説明

電子時計

【課題】時計の厚さ寸法や部品数の増加を抑えて良好なアンテナ性能を確保できる電子時計を提供すること。
【解決手段】GPS付き腕時計1は、ケース10と、ケース10の内部に配置されて位置情報衛星からの衛星信号を受信するアンテナ26と、ケース10の内部に配置された受信基板211とを備える。ケース10は、導電性部材で形成された裏蓋12と、裏蓋12と別体または一体に設けられた胴11とを有する。裏蓋12は、受信基板211に搭載された受信回路24を囲む壁部122を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS衛星などの位置情報衛星から送信される衛星信号を受信して現在の日付や時刻を求める電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)衛星などの位置情報衛星から送信される衛星信号(電波)を受信して現在時刻を取得する無線機能を有する電子時計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の電子時計では、表示部の周囲に誘電体基板を伴うC型ループアンテナを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−168656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、腕時計のような小型の電子時計に無線機能を搭載する場合、アンテナの構成としてはできるだけ円形(輪型)のアンテナがスペース上有利である。このようなアンテナを搭載した場合、受信した衛星信号を処理する受信回路はその中心側に配置することが好ましい。
しかしながら、この受信回路における消費電流が多くなると、受信回路で発生する放射ノイズが大きくなり、アンテナでの受信感度が低下するおそれがある。
このため、一般的には、放射ノイズを遮蔽するシールド板で受信回路を囲むことで受信感度の低下を防止することが行われる。しかしながら、シールド板を設けることにより、時計の厚さ寸法が厚くなったり、部品数が増加して組み立て作業が煩雑となるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、時計の厚さ寸法や部品数の増加を抑えて良好なアンテナ性能を確保できる電子時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子時計は、ケースと、前記ケースの内部に配置され、位置情報衛星からの衛星信号を受信するアンテナと、前記ケースの内部に配置された受信基板と、を備え、前記ケースは、導電性部材で形成された裏蓋と、前記裏蓋と別体または一体に設けられた胴とを有し、前記裏蓋は、前記受信基板に搭載された回路を囲む壁部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような発明においては、導電性部材にて形成された裏蓋に、受信基板に搭載された回路、たとえば受信回路や電源回路などのアンテナに対して放射ノイズ源となる回路を囲む壁部を設けている。
裏蓋の壁部によって受信基板の回路の周囲がシールドされるため、回路から発する放射ノイズが遮蔽され、アンテナの受信感度が低下することを防止できる。また、裏蓋がシールド板の機能を備えるため、別途、シールド板を設ける必要がない。このため、当該電子時計の厚さ寸法や部品数の増加を抑えることができる。
ここで、本発明のアンテナは、周方向で連続した環状の他、環の一部が欠けた例えばC字形状のものをも含むものである。また、表示部による表示としては、指針による表示、液晶表示パルや有機EL(Electro Luminescence)表示パネルなどの各種表示パネルによる表示などを含むものである。
【0008】
本発明の電子時計において、前記受信基板に搭載される回路として受信回路を備え、前記裏蓋は、前記受信回路を囲む壁部が設けられていることが好ましい。
受信基板には、アンテナで受信する衛星信号を処理する受信回路が搭載される。この受信回路は、消費電流が多くなると、受信回路で発生する放射ノイズも大きくなり、アンテナでの受信に影響する。
本発明では、受信基板に搭載された受信回路の周囲を、前記裏蓋の壁部でシールドするので、受信回路から発する放射ノイズを遮蔽でき、アンテナの受信感度の低下を防止できる。
【0009】
本発明の電子時計において、前記受信基板に搭載される回路として電源回路を備え、前記裏蓋は、前記電源回路を囲む壁部が設けられていることが好ましい。
