説明

電子機器およびカメラ装置

【課題】電子部品からの不要輻射を抑えることができ、さらに、組立てに要する工数が少なくかつ時間も短縮され、製造コストも低く抑えることのできる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、カメラ画像撮影用の電子部品が内部に収容される樹脂製のケース2と、ケース2の内側に取り付けられる金属製のシールド部材3とを備えたカメラ装置1である。シールド部材3は、二つのカシメ穴4を備えており、各カシメ穴4の周囲には、内側に向けて突出する三つのカシメ片が設けられている。ケース2は、各カシメ穴4に対応する位置にボス部6を備えている。シールド部材3をケース2に取り付けた状態では、カシメ穴4にボス部6が押し込まれ、変形した三つのカシメ片によってボス部6が挟まれて、シールド部材3がケース2に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要輻射を抑える機能を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器が動作すると、その内部に備えられた電子部品から不要輻射が発生する。この不要輻射が筐体の外部に漏れてしまうと、他の電子部品の動作に影響を与えてしまうおそれがある。そのため、この不要輻射をできるだけ筐体の外部に漏らさないための対策が必要になる。そこで、従来、電子機器の内部に備えられた電子部品などからの不要輻射を抑えるために、樹脂性の筐体に導電性塗料を塗布する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−338361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、導電性塗料の塗布や乾燥などに多くの工程が必要であり、組立てに要する工数が多くなるという問題があった。また、導電性塗料が十分に乾燥するまでは次の工程に進むことができないため、導電性塗料の乾燥を待つための時間がかかるという問題があった。さらに、導電性塗料は(金属板などに比べると)比較的高価な材料であり、また塗布や乾燥を行なうために専用の機械(高価な機械)が必要であるため、その分だけ製造コストが多くかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、不要輻射を抑えることができる電子機器であって、組立てに要する工数が少なくかつ時間も短縮され、製造コストも低く抑えることができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子機器は、電子部品が内部に収容される樹脂製のケースと、前記ケースの内側に取り付けられる金属製のシールド部材と、を備えた電子機器において、前記シールド部材は、少なくとも一つのカシメ穴を備え、前記カシメ穴の周囲には、内側に向けて突出する複数のカシメ片が設けられており、前記ケースは、前記カシメ穴に対応する位置にボス部を備えており、前記シールド部材を前記ケースに取り付けた状態では、前記カシメ穴に前記ボス部が押し込まれ、変形した前記複数のカシメ片によって前記ボス部が挟まれて、前記シールド部材が前記ケースに固定される構成を有している。
【0007】
この構成により、シールド部材のカシメ穴とケースのボス部の位置を合わせて、カシメ穴にボス部を押し込むと、変形したカシメ片によってボス部が挟まれて、シールド部材がケースに固定される。このようにして、固定用の別部品(固定ねじやカシメ部品など)を用いることなく、簡単な工程でシールド部材をケースに固定することができる。このシールド部材によって、電子部品からの不要輻射がケースの外部に漏れるのを抑えることができる。この場合、従来の導電性塗料を塗布する方法に比べると、導電性塗料の塗布や乾燥などの工程が必要ないため、組立てに要する工数が少なくかつ時間も短縮され、製造コストも低く抑えることができる。
【0008】
また、本発明の電子機器では、前記ボス部は、前記シールド部材を前記ケースに取り付ける前に前記シールド部材を前記ケースに仮置きした状態で、変形前の前記複数のカシメ片が係止する位置決め段部を備えた構成を有している。
【0009】
この構成により、シールド部材をケースに仮置きして、ボス部の位置決め段部に変形前のカシメ片を係止させることによって、容易にシールド部材のカシメ穴とケースのボス部の位置を合わせることができる。
