電子機器のシールド構造
【課題】シールドケース内における電波干渉の影響を低減する電子機器のシールド構造において、低コストで組み立て性の良好な電子機器のシールド構造を提供する。
【解決手段】電磁波を発生する電波発生部品16A,16Bが配設されたプリント基板12と、このプリント基板12を内設するシールドケース11とを有する電子機器のシールド構造において、シールドケース11に装着溝を形成すると共に、この装着溝に電波の空間伝搬を遮断する平板状の遮蔽板18を装着すると共に、この遮蔽板18を弾性を有するシールド部材17Aによりシールドケース11に固定させる。
【解決手段】電磁波を発生する電波発生部品16A,16Bが配設されたプリント基板12と、このプリント基板12を内設するシールドケース11とを有する電子機器のシールド構造において、シールドケース11に装着溝を形成すると共に、この装着溝に電波の空間伝搬を遮断する平板状の遮蔽板18を装着すると共に、この遮蔽板18を弾性を有するシールド部材17Aによりシールドケース11に固定させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器のシールド構造に係り、特にシールドケース内における電波干渉の影響を低減する電子機器のシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、RFハイパワーアンプ等の高周波を使用する電子機器は、内部に電波発生部品が搭載される。このため、この電波発生部品が発生する電波がノイズとして外部に漏出しないよう、電波発生部品をシールドケース内に収納する等のシールド構造が採られる。
【0003】
図1は、この種のシールド構造を採用した電子機器が示されている。図1(A)はケース蓋3を取り外した状態の平面図であり、図1(B)は図1(A)におけるA−A線に沿う断面図である。同図に示される電子機器は、シールドケース1の内部にプリント基板2が配設されている。
【0004】
このプリント基板2の上部には2個の電波発生部品6A,6Bが配設されている。また、シールドケース1には入力用及び出力用のRFコネクタ4,4が配設されている。更に、ケース蓋3は、止めねじ5によりシールドケース1に固定されている。
【0005】
図1に示す構成では、各電波発生部品6A,6Bが発生する電波のシールドケース1から外部への漏出は防止できる。しかしながら、図1に示すシールド構造では、互いの電波発生部品6A,6B間における相互干渉は発生し、これにより各電波発生部品6A,6Bが適正に動作できないおそれがある。このような場合には、電波発生部品6A,6Bが相互に影響を及ぼさないよう、シールドケース1内においてもシールド構造を設ける必要がある。
【0006】
図2乃至図5は、従来におけるこの種のシールド構造を示している。尚、図2乃至図3において、図1に示した構成と対応する構成については同一符号を付して一部その説明を省略する。
【0007】
図2及び図3に示すシールド構造は、カットオフ減衰によるシールド構造である。このシールド構造は、電波は幅の狭い隙間を通過しにくい(減衰する)性質を利用したものである。ここで、「幅」とは、シールドケース1の電波が送受波される方向に対し直交する方向の内壁間距離である。
【0008】
図1に示したシールド構造では、電波が通過する通路(以下、電波通路という)の幅寸法は図中矢印D1で示す長さとなっている。これに対して図2(A)に示すシールド構造では、シールドケース1に延出部1aを形成することにより、電波通路の幅を図中矢印D2或いはD3(D2<D3<D1)としている。また、図3に示されるシールド構造では、シールドケース1を横長の形状とすることにより、プリント基板2の面積を図1に示したものと略同一としつつ、電波通路の幅寸法D4を狭くしている(D4<D1)。
【0009】
シールドケース1内を伝搬する電波の減衰は電波通路の幅により決定されるため、図2及び図3に示すように、電波通路の幅D2〜D4を図1に示した電波通路の幅D1より狭くすることにより、電波発生部品6A,6Bで発生した電波はシールドケース1内を減衰して伝搬し、よって電波発生部品6A,6B相互の電波干渉を軽減することができる。
【0010】
図4に示すシールド構造は、例えば特許文献1,2に開示されたものであり、シールドケースとは別個に設けられたケースを用いたシールド構造である。図4に示す例では、電波発生部品6Aを覆う内部シールドケース7(図4(C)に拡大して示す)をプリント基板2に止めねじ5により取り付けた構成としている。
【0011】
このように、電波を発生する電波発生部品6Aを内部シールドケース7で覆うことにより、電波発生部品6A,6Bの相互間で電波の干渉を防ぐことができる。この内部シールドケース7は、電波の発生源ばかりでなく、干渉を受けたくない箇所に取り付けることもできる。
【0012】
図5に示すシールド構造は、例えば特許文献3,4に開示されたものであり、シールド板(壁)を用いたシールド構造である。シールド板9は導電性金属をL字状に折り曲げ形成したものであり、折り曲げられた水平部は止めねじ5を用いてシールドケース1に固定されている。また、電磁シールド材8の垂立部の上端部は、電磁シールド材8を介してケース蓋3に接続されている。
【0013】
このシールド構造では、電波発生部品6A,B間にシールド板9が介在するため、両者間に存在する電波通路の幅は極めて狭くなる。よって、図2及び図3で説明したように、電波発生部品6A,6Bで発生した電波をシールドケース1内で減衰させることができる。
【0014】
また、このシールド構造では、個々の電波発生部品6A,6Bはシールドケース1及びシールド板9により画成される部屋内に位置した構成となる。これは、図4を用いて説明した、各電波発生部品6A,6Bにシールドケースを別箇に設けたと等価の構造となる。よって、これによっても電波発生部品6A,6B間における電波により相互干渉を防止することができる。
【特許文献1】特開2005−244067号公報
【特許文献2】実開平07−036498号公報
【特許文献3】特開平11−121962号公報
【特許文献4】特開平11−097874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図2及び図3を用いて説明したカットオフ減衰によるシールド構造では、減衰量をより大きく望む場合また、電波の周波数が高くなるほどシールドケース1の幅をより狭めなければならないため、その形状を細くしていかなければならなくなる。また、図2に示すようにシールドケース1に延出部1aを形成した場合、プリント基板2もシールドケース1の形状(延出部1aを有する形状)に対応させる必要がある。このため、プリント基板2の基板形状が複雑になり、回路実装の自由度が不自由になると共に、プリント基板2の基板強度が失われるという問題点がある。
【0016】
また、図4を用いて説明したケースによるシールド構造では、シールド効果の高い構造を実現することができる反面、シールド性を高くする程また、シールド範囲を広くする程にコストが高くなってしまうという問題点がある。
【0017】