受信基板に電源回路が搭載された場合、電源回路はDC/DCコンバーターなどを備え、放射ノイズの発生量も多いため、シールド対策を行うことが好ましい。
本発明では、受信基板に搭載された電源回路の周囲を、前記裏蓋の壁部でシールドするので、電源回路から発する放射ノイズを遮蔽でき、アンテナの受信感度の低下を防止できる。
なお、受信基板に受信回路および電源回路が搭載されている場合、前記壁部は、受信回路および電源回路の両方を囲むように構成することが好ましい。この場合は、受信回路および電源回路で発生する放射ノイズを、前記裏蓋の壁部でシールドできるので、アンテナの受信感度の低下をより効果的に防止できる。
【0010】
本発明の電子時計において、前記受信基板は、前記回路が前記裏蓋に対向する状態で前記ケースの内部に配置され、前記壁部は、先端が前記受信基板に設けられたグランドパターンに当接し、前記受信基板に搭載された回路は、前記受信基板と、前記裏蓋の壁部と、前記裏蓋とで囲まれている
ことが好ましい。
【0011】
このような発明においては、前記裏蓋の壁部の先端を、受信基板に設けられたグランドパターンに当接させているので、受信基板に搭載された回路は、裏蓋および受信基板で囲まれた状態となる。このため、受信基板の回路で発生する放射ノイズを確実に遮蔽できる。特に、裏蓋の壁部の先端が受信基板のグランドパターンに当接されているので、裏蓋もグランド電位に維持でき、放射ノイズを効果的に遮蔽でき、アンテナの受信感度の低下を一層確実に防止できる。
【0012】
本発明の電子時計において、前記ケースは、前記裏蓋と、前記裏蓋と別体の胴とを備えて構成され、前記裏蓋は、前記胴に螺合する環状のねじ部を有したスクリュー式裏蓋であり、前記壁部は、円筒状に形成され、当該壁部の中心位置が前記ねじ部の中心と同じ位置であることが好ましい。
【0013】
このような発明においては、スクリュー式の裏蓋に円筒状の壁部を形成し、この壁部と裏蓋のねじ部とを同心に設けているので、裏蓋を胴に取り付ける際あるいは胴から取り外す際、裏蓋を回転させても壁部の中心が変位しない。このため、胴の中心に放射ノイズ源となる回路を配置すれば、壁部の内側に確実に収容できる。
【0014】
本発明の電子時計において、前記壁部の内側に配置された電池を備えることが好ましい。
裏蓋の壁部の外側に電池を配置する場合、壁部および胴の間のスペースに配置しなければならず、電池のサイズや形状の制約が大きい。一方、本発明においては、裏蓋の壁部の内側に電池を配置しているので、壁部の大きさを適宜設定すれば、前記電池のサイズや形状に制約を生じることなく、時計の内部構成の設計が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電子時計を示す概略図。
【図2】本発明に第一実施形態の電子時計を示す概略断面図。
【図3】本発明の第二実施形態の電子時計を示す概略断面図。
【図4】本発明の第三実施形態の電子時計を示す概略断面図。
【図5】本発明の第四実施形態の電子時計を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
以下、本発明の電子時計に係る第一実施形態のGPS(Global Positioning System)付き腕時計を図面に基づいて説明する。
【0017】
{GPS付き腕時計の構成}
図1に示すように、GPS付き腕時計1は、文字板2および指針3からなる時刻表示部を備える。
指針3は、秒針、分針、時針などを備えて構成され、後述するステップモーターおよび歯車列を含む駆動機構を介して駆動される。
【0018】
そして、GPS付き腕時計1は、地球の上空を所定の軌道で周回している複数の位置情報衛星であるGPS衛星5からの衛星信号を受信して衛星時刻情報を取得し、内部時刻情報を修正できるように構成されている。
なお、GPS衛星5は、本発明における位置情報衛星の一例であり、地球の上空に複数存在している。現在は約30個のGPS衛星5が周回している。
また、GPS付き腕時計1には、外部操作用のリュウズ6、ボタン7,8が設けられている。
【0019】
{GPS付き腕時計の内部構成}
次に、GPS付き腕時計1の内部構成について説明する。
図2に示すように、GPS付き腕時計1は、ケース10と、ケース10内に収容されて指針3を駆動するムーブメント20と、を備えている。
【0020】
ケース10は、リング状の胴11と、この胴11の一方の開口(図2下側)を塞ぐ裏蓋12とを備えている。
