説明

電子機器及び照明器具

【課題】樹脂を充填して作成する電子機器において安全に寿命末期を迎える。
【解決手段】プリント基板26と、プリント基板26に実装された電子部品32と、プリント基板表面に設けられ、電子部品32間を接続する金属層からなる回路パターン51と、回路パターン上51に塗布され、回路パターン51の一部に未塗布の露出部が設けられるように形成されたレジストと、露出部55に接触すると共に回路パターンが設けられたプリント基板26の面側に被覆された金属腐食剤を含有する樹脂材24とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防水性樹脂を充填した電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寿命末期検出を行う回路を備えた放電灯点灯装置においては、プリント基板を放熱用の樹脂により覆うものが知られている。しかし、この構成によると誤動作を生じるとして、放熱用の樹脂を、プリント基板の半田面とケースの底面の間に、制御部及び検出部をそれぞれ構成する電子部品を覆わないようにして充填することが示されている(特許文献1、特に、0050、図1参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の放電灯点灯装置では、樹脂の特性により誤動作の状況が異なることから、特性の異なる樹脂毎に樹脂充填の設計変更を行う必要があり煩わしいものであった。
【0004】
また、常に特定の部品が原因となって寿命末期現象が生じるとは限らないことから、所定の充填手法を採用することにより安全に寿命末期を迎えることができるものでなく、樹脂を充填して作成する電子機器において安全に寿命末期を迎え得る手法が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−120464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、樹脂を充填して作成する電子機器において安全に寿命末期を迎えることのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子機器は、プリント基板と;プリント基板に実装された電子部品と;プリント基板表面に設けられ、電子部品間を接続する金属層からなる回路パターンと;回路パターン上に塗布され、回路パターンの一部に未塗布の露出部が設けられるように形成されたレジストと;露出部に接触すると共に回路パターンが設けられたプリント基板面側に被覆された金属腐食剤を含有する防水性樹脂と;を具備したことを特徴とする。
【0008】
金属腐食剤は、金属回路パターンを構成する金属または合金などに応じて適宜選択される。金属回路パターンが銅または銅を含む合金などである場合には、塩素系の樹脂硬化剤などを採用することができる。また、金属回路パターンが銀または銀を含む合金などである場合には、リン系の難燃剤を採用することができる。リン系の難燃剤としては、トリス(2−クロロエチル)フォスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェートを挙げることができる。
【0009】
露出部は、当該部位にマスクを施して回路パターンの面にレジストを塗布することにより生成しても良く、また、回路パターンの面に対し全体にレジストを塗布したものを生成した後に当該部位のレジストを剥離するようにしても良い。露出部は、制御回路用の電源系や制御信号系の比較的電流量が少ない回路パターン部分に設けることが好適であり、また、露出部は1または複数箇所とする。更に、露出部は、直流電圧が例えば100V以上の回路部分に設けることが好適である。また、露出部は、マイグレーションによる近隣回路パターンとの短絡により、発煙や発火が生じない部位に設けるものとする。
【0010】
本発明に係る電子機器では、露出部が設けられた回路パターンの部分は、他の金属回路パターンの部分よりも薄肉化されていることを特徴とする。この場合、薄肉化は、出来上がった回路パターンの所要部位を削ることにより実現しても良く、また、回路パターンを積層して作成する場合には、該当部位の積層数を少なくすることにより実現しても良い。
【0011】
