説明

電子天びん

【課題】低消費電力で通電ドリフトの影響を受けない電子天びんを提供する。
【解決手段】時刻信号を発信する時計装置6と、発信された時刻を計時する演算制御部3と、電子天びんの荷重検出部1への電源供給の開始/終了時刻を設定する入力装置5と、読取時刻が設定時刻に一致した時点で荷重検出部1及び表示器4への電源供給を開始または終了する電源入切器7を備え、時刻が電源供給開始時刻に一致した時点で前記電源入切器7をONにし、終了時刻に一致した時点で前記電源入切器7をOFFにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子天びん、はかりに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子天びん、特に電池駆動式の電子天びんにおいては電池の消耗の低減を図るために、使用していない時間が一定時間経過すると自動的に電源が切れて動作を停止するオートパワー式のものが開示されているが(特許文献1参照)、再度電源を供給して動作させるには、使用者が使用の都度スイッチなどを操作して電源投入を行っていた。
また、電子天びんは、電源投入後しばらくの間、図5に示すような通電ドリフトが発生持続するので、ほぼ通電ドリフトの変化がなくなるまでの時間、すなわち暖機時間後に測定を行う必要があった(特許文献2参照)。通常、この暖機時間を節約し通電ドリフトのない状態で測定できるようにするために、電子天びんが未使用中は電源を供給状態にして計量表示を消しておくという手法が採られているものもある。
【0003】
【特許文献1】特開平5−273036号公報
【特許文献2】特開2001−317991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電子天びんには、定められた時刻に自動的に電源が供給されるものがなく、使用者が使用する際に手動で電源スイッチをONにして電源を供給しているので、電源供給後の急激な内部温度上昇によって通電ドリフトが発生し、その変化が電子天びん個々により多少の相違があるが一定時間継続し、内部温度が安定し通電ドリフトの変化がなくなるまでの時間、すなわち暖機時間中は正確な測定が行えないという問題がある。特にその日の使用時間が予め決められているような場合、使用者が暖機時間を考慮して使用時間前に電源を投入しておく必要があるが、電源供給開始時間が前後して必要な時刻からの計量ができなかったり、必要な計量時間が取れなかったりする場合が発生するという問題がある。
この通電ドリフト時間をなくすため電源供給期間中は計量表示のみを消しておくという方法もあるが、消費電力が計量可能状態中と同じだけ必要になるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、決められた計量時間を確実に確保でき、計量を行う際には通電ドリフトの影響が無い状態で正確な測定を行え、且つ電源供給休止期間中の消費電力を削減することができる電子天びんを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の電子天びんは載置された試料荷重を電気信号に変換する荷重検出部からの出力信号を質量値に換算して表示する電子天びんにおいて、現在時刻を発信する時刻信号発信手段と、荷重検出部への電源供給を開始および終了する時刻を設定する時刻設定手段と、時刻信号が設定時刻に一致または設定時間を越えたことを判定する時刻判定手段と、時刻信号が電源供給開始時刻を越えた時点より全回路への電源供給を開始し、電源供給終了時刻を越えた時点より少なくとも荷重検出部を含む電気回路への電源供給を休止する電源供給手段を備えている。
また電源供給開始時刻から電源供給終了時刻までの期間中において、計量値表示回路への電源供給をオンオフする電源切替手段を設けている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電子天びんは、予め暖機時間に相当する時間だけ使用する前に自動的に電源が供給されるので、使用する際には通電ドリフトが収斂した状態で正確な測定が可能となる。また、使用していない間は荷重検出部回路や計量値表示回路への電源の供給が停止されるので消費電力を大幅に減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明が提供する電子天びんの最良の形態は、載置された試料荷重を電気信号に変換する荷重検出部からの出力信号を質量値に換算して表示する電子天びんにおいて、現在時刻を発信する時刻信号発信手段と、荷重検出部への電源供給を開始および終了する時刻を設定する時刻設定手段と、時刻信号が設定時刻を越えたかを判定する時刻判定手段と、時刻信号が電源供給開始時刻を越えた時点より全回路への電源供給を開始し、電源供給終了時刻を越えた時点より少なくとも荷重検出部を含む電気回路への電源供給を休止する電源供給手段を備え、かつ電源供給開始時刻から電源供給終了時刻までの期間中において、計量値表示回路への電源供給をオンオフする電源切替手段を設けたものである。
【実施例1】
【0008】
以下、本発明の電子天びんの実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例による電子天びんの構成を示すブロック図である。荷重検出部1は、例えば電磁力平衡型の検出部であって、測定皿1a上の荷重に応じた電気信号を出力する。この荷重検出部1からの出力信号は、A/D変換器2aによってディジタル化された後、荷重検出データとして演算制御部3に一定のサンプリング周期毎に採り込まれる。この演算制御部3は、CPU31、ROM32、RAM33および入出力インターフェース34a、34bを主体として構成されている。
【0009】
前記入出力インターフェース34aには、前記A/D変換器2aと、前記荷重検出部1内の温度を検出する温度センサ1bの出力をディジタル化するためのA/D変換器2bが接続されている。また、入出力インターフェース34bには、計量値を表示するための表示器4と、電源供給の開始/終了時刻を入力する入力装置5と、時刻を送信する時計装置6と、電源供給をON/OFFする電磁リレーなどの電源入切器7が接続されている。
【0010】
前記演算制御部3は、ROM32に書き込まれた電源供給開始/終了プログラムと予め入力装置5から入力され、RAM33に記憶されている電源供給開始/終了時刻を参照して電源ON/OFF制御を行うとともに、ROM32に書き込まれた演算制御プログラムに基づいて、電源供給期間中に荷重検出データを採取する毎にそのデータをRAM33内に格納するとともに、例えば最新の所定個数の荷重検出データを平均化し、その平均値に予め設定されているスパン係数を乗じる等の公知の演算によって測定皿1a上の質量値を求め、計量値として表示器4に表示する。
