説明

電子写真用トナー及び現像剤

【課題】低濃度印字を長期間繰り返し行った後に高濃度印字を行ったときでも、高画質な画像を形成することができる電子写真用トナーを提供することを目的とする。
【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と、前記トナー母粒子に外添される外添剤とを含み、前記外添剤が、磁性微粒子の表面をコーティング樹脂で被覆した樹脂被覆磁性微粒子を含有するトナーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナー及び前記電子写真用トナーを含む現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機等の電子写真方式を利用した画像形成装置は、像担持体、像担持体の表面を均一に帯電するための帯電装置、像担持体上に静電潜像を形成するための露光装置、像担持体上の静電潜像をトナー像に現像するための現像装置、及び像担持体上のトナー像を用紙上に転写するための転写装置等を備える。
【0003】
白黒画像形成装置は、ブラックトナーを用いて黒色のトナー像を像担持体上に形成し、それを用紙上に転写することで、白黒画像を用紙上に形成する。一方、カラー画像形成装置は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック等の複数色のトナーを用いてこれら各色のトナー像を各色に対応する像担持体上に形成し、さらに重ね合わせてカラー画像にして、用紙上に転写することで、カラー画像を用紙上に形成する。
【0004】
カラー画像形成装置では、形成させる画像によって、各像担持体で使用されるトナーの量、すなわち、各色のトナーの印字率が大きく異なる。特定色のトナーの印字率が低い状態が続く等の場合に、トナーを補給して上記特定色の印字率の高いカラー画像を出力したときには、この特定色のかぶり、いわゆる補給かぶりが発生することが知られている。
【0005】
補給かぶりの発生を抑制するために、例えば、新たなトナーを補給する前に、特定色のトナーを現像装置から強制的に像担持体に移行させて、像担持体上に残留するトナーを像担持体クリーニング装置を用いて除去する方法がある。しかしながら、この方法では、画像を形成させない場合にもトナーが消費されるため、好ましくない。
【0006】
補給かぶりの発生を抑制するための他の方法として、下記特許文献1や下記特許文献2に記載のトナーを用いることが検討されている。
【0007】
特許文献1には、着色樹脂微粒子(トナー母粒子)と外添剤を含み、前記外添剤が、脂肪酸及び/又は脂肪酸金属塩により処理された無機微粉末を含むトナーが記載されている。
【0008】
又、特許文献2には、トナー及びキャリアを有する二成分系現像剤に用いられる、外添剤として八面体形状の磁性微粉体をトナー母粒子に添加したトナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−43733号公報
【特許文献2】特開2003−131437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されたトナーは、脂肪酸又はその金属塩により処理された無機微粒子を、外添剤として含有するので、無機微粒子の有する、研磨性や流動性を高めるという機能を充分に発揮できないことがあり、長期間にわたって高画質な画像を得ることが困難であった。又、感光体ドラムとして、アモルファスシリコン感光体を備えた画像形成装置においては、研磨性の低下により、画像形成に関与しないトナー等の不純物が感光体ドラム上に付着する、いわゆるフィルミングが発生することがあった。
【0011】
一方、特許文献2に記載されたトナーは、八面体形状の磁性微粉体が高い研磨性を有するので、フィルミングの発生は抑制されたものの、長時間にわたって印字率の高い画像形成を行った場合には、高画質な画像を得ることが依然として困難であった。そして、カラー画像を形成する場合には、磁性粉の色によってカラー画像の色調が劣化する恐れがあった。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、印字率の低い印字(以下、「低濃度印字」ともいう)を長期間繰り返し行った後に印字率の高い印字(以下、「高濃度印字」ともいう)を行ったときでも、高画質な画像を形成することができる電子写真用トナーを提供することを目的とする。又、前記電子写真用トナーを含む現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、本発明に至る際、低濃度印字を長期間繰り返し行った後に高濃度印字を行ったときに、かぶりが発生しやすくなる理由を以下のように推察した。
【0014】
補給かぶりの対策を採っていないトナー、例えば、トナー母粒子の表面に磁性微粒子を外添していないトナーを用いて、印字率の低い印字を長時間行った場合には、画像を形成させているにもかかわらず、長期間あまり使用されないトナーが現像装置内に存在することになる。そして、長期間使用されなかった現像剤にはストレスがかかり、現像剤に含まれるトナーは、所定の電荷を失う等してトナーの性能が低下する。そして、この状態で新しいトナーを補給して、印字率の高い印字を行うと、性能が低下したトナーと新たに補給したトナーとでは、帯電量の差が生じて、トナー間で電荷の移動が発生する。そうすると、性能が低下したトナーは、より電荷を失い、現像に好適な帯電量からより離れた(逆極性の電荷を有するトナーの比率の高い)現像剤となる。その結果、印字率の大きく変化する印刷を長時間行った場合、現像剤のトナーの逆帯電量比率が高くなるため、トナーが像担持体の露光部に移行せずに、露光部以外に移行して非露光部にトナーが付着する、いわゆるかぶりが発生すると考えた。
【0015】
これに対して、トナー母粒子の表面に磁性微粒子を外添したトナーを用いた場合には、トナー表面の磁性微粒子がトナーに電荷を貯めさせやすくして、トナーの高い帯電性を維持することで、補給かぶりを抑制する。しかしながら、長時間にわたって印字率の低い印字を行ったときには、現像中のトナーが高いストレスを受ける結果、磁性微粒子がトナー母粒子の表面から脱離して、現像装置中の現像ローラの表面に付着する。そして、八面体形状の磁性微粒子の尖った頂点は電荷を放出しやすいので、現像ローラ表面の磁性微粒子から電荷がリークされる、いわゆる現像リークを引き起こす。一方、磁性微粒子が離脱したトナーは、磁性微粒子の磁気拘束力を受けなくなるので、キャリアや現像ローラへと飛散する。その結果、現像装置から像担持体に適量のトナーが供給されなくなり、画像濃度を低下させると考えた。そして、上記トナー母粒子の表面に磁性微粒子を外添したトナーを用いて印字率の低い印字を行ったときに、トナーが高いストレスを受けているとしても、磁性微粒子がトナー母粒子に付着した状態を維持することができれば、トナーが磁性微粒子の磁気拘束力を受けて、キャリアや現像ローラへの飛散が抑制されるであろうと考えた。
