説明

電子写真用トナーの測定方法

【課題】短時間で簡易にトナーの特性を評価することを可能とする電子写真用トナーの測定方法を提供すること。
【解決手段】温度30℃以上及び湿度80%以上の条件下で、電子写真用トナーの流動性を測定し、この測定値によりトナーの特性を評価することを特徴とする電子写真用トナーの測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナーの測定方法に係り、特に、電子写真用トナーのブロッキング特性を評価するための電子写真用トナーの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置では、カラー化、高速化の進展とともに、4連タンデム方式の画像形成装置が主流となってきた。しかしながら、4連タンデム方式の画像形成装置では、感光体、帯電装置、現像装置、およびクリーニング装置を含む作像ユニットが4つ並ぶことになる。また、クリーニングによる回収トナーが発生する場所が上記4つの作像ユニットおよび転写ユニットの5箇所にあり、これら5つの回収トナーを処理するために、トナー回収経路が複雑化したり、回収経路が長くなったりして、回収トナーの経路中に経時でトナーブロッキング等の問題が発生しやすくなってきている。
【0003】
従来、廃トナーの回収経路におけるトナーの搬送には、搬送スクリュー(例えば、特許文献1参照)や搬送コイルが用いられてきた。軸がない搬送コイルは、搬送経路を曲げることができるために、搬送経路の自由度が大きくなるのでよく使用されてきたが、軸のない搬送コイルは、コイルのばね性により長さが変化しやすく、また、コイルの長さの部品のばらつきも大きく、搬送不良によりトナー溜りが発生しやすく、トナーブロッキング等の問題が発生するという問題があった。
【0004】
このトナーブロッキング等の問題の発生を未然に防止するため、トナーのブロッキング特性を評価する必要があるが、そのような評価は、実際にトナーを用いて印字試験を行い、ブロッキングの有無を確認することにより行っていた。このため、確認試験には多量のトナーと長時間を要していたが、より短時間で、より簡単な方法により、トナーのブロッキング特性を評価することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−102097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされ、短時間で簡易にトナーの特性を評価することを可能とする電子写真用トナーの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、温度30℃以上及び湿度80%以上の条件下で、電子写真用トナーの流動性を測定し、この測定値によりトナーの特性を評価することを特徴とする電子写真用トナーの測定方法を提供する。
前記流動性の測定値は、粉体流動性分析装置により測定された安定性指標値とすることができる。また、前記トナーの特性は、ブロッキング特性とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、短時間で簡易にトナーの特性を評価することを可能とする電子写真用トナーの測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】粉体流動性分析装置の原理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る電子写真用トナーの測定方法は、温度30℃以上及び湿度80%以上の条件下で電子写真用トナーの流動性を測定し、この測定値によりトナーのブロッキング特性を評価することを特徴とする。
【0011】
通常、プリンター等の画像形成装置におけるトナーの搬送経路でのブロッキング現象を確認するためには、ブロッキングを起こす環境条件と同じ条件でトナーの流動性を測定することが必要であると考えられていた。従って、従来は、画像形成装置の使用推奨範囲である、温度25〜25℃、湿度40〜60%において、トナーの流動性の測定が行われていた。
【0012】
これに対し、本発明では、温度30℃以上、湿度80%以上という、画像形成装置の使用推奨範囲外の条件で、トナーの流動性の測定を行うものである。
本発明者らは、通常の環境下で流動性を測定したのでは、ブロッキングを生ずるトナーと生じないトナーとで、測定値に差が認められなかったものが、温度30℃以上、湿度80%以上という高温高湿下でトナーの流動性を測定したところ、この測定値はトナーのブロッキング現象と相関しており、ブロッキングを生ずるトナーと生じないトナーとで、流動性の測定値に明確な差があることを見出した。本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
【0013】
即ち、温度30℃以上及び湿度80%以上の条件下で測定された電子写真用トナーの流動性と、トナーのブロッキング特性とを予め関連づけておき、任意のトナーを温度30℃以上及び湿度80%以上の条件下で測定し、得られた測定値により、トナーのブロッキング特性の判定を行うものである。このようにして、短時間で、簡単にトナーのブロッキング特性の判定を行うことが可能となる。
【0014】
本発明の一実施形態において、トナーの流動性として、粉体流動性分析装置(パウダーレオメーター、FT−4:シスメックス(株)製)を用いて測定される、安定性指標値(Stability Index; SI値)を用いることが出来る。
【0015】
粉体流動性分析装置は、図1に示すような構造を有する。即ち、例えば容量25mLのガラス容器1内にはトナー2が収容されており、そのトナー2中に、攪拌軸3により回転する、例えば24mmφの攪拌翼4が配置されている。また、ガラス容器1の上部には、攪拌翼4の回転によりガラス容器1内のトナー2が外部にこぼれないように、ガラス筒5が重ねられている。
【0016】
