電子的撮像装置
【課題】撮影モード、または、再生モードの選択が容易に行える使い勝手のよい電子的撮像装置であるバリア付き電子スチルカメラを提供する。
【解決手段】本バリア付き電子スチルカメラ51においては、撮影レンズ装置101を介して取り込まれた被写体撮像信号を撮像信号処理部102にて映像信号として出力させる撮影モードと、再生信号処理部104を動作させて映像信号をLCDモニタ57に供給する再生モードとのモード切り換え指示が、カメラのレンズバリア52の開閉動作によりオンオフするバリアスイッチ105の出力に基づいて行われる。
【解決手段】本バリア付き電子スチルカメラ51においては、撮影レンズ装置101を介して取り込まれた被写体撮像信号を撮像信号処理部102にて映像信号として出力させる撮影モードと、再生信号処理部104を動作させて映像信号をLCDモニタ57に供給する再生モードとのモード切り換え指示が、カメラのレンズバリア52の開閉動作によりオンオフするバリアスイッチ105の出力に基づいて行われる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子的撮像装置、詳しくは、撮像手段と再生信号処理手段とを内蔵しており、撮影モードと再生モードを切り換えて動作させることが可能な電子的撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電子スチルカメラであって、撮像部と画像再生部を内蔵し、撮影モードと再生モードを切り換えて動作させることが可能なカメラにおいては、上記各モードを切り換えるためのモード切り換えスイッチが独立して配設されていた。そのモード切り換えスイッチを使用者が操作することによって、撮影モード、または、再生モードを選択し、LCDモニタ等に表示される画像をファインダ用の画像として表示するか、あるいは、内部に記憶されている画像データの画像を表示するかの切り換えを行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来の電子スチルカメラにおいては、上記モード切り換えスイッチがカメラの撮影、または、再生操作の中で自然に使用されるという形にならず、再生を行いか、撮影を行うかの意志を上記スイッチを操作することによって示す必要があり、使い勝手が必ずしもよくなかった。
【0004】本発明は、上述の不具合を解決するためになされたものであり、撮影モード、または、再生モードの選択が容易に行える使い勝手のよい電子的撮像装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の電子的撮像装置は、撮影レンズを介して像面に結像された被写体を光電変換して撮像信号処理する撮像手段を動作させる撮影モードと、映像信号を表示器に供給するための再生信号処理手段を動作させる再生モードとを切り換えて動作させるモード切り換え手段を有する電子的撮像装置において、上記モードを切り換え動作を上記撮影レンズを不使用時にカバーをするためのレンズバリアの開閉切り換え動作に連動させて切り換える。
【0006】。上記電子的撮像装置においては、上記レンズバリアの開閉切り換え動作に連動して撮影モードと再生モードの切り換えが行われる。
【0007】本発明の請求項2記載の電子的撮像装置は、撮影レンズを介して像面に結像された被写体を光電変換して撮像信号処理をする撮像手段を動作させる撮像モードと、映像信号を表示器に供給するための再生信号処理手段を動作させる再生モードとを切り換えて動作させるモード切り換え手段を有する電子的撮像装置において、上記モード切り換え動作を上記表示器を動作させるためのスイッチ機構により行う。上記電子的撮像装置においては、上記スイッチ機構の切り換え操作によって、上記撮影モードと再生モードが切り換えられる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態の電子的撮像装置であるバリア付き電子スチルカメラ51の主要ブロック構成図である。上記カメラは、主にカメラ全体の制御を司るシステムコントローラ103と、撮像手段を構成する、撮影レンズ,撮像素子,焦点調節・絞り装置,シャッタ装置等が内蔵される撮影レンズ装置101および撮像素子より出力される撮像信号を処理する撮像信号処理部102と、撮像信号処理部102より出力される画像データを記憶するメモリ106と、メモリ106に格納されている画像データを読み出し、表示器であるLCDモニタ57に出力する再生信号処理部104と、撮像信号処理部102より出力されるスルー画像、または、メモリ106に記憶しているデータの再生画像を切り換えて表示するLCDモニタ57と、撮影レンズ閉鎖位置と開放位置にスライド可能なレンズバリア52と、上記バリア52の開閉動作に連動してオンオフするバリアスイッチ105と、LCDモニタ57の表示状態を切り換えるスイッチ機構であるLCDスイッチ58を有している。
【0009】上記カメラにおいて、レンズバリア52を開放位置にスライドさせると、バリアスイッチ105がオンとなり、その出力信号は、システムコントローラ103に入力され、カメラ51は撮影モードにセットされる。この撮影モードでは、撮影レンズ装置101を介して取り込まれた被写体像の撮像信号が撮像信号処理部102で処理され、その画像データがスルー画像として、LCDモニタ57に表示される。一方、撮影された画像データはメモリ106に格納される。
【0010】また、レンズバリア52を閉鎖位置にスライドさせると、バリアスイッチ105がオフとなり、そのオフ信号はシステムコントローラ103に入力され、まず、撮影モードの処理を中断する。そして、LCDスイッチ58がオンであれば、カメラは再生モードにセットされる。この再生モードでは、メモリ106に格納されている撮影済み画像データを再生信号処理部104で読み出し、その画像データをLCDモニタ57に出力し、再生画像を表示する。上記再生モードは、外部の画像処理装置より取り込まれる画像データをLCDモニタ57に表示するような処理モードであってもよい。
【0011】そして、システムコントローラ103に内蔵されている自動合焦制御装置,自動露光制御装置,シャッタ制御装置により、撮影レンズ装置101における撮影レンズの自動焦点調節(AF)駆動と、測光、および、絞り駆動と、シャッタ駆動の制御が行われる。なお、上記バリア付き電子スチルカメラ51の撮影モード、または、再生モードにおける処理動作の詳細は、後で図24のフローチャート等を用いて説明する。
