着法によって樹脂粒子を融着させて樹脂層を形成させて得られるものであることが好ましい。
【0090】
〔塩析/融着工程〕
この塩析/融着工程は、前記多段重合工程によって得られた複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0091】
本発明において、塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、複合樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(複合樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させることが好ましい。
【0092】
この塩析/融着工程では、複合樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10nm〜1000nm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。また、着色剤粒子は、表面改質されていてもよく、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0093】
〔熟成工程〕
熟成工程は、塩析/融着工程に後続する工程であり、樹脂粒子の融着後も温度を結晶性物質の融点近傍、好ましくは融点±20℃に保ち、一定の強度で攪拌を継続することにより、結晶性物質を相分離させる工程である。この工程において結晶性物質のフェレ水平径、形状係数およびこれらの変動係数を制御することが可能である。
【0094】
また、本発明においては、凝集剤に用いる2価(3価)の金属元素と後述する凝集停止剤として加える1価の金属元素の合計値が350〜35000ppmであることが好ましい。トナー中の金属イオン残存量の測定は、蛍光X線分析装置「システム3270型」〔理学電気工業(株)製〕を用いて、凝集剤として用いられる金属塩の金属種(例えば、塩化カルシウムに由来するカルシウム等)から発する蛍光X線強度を測定することによって求めることができる。具体的な測定法としては、凝集剤金属塩の含有割合が既知のトナーを複数用意し、各トナー5gをペレット化し、凝集剤金属塩の含有割合(質量ppm)と、当該金属塩の金属種からの蛍光X線強度(ピーク強度)との関係(検量線)を測定する。次いで、凝集剤金属塩の含有割合を測定すべきトナー(試料)を同様にペレット化し、凝集剤金属塩の金属種からの蛍光X線強度を測定し、含有割合すなわち「トナー中の金属イオン残存量」を求めることができる。
【0095】
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0096】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程であるが、本発明においては、減圧乾燥処理する工程であることが好ましい。
【0097】
この工程で使用される減圧乾燥機としては、例えば、減圧スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。具体的には、減圧可能な静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機或いは攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0098】
減圧乾燥時の条件は、乾燥温度がトナーに用いた樹脂のTg以下であればよく、減圧度、乾燥時間等は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0099】
なお、減圧乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0100】
次に、トナー製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
【0101】
(重合性単量体)
本発明に用いられる樹脂(バインダー)を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。また、下記するごとく酸性極性基を有する単量体又は塩基性極性基を有するモノマーを少なくとも1種類含有するのが望ましい。
【0102】
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0103】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0104】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0105】
アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0106】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0107】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0108】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0109】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0110】
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0111】
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物および(b)スルホン基(−SOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0112】
(a)の−COO基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0113】
(b)の−SOH基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としてはスルホン化スチレン、そのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、そのNa塩等を挙げることができる。
【0114】
(4)塩基性極性基を有するモノマー
塩基性極性基を有するモノマーとしては、(i)アミン基或いは4級アンモニウム基を有する炭素原子数1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(ii)(メタ)アクリル酸アミド或いは随意N上で炭素原子数1〜18のアルキル基でモノ又はジ置換された(メタ)アクリル酸アミド、(iii)Nを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物および(iv)N,N−ジアリル−アルキルアミン或いはその四級アンモニウム塩を例示することができる。中でも、(i)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが塩基性極性基を有するモノマーとして好ましい。
【0115】
(i)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、上記4化合物の四級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0116】
