電子機器、点灯装置、及び照明器具
【課題】、防水性能を有し、軽量でかつ組立て作業性を向上できる電子機器を提供する。
【解決手段】回路モジュール21、トレー41、及び充填材55を具備する。モジュール21は、電気絶縁性の回路基板22と、この基板に搭載されて点灯回路をなす各種の電気部品26を備える。トレー41はモジュール21を収容する。トレー41に回路基板22側に突出する上げ底部49を形成する。充填材55は防水性と電気絶縁性を有する。この充填材55を、回路基板22及び電気部品26を埋めてトレー41に充填している。
【解決手段】回路モジュール21、トレー41、及び充填材55を具備する。モジュール21は、電気絶縁性の回路基板22と、この基板に搭載されて点灯回路をなす各種の電気部品26を備える。トレー41はモジュール21を収容する。トレー41に回路基板22側に突出する上げ底部49を形成する。充填材55は防水性と電気絶縁性を有する。この充填材55を、回路基板22及び電気部品26を埋めてトレー41に充填している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性能に優れた電子機器、この電子機器により放電灯を点灯させる点灯装置、及びこの点灯装置を備えた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外や高湿度環境下に設置される照明器具では、この器具が備える放電灯を点灯させる点灯装置も高湿度に晒されることがある。この用途の点灯装置には防水性能が求められる。
【0003】
インバータ点灯装置は、回路基板に複数の電気部品と電線コネクタを実装してなる電子機器である。従来、インバータ点灯装置に対する防水を、防水ケースを用いて図った技術が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
この技術で使用される防水ケースは、筒状収納ケースと側板とで形成されて、インバータ点灯装置を収容している。側板は、断面において継ぎ目がない一体成形品からなる筒状収納ケースの両端開口部を密閉している。
【特許文献1】特開2003−7122号公報(段落0004、0005、0008−0019、図1−図14、図17、図19)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、インバータ点灯装置自体がその外郭をなすケースを有して組立てられていて、この点灯装置が防水ケースに収容されている。このため、点灯装置全体の外郭をなす防水ケースが大形である。これとともに、インバータ点灯装置の組立てる手間の他に、この装置を筒状ケースに収容する手間、及びこの後に防水ケースを組立てる手間が必要である。よって、点灯装置の組立て工数が多い。したがって、既述のように大形な防水ケースを用いること自体でのコスト増加に加えて組立て上のコストも多く掛かるので、コスト高である。
【0006】
本発明は、防水性能を有するとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる電子機器、点灯装置、及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明の電子機器は、回路基板及びこの基板に搭載されて電子回路をなす複数の電気部品を備えた回路モジュールと;この回路モジュールを収容するとともに、前記回路基板に向けて突出する上げ底部を有したトレーと;防水性及び電気絶縁性を有し、前記回路基板及び電気部品を埋めて前記トレーに充填された充填材と;を具備することを特徴としている。
【0008】
本発明において、トレーは、例えば合成樹脂又はゴムで作ることができる、トレーを作る合成樹脂として、材料コストが安価でかつ充填材の加熱硬化処理の温度に耐える耐熱性を有する合成樹脂例えばポリプロピレン(PP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)を好適に用いることができる。トレーを作るゴムには例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)を用いることができる。本発明において、トレーの上げ底部は1以上設けることができる。上げ底部は、回路モジュールの電気部品の配設密度が低い領域とチップ部品等の高さが低い電気部品が集まって配設された領域に対応して設けることが好ましい。上げ底部は、トレーの側壁に連続して設けても良い。上げ底部は、トレーの側壁から離間して、この離間部分に通路を形成して設けることもできる。
【0009】
本発明において、充填材には、合成樹脂例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いることができる。ウレタン樹脂を用いることは、材料コストが安価な点で好ましい。シリコン樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などを用いる場合には、より高い放熱性を得ることができる。本発明において、回路基板の半田付け面にはチップ部品などの電気部品が面実装されていてもよい。
【0010】
請求項1の発明では、トレーを備え、このトレーに収容した回路モジュールの少なくとも回路基板と電気部品を、トレーに充填した電気絶縁性でかつ防水性の充填材に埋設している。このため、トレー内の充填材によって、回路モジュールの回路基板及び電気部品等を、高湿度環境に耐えるように防水できる。これとともに、回路モジュールを防水する上で防水ケースを要しない。更に、トレーに上げ底部を設けたことにより、充填材の使用量が少なく、電子機器を軽量化できる。しかも、上げ底部により充填材をトレーに注入するのに要する時間が短くできる。加えて、上げ底部がトレーの強度を向上するので、トレーを回路モジュールに被せる際の作業性を向上できる。
【0011】
本発明の好ましい形態である請求項2の発明は、前記上げ底部がこの底部を横切る渡り溝を有し、この渡り溝の両端が前記上げ底部の側面に開放していることを特徴としている。
【0012】
この発明において、渡り溝は少なくとも一部の上げ底部に形成される。この渡り溝は、狭い間隔を持って隣接する上げ底部の少なくとも一方に設けて、前記狭い間隙に渡り溝の一端を開放させて設けることが好ましい。
【0013】
上げ底部は、トレーに注入された未硬化の充填材のトレー内での流動をせき止める因子となることがある。しかし、請求項2の発明では、上げ底部によってせき止められた未硬化の充填材を、渡り溝に通してトレー内を移動させることができる。これにより、トレーの全域に充填材を確実に満たすことができる。
【0014】
本発明の好ましい形態である請求項3の発明は、前記複数の電気部品の内の一部の電気部品を覆い、この電気部品を前記充填材から隔離する部品キャップを備えていることを特徴としている。
【0015】
この発明において、部品キャップは電気絶縁物例えば合成樹脂や合成ゴムなどで形成される。部品キャップは1個又は複数の電気部品に被さる大きさに形成される。部品キャップは、トレーへの充填材の注入に伴い所定配置から動かないようにするとよい。そのための手段として、例えば回路基板に接着剤を用いて部品キャップを固定するとよい。部品キャップにより充填材から隔離される電気部品は、充填材と接してこれに埋設されることが好ましくない電気部品である。この種の電気部品として例えば電解コンデンサ及び可変抵抗器を挙げることができる。
【0016】
請求項3の発明では、部品キャップにより、回路基板に実装された電気部品の内の一部の電気部品を、トレーに充填された充填材から隔離できる。このため、隔離された電気部品の機能障害が充填材によってもたらされることを抑制できる。
【0017】
本発明の好ましい形態である請求項4の発明は、前記回路モジュールが前記電子回路に接続して前記回路基板に搭載された電線コネクタを備え、この電線コネクタを覆うコネクタキャップを前記トレーが備えていることを特徴としている。
【0018】
この発明において、コネクタキャップは合成樹脂又はゴムなどで作ることができる。コネクタキャップを作るゴムとしてEPDMを挙げることができる。コネクタキャップは、合成樹脂製又はゴム製のトレーと別体であっても、トレーと一体的に成形してもよい。
【0019】
請求項4の発明では、電線コネクタにコネクタキャップが被さっているので、トレーに充填された未硬化の充填材が、電線コネクタ内に侵入しないようにできる。このため、電線コネクタに挿入して接続される電線の接続不良を防止できる。
【0020】
本発明の好ましい形態である請求項5の発明は、前記トレーが、キャップ通孔を有したトレー本体とこの本体とは別に形成されて前記キャップ通孔を貫通した前記コネクタキャップを備え、前記コネクタキャップの外周に環状の溝が設けられ、この溝に前記キャップ通孔の孔縁が嵌合されていることを特徴としている。
【0021】
この請求項5の発明では、トレー本体にキャップ通孔の孔縁とコネクタキャップの外周の環状の溝との嵌合により、コネクタキャップとトレーとを接合している。このため、トレーに注入された未硬化の充填材が前記接合部を通って電線コネクタ内に侵入しないようにできる。
【0022】
前記課題を解決するために、請求項6に係る発明の点灯装置は、請求項1ないし5のいずれか一記載の電子機器により放電灯を点灯させることを特徴としている。
【0023】
この発明の点灯装置は、ランプを、平常時点灯させるものであっても、停電などの非常時に点灯させるものであってもよい。この請求項6の点灯装置は、トレー、回路モジュール、及び充填材を備えるなる防水アセンブリを収容する外郭ケースに収容して使用することが好ましい。この場合、外郭ケースは防水アセンブリを満杯状態に収容することが、小型化を促進し、防水アセンブリから外郭ケースへの放熱を良くする上で好ましい。ここに満杯状態とは、防水アセンブリがその各面を外郭ケースの各面に熱伝導的に接した状態に外郭ケースに収容されている状態が好適である。しかし、防水アセンブリの少なくとも一部、好ましくは回路基板の半田付け面を覆った充填材の半田カバー層を熱伝導的に外郭ケースに接触させて、その他の部分を外郭ケースから少し離した収容形態も含んでいる。外郭ケースは、合成樹脂でも作れるが、外部への放熱性能を得るためにアルミニウム合金などの熱伝導性が良好な金属製とするとよい。
【0024】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか一記載の電子機器により放電灯を点灯する点灯装置であるので、トレーに充填した充填材によって回路モジュールの回路基板及び電気部品等を防水できる。このため、防水ケースを要しないで高湿度環境に耐える防水性能を得ることができる。更に、トレーの上げ底部により、充填材の使用量が少なく軽量化できる。しかも、トレーに充填材を注入するのに要する時間が短くなることに加えて、上げ底部でトレーの強度が向上されて、トレーを回路モジュールに被せる際の作業性を向上できる。
【0025】
前記課題を解決するために、請求項7に係る発明の照明器具は、シャーシと;このシャーシに取付けられたランプソケットと;このソケットに取外し可能に支持された放電灯と;前記シャーシに取付けられて前記放電灯を点灯させる請求項6に記載の点灯装置と;を具備していることを特徴としている。
【0026】
この発明の照明器具が備えた点灯装置は、請求項6に記載のものであるので、防水性能を有するとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる点灯装置を備えた照明器具を提供できる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明の電子機器によれば、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができるとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる。
【0028】
請求項2に係る発明の電子機器によれば、トレーの全域に未硬化の充填材を確実に行き渡らせて所定の防水性能を得ることができる。
【0029】
請求項3に係る発明の電子機器によれば、トレーに充填された充填材から部品キャップにより隔離された電気部品の機能障害が充填材によってもたらされることを抑制できる。
【0030】
請求項4及び5に係る発明の電子機器によれば、電線コネクタに挿入して接続される電線の接続不良を防止できる。