【0012】次に、上記バリア付き電子スチルカメラ51に組み込まれる撮影レンズ装置101について、図2の分解斜視図,図3の上記撮影レンズ装置に組み込まれる鏡枠部の分解斜視図等を用いて説明する。なお、図2中のa1 〜a4 は接続箇所を示している。まず、上記撮影レンズ装置101の構成について説明すると、図2に示すように、上記撮影レンズ装置101は、主に装置本体1と、装置本体1に回動自在に取り付けられ、絞り駆動機構と焦点調節駆動機構とが一体的に設けられた該両機構に共通N駆動機構をなすカム機構としてのカムリング2と、装置本体1に撮影レンズ光軸Oに沿って進退自在に支持され、撮影レンズ31,32(図6参照)を保持する鏡枠3と、鏡枠付勢バネ24が挿入されており、装置本体1の支持穴1bと本体蓋4の支持穴4eに支持され、鏡枠3を光軸方向にガイドする吊り軸8と、装置本体1の支持ピン1eに回動自在に支持され、シャッタ羽根14を駆動するためのシャッタ駆動レバー9と、装置本体1の撮影開口1aの後方に固着されるCCDユニット7と、カムリング2の回動位置を遮蔽板2fを介して検出するフォトインタラプタ29と、装置本体1に取り付けネジ91により固着される本体蓋4と、装置本体1に取り付けネジ93で固着され、ピニオン21がその出力軸に固着されている絞り/焦点調節駆動の駆動源としてのステッピングモータ5と、装置本体1に取り付けネジ94で固着されるシャッタ駆動用であるソレノイド(電磁石)6とを有している。
【0013】上記カムリング2には、その外周に上記ピニオン21と噛合可能なギヤ部2aと、回動支持用円筒端面部2bと、回動位置検出用の遮蔽板2fと、鏡枠3の焦点調節するための焦点調節駆動機構を構成する円筒端面カム形状のカム部2cと、絞り板15に当接して駆動可能な絞り駆動機構を構成する絞りリセット用突起部2d,絞りセット用突起部2eが配設されている。
【0014】カムリング2の本体1への組み込みは、図4R>4のカムリング装着状態の縦断面図と、図4のA−A′断面図である図5に示すように、円筒端面部2bを本体1の円状ガイド溝1dに挿入した状態で本体蓋4を本体1に固着すると、本体蓋4の突起部4b,4c,4dでカムリング2の端面の軸方向が規制された状態で回動自在に保持される。この状態では、ステッピングモータ5のピニオン21がギヤ部2aと噛合しており、モータ5の回転によりカムリング2が回動駆動される。
【0015】なお、上記カム部2cは、後述する図12の展開図に示すように中央部の鏡枠進退領域2cB とその両端部に設けられる平坦形状の絞りリセット領域2cA ,絞りセット領域2cC で構成される。後述する鏡枠3のカム当接部11hがカムリング2の回動動作に伴って、上記各領域を当接して従動するが、絞りリセット領域2cA ,絞りセット領域2cC にあるときは、リセット用突起部2d,セット用突起部2eが絞り板15を押圧し、絞りリセット、または、セット動作が行われる。
【0016】上記鏡枠3は、図3の分解斜視図に示すように、撮像素子側の後枠11と、被写体側の前枠12と、上記前枠12と後枠11との間に配設される絞り機構の要素としての絞り板15と、撮影開口11cを開閉するシャッタ羽根14と、上記シャッタ羽根14と絞り板15との間の隔離板として配設され、開放絞り径を決める開口13cを有し、ピン11gと支持ピン11fとで位置決めされる隔壁部材13と、後枠11のボールガイド穴11eに挿入されるボール付勢バネ17および絞り板用位置決めボール16とを有している。
【0017】上記後枠11は、撮影レンズ32を保持し、吊り軸8が摺動自在に嵌入する軸穴11aと、装置本体1のガイド1cに嵌入する切り欠き部11bを有し、また、軸穴11aの外方にカムリング2のカム部2cに対して当接可能な焦点調節用被駆動部であるカム当接部11h(図6の鏡枠の縦断面図参照)と、絞り板15を回動自在に支持する支持ピン11dと、シャッタ羽根14を回動自在に支持する支持ピン11fと、上記撮影開口11cと、上記ボールガイド穴11e等を有している。上記前枠12は、撮影レンズ31を保持し、後枠11に取り付けネジ92で固着され、後枠11と一体化されて鏡枠3を構成する。
【0018】上記絞り板15は、軸穴15aにて後枠11の支持ピン11dにより回動自在に取り付けられており、後枠11の光軸O中心に位置する撮影開口11cに対向可能な絞り開放部15d,中絞り穴15e,小絞り穴15fが軸穴15aから等距離の円弧軌跡位置に配置された3段階のターレット絞り構造を有している。また、前枠12との接触面上に摺動抵抗を減じるための円弧状の突起15cが設けられている。
【0019】また、絞り板15には、上記撮影開口11cに対応して絞り開放部15d,中絞り穴15e,小絞り穴15fが対向したときの上記後枠11の位置決めボール16位置にボール係合穴15g,15h,15iが設けられており、各絞り位置でのクリック保持力を与えるようになっている。さらに、前,後枠から外部に露出した位置にカムリング2の突起部2d,2eが当接可能な当接ピン15bが設けられている。この当接ピン15bの長さは、図7の鏡枠3の絞り板周りの縦断面図に示すように鏡枠3が進退移動しても突起部2d,2eが当接可能な所定の長さを有している。
【0020】なお、ズームレンズ等で鏡枠進退量が大きい場合、図7に示すようにカムリング2′が相対的により後方に移動することから、絞り板15の当接ピン15b′を長くすることによって本機構を適用することができる。
【0021】シャッタ羽根14は、撮影開口11cの対向位置にV字状の切り欠き部14cとシャッタ駆動レバー9の駆動ピン9bが嵌入可能な長穴14bを有し、後枠11の支持ピン11fに後枠11の撮影開口11cの面上に回動自在に取り付けられる。
【0022】なお、上記絞り板15と隔壁部材13とシャッタ羽根14の光軸方向の配設位置の順序は、図6の鏡枠縦断面図、または、図7の絞り板周りの縦断面図に示すように、前枠12と後枠11との間に前枠12側から絞り板15,隔壁部材13,シャッタ羽根14の順序で配置されている。
【0023】上記ソレノイド6は、戻しバネ23が装着され、突出,吸引可能な可動鉄心であるプランジャ22を有しており、該プランジャ22には、シャッタ駆動レバー9の駆動ピン9aが嵌入される溝部22aが設けられている。なお、後述の図11に示すようにソレノイド6のオフでプランジャ22は突出位置P22A にあり、オンで吸引位置P22B に吸引される。
【0024】また、上記CCDユニット7は、光学フィルタ25とスペーサ26と撮像素子であるCCD27で構成され、プリント基板28に一体的に組み付けられている。
【0025】次に、絞り板等の光学系部材とソレノイド等の駆動部材の配置について、図8,図9を用いて説明する。図8,図9は、絞り板,シャッタ羽根とソレノイド,ステッピングモータの配置状態を示す図であって、図8は光軸に沿って被写体側から見た断面図であり、図9R>9は、図8のA−A′断面図である。
【0026】図8に示すように鏡枠3の光軸Oの位置は、前記カムリング2の回動中心O′に対して偏心している。このように偏心させることによって、絞り板15をカムリング2の中心寄りに配置することができ、上方に設けられる回動駆動用当接ピン15bをカムリング2の内周部に収める構造を採用でき、カムリング2の小型化を可能としている。
