説明

電子式歩数計

【課題】 使用者の歩行動作では歩数がカウントされ、且つ使用者の歩行以外の動作では歩数がカウントされないようにする電子式歩数計を提供すること。
【解決手段】 電子式歩数計50は、時計ケース2と、時計ケース2内に収納された信号処理部10と、水平状態を保持して収納された加速度センサ17と傾斜センサ18を有する。信号処理部10は、傾斜センサ18が水平信号を出力した場合には、傾斜センサ18がその後に傾斜信号を出力したときまでの水平時間に発生した加速度信号が真の歩行信号か否かを判定し、真の歩行信号であると判定したときには歩行加算し、真の歩行信号でないと判定したときには歩行加算しないように信号処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行センサとして加速度センサを備えた電子式歩数計であって、ベルトによって使用者の腕に装着される電子式歩数計に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−309693号公報(特許文献1)に開示されている電子式歩数計は、使用者の歩行を検出して歩行に対応する歩行信号を出力する歩行センサとしての加速度センサと、前記歩行信号に基づいて前記使用者の歩数を算出する歩数算出手段と、前記加速度センサを前記使用者の手首に装着するためのベルトを有し、前記加速度センサを前記ベルトによって前記使用者の手首に装着して使用する電子式歩数計において、前記加速度センサを、その感度軸が前記ベルトの長手方向に対して所定角度範囲内に位置するようにして、電子式歩数計ケース内に配設したことを特徴とするものである。そして、前記所定角度範囲内とは、前記加速度センサの感度軸が前記ベルトの長手方向に対して90度から反時計回りに30度以内の範囲、又は、前記ベルトの長手方向に対して90度から時計周りに30度以内である。
【0003】
上述の従来の電子式歩数計は、使用者が普通に歩いたり、走ったりする場合には勿論のこと、腕を振らないで行う歩行も検出できるという特長を有する。
【0004】
しかしながら、上述の従来の電子式歩数計に限らず、歩行センサとして加速度センサを備えた電子式歩数計は、使用者が歩行しないで腕だけ動かした場合に偽の歩数をカウントするという問題がある。このような場合とは、パソコン作業などのデスクワークに従事している場合や、書物の頁を手でめくる場合などである。
【0005】
即ち、加速度センサを備えた電子式歩数計を装着した使用者がパソコン作業などのデスクワークに従事している場合には、加速度センサは手首の振動を検出して加速度信号を出力する。すると、電子式歩数計は前記加速度信号を歩数としてカウントしてしまうということになる。つまり、加速度センサを備えた電子式歩数計においては、使用者の歩行以外の動作でも、電子式歩数計が加速度信号を出力すると歩数がカウントされ、実際の歩数よりも多い歩数を記録し表示するという問題がある。
【特許文献1】特開2005−309693号公報
【特許文献2】特開2001−110292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、加速度センサを備えた電子式歩数計において、使用者の歩行以外の動作で発生した加速度信号を歩数にカウントしないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、電子式歩数計は、歩行時には傾斜しており、且つ歩行以外の時には概ね水平状態に保持されていることに着目した。
【0008】
そして、上記課題を解決するために、本発明の電子式歩数計は、使用者の加速度を伴う動作に対応して加速度信号を発生する加速度センサと、水平度合いを判別する傾斜センサと、前記加速度センサと前記傾斜センサから前記使用者の歩数を演算する信号処理部と、前記信号処理部を内蔵し且つ前記加速度センサと前記傾斜センサを保持して収納するケースと、前記ケースを前記使用者の手首に装着するためのベルトと、を有し、前記傾斜センサから傾斜信号が出力された場合には、前記信号処理部は前記加速度信号を歩行信号として歩数カウントすることを特徴とする。そして、前記傾斜センサから水平信号が出力された場合には、前記信号処理部は前記加速度信号を歩行信号として歩数カウントしないようにしても良い。
