説明

電子写真装置用ベルト

【課題】 長期間ほぼ一定した表面抵抗性(導電性)を発揮でき、かつ、長期に渡って繰り返し使用できる電子写真装置用ベルトを提供する。
【解決手段】 一色以上のトナー像を一括転写する電子写真装置用ベルトにおいて、酸価が40〜120(当量/10g)のポリアミドイミド樹脂を主成分とし、pH6以下のカーボンブラックを導電剤として配合した樹脂により、電子写真装置用ベルトを形成する。さらに、ポリアミドイミド樹脂を主成分とし、カーボンブラックを導電剤として配合した樹脂のゲル分率を20〜90%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真装置の感光体周辺に配置する中間転写ベルト、転写搬送ベルト等の電子写真装置用ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザビームプリンタ等の電子写真装置においては、複数色のトナー像を無端ベルト上に静電気で高精度に重ねる必要がある。このような、電子写真装置に使用される無端ベルト(電子写真装置用ベルト)では絶縁樹脂を基材とし、これに導電性物質を分散させた材料が用いられている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0003】
基材としての絶縁樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フルオロエチレンプロピレン共重合体、ポリプロピレン等を用いる。
【0004】
基材に分散させる導電性物質としては、その極性に関わらず、導電性カーボンブラック等を用いる。導電性カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電ブラック(商品名:♯3000シリーズ、三菱化学(株)製)等を用いる(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0005】
以上のような電子写真装置用ベルトとしての半導電性無端ベルトは、昨今、OA機器のカラー化、高速化の進展により、数種のトナーを複雑に組み合わせて使用する場面が多くなってきた。そのため、トナー吸着性に優れ、コピー紙等の搬送性にも優れた物理特性が厳しく要求されるようになってきており(例えば、特許文献3を参照のこと)、特に、静電気特性に非常に厳しい条件が求められてきている。
【特許文献1】特開2002−116633号公報
【特許文献2】特公平5−4990号公報
【特許文献3】特開2000−338789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、中間転写ベルト、転写搬送ベルト等の電子写真装置用ベルトに求められる抵抗値の許容範囲は、一般論として、10〜1014(Ω・cm)といった比較的広い範囲の体積抵抗値であればよい。しかし、具体的な電気写真装置それぞれのレベルでは話が違う。具体的な電気写真装置それぞれの個体の中で電子写真装置用ベルトの抵抗値に不測の変動が生じれば、複雑な模様の正確な転写はできなくなる。そのため、従来の電子写真装置用ベルトでは、長期間使用し続けると、しばしば経年的に特に表面抵抗値が大きく変動し、正確な模様描写ができにくくなる場合が見られた。
【0007】
そこで、この発明は、以上のような問題点を解消すべく、長期間ほぼ一定した表面抵抗性(導電性)を発揮でき、かつ、長期に渡って繰り返し使用できる電子写真装置用ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電子写真装置用ベルトの経時的な抵抗値変化の原因は、電子写真装置の作動中に繰り返しベルト本体に与えられる屈曲、伸展の機械的ストレスにより、導電剤として付与しているカーボンブラック粒子と基材樹脂であるポリアミドイミドの機械的結合が脆くなり、電気抵抗が上昇するためであると考えられる。そこで、この発明の発明者等は鋭意研究を重ねた結果、酸価が40〜120(当量/10g)のポリアミドイミド樹脂を主成分とし、pH6以下のカーボンブラックを導電剤として配合したベルトとすること又はベルトの形成部材のゲル分率を20〜90%とすることで、経年変化に伴う表面抵抗の変化が防止できることを見出した。
【0009】
すなわち、請求項1記載の発明は、一色以上のトナー像を一括転写する電子写真装置用ベルトであって、酸価が40〜120(当量/10g)のポリアミドイミド樹脂を主成分とし、pH6以下のカーボンブラックを導電剤として配合した樹脂により形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の発明は、一色以上のトナー像を一括転写する電子写真装置用ベルトであって、ポリアミドイミド樹脂を主成分とし、カーボンブラックを導電剤として配合した樹脂のゲル分率が20〜90%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、酸価が40〜120(当量/10g)のポリアミドイミド樹脂を主成分とし、pH6以下のカーボンブラックを導電剤として配合した樹脂により形成されていることで、ポリアミドイミド樹脂の架橋の度合いを一定の範囲に抑えつつ、ポリアミドイミド樹脂とカーボンとの結合を向上できるので、柔軟性を有しながらも、経時的な表面抵抗値変化が効果的に抑止される。これにより、長期間安定した表面抵抗値を呈する安定した性質を備え、長期に渡って繰り返し使用可能な電子写真装置用ベルトを提供できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、ゲル分率を20〜90%とすることで、架橋の度合いが一定の範囲にあることが保証されることとなり、ポリアミドイミド樹脂とカーボンブラック粒子の電気的な導通が安定化し、柔軟性を有しながらも、経時的な表面抵抗値変化が効果的に抑止される。これにより、長期間安定した表面抵抗値を呈する安定した性質を備え、長期に渡って繰り返し使用可能な電子写真装置用ベルトを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
【0014】
この発明の実施の形態に係る電子写真装置用ベルトでは、基材となる絶縁性樹脂にポリアミドイミド樹脂を用いる。また、導電付与剤としてカーボンブラックを用いる。或いは、内添離型剤、酸化防止剤等を含めてこれらを均一に分散させ、半導電性を持たせることとする。