粉体流動性分析装置によるSI値の測定は、次のようにして行われる。即ち、まず、粉体流動性分析装置を所定の温度、湿度の環境室内に設置し、12時間放置する。その際、測定の対象となるトナーも同じ環境室内に配置し、12時間放置する。
【0017】
次いで、粉体流動性分析装置のガラス容器1内に、25mLのトナー2を入れ、ガラス容器1の上部にガラス筒5を重ねる。この状態で、トナーのコンデショニングを10回行う。コンデショニングは、攪拌軸3を回転軸として測攪拌翼4を定時の回転方向(圧縮方向)とは逆方向に回転させながら、上昇および降下を10回繰り返すことにより行う。
【0018】
コンディショニングを行った後、攪拌軸3を回転軸として攪拌翼4を、測定時の回転方向(圧縮方向)に回転させながら降下させた時のトータルエネルギー量(単位:mJ)を測定する。降下し終えた攪拌翼4は、逆回転しながら上昇する。
測定されたトータルエネルギー量は、攪拌翼4の回転トルクと垂直加重の値から自動的に計算されるエネルギー量であり、トナーの流動性の指標となる値である。
【0019】
トータルエネルギー量の測定は,攪拌翼の降下及び上昇を10回連続して繰り返し、降下時ごとに行う。1回目の降下時のトータルエネルギーの測定値(1回目のエネルギー量という。)と10回目の降下時のトータルエネルギーの測定値(10回目のエネルギー量)から、次式によってSI値を求める。
【0020】
SI値=(10回目のエネルギー量)/(1回目のエネルギー量)
測定条件は、コンディショニング時および測定時のいずれも、攪拌翼4の垂直移動量100mm、攪拌翼4の回転スピード(線速度)100mm/秒、攪拌翼4の垂直移動速度20mm/秒である。
【0021】
本発明者らは、以上のようにして求めたトナーのSI値とトナーのブロッキング特性との相関関係につき、その原因を検討した結果、ブロッキング特性の劣った、SI値の高いトナーは、残留有機溶剤量が異常に多い顔料マスターバッチを用いたものであることを見出した。そのメカニズムは、必ずしも詳細には理解されていないが、トナーのブロッキングには、残留有機溶剤が何らかの形で関与しているものと思われる。
【0022】
以下に、実施例及び測定例で用いた種々の試験方法について説明する。なお、トナーのSI値の測定については上述したが、測定条件を下記にまとめる。
【0023】
1.トナーのSI値の測定
装置:粉体流動性分析装置(パウダーレオメータ シスメックス:FT−4)
測定環境:温度23℃、湿度50%、
温度30℃、湿度80%
温度35℃、湿度80%
容器:25mlのガラス容器
攪拌翼:24mmφ
コンディショニングの回数:10回
攪拌翼の垂直移動量:100mm
攪拌翼の回転速度(線速度):100mm/秒
攪拌翼の垂直移動速度:20mm/秒
【0024】
2.ガラス転移点(Tg1)の測定
装置として示差走査熱量計((株)島津製作所製:DSC−60)を用い、試料8mgを室温から10℃/分で160℃まで昇温し、転移により得られる曲線部分の2つの接線の交点をガラス転移点とした。
【0025】
3.残留有機溶剤量の測定
ガスクロマトグラフィーにより下記の条件により測定した。
装置:ガスクロ(ジーエルサイエンス(株)製:GC390B)
方法:ヘッドスペース法
試料:1g
バイアル瓶:20cc
加熱条件:180℃、30分
キャピラリーカラム:TC−WAX 0.25φ×30m
昇温条件:80℃で5分間維持
10℃/分で昇温
240℃で10分間維持
温度条件:検出器 280℃
インジェクション 260℃
検量線:アセトンおよびトルエン(他の物質はトルエンで換算)
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
実施例の説明に先立ち、トナーを製造し、そのSI値を測定した測定例について説明する。
【0027】
測定例1
(1)顔料マスターバッチの作製
下記の配合組成の成分の合計3.9kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練し、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、顔料マスターバッチ(1)を得た。
【0028】
イエロー顔料(C.I.Pigment Yellow 185) 50質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 50質量部
水 30質量部
得られた顔料マスターバッチ(1)の残留有機溶剤量を測定したところ、8ppmであった。またガラス転移点は56.0℃であった。
【0029】
(2)トナーの作製
下記の配合組成の成分の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、衝突版式ジェット粉砕機で粉砕し、風力分級機で分級し、質量平均粒径6.0μmのイエロー微粒子(1)を得た。
【0030】
イエロー顔料マスターバッチ(1) 8質量部
ポリエステル樹脂2(軟化点135℃) 73質量部
粉砕助剤(スチレン・αメチルスチレン共重合体樹脂) 12質量部
離型剤(カルナバワックス) 6質量部
帯電制御剤(LR−147:日木カーリット(株)製) 1質量部
【0031】
次に、下記の配合組成の成分の合計1.038kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別してイエロートナー(1)を得た。
イエロー微粒子(1) 100質量部
シリカ1(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
シリカ2(TG−810G:キャボット(株)製) 0.3質量部
チタニア(TAF−520C:富士チタン工業(株)製) 1.0質量部
【0032】
(3)印字試験とSI値測定
以上のようにして得られたイエロートナー(1)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装し、2%画像を温度30℃、湿度80%の環境下で2万枚連続印刷し、20秒間休憩して繰り返し2万枚の印字試験をしたところ、良好な画像が得られた。
