説明

電子機器およびプログラム

【課題】 盗難されるなどした電子機器からの不正な情報取得や、その電子機器の悪用を防止する。
【解決手段】 一実施形態における電子機器は、起動指示手段と、無線読取手段と、第1制御手段と、第2制御手段とを備える。上記起動指示手段は、システムの起動を指示する。上記無線読取手段は、上記起動指示手段によってシステムの起動が指示されたとき、交信領域内にある無線タグと無線通信してその無線タグに記憶されたタグ情報を読み取る。上記第1制御手段は、上記無線読取手段によって読み取られたタグ情報が予め定められた起動条件を満たすとき、上記システムを起動する。上記第2制御手段は、上記無線読取手段によって読み取られたタグ情報が上記起動条件を満たさないとき、又は、上記無線読取手段によってタグ情報が読み取られなかったとき、上記システムを起動せずに所定の異常処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、各種処理を実行する電子機器およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品の販売やサービスの提供を行う各種店舗において、顧客が購入した商品やサービスの決済を行うPOS(Point Of Sales)端末、ECR(Electric Cash Register)、カード決済端末等の決済端末が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−107661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、決済端末の小型化および軽量化が進み、手軽に持ち運べるものが多く存在する。そのため、決済端末の盗難等が危惧されている。決済端末には店舗の売り上げに関する情報や顧客の個人情報のような情報が記憶されていることがあり、決済端末が盗難され、これらの情報が閲覧されれば店舗や顧客が損害を受けかねない。
【0005】
なお、盗難等のリスクは、決済端末に限らず、パーソナルコンピュータ等の他の電子機器でも同様に生じる問題でもある。
【0006】
このような事情から、盗難されるなどした電子機器からの不正な情報取得や、その電子機器の悪用を防止するための手段を講じる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、一実施形態における電子機器は、起動指示手段と、無線読取手段と、第1制御手段と、第2制御手段とを備えている。
上記起動指示手段は、システムの起動を指示する。上記無線読取手段は、上記起動指示手段によってシステムの起動が指示されたとき、交信領域内にある無線タグと無線通信してその無線タグに記憶されたタグ情報を読み取る。上記第1制御手段は、上記無線読取手段によって読み取られたタグ情報が予め定められた起動条件を満たすとき、上記システムを起動する。上記第2制御手段は、上記無線読取手段によって読み取られたタグ情報が上記起動条件を満たさないとき、または、上記無線読取手段によってタグ情報が読み取られなかったとき、上記システムを起動せずに所定の異常処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態における決済端末の外観斜視図。
【図2】同実施形態における決済端末の制御回路を示すブロック図。
【図3】同実施形態におけるレジカウンタと同カウンタに載置された決済端末の概略斜視図。
【図4】同実施形態における制御部が備えるメモリの構成を示す図。
【図5】同実施形態において制御部が実行する処理のフローチャート。
【図6】同実施形態において制御部が実行する処理のフローチャート。
【図7】第2の実施形態における処理テーブルの内容を示す図。
【図8】同実施形態において制御部が実行する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
本実施形態では、商品の販売やサービスの提供を行う各種店舗にて使用される決済端末を例示する。
図1は、本実施形態における決済端末1の外観斜視図である。
この決済端末1は、本体ユニットAと表示ユニットBとを有する。表示ユニットBは、背面側のヒンジ部(不図示)によって本体ユニットAに対し回動自在に取り付けられている。このヒンジ部を軸として、表示ユニットBは、図中の矢印Pの示す方向に向けて本体ユニットAから開閉する。
【0010】
表示ユニットBの上面には、LCD(Liquid Crystal Display)10、タッチパネル11、および突出部12等が設けられている。LCD10は、表示ユニットBが閉じられた際にその表示面が決済端末1の正面側のやや上方を向くように設けられ、商品の販売に関する情報等を選択的に表示する。
【0011】