本発明に係る電子機器では、防水性樹脂は、ウレタン樹脂であり、金属腐食剤としてリン系の難燃剤および水酸化アルミニウムを用いることを特徴とする。この構成によれば、防水性の処理(充填、硬化)が容易であり、熱導電フィラーを兼用するので放熱性が向上する作用が得られる。
【0012】
本発明に係る照明器具は、器具本体と;器具本体に取り付けられたソケットと;ソケットに実装される放電灯と;請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器であって、放電灯を点灯させる点灯回路を含む電子機器とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電子機器では、プリント基板表面に設けられ、電子部品間を接続する金属回路パターンとの一部を、レジストが塗布されていない露出部として、金属回路パターンが設けられたプリント基板面を覆う金属腐食剤を含有する防水性樹脂に、上記露出部が接触する構成であるので、露出部が金属腐食剤により経時的に腐食されてゆき、所定時間の経過後には断線状態へ到るので、安全に寿命末期を迎えることができる効果を奏する。
【0014】
本発明に係る電子機器では、露出部が、他の金属回路パターンよりも薄肉化されているので、金属腐食剤による腐食によって確実に断線状態へ到ることになる。
【0015】
本発明に係る電子機器では、防水性樹脂は、ウレタン樹脂であり、金属腐食剤としてリン系の難燃剤および水酸化アルミニウムを用いるので、防水性の処理(充填、硬化)が容易であり、熱導電フィラーを兼用するので放熱性が向上する効果を奏する。
【0016】
本発明に係る照明器具は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器であって、放電灯を点灯させる点灯回路を含む電子機器を具備するので、露出部が金属腐食剤により腐食されてゆき、所定時間の経過後には断線状態へ到るので、安全に寿命末期を迎える照明器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下添付図面を参照して、本発明に係る電子機器及びこれを用いた照明器具の一実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態に係る照明器具10は、図1に示されるように、シャーシ11と、ランプソケット12と、放電灯13と、電子機器を構成する点灯装置14とを備えている。
【0018】
上記において、シャーシ11は、例えば金属製であり、放電灯13が直管型の蛍光灯であることに対応して長方形形状をなしている。シャーシ11における長手方向両端部には、シャーシ11から突出するようにランプソケット12が設けられている。放電灯13は、このランプソケット12に対して取り外し可能に実装されている。シャーシ11内には放電灯13を点灯させる点灯装置14が設けられている。
【0019】
<実施例1>
図2乃至図9を用いて点灯装置14を説明する。点灯装置14は、ケース21内においてトレー41に収容された防水アセンブリ31を内蔵して構成されている。防水アセンブリ31は、回路モジュール20が樹脂材24に埋設されたものである。
【0020】
ケース21は、本体ケース22と、本体ケース22の蓋の機能を有する蓋ケース23とにより構成されている。図3に示すように、本体ケース22の長手方向両端部には切欠部22dが形成されており、蓋ケース23の長手方向両端部に形成されている爪片23cが、上記切欠部22dに入り込み折り曲げられる。この切欠部22dと爪片23cとにより本体ケース22と蓋ケース23が結合される。
【0021】
本体ケース22と蓋ケース23は、外部への放熱を考慮して金属製であることが好適であり、例えばアルミニウムまたはその合金により作成される。或いは、本体ケース22と蓋ケース23を安価な鉄製の材料で構成することも可能である。
【0022】
本体ケース22は、底板部22aと、底板部22aの両側に位置する側壁部22bと、端部にて折り返される端板部22cとを備えている。底板部22aは、本体ケース22の幅方向に概ね三等分に折り曲げられ、折り曲げられた両端部分が上方に向かうよう形状とされている。端板部22cは、本体ケース22と蓋ケース23とにより形成される筒型の端部に生じる穴部を塞ぐ機能を有する。
【0023】