(ii)の(メタ)アクリル酸アミド或いはN上で随意モノ又はジアルキル置換された(メタ)アクリル酸アミドとしては、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等を挙げることができる。
【0117】
(iii)のNを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ビニル−N−エチルピリジニウムクロリド等を挙げることができる。
【0118】
(iv)のN,N−ジアリル−アルキルアミンの例としては、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0119】
(重合開始剤)
ラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸およびその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。更に、上記ラジカル性重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性が上昇し、重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が達成でき好ましい。
【0120】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが例えば50℃から90℃の範囲が用いられる。但し、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で、室温またはそれ以上の温度で重合する事も可能である。
【0121】
(界面活性剤)
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
【0122】
イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0123】
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等をあげることができる。
【0124】
(樹脂粒子、トナーの分子量分布)
トナーは、ピークまたは肩が100,000〜1,000,000、および1,000〜50,000に存在することが好ましく、さらにピークまたは肩が100,000〜1,000,000、25,000〜150,000および1,000〜50,000に存在することがさらに好ましい。
【0125】
樹脂粒子の分子量は、100,000〜1,000,000の領域にピークもしくは肩を有する高分子量成分と、1,000から50,000未満の領域にピークもしくは肩を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましい。さらに好ましくは、ピーク分子量で15,000〜100,000の部分にピーク又は肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することが好ましい。
【0126】
(凝集剤)
凝集剤は、金属塩の中から選択されるものが好ましい。
【0127】
金属塩としては、一価の金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩、マンガン、銅等の二価の金属塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属塩等が挙げられる。
【0128】
これら金属塩の具体的な例を以下に示す。一価の金属の金属塩の具体例として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、二価の金属の金属塩として塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられる。三価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。これらは、目的に応じて適宜選択される。一般的には一価の金属塩より二価の金属塩のほうが臨界凝集濃度(凝析値或いは凝析点)が小さく、更に三価の金属塩の臨界凝集濃度は小さい。
【0129】
(離型剤)
本発明のトナーは、離型剤を内包した樹脂粒子を水系媒体中に於いて融着させたトナーであることが好ましい。この様に樹脂粒子中に離型剤を内包させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させることで、微細に離型剤が分散されたトナーを得ることができる。
【0130】
本発明に係るトナーでは、離型剤として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記式で表されるエステル系化合物である。
【0131】
−(OCO−R
式中、nは1〜4の整数、好ましくは2〜4、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R、Rは、各々置換基を有しても良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜5がよい。Rは、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、さらに好ましくは18〜26がよい。
【0132】
本発明に係るトナーでは、ミニエマルジョン重合法により樹脂粒子中に上記離型剤を内包させ、トナー粒子とともに塩析、融着させて調製することが好ましい。
【0133】
(荷電制御剤)
トナーは、着色剤、離型剤以外にトナー用材料として種々の機能を付与することのできる材料を添加することができる。具体的には、荷電制御剤等が挙げられる。これらの成分は前述の塩析/融着段階で樹脂粒子と着色剤粒子と同時に添加し、トナー中に包含する方法、樹脂粒子自体に添加する方法等種々の方法で添加することができる。
【0134】
荷電制御剤は、種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0135】
(外添剤)
本発明に係るトナーには、流動性の改良やクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子および滑剤を使用することができる。
【0136】
外添剤として使用できる無機微粒子としては、従来公知のものを挙げることができる。具体的には、シリカ微粒子、チタン微粒子、アルミナ微粒子等を好ましく用いることができる。これら無機微粒子は疎水性であることが好ましい。
【0137】
シリカ微粒子の具体例としては、日本アエロジル(株)製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト(株)製のHVK−2150、H−200、キャボット(株)製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0138】
チタン微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品T−805、T−604、テイカ(株)製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン(株)製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産(株)製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0139】
