説明

電子機器

【課題】 従来の電子機器は、筐体内部に水分が一旦侵入すると、筐体外部に排出することが困難であった。
【解決手段】 デジタルカメラ1は、その表面を外装する筐体2と、この筐体2の内部に電子部品を備えて構成された機器内構造体3との間の空間5に、吸水シート6を備える。さらに吸水シート6に吸水された水分を筐体2と機器内構造体3との間の空間5から筐体2の外部に排気する排気部8を備える。このため、デジタルカメラ1内部に侵入する水分は、空間5に配置された吸水シート6により吸水される。吸水シート6に吸水された水分は、デジタルカメラ1の使用による発熱で気化し、排気部8を介してデジタルカメラ1外部へ排気される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器表面を外装する外装体を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子機器としては、例えば、特許文献1に開示されたページャーがある。このページャーの筐体は、上部ケース、下部ケースおよび電池蓋から構成されている。これら上部ケース、下部ケースおよび電池蓋は、外側のエラストマやウレタンゴム等の緩衝材による適宜の着色が施された不透明な弾性部材と、内側のポリカーボネイトの硬質樹脂による透明部材とが一体成形されて、形成されている。ページャーは、弾性部材の表示窓から内側の透明部材を外部に露出させることにより、表示窓に対する防水性を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−79582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたページャーのように防水対策が施された電子機器は、上部ケース、下部ケースおよび電池蓋等の筐体構成部品相互の接合部から、電子機器内部に水分が一旦侵入すると、電子機器外部に排出することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
機器表面を外装する外装体と、
外装体の内部に電子部品を備えて構成された機器内構造体と、
外装体と機器内構造体との間の空間に配置された吸水素材と、
吸水素材に吸水された水分を上記空間から外装体の外部に排気する排気部とを備え、電子機器を構成した。
【0006】
本構成によれば、電子機器内部に水分が侵入しても、外装体と機器内構造体との間の空間に配置された吸水素材により、電子機器内部に侵入した水分が吸水され、吸水された水分は排気部を介して機器外部に排出される。このため、電子機器内部に水分が侵入しても、侵入した水分を電子機器外部に効率的に排出することができ、機器内構造体に備えられた電子部品の動作が電子機器内部に侵入する水分によって悪影響を受けるのを防止することができる。
【0007】
また、本発明は、吸水素材が、外装体の表面に現れる操作部とその操作部周囲を囲む外装体の縁との間の隙間を覆う上記空間に配置され、
排気部が上記隙間から構成されていることを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、電子機器内部に侵入する水分は、外装体の表面に現れる操作部とその操作部周囲を囲む外装体の縁との間の隙間を覆う吸水素材に吸水され、排気部を構成する上記隙間から外装体の外部に排気される。
【0009】
また、本発明は、吸水素材が、機器内構造体に備えられた発光部から外装体を介して機器外へ出射される光が上記空間において機器内に漏光するのを遮断する位置に配置され、
排気部が、吸水素材近傍の外装体に設けられた開口部から構成されていることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、電子機器内部に侵入する水分は、機器内構造体に備えられた発光部から機器外へ出射される光が機器内に漏光するのを遮断する位置に配置された吸水素材に吸水され、吸水素材近傍に設けられた開口部から外装体の外部に排気される。
【0011】
また、本発明は、吸水素材が、表示面が外装体の表面に現れる表示装置と表示面周囲を囲む外装体の縁との間の隙間を塞ぐ空間に配置され、
排気部が上記隙間で構成されていることを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、電子機器内部に侵入する水分は、表示面が外装体の表面に現れる表示装置と表示面周囲を囲む外装体の縁との間の隙間を塞ぐ吸水素材に吸水され、排気部を構成する上記隙間から外装体の外部に排気される。
【0013】
また、本発明は、吸水素材が、外装体を構成する構成部品相互の間の隙間を覆う上記空間に配置され、
排気部が上記隙間で構成されていることを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、電子機器内部に侵入する水分は、外装体を構成する構成部品相互の間の隙間を覆う吸水素材に吸水され、排気部を構成する上記隙間から外装体の外部に排気される。