一方、蓋ケース23は、天板部23aと、この天板部23aの幅方向両側に折り曲げられて設けられた側壁部23bとを備えている。天板部23aの長手方向両端部には、ネジ等の固定具を通す穴25が形成されている。穴25を介してネジ等により蓋ケース23をシャーシ11に結合させて、点灯装置14がシャーシ11に取付けられている。蓋ケース23はシャーシ11に対する熱伝導面の機能を備えている。
【0024】
本体ケース22の長さは、蓋ケース23よりも短く、蓋ケース23の穴25を露出させている。蓋ケース23の側壁部23bが、本体ケース22の側壁部22bを上から覆い、側壁部23bと側壁部22bが接触することにより本体ケース22と蓋ケース23とは熱的に結合されている。
【0025】
本体ケース22の底板部22aにおける長手方向両端部には、四角形状の孔16、17が形成されている。孔16からは、図3に示されるようにコネクタキャップ18が露出され、孔17からは、図2に示されるようにコネクタキャップ19が露出される。
【0026】
放電灯13を点灯させる回路モジュール20は、絶縁性のプリント基板26と、図7及び図8のような部品により構成される点灯回路27と、図8に示す入力用コネクタ28及び出力用コネクタ29とを備えたものである。
【0027】
プリント基板26は、本体ケース22内に収容可能な大きさの長四角形状をなしており、プリント基板26の一方の面が部品取付面26aであり、他方の面は例えば半田付面26bとして利用される。半田付面26bには、図7に示されるように配線パターンが形成されていると共に、この配線パターンは絶縁性のレジストにより被覆されている。
【0028】
図7と図8に示すように、プリント基板26の幅方向の端縁における複数位置には、切欠部26cが形成されている。この切欠部26cは、プリント基板26の表裏面に樹脂材24を通す通路の機能を有している。切欠部26cの形状は、切欠形状に限ることなく、穴形状であっても良い。
【0029】
点灯回路27は、図7と図8に示すように、複数の電子部品32と、複数の電子部品32間を結ぶ配線パターンとにより構成され、放電灯13を点灯させる例えばインバータ回路を含んでいる。電子部品32としては、パワートランジスタを含む各種トランジスタなどの半導体、抵抗、コンデンサ、コイル、トランス、ダイオード及びチップ部品などを挙げることができる。
【0030】
図8には、パワートランジスタ32aに放熱板33を結合して、プリント基板26に実装した例が示されている。電子部品32は、プリント基板26の部品取付面26aに面実装されるか、例えばフロー半田処理などにより半田付される。
【0031】
入力用コネクタ28及び出力用コネクタ29も他の電子部品32と共にプリント基板26に半田付されて点灯回路27の入出力部となる。樹脂材24に埋もれてしまうことが好ましくない電子部品32には、図8に示すように部品キャップ36が被せられる。ここでは、電解コンデンサ32bに対して部品キャップ36が被せられている。部品キャップ36の開口面は、プリント基板26の部品取付面26aに当接し、接着剤などで固定されることが好適である。
【0032】
本実施例では、電子部品32であるトランスやパワートランジスタ32aなどにより構成される電源系回路の部分や、インバータ回路における制御系回路の部分における半田付面26bに、点灯回路27が安全に寿命末期を迎えることができるための構成を備えさせている。
【0033】
具体的には、電源系回路の部分や、インバータ回路における制御系回路の部分を含む半田付面26bが図9に示すように構成されているものとする。つまり、銅や銀或いはそれらの合金による金属で構成されている回路パターン51、52がプリント基板26上に形成され、パワートランジスタ32aを含む電子部品32などを回路パターン51が相互に接続している。
【0034】
電子部品32と回路パターン51とは、電子部品32の端子を回路パターン51と半田付けする半田部53により接続されている。半田付面26bは、レジストにより全面が被覆されている。電源系回路の部分や、インバータ回路における制御系回路の部分の回路パターン51には、レジストが塗布されていない露出部55が設けられている。
【0035】
露出部55は、当該部位にマスクを施して半田付面26bにレジストを塗布し、マスクを除去することにより生成しても良く、また、半田付面26bの全体にレジストを塗布したものを生成した後に当該部位のレジストを剥離することにより生成するようにしても良い。
【0036】