タッチパネル11は、LCD10の表示面上に設けられ、LCD10に表示されたGUI(Graphical User Interface)部品のタッチ操作を検出する。
【0012】
突出部12は、決済端末1を正面側から見た右方に設けられている。突出部12と表示ユニットBの筐体との間には、スライド溝13が形成される。表示ユニットBを閉じた際には、突出部12が設けられた側の表示ユニットBの筐体の側壁と、本体ユニットAの筐体の側壁とが同一平面上に位置する。したがって、表示ユニットBが閉じられた状態においては、スライド溝13の延長線と本体ユニットAの筐体面とが交わらず、スライド溝13にスライドされるカードが本体ユニットAの筐体と接触することはない。
【0013】
本体ユニットAの筐体面には、決済端末1の各部への電源供給をオン/オフする電源スイッチ14が設けられている。
【0014】
表示ユニットBが閉じられた状態において、本体ユニットAと表示ユニットBとの間には、プリンタ26(図2参照)によって印刷されたレシートやクレジット伝票が発行される発行口15が形成される。
【0015】
図2は、決済端末1の制御回路を示すブロック図である。
本体ユニットA側の制御回路は、制御部20に対して、通信部21、無線リーダライタ(R/W)22、および電源回路23等を接続し、上記無線リーダライタ22にアンテナ24を接続し、上記電源スイッチ(SW)14を電源回路23に接続して構成されている。
【0016】
表示ユニットB側の制御回路は、上記LCD10、上記タッチパネル11、およびカードリーダ25等を接続して構成されている。
また、本体ユニットAおよび表示ユニットBの制御回路には、本体ユニットAおよび表示ユニットBに設けられた用紙搬送機構やサーマルヘッドによって構成されるプリンタ26が接続されている。
【0017】
通信部21は、通信ケーブルを介して店舗内のLAN(Local Area Network)やインターネット等の外部ネットワークと接続されており、これらネットワークを介して店舗の内外に設置されたサーバ等との通信を行う。
【0018】
電源回路23は、電源スイッチ14がオンされているときに商用交流電源等の外部電源またはバッテリから電力を取り込んで動作電源を生成する。電源回路23は、このようにして生成した動作電源を本体ユニットAおよび表示ユニットBの各部に供給し、電源スイッチ14がオフされているときには本体ユニットAおよび表示ユニットBの各部への動作電源の供給を停止する。また、電源回路23は、電源スイッチ14がオンされているときであっても制御部20から電源供給の停止が指令されると各部への電源供給を停止する。
【0019】
カードリーダ25は、スライド溝13にスライドされるクレジットカード等に付された磁性体からカード情報を読み取り、制御部20に出力する。
【0020】
プリンタ26は、決済端末1の内部に収納されたロールから送り出される感熱紙に対しサーマルヘッドにより熱を加えて文字等のパターンを印刷し、レシートやクレジット伝票として発行口15から発行する。
【0021】
無線リーダライタ22は、所定の搬送波を変調してRFIDタグへの問合せ信号を生成し、アンテナ24に出力すると共に、アンテナ24から入力される応答信号を復調してRFIDタグから応答されたデータを得る。
【0022】
アンテナ24は、無線リーダライタ22から入力される上記問合せ信号を交信領域内に送信する。上記RFIDタグは、各タグで固有のタグIDを含むデータを記憶したICと小型のアンテナとを有し、このアンテナにて上記問合せ信号を受信すると、ICに記憶されたデータをバックスキャッタ変調した応答信号を返信する。アンテナ24は、交信領域内にあるRFIDタグから返信される上記応答信号を受信して無線リーダライタ22に出力する。
【0023】
当該店舗に設けられたレジカウンタ100およびこのレジカウンタに載置された決済端末1の概略斜視図を図3に示す。
レジカウンタ100の上面は、決済端末1やその他の機器等を設置するための設置面となっている。また、レジカウンタ100の所定位置には、RFIDタグ200が取り付けられている。
【0024】
本実施形態におけるアンテナ24は、本体ユニットAの筐体内であって、同筐体のレジカウンタ等の設置面に接する側の一面(図3における下面300)の近傍に設けられており、設置面の方向に信号を送信するとともに、設置面の方向から到来する信号を受信する。すなわち、アンテナ24の交信領域は、決済端末1の設置面の方向に形成される。
【0025】
なお、RFIDタグ200は、その真上付近に決済端末1が載置された際にアンテナ24の交信領域内に位置するのであれば、レジカウンタ100に埋め込まれていてもよいし、レジカウンタ100の上面(すなわち設置面)または裏面に貼り付けられていてもよい。
