説明

電子機器、温度調節プログラムおよび記録媒体

【課題】低温環境下においても筐体内の温度を動作保証温度の範囲内に維持することにより部品を動作させることができ、かつ、小型化と高性能化とを図ることのできる電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係るパネルコンピュータ2は、CPU6と、ハードディスク7と、バッテリー8と、メモリ9とを、筐体6内に備えている。メモリ9は、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9の温度を監視する温度監視部92と、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9のいずれかの温度が所定の下限設定温度以下である場合に、CPU6が演算することによるCPU6からの発熱量を増加させるための暖機演算をCPU6に行わせる暖機演算制御部93とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータ等の電子機器に関し、特に、低温環境下においても使用可能な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、パーソナルコンピュータ等の汎用LSIを使用する電子機器を構成するハードディスク、バッテリー等の部品は、低温での動作が難しいため、その動作保証温度は、0℃以上となっている。しかしながら、電子機器の中でも、例えば、パネルコンピュータをはじめとする産業用コンピュータ(IPC)は、寒冷地の工場内等に設けられる場合、0℃以下の低温環境下で稼働させることがある。
【0003】
この問題を解決するために、電子機器の筐体内にヒーター(抵抗)を設けることで、周囲の環境が0℃以下であっても、筐体内の温度を0℃以上に保温することのできる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
図5は、特許文献1に係る計算機システム200の構成を示すブロック図である。計算機システム200はハードディスク等の内部ユニットとして特定ユニット106a、106b、106c、106dを有し、この特定ユニット106a、106b、106c、106dに隣接して特定ユニット106a、106b、106c、106d近傍の温度を測定する温度センサ105a、105b、105c、105dを有している。
【0005】
また、計算機システム200は、このシステムに電源を供給する電源ユニット108と、この電源ユニット108に接続され、電源ユニット108からの電力供給により発熱する負荷抵抗107を内部に有している。そして、計算機起動装置103は、計算機システム200の起動時に、特定ユニット106a、106b、106c、106dが所定の温度に達していない場合には、電源ユニット108に接続された負荷抵抗107に電源ユニット108から電力を供給して特定ユニット106a、106b、106c、106dの温度を上昇させる。
【0006】
このように、特許文献1では、負荷抵抗107を使用することで、周囲温度が特定ユニット106a、106b、106c、106dの動作温度範囲外の低温である場合でも計算機システム200を正常に起動させることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−139986号公報(2008年6月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に係る構成では、電子機器の筐体内に抵抗を設けるための空間が必要となる。ここで、特に、電子機器がIPCである場合、IPCは工場等の狭い場所に設置することができるように設計されているため、筐体内の空間が限られている。このため、特許文献1に係る構成では、負荷抵抗以外の部品を設けるための空間を縮小させなければならないため、IPCの小型化と高性能化とを両立させることが難しくなる。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、低温環境下においても筐体内の温度を動作保証温度の範囲内に維持することにより部品を動作させることができ、かつ、小型化と高性能化とを図ることのできる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電子機器は、筐体内に、集積回路と、所定の温度範囲で動作保証されている部品とが設けられた電子機器であって、上記部品の温度を監視する温度監視手段と、上記部品の温度が所定の下限設定温度以下であると上記温度監視手段が判定した場合に、上記集積回路で演算することにより上記集積回路の発熱量を増加させるための暖機演算を上記集積回路に実行させる暖機演算制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、電子機器の部品の温度が所定の下限設定温度以下であると上記温度監視手段が判定した場合、暖機演算制御手段が、集積回路が演算することにより生じる発熱量を増加させるための暖機演算を集積回路に実行させる。このとき、集積回路の暖機演算による発熱により、筐体内の温度が上昇する。よって、電子機器の周囲環境が低温であっても、電子機器の筐体内の温度を動作保証温度の範囲内に維持することにより部品を動作させることができる。また、筐体内の保温のために、集積回路の演算による発熱を利用しているので、従来構成のように、ヒーター等の保温手段を別途設ける必要がない。したがって、低温環境下においても筐体内の温度を動作保証温度の範囲内に維持することにより部品を動作させることができ、かつ、小型化と高性能化とを図ることのできる電子機器を提供できるという効果を奏する。