更に、図5を用いて説明したシールド板(壁)を用いたシールド構造では、シールド効果の高い構造を実現することができる反面、取り付けに関する作業コストが発生するという問題点がある。具体的には、図5に示した例では、シールド板9をシールドケース1に固定するために、シールド板9をL字状に折り曲げる工程、シールドケース1に止めねじ5を締結するねじ孔を加工する工程、シールド板9をシールドケース1に位置決めした後に止めねじ5を締結する工程が必要なる。
【0018】
また、この方法に代えて、シールド板9をシールドケース1にはんだ付けする方法で固定する方法では、ねじ穴加工は発生しないが代わりに、はんだ付けのためのメッキ処理及びフラックスの塗布処理等が新たに発生しやはり工程が複雑になってしまう。
【0019】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高いシールド性を有しつつ、低コストで組み立て性の良好な電子機器のシールド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題は、本発明の第1の観点からは、
電磁波を発生するか、或いは電磁波の影響を受ける電子装置が配設された基板と、
該基板を内設するシールドケースとを有する電子機器のシールド構造において、
前記シールドケースに装着溝を形成すると共に、該装着溝に前記電磁波の空間伝搬を遮断する平板状の遮蔽板を装着し、かつ、該遮蔽板を弾性を有するシールド部材により前記シールドケースに装着し、ケース蓋により前記遮蔽板を押圧することを特徴とする電子機器のシールド構造により解決することができる。
【0021】
また、上記発明において、前記遮蔽板の両側に鍔部を形成し、前記遮蔽板はこの鍔部が前記装着溝に挿入されることにより前記シールドケースに装着されることが望ましい。
【0022】
また、上記発明において、前記シールド部材は前記基板と前記遮蔽板との間に配設されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、遮蔽板をシンプルな平板形状にする事で複雑な機械加工(曲げ、切削等)を省くことができ、これによりコスト低減を図ることができる。
【0024】
また、シールドケースに装着溝を形成し、この装着溝に遮蔽板を挿入することで遮蔽板がシールドケースに支持される構成としたことにより、ネジ止めやハンダ付け等の手間のかかる製造工数を省略すること事が可能となる。
【0025】
また、遮蔽板は弾性を有するシールド部材によりシールドケースに固定しているため、遮蔽板とシールド部材との電気的な接続性が良好となり電磁波に対するシールド性を高めることができる。更に、シールド部材が弾性変形することにより遮蔽板等の機械公差や加工誤差を吸収することができるため、公差や誤差が存在していたとしても遮蔽板をシールドケースに確実に固定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0027】
図6乃至図8は、本発明の一実施例である電子機器のシールド構造を説明するための図である。図6は本発明の一実施例であるシールド構造を適用した電子機器10の基本構成を示す斜視図であり、図7は電子機器10の基本構成を示す横断面図(図8(A)におけるE−E線に沿う断面図)であり、図8(A)は電子機器10のケース蓋13を取り除いた状態の平面図であり、図8(B)は図8(A)におけるD−D線沿う断面図である。尚、図6及び図7においては、図示の便宜上、RFコネクタ14及び電波発生部品16A,16Bの図示は省略している。
【0028】
電子機器10は例えば高周波を使用するRFハイパワーアンプであり、大略するとシールドケース11、プリント基板12、ケース蓋13、RFコネクタ14A,14B、電波発生部品16A,16B、及びシールド構造を構成するシールド部材17A,遮蔽板18等を有している。
【0029】
シールドケース11は有底で矩形状を有した筐体であり、その材質としては例えばアルミニウム,ステンレス,銅合金等を選定することができる。本実施例では、シールドケース11の材質としてアルミニウムを用いており、またアルミダイカストにより成型している。また、シールドケース11の側壁の上部略中央位置には装着溝19が形成されているが、これについては説明の便宜上後述するものとする。
【0030】
RFコネクタ14A,14Bは、シールドケース11の短辺側の側壁部に配設されている。RFコネクタ14Aは入力側のコネクタであり、またRFコネクタ14Bは出力側のコネクタである。このRFコネクタ14A,14Bは外部端子となるものであり、このRFコネクタ14A,14Bを介して電子機器10は図示しない外部装置に接続される。
【0031】
プリント基板12は、シールドケース11内の底部に配設されている。このプリント基板12には、RFハイパワーアンプを構成する各種電子部品が搭載されると共に、前記したRFコネクタ14A,14Bが接続されている。また、この電子部品の中には、動作することにより電磁波(本実施例では電波が主に問題となるため、以下、電波という)を発生する電波発生部品16A,16Bが含まれている(図8参照)。
【0032】
ケース蓋13は例えばシールドケース11と同一材料よりなる板材であり、シールドケース11の上部開口部を閉蓋するものである。このケース蓋13は、止めねじ15を用いてシールドケース11に固定される。これにより、プリント基板12は、シールドケース11及びケース蓋13により外部に対して電磁気的にシールドされた構造となる。
【0033】
このように、電子機器10はプリント基板12がシールドケース11及びケース蓋13が形成する内部空間内に収納されること外部に対して電磁気的にシールドされた構造となるが、プリント基板12上に複数の電波発生部品16A,16Bが存在する場合、この電波発生部品16A,16Bは互いに干渉し合って適正な動作が阻害されるおそれがあることは前述したとおりである。このため、本実施例に係る電子機器10においても、電波発生部品16A,16B間における相互干渉を防止するためのシールド構造が設けられている。
【0034】
以下、この電波発生部品16A,16B間における相互干渉を防止するシールド構造について説明する。
【0035】
本実施例では、大略すると遮蔽板18とシールド部材17Aによりシールド構造を実現している。遮蔽板18は平板状の部材であり、その材質としては導電性を有するアルミニウム或いは銅合金等の金属が選定されている。また、遮蔽板18は、図6及び図7に示すように矩形状の本体部21の両側部に鍔部20が側方に延出した形状とされている。この遮蔽板18は、上記のようにシンプルな形状を有した平板状の部材であるため、プレス成型により簡単に成型することができる。よって、複雑な機械加工(曲げ、切削等)を省くことができ、生産性良くかつ安価に遮蔽板18を製造することができる。
【0036】
また、遮蔽板18に形成された鍔部20は、シールドケース11に形成された装着溝19に装着可能な構成とされている。鍔部20が装着溝19に挿入装着されることにより、遮蔽板18はシールドケース11に支持された構成となる。
【0037】
