説明

電子回路の冷却方法及びその冷却構造

【課題】 分散配置された複数の集積回路20の冷却構造について部品点数を削減して装置の小型化、及び部品点数削減による生産性向上を達成できる電子回路の冷却方法及びその冷却構造を提供する点にある。
【解決手段】 図1に示すように、本実施の形態に係る電子回路の冷却構造は、第1集積回路群1と第2集積回路群2と伝熱板3と放熱部品4と連結部材5と回転軸6と弾性熱伝導体7とから概略構成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の集積回路を備えた電子回路の冷却構造に関し、特に集積回路が分散して配置される電子回路の冷却方法及びその冷却構造に属する。
【0002】
【従来の技術】従来技術では、図4に示すように、回路基板10上の各集積回路20に各々放熱部品4を取り付けたり、図5のようにいくつかの集積回路20を群にまとめて、各々の群毎に放熱部品4を取り付けて冷却を行っており、ばね8が集積回路20と放熱部品4との間に備えられることが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技術には以下に掲げる問題点があった。個々の集積回路20に対して、各々放熱手段を用意する必要があり部品点数の増加と組立にかかる時間を増加させるので、複数の箇所に分散配置された集積回路20を冷却する構造を低コストで構築することが困難であるという問題点があった。
【0004】本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは分散配置された複数の集積回路20の冷却構造について部品点数を削減して装置の小型化、及び部品点数削減による生産性向上を達成できる電子回路の冷却方法及びその冷却構造を提供する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明の要旨は、複数の集積回路を備えた電子回路の冷却方法であって、回路基板上の複数の集積回路を第1集積回路群と第2集積回路群との2つの群に分割し、前記第1集積回路群に、伝熱板を対向させ、前記第2集積回路群に、弾性を有する弾性熱伝導体を介して放熱部品を対向させ、前記伝熱板と前記放熱部品とを熱的、機械的に結合する連結部材を配置し、前記伝熱板と前記放熱部品との間の前記連結部材に機械的な支点となる支持手段を備え、該支持手段を、前記連結部材が前記放熱部品を介して前記弾性熱伝導体に力が加わる位置に保持し、前記弾性熱伝導体の反発力を利用して前記伝熱板を前記第1集積回路群に接触させ、前記第1集積回路群から発生した熱を前記連結部材を経由して前記放熱部品から放散させることを特徴とする電子回路の冷却方法に存する。請求項2記載の本発明の要旨は、前記支持手段に、ばねの一端を係着し、該ばねの他端を前記回路基板を保持する筐体に係着し、前記ばねの弾力で、前記伝熱板が前記第1集積回路群を押し付ける力の上限を設定することを特徴とする請求項1記載の電子回路の冷却方法に存する。請求項3記載の本発明の要旨は、前記連結部材は、前記放熱部品を介して前記弾性熱伝導体を前記第2集積回路群に押しつける位置に、前記支持手段である回転軸を備え、前記放熱部品に押し付けられた前記弾性熱伝導体の反発力により、前記放熱部品は前記第2集積回路群を押しつけた方向と反対の方向に移動し、前記伝熱板は前記回転軸を支点として前記放熱部品と反対の方向に移動し、前記伝熱板は前記第1集積回路群に接触し、前記伝熱板と前記放熱部品とは前記連結部材にて熱的に結合し、前記第1集積回路群から発生した熱を前記放熱部品から放散し、前記第1集積回路群を冷却することを特徴とする請求項1又は2記載の電子回路の冷却方法に存する。請求項4記載の本発明の要旨は、複数の集積回路を備えた電子回路の冷却構造であって、回路基板上の複数の集積回路を有する第1集積回路群に対向した伝熱板と、前記回路基板上の前記集積回路とは別の複数の集積回路を有する第2集積回路群に対向した弾性熱伝導体と、該弾性熱伝導体に接触する位置に配置された放熱部品と、該放熱部品と前記伝熱板とを備えた連結部材と、該連結部材を前記放熱部品と前記伝熱板との間で支持する支持手段とを備えたことを特徴とする電子回路の冷却構造に存する。請求項5記載の本発明の要旨は、前記支持手段は、略帯板状の前記連結部材の幅方向に備えられた回転軸であり、前記連結部材は、前記第1集積回路群と前記第2集積回路群とが並ぶ方向に、前記回路基板面の上方へ備えられ、前記回転軸は、回動自在に、前記回路基板を保持する筐体へ取り付けられたことを特徴とする請求項4記載の電子回路の冷却構造に存する。