胴11および裏蓋12には、BS(真鍮)、SUS(ステンレス鋼)、チタン合金などの金属材料で構成されている。裏蓋12は、詳細は後述するが、胴11に対してねじ構造により接続されるスクリュー式である。
【0021】
ムーブメント20は、指針3による時刻表示と、GPS衛星5からの信号受信を行うためのものであり、時刻表示およびGPS機能を処理する回路素子(ICなど)が実装された回路基板21、指針3を駆動するステップモーターおよび歯車列を含む駆動機構22、これらに電力を供給する電池23を備えている。
回路基板21に実装された回路素子としては、受信回路24と、制御回路25とが含まれている。受信回路24は、GPSアンテナ26によりGPS衛星5から受信した衛星信号を処理する。
【0022】
制御回路25は、駆動機構22を制御するとともに、受信回路24が受信した衛星信号から時刻情報および測位情報のうちの少なくともいずれか一方を生成する。
【0023】
電池23は、一次電池でもよいし、リチウムイオン電池などの二次電池でもよい。二次電池を用いた場合には、ソーラーパネルなどの二次電池を充電する発電機構を組み込むことが好ましい。
【0024】
胴11の開口面11Aには前述した文字板2が配置されている。
文字板2は、BS(真鍮)、SUS(ステンレス鋼)、チタン合金などの金属材料で構成されている。文字板2の表面には、外観性を向上するために、塗装やメッキ、スパッタリングなどによる表面処理が施されている。
前述した指針3は文字板2の表面側(図2上側)に配置され、ムーブメント20は文字板2の背面側(図2下側)に配置される。ムーブメント20においては、文字板2側から裏蓋12側にかけて駆動機構22、回路基板21、電池23の順で層状に配置される。
【0025】
GPS付き腕時計1は、文字板2の外周に沿って配置されてGPS衛星5からの衛星信号を受信するGPSアンテナ26を備えている。
GPSアンテナ26は、ダイヤルリング15で被覆されている。
ダイヤルリング15は、内周が文字板2へと向かう傾斜面(円錐面)とされ、この傾斜面には60分割で指示目盛が印刷されている。
【0026】
ダイヤルリング15の外周にはベゼル13が配置され、ベゼル13の内側には文字板2の表面側および指針3を覆うカバーガラス14が配置されている。
ベゼル13は、外周が胴11の外周に連続するリング状に形成され、互いの対向面に形成された凹凸による嵌め合わせ構造あるいは両面粘着テープや接着剤などの手段によりケース10の胴11に接続されている。
【0027】
GPS付き腕時計1において、ケース10の胴11および裏蓋12は、それぞれ質感の優れた金属材料で形成され、その表面には適宜な表面仕上げが施されている。
ダイヤルリング15およびベゼル13は合成樹脂あるいはセラミックスなどの非導電性材料で形成され、カバーガラス14も非導電性のガラス質材料で形成されている。これらの各要素も質感を考慮した表面仕上げが施されている。
このような材質とすることで、文字板2よりも表面側(図2上側)にあるダイヤルリング15、ベゼル13、カバーガラス14は全て非導電性材料となり、これらが文字板2の表面側外周に設置されたGPSアンテナ26に対して電磁気的な遮蔽物として影響することがない。
【0028】
{GPSアンテナ}
GPSアンテナ26は、矩形断面形状を有するリング状の誘電体基材26Aを備え、その表面にアンテナ電極26Bが形成されている。
誘電体基材26Aに用いられる誘電体材料としては、高いアンテナ性能を重視する場合には高誘電率の誘電体セラミックスを用いることが望ましく、コストダウンを重視する場合には合成樹脂材料を用いることができる。
誘電体基材26Aは、前述した導電体材料の特性を考慮したうえで、使用する電波に応じた所定のアンテナ長が得られる長さとされている。
【0029】
アンテナ電極26Bは、銅などの導電性の金属板を折り曲げて誘電体基材26Aの表面(図2上側)に貼り付けて形成される。なお、アンテナ電極26Bは、誘電体基材26Aの表面に無電解めっきでパターン形成することで形成してもよい。
アンテナ電極26Bは、コネクター27を介して回路基板21の信号端子に電気的に接続されている。
【0030】
回路基板21は、第一基板211と第二基板212とを備える多層基板構成である。これら第一基板211および第二基板212は、コネクター28にて電気的に接続されている。
第一基板211の裏面側(図2下側)には、GPS衛星5からの受信信号を処理する受信回路24が取り付けられている。また、第一基板211には、図示を略すが、DC/DCコンバーターなどの電源回路も取り付けられている。そして、この第一基板211により本発明の受信基板が構成されている。