【0027】また、絞り板15とシャッタ羽根11の回動の中心(支持ピン11dと11f)は、それぞれ図8において、光軸O上の撮影開口11cに対して互いに直交する方向の上方(y軸方向)と右方(x軸方向)に位置させている。このように回動中心を設定して、光軸O上での絞り開放部15d,絞り穴15e,15fの切り換え移動方向とシャッタ閉成用切り欠き部14cの移動方向が互いに直交することになる。このように設定することによる効果は、後で説明する。
【0028】シャッタ羽根駆動用のソレノイド6とカムリング駆動用のステッピングモータ5は、図8に示すように被写体側から見て鏡枠3の右側に配置されている。また、光軸O方向の配置は、図9に示すようにソレノイド6が鏡枠3の前枠12側の側面部に配置され、ステッピングモータ5が鏡枠3の後枠11の側方から後方の結像側向けて配置されている。このように配置することは、ソレノイド6としては、その駆動負荷となるシャッタ羽根14が鏡枠3の略中央にあることから好都合であり、また、ステッピグモータ5としても、その駆動負荷となるカムリング2が後枠11の側方にあり、さらに、モータのサイズ等の関係からも好ましい配置となっている。
【0029】次に、以上のように構成された本撮影レンズ装置における絞り・シャッタ開閉・焦点調節の各動作について、図10〜図14等を用いて説明する。なお、図10は、鏡枠を被写体側から見た状態での絞り板およびカムリングの動作状態を示す断面図であり、図11は、鏡枠を被写体側から見た状態でのシャッタ羽根の動作状態を示す断面図である。また、図12は、カムリングの展開図である。さらに、図13は、プランジャストロ−ク、または、時間に対するシャッタの光量の変化を示す図であり、図14は、同じく各プランジャストロ−クにおけるシャッタ開口面積の値と開口形状を示す図である。
【0030】まず、カムリング2の回動による鏡枠移動と絞り動作から説明する。カムリング2は、図12に示すように光軸O方向に高さが変化する進退領域2cB と平坦形状の絞りリセット領域2cA ,絞りセット領域2cC で構成されるカム部2cを有しており、ステッピングモータ5によって回動駆動されると、図10に示すように鏡枠3のカム当接部11h(図3,図8参照)が上記カム部2c上の回動範囲R0 を摺動する。
【0031】上記範囲R0 のうち、カム当接部11hが領域2cA に到達したとき、後述するように絞りのリセット動作が行われ、位置P0 にて絞りがリセット状態となる。この位置P0 到達は、フォトインタラプタ29により遮蔽板2fを検出することによって検知される(図1212参照)。また、上記位置P0 から所定範囲回動し、進退領域2cB 上をカム当接部11hが摺動すると、鏡枠3が付勢バネ24に抗して吊り軸8に沿って進退駆動され、AF動作、すなわち、焦点調節が行われる。この進退領域2cB の移動量は、鏡枠のレンズ製造の誤差分を吸収できるように大きく設定されており、実際の組み付け調節時には上記領域2cB の一部の領域、例えば、領域2cE(回動位置P2 からP1 間)が至近〜∞の合焦領域として選択される。また、領域2cC に当接部11hが到達したとき、後述する絞りセット動作が行われる。
【0032】上記絞りリセット動作を行うには、カムリング2を反時計回りに回動させて、カム当接部11hが上記領域2cA の範囲に到達すると、カムリング2の突起部2dで絞り板15の当接ピン15bを反時計回りに回動させる。そして、カム当接部11hが位置P0 に到達したとき、絞り板15は、図10に示すリセット位置P15A に回動しており、鏡枠3の撮影開口11f上に絞り開放部15dが位置する全開放状態となる。
【0033】このとき、絞り板15のボール係合穴15gに位置決めボール16が嵌入し、所定のクリック力で上記絞り板15のリセット回動位置P15A を保持する。このクリック力により、その後のAF動作時等にカムリング2の突起部2dが絞り板15の当接部15bから離れたとしても絞りリセット状態が保持される。
【0034】さらに、上記絞りリセット状態では当接ピン15bがリセット用突起部2dと装置本体1の保持機構である突起1fとで挟持される。この状態でカメラが非使用状態になって、電源がオフされたときでも、ステッピングモータ5のコギングトルクによりカムリング2が保持され、絞り板15が上記リセット回動位置P15A で保持される。従って、カメラの非使用状態で振動や衝撃が作用したときでも絞り板15は上記リセット位置に保持され、位置ずれが防止でき、その後の撮影開始に支障を生じさせないようにし、また、輸送等での光学系部材の破損が防止できる。
【0035】なお、保持機構としての本体1の突起1fは、鏡枠3側に設けてもよく、例えば、後枠11にストッパ11i(図10参照)を設けて絞り板15をリセット位置で保持するようにしてもよい。
【0036】また、絞りセット動作を行うには、カム当接部11hが位置P0 にある絞りリセットの位置から、一旦、カムリング2を時計回りに、絞りセット領域2cC まで回動させる。但し、絞り開放状態のままで撮影を行う場合は上記絞りセット領域2cC まで回動させる必要はなく、鏡枠進退領域2cB での進退駆動が実行される。
【0037】絞りセットが中絞りである場合、カム当接部11hが上記領域2cC まで回動して、セット用突起部2eが絞り板15の当接ピン15bに当接した後、さらに、時計回りに回動させ、中絞り穴15eが鏡枠3の撮影開口11c上に位置したとき、カムリング2の回動を停止させる。この状態で絞り板15は位置決めボール16がボール係合穴15hに嵌入して所定のクリック力で保持され、中絞り状態にセットされる。
【0038】絞りセットが小絞りである場合、同様にカム当接部11hが上記領域2cC まで回動して、セット用突起部2eが絞り板15の当接ピン15bに当接した後、さらに、時計回りに回動させ、小絞り穴15fが鏡枠3の撮影開口11c上に位置したとき、カムリング2の回動を停止する。この状態で絞り板15は、図10の回動位置P15B に位置し、位置決めボール16がボール係合穴15iに嵌入し、所定のクリック力で保持され、小絞り状態にセットされる。
【0039】上記各絞りセットを行った後は、カムリング2を反時計回りに回動させ、カム当接ピン11hがカムリング2のAF範囲の領域2cB 内の領域2cE (回動位置P2 からP1 間)にあるとき、撮影レンズの合焦動作が行われ、適正な絞りとピント状態での撮影が実行される。
【0040】撮影後、カムリング2は、さらに、反時計回りに回動され、リセット用突起部2dで絞り板15の当接ピン15bが押圧され、絞り板15は、前記図10のリセット位置である回動位置P15A まで戻される。
【0041】上述のように、撮影レンズ装置101にあっては、カムリング2の回動によって、鏡枠3の合焦のための進退移動と絞り板15の絞り回動位置の設定を行う必要があり、例えば、AF動作を行う場合、最初に露出を決めた後、絞りを設定し、その後、AF動作を行うことから、カムリング2のカム部2cのAF動作範囲内に絞り駆動範囲が設定されていると、AF動作中に絞りが変化してしまうといった不具合が生じる。