【0012】
本発明に係る電子機器では、上記集積回路が暖機演算と暖機演算以外の演算とを実行しているときに、上記暖機演算制御手段は、上記暖機演算によって上記集積回路が暖機演算以外の演算を実行する速度が所定の実行速度よりも遅くなっていると判断した場合に、上記暖機演算を上記集積回路に終了させることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、上記暖機演算によって暖機演算以外の演算の集積回路での実行速度が遅くなることを防止することができる。
【0014】
本発明に係る電子機器では、上記集積回路から発生する熱を上記筐体内に伝搬させるファンと、上記ファンを制御するファン制御手段とを備えることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、集積回路から発生する熱を効率よく筐体内および部品に伝搬させることができる。
【0016】
本発明に係る温度調節プログラムは、上記電子機器の各手段としてコンピュータを動作させるプログラムであり、本発明に係る記録媒体には、当該温度調節プログラムが記録されている。
【0017】
本発明に係る電子機器では、上記暖機演算制御手段は、上記部品の温度が所定の上限設定温度以上であると上記温度監視手段が判定した場合に、上記暖機演算を終了させることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、筐体内の温度が過度に上昇することを防止できる。
【0019】
本発明に係る電子機器では、上記集積回路は、複数のコアを有しており、上記複数のコアの1つが、上記温度監視手段と上記暖機演算制御手段とを備えることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、複数のコアの1つにおいて、温度調節のためのタスクを実行し、他のコアにおいて、電子機器の通常のタスクを実行することができる。したがって、それぞれのタスクを迅速に実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電子機器は、筐体内に、集積回路と、所定の温度範囲で動作保証されている部品とが設けられた電子機器であって、上記部品の温度を監視する温度監視手段と、上記部品の温度が所定の下限設定温度以下であると上記温度監視手段が判定した場合に、上記集積回路で演算することにより上記集積回路の発熱量を増加させるための暖機演算を上記集積回路に実行させる暖機演算制御手段と、を備えている。したがって、本発明に係る電子機器は、低温環境下においても筐体内の温度を動作保証温度の範囲内に維持することにより部品を動作させることができ、かつ、小型化と高性能化とを図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は、本実施形態に係るパネルコンピュータの構成を示すブロック図であり、(b)は、当該パネルコンピュータのCPUおよびメモリの具体的な構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】上記パネルコンピュータの筐体内の温度調節手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の変形例を示しており、2つのコアを有するCPU、およびメモリの構成を示すブロック図である。
【図5】従来の計算機システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の一形態について図1〜図4に基づいて説明すれば以下のとおりである。本実施形態では、産業用コンピュータ(IPC)の一種であるパネルコンピュータが、低温環境の工場内に設けられる場合について説明する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る制御システム1の概略構成を示すブロック図である。制御システム1は、パネルコンピュータ2と、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)3と、デバイス4とを備えており、工場内に設けられる。パネルコンピュータ2は、オペレータによって操作されるユーザインターフェース装置であり、PLC3に接続されている。PLC3は、予め記憶された制御プログラム(例えば、ラダープログラムなど)に基づいて、各デバイス4を制御し、かつ、各デバイス4の状態を取得する。また、PLC3は、パネルコンピュータ2からの指示に応じて制御プログラムを変更し、かつ、取得した各デバイス4の状態の情報をパネルコンピュータ2へ送信している。
【0025】
これにより、ユーザはパネルコンピュータ2を操作することにより、各デバイス4の制御や状態情報取得を行うことができる。ここで、パネルコンピュータ2のCPUの使用率が高い場合は、CPUの演算動作によるCPUからの発熱量が多くなる。一方、パネルコンピュータ2のCPUの使用率が低い場合は、CPUの演算動作によるCPUからの発熱量が少なくなる。