【0010】
また、本発明の電子機器では、前記シールド部材は、複数の前記カシメ穴を備え、前記ケースは、前記カシメ穴にそれぞれ対応する位置に複数の前記ボス部を備えており、前記複数のカシメ穴の周囲には、前記複数のカシメ穴の各々を互いに結んだ線分上に多くとも一つの前記カシメ片しか存在しない配置パターンで、複数の前記カシメ片がそれぞれ配置された構成を有している。
【0011】
この構成により、シールド部材が取り付けられたケースが熱変形(熱収縮や熱膨張)して、カシメ穴のボス部に対する相対的な位置が変化した場合でも、複数のカシメ穴の各々を互いに結んだ線分上に多くとも一つのカシメ片しか存在しない配置パターンで、複数のカシメ片がそれぞれ配置されているので、ケースの熱変形による負荷を逃がすことができる。
【0012】
また、本発明の電子機器では、前記シールド部材は、二つの前記カシメ穴を備え、前記ケースは、前記カシメ穴にそれぞれ対応する位置に二つの前記ボス部を備えており、前記二つのカシメ穴の周囲には、前記二つのカシメ穴を結んだ線分上に一つの前記カシメ片しか存在しない前記配置パターンで、三つの前記カシメ片がそれぞれ配置された構成を有している。
【0013】
この構成により、シールド部材が取り付けられたケースが熱変形(熱収縮や熱膨張)して、カシメ穴のボス部に対する相対的な位置が変化した場合でも、二つのカシメ穴を結んだ線分上に一つのカシメ片しか存在しない配置パターンで、三つのカシメ片がそれぞれ配置されているので、ケースの熱変形による負荷を逃がすことができる。
【0014】
また、本発明の電子機器では、前記シールド部材は、二つの前記カシメ穴を備え、前記ケースは、前記カシメ穴にそれぞれ対応する位置に二つの前記ボス部を備えており、一方の前記カシメ穴の周囲には、前記二つのカシメ穴を結んだ直線上に一つの前記カシメ片しか存在しない前記配置パターンで、三つの前記カシメ片が配置されており、他方の前記カシメ穴の周囲には、前記二つのカシメ穴を結んだ直線上に前記カシメ片が存在しない前記配置パターンで、二つの前記カシメ片が配置された構成を有している。
【0015】
この構成により、シールド部材が取り付けられたケースが熱変形(熱収縮や熱膨張)して、カシメ穴のボス部に対する相対的な位置が変化した場合でも、二つのカシメ穴のうち他方のカシメ穴の周囲には、二つのカシメ穴を結んだ直線上にカシメ片が存在しない配置パターンで、二つのカシメ片が配置されているので、ケースの熱変形による負荷を逃がすことができる。
【0016】
本発明のカメラ装置は、カメラ画像撮影用の電子部品が内部に収容される樹脂製のケースと、前記ケースの内側に取り付けられる金属製のシールド部材と、を備えたカメラ装置において、前記シールド部材には、少なくとも一つのカシメ穴が設けられ、前記カシメ穴の周囲には、内側に向けて突出する複数のカシメ片が設けられており、前記ケースには、前記カシメ穴に対応する位置にボス部が設けられており、前記シールド部材を前記ケースに取り付けた状態では、前記ケースのボス部に前記カシメ穴が嵌め込まれ、前記複数のカシメ片によって前記ボス部が挟み込まれて、前記シールド部材が前記ケースに固定される構成を有している。
【0017】
このカメラ装置によっても、上記のように、シールド部材のカシメ穴とケースのボス部の位置を合わせて、カシメ穴にボス部を押し込むと、変形したカシメ片によってボス部が挟まれて、シールド部材がケースに固定される。このようにして、固定用の別部品(固定ねじやカシメ部品など)を用いることなく、簡単な工程でシールド部材をケースに固定することができる。このシールド部材によって、カメラ画像撮影用の電子部品からの不要輻射がケースの外部に漏れるのを抑えることができる。この場合、従来の導電性塗料を塗布する方法に比べると、導電性塗料の塗布や乾燥などの工程が必要ないため、組立てに要する工数が少なくかつ時間も短縮され、製造コストも低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ケースの内側に取り付けられるシールド部材にカシメ穴を設けることにより、電子部品からの不要輻射を抑えることができ、さらに、組立てに要する工数が少なくかつ時間も短縮され、製造コストも低く抑えることができるという効果を有する電子機器を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態の電子機器(カメラ装置)の内部構成を示す分解斜視図
