説明

電子天秤

【課題】共通の部品を使用して秤量の異なるものが構成できる電子天秤を提供する。
【解決手段】
ビーム30の可動部材10に対向する前端側に可動部材10を固定する可動部材固定面と支点バネ61、62の一端が取り付けられる第1支点バネ取付面32とを有し、天秤ベース40の前端側に支点バネ61、62の他端を取り付ける第2支点バネ取付面43を有し、可動部材固定面が、第1支点バネ取付面32より可動部材10に近接して設けられており、支点バネ61、62が、厚さの異なる複数種類のスペーサの中から選択されたスペーサ71、72を介して第1支点バネ取付面32及び第2支点バネ取付面43に固定される。この電子天秤は、厚さの異なるスペーサ71、72を選択することで、可動部材10、ロバーバル機構21、ビーム30、天秤ベース40などを共通に利用して、異なる秤量に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子天秤に関し、秤量の異なる装置を共通の部品を使用して構成できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
電子天秤は、一端に被測定荷重が伝達されるビームを有している。ビームの他端には、電磁力でビームのバランスを取るためのコイルが取り付けられており、支点で支えられたビームが平衡を保つようにコイルに電流が供給され、その電流の値から被測定荷重が測定される。
天秤では、ビームの支点位置が変わると、秤量(計量範囲)が違って来ることは広く知られている。下記特許文献1には、在庫の品切れを検出するために天秤を応用した装置が記載され、支点位置を調整して、この装置の感度を複数の段階に切り替えることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−73472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、各種の秤量の電子天秤を製造するために、秤量に応じた多種類のビームやコイル等の部品を用意していた。しかし、高精度の測定を目的とする電子天秤では、部品の加工精度や組立て精度が厳しく要求されるため、その要求を満たす多種類の部品を製作して保持することは、メーカーにとって、かなりの負担になっている。
【0005】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、共通の部品を使用して秤量の異なる装置を構成することができる電子天秤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被測定荷重が伝達されて可動する可動部材と、可動部材に連結されて可動部材の可動方向を上下方向に制限するロバーバル機構と、可動部材に対向する前端側に可動部材が固定される可動部材固定面と支点バネの一端が取り付けられる第1支点バネ取付面とを有し、後端側に電磁力発生用のコイルを有するビームと、支点バネの他端が取り付けられる第2支点バネ取付面を前端側に有し、後端側でビームのコイルが組み込まれる電磁力発生機構を保持する天秤ベースと、を備える電子天秤であって、可動部材固定面が、第1支点バネ取付面より可動部材に近接して設けられており、支点バネが、厚さの異なる複数種類のスペーサの中から選択されたスペーサを介して第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面に固定されることを特徴とする。
この電子天秤は、厚さの異なるスペーサを選択することで、可動部材、ロバーバル機構、ビーム、天秤ベースなどを共通に利用して、異なる秤量に設定することができる。
【0007】
また、本発明の電子天秤では、ビームの第1支点バネ取付面が、可動部材固定面によって分離された、同一面上にある二つの等しい形状の取付面から成り、それぞれの取付面に一つずつの支点バネが固定される。
二つの支点バネで第1支点バネ取付面と第2支点バネ取付面とが結合される。
【0008】
また、本発明の電子天秤では、支点バネが鉛直線上に位置するようにスペーサの厚さが選択され、選択されたスペーサを介して、支点バネが第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面に鉛直線上に固定される。
支点バネを鉛直線上に固定することで、支点バネのねじれや歪みを無くすことができる。
【0009】
また、本発明の電子天秤では、ビームが左右対称の形状を有し、可動部材固定面、第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面がビームの対称面に対して左右対称であり、可動部材が、可動部材固定面の対称面の位置に固定され、支点バネが、対称面に対して左右対称で、且つ、対称面に平行となるように第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面に固定される。
このように可動部材固定面、第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面を左右対称に設定し、可動部材を可動部材固定面の中心に固定し、二つの支点バネを第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面に対称に固定することにより、支点バネのねじれや歪みを無くすことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、共通の部品を使用して秤量の異なる電子天秤を構成することができ、部品管理の手間や製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る電子天秤の斜視図
【図2】図1の電子天秤の平面図
【図3】図1の電子天秤に使われているビームの平面図
【図4】図1の電子天秤に使われている天秤ベースの平面図
【図5】本発明の実施形態に係る電子天秤の斜視図(異なる厚さのスペーサを用いたもの)
【図6】図5の電子天秤の平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る電子天秤の斜視図であり、その平面図を図2に示している。
この電子天秤は、皿受棒11を通じて被測定荷重が伝達される可動部材10と、可動部材10と連結して可動部材10の可動方向を上下方向に制限するロバーバル機構21、22と、天秤のビーム30と、天秤ベース40とを備えている。
ビーム30は、図3の平面図に示すように、概略、T字に似た形状を有し、可動部材10に対向する側(前端)のT字の横棒に相当する部分には、可動部材10が固定される可動部材固定面31と、スペーサ71、71を介して支点バネ61、62の上端が固定される第1支点バネ取付面32、32とが設けられている。
【0013】