前記傾斜センサは、任意に選択した少なくとも一方向に傾いたことを示す方向性傾斜信号を出力し、前記信号処理部は、前記傾斜センサが前記方向性傾斜信号を出力した場合、前記方向性傾斜信号を前記傾斜信号としてもよい。たとえば、電子歩数計の12時方向と3時方向を傾斜センサの傾斜を検知する方向とする場合、電子歩数計が12時方向か3時方向のいずれか1つの方向に傾斜したと検知したときには、信号処理部が、この方向性傾斜信号を傾斜信号として認識するようにする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、前記信号処理部は、前記傾斜センサが水平信号を出力したときには前記加速度センサの加速度信号を歩数としてのカウントを一時停止し且つ加速度信号のカウントを行う水平時カウント処理を行うようにした。そして、前記水平時カウント処理はその後に前記傾斜センサが傾斜信号を出力したときに解除され、歩数カウントに移行させるようにすると共に、前記水平時カウント処理においてカウントした水平時カウント値を評価し、真の歩行による加速度信号の積算値であると判定した場合には、前記水平時カウント値を歩数カウントに加算するようにした。
前記水平時カウント値の評価は、水平時カウント時間の直前の歩数カウント値若しくは直後の歩数カウント値、又は直前直後の歩数カウント値と前記水平時カウント値を比較して行うようにしてもよい。また、前記水平時カウント値の評価は、前記水平時カウント時間の直前の歩数ピッチ若しくは直後の歩数ピッチ、又は直前直後の歩数ピッチと前記水平時カウント値の単位時間当たりの水平時カウント値を比較して行うようにしもよい。そして、前記水平時カウント値の評価は、予め設定されている歩行ピッチと前記水平時カウント値の分単位当たりの水平時カウント値を比較して行うようにしもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、電子式歩数計は、これを装着バンドで手首に装着した使用者の歩行動作で生じる加速度信号を歩数カウントするが、歩行以外の行動で生じる加速度信号のカウントを阻止するので、正確な歩数が記録できるようになった。
また、本発明に係る電子式歩数計は、追加される部品は傾斜センサだけであり、且つ信号処理プログラムの変更は追加的なものであるから、実施のための大幅なコストアップを抑えることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る電子式歩数計は、電子式歩数計が傾斜状態にあるか否かを検出する傾斜センサを配置し、前記傾斜センサが水平信号を出力したときには、加速度センサの加速度信号を歩数としてカウントしないようにした。そして、前記傾斜センサが傾斜信号を出力したときには、歩数カウントに移行させるようにしたものである。
【実施例1】
【0012】
本発明の一実施例の電子式歩数計50は、主要部の平面図である図1と、且つ使用者の腕3に装着された状態で示した主要部の断面図である図2、及びブロック回路図の図4に示す如く、電子時計に歩数計機能を付加して構成されたものであって、時計本体1に時計バンド4が取り付けられた電子式歩数計である。
【0013】
時計本体1は、時計ケース2と、時計ケース2内に収納された信号処理部10と加速度センサ17と傾斜センサ18を有する。加速度センサ17は、使用者の歩行に伴う腕の振りや歩行時に腕に加わる振動を、加速度の変化として捕らえる。傾斜センサ18は、あらかじめ設定した角度に電子歩数計50が傾斜したときに、傾斜したことを示す傾斜信号を出力する。時計ケース2には、その開口部に液晶表示パネル5が取り付けられ、その側面には設定スイッチ14と機能スイッチ15が取り付けられている。加速度センサ17と傾斜センサ18は、時計ケース2内に水平状態を保持して収納されている。時計ケース2の12時側と6時側には、腕3に電子歩数計50を装着するためのバンド4を取り付ける。
【0014】
時計ケース2内に収納された信号処理部10は、図4に示す如く、制御部11、水晶発振器の発振周波数を分周し時刻を計時する計時部12、制御プログラムやデータを記憶する記憶部13、時刻等を設定する設定スイッチ14、時刻モードや歩数計測モードなどの切換などを行う機能スイッチ15、及び時刻や歩数などを表示する表示部16で構成されている。液晶表示パネル5は、表示部16の一部を構成するものである。
【0015】
上述の如く構成された本発明の実施例1の電子式歩数計は、図5に示す如き処理の流れに従って動作する。
【0016】
制御部11は、先ず、電子式歩数計が歩数計測モードか否かを判定する(101)。ステップ101で、歩数計測モードであると判定されると、制御部11は加速度センサ17からの加速度信号の入力の有無を検出する(102)。ステップ102で加速度信号の入力を検出すると、制御部11は電子式歩数計が傾斜状態にあるか否かを傾斜センサ18の出力信号に基づいて判定する(103)。傾斜センサ18が傾斜信号を出力している場合は、制御部11は前記加速度信号を歩数信号として歩数カウントを行い(104)、最初のステップ102に戻る。