【図2】電子機器(カメラ装置)の外観を示す斜視図
【図3】電子機器(カメラ装置)のケースにシールド部材を取り付ける様子を説明する図
【図4】シールド部材が取り付けられたケースが熱変形する様子を説明する図
【図5】第2の実施の形態の電子機器(カメラ装置)の内部構成を示す分解斜視図
【図6】電子機器(カメラ装置)のケースにシールド部材を取り付ける様子を説明する図
【図7】シールド部材が取り付けられたケースが熱変形する様子を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の電子機器について、図面を用いて説明する。本実施の形態の電子機器は、例えばカメラ装置等に用いられるが、以下の実施の形態では、電子機器がカメラ装置である場合を例示して説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態の電子機器(カメラ装置)の構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態のカメラ装置の内部構造を示す分解斜視図であり、図2は、カメラ装置の外観を示す斜視図である。図1および図2に示すように、カメラ装置1のケース2は、樹脂製であり、上下二つに分割できるように構成されている。ケース2の内部には、カメラ画像撮影用の電子部品などが実装された基板(図示せず)が収容されている。そして、このケース2の内側には、不要輻射を遮蔽するための金属製のシールド部材3が取り付けられている。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態のシールド部材3には、同じ形状の二つのカシメ穴4が設けられており、各カシメ穴4の周囲には、内側に向けて突出する三つのカシメ片5が設けられている(図4参照)。そして、三つのカシメ片5は、二つのカシメ穴4を結んだ線分上に一つのカシメ片5しか存在しない配置パターンで、各カシメ穴4の周囲に配置されている。つまり、二つのカシメ穴4のうちの一方のカシメ穴4(図4では左側のカシメ穴4)の周囲には、二つのカシメ穴4を結んだ線分上にカシメ片5が存在していないともいえる。一方、ケース2の内側面には、カシメ穴4に対応する位置に二つのボス部6が立設されている。本実施の形態では、二つのカシメ穴4の間隔(ピッチ)が、比較的短い間隔(例えば50mm)に設定されている。
【0023】
また、ボス部6の上部には、位置決め段部7が形成されており(図3参照)、シールド部材3をケース2に取り付ける前にシールド部材3をケース2に仮置きした状態で、変形前のカシメ片5が係止するように構成されている。つまり、ボス部6の外径は、変形前のカシメ片5の内径(カシメ片5の内接円の半径)よりも大きく設定されており、位置決め段部7の外径は、変形前のカシメ片5の内径と等しいかそれより小さく設定されている(図4参照)。
【0024】
また、カシメ片5は、ある程度の力を加えると変形するように構成されている(厚みや材質などが選択されている)。したがって、後述するように、シールド部材3をケース2に仮置きした状態から、シールド部材3をケース2に向けて押し込むと、カシメ穴4の中にボス部6が押し込まれて、カシメ片5が変形し、変形したカシメ片5によってボス部6が挟まれた状態(シールド部材3がケース2に固定された状態)になる。
【0025】
以上のように構成された第1の実施の形態のカメラ装置1について、図面を参照してその組立て工程を説明する。ここでは、本発明の特徴的な工程として、カメラ装置1のケース2にシールド部材3を取り付けるときの工程について説明する。
【0026】
第1の実施の形態のカメラ装置1のケース2にシールド部材3を取り付けるときには、まず、図3(a)に示すように、ケース2の上側にシールド部材3を配置して、カシメ穴4とボス部6の大まかな位置あわせを行なう。つぎに、図3(b)に示すように、シールド部材3をケース2に仮置きすると、変形前のカシメ片5がボス部6の位置決め段部7に係止して、カシメ穴4とボス部6の位置あわせが行なわれる(図4(a)参照)。そして、図3(c)に示すように、シールド部材3をケース2に向けて押し込むと、カシメ穴4の中にボス部6が押し込まれて、カシメ片5が変形し、変形したカシメ片5によってボス部6が挟まれた状態になり、シールド部材3がケース2に固定される。このように簡単な工程でシールド部材3をケース2に固定することができる。