【0015】
絶縁性樹脂は導電付与剤等をできるだけ均一に分散できる性質が要求される。また、できるだけ熱的や機械的ストレスを受けても伸縮しない性質が要求される。そのため、熱変形温度が100℃以上、引張強度が2500MPa以上、望ましくは3000MPa以上で、破断伸びが10%以上のものが好ましい。ポリアミドイミドの場合、数平均分子量は17000以上、好ましくは20000以上が望ましい。
【0016】
この発明の実施の形態に係る電子写真装置用ベルトでは、上記の絶縁性樹脂に加え、導電付与剤が適宜添加される。このような導電付与剤としては、カーボン粒子が好ましい。導電付与剤の形状、サイズは球状或いは不定形をなし、0.01〜10μm程度が好ましい。具体的には、揮発分(質量%)を窒素吸着比表面積(m/g)で除した指標パーセントが2.0以上のカーボンブラックが好ましい。このようなカーボンブラックは容易に凝集体から解砕されるからである。解砕されたカーボンブラックは絶縁性樹脂との親和力が高い。そのため、絶縁性樹脂中で良好な分散性を維持する。これにより、成形加工時だけでなく、電子写真装置に組み込まれ使用されている状況下においても均一な体積抵抗値を維持することができる。
【0017】
また、表面官能基のうち、カルボキシル基を25モル%以上有するカーボンブラックが好ましい。さらには、pH6.0以下のカーボンブラックが好ましく、pH3.0以下のカーボンブラックが最も好ましい。表面に適当なカルボキシル基を有していると抵抗値が安定する。酸化状態が不完全なカーボンブラックは配合前に予め発火温度以下で酸素に接触させ、或いは紫外線、電子線を照射して、酸化を進めて調整するとよい。
【0018】
カーボンブラック等の導電付与剤の絶縁性樹脂に対する適切な配合量は、配合物の種類によって変化するが、5〜25質量%程度がよく、予めポットミル、サイクロイドミル、アペックスミル、ダイノールミル、アトライタミル、ジェットミル等を用いて溶媒中に分散しマスターバッチを作成しておくと作業性がよい。
【0019】
絶縁性樹脂の原料素材は、粘度が低い方がよい。粘度が低いと導電性付与剤が均一に分散し、表面抵抗値が均一になる。具体的には10000mPa・s以下、望ましくは5000mPa・s以下がよい。溶融状態又は溶液状態でポットミル、サイクロイドミル、アペックスミル、ダイノールミル、アトライタミル、ジェットミル等通常の方法で混合する。
【0020】
電子写真装置用ベルトは、必要成分を分散させて得られたこうした混合樹脂から成形する。電子写真装置用ベルトへの成形は、押出成形、射出成形、ブロー成形、コーティング成形、遠心成形等によって行うことができる。
【0021】
以下、この発明の実施の形態に係る電子写真装置用ベルトの製造方法について説明する。
【0022】
この発明の実施の形態に係る電子写真装置用ベルトは、例えば、図1に示したように、回転する四つのローラ1上に置かれた円筒状の金型2と金型2内への成形材料を供給する材料供給装置3とからなる遠心成形装置を使用して作製される。材料供給装置3には、スライド可能な材料定量吐出装置4で流動性の混合樹脂を金型2内側に注入し、金型2を回転させ、遠心力で型取りする。型取りした混合樹脂は、乾燥又は加熱固化して、金型2の内周面に所定の樹脂層を形成、これを取り出して所定形状の無端ベルトとする。
【0023】
金型2の内周面には鏡面研磨加工を施し、フッ素系樹脂や、シリコーン樹脂等で表面処理し、無端ベルトを簡単に脱型できるようにしておく。金型2の両端部には、混合樹脂の漏洩を防止するリング状のプレート5を脱着自在に嵌合する。
【0024】
混合樹脂は、粘度が10000mPa・s以下となるよう調整する。粘度が10000mPa・sを超えると、遠心力による金型2の内周面に対するレベリングが困難となる。粘度の下限については特に限定されるものではないが、10mPa・s以上にすれば、有機高分子材料を簡易かつ容易に取り扱うことができる。粘度がこの範囲を超える場合、所定の溶液を加えて溶解・希釈し、粘度を調整する。その手順はほぼ以下のとおりである。
【0025】
材料定量吐出装置4から金型2に流動性の有機高分子材料を必要量注入する。混合樹脂の注入量は固化後の混合樹脂の比重、金型2の内面寸法、製品の厚さ等から算出・決定する。この発明の実施の形態に係る電子写真装置用ベルトには機械的強度と可撓性が求められるので、無端ベルトの厚さについては、0.03〜1.0mm程度の範囲で決定する。こうして、金型2に有機高分子材料を注入したら、金型2をレベリングに必要な回転数にして電子写真装置用ベルトを遠心成形する。
【0026】
また、金型2を適当なヒータ等(図示せず)で加熱し、有機高分子材料を乾燥又は硬化させる。この場合の加熱のタイミングについては、有機高分子材料の乾燥、硬化条件により、適宜選択する。乾燥・硬化が終了したら、金型2を停止させて、冷却し、金型2と無端ベルトの熱膨張差を利用して自然に剥離した無端ベルトを脱型する。
【実施例】
【0027】
[実施例1]
まず、基材を作成するべく、ポリアミドイミド溶液からなる流動性の材料を準備した。この材料の調製に際しては、トリメリット酸無水物1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1mol、フッ化カリウム0.01molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に30分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、三菱化学(株)製のカーボンブラック、商品名:#3400(pH5.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
し、金型の内面はポリッシングにより鏡面研磨されている。そして、金型両端の開口部にはリング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して材料漏れを防止することとした。こうして金型に材料を注入したら、1000rpmの速度でレベリングして遠心成形し、熱風乾燥機で雰囲気温度を80℃に保ち、この状態を30分間保持して金型を停止させるとともに、金型ごと180℃のオーブンに投入し、45分間後に金型を取り出した。
【0028】