露出部55は、当該部位を削ることにより、或いは、積層して回路パターン51、52を作成する場合には、回路パターン51における露出部55の部分の積層数を他の部分より少なくして、露出部55が、他の回路パターン51、52よりも薄肉化されている。
【0037】
コネクタキャップ18、19についても、コネクタキャップ18、19の開口面は、プリント基板26の部品取付面26aに当接し、接着剤などで固定されることが好適である。コネクタキャップ18、19には、電源側または器具内配線用の電線端部が挿入される差込孔37が、入力用コネクタ28及び出力用コネクタ29の端子を内包する孔に対応して形成されている。差込孔37には薄肉部が付設けられており、入力用コネクタ28及び出力用コネクタ29の端子とは水密が図られている。
【0038】
樹脂材24は、絶縁性及び防水性を有する合成樹脂などにより構成されている。この樹脂材24において、少なくとも半田付面26b側に充填される樹脂材24は金属腐食剤を含有するものである。金属腐食剤は、回路パターン51が銅または銅を含む合金などである場合には、塩素系の樹脂硬化剤などを採用する。また、回路パターン51が銀または銀を含む合金などである場合には、リン系の難燃剤を採用する。本実施例では、更に水酸化アルミニウム等の無機材料からなるフィラーが混入されたウレタン樹脂を用いている。無機材料からなるフィラーの混合は、放熱性を高める機能を有する。
【0039】
図4に示すように、樹脂材24は、表面側層24aと裏面側層24bとを有しており、少なくとも裏面側層24bの樹脂材24は金属腐食剤を含有するものである。表面側層24aと裏面側層24bとは防水性などの観点から一体連続した樹脂材である。表面側層24aは部品取付面26aを覆い、裏面側層24bは半田付面26bを覆っている。
【0040】
樹脂材24による充填を行うために、図6、図5に示されるようなトレー41が用いられる。トレー41は、本体ケース22よりも僅かに小さく、本体ケース22の内面に沿った形状を有している。また、トレー41は耐熱性を有する絶縁材、例えばPET樹脂製のフィルム成型品により構成される。
【0041】
トレー41には、側部41bの内面に突出してトレー41の上下方向に延びる複数の凸部42が形成されている。更に、トレー41の底部は凹凸状に形成され、樹脂材24が充填される側を下に向けた状態における凹部43〜47が図6に示すように設けられている。この凹部43〜47は、回路モジュール20における電子部品32の配置密度が低い領域や、チップ部品等の高さが低い電子部品32が集まって配置された領域などに対応して設けられている。
【0042】
回路モジュール20の部品取付面26aはトレー41の内部を向くようにされ、トレー41内に回路モジュール20が収容される。トレー41内に収容された回路モジュール20におけるプリント基板26の長手方向両端部は、コネクタキャップ18、19の開口面に載った状態で支持され、プリント基板26の長手方向両端部間の中央部は、複数の凸部42に載せられた状態で支持されている。
【0043】
トレー41内に回路モジュール20を収容する際には、コネクタキャップ18、19が入力用コネクタ28及び出力用コネクタ29に被された状態で収容を行う。コネクタキャップ18、19を入力用コネクタ28及び出力用コネクタ29に被せることによって、トレー41に対して回路モジュール20の位置決めがなされる。
【0044】
樹脂材24は、トレー41に収容された回路モジュール20の全体を覆うようにトレー41に充填される。この充填は、回路モジュール20が納められたトレー41を本体ケース22の内側に嵌合させた状態で実施され、未硬化の樹脂材24はプリント基板26の切欠部26cから注入される。
【0045】
樹脂材24と、トレー41と、回路モジュール20とは、樹脂材24の防水性能によって回路モジュール20に対する防水性を担保する防水アセンブリ31(図4)を構成している。
【0046】
本実施例では、トレー41が凹部43〜47を備える構成によって、凹部43〜47を備えないトレーを用いた構成に比較して樹脂材24の使用量を少なくできる。
【0047】
以上の構成の点灯装置14では、ケース21の本体ケース22と略同じ大きさのトレー41を備え、このトレー41に収容した回路モジュール20全体がトレー41に充填した樹脂材24に埋設している。そして、トレー41に充填された樹脂材24は、コネクタキャップ18、19によって回路モジュール20のコネクタ28、29に侵入することがない。つまり、コネクタキャップ18、19の差込孔37は電線が挿入されるまでは薄肉部によって閉じられているので、トレー41に充填された樹脂材24がコネクタ28、29に侵入することがない。