【0031】
請求項6に係る発明の点灯装置によれば、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができるとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる。
【0032】
請求項7に係る発明の照明器具によれば、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができるとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる点灯装置を備えた照明器具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1から図14を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
【0034】
図1中符号1で示す照明器具は、屋外灯、又はトンネル内に設置されるトンネル灯、或いは駅舎の軒下灯等として、好ましい防水性を備えて使用される。この照明器具1は、シャーシ2と、ランプソケット3と、放電灯例えば直管型の蛍光ランプ4と、防水型の電子機器例えば防水型の点灯装置5とを備えている。点灯装置5は蛍光ランプ4を点灯させる電子安定器として機能する。
【0035】
図1に例示されたシャーシ2は金属製であって直方体形状をなしている。シャーシ2の長手方向両端部にランプソケット3がたとえば下向きに突設されている。蛍光ランプ4はランプソケット3に取外し可能に支持されている。蛍光ランプ4を点灯させる点灯装置5はシャーシ2に内蔵されている。
【0036】
図2から図4に示すように点灯装置5は、外郭ケース11と、回路モジュール21と、トレー41と、充填材55とを具備している。
【0037】
外郭ケース11は、収容ベース12と、これに連結されたカバー15とを有している。収容ベース12及びカバー15とは、例えば図示しない切起し片を孔や切欠き等の受け部に引っ掛けて連結されている。収容ベース12とカバー15との一方に切起し片が形成され、他方に受け部が形成される。
【0038】
収容ベース12及びカバー15は、金属製例えば放熱性に優れたアルミニウム合金製とすることが好ましい。これに代えて収容ベース12及びカバー15を材料コストが安い鉄系金属製とすることも可能である。
【0039】
図2及び図3に示すように収容ベース12は、ベース壁12aと、この幅方向両縁から夫々直角状に折り曲げられた側壁12bとを有している。この収容ベース12の全長は後述する回路基板22より長い。ベース壁12aの長手方向両端部には固定部13が形成されている。固定部13は孔又は切欠きからなる。これらの固定部13を通るねじ等の固定部品により、ベース壁12aをシャーシ2に接触させて、点灯装置5がシャーシ2に取付けられている。収容ベース12はシャーシ2への伝熱面として機能している。
【0040】
図2から図4に示すようにカバー15は、例えばカバー主壁15aと、側壁15bと、端壁15cとを有している。カバー主壁15aはカバー15の幅方向両側に夫々斜めに曲げられた部位を有する。これらの部位から側壁15bは折り曲げられている。端壁15cはカバー主壁15aの長手方向両端から夫々直角状に折り曲げられている。端壁15cはカバー主壁15a及び側壁15bが作る横樋形状の長手方向両端を閉じるように設けられている。
【0041】
カバー15は固定部13を露出させる程度に収容ベース12よりも短く形成されている。カバー15の側壁15bは収容ベース12の側壁12bの内面に接している。これらの側壁12b、15bは連結されている。収容ベース12とカバー15とは、重ね合わされた側壁12b、15bを通じて熱伝導可能である。
【0042】
カバー15の長手方向一端部に孔状部16が開けられている。カバー15の長手方向他端部に孔状部17が開けられている。これらの孔状部16,17は四角形状である。一方の孔状部16は後述の入力側のコネクタキャップ43を露出させるために設けられている。他方の孔状部17は後述の出力側のコネクタキャップ44を露出させるために設けられている。
【0043】
蛍光ランプ4を点灯させる回路モジュール21は、電気絶縁性の回路基板22と、点灯回路23(図7及び図9参照)と、入力用の電線コネクタ24と、出力用の電線コネクタ25とを備えている。
【0044】
回路基板22は、電気絶縁性を有し、カバー15内に収まる大きさの長四角形状をなしている。回路基板22の一面は部品取付け面22aとして利用される。回路基板22の他面は半田付け面22bとして利用される。半田付け面22bには回路パターンが印刷されている。半田付け面22bは絶縁性のレジスト層(図示しない)で覆われている。
【0045】
回路基板22は、その表裏面に亘る充填材通し部として、例えば複数の切欠き22cを有している。これらの切欠き22cは図7から図9等に示すように回路基板22の両側縁に夫々が設けられている。これらの切欠き22cは回路パターンを避けている。充填材通し部は、回路パターンを断ち切らない位置であれば、どこに設けても良い。更に、充填材通し部は、回路基板22の両側縁間に位置する孔で形成することも可能であり、孔と切欠きと併用することも可能である。
【0046】
点灯回路23は、回路パターンとこれに接続された複数の電気部品26(図4及び図8等参照)とを組み合わせてなり、例えばインバータ回路部を含んで構成されている。電気部品26として、パワートランジスタ等の半導体、抵抗、コンデンサ、コイル、トランス、ダイオード、その他の各種のチップ部品等を挙げることができる。
【0047】
図8中符号26aは電気部品26の一つであるパワートランジスタを示し、これは発熱を伴う。符号27はパワートランジスタ26aに熱的に接続された放熱板を示している。放熱板27は、部品取付け面22aに対して直角となるように回路基板22の一側縁に沿って起立されていて、回路基板22の側縁より外側に多少はみ出ている。
【0048】
点灯回路23は回路基板22の長手方向両端部を除いた中間部の表裏両面に亘って形成されている。この点灯回路23をなす電気部品の殆どは部品取付け面22aに実装されている。電気部品26は、チップ部品等の面実装部品の他に、フロー半田処理により回路基板22に搭載される複数の電気部品を含んでいる。フロー半田処理される電気部品は、回路基板22を貫通するピン状の端子29を有している。フロー半田処理される電気部品は、回路基板22をフロー半田層に通すことにより、端子29を回路パターンの各ランドに半田付けされて回路基板22に実装されている。
【0049】
図8に示すように入力用(高圧側)の電線コネクタ24は回路基板22の長手方向一端部に半田付けされている。出力用(低圧側)の電線コネクタ25は回路基板22の長手方向他端部に半田付けされている。これらの電線コネクタ24,25もピン状の端子30を有している。端子29を有した前記電気部品とともに電線コネクタ24,25は、フロー半田処理により回路基板22に搭載されている。電線コネクタ24には図示しない電源側の絶縁被覆電線(図示しない)の芯線が差し込み接続される。電線コネクタ25には器具内配線用の絶縁被覆電線(図示しない)の芯線が差し込み接続される。
【0050】
図4及び図8中符号35は部品キャップを示している。部品キャップ35は電気絶縁物例えば硬質合成樹脂又は合成ゴム等で形成されている。この部品キャップ35は、一部の電気部品に被されていて、この電気部品に充填材55が接触しないように設けられている。部品キャップ35により充填材55から隔離される電気部品は、充填材55と接してこれに埋設されることが好ましくない電気部品である。この種の電気部品として例えば電解コンデンサ26bを挙げることができる。部品キャップ35が被さった電気部品26は、部品キャップ35の内面に接しても、接しなくても良い。
【0051】
部品キャップ35の開口面は回路基板22の部品取付け面22aに接触している。部品キャップ35を部品取付け面22aに図示しない接着剤で固定することは好ましい。それにより、回路基板22に対する部品キャップ35の保持と、この部品キャップ35内への未硬化の充填材の侵入を妨げるシール機能を得ることができる。
【0052】
トレー41は充填材55を充填するための充填容器である。図3及び図4に示すようにトレー41は、トレー本体42と、複数例えば一対のコネクタキャップ43,44とを有している。トレー本体42は、カバー15より僅かに小さく、カバー15の内面に接するようにこの内面形状に沿って収容される。コネクタキャップ43,44はトレー本体42とは別に形成されたものである。
【0053】
トレー本体42は、好ましくは耐熱性を有する廉価な電気絶縁材、例えばポリプロピレンエチレン(PP)製のフィルム状成形品からなる。図6から図8、図10、図12等に示すようにトレー本体42は、その長手方向両端部にキャップ接続部42aを有している。これらキャップ接続部42a間のトレー本体42の深さは、キャップ接続部42aでのトレー本体42の深さより深い。この深い部位はカバー15の内面に接触する大きさに形成されている。キャップ接続部42aの夫々には図8に示すように例えば四角形状のキャップ通孔42dが開けられている。
【0054】
図3、図5から図8中符号42bはトレー本体42の側板を示している。図5中符号42cはトレー本体42の開口縁を示している。開口縁42cは、トレー本体42の前記深い部位から左右のキャップ接続部42aに亘って連続していて、例えば長方形状をなしている。
【0055】
開口縁42cは成形されたトレー本体42の切除縁部42eを切断することによって形成されている。すなわち、図9を除く図7から図12中符号42fは開口縁42cに相当する角部を示している。この角部42fに切除縁部42eが一体に連続されている。切除縁部42eは、角部42fより一回り大きく形成されていて、スカート状をなしている。角部42fに沿って切断することによって、切除縁部42eが除かれて開口縁42cが形成される。
【0056】
図5から図8に示すようにトレー本体42の側板42bの夫々に、リブ状凸部42gが複数設けられている。これらリブ状凸部42gは、側板42bの長手方向に所定の間隔を置いて設けられ、かつ、側板42bの長手方向に直交する方向に延びている。リブ状凸部42gは、側板42bを外側から凹ませて側板42bの内面に突出されている。リブ状凸部42gは、側板42bを内側から凹ませて側板42bの外面に突出させることもできる。リブ状凸部42gは側板42bを補強している。
【0057】
図7等に示すようにトレー本体42には支持凸部45が複数形成されている。これらの支持凸部45は側板42bの内面に突出してトレー41の厚み方向(上下方向)に延びている。トレー41には、そのキャップ接続部42a間に位置して複数の上げ底部46から52が一体に形成されている。上げ底部47から51はトレー本体42の長手方向中央部に集まっている。
【0058】
上げ底部46から52は、回路モジュール21の電気部品26の配設密度が低い領域とチップ部品等の高さが低い電気部品が集まって配設された領域などに対応して設けられている。したがって、図4及び図8等に示すようにトレー本体42の外面はでこぼこになっていて、このでこぼこは電気部品26の配置及び高さ等に応じている。
【0059】
上げ底部46から52はいずれもトレー本体42の側板42bから離れている。従って、トレー41に充填材55が充填される前の状態で、側板42bとの間に、通路P(図10及び図14参照)が形成されている。これらの通路Pは、上げ底部46から52を境にトレー41の長手方向両側を連通している。
【0060】
通路Pを設けて上げ底部46から52を形成した構成では、上げ底部46から52を通るトレー本体42の横断面の断面係数が大きくなり、トレー本体42の強度を向上できる。これにより、トレー41の板厚が薄いにも拘わらず、トレー本体42の中央部が曲がり難くでき、その取り扱いを容易にできる。したがって、点灯装置5の組立てに際して、トレー41を回路モジュール21に被せる作業の容易化に貢献できる。トレー本体42の両端部はキャップ接続部42aにより強度が向上されている。
【0061】