【0027】
このようにしてカメラ装置1のケース2にシールド部材3が取り付けられた後、ケース2が熱変形(熱収縮や熱膨張)したときの動作について説明する。樹脂製のケース2と金属製のシールド部材3では線膨張係数に差があるので、線膨張係数の大きい樹脂製のケース2の温度変化による変形(熱変形)を逃がす配慮が必要となる。なお、本実施の形態では、二つのカシメ穴4の間隔(ピッチ)が、比較的短い間隔(例えば50mm)に設定されているので、熱変形量は比較的小さい。
【0028】
例えば、カメラ装置1の内部の部品からの発熱などによって樹脂製のケース2が熱変形(熱膨張)する場合がある。図4(b)に示すように、ケース2が熱膨張すると、二つのボス部6の間隔が広くなるが、そのような場合でも、本実施の形態では、二つのカシメ穴4のうちの一方のカシメ穴4(図4では右側のカシメ穴4)の周囲には、二つのカシメ穴4を結んだ線分上(熱膨張でケース2が変形する方向に沿った線上)にカシメ片5が存在していないので、ケース2の熱変形がカシメ片5によってあまり阻害されず、熱変形量が比較的小さければ、ケース2の熱変形による負荷を逃がすことができる。
【0029】
また、例えば、カメラ装置1を寒冷地などで使用した場合、樹脂製のケース2が低温の外気によって熱変形(熱収縮)する場合がある。図4(c)に示すように、ケース2が熱収縮すると、二つのボス部6の間隔が狭くなるが、そのような場合でも、本実施の形態では、二つのカシメ穴4のうちの一方のカシメ穴4(図4では左側のカシメ穴4)の周囲には、二つのカシメ穴4を結んだ線分上(熱収縮でケース2が変形する方向に沿った線上)にカシメ片5が存在していないので、ケース2の熱変形がカシメ片5によってあまり阻害されず、熱変形量が比較的小さければ、ケース2の熱変形による負荷を逃がすことができる。
【0030】
このような第1の実施の形態のカメラ装置1によれば、ケース2の内側に取り付けられるシールド部材3にカシメ穴4を設けることにより、電子部品からの不要輻射を抑えることができ、さらに、組立てに要する工数が少なくかつ時間も短縮され、製造コストも低く抑えることができる。
【0031】
すなわち、本実施の形態では、図3(c)に示すように、シールド部材3のカシメ穴4とケース2のボス部6の位置を合わせて、カシメ穴4にボス部6を押し込むと、変形したカシメ片5によってボス部6が挟まれて、シールド部材3がケース2に固定される。このようにして、固定用の別部品(固定ねじやカシメ部品など)を用いることなく、簡単な工程でシールド部材3をケース2に固定することができる。このシールド部材3によって、電子部品からの不要輻射がケース2の外部に漏れるのを抑えることができる。この場合、従来の導電性塗料を塗布する方法に比べると、導電性塗料の塗布や乾燥などの工程が必要ないため、組立てに要する工数が少なくかつ時間も短縮され、製造コストも低く抑えることができる。
【0032】
また、本実施の形態では、図3(b)および図4(a)に示すように、シールド部材3をケース2に仮置きして、ボス部6の位置決め段部7に変形前のカシメ片5を係止させることによって、容易にシールド部材3のカシメ穴4とケース2のボス部6の位置を合わせることができる。
【0033】
また、本実施の形態では、シールド部材3が取り付けられたケース2が熱変形(熱収縮や熱膨張)して、カシメ穴4のボス部6に対する相対的な位置が変化した場合でも、複数のカシメ穴4の各々を互いに結んだ線分上に多くとも一つのカシメ片5しか存在しない配置パターンで、複数のカシメ片5がそれぞれ配置されているので、ケース2の熱変形による負荷を逃がすことができる。具体的には、図4(b)および(c)に示すように、二つのカシメ穴4を結んだ線分上に一つのカシメ片5しか存在しない配置パターンで、三つのカシメ片5がそれぞれ配置されているので、熱変形量が比較的小さければ、ケース2の熱変形による負荷を逃がすことができる。これにより、不要輻射を抑える機能の信頼性が向上する。