【0016】
上記の考えの下、磁性微粒子をコーティング樹脂で被覆した樹脂被覆磁性微粒子を外添剤としてトナー母粒子に外添したトナーを用いて、低濃度印字を長期間行った後に高濃度印字を行ったところ、補給かぶりの発生が抑制されるとともに、高画質の画像出力を維持できることを見出した。
【0017】
本発明の一態様に係るトナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と、前記トナー母粒子に外添される外添剤とを含み、前記外添剤が、磁性微粒子の表面をコーティング樹脂で被覆した樹脂被覆磁性微粒子を含有することを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、低濃度印字を長期間繰り返し行った後に高濃度印字を行ったときでも、トナーのキャリアや現像ローラへの飛散を抑制でき、高画質な画像を形成することができる。
【0019】
このことは、樹脂被覆磁性微粒子は、樹脂で被覆されていない通常の磁性微粒子と比べて、樹脂被覆層を有するだけ密度が低くなってトナー母粒子への付着力が高まり、トナー母粒子からの脱離が抑制されるとともに、樹脂被覆磁性微粒子が樹脂被覆層を有するため、トナー母粒子から脱離した後も、強磁性体である現像ローラへの付着が抑制されることによると考えられる。
【0020】
上記樹脂被覆磁性微粒子の粒子径は0.01〜1μmであることが好ましい。このような構成によれば、低濃度印字を長期間繰り返し行った後に高濃度印字を行ったときにかぶりの発生をより抑制できる。これは、樹脂被覆磁性微粒子の粒子径が0.01〜1μmであれば、トナー母粒子の表面全体により均一に付着することができ、トナーの高い帯電性をより安定的に維持するためと考えられる。
【0021】
上記樹脂被覆磁性微粒子は、樹脂被覆磁性微粒子100質量部に対して前記磁性微粒子を10〜80質量部含有していることが好ましい。このような構成によれば、低濃度印字を長期間繰り返し行った後に高濃度印字を行ったときに、高画質な画像をより安定して形成することができる。これは、樹脂被覆磁性微粒子のトナー母粒子への付着力がより高まるとともに、樹脂被覆磁性微粒子がトナー母粒子から脱離した後も現像ローラへの付着をより抑制されるためと考えられる。
【0022】
上記磁性微粒子として、例えば、フェライト及びマグネタイトの少なくとも一方を用いることができる。これらの中で、上記磁性微粒子はフェライトであることが好ましい。このような構成によれば、低濃度印字での画像濃度と、高濃度印字での画像濃度との変動をより抑制することができる。これは、フェライトの飽和磁化が、例えばマグネタイトを始めとする他の磁性微粒子の飽和磁化と比べて高いため、樹脂被覆磁性微粒子のトナー母粒子からの脱離がより抑制されるためと考えられる。
【0023】
又、本発明の他の一態様に係る現像剤は、前記電子写真用トナーとキャリアとを含むことを特徴とする。このような構成によれば、低濃度印字を長期間繰り返し行った後に高濃度印字を行ったときでも、トナーのキャリアや現像ローラへの飛散を抑制でき、高画質な画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、印字率の大きく変化する印刷を長時間行った場合であっても、補給かぶりの発生を抑制でき、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる電子写真用トナーを提供することができる。又、前記電子写真用トナーを含む現像剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0027】
[トナー]
本発明の一態様に係る電子写真用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と、前記トナー母粒子に外添される外添剤とを含み、前記外添剤が、磁性微粒子の表面をコーティング樹脂で被覆した樹脂被覆磁性微粒子を含有することを特徴とする。
【0028】
<トナー母粒子>
前記トナー母粒子は、結着樹脂及び着色剤を含有し、トナー母粒子として使用可能な形態のものであれば、特に限定されない。前記トナー母粒子としては、球形であることが好ましく、その粒子径としては、体積平均径で、3.0〜9.0μmであることが好ましい。
【0029】
尚、ここでの体積平均径は、例えば、レーザ回折散乱法等による測定や、一般的な粒度計等を用いた測定によって、計測することができる。
【0030】
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、従来からトナー母粒子の結着樹脂として用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等が挙げられる。この中でも、ポリエステル系樹脂が、低温定着性、非オフセット温度範囲が広い点から好ましく用いられる。又、前記結着樹脂としては、上記各結着樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合又は共縮重合によって得られるもの等が挙げられる。又、ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のものが挙げられる。
【0032】
前記アルコール成分としては、ポリエステル系樹脂を合成するためのアルコールとして使用可能なものであれば、特に限定されない。又、前記アルコール成分としては、分子内に水酸基が2個以上のアルコール(2価以上のアルコール)が含まれている必要がある。前記アルコール成分として用いられるもののうち、2価のアルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類等が挙げられる。又、前記アルコール成分として用いられるもののうち、3価以上のアルコールとしては、具体的には、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。この中でも、ビスフェノール類が、材料との分散性、耐熱保存性、低温定着性、帯電安定性の点から好ましく、ビスフェノールAであることがより好ましい。又、前記アルコール成分としては、上記各成分を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