【0026】
制御部20は、CPU201と、ROM、RAM、あるいはHDD等で構成されるメモリ202とを有する。メモリ202は、例えば図4に示すように、BIOS(Basic Input/Output System)プログラム221やOS(Operating System)ファイル222等を記憶している。また、メモリ202には、所定のRFID(Radio Frequency Identification)タグのタグIDを記憶するためのタグID設定エリア223が設けられている。
【0027】
ここで、タグID設定エリア223には、RFIDタグ200のタグIDが記憶されているものとする。ただし、後述のタグID設定処理により、タグID設定エリア223に記憶するタグIDを他のRFIDタグのものに変更することが可能である。
【0028】
CPU201がBIOSプログラム221を実行するとBIOSが起動され、このBIOSの制御の下でCPU201がOSファイル222に含まれる各種プログラムを実行してOSが起動される。制御部20は、これらBIOSおよびOSの制御下にて決済端末1の各部を制御する。
【0029】
制御部20の具体的な動作について説明する。
電源スイッチ14がオンされ、電源回路23から各部への動作電源の供給が開始されると、制御部20がBIOSの下で動作する。このとき制御部20は、決済端末1の各部の初期化処理や診断処理を行った後、図5のフローチャートに沿って動作する。
【0030】
すなわち、先ず制御部20は、無線リーダライタ22にRFIDタグの読み取りを指令する(ステップS101)。このとき、無線リーダライタ22は、アンテナ24に問合せ信号を出力し、その交信領域内に送信させる。この問合せ信号に対する応答信号がアンテナ24で受信されると、無線リーダライタ22は、当該応答信号を復調してデータを得、制御部20に出力する。
【0031】
ステップS101の処理の後、制御部20は、RFIDタグが読み取られたか否かを判定する(ステップS102)。
ステップS101の処理において無線リーダライタ22からデータが入力されている場合、制御部20はRFIDタグが読み取られたと判定し(ステップS102のYes)、無線リーダライタ22から入力されたデータがOSの起動条件を満たすか否かを判定する(ステップS103)。
【0032】
ここで、本実施形態における起動条件は、RFIDタグから読み取られたデータに含まれるタグIDと、タグID設定エリア223に記憶されたタグIDとが一致すること、であるとする。
【0033】
すなわち、ステップS103の処理において、制御部20は、無線リーダライタ22から入力されたデータに含まれるタグIDと、タグID設定エリア223に記憶されたタグIDとが一致するか否かを判定する。
【0034】
レジカウンタ100のRFIDタグ200がアンテナ24の交信領域内に位置するように決済端末1が設置されているならば、ステップS101の処理においてRFIDタグ200からデータが読み取られる。したがって、無線リーダライタ22から入力されたデータに含まれるタグIDとタグID設定エリア223に記憶されたタグIDとが一致する(ステップS103のYes)。このとき制御部20は、OSの起動処理を実行する(ステップS104)。この起動処理において、制御部20は、OSファイル222に含まれるプログラムを実行してOSを起動する。
【0035】
ステップS101の処理において無線リーダライタ22からデータが入力されていない場合、制御部20は、RFIDタグが読み取られていないと判定する(ステップS102のNo)。この場合、および、ステップS103の処理において無線リーダライタ22から入力されたデータに含まれるタグIDとタグID設定エリア223に記憶されたタグIDとが一致しないと判定した場合(ステップS103のNo)、制御部20は、異常処理を実行する(ステップS105)。
【0036】
この異常処理において、制御部20は、例えば決済端末1の設置場所が正しくない旨をユーザに知らせるメッセージをLCD10に表示させるなどして異常を報知する。さらに、制御部20は、電源回路23に各部への電源供給の停止を指令する。この指令を受けたとき、電源回路23は、各部への動作電源の供給を停止する。
【0037】
ステップS104の処理においてOSが起動された後、制御部20は、OSの下で動作する。このとき制御部20は、決済処理を行うためのソフトウェアを実行するなどして、各種の処理を行う。
【0038】
このように、本実施形態における決済端末1は、タグID設定エリア223のタグIDを含むデータが無線リーダライタ22によって読み取られたときに限りOSの起動処理を実行し、タグID設定エリア223に記憶されたタグIDを含むデータが無線リーダライタ22によって読み取られない場合には、各部への動作電源の供給を停止させるなどの異常処理を実行する。すなわち、決済端末1は、タグID設定エリア223のタグIDが記憶されたRFIDタグを無線リーダライタ22が読み取れる位置に設置されていない限り、OSを起動できない。