一方、シールド部材17Aは、本実施例では導電性樹脂である導電性シリコンを用いている。導電性シリコンは導電性を有すると共に弾性変形可能な性質を有している。このシールド部材17Aは、図6乃至図8に示されるように、遮蔽板18の下端部とプリント基板12との間に介在するよう配設される。また、プリント基板12のシールド部材17Aが配設される位置にはグランドビアパターン(図示せず)が設けられており、よって遮蔽板18はシールド部材17Aを介してグランド接続が図られている。
【0038】
また、装着溝19はシールドケース11に形成されるが、この装着溝19の形成はシールドケース11をダイカストにより成型する場合には、これと同時に一括的に形成することが可能である。この場合、装着溝19を形成する工程を別箇に設ける必要がなく、製造工程の簡単化及び低コスト化を図ることができる。
【0039】
一方、シールドケース11を形成した後にエンドミル等を用いて装着溝19を形成することも可能である。この場合、装着溝19の深さや幅を適宜設定することが可能であり、よって種々の態様を有する遮蔽板18を用いる場合に有効である。
【0040】
次に、上記のシールド部材17A及び遮蔽板18よりなるシールド構造の組み立て方法について説明する。
【0041】
シールド構造を組み立てるには、先ずプリント基板12上の遮蔽板18が装着される所定位置に導電性シリコンよりなるシールド部材17Aを配設する。この時、上記のようにシールド部材17Aは、プリント基板12のグランドビアパターンと電気的に接続される。
【0042】
続いて、鍔部20を装着溝19に挿入することにより、遮蔽板18をシールドケース11に装着する。このシールド部材17Aの配設位置は、電波発生部品16Aと電波発生部品16Bとの間における電波が空間伝搬する経路途中に設定されている。
【0043】
この遮蔽板18のシールドケース11に対する装着処理は、単に鍔部20を装着溝19に挿入するだけの処理であるため、極めて容易に行うことができる。また、ネジ止めやハンダ付け等の手間のかかる製造工数を省略すること事が可能となるため、低コスト化を図ることができる。
【0044】
遮蔽板18をシールドケース11に装着した状態で、遮蔽板18の下端部はシールド部材17Aの上部に乗った状態となっている。また、ケース蓋13を固定しない状態では、遮蔽板18の上端部はシールドケース11の上面から若干突出するよう構成されている。
【0045】
次に、ケース蓋13をシールドケース11に固定する。このケース蓋13のシールドケース11への固定は、ケース蓋13をシールドケース11の上面に載置した後、電波発生部品16を締結することにより行う。このケース蓋13を固定する際、ケース蓋13は上記のようにシールドケース11の上面から突出している遮蔽板18の上端部を押圧する。
【0046】
これにより、シールド部材17Aは遮蔽板18により押圧されて弾性変形し、遮蔽板18の下端部はシールド部材17Aに食い込んだ状態となる。このため、シールド部材17Aと遮蔽板18との電気的な接続性が良好となり、シールド部材17Aと遮蔽板18との間におけるシールド性を高めることができる。
【0047】
また、シールド部材17Aが弾性変形することにより、その弾性復元力が発生する(図7に矢印Fで示す)。この弾性復元力Fは、遮蔽板18をケース蓋13に押し付ける力として作用する。
【0048】
このように、遮蔽板18がケース蓋13に押圧されることにより、遮蔽板18とケース蓋13との電気的な接続を確実に行うことができる。更に、仮に遮蔽板18,シールドケース11(装着溝19を含む),及びプリント基板12等に機械公差や加工誤差が存在していたとしても、シールド部材17Aが弾性変形することによりこの加工誤差等は吸収されるため、遮蔽板18をシールドケース11に確実に固定することができる。
【0049】
次に、上記のように組み立てられたシールド構造の機能について説明する。
【0050】
本実施例に係るシールド構造では、電波発生部品16Aと電波発生部品16Bとの間に遮蔽板18が配設された構成とされている。この構成とすることにより、カットオフ減衰によるシールド効果については、電波通路の幅は遮蔽板18とシールドケース11との微小な離間部分の幅ΔW(図7に示す)のみとなり、電波発生部品16A,16B間において電波のカットオフ減衰を効率よく図ることができる。
【0051】
また、シールド部材17Aは電波発生部品16A,16B間における電波伝搬経路の途中に設定されているため、各電波発生部品16A,16Bは遮蔽板18により電磁気的に画成された二つの部屋のそれぞれに配設された構成となっている。これは、各電波発生部品16A,16Bにシールドケースを配設したと等価の構成であり、よって電波発生部品16A,16B間で干渉が発生することを有効に防止することができる。
【0052】
このように本実施例に係るシールド構造によれば、従来両立させる事が難しかったシールド効果と低コストの実現を可能とし、簡素な遮蔽板18を用い装着溝19とシールド部材17Aで固定する事を特徴とする。この効果・作用により、安価な部品にて手間のかからない組み立て性を実現させ、実用的にも高いシールド効果を得られる電波シールド構造を提供する事が可能となった。
【0053】
次に、上記したシールド構造の変形例について説明する。
【0054】
図9乃至図12は、図6乃至図8を用いて説明したシールド構造の第1乃至第4変形例を示している。尚、図9乃至図12において、図6乃至図8に示した構成と対応する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図9は、第1変形例を示す図である。図6乃至図8に示した実施例では、シールド部材17Aを遮蔽板18の下端部とプリント基板12との間に介在するよう構成した。これに対して本変形例においては、遮蔽板18の上端部とケース蓋13との間にシールド部材17Bを配設したことを特徴とするものである。このように、シールド部材17Bを遮蔽板18の上端部とケース蓋13との間に介在するよう構成しても、図6乃至図8に示した実施例と同等の効果を得ることができる。
【0056】
図10は、第2変形例を示す図である。本変形例では、遮蔽板18の下端部とプリント基板12との間にシールド部材17Aを設けると共に、遮蔽板18の上端部とケース蓋13との間にもシールド部材17Bを設けたことを特徴とするものである。
【0057】
この構成とすることにより、遮蔽板18とシールドケース12、及び遮蔽板18とケース蓋13との電気的な接続をより確実に行うことができ、シールド性を向上することができる。また、遮蔽板18の上下においてシールド部材17A,17Bが弾性復元力を発生させるため、この弾性復元力により遮蔽板18をシールドケース11(ケース蓋13を含む)により確実に保持させることができる。
【0058】
図11は、第3変形例を示す図である。図6乃至図8に示した実施例では、シールドケース11に装着溝19を形成すると共に遮蔽板18に鍔部20を形成し、鍔部20を装着溝19に挿入装着することにより遮蔽板18をシールドケース11に支持する構成とした。
【0059】
これに対して本変形例では、装着溝19をシールドケース11の底面或いは底面近傍(例えば、エンドミルによる加工限界位置まで)まで形成し、これにより遮蔽板18に鍔部20を形成することなくシールドケース11に装着しうる構成したことを特徴とするものである。
【0060】