アルミナ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品RFY−C、C−604、石原産業(株)製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0140】
外添剤として使用できる有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の微粒子を挙げることができる。かかる有機微粒子の構成材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などのを挙げることができる。
【0141】
外添剤として使用できる滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。かかる高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩;パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸金属塩;リノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム等のリノール酸金属塩;リシノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウムなどのリシノール酸金属塩等が挙げられる。
【0142】
外添剤の添加量としては、トナーに対して0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0143】
〈外添剤の添加工程〉
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
【0144】
外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
【0145】
(トナー粒子)
本発明に係るトナーの粒径は、個数平均粒径で3〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは3〜8μmとされる。この粒径は、トナーの製造方法において、凝集剤(塩析剤)の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
【0146】
個数平均粒径が3〜10μmであることにより、定着工程において、飛翔して加熱部材に付着しオフセットを発生させる付着力の大きいトナー微粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0147】
トナーの個数平均粒径は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー、SLAD1100(島津製作所社製レーザー回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。
【0148】
(着色剤含有量およびその他の添加剤)
本発明に係るトナーは、一般式(1)および(2)で表される着色剤の含有量が樹脂に対して2〜20質量%の範囲が好ましく、更に着色剤が3〜15質量%含有されることが好ましい。
【0149】
本発明のトナーは、画像安定化剤として、例えば特開平8−29934公報の10〜13頁に記載および引用されている化合物を添加してもよく、市販されているフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系の化合物なども挙げられる。
【0150】
同様の目的で紫外線吸収剤として例えば有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0151】
有機系紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、フェニルサルシレート、4−t−ブチルフェニルサルシレート、2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキサデシルエステル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンゾエート等のヒドロキシベンゾエート系化合物等を挙げられる。
【0152】
無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、硫酸バリウム等を挙げることが出来るが、有機系紫外線吸収剤の方が好ましく、紫外線吸収剤としては、50%透過率での波長が350〜420nmが好ましく、より好ましくは360nm〜400nmであり、350nmより低波長では、紫外線遮断能が弱く、420nmより高波長では着色が強くなり好ましくない。
【0153】
添加量については特に制限はないが、色素に対して10〜200質量%の範囲が好ましく、50〜150質量%がより好ましい。また、これらを併用して用いることも好ましい。
【0154】
(シラノール化合物)
本発明のトナー中にはシラノール化合物を含有していることが好ましい。
【0155】
シラノール化合物の例としては特開2009−265227の(化12)、(化13)で挙げられる化合物が好ましい。
【0156】
本発明のシラノール化合物電子写真用トナーにおける使用量、添加方法、定量方法についても同様である。
【0157】
有機シラノール化合物は、当該分野の知識を有するものが、公知の方法に従って容易に合成し得ることができ、また市販品として入手することもできる。例えば特開昭63−22759号公報、同63−316789号、同63−5093号、特開平3−157388号、同平6−256355号、同平8−143581号、同2002−20390号などが参考文献として挙げられる。
【0158】
シラノール化合物の含有量は、特に限定はないがトナーに対し、好ましくは100〜500ppmであり、更に好ましくは100〜350ppmである。有機シラノール化合物の含有量が100ppm以上とすることにより、本発明の目的効果を発揮することができ、また500ppm以下とすることにより、静電荷像現像用トナーが柔らかくなりすぎず、トナー保存性の劣化や定着率の低下、あるいは臭気が問題にならないので好ましい。
【0159】
上記のシラノール化合物の製造工程における添加量は、静電荷像現像用トナーに対して100〜350ppmであることが好ましく、添加量をこの範囲とすることにより、トナー中の離型剤(ワックス)の分散性向上に効果を発揮することができ、かつ減圧乾燥後のトナー中での有機シラノール化合物の残留量を、本発明で規定する範囲に設定することができるが、これに限定されない。
【0160】
上記のシラノール化合物の静電荷像現像用トナーへの添加方法としては例えば重合性単量体を水系媒体中で重合して樹脂を製造する工程を含む重合法トナーの場合には、シラノール化合物を着色剤分散液の調製時に添加する方法が好ましいが、その他に樹脂粒子調製時に重合性単量体に添加する方法も挙げられる。重合法トナーの製法が、多段重合法である場合には、離型剤の添加と同時に添加する方法も挙げられる。
【0161】
(現像剤)
本発明の画像形成方法に用いられる現像剤は、上記本発明のトナーを含有する。