【0039】
OSが起動された後に実行される上記決済処理において、制御部20は、先ず顧客が購入しようとする商品やサービスに関する情報のタッチパネル11の操作による入力を受け付ける。この情報が入力されると、制御部20は、同情報で示される商品やサービスの代金を、例えば通信部21を介したサーバとの通信によって特定する。次に、制御部20は、クレジットカード等の決済カードのカードリーダ25による読み取りを受け付ける。このときスライド溝13に決済カードがスライドされ、カードリーダ25がその決済カードからカード情報を読み取ると、制御部20は、そのカード情報やタッチパネル11の操作により入力された商品やサービスに関する情報を、通信部21を介してカード決済事業の管理サーバに送信し、決済可否の認証を受ける。そして、この認証の結果が決済可であれば、制御部20は、プリンタ26に当該決済のクレジット伝票を発行させるなどして、1取引の決済処理を完結させる。このような決済処理の履歴は、例えばメモリ202に記憶される。
【0040】
次に、ステップS103の処理において無線リーダライタ22から入力されるタグIDとの比較に用いられるタグIDを設定するタグID設定処理について説明する。
【0041】
OSが起動された後、ユーザがタッチパネル11を操作するなどしてタグID設定処理の実行を指示すると、制御部20は、図6のフローチャートに沿って動作する。
【0042】
すなわち、先ず制御部20は、無線リーダライタ22にRFIDタグの読み取りを指令する(ステップS201)。このとき、無線リーダライタ22は、アンテナ24に問合せ信号を出力し、その交信領域内に送信させる。この問合せ信号に対する応答信号がアンテナ24で受信されると、無線リーダライタ22は、当該応答信号を復調してデータを得、制御部20に出力する。
【0043】
ステップS201の処理の後、制御部20は、RFIDタグが読み取られたか否かを判定する(ステップS202)。
ステップS201の処理において無線リーダライタ22からデータが入力されている場合、制御部20はRFIDタグが読み取られたと判定し(ステップS202のYes)、タグID設定エリア223に記憶されたタグIDを削除して、無線リーダライタ22から入力されたデータに含まれるタグIDをタグID設定エリア223に記憶する(ステップS203)。
【0044】
一方、ステップS201の処理において無線リーダライタ22からデータが入力されていない場合、制御部20は、RFIDタグが読み取られていないと判定する(ステップS202のNo)。このとき、制御部20は、例えばRFIDタグが読み取られなかった旨をユーザに知らせるメッセージをLCD10に表示させるなどしてエラーを報知する(ステップS204)。
ステップS203またはステップS204の処理を以って、一連のタグID設定処理が終了する。
【0045】
上記ステップS203の処理にて新たなタグIDがタグID設定エリア223に記憶された後に図5のフローチャートに示す処理が実行される際には、当該新たなタグIDが起動条件成立の判定に用いられる。
【0046】
このように、タグID設定処理ではアンテナ24の交信領域内に存在する無線タグから読み取られたタグIDを、その後の処理で起動条件成立の判定に用いるタグIDに設定する。すなわちユーザは、決済端末1の設置場所を変更したいならば、それまでの設置場所であるレジカウンタ100に取り付けられていたRFIDタグ200と異なるRFIDタグが取り付けられたレジカウンタに決済端末1を移動させ、タグID設定処理を実行させればよい。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
本実施形態においては、図5のステップS105の処理にて実行する異常処理を、RFIDタグから読み取ったタグIDに応じて変更する点で、第1の実施形態と異なる。
決済端末1の外観構成、制御回路、およびタグID設定処理の流れは、図1、図2、および図6を用いて説明したものと同様である。また、電源供給開始後の動作の流れは、異常処理の具体的な内容を除き、図5を用いて説明したものと同様である。
【0048】
本実施形態におけるメモリ202には、BIOSプログラム221およびOSファイル222に加え、図7に示す処理テーブル224が記憶され、第1の実施形態と同様にタグID設定エリア223が設けられている。
【0049】