金型を取り出したら、金型を放置して室温で冷却し、金型とベルト基材の熱膨張差を利用してベルト基材を脱型した。そして、ベルト基材の両端部をそれぞれカットして240mmの幅とし、厚さ約100μmの電子写真装置用ベルト(無端ベルト)を作製した。
【0029】
そこで、この発明の実施の形態に係る電子写真装置用ベルトは、次のようにして実質的に経年負荷をかけて、実験的に短時間にその経年変化を知ることとした。
【0030】
図2は、電子写真装置用ベルトの経年負荷をかけるための概念図である。
【0031】
回転モータ6に連動する駆動シャフト7を設け、この駆動シャフト7を電子写真装置用ベルト8に挿通し、電子写真装置用ベルト8を垂らす。垂らした電子写真装置用ベルト8の下端に質量1kgの回転ロール9を下げ、回転ロール9の両端を電子写真装置用ベルト8の両脇から飛び出させ、飛び出した両端部に質量2.5kgの重り10をそれぞれ垂らす。こうして電子写真装置用ベルト3に合計で9.8×6Nの負荷をかけ、この状態で回転モータ6を高速回転する。そして、所定時間経過後の表面抵抗を測定した。その結果は表1のとおりである。
[実施例2]
【0032】
トリメリット酸無水物1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1mol、フッ化カリウム0.005molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に60分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、三菱化学(株)製のカーボンブラック、商品名:#3400(pH5.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
【0033】
試験方法は実施例1と同じであり、その結果は表1のとおりである。
[実施例3]
【0034】
トリメリット酸無水物1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に60分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに導電剤のカーボンブラックとして、三菱化学(株)製のカーボンブラック、商品名:#3400(pH5.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
[実施例4]
【0035】
トリメリット酸無水物1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1mol、フッ化カリウム0.01molをNメチル2ピロリドンに溶解し、20℃から150℃に30分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、デグサAG社製のカーボンブラック、商品名:PRINTEX V(pH4.5)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
[実施例5]
【0036】
トリメリット酸無水物1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1mol、フッ化カリウム0.01molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に30分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、デグサAG社製のカーボンブラック、商品名:SPECIAL BLACK4(pH3.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
[実施例6]
【0037】
トリメリット酸無水物 1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1mol、フッ化カリウム0.005molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に60 分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、デグサAG社製のカーボンブラック、商品名:SPECIAL BLACK4(pH3.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
[実施例7]
【0038】
トリメリット酸無水物1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に60分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、デグサAG社製のカーボンブラック、商品名:SPECIAL BLACK4(pH3.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
[実施例8]
【0039】
トリメリット酸無水物1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に90分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、デグサAG社製のカーボンブラック、商品名:SPECIAL BLACK4(pH3.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
【0040】
試験方法は実施例1と同じであり、その結果は表1のとおりである。
[比較例1]
【0041】
トリメリット酸無水物1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1mol、フッ化カリウム0.01molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に30分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応させた後、イソシアン酸フェニル0.02molを添加して、150℃2時間反応させた。そして固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、デグサAG社製のカーボンブラック、商品名:SPECIAL BLACK4(pH3.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