【0048】
樹脂材24は、電気絶縁性でかつ防水性を有しているので、この樹脂材24によって回路モジュール20のプリント基板26、電子部品32、及び半田付面26b等を防水できる。そして、トレー41は本体ケース22内に満杯状態に収容される大きさであり、このトレー41を用いてケース21の内部で既述の防水を実現した構成を備えているので、防水の構成を原因としてケース21が大きくなることがない。これにより、既存の製造設備で作られる外郭ケースを用いることも可能である。これと共に、こうしたケース21内での防水構成により、ケース21を収容する大形防水ケースを要しないで、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができる。
【0049】
このため、点灯装置14を小形に構成できる。しかも、この点灯装置14の組立ての他に、この点灯装置14を防水ケースに収容する手間、及びこの後に防水ケースを組立てる手間が不要であるので、容易に組立てることができる。以上のように防水ケースを用いること自体でのコスト増加をなくすことができることに加えて、組立てコスト上のコスト低減できるので、点灯装置14更にはこの点灯装置14を備える照明器具10を低コスト化できる。
【0050】
更に、点灯装置14の樹脂材24は防水性能だけではなく放熱性能も備えているので、パワートランジスタ32aその他発熱を伴う電子部品の熱を、樹脂材24に通してケース21に伝導できる。この場合、樹脂材24の容量が大であるとともに、この樹脂材24からケース21への熱伝導面積も大きいので、優れた放熱特性を得ることができる。特に、金属フィラーを混入した樹脂材24の採用により、より放熱特性を向上できる。
【0051】
又、既述のように樹脂材24が回路モジュール20の全体を埋設しているので、樹脂材24によって確実な防塵ができる。これにより、塵が多い場所で使用される点灯装置14更にはこの装置14を備える照明器具10としても好適に使用できる。
【0052】
そして、樹脂材24が金属腐食剤を含有するものであり、樹脂材24が半田付面26bの全体を被覆し、樹脂材24と露出部55とが接触する。塩素系の樹脂硬化剤或いはリン系の難燃材である金属腐食剤を含有することから、使用時間が所定程度経過すると塩素系の樹脂硬化剤或いはリン系の難燃材が加水分解を起こし、またはリン系の難燃剤と水酸化アルミニウムが反応して、塩酸或いはリン酸が生じ、露出部55の部分が断線される。これにより、電源の供給が停止されるか、インバータの制御等がなされなくなり、点灯回路27は停止状態に陥る。
【0053】
この断線は、製造から所定時間において生じるように、金属腐食剤の含有量や露出部55の厚みが調整されている。露出部55は、塩酸或いはリン酸との反応によりマイグレーションを生じるものであるが、本実施例では、このマイグレーションによる近隣回路パターンとの短絡により、発煙や発火が生じない部位に露出部55が設けられている。このため、発熱や発火の危険がなく、点灯回路27は安全に寿命末期を迎えることができる。
【0054】
<実施例2>
上記第1の実施例では、トレー41を用いて樹脂材24の充填を行ったがトレー41を用いることなく、次の図10から図13に示すようにして防水アセンブリ31の生成を行っても良い。この生成に係る製法は、セット工程と、充填工程と、硬化工程と、離型工程とにより構成される。
【0055】
まず、セット工程では、図10から図13に示す成形型65内に回路モジュール20をセットする。このセットに先立って、部品取付面26aでは、電解コンデンサ32bを覆う部品キャップ36が取付けられる。更に、コネクタ28には前もってコネクタキャップ18が被されている。同様に、コネクタ29にもコネクタキャップ19が被される。
【0056】
成形型65は例えば金属製であって、その上面は開口されている。この開口はプリント基板26より一回り大きく構成されている。成形型65の底部には複数の凸部58〜62が上向きに形成されている。凸部58〜62は凹部43〜47の夫々に対応した形状として設けられている。成形型65の長手方向両端部には基板載置部63、64が形成されている。基板載置部63、64は凸部58〜62より高い。