【0017】
ステップ103において、傾斜センサ18が水平信号を出力した場合には、制御部11は前記加速度信号の歩数カウントの停止を行う(105)。その後に制御部11が傾斜センサ18の傾斜信号を出力したことを検出したとき(106)、前記歩数カウントの停止は終了し、処理の流れは最初のステップ102に戻る。
【0018】
例えば、加速度センサ17の加速度信号、及び傾斜センサ18の傾斜信号と水平信号の出力波形が図7に示す如きものであった場合、実施例1の電子式歩数計は時刻T1において歩数カウントを停止し(105)、時刻T2時刻において傾斜信号が検出され(106)、歩数カウントの停止が終了することになる。
【実施例2】
【0019】
本発明の実施例2の電子式歩数計は、主要部の平面図である図1と、使用者の腕3に装着された状態で示した主要部の断面図である図2、及びブロック回路図の図4に示す如く、電子時計に歩数計測機能を付加して構成されたものであって、時計本体1に時計バンド2が取り付けられた歩数計測機能付電子時計である。
【0020】
時計本体1は、時計ケース2と、時計ケース2内に収納された信号処理部10と加速度センサ17と傾斜センサ18を有する。加速度センサ17は、使用者の歩行に伴う腕の振りや歩行時に腕に加わる振動を、加速度の変化として捕らえる。傾斜センサ18は、あらかじめ設定した角度に電子歩数計50が傾斜したときに、傾斜したことを示す傾斜信号を出力する。時計ケース2には、その開口部に液晶表示パネル5が取り付けられ、その側面には設定スイッチ14と機能スイッチ15が取り付けられている。加速度センサ17と傾斜センサ18は、時計ケース2内に水平状態を保持して収納されている。時計ケース2の12時側と6時側には、腕3に電子歩数計50を装着するためのバンド4を取り付ける。
【0021】
時計ケース2内に収納された信号処理部10は、図4に示す如く、制御部11、水晶発振器の発振周波数を分周し時刻を計時する計時部12、制御プログラムやデータを記憶する記憶部13、時刻等を設定する設定スイッチ14、時刻モードや歩数計測モードなどの切換などを行う機能スイッチ15、及び時刻や歩数などを表示する表示部16で構成されている。液晶表示パネル5は、表示部16の一部を構成するものである。
【0022】
上述の如く構成された本発明の実施例2の電子式歩数計は、図6に示す如き処理の流れに従って動作する。
【0023】
制御部11は、先ず、電子式歩数計が歩数計測モードか否かを判定する(201)。ステップ201で、歩数計測モードであると判定されると、制御部11は加速度センサ17からの加速度信号の入力の有無を検出する(202)。ステップ102で加速度信号の入力を検出すると、制御部11は電子式歩数計が傾斜状態にあるか否かを傾斜センサ18の出力信号に基づいて判定する(203)。傾斜センサ18が傾斜信号を出力している場合は、制御部11は前記加速度信号を歩数信号として歩数カウントを行い(204)、最初のステップ202に戻る。
【0024】
ステップ203において、傾斜センサ18が水平信号を出力した場合には、制御部11は以下のステップ205からステップ210まで流れに沿った水平時カウント処理を行う。すなわち、制御部11は前記水平信号を検出すると、その時点までの歩数累計値を記憶部13に記憶し(205)、その時点から前記加速度信号の水平時カウントを行う(206)。その後に傾斜センサ18が傾斜信号を出力したことを検出すると(207)、制御部11は前記水平時カウントを終了し、水平時カウント時間内にカウントされた加速度信号の積算値である水平時カウント値を記憶部13に記憶し(208)、通常の歩数カウントに移行させる(209)。前記通常の歩数カウントは、ステップ205において記憶部13に記憶された歩数累計値に、ステップ209の時点以降の加速度信号による歩数をカウントするものである。
【0025】
ステップ209に続いて、制御部11は所定時間経過したか否かを判定し(210)、判定結果がYESならば、前記水平時カウント値を歩数カウント値に加算するか否かの判定処理を行う(211)。ステップ211の判定結果がYESならば、即ち、真の歩行による加速度信号の積算値であると判定した場合には、前記水平時カウント値は歩数カウント値に加算され、ステップ202に戻る。逆に、ステップ211の判定結果がNOならば、真の歩行による加速度信号の積算値ではなく、偽の加速度信号の積算値であるので、歩数カウント値に加算されないで、ステップ202に戻る。なお、前記所定時間は任意に決定されるが、例えば5分間でよい。