【0033】
また、イエロートナー(1)について、上述した粉体流動性分析装置を用いた試験方法により安定性試験を行い、SI値を求めたところ、以下のような結果を得た。
温度23℃、湿度50%の環境下でのSI値:1.10
温度30℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.08
温度35℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.09
【0034】
測定例2
(1)顔料マスターバッチの作製
下記の配合組成の成分の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練し、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、顔料マスターバッチ(2)を得た。
【0035】
イエロー顔料(C.I.Pigment Yellow 185) 50質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 50質量部
得られた顔料マスターバッチ(2)の残留有機溶剤量を測定したところ、7ppmであった。またガラス転移点は57.8℃であった。
【0036】
(2)トナーの作製及び印字試験、SI値測定
以下、測定例1と同様にしてイエロートナー(2)を作製し、同様にして印字試験を行ったところ、良好な画像が得られた。
また、イエロートナー(2)について、上述した試験方法により安定性試験を行い、SI値を求めたところ、以下のような結果を得た。
温度23℃、湿度50%の環境下でのSI値:1.14
温度30℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.12
温度35℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.08
【0037】
測定例3
(1)顔料マスターバッチの作製
下記の配合組成の成分の合計3.6kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により15分間混練し、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、顔料マスターバッチ(3)を得た。
【0038】
イエロー顔料(C.I.Pigment Yellow 185) 50質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 50質量部
トルエン 20質量部
得られた顔料マスターバッチ(3)の残留有機溶剤量を測定したところ、144ppmであった。またガラス転移点は44.0℃であった。
【0039】
(2)トナーの作製及び印字試験、SI値測定
以下、測定例1と同様にしてイエロートナー(3)を作製し、同様にして2万枚の印字試験を行ったところ、途中の12000枚の印字において、感光体をクリーニングした後のトナーを搬送するスプリングコイル搬送部でトナーが固まり、クリーニングトナーを搬送することができず、トナー搬送コイルが破損した。
【0040】
また、イエロートナー(3)について、上述した試験方法により安定性試験を行い、SI値を求めたところ、以下のような結果を得た。
温度23℃、湿度50%の環境下でのSI値:1.14
温度30℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.25
温度35℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.29
【0041】
測定例4
(1)顔料マスターバッチの作製
下記の配合組成の成分の合計3.9kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により15分間混練し、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、顔料マスターバッチ(4)を得た。
【0042】
イエロー顔料(C.I.Pigment Yellow 185) 50質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 50質量部
アセトン 15質量部
水 15質量分
得られた顔料マスターバッチ(3)の残留有機溶剤量を測定したところ、410ppmであった。またガラス転移点は46.5℃であった。
【0043】
(2)トナーの作製及び印字試験、SI値測定
以下、測定例1と同様にしてイエロートナー(4)を作製し、同様にして2万枚の印字試験を行ったところ、途中の78000枚の印字において、感光体をクリーニングした後のトナーを搬送するスプリングコイル搬送部でトナーが固まり、クリーニングトナーを搬送することができず、トナー搬送コイルが破損した。
【0044】
また、イエロートナー(4)について、上述した試験方法により安定性試験を行い、SI値を求めたところ、以下のような結果を得た。
温度23℃、湿度50%の環境下でのSI値:1.02
温度30℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.18
温度35℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.20
【0045】
測定例5
(1)顔料マスターバッチの作製
下記の配合組成の成分の合計3.9kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練し、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、顔料マスターバッチ(5)を得た。
【0046】