コネクタキャップ43,44は例えば合成ゴム製である。一方のコネクタキャップ43は、その弾性変形により入力用の電線コネクタ24に密に被嵌可能に形成されている。コネクタキャップ43は、一方のキャップ接続部42aのキャップ通孔42dを液密に貫通している。他方のコネクタキャップ44は、その弾性変形により出力用の電線コネクタ25に密に被嵌可能に形成されている。コネクタキャップ44は、他方のキャップ接続部42aのキャップ通孔42dを液密に貫通している。
【0062】
コネクタキャップ43,44がキャップ通孔42dを液密に貫通する構造は同じである。このため、コネクタキャップ44とそれに対するキャップ通孔42dとの関係を代表して説明する。コネクタキャップ44は、その開放端面44a側の外周に環状の溝52(図12及び図13参照)を有している。この溝52にキャップ通孔42dの孔縁が嵌合されている。これにより、コネクタキャップ44とキャップ通孔42dとの間の液密が図られている。
【0063】
コネクタキャップ43,44の開放端面43a,44aはトレー本体42内に位置され、その高さ位置は支持凸部45の高さ位置と略同じである。これら開放端面43a,44aの高さ位置よりも上げ底部46から52の底面の高さ位置は低い。コネクタキャップ43,44の開放端面43a,44aは回路基板22の部品取付け面22aに接している。コネクタキャップ43,44を図12で代表して示す接着剤53で部品取付け面22aに固定することが好ましい。それにより、コネクタキャップ43,44と回路基板22との間をシールして、コネクタキャップ43,44への未硬化の充填材の侵入を妨げることができる。
【0064】
図8に示すようにコネクタキャップ43,44は、電源側又は器具内配線用の絶縁被覆電線の端末部が挿入される電線差込部54を夫々複数有している。図12に示したコネクタキャップ44で代表するように電線差込部54は、小穴が開けられた薄肉部54aを有している。電線差込部54の内面には複数の環状突起54bが設けられている。
【0065】
前記電線の端末部にむき出された芯線及び端末部は薄肉部54aを押し通って電線差込部54に挿入できる。この挿入に伴い電線端末部の外周が各環状突起54bに夫々密接されて液密が図られる。電線差込部54に挿入された電線端末部の芯線は、電線コネクタ24又は25に挿入される。この挿入された芯線は、電線コネクタ24,25に内蔵された図示しない端子に差し込まれて、電気的かつ機械的に接続される。
【0066】
前記回路モジュール21は、その部品取付け面22aをトレー41の内部に臨ませてトレー41に収容されている。この収容に先立って、部品取付け面22aには部品キャップ35が電解コンデンサ26bを覆って取付けられる。更に、電線コネクタ24には既にコネクタキャップ43が被嵌されている。同様に、電線コネクタ25にもコネクタキャップ44が被嵌されている。しかも、トレー41に回路モジュール21を収容する時には、コネクタキャップ43,44の溝52と、キャップ通孔42dの孔縁とが嵌合される。
【0067】
以上の収容によって、回路基板22の長手方向両端部が、夫々コネクタキャップ43,44の開放端面43a,44aに載って支持される。同様に、前記収容により、回路基板22の中間部が、複数の支持凸部45に載って支持される。これらの支持と、コネクタキャップ43,44に対するキャップ通孔42dの孔縁の嵌合とによって、トレー41の所定位置に回路モジュール21が位置決めされる。
【0068】
こうしてトレー41に収容された回路モジュール21の電気部品26の端子29、及び電線コネクタ24,25の端子30の先端は、夫々上を向いて回路基板22の半田付け面22bから突出している。しかし、各端子29,30は、トレー41の開口縁42cに相当する角部42fより低い配置されている(図12参照)。
【0069】
更に、図3及び図4に例示されるように各電気部品26の先端(図3及び図4では下端)は、いずれもトレー本体42の内面から離れている。しかも、前記収容により、回路モジュール21の電気部品26の配設密度が低い領域とチップ部品等の高さが低い電気部品が集まって配設された領域とには、トレー本体42の上げ底部46から52が夫々対向する。
【0070】
前記充填材55は、電気絶縁性及び防水性を有する合成樹脂である。本実施形態ではフィラー(図示しない)が混入されたウレタン樹脂を用いている。フィラーは酸化アルミニウム等の無機材料からなる。フィラーの混入は充填材55の放熱性を高める上で好ましい。この充填材55は、トレー41に収容された回路モジュール21を埋設してトレー41に充填されている。
【0071】
この充填は、未硬化の充填材55wをトレー41の開口縁42cと回路基板22の間の隙間、とりわけ切欠き22cを通して注入して行われる。この状況を図14中二点鎖線で示す。
【0072】
この注入作業では、未硬化の充填材55wが回路基板22の下側への流れ込む間口が、他の隙間より切欠き22cによって広げられている。しかも、この流れ込みに伴って回路基板22の下側の空気が、注入に使用されない他の切欠き22cを通して抜け易い。このため、ある程度粘性を有した未硬化の充填材55wであっても、スムーズにトレー41に注入して充填できる。
【0073】
このため、点灯装置5の組立てに際して、充填材55の充填に要する時間が短くなり、コストの低減に貢献できる。しかも、充填材55wの充填において、トレー41内をその長手方向に沿って流動する充填材55wを、側板42bと上げ底部46から52との間の通路Pに通すことができる。これによっても、充填に要する時間を短くできる。
【0074】
既述のように充填材55wと空気との置換が良好であることにより、充填不良を抑制できる。つまり、残留空気に起因する空洞が、部品取付け面22aとトレー本体42との間にできないようにできる。空洞が充填材55内に残る場合には、そこに水分が溜まる可能性があって、防水及び絶縁の観点から好ましくない。
【0075】
既述の充填材55wの充填時に注入に用いない切欠き22cは、注入された充填材55wの余剰分の戻し通路としても使用される。この戻し通路を通して、既に注入された充填材55wを回路基板22の下側から回路基板22の上側に逆流させることができる。
【0076】
これにより、半田付け面22bを充填材55wで覆って、この半田付け面22bを絶縁できる。この状態を図11に示す。充填材55wの充填は、トレー41の角部42fを目安として、この角部42fに充填材55wの上面が達した際に停止される。
【0077】
以上の充填の際、トレー41の側板42bには充填材55wの重さが掛かる。側板42bは、そこに設けられている複数のリブ状凸部42gで補強されている。このため、トレー41の幅が広がるように側板42bが外側に変形することを抑制できる。したがって、トレー41の形状を維持し易いとともに、充填材55wの充填量のばらつきも抑制できる。
【0078】
電線コネクタ24,25に個別に被さって保持されたコネクタキャップ43,44は、トレー41のキャップ通孔42dを貫通している。この貫通部において、コネクタキャップ43,44の環状の溝52にキャップ通孔42dの孔縁が嵌合している。このため、貫通部を通って未硬化の充填材55wがトレー41外に漏れることを防止できる。これにより、防水アセンブリ31の外観不良を防止できるとともに、充填材55wの充填量のばらつきも抑制できる。
【0079】
前記充填作業は、回路モジュール21が納められたトレー41をカバー15の内側に嵌合させた状態(図11中二点鎖線参照)で実施することが好ましい。この場合、充填に伴う側板42bの変形をカバー15により確実に防止できる。トレー41がカバー15内に嵌合された状態では、コネクタキャップ43,44が夫々対向した孔状部16,17に露出される。これにより、コネクタキャップ43,44の電線差込部54への電線の挿入が可能な状態となる。
【0080】
図3、図4、及び図11中符号55aは回路基板22の半田付け面22bを覆った充填材55の半田カバー層を示している。半田カバー層55a内には各端子29,30が埋設されている。半田カバー層55aの表面は、平面であることが好ましい。この表面の高さは例えばトレー41の開口縁42cに相当する角部42fの高さと同じである。半田カバー層55aの表面の高さは角部42fより低くすることもできる。
【0081】
充填材55wが略満たされたトレー41は、図示しない加熱硬化炉に通され、それにより充填材55wの硬化処理がなされる。この加熱処理で与えられる熱に対してPET製のトレー41は十分な耐熱性を発揮できる。トレー41の切除縁部42eは、充填材55wの充填から加熱処理に至るまでの間にトレー41をハンドリングする際に利用される。更に、切除縁部42eは、トレー41のハンドリングにおいて、このトレー41内の未硬化の充填材55wが零れることを抑制する堤防として機能する。
【0082】
以上の充填において、予め脱泡処理された未硬化の充填材55wを使用することは好ましい。更に、トレー41に注入されつつある未硬化の充填材55w、又はトレー41に注入された充填材55wに対して脱泡処理を施すと良い。脱泡処理は減圧雰囲気中に充填材55wを置くことによりなされる。こうした脱泡処理によって、残留気泡に起因する空洞が硬化した充填材55内に形成されないようにできる。
【0083】
加熱処理後に切除縁部42eは切除される。この切除によりトレー41の開口縁42cと半田カバー層55aの表面とは面一状態に連続する。こうして組立てられた充填材55と、トレー41と、回路モジュール21とは、防水アセンブリ31を形成する。防水アセンブリ31はその充填材55の防水性能によって回路モジュール21に対する防水性を担保する。
【0084】
この防水アセンブリ31は、トレー41が上げ底部46から52を有しているので、上げ底部がないトレーを用いた構成に比較して充填材55の使用量を少なくできる。これにより、充填作業時間の短縮とともに、点灯装置5のコスト低減を図ることが可能である。
【0085】
防水アセンブリ31は、そのトレー41の外面がカバー15の内面に接触するようにカバー15に収容される。言い換えれば、トレー41はカバー15に対して満杯状態に収容される。これにより、防水アセンブリ31からカバー15への熱伝導が可能である。この熱伝導において、リブ状凸部42gが側壁15bと側板42bとの間のスペーサとなることがない。更に、回路基板22からはみ出している放熱板27は、トレー41の一方の側板42bをカバー15の一方の側壁15bに強く押し付けて密接状態となる。放熱板27は発熱量が多いパワートランジスタ26aに接続されているので、この放熱板27を経由するパワートランジスタ26aからカバー15への熱伝導は確実である。
【0086】
防水アセンブリ31が収容されたカバー15には収容ベース12が被される。この後、これら収容ベース12とカバー15とが連結されて、外郭ケース11が組立てられる。この組立てによって、充填材55の半田カバー層55aは、収容ベース12のベース壁12aで覆われる。しかも、これらのベース壁12aと半田カバー層55aとは図3及び図4に示すように面接触する。半田カバー層55aは電気絶縁性を有している。このため、前記面接触にも拘わらず、収容ベース12と回路モジュール21との間の電気絶縁を図るシート部材を要しない。
【0087】
前記面接触により広い接触面積が確保される。そのため、防水アセンブリ31の熱を収容ベース12に円滑に伝導させることができる。ベース壁12aと半田カバー層55aの間に隙間が生じる場合には、伝熱部材を、ベース壁12aと半田カバー層55aの間に挟設すればよい。この伝熱部材は前記隙間に相当する厚みを有した良熱伝導性のシートからなる。この伝熱部材により、ベース壁12aと半田カバー層55aの間の円滑な熱伝導を図ることが可能である。
【0088】
外郭ケース11の収容ベース12とカバー15の夫々には排水部が設けられている。つまり、図2から図4に示すように収容ベース12のベース壁12aには複数の排水部14が開けられている。これとともに、カバー15のカバー主壁15aにも複数の排水部18が開けられている。これらの排水部14,18は孔からなる。
【0089】
湿気などが外郭ケース11とトレー41及び半田カバー層55a等との間に結露することがある。この場合に、結露水を排水部14,18に通して外郭ケース11の外部に排出できる。したがって、点灯装置5の電気絶縁性能を向上できる。こうした排水は、外郭ケース11が鉄系金属で作られた場合に、この外郭ケース11に錆が発生することを抑制する上でも有効である。
【0090】
以上の構成の点灯装置5は、外郭ケース11のカバー15に収められるトレー41を備え、このトレー41に収容した回路モジュール21を、その電線コネクタ24,25を除いて、トレー41に充填した充填材55に埋設している。