【0162】
本発明に係るトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0163】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0164】
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0165】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0166】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0167】
〔画像形成方法〕
本発明の画像形成方法は、潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、潜像保持体の表面に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、潜像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体の表面に転写する転写工程、および前記被転写体の表面に転写されたトナー像を定着する定着工程を含む画像形成方法であって、当該トナーとして上記本発明の電子写真用トナーを用いる。上記各工程を行うための装置としては、従来公知の電子写真方式の画像形成に用いられる装置を用いることができる。
【0168】
本発明に係る電子写真用トナーは、シアントナー(グリーントナー)として用いられる。
【0169】
本発明の画像形成方法が、フルカラー画像形成方法である場合に本発明の効果は大きい。フルカラー画像形成方法である場合には、本発明の電子写真用トナーの他に、少なくともマゼンタトナー(レッドトナー)、イエロートナー(オレンジトナー)を含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程を含む。
【0170】
図1は、本発明に係るトナーを二成分系現像剤とした時に使用可能な画像形成装置の一例を示す概略図である。
【0171】
図1において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像装置、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング装置、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式の定着装置、70は中間転写体を示す。
【0172】
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状の中間転写体ユニット7と、記録部材Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21および定着手段としての熱ロール式の定着装置24とを有する。画像形成装置の装置本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0173】
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段としての現像装置4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段としてクリーニング装置6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング装置6Mを有する。
【0174】
また、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像装置4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング装置6Cを有する。また、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像装置4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング装置6Kを有する。
【0175】
無端ベルト状の中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状の中間転写体70を有する。
【0176】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状の中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の記録部材Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、熱ロール式の定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0177】
一方、2次転写ロール5Aにより記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状の中間転写体70は、クリーニング装置6Aにより残留トナーが除去される。
【0178】
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0179】
2次転写ロール5Aは、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状の中間転写体70に圧接する。
【0180】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0181】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状の中間転写体ユニット7とを有する。
【0182】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状の中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状の中間転写体ユニット7は、ロール71、72、73、74、76、77を巻回して回動可能な無端ベルト状の中間転写体70、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kおよびクリーニング装置6Aとからなる。
【0183】
筐体8の引き出し操作により、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状の中間転写体ユニット7とは、一体となって、装置本体Aから引き出される。
【0184】
このように感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状の中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写し、熱ロール式の定着装置24で加圧および加熱により固定して定着する。トナー像を記録部材Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【0185】
次に、本発明に係るトナーを非磁性一成分系現像剤として用いた場合の画像形成方法について説明する。図2は、非磁性一成分系現像剤を使用するフルカラー画像形成装置の一例である。
【0186】