【0057】
基板載置部63の上壁にはコネクタキャップ18を挿通するセット孔63aが開けられ、同様に基板載置部64の上壁にもコネクタキャップ19を挿通するセット孔64aが開けられている。回路モジュール20は、その部品取付面26aを下向きにして成形型65内に配置される。この場合、コネクタキャップ18がセット孔63aに通され、コネクタキャップ19がセット孔64aに通される。これに伴い、セット孔63aがコネクタキャップ18の段部で塞がれ、セット孔64aがコネクタキャップ19の段部で塞がれる。
【0058】
したがって、プリント基板26の両端部がコネクタキャップ18、19の段部をスペーサとして基板載置部63、64上に支持されて、成形型65の所定位置に回路モジュール20が位置決めされる。これにより、回路モジュール20の電子部品32の配設密度が低い領域とチップ部品等の高さが低い電子部品が集まって配設された領域とには、成形型65の凸部58〜62が夫々対向する。
【0059】
こうして成形型65に収容された回路モジュール20の電子部品32の端子35、及びコネクタ28、29の端子先端は、夫々上を向いてプリント基板26の半田付面26bから突出している。しかし、半田付面26b及び各端子35は、成形型65の上面より低い位置に下がって位置されている。この状態を図11に示す。
【0060】
次の充填工程は、未硬化の樹脂材24を、成形型65の上面開口の縁部とプリント基板26の間の隙間、とりわけ切欠部26cを通して注入して行われる。未硬化の樹脂材24の充填時に注入に用いない切欠部26cは、注入された樹脂材24の余剰分の戻し通路としても使用される。この戻し通路を通して、既に注入された樹脂材24がプリント基板26の下側からプリント基板26の上側に逆流される。これにより、半田付面26bが未硬化の樹脂材24wにて覆われる。この状態を図12に示す。
【0061】
以上の充填時、電解コンデンサ32bは、これを覆った部品キャップ36により成形型65に充填された未硬化の樹脂材から隔離されている。つまり、成形型65に充填された未硬化の樹脂材24が、電解コンデンサ32bに接して、この電解コンデンサ32bを埋ることがない。このため、硬化される樹脂材24によって電解コンデンサ32bの機能低下などがもたらされる恐れがなく、電解コンデンサ32bに所期の機能を発揮させることができる。
【0062】
次の硬化工程では、未硬化の樹脂材24wが所定量の注入された成形型65を、図示しない加熱硬化炉に通して、未硬化の樹脂材を硬化させる。この硬化処理により、回路モジュール20とこれを埋設した硬化済みの樹脂材24を備えた防水アセンブリ31が形成される。
【0063】
最後の離型工程では、防水アセンブリ31が成形型65から取出される。この離型作業は、成形型65を裏返ししてから、成形型65の裏面に突出しているコネクタキャップ18、19を成形型65内に押込めばよい。それにより、防水アセンブリ31が成形型65から押出される。この状態を図13に示す。離型作業の容易化のために、セット工程では、成形型65の内面に予め離型剤を塗布して置くことが好ましい。
【0064】
以上の製法において、防水アセンブリ31の成形型65からの離型を容易にするために、分割式の成形型を用いることも可能である。分割式の成形型は、複数の型要素を備え、これらの型要素を移動させて型締め、型開きができる。
【0065】
防水アセンブリ31は、図4に示すようにケース21に収容される。この収容状態で、表面側層24aは本体ケース22の底板部22aに接するとともに、裏面側層24bは蓋ケース23の天板部23aに接している。防水アセンブリ31はねじ(図6参照)でケース21の一側壁に引き寄せられて固定されている。ねじは、蓋ケース23の一側壁及びこれに重なった本体ケース22の一方の側壁部22bを通って放熱板33にねじ込まれている。このねじ込み部でも、本体ケース22と蓋ケース23とが連結されている。
【0066】
このようにトレー41を用いないで防水アセンブリ31を構成し、ケース21に収容した照明器具においても、トレー41を用いて構成した照明器具と同様に高湿度環境に耐える防水性能を得ることができ、また優れた放熱特性を得ることができる。
【0067】