【0034】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態の電子機器(カメラ装置)の構成を、図面を参照して説明する。ここでは、本実施の形態が、第1の実施の形態と相違する部分を中心に説明する。したがって、ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成や動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0035】
図5は、本実施の形態のカメラ装置の内部構造を示す分解斜視図である。図5に示すように、本実施の形態のシールド部材3には、異なる形状の二つのカシメ穴4が設けられている(図7参照)。一方のカシメ穴4(図7における左側のカシメ穴4)の形状は、第1の実施の形態と同様であり、カシメ穴4の周囲に、内側に向けて突出する三つのカシメ片5が設けられている。他方のカシメ穴4(図7における右側のカシメ穴4)の周囲には、内側に向けて突出する二つのカシメ片5が設けられている。そして、この二つのカシメ片5は、二つのカシメ穴4を結んだ直線上にカシメ片5が存在しない配置パターンで、他方のカシメ穴4の周囲に配置されている。本実施の形態では、二つのカシメ穴4の間隔(ピッチ)が、比較的長い間隔(例えば100mm〜150mm)に設定されている。
【0036】
以上のように構成された第2の実施の形態のカメラ装置1について、図面を参照してその組立て工程を説明する。ここでも、第1の実施の形態と同様、本発明の特徴的な工程として、カメラ装置1のケース2にシールド部材3を取り付けるときの工程について説明する。
【0037】
第2の実施の形態のカメラ装置1のケース2にシールド部材3を取り付けるときには、第1の実施の形態と同様、まず、図6(a)に示すように、ケース2の上側にシールド部材3を配置して、カシメ穴4とボス部6の大まかな位置あわせを行なう。つぎに、図6(b)に示すように、シールド部材3をケース2に仮置きすると、変形前のカシメ片5がボス部6の位置決め段部7に係止して、カシメ穴4とボス部6の位置あわせが行なわれる(図7(a)参照)。そして、図6(c)に示すように、シールド部材3をケース2に向けて押し込むと、カシメ穴4の中にボス部6が押し込まれて、カシメ片5が変形し、変形したカシメ片5によってボス部6が挟まれた状態になり、シールド部材3がケース2に固定される。このように簡単な工程でシールド部材3をケース2に固定することができる。
【0038】
このようにしてカメラ装置1のケース2にシールド部材3が取り付けられた後、ケース2が熱変形(熱収縮や熱膨張)したときの動作について説明する。なお、本実施の形態では、二つのカシメ穴4の間隔(ピッチ)が、比較的長い間隔(例えば100mm〜150mm)に設定されているので、熱変形量は比較的大きい。
【0039】
例えば、カメラ装置1の内部の部品からの発熱などによって樹脂製のケース2が熱変形(熱膨張)する場合がある。図7(b)に示すように、ケース2が熱膨張すると、二つのボス部6の間隔が広くなるが、そのような場合でも、本実施の形態では、二つのカシメ穴4のうちの一方のカシメ穴4(図7では右側のカシメ穴4)の周囲には、二つのカシメ穴4を結んだ直線上(熱膨張でケース2が変形する方向に沿った線上)にカシメ片5が存在していないので、ケース2の熱変形がカシメ片5によってほとんど阻害されず、熱変形量が比較的大きい場合でも、ケース2の熱変形による負荷を逃がすことができる。
【0040】
また、例えば、カメラ装置1を寒冷地などで使用した場合、樹脂製のケース2が低温の外気によって熱変形(熱収縮)する場合がある。図7(c)に示すように、ケース2が熱収縮すると、二つのボス部6の間隔が狭くなるが、そのような場合でも、本実施の形態では、二つのカシメ穴4のうちの一方のカシメ穴4(図7では右側のカシメ穴4)の周囲には、二つのカシメ穴4を結んだ直線上(熱収縮でケース2が変形する方向に沿った線上)にカシメ片5が存在していないので、ケース2の熱変形がカシメ片5によってほとんど阻害されず、熱変形量が比較的大きい場合でも、ケース2の熱変形による負荷を逃がすことができる。
【0041】
このような第2の実施の形態のカメラ装置1によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