この構成とすることにより、遮蔽板18の形状を更にシンプルな矩形状(長方形状)とすることができ、プレス時における打ち抜き位置のレイアウト設定を容易にすることができる。また、上下左右の各方向に対して対象な形状となるため、装着方向が限定されることがなく、よってシールドケース11の装着溝19への装着作業をより容易化することができる。
【0061】
図12は、第4変形例を示す図である。図6乃至図8に示した実施例では、シールド部材17Aとして導電性樹脂である導電性シリコンを用いた例を示した。しかしながら、シールド部材17Aは弾性変形可能で、かつシールド性を有するものであれば導電性樹脂に限定されるものではない。
【0062】
本変形例では、遮蔽板18とプリント基板12との間に介在されるシールド部材17Cとして、ばね部材を用いたことを特徴としている。このシールド部材17Cは、導電金属(例えば、銅合金)をプレス加工することにより形成されている。
【0063】
図13は、シールド部材17Cを拡大して示す図である。同図に示すようにシールド部材17Cは、ベース部21、接点部22、ばね部23、及び係止部24等を一体的に形成した構成とされている。ベース部21はプリント基板12のグランドビアパターンにはんだ付け等により固定される。ばね部23は弾性変形することにより、接点部22はベース部21に対して図中矢印G1,G2方向に変位可能な構成とされている。このばね部23は、通常は接点部22を図中矢印G1方向に付勢しているが、端部25が係止部24と係合することにより、それ以上の変位が規制されている。
【0064】
上記構成とされたシールド部材17Cは、図12(A)に示すように、遮蔽板18の下端部に沿うよう多数個がプリント基板12上に列設された構成とされている。そして、遮蔽板18がシールドケース11に装着されることにより、遮蔽板18の下端部はシールド部材17Cの接点部22と当接し,ばね部23を弾性変形させつつ、接点部22を矢印G2方向に移動させる。これにより、シールド部材17Cは遮蔽板18と電気的に接続すると共に、ばね部23の弾性復元力により遮蔽板18はケース蓋13に向け押圧されるため、図6乃至図8に示した実施例と同等の作用効果を実現することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0066】
具体的には、上記した実施例ではシールドケース11の内部にいずれも電波を発生する電波発生部品16A,16Bを設けた構成例について説明したが、電波発生部品と電波は発生しないが電波の影響を受けやすい電子部品とがシールドケース11の内部に混載されるような場合であっても、本願発明を適用することができる。
【0067】
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
電磁波を発生するか、或いは電磁波の影響を受ける電子装置が配設された基板と、
該基板を内設するシールドケースとを有する電子機器のシールド構造において、
前記シールドケースに装着溝を形成すると共に、該装着溝に前記電磁波の空間伝搬を遮断する平板状の遮蔽板を装着し、かつ、該遮蔽板を弾性を有するシールド部材により前記シールドケースに固定することを特徴とする電子機器のシールド構造。
(付記2)
前記遮蔽板は両側に鍔部が形成されており、前記遮蔽板は該鍔部が前記装着溝に挿入されることにより前記シールドケースに装着されることを特徴とする付記1又は2記載の電子機器のシールド構造。
(付記3)
前記シールド部材は、前記基板と前記遮蔽板との間に配設されていることを特徴とする付記1又は2に記載の電子機器のシールド構造。
(付記4)
前記シールドケースは、開口部を覆う蓋体を有しており、
前記シールド部材は、該蓋体と前記遮蔽板との間に配設されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項に記載の電子機器のシールド構造。
(付記5)
前記遮蔽板は、前記基板に形成されたグランド電極に接続されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項に記載の電子機器のシールド構造。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は高周波回路設計における基本的なシールド構造をベースに電波の遮蔽構造を構成しているので、低周波回路から高周波回路まで幅広い周波数を用いる電子機器のシールド構造として対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、第1従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図2】図2は、第2従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図3】図3は、第3従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図4】図4は、第4従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図5】図5は、第5従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例であるシールド構造を説明するための斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例であるシールド構造を説明するための横断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施例であるシールド構造を説明するための図であり、図8(A)は平面図、図8(B)は図8(A)におけるD−D線沿う断面図である。
【図9】図9は、第1変形例であるシールド構造を示す横断面図である。
【図10】図10は、第2変形例であるシールド構造を示す横断面図である。
【図11】図11は、第3変形例であるシールド構造を示す横断面図である。
【図12】図12は、第4変形例であるシールド構造を説明するための図であり、図12(A)は平面図、図12(B)は図12(A)におけるF−F線沿う断面図である。
【図13】図13は、第4変形例であるシールド構造に用いるシールド部材を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10 電子機器
11 シールドケース
12 プリント基板
13 ケース蓋
16A,16B 電波発生部品
17A〜17C シールド部材
18 遮蔽板
19 装着溝
20 鍔部
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器のシールド構造に係り、特にシールドケース内における電波干渉の影響を低減する電子機器のシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、RFハイパワーアンプ等の高周波を使用する電子機器は、内部に電波発生部品が搭載される。このため、この電波発生部品が発生する電波がノイズとして外部に漏出しないよう、電波発生部品をシールドケース内に収納する等のシールド構造が採られる。
【0003】