【0091】
充填材55は、電気絶縁性でかつ防水性を有している。このため、充填材55によって、回路モジュール21の回路基板22、電気部品26、及び半田付け面22b等を防水できる。
【0092】
トレー41はカバー15内に満杯状態に収容される大きさである。このトレー41を用いて外郭ケース11の内部で既述の防水を実現しているので、防水の構成を原因として外郭ケース11が大きくなることがない。これにより、既存の製造設備で作られる外郭ケースを用いることも可能である。これとともに、以上の外郭ケース11内での防水の構成により、外郭ケース11を収容する大形な防水ケースを要しないで、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができる。
【0093】
このため、点灯装置5を小形に構成できる。しかも、この点灯装置5の組立ての他に、この点灯装置5を防水ケースに収容する手間、及びこの後に防水ケースを組立てる手間が不要である。これにより、点灯装置5を容易に組立てることができる。
【0094】
以上のように防水ケースを用いること自体でのコスト増加をなくすことができる。これに加えて、組立てコスト上のコスト低減できる。したがって、点灯装置5ひいてはこの点灯装置5を備える照明器具1を低コスト化できる。
【0095】
更に、カバー15に上げ底部46から52を設けたので、このカバー15の強度を高めて組立て易くできる。その上、上げ底部46から52により、充填材55の充填容積を減らして充填量を少なくできる。この点においても、点灯装置5ひいてはこの点灯装置5を備える照明器具1を低コスト化できる。
【0096】
点灯装置5の充填材55は防水性能だけではなく放熱性能も備えている。このため、パワートランジスタ26aその他発熱を伴う電気部品の熱を、充填材55を経て外郭ケース11に伝導できる。この場合、充填材55の容量が大であるとともに、この充填材55から外郭ケース11への熱伝導面積も大きい。したがって、優れた放熱特性を得ることができる。特に、無機質のフィラーが混入された充填材55を採用することにより、放熱特性をより向上できる。
【0097】
しかも、既述のように回路モジュール21が充填材55に埋っているので、充填材55によって確実な防塵ができる。これにより、塵が多い場所で使用される点灯装置5ひいてはこの点灯装置5を備える防塵型の照明器具1としても好適である。
【0098】
電線コネクタ24,25に密に被嵌されたコネクタキャップ43,44は、回路基板22の部品取付け面22aに接着されている。このため、防水アセンブリ31の製造時に、トレー41に注入された未硬化の充填材55wが、コネクタキャップ43,44内に侵入することが防止される。これにより、電線コネクタ24,25内に充填材55wが侵入することがない。したがって、製造された点灯装置5の電線コネクタ24,25に絶縁被覆電線を差し込んで接続する場合、この接続が、硬化された充填材55によってできなくなる恐れがない。
【0099】
防水アセンブリ31の製造時、電解コンデンサ26bは、これを覆った部品キャップ35によりトレー41に充填された未硬化の充填材55wから隔離されている。つまり、トレー41に充填された充填材55wが、電解コンデンサ26bに接して、この電解コンデンサ26bを埋めることがない。このため、硬化された充填材55によって電解コンデンサ26bの機能低下などがもたらされる恐れがなく、電解コンデンサ26bに所期の機能を発揮させることができる。
【0100】
図15から図17は本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態は以下説明する事項以外は第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態と同一又は機能的に同様な構成については第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0101】
第2実施形態では、一部の上げ底部48,49,51に、渡り溝48a,49a,51aを個別に設けている。これらの上げ底部48,49,51は、他の上げ底部よりもカバー15を横切っている長さが長い。
【0102】
渡り溝48aは上げ底部48を横切っている。この渡り溝48aの両端は、上げ底部48の側面の内の二つの側面、好ましくは図15に示すようにトレー41の長手方向に対応する二つの側面に開放されている。
【0103】
渡り溝49aは上げ底部49を横切っている。この渡り溝49aの両端は、上げ底部49の側面の内の二つの側面、好ましくは図15に示すようにトレー41の長手方向に対応する二つの側面に開放されている。
【0104】
渡り溝51aは上げ底部49を横切っている。この渡り溝51aの両端は、上げ底部51の側面の内の二つの側面、好ましくは図15に示すようにトレー41の長手方向に対応する二つの側面に開放されている。
【0105】
以上説明した事項以外の構成は第1実施形態と同じである。したがって、この第2実施形態でも第1実施形態と同様の作用を得て、本発明の課題を解決できる。その上、上げ底部48,49,51の夫々に渡り溝48a,49a,51aを設けたので、以下の点で優れている。
【0106】
上げ底部48,49,51の夫々はカバー15を幅方向に横切っている長さが長い。これにより、トレー41内に注入されてトレー41の長手方向に流動しようとする未硬化の充填材55wをせき止め易い。それにより、図15に示すように隣接した上げ底部48,49相互間の狭い空隙Gには、充填材55wが満ち難い。
【0107】
しかし、せき止め止められた未硬化の充填材55wは、渡り溝48a,49a,51aを通路としてトレー41内を移動できる。これにより、トレー41の全域に充填材55wを容易かつ確実に満たすことができる。しかも、空隙Gに渡り溝48a,49aの端が連続している。このため、渡り溝48a,49aを通じて未硬化の充填材55wを容易かつ確実に空隙Gにも満たすことができる。したがって、空隙Gが空洞として残ることを抑制できるので、点灯装置5の防水及び絶縁上の信頼性が高められる。
【0108】
図18は本発明の第3実施形態を示している。第3実施形態は以下説明する事項以外は第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態と同一又は機能的に同様な構成については第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0109】
第3実施形態では、トレー41の両端部は、電線コネクタ24,25を収容できる深さに形成されている。第1実施形態で使用したコネクタカバーは省略されている。更に、トレー本体42はコネクタ接続部を有していない。電線コネクタ24,25の夫々には絶縁被覆電線57,58が個別に挿入して接続されている。これら絶縁被覆電線57,58はトレー41及びカバー15を貫通している。この貫通部には、合成ゴム等からなるブッシュ59が設けられている。ブッシュ59は、絶縁被覆電線57,58の保護と、トレー41に充填される未硬化の充填材が前記貫通部を通って漏れることを防止している。
【0110】
トレー41への未硬化の充填材の注入は、絶縁被覆電線57,58を予め電線コネクタ24,25に接続し、トレー41及びカバー15に対する絶縁被覆電線57,58の貫通部を、ブッシュ59で封止した状態でなされる。したがって、回路基板22、電気部品26、及び電線コネクタ24,25の備えた回路モジュール21全体が、充填材55に埋設されている。
【0111】
以上説明した事項以外の構成は第1実施形態と同じである。したがって、この第3実施形態でも第1実施形態と同様の作用を得て、本発明の課題を解決できる。
【0112】
本発明において、回路モジュールは、電気コネクタを備えなくても良い。この場合、回路基板の回路基板に絶縁被覆電線を直接半田付けなどにより接続すればよい。この絶縁被覆電線は充填材を通って回路モジュールの外部に引き出される。
【0113】
本発明を電子機器として実施する場合は、点灯装置に実施を制約されるものではない。例えば防水型ラジオの電気回路をなす電子機器として本発明は適用できる。更に、防水機能を強化する必要がある携帯型の電子機器等にも、本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の第1実施形態に係る照明器具を示す斜視図。
【図2】図1の照明器具が備える本発明の第1実施形態に係る点灯装置を示す斜視図。
【図3】図2中F3−F3線に沿う断面図。
【図4】図2中F4−F4線に沿う断面図。
【図5】図2の点灯装置の防水アセンブリを裏側から見て示す斜視図。
【図6】図5の防水アセンブリが備えるトレーを表側から見て示す斜視図。
【図7】図6のトレーとこれに収容される回路モジュールとを分離した状態で裏側から見て示す斜視図。
【図8】図6のトレーとこれに収容される回路モジュールとを分離した状態で表側から見て一部を分解して示す斜視図。
【図9】図5の防水アセンブリを一部切欠いて示す裏面図。
【図10】図5の防水アセンブリが備えるトレーを示す裏面図。
【図11】図7に示した回路モジュールを収容したトレーに充填材が注入された状態を示す断面図。
【図12】図5の防水アセンブリが備えるトレーとコネクタカバーとの関係を示す断面図。
【図13】図5の防水アセンブリが備えるコネクタカバーを示す斜視図。
【図14】図10中F11−F11線に沿って示すトレーの断面図。
【図15】本発明の第2実施形態に係る点灯装置が備えるトレーを示す裏面図。
【図16】図15中F16−F16線に沿って示すトレーの断面図。
【図17】第2実施形態に係る点灯装置を示す断面図。
【図18】本発明の第3実施形態に係る点灯装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0115】
1…照明器具、2…シャーシ、3…ランプソケット、4…蛍光ランプ(放電灯)、5…点灯装置(電子機器)、11…外郭ケース、12…収容ベース、15…カバー、16,17…孔状部、21…回路モジュール、22…回路基板、22a…部品取付け面、22b…半田付け面、22c…切欠き(充填材通し部)、23…点灯回路、24,25…電線コネクタ、26…電気部品、26a…電解コンデンサ(一部の電気部品)、29,30…端子、31…防水アセンブリ、35…部品キャップ、41…トレー、42…トレー本体、42a…キャップ接続部、42d…キャップ通孔、43,44…コネクタキャップ、46から52…上げ底部、48a,49a,51a…渡り溝、52…環状の溝、55…充填材、55a…半田カバー層
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性能に優れた電子機器、この電子機器により放電灯を点灯させる点灯装置、及びこの点灯装置を備えた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外や高湿度環境下に設置される照明器具では、この器具が備える放電灯を点灯させる点灯装置も高湿度に晒されることがある。この用途の点灯装置には防水性能が求められる。
【0003】
インバータ点灯装置は、回路基板に複数の電気部品と電線コネクタを実装してなる電子機器である。従来、インバータ点灯装置に対する防水を、防水ケースを用いて図った技術が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
この技術で使用される防水ケースは、筒状収納ケースと側板とで形成されて、インバータ点灯装置を収容している。側板は、断面において継ぎ目がない一体成形品からなる筒状収納ケースの両端開口部を密閉している。
【特許文献1】特開2003−7122号公報(段落0004、0005、0008−0019、図1−図14、図17、図19)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、インバータ点灯装置自体がその外郭をなすケースを有して組立てられていて、この点灯装置が防水ケースに収容されている。このため、点灯装置全体の外郭をなす防水ケースが大形である。これとともに、インバータ点灯装置の組立てる手間の他に、この装置を筒状ケースに収容する手間、及びこの後に防水ケースを組立てる手間が必要である。よって、点灯装置の組立て工数が多い。したがって、既述のように大形な防水ケースを用いること自体でのコスト増加に加えて組立て上のコストも多く掛かるので、コスト高である。