【0026】
したがって、パネルコンピュータ2のCPUの使用率が低いときは、制御システム1が設けられる工場内が低温である場合、パネルコンピュータ2の本体内部の温度が、パネルコンピュータ2内部の部品の動作保証温度よりも低下するおそれがある。そこで、パネルコンピュータ2は、パネルコンピュータ2内部の部品のいずれかが所定の下限設定温度以下になった場合、パネルコンピュータ2のCPUの使用率を高める演算動作を行うことによりCPUからの発熱量を増加させるように構成されている。
【0027】
図1(a)は、本実施形態に係るパネルコンピュータ2の構成を示すブロック図である。パネルコンピュータ2は、筐体5内に、CPU6と、ハードディスク7と、バッテリー8と、メモリ9とを備えている。CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9は、いずれも動作保証温度が0℃〜70℃の部品である。
【0028】
CPU6の使用率が高いときは、パネルコンピュータ2の周囲温度が0℃以下であっても、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9は、いずれも自身の動作による発熱により、動作保証温度以下になることはない。一方、CPU6の使用率が低いときは、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9は、いずれも自身の動作による発熱量が減少する。
【0029】
そこで、パネルコンピュータ2は、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9のそれぞれの近傍に、温度センサ11a〜11dを備え、さらに、CPU6の近傍にファン12を備えている。温度センサ11a〜11dは、それぞれCPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9の温度を検知し、温度情報をCPU6に出力する。ファン12は、筐体5内に発生した熱を均等に伝搬させるために設けられており、筐体5内の熱を排出するための図示しない排気用ファンとは別に設けられる。
【0030】
ここで、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9のいずれかの温度が、下限設定温度(例えば5℃)以下になった場合、CPU6は、自身の動作による発熱量を増加させるための演算(以下「暖機演算」とする)を実行する。さらに、ファン12が回転して風13を発生させ、CPU6から発生する熱を筐体5内に均等に伝搬させる。これにより、CPU6が発生する熱が、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9に効率よく伝搬することにより、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9の温度を上昇させることができる。さらに、特許文献1に係る構成のように、保温のための負荷抵抗を設ける必要がないので、他の部品を設けるための空間を確保しやすい。なお、ファン12は、通常の電子機器に備わっているCPUの近傍に設けられているCPU冷却用のファンを転用できるので、ファン12によって他の部品のための空間に制約は生じない。したがって、パネルコンピュータ2の小型化と高性能化を容易に実現できる。続いて、CPU6およびメモリ9の具体的な構成について説明する。
【0031】
図1(b)は、パネルコンピュータ2のCPU6およびメモリ9の具体的な構成を示すブロック図である。メモリ9には、システム制御部91と、温度監視部92と、暖機演算制御部93と、ファン制御部94とが展開されている。システム制御部91は、ユーザの操作に応じて図2に示すデバイス4を制御する等の、制御システム1を制御するための機能ブロックである。温度監視部92、暖機演算制御部93およびファン制御部94は、本実施形態に係る温度調節プログラムを実行することにより実現される機能ブロックである。CPU6は、メモリ9に展開されているこれらの機能ブロックからデータを読み込んで演算処理を実行する。
【0032】
温度監視部92には、図1(a)に示す温度センサ11a〜11dからの温度情報が入力され、温度監視部92は、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9の少なくともいずれかの温度が、下限設定温度以上であるか否かを監視する。暖機演算制御部93は、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9の少なくともいずれかの温度が下限設定温度以下であると温度監視部92が判定した場合、CPU6が演算を実行することによりCPU6の温度を上昇させるための暖機演算をCPU6に実行させる。また、暖機演算制御部93には、いわゆるタスクマネージャーの機能も有しており、CPU6の使用率を測定し、かつ、CPU6で実行されているタスク(工程)を管理する。タスクマネージャーの機能は、予めOSに組み込まれているものでも、本実施形態に係る温度調節プログラムに改めて組み込まれているものでもよい。ファン制御部94は、図1(a)に示すファン12の回転動作を制御する機能を有している。