図1は、この種のシールド構造を採用した電子機器が示されている。図1(A)はケース蓋3を取り外した状態の平面図であり、図1(B)は図1(A)におけるA−A線に沿う断面図である。同図に示される電子機器は、シールドケース1の内部にプリント基板2が配設されている。
【0004】
このプリント基板2の上部には2個の電波発生部品6A,6Bが配設されている。また、シールドケース1には入力用及び出力用のRFコネクタ4,4が配設されている。更に、ケース蓋3は、止めねじ5によりシールドケース1に固定されている。
【0005】
図1に示す構成では、各電波発生部品6A,6Bが発生する電波のシールドケース1から外部への漏出は防止できる。しかしながら、図1に示すシールド構造では、互いの電波発生部品6A,6B間における相互干渉は発生し、これにより各電波発生部品6A,6Bが適正に動作できないおそれがある。このような場合には、電波発生部品6A,6Bが相互に影響を及ぼさないよう、シールドケース1内においてもシールド構造を設ける必要がある。
【0006】
図2乃至図5は、従来におけるこの種のシールド構造を示している。尚、図2乃至図3において、図1に示した構成と対応する構成については同一符号を付して一部その説明を省略する。
【0007】
図2及び図3に示すシールド構造は、カットオフ減衰によるシールド構造である。このシールド構造は、電波は幅の狭い隙間を通過しにくい(減衰する)性質を利用したものである。ここで、「幅」とは、シールドケース1の電波が送受波される方向に対し直交する方向の内壁間距離である。
【0008】
図1に示したシールド構造では、電波が通過する通路(以下、電波通路という)の幅寸法は図中矢印D1で示す長さとなっている。これに対して図2(A)に示すシールド構造では、シールドケース1に延出部1aを形成することにより、電波通路の幅を図中矢印D2或いはD3(D2<D3<D1)としている。また、図3に示されるシールド構造では、シールドケース1を横長の形状とすることにより、プリント基板2の面積を図1に示したものと略同一としつつ、電波通路の幅寸法D4を狭くしている(D4<D1)。
【0009】
シールドケース1内を伝搬する電波の減衰は電波通路の幅により決定されるため、図2及び図3に示すように、電波通路の幅D2〜D4を図1に示した電波通路の幅D1より狭くすることにより、電波発生部品6A,6Bで発生した電波はシールドケース1内を減衰して伝搬し、よって電波発生部品6A,6B相互の電波干渉を軽減することができる。
【0010】
図4に示すシールド構造は、例えば特許文献1,2に開示されたものであり、シールドケースとは別個に設けられたケースを用いたシールド構造である。図4に示す例では、電波発生部品6Aを覆う内部シールドケース7(図4(C)に拡大して示す)をプリント基板2に止めねじ5により取り付けた構成としている。
【0011】
このように、電波を発生する電波発生部品6Aを内部シールドケース7で覆うことにより、電波発生部品6A,6Bの相互間で電波の干渉を防ぐことができる。この内部シールドケース7は、電波の発生源ばかりでなく、干渉を受けたくない箇所に取り付けることもできる。
【0012】
図5に示すシールド構造は、例えば特許文献3,4に開示されたものであり、シールド板(壁)を用いたシールド構造である。シールド板9は導電性金属をL字状に折り曲げ形成したものであり、折り曲げられた水平部は止めねじ5を用いてシールドケース1に固定されている。また、電磁シールド材8の垂立部の上端部は、電磁シールド材8を介してケース蓋3に接続されている。
【0013】
このシールド構造では、電波発生部品6A,B間にシールド板9が介在するため、両者間に存在する電波通路の幅は極めて狭くなる。よって、図2及び図3で説明したように、電波発生部品6A,6Bで発生した電波をシールドケース1内で減衰させることができる。
【0014】
また、このシールド構造では、個々の電波発生部品6A,6Bはシールドケース1及びシールド板9により画成される部屋内に位置した構成となる。これは、図4を用いて説明した、各電波発生部品6A,6Bにシールドケースを別箇に設けたと等価の構造となる。よって、これによっても電波発生部品6A,6B間における電波により相互干渉を防止することができる。
【特許文献1】特開2005−244067号公報
【特許文献2】実開平07−036498号公報
【特許文献3】特開平11−121962号公報
【特許文献4】特開平11−097874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図2及び図3を用いて説明したカットオフ減衰によるシールド構造では、減衰量をより大きく望む場合また、電波の周波数が高くなるほどシールドケース1の幅をより狭めなければならないため、その形状を細くしていかなければならなくなる。また、図2に示すようにシールドケース1に延出部1aを形成した場合、プリント基板2もシールドケース1の形状(延出部1aを有する形状)に対応させる必要がある。このため、プリント基板2の基板形状が複雑になり、回路実装の自由度が不自由になると共に、プリント基板2の基板強度が失われるという問題点がある。
【0016】
また、図4を用いて説明したケースによるシールド構造では、シールド効果の高い構造を実現することができる反面、シールド性を高くする程また、シールド範囲を広くする程にコストが高くなってしまうという問題点がある。
【0017】
更に、図5を用いて説明したシールド板(壁)を用いたシールド構造では、シールド効果の高い構造を実現することができる反面、取り付けに関する作業コストが発生するという問題点がある。具体的には、図5に示した例では、シールド板9をシールドケース1に固定するために、シールド板9をL字状に折り曲げる工程、シールドケース1に止めねじ5を締結するねじ孔を加工する工程、シールド板9をシールドケース1に位置決めした後に止めねじ5を締結する工程が必要なる。
【0018】
また、この方法に代えて、シールド板9をシールドケース1にはんだ付けする方法で固定する方法では、ねじ穴加工は発生しないが代わりに、はんだ付けのためのメッキ処理及びフラックスの塗布処理等が新たに発生しやはり工程が複雑になってしまう。
【0019】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高いシールド性を有しつつ、低コストで組み立て性の良好な電子機器のシールド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題は、本発明の第1の観点からは、
電磁波を発生するか、或いは電磁波の影響を受ける電子装置が配設された基板と、
該基板を内設するシールドケースとを有する電子機器のシールド構造において、
前記シールドケースに装着溝を形成すると共に、該装着溝に前記電磁波の空間伝搬を遮断する平板状の遮蔽板を装着し、かつ、該遮蔽板を弾性を有するシールド部材により前記シールドケースに装着し、ケース蓋により前記遮蔽板を押圧することを特徴とする電子機器のシールド構造により解決することができる。
【0021】
また、上記発明において、前記遮蔽板の両側に鍔部を形成し、前記遮蔽板はこの鍔部が前記装着溝に挿入されることにより前記シールドケースに装着されることが望ましい。
【0022】