又、前記カルボン酸成分としては、ポリエステル系樹脂を合成するためのカルボン酸として使用可能なものであれば、特に限定されない。又、前記カルボン酸成分としては、カルボン酸だけではなく、カルボン酸の、酸無水物や低級アルキルエステル等も含まれる。そして、前記カルボン酸成分としては、カルボン酸が分子内に水酸基が2個以上であるもの(2価以上のカルボン酸)が含まれている必要がある。前記カルボン酸として用いられるもののうち、2価のカルボン酸としては、具体的には、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸等が挙げられる。アルキルコハク酸としては、例えば、n−ブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等が挙げられ、アルケニルコハク酸としては、例えば、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等が挙げられる。又、前記カルボン酸として用いられるもののうち、3価以上のカルボン酸としては、具体的には、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等が挙げられる。この中でも、フマル酸が、帯電安定性、環境安全性の点から好ましい。又、前記カルボン酸成分としては、上記各成分を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
前記結着樹脂としては、定着性の観点から、上記のような熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂のみである必要はなく、架橋剤や熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂に組み合わせて用いてもよい。このように結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性の低下を抑制しつつ、トナーの保存安定性、形態保持性及び耐久性等を向上させることができる。
【0035】
(着色剤)
前記着色剤としては、トナーとして所望の色になるように、公知の顔料や染料を用いることができる。具体的には、例えば、色に応じて、以下のような着色剤が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー180等が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。赤色顔料として、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド238等が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。青色顔料としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15−3等が挙げられる。緑色顔料としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等が挙げられる。白色顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0036】
前記着色剤の添加量としては、好適な画像濃度を達成するためにも、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが一般的であり、2〜5質量部であることが好ましい。
【0037】
(電荷制御剤)
前記トナー母粒子には、帯電性等を向上させるために、電荷制御剤を含有させることが一般的である。前記電荷制御剤としては、従来からトナー母粒子の電荷制御剤として用いられているものであれば、特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、ニグロシン、4級アンモニウム塩化合物、及び樹脂にアミン系化合物を結合させた樹脂タイプの電荷制御剤等の正帯電性を示す電荷制御剤等が挙げられる。この中でも、4級アンモニウム塩化合物が、帯電安定性、及び帯電立ち上りが早い点から好ましい。又、前記電荷制御剤の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.5〜10質量部添加することが好ましく、さらに1〜5質量部添加することがより好ましい。前記電荷制御剤の添加量が少なすぎる場合、所定極性にトナーを安定して帯電することが困難となり、かぶりが発生しやすくなる傾向がある。又、前記電荷制御剤の添加量が多すぎる場合、耐環境性、特に高温高湿下での帯電不良、画像不良となり、感光体汚染等の欠点が生じやすくなる傾向がある。
【0038】
(ワックス)
前記トナー母粒子には、定着性やオフセット性等を向上させるために、ワックスを含有させることが一般的である。前記ワックスとしては、従来からトナー母粒子のワックスとして用いられているものであれば特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、カルナバワックスやサトウキビワックス、木ワックス等の植物性ワックス;蜜ワックスや昆虫ワックス、鯨ワックス、羊毛ワックス等の動物性ワックス;フィッシャートロプシュ(以下、「FT」と記すことがある)ワックスやポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス等が挙げられる。これらの中では、前記結着樹脂中での分散性に優れている点から、FTワックスやポリエチレンワックス等の合成炭化水素系ワックスが好ましく、FTワックスがより好ましい。前記ワックスの添加量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部添加することが好ましい。前記添加量が少なすぎる場合には、充分なワックスの効果が得られない傾向があり、又、多すぎる場合には、耐ブロッキング性が低下し、又トナーからの脱離が生じるおそれがある。
【0039】
(製造方法)
又、前記トナー母粒子の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0040】