一方、第二基板212の裏面側には、制御回路25が取り付けられている。
【0031】
本実施形態において、回路基板21(第一基板211、第二基板212)には図示しないグランドパターンが形成されている。グランドパターンは、回路基板21の他の層を連結するスルーホールなどの部分は除去されて絶縁されつつ、なるべく大面積が得られる適宜な形状に形成されている。
【0032】
{裏蓋}
裏蓋12は、外周面にねじ部121を有したスクリュー式裏蓋である。この裏蓋12には、ねじ部121と同心円の円筒状に突設された壁部122を備えている。すなわち、円筒状の壁部122の中心は、ねじ部121の中心と同じ位置に形成されている。
壁部122は、ねじ部121を胴11のねじ部11Bにねじ込んだ状態で、壁部122の先端(上端)が第一基板(受信基板)211のグランドパターンに当接している。そして、受信回路24は、壁部122で囲まれた空間内に配置されている。
【0033】
すなわち、受信回路24は、裏蓋12側の下面および側面が裏蓋12および壁部122で囲まれ、文字板2側が受信基板である第一基板211で囲まれている。このため、受信回路24からノイズが発せられても、ノイズは導電性部材の裏蓋12および第一基板211で遮蔽されて外部に漏れ出ることがない。
また、電池23は、裏蓋12の壁部122と胴11との間に配置されている。
【0034】
裏蓋12および胴11を含むケース10が金属製なので、装着するユーザの腕によるGPSアンテナ26への影響を回避できる。つまり、ケース10がプラスチックケースだと、近傍にある腕の影響を受けて装着時と非装着時でアンテナの共振周波数が変動し、性能差が出て好ましくない。しかし、ケース10が金属製なので、そのシールド効果により腕の影響を回避でき、本実施形態では装着時と非装着時とのアンテナ特性差が殆どなく、安定した受信性能が得られる。
【0035】
{第一実施形態の作用効果}
以上のような第一実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
導電性部材にて形成された裏蓋12に、受信回路24の周囲を囲む壁部122を設けている。
このため、受信回路24から放射ノイズが発せられても、裏蓋12の壁部122にて遮蔽され、GPSアンテナ26の受信感度が低下することを防止できる。
【0036】
さらに、裏蓋12の壁部122の先端を、第一基板211のグランドパターンに当接させているので、受信回路24は裏蓋12および第一基板211にて囲まれた状態となっている。このため、受信回路24からの放射ノイズが確実に遮蔽され、GPSアンテナ26の受信感度が低下することを確実に防止できる。
さらに、裏蓋12は、受信回路24の放射ノイズを遮蔽するシールド板の機能も備えるため、別途、シールド板を設ける必要がない。このため、時計の厚さ寸法や部品数の増加を抑えることができる。
【0037】
裏蓋12の壁部122がねじ部121と同心円となるように設けている。このため、スクリュー式の裏蓋12を胴11に取り付ける際あるいは胴11から取り外す際、裏蓋12を回転させても胴11やムーブメント20に対する壁部122の位置が変化しない。このため、受信回路24を胴11の中心位置に配置し、裏蓋12を取り付ければ、受信回路24を壁部122の内側に確実に配置することができる。
【0038】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る第二実施形態のGPS付き腕時計について説明する。
図3は、本発明に係る第二実施形態のGPS付き腕時計1Aの概略断面図である。なお、上記第一実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を簡略化または省略する。
【0039】
上記第一実施形態では、電池23は、裏蓋12の壁部122の外側に配置していた。これに対し、第二実施形態のGPS付き腕時計1Aでは、電池23も壁部122Aの内周側に配置している。すなわち、第二実施形態では、壁部122Aを第一実施形態よりも外周側に形成し、壁部122Aの内部に電池23を収納できるように構成した。
なお、電池23は、コネクター29により受信基板である第一基板211に電気的に接続されている。また、第一基板211および第二基板212は積層され電気的にも接続されている。そして、制御回路25は、第二基板212の表面側(図3上側)に取り付けられている。
【0040】