[比較例2]
【0042】
トリメリット酸無水物1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1mol、フッ化カリウム0.01molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に30分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、デグサAG社製のカーボンブラック、商品名:SPECIAL BLACK4(pH3.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
[比較例3]
【0043】
トリメリット酸無水物 1molと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート1mol、フッ化カリウム0.01molをNメチル2ピロリドンと混合し、20℃から150℃に30分間かけて昇温後、150℃にて5時間の加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これに、Nメチル2ピロリドンを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。これに、導電剤のカーボンブラックとして、三菱化学(株)製のカーボンブラック、商品名:♯2300(pH8.0)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間分散を行い混合液を得た。これを1000rpmの速度で回転する金型の内周に190g注入した。
【0044】
試験方法は実施例1と同じであり、その結果は表2のとおりである。
【0045】
なお、判定は、次の基準に照らして行った。
[離型時間]
【0046】
離型時間は製造工程での生産性を考慮すると乾燥工程から取り出した後、60分以内に離型することが望ましく(○)、さらには15分以内で離型するとより好ましい(◎)。
[表面抵抗上昇]
【0047】
電子写真装置用ベルトは、用紙の搬送、トナーの吸着等電気的な特性を要求され、初期の性能を維持するためにも、使用中に経時的な表面抵抗値の変化を生じないことが好ましい。その変化量は、初期値の10倍以内が好ましく(○)、さらには初期値の2倍以内の変化量がより望ましい(◎)。
[ISO耐折れ回数]
【0048】
電子写真装置用ベルトは、張架されているローラ周囲を屈曲、伸張を繰り返す動作を10万回転以上も繰り返されるため、屈曲に対する耐久性が要求される。ISO耐折れ回数が400回以上であることが好ましく(○)、さらには1000回以上がより望ましい(◎)。
【0049】
酸価とISO耐折れ回数の測定は、以下の方法によって行った。
[酸価の測定]
【0050】
ポリマー0.4gを15mlのN,N′−ジメチルホルムアミドと混合した溶液を1/10N−ナトリウムメトキシドのメタノール溶液で滴定して求めた。
[ISO耐折れ回数の測定]
【0051】
東洋精機(株)製MIT耐揉疲労試験機を使用し、JIS P8115に従い、試料幅15mm、曲げ角度90度、速度175回/分、荷重2.0Nにて実施した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
その結果、実施例1〜8にあっては、酸価が40〜120(当量/10g)、カーボンpHが2.5〜6、ゲル分率が20〜90%であり、離型時間は15分又は40分であって離型性に問題はない。表面抵抗値上昇は1.05〜8.56倍であって初期値の10倍以内であり問題はない。ISO耐折れ回数は478〜2350回であって400回以上であり問題はない。したがって、実施例1〜4にあっては、以上すべての評価項目で問題がないため、総合評価も良好であった。
【0055】
これに対して、比較例1、2、3にあっては、それぞれ酸価が35.4、130、50(当量/10g)、カーボンpHが3.0、3.0、8.0、ゲル分率が20.2、99.5、25.9%であるが、比較例2は金型から離型できず、ISO耐折れ回数が25回であって400回以上の基準を下回っているため実用上問題がある。
【0056】
また、比較例1、3は、離型時間が両者とも15分であって離型性に問題はなく、ISO耐折れ回数も2125、2169回であって400回以上であり問題はない。しかし、表面抵抗値上昇は12.14、20.76倍であって初期値の10倍を越えているため実用上問題がある。
【0057】
したがって、比較例1〜3にあっては、離型時間、表面抵抗値上昇、ISO耐折れ回数のいずれかにおいて実用上問題があるため、総合評価としては電子写真装置用ベルトとして採用できないと判定された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明に使用される遠心成形装置を示す一部破断して示した斜視図である。
【図2】電子写真装置用ベルトの経年負荷をかけるための概念図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ローラ
2 金型
3 材料供給装置
4 材料定量吐出装置
5 リング状プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一色以上のトナー像を一括転写する電子写真装置用ベルトであって、酸価が40〜120(当量/10g)のポリアミドイミド樹脂を主成分とし、pH6以下のカーボンブラックを導電剤として配合した樹脂により形成されていることを特徴とする電子写真装置用ベルト。
【請求項2】
一色以上のトナー像を一括転写する電子写真装置用ベルトであって、ポリアミドイミド樹脂を主成分とし、カーボンブラックを導電剤として配合した樹脂のゲル分率が20〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−349708(P2006−349708A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171873(P2005−171873)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】