まず、上記の、結着樹脂及び着色剤等のトナー母粒子の各成分を混合機等で混合する。前記混合機としては、公知のものを使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル、ハイブリダイゼーションシステム、コスモシステム等が挙げられる。
【0041】
次に、得られた混合物を混練機等で溶融混練する。前記混練機としては、公知のものを使用でき、例えば、2軸押出機、三本ロールミル、ラボブラストミル等が挙げられ、2軸押出機が好適に用いられる。又、溶融混練時の温度としては、前記結着樹脂の軟化点以上であって、前記結着樹脂の熱分解温度未満の温度であることが好ましい。
【0042】
次に、得られた溶融混練物を冷却して固形物とし、その固形物を粉砕機等で粉砕する。前記粉砕機としては、公知のものを使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機等の気流式粉砕機や衝撃式粉砕機等が挙げられ、気流式粉砕機が好適に用いられる。
【0043】
最後に、得られた粉砕物を分級機等で分級する。分級することによって、過粉砕物や粗粉を除去することができ、所望のトナー母粒子を得ることができる。前記分級機としては、公知のものを使用でき、例えば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)等の風力分級機や遠心力分級機等が挙げられ、風力分級機が好適に用いられる。
【0044】
<外添剤>
前記外添剤は、樹脂被覆磁性微粒子を含有する。そして、前記外添剤としては、研磨性や流動性を高めるために、前記樹脂被覆磁性微粒子以外に、無機微粒子等の他の外添剤を含有することができる。
【0045】
前記樹脂被覆磁性微粒子は、磁性微粒子の表面をコーティング樹脂で被覆したものであれば、特に限定されない。
【0046】
前記樹脂被覆磁性微粒子の大きさは、トナーの外添剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。トナー母粒子の表面全体に均一に付着させる観点から、樹脂被覆磁性微粒子の粒子径は、中心粒子径で0.01〜1μmが好ましく、0.05〜0.5μmがより好ましい。
【0047】
尚、ここでの中心粒子径は、例えば、レーザ回折散乱法等による測定や、一般的な粒度計等を用いた測定によって、計測することができる。
【0048】
前記樹脂被覆磁性微粒子の、トナー母粒子に対する添加量は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましい。添加量を0.1質量部以上にすることで、補給かぶりをさらに抑制することができる。一方、添加量を5.0質量部以下にすることで、現像剤抵抗が低下せずに帯電保持能力を維持できる。その結果、補給かぶりの発生を防止することができる。
【0049】
前記磁性微粒子は、トナーの外添剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属やその合金、又はこれらの元素を含む化合物、あるいは、強磁性元素を含まないが適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金、もしくは二酸化クロム等からなるものを挙げることができる。この中でも、フェライトやマグネタイトが好ましい。低濃度印字での画像濃度と、高濃度印字での画像濃度との変動を抑制する観点から、飽和磁化の高いものがより好ましく、フェライトが特に好ましい。尚、前記磁性微粒子は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
前記磁性微粒子の形状については、トナーの外添剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。例えば、6個の四角形で囲まれた六面体(立方体、直方体)や8個の三角形で囲まれた八面体等の多面体、球状体、楕円体、棒状体、板状体等が挙げられる。この中で、トナー母粒子の表面全体に均一に付着させる観点から、球状体や楕円体が好ましい。
【0051】
前記磁性微粒子の大きさは、トナーに電荷を貯めさせやすく、トナーの帯電性を高く維持できる大きさであれば、特に限定されない。磁性微粒子の粒子径は、中心粒子径で0.01〜1.0μmが好ましく、0.05〜0.5μmがより好ましい。
【0052】
尚、ここでの中心粒子径は、例えば、レーザ回折散乱法等による測定や、一般的な粒度計等を用いた測定によって、計測することができる。
【0053】
前記磁性微粒子の、樹脂被覆磁性微粒子全体に対する配合比率は、樹脂被覆磁性微粒子100質量部に対して10〜80質量部であることが好ましい。配合量を10質量部以上にすることで、トナーの帯電性を向上させることができる。一方、配合量を80質量部以下にすることで、トナー母粒子への付着力を向上させることができる。配合量を70質量部以下にすることで、現像ローラへの付着をさらに抑制することができる。
【0054】
前記コーティング樹脂は、磁性微粒子の表面全体を被覆することができ、磁性微粒子よりも密度が小さく、磁性微粒子の帯電性能を低下させない樹脂であれば、特に限定されない。例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、メタクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド等が挙げられる。この中で、磁性微粒子との結着性の観点から、スチレンモノマーとメタクリル酸グリシジルモノマーとを組合せた樹脂が好ましい。尚、上記コーティング樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
前記樹脂被覆磁性微粒子は、例えば、コーティング樹脂のモノマーを含有する水溶液中に、磁性微粒子を投入して、攪拌しながら乳化重合反応を行うことで、形成することができる。
【0056】
又、前記樹脂被覆磁性微粒子以外の外添剤としては、上述したように、無機微粒子等が挙げられる。前記無機微粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子及びアルミナ粒子等が挙げられる。この中でも、シリカ粒子及び酸化チタン粒子が、流動性、研磨性の点から好ましい。又、上記樹脂被覆磁性微粒子以外の無機微粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