【0006】
本発明は、防水性能を有するとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる電子機器、点灯装置、及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明の電子機器は、回路基板及びこの基板に搭載されて電子回路をなす複数の電気部品を備えた回路モジュールと;この回路モジュールを収容するとともに、前記回路基板に向けて突出する上げ底部を有したトレーと;防水性及び電気絶縁性を有し、前記回路基板及び電気部品を埋めて前記トレーに充填された充填材と;を具備することを特徴としている。
【0008】
本発明において、トレーは、例えば合成樹脂又はゴムで作ることができる、トレーを作る合成樹脂として、材料コストが安価でかつ充填材の加熱硬化処理の温度に耐える耐熱性を有する合成樹脂例えばポリプロピレン(PP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)を好適に用いることができる。トレーを作るゴムには例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)を用いることができる。本発明において、トレーの上げ底部は1以上設けることができる。上げ底部は、回路モジュールの電気部品の配設密度が低い領域とチップ部品等の高さが低い電気部品が集まって配設された領域に対応して設けることが好ましい。上げ底部は、トレーの側壁に連続して設けても良い。上げ底部は、トレーの側壁から離間して、この離間部分に通路を形成して設けることもできる。
【0009】
本発明において、充填材には、合成樹脂例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いることができる。ウレタン樹脂を用いることは、材料コストが安価な点で好ましい。シリコン樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などを用いる場合には、より高い放熱性を得ることができる。本発明において、回路基板の半田付け面にはチップ部品などの電気部品が面実装されていてもよい。
【0010】
請求項1の発明では、トレーを備え、このトレーに収容した回路モジュールの少なくとも回路基板と電気部品を、トレーに充填した電気絶縁性でかつ防水性の充填材に埋設している。このため、トレー内の充填材によって、回路モジュールの回路基板及び電気部品等を、高湿度環境に耐えるように防水できる。これとともに、回路モジュールを防水する上で防水ケースを要しない。更に、トレーに上げ底部を設けたことにより、充填材の使用量が少なく、電子機器を軽量化できる。しかも、上げ底部により充填材をトレーに注入するのに要する時間が短くできる。加えて、上げ底部がトレーの強度を向上するので、トレーを回路モジュールに被せる際の作業性を向上できる。
【0011】
本発明の好ましい形態である請求項2の発明は、前記上げ底部がこの底部を横切る渡り溝を有し、この渡り溝の両端が前記上げ底部の側面に開放していることを特徴としている。
【0012】
この発明において、渡り溝は少なくとも一部の上げ底部に形成される。この渡り溝は、狭い間隔を持って隣接する上げ底部の少なくとも一方に設けて、前記狭い間隙に渡り溝の一端を開放させて設けることが好ましい。
【0013】
上げ底部は、トレーに注入された未硬化の充填材のトレー内での流動をせき止める因子となることがある。しかし、請求項2の発明では、上げ底部によってせき止められた未硬化の充填材を、渡り溝に通してトレー内を移動させることができる。これにより、トレーの全域に充填材を確実に満たすことができる。
【0014】
本発明の好ましい形態である請求項3の発明は、前記複数の電気部品の内の一部の電気部品を覆い、この電気部品を前記充填材から隔離する部品キャップを備えていることを特徴としている。
【0015】
この発明において、部品キャップは電気絶縁物例えば合成樹脂や合成ゴムなどで形成される。部品キャップは1個又は複数の電気部品に被さる大きさに形成される。部品キャップは、トレーへの充填材の注入に伴い所定配置から動かないようにするとよい。そのための手段として、例えば回路基板に接着剤を用いて部品キャップを固定するとよい。部品キャップにより充填材から隔離される電気部品は、充填材と接してこれに埋設されることが好ましくない電気部品である。この種の電気部品として例えば電解コンデンサ及び可変抵抗器を挙げることができる。
【0016】
請求項3の発明では、部品キャップにより、回路基板に実装された電気部品の内の一部の電気部品を、トレーに充填された充填材から隔離できる。このため、隔離された電気部品の機能障害が充填材によってもたらされることを抑制できる。
【0017】
本発明の好ましい形態である請求項4の発明は、前記回路モジュールが前記電子回路に接続して前記回路基板に搭載された電線コネクタを備え、この電線コネクタを覆うコネクタキャップを前記トレーが備えていることを特徴としている。
【0018】
この発明において、コネクタキャップは合成樹脂又はゴムなどで作ることができる。コネクタキャップを作るゴムとしてEPDMを挙げることができる。コネクタキャップは、合成樹脂製又はゴム製のトレーと別体であっても、トレーと一体的に成形してもよい。
【0019】
請求項4の発明では、電線コネクタにコネクタキャップが被さっているので、トレーに充填された未硬化の充填材が、電線コネクタ内に侵入しないようにできる。このため、電線コネクタに挿入して接続される電線の接続不良を防止できる。
【0020】
本発明の好ましい形態である請求項5の発明は、前記トレーが、キャップ通孔を有したトレー本体とこの本体とは別に形成されて前記キャップ通孔を貫通した前記コネクタキャップを備え、前記コネクタキャップの外周に環状の溝が設けられ、この溝に前記キャップ通孔の孔縁が嵌合されていることを特徴としている。
【0021】
この請求項5の発明では、トレー本体にキャップ通孔の孔縁とコネクタキャップの外周の環状の溝との嵌合により、コネクタキャップとトレーとを接合している。このため、トレーに注入された未硬化の充填材が前記接合部を通って電線コネクタ内に侵入しないようにできる。
【0022】
前記課題を解決するために、請求項6に係る発明の点灯装置は、請求項1ないし5のいずれか一記載の電子機器により放電灯を点灯させることを特徴としている。
【0023】
この発明の点灯装置は、ランプを、平常時点灯させるものであっても、停電などの非常時に点灯させるものであってもよい。この請求項6の点灯装置は、トレー、回路モジュール、及び充填材を備えるなる防水アセンブリを収容する外郭ケースに収容して使用することが好ましい。この場合、外郭ケースは防水アセンブリを満杯状態に収容することが、小型化を促進し、防水アセンブリから外郭ケースへの放熱を良くする上で好ましい。ここに満杯状態とは、防水アセンブリがその各面を外郭ケースの各面に熱伝導的に接した状態に外郭ケースに収容されている状態が好適である。しかし、防水アセンブリの少なくとも一部、好ましくは回路基板の半田付け面を覆った充填材の半田カバー層を熱伝導的に外郭ケースに接触させて、その他の部分を外郭ケースから少し離した収容形態も含んでいる。外郭ケースは、合成樹脂でも作れるが、外部への放熱性能を得るためにアルミニウム合金などの熱伝導性が良好な金属製とするとよい。
【0024】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか一記載の電子機器により放電灯を点灯する点灯装置であるので、トレーに充填した充填材によって回路モジュールの回路基板及び電気部品等を防水できる。このため、防水ケースを要しないで高湿度環境に耐える防水性能を得ることができる。更に、トレーの上げ底部により、充填材の使用量が少なく軽量化できる。しかも、トレーに充填材を注入するのに要する時間が短くなることに加えて、上げ底部でトレーの強度が向上されて、トレーを回路モジュールに被せる際の作業性を向上できる。
【0025】
前記課題を解決するために、請求項7に係る発明の照明器具は、シャーシと;このシャーシに取付けられたランプソケットと;このソケットに取外し可能に支持された放電灯と;前記シャーシに取付けられて前記放電灯を点灯させる請求項6に記載の点灯装置と;を具備していることを特徴としている。
【0026】
この発明の照明器具が備えた点灯装置は、請求項6に記載のものであるので、防水性能を有するとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる点灯装置を備えた照明器具を提供できる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明の電子機器によれば、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができるとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる。
【0028】
請求項2に係る発明の電子機器によれば、トレーの全域に未硬化の充填材を確実に行き渡らせて所定の防水性能を得ることができる。
【0029】
請求項3に係る発明の電子機器によれば、トレーに充填された充填材から部品キャップにより隔離された電気部品の機能障害が充填材によってもたらされることを抑制できる。
【0030】
請求項4及び5に係る発明の電子機器によれば、電線コネクタに挿入して接続される電線の接続不良を防止できる。
【0031】
請求項6に係る発明の点灯装置によれば、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができるとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる。
【0032】
請求項7に係る発明の照明器具によれば、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができるとともに、軽量でかつ組立て作業性を向上できる点灯装置を備えた照明器具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1から図14を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
【0034】
図1中符号1で示す照明器具は、屋外灯、又はトンネル内に設置されるトンネル灯、或いは駅舎の軒下灯等として、好ましい防水性を備えて使用される。この照明器具1は、シャーシ2と、ランプソケット3と、放電灯例えば直管型の蛍光ランプ4と、防水型の電子機器例えば防水型の点灯装置5とを備えている。点灯装置5は蛍光ランプ4を点灯させる電子安定器として機能する。
【0035】
図1に例示されたシャーシ2は金属製であって直方体形状をなしている。シャーシ2の長手方向両端部にランプソケット3がたとえば下向きに突設されている。蛍光ランプ4はランプソケット3に取外し可能に支持されている。蛍光ランプ4を点灯させる点灯装置5はシャーシ2に内蔵されている。
【0036】
図2から図4に示すように点灯装置5は、外郭ケース11と、回路モジュール21と、トレー41と、充填材55とを具備している。
【0037】
外郭ケース11は、収容ベース12と、これに連結されたカバー15とを有している。収容ベース12及びカバー15とは、例えば図示しない切起し片を孔や切欠き等の受け部に引っ掛けて連結されている。収容ベース12とカバー15との一方に切起し片が形成され、他方に受け部が形成される。
【0038】
収容ベース12及びカバー15は、金属製例えば放熱性に優れたアルミニウム合金製とすることが好ましい。これに代えて収容ベース12及びカバー15を材料コストが安い鉄系金属製とすることも可能である。
【0039】
図2及び図3に示すように収容ベース12は、ベース壁12aと、この幅方向両縁から夫々直角状に折り曲げられた側壁12bとを有している。この収容ベース12の全長は後述する回路基板22より長い。ベース壁12aの長手方向両端部には固定部13が形成されている。固定部13は孔又は切欠きからなる。これらの固定部13を通るねじ等の固定部品により、ベース壁12aをシャーシ2に接触させて、点灯装置5がシャーシ2に取付けられている。収容ベース12はシャーシ2への伝熱面として機能している。