【0042】そこで、上記カムリング2は、上述したように鏡枠進退駆動と絞り駆動と独立して作用するように構成している。すなわち、カム部2cの内、鏡枠駆動の実効範囲である鏡枠進退駆動範囲2cB 外の範囲でのみ絞り駆動用の絞りリセット,セット突起部2d,2eが作用するように構成することによって、絞りが正確に行われ、絞りを駆動する機構の配置が容易となる。また、カムリング2に焦点調節と絞り駆動の両方の機構部を別途に備えることにより調節工程や部品が単純化できる。
【0043】さらに、カムリング2をリング形状にして円筒端面カム部により鏡枠3を進退駆動するように構成したことにより、光軸方向の厚みの増加が抑えられる。また、撮影レンズ装置の鏡枠部内に上記カムリング2が埋め込まれ、さらに、カムリング2の内部に後述する鏡枠等の光学部材が収容され、出っ張り部分が少なくなることから、撮影レンズ装置自体もコンパクトになり、上記各部材の収容効率がよくなる。また、カム部が内部に位置することからカム面にごみ等が付着することが避けられ、AF駆動性能の劣化が避けられる。
【0044】次に、ソレノイド6のオンオフにともなうシャッタ開閉動作について説明する。シャッタ羽根14は、図11に示すようにソレノイド6のプランジャ22が突出位置P22A にあるとき、撮影開口11cから切り欠き部14cが退避した開放位置P14A にある。プランジャ22が吸引位置P22B に吸引されると、シャッタ駆動レバー9を介して時計回りに駆動され、撮影開口11cを閉じる閉成位置P14B に移動する。
【0045】撮影終了後、ソレノイド6のオフにより、戻しバネ23の付勢力によりプランジャ22が突出位置P22A に戻され、シャッタ羽根14も撮影開口11cの開放位置P14A に戻される。
【0046】前述したように光軸O上での絞り板15の絞り開放部15d,絞り穴15e,15fの切り換え移動方向(x軸方向)と上記シャッタ羽根14の切り欠き14cの移動方向(y軸方向)が互いに直交している。このような配置を採用することによって、シャッタの開放時間(シャッタ時秒)精度の低下を解消している。
【0047】例えば、絞り穴位置が切り欠き移動であるy軸方向にずれると、ソレノイド6のオフ後、切り欠き14cが上記絞り穴を通過するまでの時間、すなわち、シャッタ秒時が変化し、精度が低下する。
【0048】そこで、上記絞り板15の絞り穴15e,15fの軸心からのy軸方向の距離精度は、単一の部品精度で決定されることから高い精度を保証可能としている。一方、絞り穴移動方向であるx軸方向のクリック保持位置は、後枠11に保持される位置決めボール16の位置精度と絞り板15の穴位置精度とが複合して影響することから多少ずれる可能性がある。
【0049】本装置においては、上述のように絞り板15の絞り穴15e、または、15fのy軸方向の位置精度がよいことから上述のプランジャ22の吸引に伴うシャッタ秒時の精度の低下が避けられる。また、上述したように絞り穴15e,15fのx軸方向の切り換え移動方向の位置決め精度は、必ずしも高精度が得られないとしても、シャッタ羽根14の切り欠き14cとの移動方向と直交する方向にわずかにずれが生じるだけで、シャッタ秒時への影響は少ない。
【0050】なお、上述のような互いに直交する移動方向ではなく、シャッタ機構として絞り板の絞り穴15e,15fの移動方向とシャッタ羽根の切り欠き14cの移動方向が直交せず互いに同じ方向に移動するような構造を採ったとすると、絞り穴の移動方向位置決め精度の低下がシャッタ秒時の精度を低下させることになる。
【0051】上記シャッタ羽根14は、上述したように撮影開口11cの閉成部としてV字状の切り欠き部14cを有しているが、その切り欠き部14cを通過する光量の変化特性について、図13,図14の上記シャッタ羽根による光量変化を示す線図と開口面積変化を示す線図等を用いて説明する。図13は、プランジャ22のストロ−ク、または、経過時間に対する光量の変化を示した線図であり、図14は、プランジャ22の各ストロ−クにに対する開口面積の変化を示した線図である。
【0052】図14に示すように、閉じ動作の初期においては、切り欠き部14cのV字に傾斜した2辺で開口11cの両側方から遮蔽して行く状態になっている。図2626に示すような従来の直線羽根のシャッタ羽根の場合は、支持軸92回りに回動可能なシャッタ羽根91において、直線状の羽根部91aで開口93を閉じて行く構造になっており、図27の上記従来のシャッタ羽根による光量変化を示す線図のようにプランジャストロ−クに対する光量の変化は、直線的に変化する。
【0053】一方、ソレノイド6は、オン状態になって吸引を開始した場合、通常、プランジャの吸引速度は、プランジャの慣性、または、摩擦力等により駆動始めは遅く、徐々に増加してゆくような変化を辿る。
【0054】従って、上記従来のシャッタ羽根91での経過時間に対する光量の変化としては、図27に示すように経過時間の初期にて、光量変化の遅れが生じ、最初は、遅く、途中から速く変化することになる。シャッタスピ−ドとしては、光量が半分になるまでの経過時間をシャッタスピ−ドとすることから、この従来の場合は、たとえ、シャッタが閉成するまでの時間が同じでも初期が遅れるため、見かけ上のシャッタスピ−ドとしては遅くなってしまう。
【0055】ところが、本実施形態の撮影レンズ装置のシャッタ羽根14によると、図14にて説明したようにV字状の切り欠きにより開口を閉じて行くので、初期動作における開口面積の減少の速度が速く、光量の減少速度も大きくなる。従って、プランジャ22の吸引動作の初期遅れがあったとしても、図13に示すように経過時間に対して直線的に光量を減少させることができ、見かけ上のシャッタスピ−ドを速くすることが可能となる。
【0056】ここで、上述の撮影レンズ装置101がAFカメラに組み込まれた場合の一連の撮影動作について説明すると、まず、レリーズスイッチの1段目がオン操作された場合、露出検出が行われる。そして、一旦、AF動作による鏡枠合焦位置を検出した後、レリーズスイッチの2段目のオンを待つ。該2段目がオンとなった場合、カムリング2を時計回りに回動させ、絞りリセット位置からAFを行う鏡枠駆動範囲を通過し、上記露出検出による絞りにセットするため絞りセット位置、例えば、中絞り位置まで回動させる。その後、カムリング2を反時計回りの回動させ、上記1段目オン時に検出したAF位置(合焦位置)へ鏡枠当接部11hを介して鏡枠3を駆動し、そこで、撮影が実行される。