又、得られたトナーは、後述するような、アモルファスシリコン感光体を備えた画像形成装置に使用されることが好ましい。このような画像形成装置に、例えば、無機微粒子を表面処理した外添剤を含むトナーを用いると、一般的には、研磨性が不充分となり、フィルミングが発生しやすい傾向がある。前記トナーを用いることによって、このような画像形成装置であっても、研磨性を充分に発揮したまま、かぶりを抑制することができる。よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。このことは、上記樹脂被覆磁性微粒子以外の無機微粒子には表面処置等を施さないことによると考えられる。
【0058】
[現像剤]
前記トナーを含有する現像剤としては、前記トナーを含み、キャリアを含まない1成分現像剤であってもよいし、前記トナーとキャリアとを含む2成分現像剤であってもよいが、2成分現像剤が好適に用いられる。ここでは、2成分現像剤について説明する。尚、本発明の他の一態様に係る現像剤は、前記電子写真用トナーとキャリアとを含むことを特徴とする。
【0059】
(キャリア)
前記キャリアとしては、現像剤のキャリアとして用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、フェライトキャリアや、キャリアコア材である磁性体粒子の表面を樹脂で被覆したもの等が挙げられる。キャリアコア材として、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体金属、これらの合金、希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライト等のソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライト等の鉄系酸化物、これらの混合物等の磁性体材料を、焼結及びアトマイズ等を行うことによって製造した磁性体粒子が挙げられる。
【0060】
上述のようにして得られたキャリアコア材の表面を被覆する表面コート剤として、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の結着樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂との混合物が挙げられる。
【0061】
キャリアの粒子径は、一般に電子顕微鏡法による粒径で表して20〜200μmの範囲内であることが好ましく、30〜150μmの範囲内であることがより好ましい。キャリアの見掛け密度は、磁性材料を主体とする場合は磁性体の組成や表面構造等によっても相違するが、一般に3.0〜8.0g/cmの範囲内であることが好ましい。
【0062】
前記トナーとキャリアとを含む2成分現像剤中のトナー濃度は、1〜20質量%である。好ましくは3〜15質量%である。トナー濃度を1質量%以上にすることで、高い画像濃度を得ることができる。一方、トナー濃度を20質量%以下にすることで、現像装置内でトナー飛散が発生し、機内汚れや転写紙等の背景部分にトナーが付着する不具合を抑制することができる。
【0063】
本実施形態の現像剤は、前記トナーを前記キャリアと適切な割合で混合した2成分現像剤であり、例えば、後述の画像形成装置で使用することができる。
【0064】
[画像形成装置]
前記トナーや前記現像剤を用いる画像形成装置としては、電子写真方式の画像形成装置であれば、特に限定されない。具体的には、感光体ドラムとして、アモルファスシリコン感光体を備えた画像形成装置が、耐久性の点で好ましい。又、印字速度が高い点から、後述するような、複数の感光体ドラムを並列に備えたタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。ここでは、感光体ドラムとして、アモルファスシリコン感光体を備えたタンデム方式のカラー画像形成装置について説明する。この画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の像担持体(アモルファスシリコン感光体)と、各像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、前記各像担持体の表面にそれぞれ供給する、複数の現像ローラとを備えている。
【0065】
図1は、画像形成装置1の全体構成を示す概略断面図である。ここでは、画像形成装置1としては、カラープリンタ1を例に挙げて説明する。
【0066】
前記カラープリンタ1は、図1に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙Pに転写された画像に対して定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、前記機器本体1aの上面には、前記定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0067】
前記給紙部2は、給紙カセット21、ピックアップローラ22、給紙ローラ23,24,25、及びレジストローラ対26を備えている。前記給紙カセット21は、前記機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。前記ピックアップローラ22は、前記給紙カセット21の図1に示す右上方位置に設けられ、前記給紙カセット21に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。前記給紙ローラ23,24,25は、前記ピックアップローラ22によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。前記レジストローラ26は、前記給紙ローラ23,24,25によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで前記画像形成部3に供給する。
【0068】
又、前記給紙部2は、前記機器本体1aの図1に示す右側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラ27とをさらに備えている。このピックアップローラ27は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。前記ピックアップローラ27によって取り出された用紙Pは、前記給紙ローラ23,25によって用紙搬送路に送り出され、前記レジストローラ26によって、所定のタイミングで前記画像形成部3に供給される。
【0069】
前記画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にトナー像が1次転写される中間転写ベルト11と、この中間転写ベルト11上のトナー像を前記給紙カセット21から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラ12とを備えている。