【0040】
図2から図4に示すようにカバー15は、例えばカバー主壁15aと、側壁15bと、端壁15cとを有している。カバー主壁15aはカバー15の幅方向両側に夫々斜めに曲げられた部位を有する。これらの部位から側壁15bは折り曲げられている。端壁15cはカバー主壁15aの長手方向両端から夫々直角状に折り曲げられている。端壁15cはカバー主壁15a及び側壁15bが作る横樋形状の長手方向両端を閉じるように設けられている。
【0041】
カバー15は固定部13を露出させる程度に収容ベース12よりも短く形成されている。カバー15の側壁15bは収容ベース12の側壁12bの内面に接している。これらの側壁12b、15bは連結されている。収容ベース12とカバー15とは、重ね合わされた側壁12b、15bを通じて熱伝導可能である。
【0042】
カバー15の長手方向一端部に孔状部16が開けられている。カバー15の長手方向他端部に孔状部17が開けられている。これらの孔状部16,17は四角形状である。一方の孔状部16は後述の入力側のコネクタキャップ43を露出させるために設けられている。他方の孔状部17は後述の出力側のコネクタキャップ44を露出させるために設けられている。
【0043】
蛍光ランプ4を点灯させる回路モジュール21は、電気絶縁性の回路基板22と、点灯回路23(図7及び図9参照)と、入力用の電線コネクタ24と、出力用の電線コネクタ25とを備えている。
【0044】
回路基板22は、電気絶縁性を有し、カバー15内に収まる大きさの長四角形状をなしている。回路基板22の一面は部品取付け面22aとして利用される。回路基板22の他面は半田付け面22bとして利用される。半田付け面22bには回路パターンが印刷されている。半田付け面22bは絶縁性のレジスト層(図示しない)で覆われている。
【0045】
回路基板22は、その表裏面に亘る充填材通し部として、例えば複数の切欠き22cを有している。これらの切欠き22cは図7から図9等に示すように回路基板22の両側縁に夫々が設けられている。これらの切欠き22cは回路パターンを避けている。充填材通し部は、回路パターンを断ち切らない位置であれば、どこに設けても良い。更に、充填材通し部は、回路基板22の両側縁間に位置する孔で形成することも可能であり、孔と切欠きと併用することも可能である。
【0046】
点灯回路23は、回路パターンとこれに接続された複数の電気部品26(図4及び図8等参照)とを組み合わせてなり、例えばインバータ回路部を含んで構成されている。電気部品26として、パワートランジスタ等の半導体、抵抗、コンデンサ、コイル、トランス、ダイオード、その他の各種のチップ部品等を挙げることができる。
【0047】
図8中符号26aは電気部品26の一つであるパワートランジスタを示し、これは発熱を伴う。符号27はパワートランジスタ26aに熱的に接続された放熱板を示している。放熱板27は、部品取付け面22aに対して直角となるように回路基板22の一側縁に沿って起立されていて、回路基板22の側縁より外側に多少はみ出ている。
【0048】
点灯回路23は回路基板22の長手方向両端部を除いた中間部の表裏両面に亘って形成されている。この点灯回路23をなす電気部品の殆どは部品取付け面22aに実装されている。電気部品26は、チップ部品等の面実装部品の他に、フロー半田処理により回路基板22に搭載される複数の電気部品を含んでいる。フロー半田処理される電気部品は、回路基板22を貫通するピン状の端子29を有している。フロー半田処理される電気部品は、回路基板22をフロー半田層に通すことにより、端子29を回路パターンの各ランドに半田付けされて回路基板22に実装されている。
【0049】
図8に示すように入力用(高圧側)の電線コネクタ24は回路基板22の長手方向一端部に半田付けされている。出力用(低圧側)の電線コネクタ25は回路基板22の長手方向他端部に半田付けされている。これらの電線コネクタ24,25もピン状の端子30を有している。端子29を有した前記電気部品とともに電線コネクタ24,25は、フロー半田処理により回路基板22に搭載されている。電線コネクタ24には図示しない電源側の絶縁被覆電線(図示しない)の芯線が差し込み接続される。電線コネクタ25には器具内配線用の絶縁被覆電線(図示しない)の芯線が差し込み接続される。
【0050】
図4及び図8中符号35は部品キャップを示している。部品キャップ35は電気絶縁物例えば硬質合成樹脂又は合成ゴム等で形成されている。この部品キャップ35は、一部の電気部品に被されていて、この電気部品に充填材55が接触しないように設けられている。部品キャップ35により充填材55から隔離される電気部品は、充填材55と接してこれに埋設されることが好ましくない電気部品である。この種の電気部品として例えば電解コンデンサ26bを挙げることができる。部品キャップ35が被さった電気部品26は、部品キャップ35の内面に接しても、接しなくても良い。
【0051】
部品キャップ35の開口面は回路基板22の部品取付け面22aに接触している。部品キャップ35を部品取付け面22aに図示しない接着剤で固定することは好ましい。それにより、回路基板22に対する部品キャップ35の保持と、この部品キャップ35内への未硬化の充填材の侵入を妨げるシール機能を得ることができる。
【0052】
トレー41は充填材55を充填するための充填容器である。図3及び図4に示すようにトレー41は、トレー本体42と、複数例えば一対のコネクタキャップ43,44とを有している。トレー本体42は、カバー15より僅かに小さく、カバー15の内面に接するようにこの内面形状に沿って収容される。コネクタキャップ43,44はトレー本体42とは別に形成されたものである。
【0053】
トレー本体42は、好ましくは耐熱性を有する廉価な電気絶縁材、例えばポリプロピレンエチレン(PP)製のフィルム状成形品からなる。図6から図8、図10、図12等に示すようにトレー本体42は、その長手方向両端部にキャップ接続部42aを有している。これらキャップ接続部42a間のトレー本体42の深さは、キャップ接続部42aでのトレー本体42の深さより深い。この深い部位はカバー15の内面に接触する大きさに形成されている。キャップ接続部42aの夫々には図8に示すように例えば四角形状のキャップ通孔42dが開けられている。
【0054】
図3、図5から図8中符号42bはトレー本体42の側板を示している。図5中符号42cはトレー本体42の開口縁を示している。開口縁42cは、トレー本体42の前記深い部位から左右のキャップ接続部42aに亘って連続していて、例えば長方形状をなしている。
【0055】
開口縁42cは成形されたトレー本体42の切除縁部42eを切断することによって形成されている。すなわち、図9を除く図7から図12中符号42fは開口縁42cに相当する角部を示している。この角部42fに切除縁部42eが一体に連続されている。切除縁部42eは、角部42fより一回り大きく形成されていて、スカート状をなしている。角部42fに沿って切断することによって、切除縁部42eが除かれて開口縁42cが形成される。
【0056】
図5から図8に示すようにトレー本体42の側板42bの夫々に、リブ状凸部42gが複数設けられている。これらリブ状凸部42gは、側板42bの長手方向に所定の間隔を置いて設けられ、かつ、側板42bの長手方向に直交する方向に延びている。リブ状凸部42gは、側板42bを外側から凹ませて側板42bの内面に突出されている。リブ状凸部42gは、側板42bを内側から凹ませて側板42bの外面に突出させることもできる。リブ状凸部42gは側板42bを補強している。
【0057】
図7等に示すようにトレー本体42には支持凸部45が複数形成されている。これらの支持凸部45は側板42bの内面に突出してトレー41の厚み方向(上下方向)に延びている。トレー41には、そのキャップ接続部42a間に位置して複数の上げ底部46から52が一体に形成されている。上げ底部47から51はトレー本体42の長手方向中央部に集まっている。
【0058】
上げ底部46から52は、回路モジュール21の電気部品26の配設密度が低い領域とチップ部品等の高さが低い電気部品が集まって配設された領域などに対応して設けられている。したがって、図4及び図8等に示すようにトレー本体42の外面はでこぼこになっていて、このでこぼこは電気部品26の配置及び高さ等に応じている。
【0059】
上げ底部46から52はいずれもトレー本体42の側板42bから離れている。従って、トレー41に充填材55が充填される前の状態で、側板42bとの間に、通路P(図10及び図14参照)が形成されている。これらの通路Pは、上げ底部46から52を境にトレー41の長手方向両側を連通している。
【0060】
通路Pを設けて上げ底部46から52を形成した構成では、上げ底部46から52を通るトレー本体42の横断面の断面係数が大きくなり、トレー本体42の強度を向上できる。これにより、トレー41の板厚が薄いにも拘わらず、トレー本体42の中央部が曲がり難くでき、その取り扱いを容易にできる。したがって、点灯装置5の組立てに際して、トレー41を回路モジュール21に被せる作業の容易化に貢献できる。トレー本体42の両端部はキャップ接続部42aにより強度が向上されている。
【0061】
コネクタキャップ43,44は例えば合成ゴム製である。一方のコネクタキャップ43は、その弾性変形により入力用の電線コネクタ24に密に被嵌可能に形成されている。コネクタキャップ43は、一方のキャップ接続部42aのキャップ通孔42dを液密に貫通している。他方のコネクタキャップ44は、その弾性変形により出力用の電線コネクタ25に密に被嵌可能に形成されている。コネクタキャップ44は、他方のキャップ接続部42aのキャップ通孔42dを液密に貫通している。
【0062】
コネクタキャップ43,44がキャップ通孔42dを液密に貫通する構造は同じである。このため、コネクタキャップ44とそれに対するキャップ通孔42dとの関係を代表して説明する。コネクタキャップ44は、その開放端面44a側の外周に環状の溝52(図12及び図13参照)を有している。この溝52にキャップ通孔42dの孔縁が嵌合されている。これにより、コネクタキャップ44とキャップ通孔42dとの間の液密が図られている。
【0063】
コネクタキャップ43,44の開放端面43a,44aはトレー本体42内に位置され、その高さ位置は支持凸部45の高さ位置と略同じである。これら開放端面43a,44aの高さ位置よりも上げ底部46から52の底面の高さ位置は低い。コネクタキャップ43,44の開放端面43a,44aは回路基板22の部品取付け面22aに接している。コネクタキャップ43,44を図12で代表して示す接着剤53で部品取付け面22aに固定することが好ましい。それにより、コネクタキャップ43,44と回路基板22との間をシールして、コネクタキャップ43,44への未硬化の充填材の侵入を妨げることができる。
【0064】
図8に示すようにコネクタキャップ43,44は、電源側又は器具内配線用の絶縁被覆電線の端末部が挿入される電線差込部54を夫々複数有している。図12に示したコネクタキャップ44で代表するように電線差込部54は、小穴が開けられた薄肉部54aを有している。電線差込部54の内面には複数の環状突起54bが設けられている。
【0065】
前記電線の端末部にむき出された芯線及び端末部は薄肉部54aを押し通って電線差込部54に挿入できる。この挿入に伴い電線端末部の外周が各環状突起54bに夫々密接されて液密が図られる。電線差込部54に挿入された電線端末部の芯線は、電線コネクタ24又は25に挿入される。この挿入された芯線は、電線コネクタ24,25に内蔵された図示しない端子に差し込まれて、電気的かつ機械的に接続される。
【0066】
前記回路モジュール21は、その部品取付け面22aをトレー41の内部に臨ませてトレー41に収容されている。この収容に先立って、部品取付け面22aには部品キャップ35が電解コンデンサ26bを覆って取付けられる。更に、電線コネクタ24には既にコネクタキャップ43が被嵌されている。同様に、電線コネクタ25にもコネクタキャップ44が被嵌されている。しかも、トレー41に回路モジュール21を収容する時には、コネクタキャップ43,44の溝52と、キャップ通孔42dの孔縁とが嵌合される。
【0067】