図2の画像形成装置100は、回転駆動される静電潜像担持体(以下、感光体ドラムともいう)1の周囲に、感光体ドラム1表面を所定電位に均一帯電させる帯電ブラシ2、感光体ドラム1上の残留トナーを除去するクリーナ6が設けられている。
【0187】
レーザ走査光学系3は、帯電ブラシ2により均一帯電された感光体ドラム1上を走査露光し、感光体ドラム1上に静電潜像を形成する。レーザ走査光学系3は、レーザダイオード、ポリゴンミラー、fθ光学素子を内蔵し、その制御部にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック毎の印字データがホストコンピュータから転送される。そして、上記各色毎の印字データに基づいて、レーザビームが順次出力され、感光体ドラム1上を走査露光して、各色毎の静電潜像を形成する。
【0188】
現像装置を収納する現像装置ユニット40は、静電潜像が形成された感光体ドラム1に、現像ローラ41を介して各色トナーを供給して現像を行う。現像装置ユニット40には、支軸33の周囲にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各非磁性1成分トナーをそれぞれ収納した4つの現像装置4Y、4M、4C、4Kが装着され、支軸33を中心に回転して、各現像装置が感光体ドラム1と対向する位置に導かれる。
【0189】
現像装置ユニット40は、レーザ走査光学系3により感光体ドラム1上に各色の静電潜像が形成される毎に、支軸33を中心に回転し、対応する色のトナーを収容した現像装置を感光体ドラム1に対向する位置に導く。そして、各現像装置4Y、4M、4C、4Kより感光体ドラム1上に、帯電された各色トナーを順次供給して現像を行う。
【0190】
図2の画像形成装置は、現像装置ユニット40より感光体ドラム1の回転方向下流側に無端状の中間転写体70が設けられ、感光体ドラム1と同期して回転駆動する。中間転写体70は、1次転写ローラ5により押圧された部位で感光体ドラム1と接触し、感光体ドラム1上に形成されたトナー画像を転写する。また、中間転写70を支持するローラ72と対向して、ローラ73が回転可能に設けられ、ローラ72とローラ73との対向する部位で、中間転写体70上のトナー画像が記録紙等の記録材上に押圧転写される。
【0191】
なお、フルカラーの現像装置ユニット40と中間転写体70との間には、中間転写ベルト7上の残留トナーを除去するクリーナ18が中間転写体70に対して接離可能に設けられている。
【0192】
記録材Pを中間転写体70に導く給紙手段60は、記録材を収容する給紙トレイ61と、給紙トレイ61に収容した記録材を1枚ずつ給紙する給紙ローラ62、給紙した記録材を2次転写部位に送るタイミングローラ63より構成される。
【0193】
トナー画像が押圧転写された記録材は、エアーサクションベルト等で構成された搬送手段66により熱ロール式の定着装置24に搬送され、熱ロール式の定着装置24で転写されたトナー画像が記録材上に定着される。定着後、記録材は垂直搬送路80を搬送され、装置本体100の上面に排出される。
【0194】
図2の画像形成装置は、交換可能な現像装置を装填して画像形成を行うものである。図3(a)に示す現像装置4は、通常、トナーカートリッジとも呼ばれ、現像ローラ等の部品が配置された内部に所定量のトナーも収納されているものである。トナーカートリッジの形態で供給される現像装置は、画像形成装置内の所定位置に装填後、収納されている現像剤を感光体ドラムに供給して現像を行い、所定枚数の画像形成を行って現像剤がなくなると、装置より取り外し、新しいトナーカートリッジを装填する。
【0195】
また、図3(b)は、現像装置4の断面構成の一例を示す概略図である。以下、現像装置4をトナーカートリッジ4ともいう。トナーカートリッジ4は、現像ローラ41に隣接してバッファ室42を、バッファ室42に隣接してホッパ43等を有する。
【0196】
現像ローラ41は、導電性の円柱基体と、基体の外周にシリコーンゴム等の硬度の高い物質を用いて形成した弾性層を有する。
【0197】
バッファ室42にはトナー規制部材であるブレード44が現像ローラ41に圧接させた状態で配置されている。ブレード44は、現像ローラ41上のトナーの帯電量および付着量を規制するものである。また、現像ローラ41の回転方向に対してブレード41の下流側に、現像ローラ41上のトナー帯電量・付着量の規制を補助するための補助ブレード45をさらに設けることも可能である。
【0198】
現像ローラ41には供給ローラ46が押圧されている。供給ローラ46は、図示しないモータにより現像ローラ41と同一方向(図中反時計回り方向)に回転駆動する。供給ローラ46は、導電性の円柱基体と基体の外周にウレタンフォームなどで形成された発泡層を有する。
【0199】
ホッパ43には一成分現像剤であるトナーTが収容されている。また、ホッパ43にはトナーを攪拌する回転体47が設けられている。回転体47には、フィルム状の搬送羽根が取付けられており、回転体47の矢印方向への回転によりトナーを搬送する。搬送羽根により搬送されたトナーは、ホッパ43とバッファ室42を隔てる隔壁に設けられた通路48を介してバッファ室42に供給される。なお、搬送羽根の形状は、回転体47の回転に伴い羽根の回転方向前方でトナーを搬送しながら撓むとともに、通路48の左側端部に到達すると真っ直ぐの状態に戻るようになっている。このように羽根はその形状を湾曲状態を経て真っ直ぐに戻るようにすることでトナーを通路48に供給している。
【0200】
また、通路48には通路48を閉鎖する弁321が設けられている。この弁はフィルム状の部材で、一端が隔壁の通路48右側面上側に固定され、トナーがホッパ43から通路48に供給されると、トナーからの押圧力により右側に押されて通路48を開けるようになっている。その結果、バッファ室42内にトナーが供給される。
【0201】
また、弁321の他端には規制部材322が取り付けられている。規制部材322と供給ローラ46は、弁321が通路48を閉鎖した状態でも僅かな隙間を形成する様に配置される。規制部材322は、バッファ室42の底部に溜まるトナー量が過度にならないように調整するもので、現像ローラ41から供給ローラ46に回収されたトナーがバッファ室42の底部に多量に落下しないように調整される。
【0202】
トナーカートリッジ4では、画像形成時に現像ローラ41が矢印方向に回転駆動するとともに供給ローラ46の回転によりバッファ室42のトナーが現像ローラ41上に供給される。現像ローラ41上に供給されたトナーは、ブレード44、補助ブレード45により帯電、薄層化された後、像担持体との対向領域に搬送され、像担持体上の静電潜像の現像に供される。現像に使用されなかったトナーは、現像ローラ41の回転に伴ってバッファ室42に戻り、供給ローラ46により現像ローラ41から掻き取られ回収される。
【0203】
図4に示す定着装置24は、ニップ幅を確保するためにベルトと加熱ローラを用いたタイプのもので、定着ローラ240とシームレスベルト241、およびシームレスベルト241を介して定着ローラ240に押圧される圧力パッド(圧力部材)242a、圧力パッド(圧力部材)242b、前記潤滑剤供給部材243とで主要部が構成されている。
【0204】