【0057】このときのカムリング2の回動角は、ステッピングモータ5の駆動パルス数で管理される。但し、ギヤ部2a等のバックラッシュ誤差を考慮する必要があるときには、上記AF位置に鏡枠3をセットする場合、一旦、カムリング2をAF位置を超えて反時計回りに数ステップ余分に戻し、その後、時計回り方向に回動させ、すでに検出されているAF位置に位置させる。このようにカムリング2を駆動することにより高精度のAF処理が可能となる。撮影終了後は、カムリング2を反時計回りに回動させ、絞りリセット状態である絞り開放状態の位置、すなわち、図12に示すように鏡枠カム当接位置11hがカムリングカム部2cに対して位置P0 に戻される。
【0058】上述のように撮影レンズ装置101においては、撮影が終了した時点で絞りを開放状態にリセットすることによって、次の撮影開始時に直ちにAF動作の合焦位置検出動作に入ることが可能となり、準備時間が短縮され、操作性がよくなる。また、常に開放位置でAF動作を行うので、レンズの深度が浅く、精度の高い測距データが得られる。
【0059】次に、撮影レンズ装置101における図12R>2の展開図等に示したカムリング2に対する変形例について説明する。すでに説明したように上記カムリング2は、その回動動作により鏡枠の進退駆動と絞りセット,リセット動作の双方を行うように構成されているが、鏡枠進退領域である領域2cB 内の一部分に設定されている実効進退領域2cE の回動範囲に対して、カム上の領域2cA ,2cC が対応する絞りセット、または、リセット動作を行う回動位置は、上記領域の両端方向にかなり離れた位置であった。
【0060】従って、一連の撮影動作において、カムリング2を絞りリセット位置から鏡枠進退領域に回動させ、測光を行った後、端部の絞りセット位置まで回動させ、その後、鏡枠進退領域に戻し、AF駆動を行うことなるが、上記離間した絞りリセット位置からセット位置までカムリング2を回動させるため、長い回動時間が必要となり、タイムラグが増え、さらに、AF動作を終了するまでの時間も長くなってしまう。
【0061】この変形例のカムリングは、上述の不具合を解決するものであって、図15のカムリング42の展開図に示すように、絞りリセット用突起部43と絞りセット用突起部44がカム部2cの鏡枠進退領域2cB に対して、回動方向に位置調節が可能な構造を有している。すなわち、実際の組立調節工程において、鏡枠3のAF動作に必要な進退位置から鏡枠移動領域2cB の内、実効鏡枠進退領域2cE を設定する。その領域2cE にできるだけ接近したカムリング3の回動位置で絞りリセット、または、セットが行えるように絞りリセット用突起部43と絞りセット用突起部44の位置を調節して固定する。
【0062】上述のように絞りリセット,セット用突起部の位置が調節されたカムリング42を適用することにより、絞りセットまでの時間、AF動作終了までの時間、さらに、絞りリセットまでの時間をそれぞれ短縮でき、タイムラグを減らすことができ、素早い撮影が可能になる。また、撮影レンズのフランジバック調節も可能となる。さらに、鏡枠の進退量が制限され、占有スペ−スを少なくすることができる。
【0063】次に、撮影レンズ装置101における図12R>2等に示すカムリング2に対する別の変形例について説明する。この変形例のカムリング45は、その展開図を図16に示し、ゾーンフォーカシングが可能なカメラに適用することが可能な撮影レンズ装置のカムリングである。すなわち、カム部45cとして、カムリング2と同様に両端部に平坦状の絞りリセット,セット領域45cA ,45cC が配設され、中央部に2つの段階状の位置規制部である鏡枠進退領域45cB1,45cB2が配設されている。この領域45cB1,45cB2は、それぞれ無限遠(∞)側フォーカシングの領域と至近側フォーカシングの領域である。
【0064】このカムリング45を用いると、∞側,至近側ともにフォーカシング時の回動位置が多少ずれても鏡枠の進退位置がずれることがなく、段階的な駆動を行うだけでよいのでAF駆動制御が簡素化できる。なお、上記変形例のカムリング45は、進退領域を2段階カム面で構成したが3段階以上のカム面で構成してもよい。さらに、上記段階状の鏡枠進退領域の一部を撮影レンズのマクロ撮影のための進退駆動用とすることも可能である。
【0065】次に、撮影レンズ装置101におけるカムリング2に代えてカム環を適用する撮影レンズ装置について説明する。図17は、上記カム環を組み込んだ撮影レンズ装置の主要部の縦断面図であり、図18は、上記撮影レンズ装置の主要部の斜視図である。上記カム環72は、円筒形状を有し、外周に沿って鏡枠73をカムフォロワ73hを介して進退駆動するための溝カム72cが設けられ、絞りリセット用突起部72dが内周部に設けられている。なお、図示していないが絞りセット用突起部やカム環駆動用のギヤ部等も設けられている。
【0066】この変形例のカム環72を組み込んだ撮影レンズ装置の鏡枠73の進退駆動動作、絞り板15の駆動動作等は、前記実施の形態の装置の場合と同一である。そして、この撮影レンズ装置によれば、カム環72の本体への収容が容易であり、実装効率を上げることができる。
【0067】次に、上記撮影レンズ装置101のカムリング2に対するさらに別の変形例について説明する。この変形例のカムリングは、鏡枠当接部11hを駆動するカム部2cの範囲以外にストロボ発光部回動駆動用のカム部を設けるように構成した変形例である。上述のようにストロボ発光部を回動駆動することによって、マクロ撮影時にストロボの光軸方向を被写体に向けるように変化させることができる。
【0068】図19は、上記変形例のカムリング81を組み込んだ撮影レンズ装置とストロボ装置を被写体側から見た断面図である。図20は、図19のA−A′断面図である。上記カムリング81は、上記カムリング2と同様に、外周部に駆動用ギヤ部81aと、鏡枠3のカム当接部11hと当接可能な、焦点調節するための焦点調節駆動機構を構成する円筒端面カム形状のカム部81cと、絞り板15に当接して駆動可能な絞り駆動機構を構成するリセット用突起部81d,セット用突起部81eと、上記カム部81cの配設領域以外にストロボ駆動用カム部81fとが配設されている。
【0069】一方、ストロボ発光部83は、本体に支持軸83aを介して駆動自在に支持されている。上記ストロボ発光部83は、支持軸82aにより回動自在に支持されるストロボ駆動レバー82の駆動ピン82cを介して回動駆動可能である。
【0070】上記カムリング81のカム部81cには、両端部分に平坦状の領域81cA 、81cB が設けられ、中央部に通常撮影用の鏡枠進退領域81cB1とマクロ撮影用の鏡枠進退マクロ領域81cB2とが設けられている。また、カム部81fには、ストロボ駆動レバー82のカム当接部82bが当接可能であって、上記鏡枠進退領域81cB1に対応する平坦状の領域81f1 と、鏡枠進退マクロ領域81cB2に対応するストロボ駆動用マクロ領域81f2 とが設けられている。