この場合には、シールド部材3が取り付けられたケース2が熱変形(熱収縮や熱膨張)して、カシメ穴4のボス部6に対する相対的な位置が変化した場合でも、図7(b)および(c)に示すように、二つのカシメ穴4のうち他方のカシメ穴4の周囲には、二つのカシメ穴4を結んだ直線上にカシメ片5が存在しない配置パターンで、二つのカシメ片5が配置されているので、ケース2の熱変形による負荷を逃がすことができる。これにより、不要輻射を抑える機能の信頼性が向上する。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明にかかる電子機器は、電子部品からの不要輻射を抑えることができ、さらに、組立てに要する工数が少なくかつ時間も短縮され、製造コストも低く抑えることができるという効果を有し、カメラ装置等として有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 カメラ装置(電子機器)
2 ケース
3 シールド部材
4 カシメ穴
5 カシメ片
6 ボス部
7 位置決め段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が内部に収容される樹脂製のケースと、前記ケースの内側に取り付けられる金属製のシールド部材と、を備えた電子機器において、
前記シールド部材は、少なくとも一つのカシメ穴を備え、前記カシメ穴の周囲には、内側に向けて突出する複数のカシメ片が設けられており、前記ケースは、前記カシメ穴に対応する位置にボス部を備えており、
前記シールド部材を前記ケースに取り付けた状態では、前記カシメ穴に前記ボス部が押し込まれ、変形した前記複数のカシメ片によって前記ボス部が挟まれて、前記シールド部材が前記ケースに固定されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記ボス部は、前記シールド部材を前記ケースに取り付ける前に前記シールド部材を前記ケースに仮置きした状態で、変形前の前記複数のカシメ片が係止する位置決め段部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記シールド部材は、複数の前記カシメ穴を備え、前記ケースは、前記カシメ穴にそれぞれ対応する位置に複数の前記ボス部を備えており、
前記複数のカシメ穴の周囲には、前記複数のカシメ穴の各々を互いに結んだ線分上に多くとも一つの前記カシメ片しか存在しない配置パターンで、複数の前記カシメ片がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記シールド部材は、二つの前記カシメ穴を備え、前記ケースは、前記カシメ穴にそれぞれ対応する位置に二つの前記ボス部を備えており、
前記二つのカシメ穴の周囲には、前記二つのカシメ穴を結んだ線分上に一つの前記カシメ片しか存在しない前記配置パターンで、三つの前記カシメ片がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記シールド部材は、二つの前記カシメ穴を備え、前記ケースは、前記カシメ穴にそれぞれ対応する位置に二つの前記ボス部を備えており、
一方の前記カシメ穴の周囲には、前記二つのカシメ穴を結んだ直線上に一つの前記カシメ片しか存在しない前記配置パターンで、三つの前記カシメ片が配置されており、
他方の前記カシメ穴の周囲には、前記二つのカシメ穴を結んだ直線上に前記カシメ片が存在しない前記配置パターンで、二つの前記カシメ片が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
カメラ画像撮影用の電子部品が内部に収容される樹脂製のケースと、前記ケースの内側に取り付けられる金属製のシールド部材と、を備えたカメラ装置において、
前記シールド部材には、少なくとも一つのカシメ穴が設けられ、前記カシメ穴の周囲には、内側に向けて突出する複数のカシメ片が設けられており、前記ケースには、前記カシメ穴に対応する位置にボス部が設けられており、
前記シールド部材を前記ケースに取り付けた状態では、前記ケースのボス部に前記カシメ穴が嵌め込まれ、前記複数のカシメ片によって前記ボス部が挟み込まれて、前記シールド部材が前記ケースに固定されることを特徴とするカメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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