定着ローラ240は、金属製のコア(円筒状芯金)240aの周囲に耐熱性弾性体層240b、および離型層(耐熱性樹脂層)240cより形成され、コア240aの内部には加熱源としてハロゲンランプ244が配置されている。定着ローラ240の表面温度は温度センサ245により計測され、その計測信号に基づいて図示しない温度コントローラによりハロゲンランプ244がフィードバック制御され、定着ローラ240表面が一定温度になるように調整される。シームレスベルト241は、定着ローラ240に対し所定の角度で巻き付けられるように接触し、ニップ部を形成している。
【0205】
シームレスベルト241の内側には、低摩擦層を表面に有する圧力パッド242がシームレスベルト241を介して定着ローラ240に押圧される状態で配置されている。圧力パッド242は、強いニップ圧がかかる圧力パッド242aと、弱いニップ圧がかかる圧力パッド242bとが設けられ、金属製等のホルダ242cに保持されている。
【0206】
ホルダ242cには、シームレスベルト241がスムーズに摺動回転するようにベルト走行ガイドが取り付けられている。ベルト走行ガイドはシームレスベルト241内面と摺擦するため摩擦係数が低い部材が望ましく、かつ、シームレスベルト241から熱を奪いにくいように熱伝導の低い部材が好ましい。なお、シームレスベルト241の材質の具体例としては、たとえばポリイミドが挙げられる。
【0207】
本発明に係るトナーにより形成されたトナー画像は、最終的に転写材上に転写され、定着処理により、転写材上に固定されることにより画像形成が行われる。上記画像形成に使用される転写材は、トナー画像を保持する支持体で、通常画像支持体、記録材或いは転写紙とよばれるものである。具体的には薄紙から厚紙までの普通紙や上質紙、アート紙やコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等の各種転写材を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0208】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0209】
実施例1
(トナー1(混練・粉砕法によるトナー)の作製)
下記トナー構成物をヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)に投入し、撹拌羽根の周速を25m/秒に設定して5分間混合処理した。
【0210】
ポリエステル樹脂 100質量部
(ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸の縮合物、重量平均分子量20,000)
表1に記載の着色剤混合物(混合比は表1に記載) 4.3質量部
トリメチルシラノール 0.05質量部
離型剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート) 6質量部
荷電制御剤(ジベンジル酸ホウ素) 1質量部
混合物を二軸押出混練機で混練し、次いで、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミル粉砕機(ターボ工業社製)で粉砕処理し、さらに、コアンダ効果を利用した気流分級機で微粉分級処理を行うことで、体積基準メディアン径が5.5μmの着色粒子を得た。
【0211】
次に、上記着色粒子に下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、「トナー1」を作製した。
【0212】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm) 0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0213】
(トナー2〜4の作製)
表1に記載の着色剤混合物を表3に記載の使用量で使用した以外は、トナー1の作製と同様に実施して、トナー2〜4を作製した。
【0214】
(トナー5〜19(乳化会合法によるトナー)の作製)
(トナー5の作製)
(1)「着色剤微粒子分散液1」の調製
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、表1に記載の着色剤混合物(2.2質量部)およびSiPc−1(下記)(2.1質量部)を着色剤として、添加し、さらにトリメチルシラノール:0.05質量部を徐々に添加し、「クリアミックスWモーションCLM−0.8(エムテクニック社製)」を用いて分散処理を行って、「着色剤微粒子分散液1」を調製した。
【0215】
「着色剤微粒子分散液1」中の「着色剤微粒子1」は、体積基準メディアン径が98nmであった。なお、体積基準メディアン径は、「MICROTRAC UPA−150(HONEYWELL社製)」を用い、下記測定条件下で測定したものである。
【0216】
サンプル屈折率 1.59
サンプル比重 1.05 (球状粒子換算)
溶媒屈折率 1.33
溶媒粘度 0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整 測定セルにイオン交換水を投入し調製した。
【0217】
(2)「コア部用樹脂粒子1」の作製
下記に示す第1段重合、第2段重合および第3段重合を経て多層構造を有する「コア部用樹脂粒子1」を作製した。
【0218】
(a)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に下記(構造式1)に示すアニオン系界面活性剤4質量部をイオン交換水3040質量部とともに投入し、界面活性剤水溶液を調製した。
【0219】
(構造式1) C1021(OCHCHSONa
上記界面活性剤水溶液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃に昇温させた後、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて反応容器中に滴下した。
【0220】
スチレン 532質量部
n−ブチルアクリレート 200質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
上記単量体混合液を滴下後、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子を「樹脂粒子A1」とする。なお、第1段重合で作製した「樹脂粒子A1」の重量平均分子量は16,500だった。
【0221】
(b)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に下記化合物からなる単量体混合液を投入し、続いて、離型剤としてパラフィンワックス「HNP−57(日本製蝋社製)」93.8質量部を添加し、90℃に加温して溶解させた。この様にして単量体溶液を調製した。
【0222】
スチレン 101.1質量部
n−ブチルアクリレート 62.2質量部
メタクリル酸 12.3質量部
n−オクチルメルカプタン 1.75質量部
一方、前記アニオン界面活性剤3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を調製し、98℃に加熱した。この界面活性剤水溶液中に前記「樹脂粒子A1」を32.8質量部(固形分換算)添加し、さらに、上記パラフィンワックスを含有する単量体溶液を添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(エムテクニック社製)」で8時間混合分散した。前記混合分散により分散粒子径が340nmの乳化粒子を含有する乳化粒子分散液を調製した。