可動部材10を通じて被測定荷重が伝達される可動部材固定面31の位置が、ビーム30の力点位置となり、第1支点バネ取付面32、32にスペーサ71、71を介して取り付けた支点バネ61、62の位置が支点位置となるため、可動部材固定面31は、第1支点バネ取付面32、32よりも可動部材10に近付くように、突出して設けられている。
また、可動部材固定面31は、T字の中心位置にあり、第1支点バネ取付面32、32は、可動部材固定面31の両側に分かれて設けられている。
ビーム30の後端側には、電磁力を発生するためのコイル33が取り付けられている。
【0014】
金属ブロックを刳り抜いて形成された天秤ベース40は、図4の平面図に示すように、中央にスペースを有しており、ここに、図1及び図2に示すように、永久磁石を収容した電磁部80が保持され、ビーム30のコイル33もこの中に収容される。
天秤ベース40の両脇には、偏値誤差を調整するための偏値誤差調整部41が設けられている。偏値誤差は、ネジ42を回して調整する。偏値誤差調整部41の基部に設けられたネジ孔45には、バネ片を介してロバーバル機構21、22を固定するネジ44が螺着される。
天秤ベース40の可動部材10側の面には、スペーサ72を介して、支点バネ61、62の他端を取り付ける第2支点バネ取付面43が設けられている。
【0015】
この電子天秤は、天秤ベース40に取り付けた電磁部80にビーム30のコイル33を収容し、ビーム30の第1支点バネ取付面32、32、及び、天秤ベース40の第2支点バネ取付面43に、スペーサ71、72を介して支点バネ61、62を固定し、可動部材10をビーム30の可動部材固定面31に結合し、ロバーバル機構21、22の一端を天秤ベース40の偏値誤差調整部41の基部に固定し、他端を可動部材10に固定して組み立てる。
【0016】
この電子天秤では、ビーム30が左右対称の形状を有し、また、可動部材固定面31、第1支点バネ取付面32及び第2支点バネ取付面43がビーム30の対称面に対して左右対称である。そして、可動部材10は、可動部材固定面31の中央(対称面の位置)に固定され、支点バネ61、62が、対称面に対して左右対称で、且つ、対称面に平行となるように第1支点バネ取付面32及び第2支点バネ取付面43に固定される。
こうした構造により、支点バネのねじれや歪みを無くすことができる。
【0017】
また、この組立てに当たって、スペーサ71、72は、所望の秤量が得られる厚さのものを選択する。また、第1支点バネ取付面32及び第2支点バネ取付面43に固定した支点バネ61、62が鉛直線上に位置するように、第1支点バネ取付面32及び第2支点バネ取付面43のそれぞれに固定するスペーサ71、72の厚さを選択する。そうすることで支点バネのねじれや歪みを無くすことができる。
【0018】
図2に示すように、この電子天秤の支点位置はAであり、被測定荷重が伝達される力点位置はBである。また、電磁力が作用する位置はCである。スペーサを入れない場合は、支点位置がA’であり、支点位置がA’からAに変わることで秤量が拡大できる。
また、図5及び図6には、図1、図2と異なる厚さのスペーサ73、74を選択した場合を示している。
このように、スペーサの厚さを変えるだけで秤量を任意に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の電子天秤は、部品の共通化を図ることで、高い精度の製品を低コストで製造し、提供することができるため、製造工場や、物流施設、輸送施設、研究施設などで幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 可動部材
11 皿受棒
21 ロバーバル機構
22 ロバーバル機構
30 ビーム
31 可動部材固定面
32 第1支点バネ取付面
33 コイル
40 天秤ベース
41 偏値誤差調整部
42 ネジ
43 第2支点バネ取付面
44 ネジ
45 ネジ孔
61 支点バネ
62 支点バネ
71 スペーサ
72 スペーサ
73 スペーサ
74 スペーサ
80 電磁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定荷重が伝達されて可動する可動部材と、
前記可動部材に連結されて該可動部材の可動方向を上下方向に制限するロバーバル機構と、
前記可動部材に対向する前端側に該可動部材が固定される可動部材固定面と支点バネの一端が取り付けられる第1支点バネ取付面とを有し、後端側に電磁力発生用のコイルを有するビームと、
前記支点バネの他端が取り付けられる第2支点バネ取付面を前端側に有し、後端側で前記ビームのコイルが組み込まれる電磁力発生機構を保持する天秤ベースと、
を備える電子天秤であって、
前記可動部材固定面が、前記第1支点バネ取付面より前記可動部材に近接して設けられており、
前記支点バネが、厚さの異なる複数種類のスペーサの中から選択されたスペーサを介して前記第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面に固定されることを特徴とする電子天秤。
【請求項2】
請求項1に記載の電子天秤であって、前記ビームの前記第1支点バネ取付面が、前記可動部材固定面によって分離された、同一面上にある二つの等しい形状の取付面から成り、それぞれの前記取付面に一つずつの前記支点バネが固定されることを特徴とする電子天秤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子天秤であって、前記支点バネが鉛直線上に位置するように前記スペーサの厚さが選択され、選択されたスペーサを介して、前記支点バネが前記第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面に鉛直線上に固定されることを特徴とする電子天秤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電子天秤であって、前記ビームが左右対称の形状を有し、前記可動部材固定面、第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面が前記ビームの対称面に対して左右対称であり、前記可動部材が、前記可動部材固定面の前記対称面の位置に固定され、前記支点バネが、前記対称面に対して左右対称で、且つ、前記対称面に平行となるように前記第1支点バネ取付面及び第2支点バネ取付面に固定されることを特徴とする電子天秤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11487(P2013−11487A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143375(P2011−143375)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(390041346)新光電子株式会社 (38)