この第二実施形態では、前述した第一実施形態と同様な効果を奏することができる他、裏蓋12の壁部122A内に電池23も収容する構成としたので、電池23のサイズや形状の制約が小さくなり、一般的なボタン形状の電池も利用できる。
【0041】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る第三実施形態のGPS付き腕時計について説明する。
図4は、本発明に係る第三実施形態のGPS付き腕時計1Bの概略断面図である。なお、上記各実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を簡略化または省略する。
【0042】
上記第一実施形態では、スクリュー式の裏蓋12を用いていた。これに対し、第三実施形態のGPS付き腕時計1Bは、裏蓋12Bを胴11にねじ止めする構成としている。
具体的には、裏蓋12Bは、外周縁に鍔状に突設され、胴11の下端部(図4下側)にねじ止めされるフランジ部123を有している。この裏蓋12Bの表面(図4上側)には、先端が第一基板211のグランドパターンに当接される壁部122Bが設けられている。この壁部122Bは、スクリュー式の裏蓋のように円筒状でかつねじ部121と同心円に形成する必要がない。このため、電池23との納まりの関係で、受信回路24を胴11の中心から外側にずらして配置した場合でも、この受信回路24を囲むように壁部122Bを形成することができる。
【0043】
この第三実施形態では、前述した第一実施形態と同様に、受信回路24は、裏蓋12B、裏蓋12Bの壁部122B、受信基板である第一基板211で囲まれているので、ノイズを遮蔽できてGPSアンテナ26の受信感度が低下することを防止できる。
さらに、第三実施形態では、裏蓋12Bを胴11にねじ止めする構成としたので、壁部122Bを裏蓋12Bの中心から変位した位置に設けることができる。また、壁部122Bの平面形状も円形に限らず、矩形などにすることもできる。このため、受信回路24の配置位置の自由度が高まり、壁部122Bの平面形状も受信回路24の平面形状に合わせて設計できる。このため、壁部122Bの外側に設けられる電池23の配置スペースを大きくすることもできる。
【0044】
[第四実施形態]
次に、本発明に係る第四実施形態のGPS付き腕時計について説明する。
図5は、本発明に係る第四実施形態のGPS付き腕時計1Cの概略断面図である。なお、上記各実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を簡略化または省略する。
【0045】
前記各実施形態は、胴11および裏蓋12、12Bが別体であったが、第四実施形態のGPS付き腕時計1Cは、胴11Cおよび裏蓋12Cが一体とされたワンピースタイプのケース10Cを用いている。
具体的には、ケース10Cは、円筒状の胴11Cと、胴11Cの軸方向の一端に一体に設けられて胴11Cの一端面を閉塞する裏蓋12Cとを有し、有底円筒状に形成されている。
そして、裏蓋12Cには壁部122Cが設けられている。この壁部122Cの先端の内周縁には、受信基板である第一基板211の外周縁が係合してねじ止めされる段差部が設けられている。壁部122Cは、段差部に係合した第一基板211のグランドパターンと電気的に接続される。
【0046】
この第四実施形態では、前述した第1実施形態と同様に、受信回路24は、裏蓋12C、裏蓋12Cの壁部122C、受信基板である第一基板211で囲まれているので、ノイズを遮蔽でき、GPSアンテナ26の受信感度が低下することを防止できる。特に、受信回路24は裏蓋12Cおよび第一基板211にて囲まれた状態となっているので、受信回路24からの放射ノイズを確実に遮蔽でき、GPSアンテナ26の受信感度が低下することを確実に防止できる。
さらに、第四実施形態では、胴11Cと裏蓋12Cとが一体構造のため、防水性などに優れたGPS付き腕時計1Cを構成できる。
【0047】
[他の実施形態]
なお、本発明は前記各実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、GPS付き腕時計1,1A,1B,1Cは、指針3で時刻を指示するアナログ時計であったが、これに限らず、例えば指針3およびディスプレイを有するコンビネーション時計でもよいし、ディスプレイのみを有するデジタル時計でもよい。さらに、本発明は、腕時計に限らず、懐中時計などの各種時計などに適用してもよい。
【0048】
また、前記各実施形態では、壁部122,122A,122B,122Cを、受信基板である第一基板211のグランドパターンに当接させていたが、必ずしも当接させなくてもよい。ただし、当接させたほうが、シールド効果を高めることができる点で好ましい。