【0071】以上のように構成されたこの変形例のカムリングを適用した撮影レンズ装置で、マクロ撮影を行う場合、カムリング81を鏡枠当接部11hが鏡枠マクロ進退領域81cB2に当接する位置まで回動させ、鏡枠3をマクロ撮影状態に移動させる。そのとき、ストロボ駆動レバー82は、その当接部82bがカム部81bのマクロ領域81f2 に当接する状態になり、ストロボ発光部83を回動させ、照射光軸方向を通常撮影状態での方向DA からマクロ撮影に対応した下方の方向DB に変化させる。
【0072】上述のように本変形例のカムリング81の適用した撮影レンズ装置によれば、マクロ撮影時のストロボ発光部の照射光軸を下方、すなわち、撮影レンズの光軸Oに接近する方向に向けるように変化させることができ、マクロ撮影を良好な配光状態で行うことができる。なお、上記撮影レンズ装置ではストロボの照射方向を変化させるようにしたが、これに限らず、光軸方向が可変のファインダに対してパララックス補正のために、カムリングの回動に伴いファインダ光軸を変化させるようにしてもよい。
【0073】次に、前記図2に示した撮影レンズ装置101が組み込まれ、前記図1に示した構成を有する本実施形態のバリア付き電子スチルカメラ51について説明する。図21は、上記カメラを裏側から見た外観の斜視図である。図22、および、図23は、それぞれレンズバリア52の閉鎖状態と開放状態のカメラの正面図である。
【0074】本カメラ51の前面部には、撮影レンズ31を閉鎖位置P52A 、または、開放位置P52B にスライド移動可能なバリア52を有しており、その開閉動作に連動してカメラに内蔵されたバリアスイッチ105がオンオフする。該バリアスイッチ105の出力信号は、モータ,ソレノイド等の駆動制御を行うシステムコントローラ103に入力される。さらに、カメラ51の前面部には、ファインダ窓53とストロボ窓54が配設されている。
【0075】カメラ51の裏面部には、ファインダ56と、CCD撮像画像のスルー画面である撮影画像や撮像済みの再生画像、または、各種文字情報等を表示するLCDモニタ57と、上記LCDモニタ57のオンオフを指示するスイッチとして働き、上記LCDモニタ57の右側であって、ホールドした右手の親指で操作し易い位置にあるLCDスイッチ58と、画像再生時に再生コマを選択するコマ選択スイッチ59とが配設されている。
【0076】上記カメラ51の上面部には、ホールドした手の人差し指で操作できるレリーズスイッチ55と、マクロ撮影を指示するマクロスイッチ60と、その他の操作スイッチ等が配設されている。また、カメラ左側面部には別のバッテリが接続可能な外部電源コネクタ61と、パーソナルコンピュータ等との通信用コネクタ62とが配設されている。
【0077】なお、このようにカメラの裏面側からみて左側にケーブル類が接続される外部電源コネクタ61や通信コネクタ62が配置されていることにより、ケーブルが接続された状態で右手でカメラをホールディングするときに上記ケーブルが邪魔にならないようになっている。
【0078】上述のように本カメラ51では、バリア52に連動するバリアスイッチ105の出力を用いてバリア52の開閉状態を検出し、バリア52が開いているときは撮影モードが選択され、バリアが閉じており、さらに、LCDスイッチ58がオンされると再生モードが自動的に選択されるため、モード設定がスムーズにしかも簡単に行え、使い易くなっている。なお、LCDスイッチ58を操作することによって、撮影モード、または、再生モードを選択するようにして、LCDモニタ57にCCDで撮像されたスルー画面を表示するか、あるいは、メモリに記録されている画像データの再生画面を表示するかを選択してもよい。
【0079】図24のフローチャートを用いて本バリア付き電子スチルカメラ51の撮影/再生のシーケンスについて説明すると、電池が装填されると、上記シーケンス処理がスタートし、ステップS10でバリア開状態であるかどうかをバリアスイッチ105の出力信号により判別する。バリア閉状態であれば、ステップS11に進み、バリア開状態であれば、撮影画像データをメモリ106に記録する撮影モードが選択され、ステップS16にジャンプする。
【0080】上記ステップS11では、LCDスイッチ58が押圧されているかを判別し、押圧されていなければ、上記ステップS10に戻る。バリア52閉状態では常にこのLCDスイッチ58を常にウォッチングしていることになる。LCDスイッチ58が押圧されていれば、再生モードであるとして、LCDモニタ57をオンとする(ステップS12)。
【0081】再生モードではLCDスイッチ58は、電気的にトグルスイッチとして作用するので、指を一旦離してもLCDモニタ57はオン状態を保つ。そして、最新の撮影済み画像からコマ再生を行う(ステップS13)。LCDスイッチ58がオンである限りコマ再生を続ける(ステップS14)。なお、再生時での再生コマの選択は、コマ選択スイッチ59で行うことができる。LCDスイッチ58がもう一度押圧され、オフとなると、ステップS15に進み、LCDモニタ57をオフにして本ルーチンを終了する。
【0082】一方、撮影モードが選択され、ステップS16にジャンプした場合は、まず、撮影レンズのリセットを行う。ステップS17ではバリアの閉状態をバリアスイッチ105の出力でチェックし、閉じていれば、そのまま本ルーチンを終了する。閉状態でなければ、LCDスイッチ58の状態をチェックする(ステップS18)。
【0083】LCDスイッチ58がオフであれば、LCDモニタ57をオフとし(ステップS23)、後述するステップS24に進み、以後、LCDモニタ57のオフの状態でレリーズスイッチ55のオン操作待ちの状態になる。
【0084】上記LCDスイッチ58のチェックでオンの場合、LCDモニタ57がファインダとして機能する状態での撮影が行われる。なお、このLCDモニタ57は、LCDスイッチ58が押圧されている状態の間だけがファインダ状態、すなわち、被写体像を表示する状態となり、該スイッチ58から手を離すとLCDモニタ57はオフとなる。そのため、該スイッチ58は、前述したようにホールドした右手の親指で操作し易い位置にある。この操作によって、比較的大きい電力を必要とするLCDモニタ57を不必要のときはできるだけオフ状態に保ち、節電を行うことができる。
【0085】その後、ステップS19に進み、前記カムリング2によりパンフォーカシング位置に撮影レンズを移動させ、測光を行い、CCDシャッタ調節を行う(ステップS20,S21)。CCDで撮像されたスルー画像をLCDモニタ57に表示し(ステップS22)、ステップS24でレリーズスイッチ55のオン待ちの状態になる。
【0086】レリーズスイッチ55のオンに伴い、カムリング2が回動し、AF位置に鏡枠3を駆動し、測光を行う(ステップS25,S26)。さらに、カムリング2による絞り駆動が行われ、上記AF(合焦)位置に鏡枠3が駆動される(ステップS27,S28)。その後、シャッタを駆動し、露光を行って(ステップS29)、絞りリセット処理の後(ステップS30)、ステップS16に戻る。なお、そこで、バリア閉が検出されると本ルーチンを終了する。