しかも、本実施例にあっても、樹脂材24が金属腐食剤を含有するものであり、回路パターン51には、レジストが塗布されていない露出部55が設けられており、露出部55が設けられる位置は第1の実施例と同様である。即ち、電源系回路の部分や、インバータ回路における制御系回路の部分を含む半田付面26bが図9に示すように構成されている。更に、少なくとも裏面側層24bの樹脂材24は金属腐食剤を含有するものである。これにより、電源の供給が停止されるか、インバータの制御等がなされなくなり、点灯回路27は停止状態に陥る。そして、発熱や発火の危険がなく、点灯回路27は安全に寿命末期を迎えることができるという第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る照明器具の実施例を示す斜視図。
【図2】本発明に係る点灯装置の実施例を示す斜視図。
【図3】図2の要部斜視図。
【図4】図2のB−B線断面図。
【図5】本発明に係る点灯装置の第1の実施例に用いられるトレーの内側を示す斜視図。
【図6】本発明に係る点灯装置の第1の実施例に用いられるトレーの表側を示す斜視図。
【図7】本発明に係る点灯装置の第1の実施例に用いられる回路モジュールの半田付面を示す斜視図。
【図8】本発明に係る点灯装置の第1の実施例に用いられる回路モジュールの部品取付面を示す斜視図。
【図9】本発明に係る点灯装置の実施例の要部平面図。
【図10】本発明に係る点灯装置の第2の実施例を作成するに際し、トレーを用いない防水モジュールの製法を示す斜視図。
【図11】本発明に係る点灯装置の第2の実施例を作成するに際し、トレーを用いない防水モジュールの製法を示す斜視図。
【図12】本発明に係る点灯装置の第2の実施例を作成するに際し、トレーを用いない防水モジュールの製法を示す斜視図。
【図13】本発明に係る点灯装置の第2の実施例を作成するに際し、トレーを用いない防水モジュールの製法を示す断面図。
【符号の説明】
【0069】
10 照明器具
11 シャーシ
12 ランプソケット
13 放電灯
15 蓋ケース
14 点灯装置(電子機器)
18、19 コネクタキャップ
20 回路モジュール
21 ケース
22 本体ケース
23 蓋ケース
24 樹脂材
24a 表面側層
24b 裏面側層
26 プリント基板
26a 部品取付面
26b 半田付面(回路基板の裏面)
26c 切欠部(樹脂材通し部)
27 点灯回路
28、29 コネクタ
31 防水アセンブリ
32 電子部品
35 端子
43〜47 凹部
51、52 回路パターン(金属回路パターン)
55 露出部
58〜62 凸部
65 成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と;
プリント基板に実装された電子部品と;
プリント基板表面に設けられ、電子部品間を接続する金属層からなる回路パターンと;
回路パターン上に塗布され、回路パターンの一部に未塗布の露出部が設けられるように形成されたレジストと;
露出部に接触すると共に回路パターンが設けられたプリント基板面側に被覆された金属腐食剤を含有する防水性樹脂と;
を具備したことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
露出部が設けられた回路パターンの部分は、他の金属回路パターンの部分よりも薄肉化されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
防水性樹脂は、ウレタン樹脂であり、金属腐食剤としてリン系の難燃剤および水酸化アルミニウムを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
器具本体と;
器具本体に取り付けられたソケットと;
ソケットに実装される放電灯と;
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器であって、放電灯を点灯させる点灯回路を含む電子機器と
を具備することを特徴とする照明器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−146953(P2009−146953A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320127(P2007−320127)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】