【0223】
次いで、前記乳化粒子分散液に過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌を行うことで重合(第2段重合)を行って樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子を「樹脂粒子A2」とする。なお、第2段重合で作製した「樹脂粒子A2」の重量平均分子量は23,000だった。
【0224】
(c)第3段重合
上記第2段重合で得られた「樹脂粒子A2」に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、下記化合物からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0225】
スチレン 293.8質量部
n−ブチルアクリレート 154.1質量部
n−オクチルメルカプタン 7.08質量部
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って重合(第3段重合)を行い、重合終了後、28℃に冷却して「コア部用樹脂粒子1」を作製した。第3段重合で作製した。「コア部用樹脂粒子1」の重量平均分子量は26,800であった。
【0226】
(3)「シェル用樹脂粒子」の作製
前記「コア部用樹脂粒子1」の作製における第1段重合で使用された単量体混合液を以下のものに変更した以外は同様にして、重合反応および反応後の処理を行って「シェル用樹脂粒子1」を作製した。
【0227】
スチレン 624質量部
2−エチルヘキシルアクリレート 120質量部
メタクリル酸 56質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
(4)トナー5の作製
下記の手順によりトナー5を作製した。
【0228】
(a)コア部の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
コア部用樹脂粒子1 420.7質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤微粒子分散液1 200質量部
を投入、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを8乃至11に調整した。
【0229】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を撹拌の下で30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温させ、上記粒子の会合を行った。この状態で「マルチサイザ3(コールター社製)」を用いて会合粒子の粒径測定を行い、会合粒子の体積基準メディアン径が5.5μmになった時に、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させた水溶液を添加して会合を停止させた。
【0230】
会合停止後、さらに、熟成処理として液温を70℃にして1時間にわたり加熱撹拌を行うことにより融着を継続させて「コア部1」を作製した。
【0231】
「コア部1」の平均円形度を「FPIA2000(システックス社製)」で測定したところ、0.912だった。
【0232】
(b)シェルの形成
次に、上記液を65℃にして「シェル用樹脂粒子1」を96質量部添加し、さらに、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、70℃まで昇温させて1時間にわたり撹拌を行った。この様にして、「コア部1」の表面に「シェル用樹脂粒子1」を融着させた後、75℃で20分間熟成処理を行ってシェルを形成させた。
【0233】
この後、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加してシェル形成を停止した。さらに、8℃/分の速度で30℃に冷却して生成した着色粒子をろ過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥することにより、コア部表面にシェルを有する「着色粒子2」を作製した。
【0234】
(c)外添処理
作製した「着色粒子2」に下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、「トナー5」を作製した。
【0235】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm) 0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0236】
(トナー6〜28の作製)
トナー5の作製において、表1に記載の、着色剤混合物および量にしたがって着色剤を変更した他は同様の手順でトナー6〜19を作製した。
【0237】
(但し、トナー、8、10、11、12、13の着色剤は、表1に記載の着色剤混合物を表3に記載の量で使用し、さらにSiPc−1をトナー8は、2.1質量部、トナー10は、2.3質量部、トナー11、12は2.0質量部、トナー13は、1.5質量部、用いた。その他のトナーは、表1、2に記載の着色剤混合物のみを用いた。)
(トナー20〜26の作製(比較用トナーの作製))
トナー5の作製において、表1に記載の、着色剤混合物および量にしたがって着色剤を変更し(SiPc−1は用いない)した他は同様の手順でトナー20〜28を作製した。
【0238】
【表1】

【0239】
【表2】

【0240】
【化7】

【0241】
【化8】

【0242】
【化9】

【0243】
(イエロー、マゼンタ、ブラックトナーの作製)
(イエロートナーの作製)
トナー2の作製において、着色剤をC.I.ピグメントイエロー74に変更した他は同様の手順でイエロートナーを作製した。
【0244】
(マゼンタトナーの作製)
トナー2の作製において、着色剤をC.I.ピグメントレッド122に変更した他は同様の手順でマゼンタトナーを作製した。
【0245】
(ブラックトナーの作製)
トナー2の作製において、着色剤をカーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)に変更した他は同様の手順でマゼンタトナーを作製した。
【0246】
(現像剤の調製)
上記「トナー1〜28」およびイエロー、マゼンタ、ブラック各トナーの各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%の「現像剤1〜26」およびイエロー現像剤、マゼンタ現像剤、ブラック現像剤を調製した。
【0247】
(評価)
評価は、図1の二成分系現像方式の画像形成装置に対応する市販の複合プリンタ「bizhub Pro C500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」に、各現像剤を投入した現像装置を装填して行った。
【0248】
また、図4に示すベルト定着方式の定着装置を上記プリンタに搭載して、評価を行った。なお、前述のベルト定着方式の定着装置における加熱ローラの表面材質、表面温度等の各種条件を以下の様にした。
【0249】
定着速度:230mm/sec
加熱ローラの表面材質:ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)