処理テーブル224は、「1」〜「4」のナンバ(No.)が付された4つのエリアを有している。各エリアには、タグIDと、このタグIDがステップS101の処理にて読み取られた際の異常処理にて実行すべき具体的な処理内容とが設定されている。図示した例のナンバ「1」「2」のエリアには、それぞれタグID「TID1」「TID2」と、「設置場所が異なる旨を報知し、起動を許可する」との処理内容が設定され、ナンバ「3」のエリアには、タグID「TID3」と、「パスワード入力を要求し、一致するならば起動を許可する」との処理内容が設定されている。また、ナンバ「4」のエリアには、タグIDが設定されておらず、「電源供給を停止する」との処理内容が設定されている。なお、図7の例では処理テーブル224の処理内容を単にメッセージで表示しているが、実際にはこれらメッセージで示される処理を実現するためのプログラムや、メモリ202に記憶された既存のプログラムにてこれらメッセージで示される処理を実現するためのパラメータ等が設定される。
このような構成の処理テーブル224は、例えばOSの制御下で実行されるテーブル設定処理によってその内容を変更可能である。
【0050】
次に、本実施形態における異常処理について説明する。
ステップS101の処理にて無線リーダライタ22からデータが入力されたが(ステップS102のYes)、このデータに含まれるタグIDとタグID設定エリア223に設定されたタグIDとが一致しない場合(ステップS103のNo)の異常処理において、制御部20は、図8のフローチャートに沿って動作する。
【0051】
すなわち、制御部20は、ステップS101の処理にて入力されたデータに含まれるタグIDと一致するタグIDを処理テーブル224から検索する(ステップS301)。
【0052】
次に、制御部20は、ステップS301の処理における比較の結果、ステップS101の処理にて入力されたデータに含まれるタグIDと一致するものが処理テーブル224から発見されたかを判定する(ステップS302)。一致するタグIDが発見されている場合(ステップS302のYes)、制御部20は、当該タグIDのエリアに設定された処理内容を処理テーブル224から読み出し、その処理内容に従って動作する(ステップS303)。
【0053】
すなわち、ステップS101の処理にて入力されたデータに含まれるタグIDが「TID1」あるいは「TID2」である場合、制御部20は、決済端末1の設置場所が正しくない旨をユーザに知らせるメッセージをLCD10に表示させるなどして報知する。その後、制御部20は、OSファイル222に含まれるプログラムを実行してOSを起動する。
【0054】
また、ステップS101の処理にて入力されたデータに含まれるタグIDが「TID3」である場合、制御部20は、パスワードの入力欄とテンキーとをLCD10に表示させ、パスワードの入力を受け付ける。このときユーザが上記テンキーを操作して上記入力欄にパスワードを入力すると、制御部20は、当該入力されたパスワードと、予めメモリ202等に記憶されたパスワードとを比較し、一致するならばOSファイル222に含まれるプログラムを実行してOSを起動する。なお、一致しないならば所定のメッセージをLCD10に表示させてその旨警告し、再度パスワードの入力を受け付ける。その後、所定回数パスワードが一致しないならば、制御部20は、電源回路23に各部への電源供給の停止を指令する。この指令を受けたとき、電源回路23は、各部への動作電源の供給を停止する。
【0055】
一方、ステップS301の処理における比較の結果、ステップS101の処理にて入力されたデータに含まれるタグIDと一致するものが処理テーブル224から発見されなかった場合(ステップS302のNo)、制御部20は、処理テーブル224のナンバ「4」のエリアに設定された処理を実行する(ステップS304)。すなわち、制御部20は、電源回路23に各部への電源供給の停止を指令する。この指令を受けたとき、電源回路23は、各部への動作電源の供給を停止する。
ステップS303またはステップS304を以って、異常処理が終了する。
【0056】
なお、ステップS101の処理にて無線リーダライタ22からデータが入力されなかった場合には(ステップS102のNo)、制御部20は、第1の実施形態にて説明した異常処理を実行する。
【0057】
このように、本実施形態においては、RFIDタグから読み取ったタグIDに応じて異常処理の内容を変更する。このような構成とすれば、店舗の運営に適した決済端末1の動作を実現可能となる。