【0070】
前記画像形成ユニット7は、上流側(図1では左側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての感光体ドラム71が矢符(反時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体ドラム71の周囲には、帯電器75、露光装置76、現像装置72、クリーニング装置73及び除電器74等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。尚、感光体ドラム71としては、例えば、アモルファスシリコン感光体等が挙げられる。
【0071】
前記帯電器75は、矢符方向に回転されている感光体ドラム71の周面を均一に帯電させる。前記帯電器75としては、例えば、スコロトロン帯電器等が挙げられる。前記露光装置76は、いわゆるレーザ走査ユニットであり、前記帯電器75によって均一に帯電された感光体ドラム71の周面に、画像読取装置等から入力された画像データに基づくレーザ光を照射し、前記感光体ドラム71上に画像データに基づく静電潜像を形成する。前記現像装置72は、静電潜像が形成された感光体ドラム71の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト11に1次転写される。前記クリーニング装置73は、中間転写ベルト11へのトナー像の1次転写が終了した後、前記感光体ドラム71の周面に残留しているトナーを清掃する。前記除電器74は、1次転写が終了した後、前記感光体ドラム71の周面を除電する。前記クリーニング装置73及び前記除電器74によって清浄化処理された感光体ドラム71の周面は、新たな帯電処理のために帯電器75へ向かい、新たな画像形成に備える。
【0072】
前記中間転写ベルト11は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体ドラム71の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラ13、ベルト支持ローラ14、バックアップローラ15、及び1次転写ローラ16等の複数のローラに架け渡されている。又、前記中間転写ベルト11は、各感光体ドラム71と対向配置された1次転写ローラ16によって感光体ドラム71に押圧された状態で、前記複数のローラによって無端回転するように構成されている。
【0073】
前記駆動ローラ13は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、前記中間転写ベルト11を無端回転させるための駆動力を与える。前記ベルト支持ローラ14、前記バックアップローラ15、及び前記1次転写ローラ16は、回転自在に設けられ、駆動ローラ13による前記中間転写ベルト11の無端回転に伴って回転する従動ローラである。これらの従動ローラ14,15,16は、前記駆動ローラ13の主動回転に応じて中間転写ベルト11を介して従動回転するとともに、前記中間転写ベルト11を支持する。
【0074】
前記1次転写ローラ16は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を前記中間転写ベルト11に印加する。そうすることによって、各感光体ドラム71上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム71と前記1次転写ローラ16との間で、前記駆動ローラ13の駆動により矢符(時計回り)方向に周回する中間転写ベルト11に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
【0075】
前記2次転写ローラ12は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、前記中間転写ベルト11上に1次転写されたトナー像は、前記2次転写ローラ12と前記バックアップローラ15との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像が形成される。
【0076】
前記定着部4は、前記画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラ41と、この加熱ローラ41に対向配置され、周面が加熱ローラ41の周面に押圧当接される加圧ローラ42とを備えている。
【0077】
そして、前記画像前記部3で前記2次転写ローラ12により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが前記加熱ローラ41と前記加圧ローラ42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、前記排紙部5へ排紙されるようになっている。又、前記カラープリンタ1では、前記定着部4と前記排紙部5との間に適所に搬送ローラ6が配設されている。
【0078】
前記画像形成装置1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記のようなカラー画像形成装置では、上述したように、出力される画像によって印字率が大きく変化するが、前記現像剤を用いることによって、低濃度印字を長期間繰り返し行った後に高濃度印字を行ったときでも、補給かぶりの発生を抑制でき、高画質な画像を形成することができる。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0080】
(樹脂被覆磁性微粒子a)
酸化鉄微粒子(株式会社フェローテック製、品番EMG1300)1gをスチレンモノマー3mlに分散させた。この分散液0.9mlとメタクリル酸グリシジルモノマー0.1mlとを4つ口フラスコ中で混合させた。そして、過硫酸カリウム0.0138gを含有した純水20mlを4つ口フラスコに注いで、常温(25℃)で5分間撹拌させた。さらに、窒素雰囲気下、70℃で16時間撹拌しながら重合反応させて、樹脂被覆磁性微粒子を形成した。
【0081】
次いで、液体中の樹脂被覆磁性微粒子を磁気回収し、さらに乾燥させた。これにより、樹脂被覆磁性微粒子aを得た。樹脂被覆磁性微粒子aの中心粒子径は1.6×10nm、飽和磁化は25emu/gであった。
【0082】
(樹脂被覆磁性微粒子b)
