説明

電子式指示計器

【課題】電子式指示計器の主流である、安価なセグメントタイプの液晶や7セグメントのLEDであっても、使用者にわかり易く誤結線を伝える。
【解決手段】電路から入力された電流、電圧から各種計測値を演算する計測演算部と、この計測演算部で演算した計測値を表示する表示部とを備え、上記計測演算部には、上記電流、電圧より位相角を演算する位相角演算部を、上記表示部には、上記計測値を表示する計測値表示モードと、上記位相角演算部に基づく誤結線表示モードを切り替えることができる表示モード切替部を、それぞれ具設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三相交流回路の電圧と電流を計測し、電圧・電流・電力・無効電力・力率・周波数・電力量などの電気量を演算し表示する電子式指示計器に関し、詳しくは、計測回路の誤接続の判別に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気量を演算し表示するには、一般に、電路に配設した変流器や変圧器からの入力を該計器に取り込むことになるが、その際、その接続が不適切、いわゆる誤接続をしてしまうと、言うまでもなく、適正な表示が得られないことになる。そこで、各測定電圧および電流の基本波からベクトルを演算し、その結果を表示することで、誤結線がどの電流検出センサで生じているかを知らしめることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−258484号公報(第5頁右欄第22行〜第6頁左欄第7行、図4〜図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の測定器では、ベクトル図を表示するためのドットマトリックスタイプの液晶表示パネルやプラズマディスプレイなどが必要となり、コストアップを招いてしまうのはもとより、このベクトル図表示では、大きさ・角度を異とする複数のベクトルを一画面に表示しようとするため、煩雑で分かり難いということが予想される。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、電子式指示計器の主流である、安価なセグメントタイプの液晶や7セグメントのLEDであっても、使用者にわかり易く誤結線を伝えることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電子式指示計器は、電路から入力された電流、電圧から各種計測値を演算する計測演算部と、この計測演算部で演算した計測値を表示する表示部とを備え、上記計測演算部には、上記電流、電圧より位相角を演算する位相角演算部が具設されているとともに、上記表示部には、上記計測値を表示する計測値表示モードと、上記位相角演算部に基づく誤結線表示モードを切り替えることができる表示モード切替部が具設されたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は以上説明したように、電路配設にあたり、誤結線を未然に防止することができる安価な電子式指示計器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1を示す電子式指示計器の正面図である。
【図2】図1における構成を示すブロック図である。
【図3】三相3線における正常結線図である。
【図4】図3におけるベクトル図である。
【図5】各接続パターンでの誤結線表示モードの内容を示す表である。
【図6】この発明の実施の形態2を示す電子式指示計器の構成を示すブロック図である。
【図7】処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1および図2はこの発明の実施の形態1における電子式指示計器の正面図、および構成を示すブロック図である。なお、図1は、計測値表示モードにおける表示を(a)で、誤結線表示モードにおける表示を(b)で、それぞれ示している。また、図3は三相3線における正常結線図、図4は正常結線時のベクトル図、図5は図1(b)における各接続パターンでの表示を示す表である。
【0010】
図2において、電子式指示計器(以下、計器と略す)100は、大別すると、電路99から入力された電流・電圧に基づいて各種演算を行なう計測演算部51、およびその計測値を表示する表示部52で構成されている。ここで、表示部52には、表示モード切替部21(図1も参照)が備えられており、この表示モード切替部21を操作することで、表示部52は後述する「計測値表示モード」、もしくは「誤結線表示モード」のいずれかを表示することになる。
【0011】
2つの表示モードのうち、「計測値表示モード」は周知である。すなわち、図1(a)に示すように、上述した電路99から入力された電流、電圧に基づいて、「電流値」、「電圧値」、および「電力値」が表示される。なお、このときの表示が正常結線、すなわち、図3に示すように、電路99の1相に配設した変流器91が計器100の1S・1L端子に、3相に配設した変流器92が3S・3L端子に、1相と2相の間に配設した変圧器93がP1・P2端子に、2相と3相の間に配設した変圧器94がP2・P3端子に、それぞれ接続され、さらに力率1および平衡の状態下であれば、V12とV32間、I1とI3間、V12とI1間、の位相差は図4からも明らかなように、それぞれ「60」、「120」、「30」となる。
【0012】
これら「60、120、30」が本発明のポイントとなる。すなわち、再び図2に戻り、計測演算部51は、前述した計測値表示モードを実行するために、電路99から入力された電流を検出する電流検出部11、同様に電圧を検出する電圧検出部12、検出された電流・電圧から各種計測値を演算する計測値演算部13に加え、検出した電流・電圧から位相角を演算する位相角演算部14より構成されることになる。
【0013】
ここで、再度、「60、120、30」に着目すると、図3で示した三相3線での接続パターンは、変流器91・92および変圧器93・94の数より、(図3で示した正常接続とあわせ)48個に達することがわかる。具体的には、
・変圧器の結線を間違えたケース
・変流器の結線のうち、1相と3相を間違えたケース
・変流器の結線のうち、その向きを間違えたケース
の3つのケースをそれぞれ組み合わせた図5のように示すことができる。このとき、この図5から明らかなように、これら48個の接続での、上述した「V12とV32間の位相差、I1とI3間の位相差、V12とI1間の位相差」は、正常接続である「パターン1」を除いて、いずれも「60、120、30」ではないことがわかる。
【0014】
つまり、表示部52に表示モード切替部21を備え、これを操作することで、表示部52を「誤結線表示モード」、すなわち、V12−V32位相角表示部22a、I1−I3位相角表示部22b、V12−I1位相角表示部22cより成る三相表示部22を図1(b)のように表示させ、「60、120、30」を表示するか否かで、その接続が正常かどうかを簡単に知り得ることが可能となる。しかも、図5で示した表と照らし合わせることで、どの箇所が誤結線であるかも直ちにわかるため、修復に要する時間を短縮できるという波及効果も期待できる。
実施の形態2.