以上の収容によって、回路基板22の長手方向両端部が、夫々コネクタキャップ43,44の開放端面43a,44aに載って支持される。同様に、前記収容により、回路基板22の中間部が、複数の支持凸部45に載って支持される。これらの支持と、コネクタキャップ43,44に対するキャップ通孔42dの孔縁の嵌合とによって、トレー41の所定位置に回路モジュール21が位置決めされる。
【0068】
こうしてトレー41に収容された回路モジュール21の電気部品26の端子29、及び電線コネクタ24,25の端子30の先端は、夫々上を向いて回路基板22の半田付け面22bから突出している。しかし、各端子29,30は、トレー41の開口縁42cに相当する角部42fより低い配置されている(図12参照)。
【0069】
更に、図3及び図4に例示されるように各電気部品26の先端(図3及び図4では下端)は、いずれもトレー本体42の内面から離れている。しかも、前記収容により、回路モジュール21の電気部品26の配設密度が低い領域とチップ部品等の高さが低い電気部品が集まって配設された領域とには、トレー本体42の上げ底部46から52が夫々対向する。
【0070】
前記充填材55は、電気絶縁性及び防水性を有する合成樹脂である。本実施形態ではフィラー(図示しない)が混入されたウレタン樹脂を用いている。フィラーは酸化アルミニウム等の無機材料からなる。フィラーの混入は充填材55の放熱性を高める上で好ましい。この充填材55は、トレー41に収容された回路モジュール21を埋設してトレー41に充填されている。
【0071】
この充填は、未硬化の充填材55wをトレー41の開口縁42cと回路基板22の間の隙間、とりわけ切欠き22cを通して注入して行われる。この状況を図14中二点鎖線で示す。
【0072】
この注入作業では、未硬化の充填材55wが回路基板22の下側への流れ込む間口が、他の隙間より切欠き22cによって広げられている。しかも、この流れ込みに伴って回路基板22の下側の空気が、注入に使用されない他の切欠き22cを通して抜け易い。このため、ある程度粘性を有した未硬化の充填材55wであっても、スムーズにトレー41に注入して充填できる。
【0073】
このため、点灯装置5の組立てに際して、充填材55の充填に要する時間が短くなり、コストの低減に貢献できる。しかも、充填材55wの充填において、トレー41内をその長手方向に沿って流動する充填材55wを、側板42bと上げ底部46から52との間の通路Pに通すことができる。これによっても、充填に要する時間を短くできる。
【0074】
既述のように充填材55wと空気との置換が良好であることにより、充填不良を抑制できる。つまり、残留空気に起因する空洞が、部品取付け面22aとトレー本体42との間にできないようにできる。空洞が充填材55内に残る場合には、そこに水分が溜まる可能性があって、防水及び絶縁の観点から好ましくない。
【0075】
既述の充填材55wの充填時に注入に用いない切欠き22cは、注入された充填材55wの余剰分の戻し通路としても使用される。この戻し通路を通して、既に注入された充填材55wを回路基板22の下側から回路基板22の上側に逆流させることができる。
【0076】
これにより、半田付け面22bを充填材55wで覆って、この半田付け面22bを絶縁できる。この状態を図11に示す。充填材55wの充填は、トレー41の角部42fを目安として、この角部42fに充填材55wの上面が達した際に停止される。
【0077】
以上の充填の際、トレー41の側板42bには充填材55wの重さが掛かる。側板42bは、そこに設けられている複数のリブ状凸部42gで補強されている。このため、トレー41の幅が広がるように側板42bが外側に変形することを抑制できる。したがって、トレー41の形状を維持し易いとともに、充填材55wの充填量のばらつきも抑制できる。
【0078】
電線コネクタ24,25に個別に被さって保持されたコネクタキャップ43,44は、トレー41のキャップ通孔42dを貫通している。この貫通部において、コネクタキャップ43,44の環状の溝52にキャップ通孔42dの孔縁が嵌合している。このため、貫通部を通って未硬化の充填材55wがトレー41外に漏れることを防止できる。これにより、防水アセンブリ31の外観不良を防止できるとともに、充填材55wの充填量のばらつきも抑制できる。
【0079】
前記充填作業は、回路モジュール21が納められたトレー41をカバー15の内側に嵌合させた状態(図11中二点鎖線参照)で実施することが好ましい。この場合、充填に伴う側板42bの変形をカバー15により確実に防止できる。トレー41がカバー15内に嵌合された状態では、コネクタキャップ43,44が夫々対向した孔状部16,17に露出される。これにより、コネクタキャップ43,44の電線差込部54への電線の挿入が可能な状態となる。
【0080】
図3、図4、及び図11中符号55aは回路基板22の半田付け面22bを覆った充填材55の半田カバー層を示している。半田カバー層55a内には各端子29,30が埋設されている。半田カバー層55aの表面は、平面であることが好ましい。この表面の高さは例えばトレー41の開口縁42cに相当する角部42fの高さと同じである。半田カバー層55aの表面の高さは角部42fより低くすることもできる。
【0081】
充填材55wが略満たされたトレー41は、図示しない加熱硬化炉に通され、それにより充填材55wの硬化処理がなされる。この加熱処理で与えられる熱に対してPET製のトレー41は十分な耐熱性を発揮できる。トレー41の切除縁部42eは、充填材55wの充填から加熱処理に至るまでの間にトレー41をハンドリングする際に利用される。更に、切除縁部42eは、トレー41のハンドリングにおいて、このトレー41内の未硬化の充填材55wが零れることを抑制する堤防として機能する。
【0082】
以上の充填において、予め脱泡処理された未硬化の充填材55wを使用することは好ましい。更に、トレー41に注入されつつある未硬化の充填材55w、又はトレー41に注入された充填材55wに対して脱泡処理を施すと良い。脱泡処理は減圧雰囲気中に充填材55wを置くことによりなされる。こうした脱泡処理によって、残留気泡に起因する空洞が硬化した充填材55内に形成されないようにできる。
【0083】
加熱処理後に切除縁部42eは切除される。この切除によりトレー41の開口縁42cと半田カバー層55aの表面とは面一状態に連続する。こうして組立てられた充填材55と、トレー41と、回路モジュール21とは、防水アセンブリ31を形成する。防水アセンブリ31はその充填材55の防水性能によって回路モジュール21に対する防水性を担保する。
【0084】
この防水アセンブリ31は、トレー41が上げ底部46から52を有しているので、上げ底部がないトレーを用いた構成に比較して充填材55の使用量を少なくできる。これにより、充填作業時間の短縮とともに、点灯装置5のコスト低減を図ることが可能である。
【0085】
防水アセンブリ31は、そのトレー41の外面がカバー15の内面に接触するようにカバー15に収容される。言い換えれば、トレー41はカバー15に対して満杯状態に収容される。これにより、防水アセンブリ31からカバー15への熱伝導が可能である。この熱伝導において、リブ状凸部42gが側壁15bと側板42bとの間のスペーサとなることがない。更に、回路基板22からはみ出している放熱板27は、トレー41の一方の側板42bをカバー15の一方の側壁15bに強く押し付けて密接状態となる。放熱板27は発熱量が多いパワートランジスタ26aに接続されているので、この放熱板27を経由するパワートランジスタ26aからカバー15への熱伝導は確実である。
【0086】
防水アセンブリ31が収容されたカバー15には収容ベース12が被される。この後、これら収容ベース12とカバー15とが連結されて、外郭ケース11が組立てられる。この組立てによって、充填材55の半田カバー層55aは、収容ベース12のベース壁12aで覆われる。しかも、これらのベース壁12aと半田カバー層55aとは図3及び図4に示すように面接触する。半田カバー層55aは電気絶縁性を有している。このため、前記面接触にも拘わらず、収容ベース12と回路モジュール21との間の電気絶縁を図るシート部材を要しない。
【0087】
前記面接触により広い接触面積が確保される。そのため、防水アセンブリ31の熱を収容ベース12に円滑に伝導させることができる。ベース壁12aと半田カバー層55aの間に隙間が生じる場合には、伝熱部材を、ベース壁12aと半田カバー層55aの間に挟設すればよい。この伝熱部材は前記隙間に相当する厚みを有した良熱伝導性のシートからなる。この伝熱部材により、ベース壁12aと半田カバー層55aの間の円滑な熱伝導を図ることが可能である。
【0088】
外郭ケース11の収容ベース12とカバー15の夫々には排水部が設けられている。つまり、図2から図4に示すように収容ベース12のベース壁12aには複数の排水部14が開けられている。これとともに、カバー15のカバー主壁15aにも複数の排水部18が開けられている。これらの排水部14,18は孔からなる。
【0089】
湿気などが外郭ケース11とトレー41及び半田カバー層55a等との間に結露することがある。この場合に、結露水を排水部14,18に通して外郭ケース11の外部に排出できる。したがって、点灯装置5の電気絶縁性能を向上できる。こうした排水は、外郭ケース11が鉄系金属で作られた場合に、この外郭ケース11に錆が発生することを抑制する上でも有効である。
【0090】
以上の構成の点灯装置5は、外郭ケース11のカバー15に収められるトレー41を備え、このトレー41に収容した回路モジュール21を、その電線コネクタ24,25を除いて、トレー41に充填した充填材55に埋設している。
【0091】
充填材55は、電気絶縁性でかつ防水性を有している。このため、充填材55によって、回路モジュール21の回路基板22、電気部品26、及び半田付け面22b等を防水できる。
【0092】
トレー41はカバー15内に満杯状態に収容される大きさである。このトレー41を用いて外郭ケース11の内部で既述の防水を実現しているので、防水の構成を原因として外郭ケース11が大きくなることがない。これにより、既存の製造設備で作られる外郭ケースを用いることも可能である。これとともに、以上の外郭ケース11内での防水の構成により、外郭ケース11を収容する大形な防水ケースを要しないで、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができる。
【0093】
このため、点灯装置5を小形に構成できる。しかも、この点灯装置5の組立ての他に、この点灯装置5を防水ケースに収容する手間、及びこの後に防水ケースを組立てる手間が不要である。これにより、点灯装置5を容易に組立てることができる。
【0094】
以上のように防水ケースを用いること自体でのコスト増加をなくすことができる。これに加えて、組立てコスト上のコスト低減できる。したがって、点灯装置5ひいてはこの点灯装置5を備える照明器具1を低コスト化できる。
【0095】
更に、カバー15に上げ底部46から52を設けたので、このカバー15の強度を高めて組立て易くできる。その上、上げ底部46から52により、充填材55の充填容積を減らして充填量を少なくできる。この点においても、点灯装置5ひいてはこの点灯装置5を備える照明器具1を低コスト化できる。
【0096】
点灯装置5の充填材55は防水性能だけではなく放熱性能も備えている。このため、パワートランジスタ26aその他発熱を伴う電気部品の熱を、充填材55を経て外郭ケース11に伝導できる。この場合、充填材55の容量が大であるとともに、この充填材55から外郭ケース11への熱伝導面積も大きい。したがって、優れた放熱特性を得ることができる。特に、無機質のフィラーが混入された充填材55を採用することにより、放熱特性をより向上できる。
【0097】
しかも、既述のように回路モジュール21が充填材55に埋っているので、充填材55によって確実な防塵ができる。これにより、塵が多い場所で使用される点灯装置5ひいてはこの点灯装置5を備える防塵型の照明器具1としても好適である。
【0098】
電線コネクタ24,25に密に被嵌されたコネクタキャップ43,44は、回路基板22の部品取付け面22aに接着されている。このため、防水アセンブリ31の製造時に、トレー41に注入された未硬化の充填材55wが、コネクタキャップ43,44内に侵入することが防止される。これにより、電線コネクタ24,25内に充填材55wが侵入することがない。したがって、製造された点灯装置5の電線コネクタ24,25に絶縁被覆電線を差し込んで接続する場合、この接続が、硬化された充填材55によってできなくなる恐れがない。