例えばRFIDタグが取り付けられたレジカウンタ等の設置場所が複数個所ある店舗において決済端末1を使用する場合に、あるRFIDタグのタグIDを上記タグID設定処理によってタグID設定エリア223に記憶し、その他のRFIDタグのタグIDを処理テーブル224に設定しておく。さらに、処理テーブル224に設定した各タグIDに対して「パスワードの入力を要求し、一致するなら起動を許可する」旨の処理内容を設定する。このようにしておけば、決済端末1を店舗内で移動させ、タグID設定エリア223に記憶されたタグIDに対応するRFIDタグが取り付けられた設置場所以外の設置場所で起動した場合であっても、パスワードを入力することで決済端末1を起動することができる。ただし、決済端末1が盗難された場合、盗難者が当該店舗外等で決済端末1を起動しようとしても、異常処理において電源回路23から各部への動作電源の供給が停止されるので、決済端末1を起動することができない。
【0058】
以上、第1および第2の実施形態にて説明したように、決済端末1は、電源スイッチ14がオンされるなどしてシステムの起動が指示された際に、無線リーダライタ22によって読み取られたデータに含まれるタグIDが予め設定された起動条件を満たすときにはOSを起動し、同タグIDが起動条件を満たさないとき、または、無線リーダライタ22によってデータが読み取られなかったときには、OSを起動せずに異常処理を実行する。このような構成であれば、起動条件を満たすタグIDが記憶されたRFIDタグの近傍でしか決済端末1を起動できないので、決済端末1が盗難された場合であっても決済端末1の悪用やメモリ202に記憶された情報の流出を防ぐことができる。
【0059】
また、第1および第2の実施形態では、無線リーダライタ22によって読み取られたデータに含まれるタグIDがタグID設定エリア223に記憶されたタグIDと一致することを起動条件として採用した。通常、RFIDタグのタグIDは、各RFIDタグで固有のものに設定されている。したがって、このような構成であれば、ある1つのRFIDタグの近傍でのみ決済端末1の起動が可能となり、決済端末1のセキュリティ性が格段に向上する。
【0060】
また、第1および第2の実施形態では、アンテナ24の交信領域を決済端末1の設置面に向けて形成させるとした。このような構成であれば、決済端末1が設置されるレジカウンタの裏面やカウンタの内部のように作業の邪魔にならず、レジまわりの外観を損なわない位置にRFIDタグを取り付けることが可能となる。
【0061】
(変形例)
上記各実施形態にて開示した構成は、種々変形実施可能である。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0062】
(1)上記各実施形態では、商品やサービスの決済に使用される決済端末1を例示した。しかしながら、図5,図6で示した処理や以下に説明する変形例の処理等を実現するための構成を、例えばパーソナルコンピュータやプリンタ等の他種の電子機器に適用してもよい。
【0063】
(2)上記各実施形態では、アンテナ24の交信領域を決済端末1の設置面に向けて形成させるとした。しかしながら、アンテナ24の交信領域を、例えば図1に示した決済端末1の背面側に向けて形成させてもよい。この場合には、決済端末1の設置場所に隣接する壁面にRFIDタグを取り付け、このRFIDタグのタグIDを上記タグID設定処理によりタグID設定エリア223に記憶させればよい。
【0064】
また、無線リーダライタ22やアンテナ24を有するユニットを決済端末1の本体ユニットAや表示ユニットBと別体で設け、通信ケーブルを介して本体ユニットAや表示ユニットBの制御回路に接続してもよい。このようにすれば、レジカウンタや壁面に限らず、様々な位置に設けたRFIDタグからデータを読み取って起動条件成立の判定に用いることができる。さらに、システムの起動後にこのユニットをレジカウンタ上に置いておき、RFIDタグが内蔵された決済用の電子マネー媒体から電子マネー情報を読み取る用途で使用してもよい。
【0065】
(3)上記各実施形態では、無線リーダライタ22によって読み取られたデータに含まれるタグIDがタグID設定エリア223に記憶されたタグIDと一致することを起動条件として採用した場合を例示した。しかしながら、起動条件は他のものであってもよい。例えば、RFIDタグに記憶されたデータに含まれるタグID以外の情報とメモリ202に設けた所定エリアに記憶された情報とが一致することを起動条件としてもよい。また、レジカウンタに取り付けるRFIDタグのユーザ領域に起動可を示す情報を記憶しておき、無線リーダライタ22によってこの起動可を示す情報が読み取られることを起動条件としてもよい。
【0066】
また、異常処理として、上記各実施形態で説明したもの以外の処理を実行するようにしてもよい。例えば、異常処理として図示せぬスピーカから警告音を発生させてもよいし、メモリ202等に記憶された情報を自動的に消去するようにしてもよい。
【0067】