【0033】
上記の温度調節プログラムは、パネルコンピュータ2と分離可能に構成される記録媒体にも記録可能であり、その記録媒体からパネルコンピュータ2にインストールされてもよい。当該記録媒体は、磁気テープやカセットテープなどのテープ系、フレキシブルディスクやハードディスクなどの磁気ディスク系、CD−ROM、MO、MD、DVDなどの光ディスク系、ICカード(メモリカードを含む)、光カードなどのカード系が好適である。その他、上記の記録媒体は、マスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROMなどによる半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する媒体であってもよい。また、図2に示す制御システム1が、インターネットを含む通信ネットワークと接続可能に構成されていれば、当該通信ネットワークから温度調節プログラムをパネルコンピュータ2にダウンロードするように構成してもよい。
【0034】
図3は、パネルコンピュータ2の筐体5内の温度調節手順を示すフローチャートである。まず、動作保障温度内の環境下でパネルコンピュータ2を起動させる(ステップS1)。続いて、温度調節プログラムが起動し、図1(b)に示す温度監視部92、暖機演算制御部93およびファン制御部94がメモリ9に形成される(ステップS2)。
【0035】
ここで、温度監視部92が、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9のいずれかの部品の温度が下限設定温度以下になったと判定した場合(ステップS3において「YES」)、暖機演算制御部93が、CPU6が演算を行うことによるCPU6からの発熱量を増加させるための暖機演算をCPU6に実行させる。これにより、CPU6からの発熱量が増加する。
【0036】
ここで、暖機演算の具体的な演算内容は、CPU6の使用率を増加させるものであれば特に限定されない。例えば、パネルコンピュータ2の表示パネルに、動きの複雑なスクリーンセイバー画面を表示させる演算処理であってもよい。また、下限設定温度は、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9の動作保証温度の下限値と同一か又は当該下限値よりも少し高い温度に設定される。
【0037】
ファン制御部94は、ファン12を回転させて、CPU6の発生する熱を筐体5内に伝搬させる(ステップS5)。これにより、CPU6の発生する熱をハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9に効率よく伝搬させることができ、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9を、動作保証温度内に保温することができる。
【0038】
その後、筐体5内の温度が上昇し、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9のいずれかの部品が、上限設定温度以上になったと温度監視部92が判定した場合(ステップS6において「YES」)、暖機演算制御部93は暖機演算を終了させる(ステップS8)。これにより、筐体5内の温度が過度に上昇することを防止できる。
【0039】
この上限設定温度は、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9の動作保証温度の上限値よりも低い温度に設定される。ただし、上限設定温度を、各部品の動作保証温度の上限値に近い値とすると、動作効率が低下しやすいので、上限設定温度は、汎用のコンピュータが通常使用される室温程度(15℃〜20℃)に設定することが望ましい。また、ステップS8において、図示しない排気用ファンを稼働させてもよい。
【0040】
また、ステップS6において、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9のいずれの部品も、上限設定温度未満である場合であっても(ステップS6において「NO」)、システム制御部91やメモリ9に展開されている図示しない他のプログラムからのタスクをCPU6が実行するときに、暖機演算のタスクを実行しているために、システム制御部91等のタスクの実行速度が、そのタスクにとって円滑であると規定されている実行速度よりも遅くなっていると暖機演算制御部93が判定した場合(ステップ7において「YES」)、暖機演算制御部93は暖機演算を終了させる(ステップS8)。これにより、暖機演算によって、CPU6による暖機演算以外の演算の実行速度が遅くなることを防止することができる。すなわち、温度調節プログラムによりパネルコンピュータ2の性能が劣化することはない。
【0041】
以上のように、本実施形態に係るパネルコンピュータ2は、低温環境下でCPU6の使用率が低い状態となり、筐体5内の各部品が下限設定温度以下になっても、CPU6が暖機演算を実行するように構成されているので、筐体5内に保温のための部材を別途設けることなく、筐体5内の温度を動作保証温度の範囲内に維持できる。
【0042】