酸化鉄微粒子1gをスチレンモノマー3mlに代えてスチレンモノマー1.5mlに分散させたこと以外、樹脂被覆磁性微粒子aと同様にして、樹脂被覆磁性微粒子bを得た。樹脂被覆磁性微粒子bの中心粒子径は1.6×10nm、飽和磁化は30emu/gであった。
【0083】
(樹脂被覆磁性微粒子c)
酸化鉄微粒子1gに代えてマグネタイト微粒子(コアフロント株式会社製、品番nanomag−D, 平均粒子径130nm)1gをスチレンモノマー3mlに分散させたこと以外、樹脂被覆磁性微粒子aと同様にして、樹脂被覆磁性微粒子cを得た。樹脂被覆磁性微粒子cの中心粒子径は2.0×10nm、飽和磁化は10emu/gであった。
【0084】
尚、樹脂被覆磁性微粒子a〜c及びマグネタイト微粒子の中心粒子径は、レーザ回折散乱式粒子径測定装置(株式会社堀場製作所製、型番LA−700)を用いて測定した。飽和磁化は、振動試料型磁力計(東英工業株式会社製、型番VSM−P7)を用い、磁場を79.6kA/m(1kOe)として測定した。
【0085】
[実施例1]
(ブラックトナーの製造)
まず、結着樹脂として、ビスフェノールAとフマル酸とを重縮合して得られたポリエステル樹脂(花王株式会社製、品番タフトンNE−1110)100質量部、着色剤として、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、品番MA−100)4質量部、ワックスとして、フィッシャートロプシュワックス(日本精蝋株式会社製、品番FT−100)3質量部、電荷制御剤として、4級アンモニウム塩化合物(オリエント化学工業株式会社製、品番P−51)2重量部を、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製)で2分間混合した。その後、得られた混合物を2軸押出機(株式会社池貝社製、型番PCM−30)で溶融混練した。そして、得られた溶融混練物を気流式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、型番ジェットミルIDS−2)で微粉砕し、風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製、TPS分級機)で分級処理した。そうすることによって、体積平均径8μmのトナー母粒子が得られた。尚、トナー母粒子の体積平均径は、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、型番マルチサイザー3)を用いて測定した。
【0086】
次に、得られたトナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、シリカ粒子(キャボット社製、品番TG−820)1質量部、酸化チタン粒子(テイカ株式会社製、品番JR−405)1.5質量部、前記樹脂被覆磁性微粒子a1.0質量部を添加し、上記ヘンシェルミキサで、3000rpm、10分間混合した。そうすることによって、トナー(外添剤が外添されたトナー母粒子)が得られた。
【0087】
(イエロートナーの製造)
カーボンブラック4質量部に代えて、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー180)2質量部添加したこと以外、上記ブラックトナーの製造と同様にして、イエロートナーを製造した。
【0088】
(シアントナーの製造)
カーボンブラック4質量部に代えて、シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15−3)3質量部添加したこと以外、上記ブラックトナーの製造と同様にして、シアントナーを製造した。
【0089】
(マゼンタトナーの製造)
カーボンブラック4質量部に代えて、マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド238)3質量部添加したこと以外、上記ブラックトナーの製造と同様にして、マゼンタトナーを製造した。
【0090】
(現像剤の製造)
上記のようにして得られた各トナーをそれぞれ、フェライトキャリア(パウダーテック株式会社製、品番F−300)100質量部に対して、10質量部の割合(すなわち、トナー濃度10%)となるように配合した。そうすることによって、現像剤が得られた。
【0091】
[実施例2]
樹脂被覆磁性微粒子aに代えて、樹脂被覆磁性微粒子bを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0092】
[実施例3]
樹脂被覆磁性微粒子aに代えて、樹脂被覆磁性微粒子cを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0093】
[実施例4]
樹脂被覆磁性微粒子aに代えて、樹脂被覆磁性微粒子dを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0094】
[比較例1]
外添剤として、シリカ粒子1質量部、酸化チタン粒子1.5質量部及び樹脂被覆磁性微粒子a1.0質量部に代えて、シリカ粒子1質量部及び酸化チタン粒子1.5質量部を添加したこと(すなわち、樹脂被覆磁性微粒子aを添加しないこと)以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0095】
[比較例2]
樹脂被覆磁性微粒子aに代えて、マグネタイト微粒子(三井金属鉱業株式会社製、品番TN−15、平均粒子径1.7×10nm)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0096】
[評価]
実施例1〜3及び比較例1、2で得られた各現像剤について、次の評価機(画像形成装置)を用いて、低濃度印刷後に高濃度印刷したときの画像品質(画像濃度及びかぶり濃度)について評価した。
【0097】
(評価機)
機種:カラーMFP KM−C3232(京セラミタ株式会社製)
感光体:アモルファスシリコンドラム
現像方式:4連タンデム方式
(画像濃度の評価)
現像剤を評価機にセットし、評価機の電源を入れて安定した直後の画像を出力した。この画像を初期画像とした。次に、補給用トナーを補給しながら、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック各色の印字比率を0.1%に設定して3000枚の画像を出力した。3000枚目の画像を低濃度印刷画像とした。その後、各色の印字比率を25%に変更して、補給用トナーを補給しながら、1000枚の画像を出力した。1000枚目(初期画像から4000枚目)の画像を高濃度印刷画像とした。