また、上記発明において、前記シールド部材は前記基板と前記遮蔽板との間に配設されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、遮蔽板をシンプルな平板形状にする事で複雑な機械加工(曲げ、切削等)を省くことができ、これによりコスト低減を図ることができる。
【0024】
また、シールドケースに装着溝を形成し、この装着溝に遮蔽板を挿入することで遮蔽板がシールドケースに支持される構成としたことにより、ネジ止めやハンダ付け等の手間のかかる製造工数を省略すること事が可能となる。
【0025】
また、遮蔽板は弾性を有するシールド部材によりシールドケースに固定しているため、遮蔽板とシールド部材との電気的な接続性が良好となり電磁波に対するシールド性を高めることができる。更に、シールド部材が弾性変形することにより遮蔽板等の機械公差や加工誤差を吸収することができるため、公差や誤差が存在していたとしても遮蔽板をシールドケースに確実に固定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0027】
図6乃至図8は、本発明の一実施例である電子機器のシールド構造を説明するための図である。図6は本発明の一実施例であるシールド構造を適用した電子機器10の基本構成を示す斜視図であり、図7は電子機器10の基本構成を示す横断面図(図8(A)におけるE−E線に沿う断面図)であり、図8(A)は電子機器10のケース蓋13を取り除いた状態の平面図であり、図8(B)は図8(A)におけるD−D線沿う断面図である。尚、図6及び図7においては、図示の便宜上、RFコネクタ14及び電波発生部品16A,16Bの図示は省略している。
【0028】
電子機器10は例えば高周波を使用するRFハイパワーアンプであり、大略するとシールドケース11、プリント基板12、ケース蓋13、RFコネクタ14A,14B、電波発生部品16A,16B、及びシールド構造を構成するシールド部材17A,遮蔽板18等を有している。
【0029】
シールドケース11は有底で矩形状を有した筐体であり、その材質としては例えばアルミニウム,ステンレス,銅合金等を選定することができる。本実施例では、シールドケース11の材質としてアルミニウムを用いており、またアルミダイカストにより成型している。また、シールドケース11の側壁の上部略中央位置には装着溝19が形成されているが、これについては説明の便宜上後述するものとする。
【0030】
RFコネクタ14A,14Bは、シールドケース11の短辺側の側壁部に配設されている。RFコネクタ14Aは入力側のコネクタであり、またRFコネクタ14Bは出力側のコネクタである。このRFコネクタ14A,14Bは外部端子となるものであり、このRFコネクタ14A,14Bを介して電子機器10は図示しない外部装置に接続される。
【0031】
プリント基板12は、シールドケース11内の底部に配設されている。このプリント基板12には、RFハイパワーアンプを構成する各種電子部品が搭載されると共に、前記したRFコネクタ14A,14Bが接続されている。また、この電子部品の中には、動作することにより電磁波(本実施例では電波が主に問題となるため、以下、電波という)を発生する電波発生部品16A,16Bが含まれている(図8参照)。
【0032】
ケース蓋13は例えばシールドケース11と同一材料よりなる板材であり、シールドケース11の上部開口部を閉蓋するものである。このケース蓋13は、止めねじ15を用いてシールドケース11に固定される。これにより、プリント基板12は、シールドケース11及びケース蓋13により外部に対して電磁気的にシールドされた構造となる。
【0033】
このように、電子機器10はプリント基板12がシールドケース11及びケース蓋13が形成する内部空間内に収納されること外部に対して電磁気的にシールドされた構造となるが、プリント基板12上に複数の電波発生部品16A,16Bが存在する場合、この電波発生部品16A,16Bは互いに干渉し合って適正な動作が阻害されるおそれがあることは前述したとおりである。このため、本実施例に係る電子機器10においても、電波発生部品16A,16B間における相互干渉を防止するためのシールド構造が設けられている。
【0034】
以下、この電波発生部品16A,16B間における相互干渉を防止するシールド構造について説明する。
【0035】
本実施例では、大略すると遮蔽板18とシールド部材17Aによりシールド構造を実現している。遮蔽板18は平板状の部材であり、その材質としては導電性を有するアルミニウム或いは銅合金等の金属が選定されている。また、遮蔽板18は、図6及び図7に示すように矩形状の本体部21の両側部に鍔部20が側方に延出した形状とされている。この遮蔽板18は、上記のようにシンプルな形状を有した平板状の部材であるため、プレス成型により簡単に成型することができる。よって、複雑な機械加工(曲げ、切削等)を省くことができ、生産性良くかつ安価に遮蔽板18を製造することができる。
【0036】
また、遮蔽板18に形成された鍔部20は、シールドケース11に形成された装着溝19に装着可能な構成とされている。鍔部20が装着溝19に挿入装着されることにより、遮蔽板18はシールドケース11に支持された構成となる。
【0037】
一方、シールド部材17Aは、本実施例では導電性樹脂である導電性シリコンを用いている。導電性シリコンは導電性を有すると共に弾性変形可能な性質を有している。このシールド部材17Aは、図6乃至図8に示されるように、遮蔽板18の下端部とプリント基板12との間に介在するよう配設される。また、プリント基板12のシールド部材17Aが配設される位置にはグランドビアパターン(図示せず)が設けられており、よって遮蔽板18はシールド部材17Aを介してグランド接続が図られている。
【0038】
また、装着溝19はシールドケース11に形成されるが、この装着溝19の形成はシールドケース11をダイカストにより成型する場合には、これと同時に一括的に形成することが可能である。この場合、装着溝19を形成する工程を別箇に設ける必要がなく、製造工程の簡単化及び低コスト化を図ることができる。
【0039】
一方、シールドケース11を形成した後にエンドミル等を用いて装着溝19を形成することも可能である。この場合、装着溝19の深さや幅を適宜設定することが可能であり、よって種々の態様を有する遮蔽板18を用いる場合に有効である。
【0040】
次に、上記のシールド部材17A及び遮蔽板18よりなるシールド構造の組み立て方法について説明する。
【0041】
シールド構造を組み立てるには、先ずプリント基板12上の遮蔽板18が装着される所定位置に導電性シリコンよりなるシールド部材17Aを配設する。この時、上記のようにシールド部材17Aは、プリント基板12のグランドビアパターンと電気的に接続される。
【0042】
続いて、鍔部20を装着溝19に挿入することにより、遮蔽板18をシールドケース11に装着する。このシールド部材17Aの配設位置は、電波発生部品16Aと電波発生部品16Bとの間における電波が空間伝搬する経路途中に設定されている。
【0043】
この遮蔽板18のシールドケース11に対する装着処理は、単に鍔部20を装着溝19に挿入するだけの処理であるため、極めて容易に行うことができる。また、ネジ止めやハンダ付け等の手間のかかる製造工数を省略すること事が可能となるため、低コスト化を図ることができる。