なお、上記では、パネルコンピュータ2の起動中は、温度調節プログラムも起動させる構成であったが、これに限定されない。例えば、パネルコンピュータ2が通常のタスクを実行している間は、CPU6からの発熱により筐体5内を十分に保温できると考えられるため、温度調節プログラムを起動させない構成としてもよい。具体的には、CPU6の使用率が所定値以下である場合のみ、温度調節プログラムを起動させる構成としてもよい。
【0043】
本実施形態では、CPU6は、1つのコアを有するシングルコアCPUであった。これに対し、パネルコンピュータのCPUが、複数のコアを有するマルチコアCPUである場合、いずれか1つのコアで温度調節プログラムを動作させ、他のコアで通常のタスクを実行させてもよい。
【0044】
図4は、本実施形態の変形例を示しており、2つのコア16a・16bを有するCPU16、およびメモリ9の構成を示すブロック図である。CPU16は、コア16aがシステム制御部91のデータを読み込んで演算処理を実行する一方、コア16bが温度監視部92、暖機演算制御部93、およびファン制御部94のデータを読み込んで演算処理を実行するように構成されている。これらの温度監視部92、暖機演算制御部93およびファン制御部94の構成は、図1に示すものと同一である。これにより、コア16aは、パネルコンピュータの通常のタスクを実行するために用いられ、コア16bは、温度調節プログラムを動作させるために用いられる。このように、通常のタスクと温度調節のタスクとを、異なるコアで実行することにより、それぞれのタスクを迅速に実行することが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態では、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9のそれぞれの近傍に温度センサ11a〜11dを設けていた。ここで、パネルコンピュータ2のCPU6の使用率が低い状態であってもCPU6からある程度の熱が発生するため、低温環境下でもCPU6が動作保証温度の下限よりも低温になることはないと考えられる場合は、CPU6近傍の温度センサ11aは設けなくてもよい。また、温度監視部92の監視対象となる部品は、CPU6、ハードディスク7、バッテリー8およびメモリ9に限定されず、温度監視部92は、動作保証温度が設定されている筐体5内のあらゆる部品の温度を監視することが望ましい。
【0046】
以上のように、本発明は、通常の電子機器では、過熱防止のために排出されるCPUからの熱を、筐体内部の保温のために利用するという特有の技術思想を有している。
【0047】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、パネルコンピュータの他、屋外で使用されるノートパソコン等に特に好適であるが、これらに限定されず、あらゆる電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 制御システム
2 パネルコンピュータ(電子機器)
5 筐体
6 CPU(集積回路)
7 ハードディスク(部品)
8 バッテリー(部品)
9 メモリ(部品)
11a〜11d 温度センサ
12 ファン
16 CPU
16a・16b コア
92 温度監視部(温度監視手段)
93 暖機演算制御部(暖機演算制御手段)
94 ファン制御部(ファン制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、集積回路と、所定の温度範囲で動作保証されている部品とが設けられた電子機器であって、
上記部品の温度を監視する温度監視手段と、
上記部品の温度が所定の下限設定温度以下であると上記温度監視手段が判定した場合に、上記集積回路で演算することにより上記集積回路の発熱量を増加させるための暖機演算を上記集積回路に実行させる暖機演算制御手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
上記集積回路が暖機演算と暖機演算以外の演算とを実行しているときに、
上記暖機演算制御手段は、上記暖機演算によって上記集積回路が暖機演算以外の演算を実行する速度が所定の実行速度よりも遅くなっていると判断した場合に、上記暖機演算を上記集積回路に終了させることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
上記集積回路から発生する熱を上記筐体内に伝搬させるファンと、上記ファンを制御するファン制御手段とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器の各手段としてコンピュータを動作させる温度調節プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の温度調節プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−191896(P2010−191896A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38287(P2009−38287)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000134109)株式会社デジタル (224)