【0015】
また、本発明は、吸水素材が、外装体と機器内構造体との間に生じる衝撃を緩衝する緩衝材を兼用していることを特徴とする。
【0016】
本構成によれば、吸水素材により、電子機器内部に侵入する水分が吸収されると共に、外装体と機器内構造体との間に加わる衝撃が和らげられ、電子機器内部に侵入する水分および外装体と機器内構造体との間に加わる衝撃から機器内構造体に備えられた電子部品が悪影響を受けるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による電子機器によれば、上記のように、電子機器内部に水分が侵入しても、侵入した水分を電子機器外部に効率的に排出することができ、機器内構造体に備えられた電子部品の動作が電子機器内部に侵入する水分によって悪影響を受けるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態によるデジタルカメラの外観を示す図である。
【図2】図1に示すデジタルカメラの内部構造を概念的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明による電子機器をデジタルカメラに適用した場合における、本発明を実施するための一形態について説明する。
【0020】
図1は、この一実施の形態によるデジタルカメラ1の外観を示す図であり、同図(a)はデジタルカメラ1の正面図、同図(b)は側面図、同図(c)は背面図、同図(d)は平面図、同図(e)は底面図である。
【0021】
電子機器を構成するデジタルカメラ1の筐体2は、機器表面を外装する外装体を構成しており、正面が前カバー2a、背面が後カバー2bで覆われ、前カバー2aと後カバー2bとの間に中帯2cが挟まれている。これら前カバー2aおよび後カバー2bならびに中帯2cは、アルミニウムもしくはマグネシウムまたはモールド樹脂などから形成されている。
【0022】
図2に示すように、筐体2の内部には、電子部品を備えて構成された機器内構造体3が設けられている。図2は、デジタルカメラ1の内部構造を概念的に示した断面図である。機器内構造体3の内部に備えられる図示しない構造物は、ビス4によって機器内構造体3の内壁面に固定される。筐体2と機器内構造体3との間には空間5が設けられており、この空間5には、後述する各種の吸水シート6、およびスポンジ7が配置されている。吸水シート6は筐体2に設けられた排気部8を覆う位置などに備え付けられており、機器外部から機器内部の空間5に侵入する水分は、吸水シート6に吸水され、水蒸気となって排気部8から筐体2の外部へ矢印9で示すように排気される。吸水シート6は、筐体2と機器内構造体3との間の空間5に配置された吸水素材を構成しており、例えば、水分を吸収する黒色をしたシート状の発泡体から形成される。また、スポンジ7は、ビス4が緩んで筐体2内に落下するのを防止するために、ビス4の頭部と筐体2の内壁面との間に備え付けられている。また、筐体2に設けられている図示しない穴は、気体は通すが液体は通さない選択透過性の性質を有するガス分離膜で塞がれている。
【0023】
図1(d)に示すように、デジタルカメラ1の上面の中帯2cには、デジタルカメラ1への電源投入を操作する電源スイッチ11が設けられている。この電源スイッチ11の隣には、被写体を撮影する際に操作されるレリーズボタン12が設けられている。このレリーズボタン12の周囲には、液晶表示装置41に表示される撮影画像を拡大、縮小表示させる際などに回転操作されるズームレバー13が設けられている。また、筐体2の上面と機器内構造体3との間の空間5には、筐体2の表面に現れる電源スイッチ11およびレリーズボタン12とその周囲を囲む中帯2cの縁との間の隙間8a、並びに筐体2を構成する構成部品である前カバー2a,後カバー2b,および中帯2c相互の間の隙間8bを覆う位置に、吸水シート6aが配置されている。吸水シート6aに吸水された水分は、デジタルカメラ1の使用による発熱によって気化し、隙間8a,8bから筐体2の外部へ排気される。
【0024】
また、デジタルカメラ1の正面には、同図(a)に示すように、被写体からの光をデジタルカメラ1内に取り込む光学系を構成するレンズ21が設けられている。このレンズ21の左上方の前カバー2aには、筐体2の一部を構成するフラッシュ窓22が設けられている。機器内構造体3に備えられた発光部からこのフラッシュ窓22を介して被写体にフラッシュ光が出射される。このフラッシュ窓22の下方の前カバー2aには、マイク孔8cが開口しており、このマイク孔8cを介して周囲の音が集音される。また、フラッシュ窓22の下方の筐体2内の空間5には、発光部からフラッシュ窓22を介して機器外へ出射される光が、空間5においてフラッシュ窓22よりも下方の機器内に漏光するのを遮断する位置に、吸水シート6bが配置されている。吸水シート6bに吸水された水分は、デジタルカメラ1の使用による発熱によって気化し、マイク孔8cから筐体2の外部へ排気される。マイク孔8cは、吸水シート6b近傍の前カバー2aに設けられた開口部から構成される排気部を構成している。