【0015】
前述した修復は、計器を例えば盤に設置する際に起きることが予想されるが、その盤が三相3線であっても、正常接続か否かを判断するために用意した負荷が単相、すなわち単相負荷にて試験を実施するケースも大いに考えられる。この実施の形態2は、単相負荷であっても、正常かどうかが判定できるものである。なお、図6は、この発明の実施の形態2における図2相当図、図7は処理手順を示すフローチャートである。
【0016】
図6からも明らかなように、この実施の形態2では、前述した実施の形態1に対し、計測演算部51に入力相判別部15が、表示部52に1相側表示部23、3相側表示部24、および相表示自動切替部25が、それぞれ付加されている。このうち、1相(3相)側表示部23(24)は、V12(V32)表示部23a(24a)、I1(I3)表示部23b(24b)、W1(W3)表示部23c(24c)より形成されている。
【0017】
まず始めに、三相負荷にて試験を実施するケースを図7に基づき説明する。表示モード切替部21を操作することで、計測値表示モードから誤結線表示モードに切り替える(ステップ101)。すると、入力相判別部15にて、1相と3相の両方に電流入力が有るか否かを判断する(ステップ102)。この場合、三相負荷であるため、相表示自動切替部25にて三相表示部22を表示するよう指示する。以下、この表示された位相角の値で正常接続か否かを判断するのは、実施の形態1で述べた通りである。
【0018】
次に、単相負荷にて試験を実施するケースでは、前述したステップ102で「N」となるため、最初に1相に電流入力が有るか否かを判断する(ステップ103)。1相に電流があれば、続いて1相の電力W1が有るか否かを判断(ステップ104)し、W1があれば、すなわち、1相については、電流、電圧とも正常に接続されていると見做し、(a)に示すような1相側表示部23を表示部52に表示させる。なお、ここで、3相に単相負荷を接続していた場合には、ステップ103からステップ105に移り、1相の場合と同様に、この3相の電力W3が有るか否かを判断(ステップ106)し、W3があれば、やはり(a)に示すような3相側表示部24を表示部52に表示させる。つまり、1相もしくは3相のどちらに単相負荷が接続されたかを判断し、その接続された側の相の電圧、電流、および電力を順に表示させることで、正常接続を確認することができる。
【0019】
一方で、誤接続があった場合は、以下のように表示させる。すなわち、ステップ104でW1がなければ、この場合、変流器91との接続は問題ないが、変圧器93との接続に異常、具体的には、変圧器93と94が入れ替わっていることが考えられ、まずは、(b)に示すような1相側表示部23を表示部52に表示させる。このとき、この表示は、言うまでもなくステップ104における「Y」が前提となるが、この「Y」では、ただちに、3相側の計測も行ない、やはり(b)に示すような3相側表示部24を表示部52に表示させる(このケースでは、変圧器93からの電圧入力が3相側に入力されている)。こうして、これら1相側表示部23と3相側表示部24を表示部52にサイクリック表示させることで、この「サイクリック」でもって、誤接続であることを知り得ることになる。
【0020】
上述した誤接続の判断は、1相側に単相負荷を先に接続した場合を述べたが、3相側が先であっても同様である。また、ステップ105に達した際(つまり1相側に電流入力が無い)、3相側にも電流入力が無い場合では、(c)に示すようなnon表示部26を表示部52に表示させることで、何らの負荷も接続されていないことを知らせる。なお、一度、誤結線表示モードに切り替えれば、負荷の接続、あるいは修正に応じて、表示部52の表示内容が自動的に切り替わる(例えば、non表示部26から1相側表示部23)ので、確認作業をスムーズに行うことができる。
【0021】
この実施の形態2では、「サイクリック表示」や「non表示」により、誤接続や接続無を知らしめるようにしたが、例えば、電流が逆入力された場合などでは、(d)に示すような1相側表示部23を表示部25に表示させる、すなわち、表示に「マイナス」を付加することで、作業者はこの時点で、ただちに逆入力を修正することが可能である。
【0022】
14 位相角演算部、15 入力相判別部、21 表示モード切替部、
22 三相表示部、23 1相側表示部、24 3相側表示部、
25 相表示自動切替部、51 計測演算部、52 表示部、
99 電路、100 電子式指示計器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路から入力された電流、電圧から各種計測値を演算する計測演算部と、この計測演算部で演算した計測値を表示する表示部とを備え、上記計測演算部には、上記電流、電圧より位相角を演算する位相角演算部が具設されているとともに、上記表示部には、上記計測値を表示する計測値表示モードと、上記位相角演算部に基づく誤結線表示モードを切り替えることができる表示モード切替部が具設されたことを特徴とする電子式指示計器。
【請求項2】
上記計測演算部に入力相判別部を、上記表示部に相表示自動切替部を、それぞれ付加したことを特徴とする請求項1に記載の電子式指示計器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−122907(P2011−122907A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280069(P2009−280069)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】