(4)上記各実施形態では、起動条件が成立した際に起動されるシステムがOSである場合を例示した。しかしながら、起動条件が成立した際に起動されるシステムを、例えば特定のアプリケーションプログラムで実現されるシステムのような他のシステムとしてもよい。また、このようなシステムの起動が制御部20にて実行されるソフトウェアによって指示されてもよいし、通信部21に接続された外部装置によって指示されてもよい。
【0068】
(5)上記各実施形態では、制御部20のCPU201がメモリ202に記憶されたプログラムを実行することにより、図5,図6に示した処理等が実現されるとした。しかしながら、これに限らずこのプログラムを所定のネットワークから決済端末1にダウンロードさせたり、記録媒体から決済端末1にインストールさせたりしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等を利用でき、かつ決済端末1やこれに接続された装置が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であってもよい。また、このように予めインストールやダウンロードにより得るプログラムと、OS等とが協働して各種機能を実現させるものであってもよい。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…決済端末、A…本体ユニット、B…表示ユニット、14…電源スイッチ、20…制御部、22…無線リーダライタ、23…電源回路、24…アンテナ、100…レジカウンタ、200…RFIDタグ、223…タグID設定エリア、224…処理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの起動を指示する起動指示手段と、
前記起動指示手段によってシステムの起動が指示されたとき、交信領域内にある無線タグと無線通信してその無線タグに記憶されたタグ情報を読み取る無線読取手段と、
前記無線読取手段によって読み取られたタグ情報が予め定められた起動条件を満たすとき、前記システムを起動する第1制御手段と、
前記無線読取手段によって読み取られたタグ情報が前記起動条件を満たさないとき、又は、前記無線読取手段によってタグ情報が読み取られなかったとき、前記システムを起動せずに所定の異常処理を実行する第2制御手段と、
を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
特定の無線タグのタグ情報を記憶した記憶手段をさらに備え、
前記起動条件は、前記無線通信手段によって無線タグから読み取られたタグ情報と、前記記憶手段に記憶されたタグ情報とが一致することである、ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
当該電子機器の各部に動作電源を供給する電源供給手段をさらに備え、
前記異常処理は、前記電源供給手段による各部への動作電源の供給を停止させることである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
特定の無線タグのタグ情報に対して実行すべき異常処理の内容を記憶した処理内容記憶手段をさらに備え、
前記第2制御手段は、前記無線読取手段によって読み取られたタグ情報が前記起動条件を満たさないとき、前記処理内容記憶手段において当該タグ情報に対して設定された内容の異常処理を実行することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記無線読取手段は、その交信領域を当該電子機器の設置面に向けて形成することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1に記載の電子機器。
【請求項6】
システムの起動を指示する起動指示手段と、前記起動指示手段によってシステムの起動が指示されたとき、交信領域内にある無線タグと無線通信してその無線タグに記憶されたタグ情報を読み取る無線読取手段と、を備えたコンピュータに、
前記無線読取手段によって読み取られたタグ情報が予め定められた起動条件を満たすとき、前記システムを起動する第1制御機能と、
前記無線読取手段によって読み取られたタグ情報が前記起動条件を満たさないとき、又は、前記無線読取手段によってタグ情報が読み取られなかったとき、前記システムを起動せずに所定の異常処理を実行する第2制御機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−155668(P2012−155668A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16564(P2011−16564)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】