加熱ローラの表面温度:125℃
評価は、上記評価装置に上記で作製したトナーを順番に装填し、常温常湿(20℃、55%RH)の環境下で、以下の項目について評価を行った。
【0250】
プリントは、常温常湿(25℃、55%RH)環境下にて、画像濃度0.4のハーフトーン画像、白地ベタ画像、画像濃度0.8のべた黒画像、および、細線画像がそれぞれ1/4等分となるA4サイズのプリントを行った。
【0251】
(評価)
(色再現性)
下記のように、彩度、色再現域、透明性を評価し、色再現性の指標とした。
【0252】
本発明のカラートナーを用いたトナーセットによって、上記の画像形成装置を用いて、紙に、それぞれ反射画像(紙上の画像)を作製し、以下に示す方法で評価した。なお、トナー付着量は0.7±0.05(mg/cm)の範囲で評価した。
【0253】
(彩度)
発明のシアントナーおよび比較用トナーを用いたトナーセットを用いて、CIELAB色空間において、色相角240度で明度40および70での最大彩度のベタ画像を出力した。本発明を用いない比較用トナー(トナー22)いた場合を基準とした。
A:彩度の向上が20%以上
B:彩度の向上が15%以上20%未満
C:彩度の向上が10%以上15%未満
D:彩度の向上が10%未満
(色再現域評価)
イエロー/マゼンタ/シアンの単色、およびR/G/Bのそれぞれのベタ画像部を用いて、その色域を測定して面積拡大を確認した。印刷用Japanカラーの色域を100として面積を比較したものである。10%以上拡大したものをA、5%〜10%拡大したものをB、5%未満のものをC、拡大しなかったものをDとした。
【0254】
(透明性)
市販のOHPシート(厚さ75μmのポリエステルフィルム製)上にオレンジ色の透過画像を形成し、「330型自記分光光度計(日立製作所(株)製)」を用い、可視分光透過率の測定による評価を行った。すなわち、トナー非担持のOHPシートをリファレンスとし、定着画像の可視分光透過率を測定して、590nmにおける分光透過率の差を求めて、OHP画像の透過性を評価した。なお、OHPシート上のトナー付着量が、0.7±0.05mg/cmとなる様に設定して、評価を行った。
A:透過率が85%以上
B:透過率が80%以上85%未満
C:透過率が80%未満
80%以上で透明性が高いと判断した。
【0255】
(画像保存性)
下記のように、耐光性、耐オゾン性を評価し、画像保存性の指標とした。
【0256】
(耐光性)
シアントナー彩度評価に用いた画像をキセノンフェードメーターで7日間照射し、照射前後の混色画像について、色相変化を評価した。色相変化は、10人の被験者により目視にて行い、10点満点で評価を行った。10人の平均点が10〜9点をA、10人の平均点が9〜8点をB、10人の平均点が8〜7点をC、7点未満をDとした。AおよびBが実用に十分耐えられるレベルであった。
【0257】
(耐オゾン性)
オゾンガス濃度が5ppm(25℃;60%RH)に設定された条件下で、混色した画像を7日間、オゾンガスに曝露した。曝露前後の混色画像について、色相変化を評価した。色相変化を10人の被験者により目視にて行い、10点満点で評価を行った。10人の平均点が10〜9点をA、10人の平均点が9〜8点をB、10人の平均点が8〜7点をC、7点未満をDとした。
【0258】
上記結果を表3に示す。
【0259】
【表3】

【0260】
表3から明らかなように、本発明のトナーを用いた画像形成方法により色再現性に優れ、耐光性、耐オゾン性に優れる画像が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0261】
1Y、1M、1C、1K 感光体
4Y、4M、4C、4K 現像装置
6Y、6M、6C、6K クリーニング装置
7 中間転写体ユニット
10Y、10M、10C、10K 画像形成部
24 定着装置
240 定着ローラ
241 シームレスベルト
P 記録部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを含有することを特徴とする電子写真用トナー。
【化1】

(式中、MおよびM′は金属原子を表す。R〜R16およびR′〜R′16は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。n〜n16およびn′〜n′16は0または1を表す。
但しn〜n16が全て0であることはなく、またn′〜n′16が全て0であることはない。またn〜n16の合計の値Nは1〜1〜15であり、n′〜n′16の合計の値N′は2〜16であり、かつN<N′である。)
【請求項2】
前記一般式(1)および一般式(2)において、Nが1〜3の整数であり、N′が2〜4の整数であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
前記一般式(1)および一般式(2)において、R〜R16およびR′〜R′16が、アルキル基またはアルコキシ基であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
前記アルキル基またはアルコキシの炭素数が、1〜5であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
前記MおよびM′が、MgまたはZnであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項6】
前記一般式(1)および一般式(2)において、MとM′は同一であり、前記一般式(1)のn〜n16が1であるR〜R16で表される置換基は、全てn′〜n′16が1であるR′〜R′16で表される置換基に含まれる、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項7】
潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
該潜像保持体の表面に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、
該潜像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体の表面に転写する転写工程、
および前記被転写体の表面に転写されたトナー像を定着する定着工程を含む画像形成方法であって、
該トナーが、請求項1から6のいずれか1項に記載の電子写真用トナーであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
前記画像形成方法がフルカラー画像形成方法であって、前記トナーが、シアントナーであり、さらにマゼンタトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程およびイエロートナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程を有することを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−63487(P2012−63487A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206406(P2010−206406)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】