【0026】
ステップ211の判定処理、即ち水平時カウント値を歩数カウント値に加算するか否か、換言すれば、水平時カウント値は真の歩行による加速度信号の積算値であるか否かの判定処理は、次のようにして行われる。
【0027】
第1の具体的な処理方法は、比較用歩数カウント値と水平時カウント値を比較し、両者に顕著な差がない場合には、真の歩行による加速度信号の積算値であると判定する方法である。前記比較用歩数カウント値は、例えば、水平時カウント処理時間間隔と同じ時間間隔の歩数カウント値であって、水平時カウント処理の直前の歩数カウント値である。或いは、ステップ209の所定時間を水平時カウント処理時間間隔と同じか、又はそれ以上の時間とした場合は、前記比較用歩数カウント値は、水平時カウント処理時間間隔と同じ時間間隔の歩数カウント値であって、水平時カウント処理の直後の歩数カウント値である。更に、前記比較用歩数カウント値は水平時カウント処理の直前の歩数カウント値と水平時カウント処理の直後の歩数カウント値の両方としてもよい。
【0028】
第2の具体的な処理方法は、比較用歩数ピッチと分単位当たりの平均水平時カウント値とを比較し、両者に顕著な差がない場合には真の歩行による加速度信号の積算値であると判定する方法である。前記比較用歩数ピッチは、水平時カウント処理の直前の歩数ピッチ、若しくは水平時カウント処理の直後の歩数ピッチ、又は、水平時カウント処理の前の歩数ピッチと水平時カウント処理の後の歩数ピッチの両方である。単位時間当たりの平均水平時カウント値は、ステップ208で記憶された加速度信号積算値を、水平時カウント処理時間で除算して得た値である。また、前記歩数ピッチは記憶部13に記憶されている歩数ピッチ算出プログラムに従って制御部11が演算処理して得られるものである。
【0029】
更に、第3の具体的な処理方法は、比較用歩数ピッチと分単位当たりの平均水平時カウント値を比較し、両者に顕著な差がない場合には真の歩行による加速度信号の積算値であると判定する方法であって、前記比較用歩数ピッチを予め設定された標準的な歩数ピッチとしたものである。そして、標準的な歩数ピッチは、予め記憶部13に記憶されているものである。又は、使用者に特有の最小歩行ピッチを設定スイッチ14によって設定し、予め記憶部13に記憶するようにしてもよい。
【0030】
歩行中に使用者が歩数や時刻を確認するために腕を曲げて電子式歩数計を水平状態に置いた場合、分単位当たりの平均水平時カウント値は、使用者の分単位当たりの歩行ピッチと顕著な差があるから、ステップ211の判定結果はNO、即ち、水平時カウント値は歩行により以外の使用者の動作によって発生した加速度信号の積算値であって、真の歩行による加速度信号の積算値ではないとの判定となる。ステップ211において、真の歩行による加速度信号の積算値ではないとの判定、換言すれば、偽の歩行信号であるとの判定がなされると、直ちに最初のステップ202に戻るので、この場合の水平時カウント値は歩行カウントに決して加算されることはない。
なお、使用者の最小歩行ピッチの60〜80歩/分として、この値を下回る値を検出したときは、最小歩行ピッチに達していないので、歩行状態でないと判断するようにしてもよい。
【0031】
また、歩行中に使用者が歩数や時刻を確認するために腕を曲げて電子式歩数計を水平状態に置いた場合には、分単位当たりの平均水平時カウント値は使用者の歩行ピッチと殆ど変わらない。従って、平均水平時カウント値と比較用歩数ピッチの間には顕著な差が見られないから、ステップ211の判定結果はYES、即ち、真の歩行による加速度信号の積算値であるとの判定となり、前記水平時カウント値は歩数カウント値に加算され(212)、ステップ202に戻る。
【0032】
例えば、加速度センサ17の加速度信号、及び傾斜センサ18の傾斜信号と水平信号の出力波形が図7に示す如きものであった場合、実施例2の電子式歩数計は時刻T1において歩数カウントを停止し、その時点までの歩数累計値を記憶部13に記憶し(205)、その時点から前記加速度信号の水平時カウントを行う(206)。時刻T2において傾斜センサ18が傾斜信号を出力したことを検出し(207)、制御部11は前記水平時カウントを終了し、水平時カウント時間t1内にカウントされた加速度信号の積算値である水平時カウント値を記憶部13に記憶し(208)、通常の歩数カウントに移行させる(209)。
【0033】