【0087】以上説明したように本カメラ51によると、従来の電子スチルカメラでは、撮影モード,再生モード切り換え用の操作スイッチが必要であったが、バリアの開閉に連動するバリアスイッチ105を適用することによって、スムーズにLCDモニタ57を再生用、または、撮影用に切り換え、再生モード、または、撮影モードの選択が可能になる。
【0088】なお、カメラ51を左手でホールドすることも考慮し、LCDスイッチ58′をLCDモニタ57の左側に配置して、左手の親指でLCDスイッチ58′を押圧しながら、右手の人指し指でレリーズスイッチ55を操作するように構成してもよい。
【0089】なお、上記カメラがマニュアルフォーカス式の電子スチルカメラであった場合は、図24の撮影シーケンスのフローチャートのうち、ステップS25からS28間での処理が図25のフローチャートに示すステップS31からS33に入れ代えられ、撮影が実行される。
【0090】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の電子的撮像装置によれば、上記電子的撮像装置においては、上記レンズバリアの開閉切り換え動作に連動して撮影モードと再生モードの切り換えが行われるようにしたので、従来の電子スチルカメラのようにモード切り換え専用のスイッチを設ける必要がなく、配設スペ−ス上もコスト上も有利になる。同時に、撮影時には必ずレンズバリア開放動作を行うので、必然的にモードが撮影モードに切り換えられ専用のモード切り換えスイッチを操作するなどの使用者に余分の手間を取らせない。さらに、再生モードの状態であるにもかかわらず、再生画面を見ながらレリーズ釦を押圧してしまうなどの不具合が発生しにくい。
【0091】本発明の請求項2記載の電子的撮像装置によれば、表示器動作用のスイッチ機構の切り換え操作によって、撮影モードと再生モードとが切り換えられるので、専用のモード切り換えスイッチを操作するなどの使用者に余分の手間を取らせない。さらに、再生モードの状態であるにもかかわらず、再生画面を見ながらレリーズ釦を押圧すなどの不具合が発生しにくい。また、専用のモード切り換えスイッチを不要とすることから、スペ−ス上も、コスト上も有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の電子的撮像装置であるバリア付き電子スチルカメラの主要ブロック構成図。
【図2】図1のカメラに組み込まれる撮影レンズ装置の分解斜視図。
【図3】図2の撮影レンズ装置に組み込まれる鏡枠部の分解斜視図。
【図4】図2の撮影レンズ装置のカムリング装着状態の縦断面図。
【図5】図4のA−A′断面図。
【図6】図2の撮影レンズ装置の鏡枠の縦断面図。
【図7】図2の撮影レンズ装置の鏡枠の絞り板周りの縦断面図。
【図8】図2の撮影レンズ装置の絞り板等の光学系部材とソレノイド,モータ等の駆動源の配置状態を示す被写体側から見た断面図。
【図9】図8のA−A′断面図。
【図10】図2の撮影レンズ装置の鏡枠を被写体側から見た状態での絞り板,カムリングの動作状態を示す断面図。
【図11】図2の撮影レンズ装置の鏡枠を被写体側から見た状態でのシャッタ羽根の動作状態を示す断面図。
【図12】図2の撮影レンズ装置のカムリングの展開図。
【図13】図2の撮影レンズ装置におけるソレノイドのプランジャストロ−ク、または、経過時間に対するシャッタの光量の変化を示す図。
【図14】図2の撮影レンズ装置におけるソレノイドのプランジャストロ−クに対するシャッタの開口面積の変化を示す図。
【図15】図2の撮影レンズ装置のカムリングの変形例を示すカムリング展開図。
【図16】図2の撮影レンズ装置のカムリングの別の変形例を示すカムリング展開図。
【図17】図2の撮影レンズ装置のカムリングに代えて適用されるカム環を組み込んだ撮影レンズ装置の主要部の縦断面図。
【図18】図17の撮影レンズ装置の主要部の斜視図。
【図19】図2の撮影レンズ装置のカムリングの変形例のものを組み込んだ撮影レンズ装置とストロボ装置を被写体側から見た断面図。
【図20】図19のA−A′断面図。
【図21】図1のバリア付き電子スチルカメラを裏面側から見た外観の斜視図。
【図22】図21のカメラのバリア閉鎖状態の正面図。
【図23】図21のカメラのバリア開放状態の正面図。
【図24】図1のバリア付き電子スチルカメラの撮影/再生のシーケンスのフローチャート。
【図25】図24のカメラの変形例であって、マニュアルフォーカスカメラにおける撮影シーケンスの一部。
【図26】従来の撮影レンズ装置の直線状羽根のシャッタ羽根の構造を示す図。
【図27】図26の従来のシャッタ羽根によるソレノイドのプランジャストロ−ク、または、経過時間に対する光量変化を示す線図。
【符号の説明】
31,32……撮影レンズ
52 ……レンズバリア
57 ……LCDモニタ(表示器)
58 ……LCDスイッチ(スイッチ機構)
101……撮影レンズ装置(撮像手段)
102……撮影信号処理部(撮像手段)
104……再生信号処理部(再生信号処理手段)
105……バリアスイッチ(モード切り換え手段)
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子的撮像装置、詳しくは、撮像手段と再生信号処理手段とを内蔵しており、撮影モードと再生モードを切り換えて動作させることが可能な電子的撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電子スチルカメラであって、撮像部と画像再生部を内蔵し、撮影モードと再生モードを切り換えて動作させることが可能なカメラにおいては、上記各モードを切り換えるためのモード切り換えスイッチが独立して配設されていた。そのモード切り換えスイッチを使用者が操作することによって、撮影モード、または、再生モードを選択し、LCDモニタ等に表示される画像をファインダ用の画像として表示するか、あるいは、内部に記憶されている画像データの画像を表示するかの切り換えを行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来の電子スチルカメラにおいては、上記モード切り換えスイッチがカメラの撮影、または、再生操作の中で自然に使用されるという形にならず、再生を行いか、撮影を行うかの意志を上記スイッチを操作することによって示す必要があり、使い勝手が必ずしもよくなかった。
【0004】本発明は、上述の不具合を解決するためになされたものであり、撮影モード、または、再生モードの選択が容易に行える使い勝手のよい電子的撮像装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の電子的撮像装置は、撮影レンズを介して像面に結像された被写体を光電変換して撮像信号処理する撮像手段を動作させる撮影モードと、映像信号を表示器に供給するための再生信号処理手段を動作させる再生モードとを切り換えて動作させるモード切り換え手段を有する電子的撮像装置において、上記モードを切り換え動作を上記撮影レンズを不使用時にカバーをするためのレンズバリアの開閉切り換え動作に連動させて切り換える。