イエロー顔料(C.I.Pigment Yellow 185) 50質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 50質量部
水 30質量部
得られた顔料マスターバッチ(5)の残留有機溶剤量を測定したところ、9ppmであった。またガラス転移点は56.8℃であった。
【0047】
(2)トナーの作製及び印字試験、SI値測定
以下、測定例1と同様にしてイエロートナー(5)を作製し、同様にして印字試験を行ったところ、良好な画像が得られた。
また、イエロートナー(5)について、上述した試験方法により安定性試験を行い、SI値を求めたところ、以下のような結果を得た。
【0048】
温度23℃、湿度50%の環境下でのSI値:1.17
温度30℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.12
温度35℃、湿度80%の環境下でのSI値:1.06
以上の測定例1〜5の結果を下記表1にまとめる。
【0049】
【表1】

【0050】
上記表1から、次のことがわかる。
測定例1、2及び5では、2万枚の印字試験において、トナーの固まりの発生が認められていないのに対し、測定例3では、2万枚の印字試験において、途中の12000枚でトナーの固まりの発生が認められ、測定例3では、途中の7800枚でトナーの固まりの発生が認められている。
【0051】
また、温度23℃、湿度50%の環境下では、測定例1〜5の間で、1回目のエネルギー量、10回目のエネルギー量、及びSI値のいずれにおいても、大きな相違は認められていない。従って、温度23℃、湿度50%の環境下で測定したSI値は、トナーのブロッキング特性の指標とすることは出来ないことがわかる。
【0052】
これに対し、温度30℃、湿度80%の環境下では、測定例1〜5の間で、1回目のエネルギー量及び10回目のエネルギー量においては、大きな相違は認められていないものの、SI値は、トナーの固まりの発生が認められない測定例1、2及び5と、トナーの固まりの発生が認められる測定例3,4との間で、明確な相違が認められる。即ち、測定例1、2及び5では、SI値がそれぞれ1.12、1.08、1.12であるのに対し、測定例3,4では、それぞれ1.25、1.18である。
【0053】
また、温度35℃、湿度80%の環境下では、上記SI値の相違は更に顕著となる。即ち、測定例1、2及び5では、SI値がそれぞれ1.09、1.04、1.06であるのに対し、測定例3,4では、それぞれ1.29、1.20である。
【0054】
なお、トナーの固まりの発生が認められない測定例1、2及び5に係るトナーでは、顔料マスターバッチの残留有機溶剤量はいずれも極く少量であるのに対し、トナーの固まりの発生が認められる測定例3,4に係るトナーでは、顔料マスターバッチの残留有機溶剤量はいずれも非常に多いことがわかる。このことから、残留有機溶剤が、トナーの固まりの発生の原因となっていることが推測される。
以下に、以上の結果を利用した実施例及び比較例を示す。
【0055】
実施例1
上記表1に示す結果から、温度30℃、湿度80%の環境下で測定されたSI値と印字試験の結果とを対応させると、スプリングコイル部でトナー固まりが発生したトナーのSI値は1.18以上であり、固まりが発生しなかったトナーのSI値は1.12以下であった。
この結果から、温度30℃、湿度80%の環境下で測定されたSI値が1.12以下のトナーを良好なブロッキング特性を有するトナーと判定することができる。
【0056】
実施例2
上記表1に示す結果から、温度35℃、湿度80%の環境下で測定されたSI値と印字試験の結果とを対応させると、スプリングコイル部でトナー固まりが発生したトナーのSI値は1.20以上であり、固まりが発生しなかったトナーのSI値は1.09以下であった。
この結果から、温度35℃、湿度80%の環境下で測定されたSI値が1.09以下のトナーを良好なブロッキング特性を有するトナーと判定することができる。
【0057】
比較例1
上記表1に示す結果から、温度35℃、湿度80%の環境下で測定されたSI値と印字試験の結果とを対応させると、スプリングコイル部でトナー固まりが発生したトナーのSI値はそれぞれ1.02、1.15であり、固まりが発生しなかったトナーのSI値はそれぞれ1.03、1.11、1.17と、両者の線引きができなかった。
【0058】
以上の実施例1,2及び比較例1から、温度30℃以上、湿度80%以上の環境下で測定されたSI値が、トナーのブロッキング特性の指標とすることが出来ることがわかる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・ガラス容器、2・・・トナー、3・・・攪拌軸、4・・・攪拌翼、5・・・ガラス筒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度30℃以上及び湿度80%以上の条件下で、電子写真用トナーの流動性を測定し、この測定値によりトナーの特性を評価することを特徴とする電子写真用トナーの測定方法。
【請求項2】
前記流動性の測定値は、粉体流動性分析装置により測定された安定性指標値であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナーの測定方法。
【請求項3】
前記トナーの特性は、ブロッキング特性であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用トナーの測定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−164210(P2011−164210A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24531(P2010−24531)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】