そして、水平時カウント時間t1内にカウントされた加速度信号の積算値である水平時カウント値が真の歩行信号か否かの評価は、時刻T1より前の時間t1内にカウントされた加速度信号、時刻T2より後の時間t3内にカウントされた加速度信号を利用して、上述の第1から第3の具体的な処理方法に従って行われることになる。図7において、水平時カウント時間t1内に発生した加速度信号は歩行時の加速度信号と同じ周期性を有するので、上記水平時カウント値は真の歩行信号と判定され、歩数加算される(212)ことになる。
【0034】
上述の如く、本発明に係る電子式歩数計は、歩行以外の使用者の動作によって加速度信号が発生した場合だけでなく、歩行中に使用者が歩数や時刻を確認するために腕を曲げて電子式歩数計を水平状態に置いた場合にも、正確な歩数が計数できるのである。要するに、本発明に係る電子式歩数計は、使用者の歩行以外の動作で発生した加速度信号を歩数にカウントしないように構成したものであるからである。
【0035】
ところで、本実施例に採用した傾斜センサ18は、特開2001−110292号公報に開示されている如き傾斜スイッチである。なお、上記公報に開示されている傾斜スイッチは、上面開口の箱型ケースと、このケースの内底面に配置された共通接点と、前記ケースの四方向の内側面に各々配置された固定接点と、前記ケース内に転動可能に収納され前記共通接点や固定接点と接離する導電球と、前記ケース上面の開口部を覆うカバーとからなるものである。しかしながら、傾斜センサ18は、電子式歩数計が所定角度範囲内にあるときは水平信号を出力し、前記所定角度範囲を超えて傾斜したときには傾斜信号を出力するものであれば、どのような構造のものであってもよい。本実施例において、前記所定角度範囲は水平軸に対して30度としたが、常識的に水平状態と認識される角度範囲であればよいことは勿論である。
【0036】
上面開口の箱型ケースの縦横の四方向の内側面に各々配置された4個の固定接点に対応して4個の傾斜信号を出力する構造の傾斜センサ18を用い、12時、3時、6時、9時の方向に前記4個の固定接点を合わせて時計ケース2内に傾斜センサ18を配置すれば、本発明に係る電子式歩数計の傾斜方向を検出できる。因みに、図3(A)は電子式歩数計が水平状態に保持されている場合を、図3(B)電子式歩数計が傾斜状態に保持されている場合をそれぞれ示す。そこで、このような方向性を有する傾斜センサ18を本発明に係る電子式歩数計に用いることによって、特定の方向の傾斜だけを歩行動作とし、それ以外の傾斜を歩行以外の動作によるものとして、加速度センサの加速度信号の処理を行わせるようにすることもできる。
【0037】
一般に、歩行中の腕の振りは、図3(B)に示すような時計ケース2の表面が垂直な状態であるから、傾斜センサ18は水平信号を出力することはない。しかしながら、使用者が歩数や時刻を確認するために腕を曲げて電子式歩数計を水平状態に置いた場合、傾斜センサ18は水平信号を出力することになる。つまり、通常の歩行中に水平信号を出力してしまうのである。水平信号が出力すると、本発明に係る電子式歩数計は上述のステップ206の水平時カウント処理を行うことになる。しかしながら、通常の歩行時の腕振りにより出力される水平信号は、歩行ピッチに対応した周期性のある信号ものである。
【0038】
そこで、傾斜センサ18の水平信号が通常の歩行時に発生する歩行ピッチに対応した周期性のある信号である場合には、上述のステップ206の水平時カウント処理を行わないようにすることもできる。第1の方法は、例えば、縦横4方向において対応する傾斜信号を出力する傾斜センサ18、即ち方向性傾斜信号を出力する傾斜センサ18を採用し、特定の方向の傾斜信号、例えば12時方向の傾斜信号と水平信号が繰り返し発生する場合には当該水平信号を偽の水平信号として処理する方法である。第2の方法は、傾斜信号と水平信号の繰り返し周期を検出し、これと記憶されている歩数ピッチと比較する方法である。第2の方法によれば、傾斜センサ18は、12時方向に傾斜しているか又はそれ以外かを検出することができるものであれば十分である。つまり、12時方向に所定角度範囲だけ傾斜しているときに傾斜信号を出力する傾斜センサ18を用いることができる。12時方向以外に傾斜している場合には、使用者は方向以外の動作を行っていると判定するのである。採用できる傾斜センサ18は、一方向性傾斜センサ、二方向性傾斜センサ、三方向性傾斜センサ、四方向性傾斜センサなど様々である。従って、本発明に係る電子式歩数計において、歩数カウントの一次停止、一次停止時の加速度信号の水平時カウント処理、水平時カウント値の歩行カウントへの加算処理のそれぞれの信号処理は、傾斜センサ18の種類に対応して最適の方法が選ばれることになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1並びに実施例2の電子式歩数計の主要部の平面図である。