【0025】
また、デジタルカメラ1の左右の各側面には、同図(a)および同図(b)に示すように、筐体2を構成する前カバー2a,後カバー2b,および中帯2c相互の間の隙間8dを覆う空間5に、吸水シート6c,6dが配置されている。吸水シート6c,6dに吸水された水分は、デジタルカメラ1の使用による発熱によって気化し、隙間8dから筐体2の外部へ排気される。
【0026】
また、デジタルカメラ1の背面には、同図(c)に示すように、表示面が後カバー2bの表面に現れるモニタ41が表示装置として設けられている。このモニタ41は、LCD(Liquid Crystal Display)などからなり、機器内構造体3の一面を構成するLCD板金に備え付けられる。また、モニタ41とモニタ41の表示面周囲を囲む後カバー2bの縁との間の隙間8eを塞ぐ空間5には、枠状の吸水シート6eが配置されている。吸水シート6eに吸水された水分は、モニタ41の使用による発熱によって気化し、隙間8eから筐体2の外部へ排気される。
【0027】
また、モニタ41の右側には、メニュー画面におけるメニュー項目の選択操作などを行うマルチセレクタ47が設けられている。マルチセレクタ47は、方向キー47aと決定ボタン47bとから構成されている。方向キー47aは、モニタ41に表示されたメニュー画面において撮影者が設定したい項目を選択する際に、上下左右方向に押下操作される。決定ボタン47bは、撮影者が方向キー47aを操作して選択した項目を決定する際に、押下操作される。また、マルチセレクタ47の周囲には、モードボタン43、メニューボタン44、再生表示ボタン45、および消去ボタン46が設けられている。モードボタン43は、モニタ41に撮影モード選択画面を表示させる際に操作され、メニューボタン44は、モニタ41にメニュー画面を表示させる際に操作される。また、再生表示ボタン45は、撮影した画像データをモニタ41に再生表示させる際に操作され、消去ボタン46は、撮影した画像データを消去する際に操作される。後カバー2bの表面に現れるこれらボタン43〜46およびマルチセレクタ47の操作部とその操作部周囲を囲む後カバー2bの縁との間の隙間8fを覆う空間5には、吸水シート6fが配置されている。吸水シート6fに吸水された水分は、デジタルカメラ1の使用による発熱によって気化し、隙間8fから筐体2の外部へ排気される。
【0028】
また、筐体2の底面には、筐体2の内部に形成されるバッテリー室の開口部を覆うバッテリーカバー51が、同図(e)に示すように設けられている。このバッテリーカバー51の機器内面側には、バッテリー室を気密に保つ図示しないゴム性のOリングを外周側から覆う空間位置に、吸水シート6gが配置されている。吸水シート6gは、Oリング外周の空間内の水分を吸水する。吸水シート6gに吸水された水分は、デジタルカメラ1の使用による発熱によって気化し、筐体2とバッテリーカバー51との間の隙間8gから筐体2の外部へ排気される。
【0029】
また、本実施形態では、上記各吸水シート6a,6b,6c,6d,および6eは、筐体2と機器内構造体3との間に生じる衝撃を緩衝する緩衝材を兼用している。
【0030】
このような本実施形態によるデジタルカメラ1によれば、デジタルカメラ1内部に水分が侵入しても、筐体2と機器内構造体3との間の空間5に配置された吸水シート6a〜6gにより、デジタルカメラ1内部に侵入した水分が吸水される。これら吸水シート6a〜6gに吸水された水分は、排気部を構成する隙間8a,8b,8d,8e,8f,および8gならびにマイク孔8cを介してデジタルカメラ1外部に排出される。このため、デジタルカメラ1内部に水分が侵入しても、侵入した水分をデジタルカメラ1外部に効率的に排出することができ、機器内構造体3に備えられた電子部品の動作がデジタルカメラ1内部に侵入する水分によって悪影響を受けるのを防止することができる。
【0031】
また、本実施形態によるデジタルカメラ1によれば、各吸水シート6a〜6eにより、デジタルカメラ1内部に侵入する水分が吸収されると共に、筐体2と機器内構造体3との間に加わる衝撃が和らげられ、デジタルカメラ1内部に侵入する水分および筐体2と機器内構造体3との間に加わる衝撃から機器内構造体3に備えられた電子部品が悪影響を受けるのを防止することができる。
【0032】
また、本実施形態によるデジタルカメラ1によれば、上記各吸水シート6a〜6gは、黒色をしているため、機器外への光の漏洩を防止したり、上記各隙間8a,8b,8d,8e,8f,および8gを目立たなくすることができる。
【0033】