請求項6記載の本発明の要旨は、前記筐体に前記回転軸が取り付けられたことにより、略水平方向に保持された前記連結部材の両端に前記伝熱板と前記放熱部品とが備えられたことを特徴とする請求項4又は5記載の電子回路の冷却構造に存する。請求項7記載の本発明の要旨は、前記支持手段は、一端が前記筐体に係着され、他端が前記回転軸に係着されて前記伝熱板が前記第1集積回路群を押し付ける力の上限を設定する弾性を持つばねを備えたことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の電子回路の冷却構造に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る電子回路の冷却構造は、第1集積回路群1と第2集積回路群2と伝熱板3と放熱部品4と連結部材5と回転軸6と弾性熱伝導体7とから概略構成される。
【0007】第1集積回路群1と第2集積回路群2とは回路基板10上に分散配置される。伝熱板3は第1集積回路群1に対向する位置に配置され、放熱部品4は第2集積回路群2に対向する位置に配置される。連結部材5は、前記伝熱板3と放熱部品4とを熱的、機械的に結合し、機械的支点となる回転軸6を有する。また、弾性熱伝導体7は、第2集積回路群2と放熱部品4との間に設置される。
【0008】次に、図2に基づいて本実施の形態に係る電子回路の冷却方法の動作を説明する。前記放熱部品4が予め決められた力にて弾性熱伝導体7を第2集積回路群2に押しつけるように機械的支点又は回転軸6の位置を決める。すると弾性熱伝導体7の反発する力により放熱部品4が矢印の方向に移動する。このとき、伝熱板3と放熱部品4が連結部材5により連結され且つ支点又は回転軸6が伝熱板3と放熱部品4の間に位置するため伝熱板3は放熱部品4と反対の方向に移動する。伝熱板3の移動する方向は第1集積回路群1に向かう方向なので伝熱板3が第1集積回路群1に接触する。伝熱板3と第1集積回路群1が接触し、伝熱板3と放熱部品4が連結部材5にて熱的に結合しているので第1集積回路群1から発生した熱は放熱部品4から放散され、第1集積回路群1が冷却される。
【0009】上記のように、伝熱板3と放熱部品4とを機械的に連結し、連結部材5に機械的支点又は回転軸6を備えるにより伝熱板3と放熱部品4とは前記機械的支点又は回転軸6を中心にシーソーのように動く。ここで、放熱部品4側に配置されている第2集積回路群2と放熱部品4間の熱結合に弾性を有する弾性熱伝導体7を使用し、かつ集積回路20に圧力がかかるように配置することにより放熱部品4が押し上げられ、前記支点、又は回転軸6を中心に前記伝熱板3が第1集積回路群1に押しつけられ、第1集積回路群1と伝熱板3との間の熱結合を確保することが出来る。第1集積回路群1で発生した熱は伝熱板3と連結部材5を経由して放熱部品4に伝わり放散される。
【0010】また、図3に示すように、その他の実施例としての電子回路の冷却構造は、回転軸6にばね8を組み込んだものであり、この実施例では連結部材5にばね8を組み込むことにより伝熱板3が第1集積回路群1を押す力の上限を設定することが可能となる。
【0011】すなわち、伝熱板3と放熱部品4を連結部材5で連結して伝熱板3と放熱部品4の間に支点又は回転軸6を備え、放熱部品4と、放熱部品4に直接発生した熱を放散する第2集積回路群2との間に弾性を有する弾性熱伝熱体7を配置して、この弾性熱伝導体7の弾性反発力を利用して支点又は回転軸6の反対側にある伝熱板3を被冷却体である第1集積回路群1に接触させて第1集積回路群1と第2集積回路群2の両方を同時に冷却する。
【0012】なお、本実施の形態においては、本発明はそれに限定されず、本発明を適用する上で好適な基板上の電子部品の冷却構造及びその冷却方法に適用することができる。
【0013】また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0014】なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【0015】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されているので、以下に掲げる効果を奏する。従来の構造による冷却構造に比べて部品点数が削減でき、更に連結部材に取り付ける支持手段である回転軸の位置によって第1集積回路群と第2集積回路群とへの押しつける圧力が決定されるため押しつける圧力の調整作業が簡単になり、組立て作業量が削減されることにより生産性の向上が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子回路の冷却構造を示す構成図である。