【図2】使用者の腕に装着された状態で示した実施例1並びに実施例2の電子式歩数計の主要部の断面図である。
【図3】使用者の腕に装着された状態で示した実施例1並びに実施例2の電子式歩数計の主要部の断面図で、(A)は電子式歩数計が水平状態に保持されている場合を、(B)電子式歩数計が傾斜状態に保持されている場合をそれぞれ示すものである。
【図4】実施例1並びに実施例2の電子式歩数計のブロック回路図である。
【図5】実施例1の電子式歩数計の信号処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例2の電子式歩数計の信号処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る電子式歩数計の加速度センサの加速度信号、及び傾斜センサの傾斜信号と水平信号の出力波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 時計本体
2 時計ケース
3 腕
4 時計バンド
5 液晶表示パネル
10 信号処理部
11 制御部
12 計時部
13 記憶部
14 設定スイッチ
15 機能スイッチ
16 表示部
17 加速度センサ
18 傾斜センサ
50 電子歩数計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の加速度を伴う動作に対応して加速度信号を発生する加速度センサと、
水平度合いを判別する傾斜センサと、
前記加速度センサと前記傾斜センサから前記使用者の歩数を演算する信号処理部と、
前記信号処理部を内蔵し且つ前記加速度センサと前記傾斜センサを保持して収納するケースと、
前記ケースを前記使用者の手首に装着するためのベルトと、を有し、
前記傾斜センサから傾斜信号が出力された場合には、前記信号処理部は前記加速度信号を歩行信号として歩数カウントすることを特徴とする電子式歩数計。
【請求項2】
前記傾斜センサから水平信号が出力された場合には、前記信号処理部は前記加速度信号を歩行信号として歩数カウントしないことを特徴とする請求項1記載の電子式歩数計。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記傾斜センサが水平信号を出力したときには前記加速度センサの加速度信号の歩数カウントを一時停止して加速度信号の水平時カウント処理を行うようにし、その後に前記傾斜センサが傾斜信号を出力したときに前記水平時カウント処理を終了して歩数カウントに移行させると共に、前記水平時カウント処理において得られた水平時カウント値を評価し、真の歩行による加速度信号の積算値であると判定した場合には前記水平時カウント値を歩数カウントに加算するようにしたことを特徴とする請求項1記載の電子式歩数計。
【請求項4】
前記水平時カウント値の評価は、水平時カウント時間の直前の歩数カウント値若しくは直後の歩数カウント値、又は直前直後の歩数カウント値と前記水平時カウント値を比較して行うことを特徴とする請求項3記載の電子式歩数計。
【請求項5】
前記水平時カウント値の評価は、前記水平時カウント時間の直前の歩数ピッチ若しくは直後の歩数ピッチ、又は直前直後の歩数ピッチと前記水平時カウント値の単位時間当たりの水平時カウント値を比較して行うことを特徴とする請求項3記載の電子式歩数計。
【請求項6】
前記水平時カウント値の評価は、予め設定されている歩行ピッチと前記水平時カウント値の分単位当たりの水平時カウント値を比較して行うことを特徴とする請求項3記載の電子式歩数計。
【請求項7】
前記傾斜センサは、任意に選択した少なくとも一方向に傾いたことを示す方向性傾斜信号を出力し、前記信号処理部は、前記傾斜センサが前記方向性傾斜信号を出力した場合、前記方向性傾斜信号を前記傾斜信号とすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載した電子式歩数計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−178303(P2007−178303A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378110(P2005−378110)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】