また、本実施形態によるデジタルカメラ1によれば、マイク孔8cを排気部として兼用させているため、前カバー2aに排気部用の孔を専用に設ける必要がなくなる。従って、前カバー2aに不自然な孔を設けずにすみ、外観デザインを損なわずにすむ。
【0034】
なお、本実施形態においては、筐体2が、前カバー2a、後カバー2bおよび中帯2cで構成される場合について説明したが、本発明はこれに限られることはない。例えば、中帯を備えずに、前カバーと後カバーで構成される筐体に本発明を適用してもよい。
【0035】
また、本実施形態においては、吸水シート6a〜6gの色を黒色としたが、他の色、例えば、吸水素材を配置する周囲の部品と同色にしてもよい。この場合においても、隙間を目立たなくさせることができる。
【0036】
また、本実施形態においては、吸水シート6a〜6eが、筐体2と機器内構造体3との間に生じる衝撃を緩衝する緩衝材を兼用している場合について説明したが、本発明はこれに限られることはない。これら吸水シート6a〜6eが緩衝材を兼用しておらず、また、例えば、ビス4の落下を防止するスポンジ7を、緩衝材を兼用する吸水シートで構成してもよい。
【0037】
また、本実施形態においては、バッテリーカバー51裏面のOリング周囲の空間にある水分を吸水シート6gによって隙間8gから排気する構成について説明したが、吸水シート6gの外周側のバッテリーカバー51にガス分離膜で覆った排気孔を設け、この排気孔からも水分を筐体2外部に排気する構成にしてもよい。
【0038】
また、本実施形態においては、バッテリーカバー51裏面のOリングの外周側に吸水シート6gを設けた構成について説明したが、例えば、USB端子やビデオ出力端子などが設けられた部分を覆うカバー裏面のOリングの外周側に、同様に吸水シートを設けてもよい。
【0039】
上記のような各構成においても、本実施形態と同様の作用・効果が奏される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上記実施形態においては、本発明の電子機器をデジタルカメラに適用した場合について説明したが、携帯電話機や、携帯型録音再生機等のその他の電子機器にも適用することが可能である。このような電子機器に本発明を適用した場合においても、上記実施形態と同様な作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0041】
1…デジタルカメラ
2…筐体
2a…前カバー
2b…後カバー
2c…中帯
3…機器内構造体
6a〜6g…吸水シート
8a,8b,8d,8e,8f,8g…隙間
8c…マイク孔
41…モニタ
11〜13,43〜47…操作部
51…バッテリーカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器表面を外装する外装体と、
前記外装体の内部に電子部品を備えて構成された機器内構造体と、
前記外装体と前記機器内構造体との間の空間に配置された吸水素材と、
前記吸水素材に吸水された水分を前記空間から前記外装体の外部に排気する排気部と
を備える電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記吸水素材は、前記外装体の表面に現れる操作部とその操作部周囲を囲む前記外装体の縁との間の隙間を覆う前記空間に配置され、
前記排気部は前記隙間から構成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記吸水素材は、前記機器内構造体に備えられた発光部から前記外装体を介して機器外へ出射される光が前記空間において機器内に漏光するのを遮断する位置に配置され、
前記排気部は、前記吸水素材近傍の前記外装体に設けられた開口部から構成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器において、
前記吸水素材は、表示面が前記外装体の表面に現れる表示装置と前記表示面周囲を囲む前記外装体の縁との間の隙間を塞ぐ前記空間に配置され、
前記排気部は前記隙間で構成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器において、
前記吸水素材は、前記外装体を構成する構成部品相互の間の隙間を覆う前記空間に配置され、
前記排気部は前記隙間で構成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記吸水素材は、前記外装体と前記機器内構造体との間に生じる衝撃を緩衝する緩衝材を兼用していることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−114074(P2011−114074A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267762(P2009−267762)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】