【0044】
遮蔽板18をシールドケース11に装着した状態で、遮蔽板18の下端部はシールド部材17Aの上部に乗った状態となっている。また、ケース蓋13を固定しない状態では、遮蔽板18の上端部はシールドケース11の上面から若干突出するよう構成されている。
【0045】
次に、ケース蓋13をシールドケース11に固定する。このケース蓋13のシールドケース11への固定は、ケース蓋13をシールドケース11の上面に載置した後、電波発生部品16を締結することにより行う。このケース蓋13を固定する際、ケース蓋13は上記のようにシールドケース11の上面から突出している遮蔽板18の上端部を押圧する。
【0046】
これにより、シールド部材17Aは遮蔽板18により押圧されて弾性変形し、遮蔽板18の下端部はシールド部材17Aに食い込んだ状態となる。このため、シールド部材17Aと遮蔽板18との電気的な接続性が良好となり、シールド部材17Aと遮蔽板18との間におけるシールド性を高めることができる。
【0047】
また、シールド部材17Aが弾性変形することにより、その弾性復元力が発生する(図7に矢印Fで示す)。この弾性復元力Fは、遮蔽板18をケース蓋13に押し付ける力として作用する。
【0048】
このように、遮蔽板18がケース蓋13に押圧されることにより、遮蔽板18とケース蓋13との電気的な接続を確実に行うことができる。更に、仮に遮蔽板18,シールドケース11(装着溝19を含む),及びプリント基板12等に機械公差や加工誤差が存在していたとしても、シールド部材17Aが弾性変形することによりこの加工誤差等は吸収されるため、遮蔽板18をシールドケース11に確実に固定することができる。
【0049】
次に、上記のように組み立てられたシールド構造の機能について説明する。
【0050】
本実施例に係るシールド構造では、電波発生部品16Aと電波発生部品16Bとの間に遮蔽板18が配設された構成とされている。この構成とすることにより、カットオフ減衰によるシールド効果については、電波通路の幅は遮蔽板18とシールドケース11との微小な離間部分の幅ΔW(図7に示す)のみとなり、電波発生部品16A,16B間において電波のカットオフ減衰を効率よく図ることができる。
【0051】
また、シールド部材17Aは電波発生部品16A,16B間における電波伝搬経路の途中に設定されているため、各電波発生部品16A,16Bは遮蔽板18により電磁気的に画成された二つの部屋のそれぞれに配設された構成となっている。これは、各電波発生部品16A,16Bにシールドケースを配設したと等価の構成であり、よって電波発生部品16A,16B間で干渉が発生することを有効に防止することができる。
【0052】
このように本実施例に係るシールド構造によれば、従来両立させる事が難しかったシールド効果と低コストの実現を可能とし、簡素な遮蔽板18を用い装着溝19とシールド部材17Aで固定する事を特徴とする。この効果・作用により、安価な部品にて手間のかからない組み立て性を実現させ、実用的にも高いシールド効果を得られる電波シールド構造を提供する事が可能となった。
【0053】
次に、上記したシールド構造の変形例について説明する。
【0054】
図9乃至図12は、図6乃至図8を用いて説明したシールド構造の第1乃至第4変形例を示している。尚、図9乃至図12において、図6乃至図8に示した構成と対応する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図9は、第1変形例を示す図である。図6乃至図8に示した実施例では、シールド部材17Aを遮蔽板18の下端部とプリント基板12との間に介在するよう構成した。これに対して本変形例においては、遮蔽板18の上端部とケース蓋13との間にシールド部材17Bを配設したことを特徴とするものである。このように、シールド部材17Bを遮蔽板18の上端部とケース蓋13との間に介在するよう構成しても、図6乃至図8に示した実施例と同等の効果を得ることができる。
【0056】
図10は、第2変形例を示す図である。本変形例では、遮蔽板18の下端部とプリント基板12との間にシールド部材17Aを設けると共に、遮蔽板18の上端部とケース蓋13との間にもシールド部材17Bを設けたことを特徴とするものである。
【0057】
この構成とすることにより、遮蔽板18とシールドケース12、及び遮蔽板18とケース蓋13との電気的な接続をより確実に行うことができ、シールド性を向上することができる。また、遮蔽板18の上下においてシールド部材17A,17Bが弾性復元力を発生させるため、この弾性復元力により遮蔽板18をシールドケース11(ケース蓋13を含む)により確実に保持させることができる。
【0058】
図11は、第3変形例を示す図である。図6乃至図8に示した実施例では、シールドケース11に装着溝19を形成すると共に遮蔽板18に鍔部20を形成し、鍔部20を装着溝19に挿入装着することにより遮蔽板18をシールドケース11に支持する構成とした。
【0059】
これに対して本変形例では、装着溝19をシールドケース11の底面或いは底面近傍(例えば、エンドミルによる加工限界位置まで)まで形成し、これにより遮蔽板18に鍔部20を形成することなくシールドケース11に装着しうる構成したことを特徴とするものである。
【0060】
この構成とすることにより、遮蔽板18の形状を更にシンプルな矩形状(長方形状)とすることができ、プレス時における打ち抜き位置のレイアウト設定を容易にすることができる。また、上下左右の各方向に対して対象な形状となるため、装着方向が限定されることがなく、よってシールドケース11の装着溝19への装着作業をより容易化することができる。
【0061】
図12は、第4変形例を示す図である。図6乃至図8に示した実施例では、シールド部材17Aとして導電性樹脂である導電性シリコンを用いた例を示した。しかしながら、シールド部材17Aは弾性変形可能で、かつシールド性を有するものであれば導電性樹脂に限定されるものではない。
【0062】
本変形例では、遮蔽板18とプリント基板12との間に介在されるシールド部材17Cとして、ばね部材を用いたことを特徴としている。このシールド部材17Cは、導電金属(例えば、銅合金)をプレス加工することにより形成されている。
【0063】
図13は、シールド部材17Cを拡大して示す図である。同図に示すようにシールド部材17Cは、ベース部21、接点部22、ばね部23、及び係止部24等を一体的に形成した構成とされている。ベース部21はプリント基板12のグランドビアパターンにはんだ付け等により固定される。ばね部23は弾性変形することにより、接点部22はベース部21に対して図中矢印G1,G2方向に変位可能な構成とされている。このばね部23は、通常は接点部22を図中矢印G1方向に付勢しているが、端部25が係止部24と係合することにより、それ以上の変位が規制されている。
【0064】