【0011】
上記の構成部品のうちで演算制御部3、時計装置6などには電源部9から電源が常時供給され、荷重検出部1や表示器4の回路には電源入切器7を介して電源部9から電源が供給されるように構成されている。
【0012】
前記荷重検出部1を始め電子天びんを構成する機械部品や電子部品は、それぞれ固有の伝熱特性を有しており、通電後の発熱に伴う温度変化により、一定温度で安定するまでの通電ドリフトによる計量誤差を生じる。したがって計量誤差を排除するためには、構成部品の温度が一定温度で安定するまでの暖機運転時間を必要とする。
【0013】
電源供給開始/終了時刻T1、T2の設定例を図2のタイムチャートに示す。すなわち、計量作業開始時刻が10:00am、計量作業終了時刻が6:00pm、暖機時間が1時間以内である場合には、電源供給開始時刻T1を9:00am、電源供給終了時刻T2を6:00pmに設定する。計量作業時刻が日によって異なる場合は日ごとに必要な時刻T1、T2を設定する。
【0014】
上記の電子天びんが供給電源Sから通電されると、ROM32に書き込まれた演算制御プログラムおよび電源供給開始/終了プログラムと予めRAM33に入力装置5を介して読み込まれている電源ON/OFF時刻T1、T2などの入力情報に基づき電源ON/OFFおよび計量が図3のフローチャートに基づき以下のように実行される。
【0015】
本電子天びんに通電が行われると、ROM32に格納されている電源供給開始/終了プログラムと予めRAM33に書き込まれている時刻T1、T2を参照して電源供給開始/終了プログラムが実行される。先ず現在時刻が電源供給開始時刻T1を越えたかをチェックし(S1)、NOならば時刻T1に到達するまで一定時間毎にチェックを繰り返し、YESなら電源入切器7をONにし(S2)、演算制御プログラムに基づいて計量・表示を行う(S3)。次に現在時刻が電源供給終了時刻T2を越えたかをチェックし(S4)、NOなら時刻T2を越えるまで計量・表示を繰り返し(S3)、YESなら電源入切器7をOFFにして(S5)現在時刻が時刻T1を越えるまで一定時間毎にチェックを繰り返す(S1)。
【0016】
図4は、上記実施例の変形例による電子天びんの動作を説明するためのフローチャート図である。この電子天びんは、図1に示した入力装置5に表示ON/OFFキー8を設けて表示器4での計量表示をON/OFF(表示/消去)できるようにしたものである。上記実施例と同様に通電後、現在時刻がT1を越えたかをチェックし(S1)、NOならこのチェックを繰り返し、YESなら電源入切器7をONにして(S2)、計量を行いその計量値をRAM33に記憶する(S3)。そして表示ON/OFFキー8がOFFかどうかをチェックし(S4)、NOなら計量値を表示し(S5)、YESなら計量値の表示を消して(S6)、現在時刻がT2を越えたかをチェックする。現在時刻がT2を越えるまでステップ3からの手順を繰り返し、T2を越えた時点で電源入切器7をOFF(S8)にする。この電子天びんは計量表示OFF中において、荷重検出部1を含むその他の電気回路に電源を供給しているため表示ON/OFFキー8で計量表示をOFFからONに切り替えて計量表示を行った場合、通電ドリフトの影響を受けず、安定した計量表示が行われる。
【0017】
本発明の電子天びんの構成は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、時計装置6の中に演算制御部3と別個の演算制御部を設け、電源供給開始/終了プログラムを実行させ、電源供給休止期間中その他の構成部品の電源を切断するようにしてもよい。また、供給電源Sからの電源供給をON/OFFする手動の電源スイッチ(図示省略)を電源部9の前に設けてもよく、この場合上記実施例はこの電源スイッチをONにした状態で実施される。
【0018】
上記においては、現在の時刻が設定時刻を越えた時これを判定する実施例で説明したが、超えなくても一致した時に判定するようにすることも可能で本発明はこれら一致の場合も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は電子天びん、はかりに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例による電子天びんの構成を示すブロック図である。
【図2】実施例に係わるタイムチャート図である。
【図3】実施例に係わるフローチャート図である。
【図4】本発明の変形例による電子天びんの動作を説明するフローチャート図である。
【図5】電子天びんにおける通電ドリフト特性例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 荷重検出部
1a 測定皿
1b 温度センサ
2a A/D変換器
2b A/D変換器
3 演算制御部
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34a 入出力インターフェース
34b 入出力インターフェース
4 表示器
5 入力装置
6 時計装置
7 電源入切器
8 表示ON/OFFキー
9 電源部
S 供給電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置された試料荷重を電気信号に変換する荷重検出部からの出力信号を質量値に換算して表示する電子天びんにおいて、現在時刻を発信する時刻信号発信手段と、荷重検出部への電源供給を開始および終了する時刻を設定する時刻設定手段と、時刻信号が設定時刻に一致または設定時間を越えたことを判定する時刻判定手段と、時刻信号が電源供給開始時刻を越えた時点より全回路への電源供給を開始し、電源供給終了時刻を越えた時点より少なくとも荷重検出部を含む電気回路への電源供給を休止する電源供給手段を備えていることを特徴とする電子天びん。
【請求項2】
電源供給開始時刻から電源供給終了時刻までの期間中において、計量値表示回路への電源供給をオンオフする電源切替手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の電子天びん。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−155681(P2007−155681A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355347(P2005−355347)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)