【0099】
防水アセンブリ31の製造時、電解コンデンサ26bは、これを覆った部品キャップ35によりトレー41に充填された未硬化の充填材55wから隔離されている。つまり、トレー41に充填された充填材55wが、電解コンデンサ26bに接して、この電解コンデンサ26bを埋めることがない。このため、硬化された充填材55によって電解コンデンサ26bの機能低下などがもたらされる恐れがなく、電解コンデンサ26bに所期の機能を発揮させることができる。
【0100】
図15から図17は本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態は以下説明する事項以外は第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態と同一又は機能的に同様な構成については第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0101】
第2実施形態では、一部の上げ底部48,49,51に、渡り溝48a,49a,51aを個別に設けている。これらの上げ底部48,49,51は、他の上げ底部よりもカバー15を横切っている長さが長い。
【0102】
渡り溝48aは上げ底部48を横切っている。この渡り溝48aの両端は、上げ底部48の側面の内の二つの側面、好ましくは図15に示すようにトレー41の長手方向に対応する二つの側面に開放されている。
【0103】
渡り溝49aは上げ底部49を横切っている。この渡り溝49aの両端は、上げ底部49の側面の内の二つの側面、好ましくは図15に示すようにトレー41の長手方向に対応する二つの側面に開放されている。
【0104】
渡り溝51aは上げ底部49を横切っている。この渡り溝51aの両端は、上げ底部51の側面の内の二つの側面、好ましくは図15に示すようにトレー41の長手方向に対応する二つの側面に開放されている。
【0105】
以上説明した事項以外の構成は第1実施形態と同じである。したがって、この第2実施形態でも第1実施形態と同様の作用を得て、本発明の課題を解決できる。その上、上げ底部48,49,51の夫々に渡り溝48a,49a,51aを設けたので、以下の点で優れている。
【0106】
上げ底部48,49,51の夫々はカバー15を幅方向に横切っている長さが長い。これにより、トレー41内に注入されてトレー41の長手方向に流動しようとする未硬化の充填材55wをせき止め易い。それにより、図15に示すように隣接した上げ底部48,49相互間の狭い空隙Gには、充填材55wが満ち難い。
【0107】
しかし、せき止め止められた未硬化の充填材55wは、渡り溝48a,49a,51aを通路としてトレー41内を移動できる。これにより、トレー41の全域に充填材55wを容易かつ確実に満たすことができる。しかも、空隙Gに渡り溝48a,49aの端が連続している。このため、渡り溝48a,49aを通じて未硬化の充填材55wを容易かつ確実に空隙Gにも満たすことができる。したがって、空隙Gが空洞として残ることを抑制できるので、点灯装置5の防水及び絶縁上の信頼性が高められる。
【0108】
図18は本発明の第3実施形態を示している。第3実施形態は以下説明する事項以外は第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態と同一又は機能的に同様な構成については第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0109】
第3実施形態では、トレー41の両端部は、電線コネクタ24,25を収容できる深さに形成されている。第1実施形態で使用したコネクタカバーは省略されている。更に、トレー本体42はコネクタ接続部を有していない。電線コネクタ24,25の夫々には絶縁被覆電線57,58が個別に挿入して接続されている。これら絶縁被覆電線57,58はトレー41及びカバー15を貫通している。この貫通部には、合成ゴム等からなるブッシュ59が設けられている。ブッシュ59は、絶縁被覆電線57,58の保護と、トレー41に充填される未硬化の充填材が前記貫通部を通って漏れることを防止している。
【0110】
トレー41への未硬化の充填材の注入は、絶縁被覆電線57,58を予め電線コネクタ24,25に接続し、トレー41及びカバー15に対する絶縁被覆電線57,58の貫通部を、ブッシュ59で封止した状態でなされる。したがって、回路基板22、電気部品26、及び電線コネクタ24,25の備えた回路モジュール21全体が、充填材55に埋設されている。
【0111】
以上説明した事項以外の構成は第1実施形態と同じである。したがって、この第3実施形態でも第1実施形態と同様の作用を得て、本発明の課題を解決できる。
【0112】
本発明において、回路モジュールは、電気コネクタを備えなくても良い。この場合、回路基板の回路基板に絶縁被覆電線を直接半田付けなどにより接続すればよい。この絶縁被覆電線は充填材を通って回路モジュールの外部に引き出される。
【0113】
本発明を電子機器として実施する場合は、点灯装置に実施を制約されるものではない。例えば防水型ラジオの電気回路をなす電子機器として本発明は適用できる。更に、防水機能を強化する必要がある携帯型の電子機器等にも、本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の第1実施形態に係る照明器具を示す斜視図。
【図2】図1の照明器具が備える本発明の第1実施形態に係る点灯装置を示す斜視図。
【図3】図2中F3−F3線に沿う断面図。
【図4】図2中F4−F4線に沿う断面図。
【図5】図2の点灯装置の防水アセンブリを裏側から見て示す斜視図。
【図6】図5の防水アセンブリが備えるトレーを表側から見て示す斜視図。
【図7】図6のトレーとこれに収容される回路モジュールとを分離した状態で裏側から見て示す斜視図。
【図8】図6のトレーとこれに収容される回路モジュールとを分離した状態で表側から見て一部を分解して示す斜視図。
【図9】図5の防水アセンブリを一部切欠いて示す裏面図。
【図10】図5の防水アセンブリが備えるトレーを示す裏面図。
【図11】図7に示した回路モジュールを収容したトレーに充填材が注入された状態を示す断面図。
【図12】図5の防水アセンブリが備えるトレーとコネクタカバーとの関係を示す断面図。
【図13】図5の防水アセンブリが備えるコネクタカバーを示す斜視図。
【図14】図10中F11−F11線に沿って示すトレーの断面図。
【図15】本発明の第2実施形態に係る点灯装置が備えるトレーを示す裏面図。
【図16】図15中F16−F16線に沿って示すトレーの断面図。
【図17】第2実施形態に係る点灯装置を示す断面図。
【図18】本発明の第3実施形態に係る点灯装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0115】
1…照明器具、2…シャーシ、3…ランプソケット、4…蛍光ランプ(放電灯)、5…点灯装置(電子機器)、11…外郭ケース、12…収容ベース、15…カバー、16,17…孔状部、21…回路モジュール、22…回路基板、22a…部品取付け面、22b…半田付け面、22c…切欠き(充填材通し部)、23…点灯回路、24,25…電線コネクタ、26…電気部品、26a…電解コンデンサ(一部の電気部品)、29,30…端子、31…防水アセンブリ、35…部品キャップ、41…トレー、42…トレー本体、42a…キャップ接続部、42d…キャップ通孔、43,44…コネクタキャップ、46から52…上げ底部、48a,49a,51a…渡り溝、52…環状の溝、55…充填材、55a…半田カバー層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板及びこの基板に搭載されて電子回路をなす複数の電気部品を備えた回路モジュールと;
この回路モジュールを収容するとともに、前記回路基板に向けて突出する上げ底部を有したトレーと;
防水性及び電気絶縁性を有し、前記回路基板及び電気部品を埋めて前記トレーに充填された充填材と;
を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記上げ底部がこの底部を横切る渡り溝を有し、この渡り溝の両端が前記上げ底部の側面に開放していることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の電気部品の内の一部の電気部品を覆い、この電気部品を前記充填材から隔離する部品キャップを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記回路モジュールが前記電子回路に接続して前記回路基板に搭載された電線コネクタを備え、この電線コネクタを覆うコネクタキャップを前記トレーが備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の電子機器。
【請求項5】
前記トレーが、キャップ通孔を有したトレー本体とこの本体とは別に形成されて前記キャップ通孔を貫通した前記コネクタキャップを備え、前記コネクタキャップの外周に環状の溝が設けられ、この溝に前記キャップ通孔の孔縁が嵌合されていることを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一記載の電子機器により放電灯を点灯することを特徴とする点灯装置。
【請求項7】
シャーシと;
このシャーシに取付けられたランプソケットと;
このソケットに取外し可能に支持された放電灯と;
前記シャーシに取付けられて前記放電灯を点灯させる請求項6に記載の点灯装置と;
を具備することを特徴とする照明器具。
【請求項1】
回路基板及びこの基板に搭載されて電子回路をなす複数の電気部品を備えた回路モジュールと;
この回路モジュールを収容するとともに、前記回路基板に向けて突出する上げ底部を有したトレーと;
防水性及び電気絶縁性を有し、前記回路基板及び電気部品を埋めて前記トレーに充填された充填材と;
を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記上げ底部がこの底部を横切る渡り溝を有し、この渡り溝の両端が前記上げ底部の側面に開放していることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の電気部品の内の一部の電気部品を覆い、この電気部品を前記充填材から隔離する部品キャップを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記回路モジュールが前記電子回路に接続して前記回路基板に搭載された電線コネクタを備え、この電線コネクタを覆うコネクタキャップを前記トレーが備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の電子機器。
【請求項5】
前記トレーが、キャップ通孔を有したトレー本体とこの本体とは別に形成されて前記キャップ通孔を貫通した前記コネクタキャップを備え、前記コネクタキャップの外周に環状の溝が設けられ、この溝に前記キャップ通孔の孔縁が嵌合されていることを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一記載の電子機器により放電灯を点灯することを特徴とする点灯装置。
【請求項7】
シャーシと;
このシャーシに取付けられたランプソケットと;
このソケットに取外し可能に支持された放電灯と;
前記シャーシに取付けられて前記放電灯を点灯させる請求項6に記載の点灯装置と;
を具備することを特徴とする照明器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−80055(P2006−80055A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169856(P2005−169856)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】
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