さらに、前記各実施形態では、受信基板である第一基板211に搭載された受信回路24の周囲を、裏蓋12,12B,12Cの壁部122,122A,122B,122Cで囲んでいたが、受信基板に搭載された電源回路を囲む構成としてもよいし、受信回路24および電源回路の両方を囲む構成としてもよい。すなわち、本発明は、受信基板に搭載される回路のうち、アンテナ26に対して放射ノイズ源となる各種回路を、裏蓋12,12B,12Cの壁部122,122A,122B,122Cで囲み、その放射ノイズを遮蔽して、アンテナ26での受信感度の低下を防止できればよい。
【0049】
また、位置情報衛星の例としてGPS衛星5について説明したが、本発明の位置情報衛星としては、GPS衛星5だけではなく、ガリレオ(EU)、GLONASS(ロシア)、北斗(中国)などの他の全地球的航法衛星システム(GNSS)や、SBASなどの静止衛星や準天頂衛星などの時刻情報を含む衛星信号を発信する位置情報衛星でもよい。
また、このような位置情報衛星からの衛星信号の電波受信に限られず、例えば900MHz帯を用いる円偏波の無線タグの近距離無線受信装置としても用いることができる。
さらには、円偏波の受信に限らず、直線偏波の電波を受信するものとしても用いることができる。
【0050】
その他、本発明の実施における具体的な構成および形態などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,1A,1B,1C…GPS付き腕時計(電子時計)、3…指針、10,10C…ケース、11,11C…胴、12,12B,12C…裏蓋、121…ねじ部、122,122A,122B,122C…壁部、20…ムーブメント、21…回路基板、211…第一基板(受信基板)、212…第二基板、23…電池、24…受信回路、25…制御回路、26…GPSアンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースの内部に配置され、位置情報衛星からの衛星信号を受信するアンテナと、
前記ケースの内部に配置された受信基板と、を備え、
前記ケースは、導電性部材で形成された裏蓋と、前記裏蓋と別体または一体に設けられた胴とを有し、
前記裏蓋は、前記受信基板に搭載された回路を囲む壁部が設けられている
ことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子時計において、
前記受信基板に搭載される回路として受信回路を備え、
前記裏蓋は、前記受信回路を囲む壁部が設けられている
ことを特徴とする電子時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子時計において、
前記受信基板に搭載される回路として電源回路を備え、
前記裏蓋は、前記電源回路を囲む壁部が設けられている
ことを特徴とする電子時計。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子時計において、
前記受信基板は、前記回路が前記裏蓋に対向する状態で前記ケースの内部に配置され、
前記壁部は、先端が前記受信基板に設けられたグランドパターンに当接し、
前記受信基板に搭載された回路は、前記受信基板と、前記裏蓋の壁部と、前記裏蓋とで囲まれている
ことを特徴とする電子時計。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の電子時計において、
前記ケースは、前記裏蓋と、前記裏蓋と別体の胴とを備えて構成され、
前記裏蓋は、前記胴に螺合する環状のねじ部を有したスクリュー式裏蓋であり、
前記壁部は、円筒状に形成され、当該壁部の中心位置が前記ねじ部の中心と同じ位置である
ことを特徴とする電子時計。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の電子時計において、
前記壁部の内側に配置された電池を備える
ことを特徴とする電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−50323(P2013−50323A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187085(P2011−187085)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】