上記構成とされたシールド部材17Cは、図12(A)に示すように、遮蔽板18の下端部に沿うよう多数個がプリント基板12上に列設された構成とされている。そして、遮蔽板18がシールドケース11に装着されることにより、遮蔽板18の下端部はシールド部材17Cの接点部22と当接し,ばね部23を弾性変形させつつ、接点部22を矢印G2方向に移動させる。これにより、シールド部材17Cは遮蔽板18と電気的に接続すると共に、ばね部23の弾性復元力により遮蔽板18はケース蓋13に向け押圧されるため、図6乃至図8に示した実施例と同等の作用効果を実現することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0066】
具体的には、上記した実施例ではシールドケース11の内部にいずれも電波を発生する電波発生部品16A,16Bを設けた構成例について説明したが、電波発生部品と電波は発生しないが電波の影響を受けやすい電子部品とがシールドケース11の内部に混載されるような場合であっても、本願発明を適用することができる。
【0067】
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
電磁波を発生するか、或いは電磁波の影響を受ける電子装置が配設された基板と、
該基板を内設するシールドケースとを有する電子機器のシールド構造において、
前記シールドケースに装着溝を形成すると共に、該装着溝に前記電磁波の空間伝搬を遮断する平板状の遮蔽板を装着し、かつ、該遮蔽板を弾性を有するシールド部材により前記シールドケースに固定することを特徴とする電子機器のシールド構造。
(付記2)
前記遮蔽板は両側に鍔部が形成されており、前記遮蔽板は該鍔部が前記装着溝に挿入されることにより前記シールドケースに装着されることを特徴とする付記1又は2記載の電子機器のシールド構造。
(付記3)
前記シールド部材は、前記基板と前記遮蔽板との間に配設されていることを特徴とする付記1又は2に記載の電子機器のシールド構造。
(付記4)
前記シールドケースは、開口部を覆う蓋体を有しており、
前記シールド部材は、該蓋体と前記遮蔽板との間に配設されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項に記載の電子機器のシールド構造。
(付記5)
前記遮蔽板は、前記基板に形成されたグランド電極に接続されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項に記載の電子機器のシールド構造。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は高周波回路設計における基本的なシールド構造をベースに電波の遮蔽構造を構成しているので、低周波回路から高周波回路まで幅広い周波数を用いる電子機器のシールド構造として対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、第1従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図2】図2は、第2従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図3】図3は、第3従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図4】図4は、第4従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図5】図5は、第5従来例であるシールド構造を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例であるシールド構造を説明するための斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例であるシールド構造を説明するための横断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施例であるシールド構造を説明するための図であり、図8(A)は平面図、図8(B)は図8(A)におけるD−D線沿う断面図である。
【図9】図9は、第1変形例であるシールド構造を示す横断面図である。
【図10】図10は、第2変形例であるシールド構造を示す横断面図である。
【図11】図11は、第3変形例であるシールド構造を示す横断面図である。
【図12】図12は、第4変形例であるシールド構造を説明するための図であり、図12(A)は平面図、図12(B)は図12(A)におけるF−F線沿う断面図である。
【図13】図13は、第4変形例であるシールド構造に用いるシールド部材を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10 電子機器
11 シールドケース
12 プリント基板
13 ケース蓋
16A,16B 電波発生部品
17A〜17C シールド部材
18 遮蔽板
19 装着溝
20 鍔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発生するか、或いは電磁波の影響を受ける電子装置が配設された基板と、
該基板を内設するシールドケースとを有する電子機器のシールド構造において、
前記シールドケースに装着溝を形成すると共に、該装着溝に前記電磁波の空間伝搬を遮断する平板状の遮蔽板を装着し、かつ、該遮蔽板を弾性を有するシールド部材により前記シールドケースに装着し、ケース蓋により前記遮蔽板を押圧することを特徴とする電子機器のシールド構造。
【請求項2】
前記遮蔽板は両側に鍔部が形成されており、前記遮蔽板は該鍔部が前記装着溝に挿入されることにより前記シールドケースに装着されることを特徴とする請求項1記載の電子機器のシールド構造。
【請求項3】
前記シールド部材は、前記基板と前記遮蔽板との間に配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器のシールド構造。
【請求項1】
電磁波を発生するか、或いは電磁波の影響を受ける電子装置が配設された基板と、
該基板を内設するシールドケースとを有する電子機器のシールド構造において、
前記シールドケースに装着溝を形成すると共に、該装着溝に前記電磁波の空間伝搬を遮断する平板状の遮蔽板を装着し、かつ、該遮蔽板を弾性を有するシールド部材により前記シールドケースに装着し、ケース蓋により前記遮蔽板を押圧することを特徴とする電子機器のシールド構造。
【請求項2】
前記遮蔽板は両側に鍔部が形成されており、前記遮蔽板は該鍔部が前記装着溝に挿入されることにより前記シールドケースに装着されることを特徴とする請求項1記載の電子機器のシールド構造。
【請求項3】
前記シールド部材は、前記基板と前記遮蔽板との間に配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器のシールド構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−10117(P2009−10117A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169166(P2007−169166)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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