【0098】
上記初期画像、低濃度印刷画像及び高濃度印刷画像の各画像には、2×2cmのソリッド画像を左、中央、右の3箇所に設けている。初期画像の各ソリッド画像について、画像濃度測定装置(グレタブマクベス社製、型番RD−19I)を用いてイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック各色の反射濃度をそれぞれ測定し、色別にそれぞれ平均値を算出した。色別の平均値をその色における初期画像の画像濃度とした。同様に、低濃度印刷画像及び高濃度印刷画像の各ソリッド画像について測定された反射濃度の平均値をそれぞれ低濃度印刷画像の画像濃度及び高濃度印刷画像の画像濃度とした。初期画像、低濃度印刷画像及び高濃度印刷画像の各画像濃度は、それぞれ4色の画像濃度の内、最小値が1.20以上を満たすものを合格として評価した。初期画像及び低濃度印刷画像については、実施例1〜3及び比較例1、2のいずれも合格であったが、高濃度印刷画像については、実施例1〜3及び比較例1が合格であり、比較例2は不合格であった。初期画像、低濃度印刷画像及び高濃度印刷画像について、4色の画像濃度の内の最小値と評価結果とを表1に示す。
【0099】
(帯電量の測定)
前記初期画像、前記低濃度印刷画像及び前記高濃度印刷画像を印字した直後に、各現像剤を取り出して、吸引式帯電量測定装置(トレック社のq/mメータ MODEL 210HS)を用いて各帯電量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0100】
(かぶり濃度の評価)
上記高濃度印刷画像の白紙相当部について、上記画像濃度測定装置を用いてイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック各色の画像濃度をそれぞれ測定し、測定値からベースペーパー(すなわち、画像出力前の白紙)の画像濃度の値を引いた値をそれぞれその色でのかぶり濃度とした。かぶり濃度は、4色のかぶり濃度の内の最大値が0.002以下を満たすものを合格として評価した。実施例1〜3及び比較例2が合格であり、比較例1は不合格であった。4色のかぶり濃度の内の最大値と評価結果とを表1に示す。
【0101】
又、実施例1〜3及び比較例1、2で得られた各現像剤について、上記評価機で高濃度印刷画像を出力した後、各色の印字比率を5%に設定し、補給用トナーを補給しながら、さらに296000枚(初期画像から30万枚)の画像を出力した。初期画像から30万枚目の画像を耐刷画像とした。各耐刷画像についても、初期画像、低濃度印刷画像及び高濃度印刷画像と同じ方法で画像濃度及びかぶり濃度を測定し、同じ基準で評価した。画像濃度については、実施例1〜3及び比較例1が合格であり、比較例2は不合格であった。一方、かぶり濃度については、実施例1〜3が合格であり、比較例1、2は不合格であった。4色の画像濃度の内の最小値及びその評価結果と、4色のかぶり濃度の内の最大値とその評価結果とを表1に示す。又、各耐刷画像を印字した直後に各現像剤を取り出して、初期画像、低濃度印刷画像及び高濃度印刷画像と同じ方法で、各帯電量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示すように、磁性微粒子の表面をコーティング樹脂で被覆した樹脂被覆磁性微粒子がトナー母粒子に外添されたトナーを含む現像剤(実施例1〜3)を用いた場合には、磁性微粒子がトナー母粒子に外添されていないトナーを含む現像剤(比較例1)を用いた場合と比べて、帯電量が高く、低濃度印刷後に高濃度印刷したときのかぶりの発生が抑制されている。又、磁性微粒子がトナー母粒子に外添されたトナーを含む現像剤(比較例2)を用いた場合と比べて、低濃度印刷後に高濃度印刷したときの画像濃度の低下が抑制されている。
【0104】
又、磁性微粒子の表面をコーティング樹脂で被覆した樹脂被覆磁性微粒子がトナー母粒子に外添されたトナーを含む現像剤(実施例1〜3)を用いた場合には、磁性微粒子がトナー母粒子に外添されていないトナーを含む現像剤(比較例1)を用いた場合や磁性微粒子がトナー母粒子に外添されたトナーを含む現像剤(比較例2)を用いた場合と比べて、長期間印刷を行った後も、かぶりの発生が抑制されている。
【符号の説明】
【0105】
1 画像形成装置(カラープリンタ)
2 給紙部
3 画像形成部
4 定着部
5 排紙部
6 搬送ローラ
7 画像形成ユニット
11 中間転写ベルト
12 2次転写ローラ
13 駆動ローラ
14 ベルト支持ローラ
15 バックアップローラ
16 1次転写ローラ
21 給紙カセット
22 ピックアップローラ
23,24,25 給紙ローラ
26 レジストローラ
27 ピックアップローラ
41 加熱ローラ
42 加圧ローラ
71 感光体ドラム
72 現像装置
73 クリーニング装置
74 除電器
75 帯電器
76 露光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と、
前記トナー母粒子に外添される外添剤とを含み、
前記外添剤が、磁性微粒子の表面をコーティング樹脂で被覆した樹脂被覆磁性微粒子を含有する電子写真用トナー。
【請求項2】
前記樹脂被覆磁性微粒子の粒子径が0.01〜1μmである請求項1に記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
前記樹脂被覆磁性微粒子は、樹脂被覆磁性微粒子100質量部に対して前記磁性微粒子を10〜80質量部含有する請求項1又は請求項2に記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
前記磁性微粒子がフェライト及びマグネタイトの少なくとも一方である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
前記磁性微粒子がフェライトである請求項4に記載の電子写真用トナー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真用トナーとキャリアとを含む現像剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−47965(P2011−47965A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193734(P2009−193734)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】