【図2】図1の動作を示す図である。
【図3】図1の他の実施例を示す構成図である。
【図4】従来技術による冷却構造の一例を示す図である。
【図5】従来技術による他の冷却構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 第1集積回路群
2 第2集積回路群
3 伝熱板
4 放熱部品
5 連結部材
6 回転軸
7 弾性熱伝導体
8 ばね
10 回路基板
20 集積回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の集積回路を備えた電子回路の冷却方法であって、回路基板上の複数の集積回路を第1集積回路群と第2集積回路群との2つの群に分割し、前記第1集積回路群に、伝熱板を対向させ、前記第2集積回路群に、弾性を有する弾性熱伝導体を介して放熱部品を対向させ、前記伝熱板と前記放熱部品とを熱的、機械的に結合する連結部材を配置し、前記伝熱板と前記放熱部品との間の前記連結部材に機械的な支点となる支持手段を備え、該支持手段を、前記連結部材が前記放熱部品を介して前記弾性熱伝導体に力が加わる位置に保持し、前記弾性熱伝導体の反発力を利用して前記伝熱板を前記第1集積回路群に接触させ、前記第1集積回路群から発生した熱を前記連結部材を経由して前記放熱部品から放散させることを特徴とする電子回路の冷却方法。
【請求項2】 前記支持手段に、ばねの一端を係着し、該ばねの他端を前記回路基板を保持する筐体に係着し、前記ばねの弾力で、前記伝熱板が前記第1集積回路群を押し付ける力の上限を設定することを特徴とする請求項1記載の電子回路の冷却方法。
【請求項3】 前記連結部材は、前記放熱部品を介して前記弾性熱伝導体を前記第2集積回路群に押しつける位置に、前記支持手段である回転軸を備え、前記放熱部品に押し付けられた前記弾性熱伝導体の反発力により、前記放熱部品は前記第2集積回路群を押しつけた方向と反対の方向に移動し、前記伝熱板は前記回転軸を支点として前記放熱部品と反対の方向に移動し、前記伝熱板は前記第1集積回路群に接触し、前記伝熱板と前記放熱部品とは前記連結部材にて熱的に結合し、前記第1集積回路群から発生した熱を前記放熱部品から放散し、前記第1集積回路群を冷却することを特徴とする請求項1又は2記載の電子回路の冷却方法。
【請求項4】 複数の集積回路を備えた電子回路の冷却構造であって、回路基板上の複数の集積回路を有する第1集積回路群に対向した伝熱板と、前記回路基板上の前記集積回路とは別の複数の集積回路を有する第2集積回路群に対向した弾性熱伝導体と、該弾性熱伝導体に接触する位置に配置された放熱部品と、該放熱部品と前記伝熱板とを備えた連結部材と、該連結部材を前記放熱部品と前記伝熱板との間で支持する支持手段とを備えたことを特徴とする電子回路の冷却構造。
【請求項5】 前記支持手段は、略帯板状の前記連結部材の幅方向に備えられた回転軸であり、前記連結部材は、前記第1集積回路群と前記第2集積回路群とが並ぶ方向に、前記回路基板面の上方へ備えられ、前記回転軸は、回動自在に、前記回路基板を保持する筐体へ取り付けられたことを特徴とする請求項4記載の電子回路の冷却構造。
【請求項6】 前記筐体に前記回転軸が取り付けられたことにより、略水平方向に保持された前記連結部材の両端に前記伝熱板と前記放熱部品とが備えられたことを特徴とする請求項4又は5記載の電子回路の冷却構造。
【請求項7】 前記支持手段は、一端が前記筐体に係着され、他端が前記回転軸に係着されて前記伝熱板が前記第1集積回路群を押し付ける力の上限を設定する弾性を持つばねを備えたことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の電子回路の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−174471(P2000−174471A)
【公開日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−347301
【出願日】平成10年12月7日(1998.12.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】