【0006】。上記電子的撮像装置においては、上記レンズバリアの開閉切り換え動作に連動して撮影モードと再生モードの切り換えが行われる。
【0007】本発明の請求項2記載の電子的撮像装置は、撮影レンズを介して像面に結像された被写体を光電変換して撮像信号処理をする撮像手段を動作させる撮像モードと、映像信号を表示器に供給するための再生信号処理手段を動作させる再生モードとを切り換えて動作させるモード切り換え手段を有する電子的撮像装置において、上記モード切り換え動作を上記表示器を動作させるためのスイッチ機構により行う。上記電子的撮像装置においては、上記スイッチ機構の切り換え操作によって、上記撮影モードと再生モードが切り換えられる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態の電子的撮像装置であるバリア付き電子スチルカメラ51の主要ブロック構成図である。上記カメラは、主にカメラ全体の制御を司るシステムコントローラ103と、撮像手段を構成する、撮影レンズ,撮像素子,焦点調節・絞り装置,シャッタ装置等が内蔵される撮影レンズ装置101および撮像素子より出力される撮像信号を処理する撮像信号処理部102と、撮像信号処理部102より出力される画像データを記憶するメモリ106と、メモリ106に格納されている画像データを読み出し、表示器であるLCDモニタ57に出力する再生信号処理部104と、撮像信号処理部102より出力されるスルー画像、または、メモリ106に記憶しているデータの再生画像を切り換えて表示するLCDモニタ57と、撮影レンズ閉鎖位置と開放位置にスライド可能なレンズバリア52と、上記バリア52の開閉動作に連動してオンオフするバリアスイッチ105と、LCDモニタ57の表示状態を切り換えるスイッチ機構であるLCDスイッチ58を有している。
【0009】上記カメラにおいて、レンズバリア52を開放位置にスライドさせると、バリアスイッチ105がオンとなり、その出力信号は、システムコントローラ103に入力され、カメラ51は撮影モードにセットされる。この撮影モードでは、撮影レンズ装置101を介して取り込まれた被写体像の撮像信号が撮像信号処理部102で処理され、その画像データがスルー画像として、LCDモニタ57に表示される。一方、撮影された画像データはメモリ106に格納される。
【0010】また、レンズバリア52を閉鎖位置にスライドさせると、バリアスイッチ105がオフとなり、そのオフ信号はシステムコントローラ103に入力され、まず、撮影モードの処理を中断する。そして、LCDスイッチ58がオンであれば、カメラは再生モードにセットされる。この再生モードでは、メモリ106に格納されている撮影済み画像データを再生信号処理部104で読み出し、その画像データをLCDモニタ57に出力し、再生画像を表示する。上記再生モードは、外部の画像処理装置より取り込まれる画像データをLCDモニタ57に表示するような処理モードであってもよい。
【0011】そして、システムコントローラ103に内蔵されている自動合焦制御装置,自動露光制御装置,シャッタ制御装置により、撮影レンズ装置101における撮影レンズの自動焦点調節(AF)駆動と、測光、および、絞り駆動と、シャッタ駆動の制御が行われる。なお、上記バリア付き電子スチルカメラ51の撮影モード、または、再生モードにおける処理動作の詳細は、後で図24のフローチャート等を用いて説明する。
【0012】次に、上記バリア付き電子スチルカメラ51に組み込まれる撮影レンズ装置101について、図2の分解斜視図,図3の上記撮影レンズ装置に組み込まれる鏡枠部の分解斜視図等を用いて説明する。なお、図2中のa1 〜a4 は接続箇所を示している。まず、上記撮影レンズ装置101の構成について説明すると、図2に示すように、上記撮影レンズ装置101は、主に装置本体1と、装置本体1に回動自在に取り付けられ、絞り駆動機構と焦点調節駆動機構とが一体的に設けられた該両機構に共通N駆動機構をなすカム機構としてのカムリング2と、装置本体1に撮影レンズ光軸Oに沿って進退自在に支持され、撮影レンズ31,32(図6参照)を保持する鏡枠3と、鏡枠付勢バネ24が挿入されており、装置本体1の支持穴1bと本体蓋4の支持穴4eに支持され、鏡枠3を光軸方向にガイドする吊り軸8と、装置本体1の支持ピン1eに回動自在に支持され、シャッタ羽根14を駆動するためのシャッタ駆動レバー9と、装置本体1の撮影開口1aの後方に固着されるCCDユニット7と、カムリング2の回動位置を遮蔽板2fを介して検出するフォトインタラプタ29と、装置本体1に取り付けネジ91により固着される本体蓋4と、装置本体1に取り付けネジ93で固着され、ピニオン21がその出力軸に固着されている絞り/焦点調節駆動の駆動源としてのステッピングモータ5と、装置本体1に取り付けネジ94で固着されるシャッタ駆動用であるソレノイド(電磁石)6とを有している。
【0013】上記カムリング2には、その外周に上記ピニオン21と噛合可能なギヤ部2aと、回動支持用円筒端面部2bと、回動位置検出用の遮蔽板2fと、鏡枠3の焦点調節するための焦点調節駆動機構を構成する円筒端面カム形状のカム部2cと、絞り板15に当接して駆動可能な絞り駆動機構を構成する絞りリセット用突起部2d,絞りセット用突起部2eが配設されている。
【0014】カムリング2の本体1への組み込みは、図4R>4のカムリング装着状態の縦断面図と、図4のA−A′断面図である図5に示すように、円筒端面部2bを本体1の円状ガイド溝1dに挿入した状態で本体蓋4を本体1に固着すると、本体蓋4の突起部4b,4c,4dでカムリング2の端面の軸方向が規制された状態で回動自在に保持される。この状態では、ステッピングモータ5のピニオン21がギヤ部2aと噛合しており、モータ5の回転によりカムリング2が回動駆動される。
【0015】なお、上記カム部2cは、後述する図12の展開図に示すように中央部の鏡枠進退領域2cB とその両端部に設けられる平坦形状の絞りリセット領域2cA ,絞りセット領域2cC で構成される。後述する鏡枠3のカム当接部11hがカムリング2の回動動作に伴って、上記各領域を当接して従動するが、絞りリセット領域2cA ,絞りセット領域2cC にあるときは、リセット用突起部2d,セット用突起部2eが絞り板15を押圧し、絞りリセット、または、セット動作が行われる。
【0016】上記鏡枠3は、図3の分解斜視図に示すように、撮像素子側の後枠11と、被写体側の前枠12と、上記前枠12と後枠11との間に配設される絞り機構の要素としての絞り板15と、撮影開口11cを開閉するシャッタ羽根14と、上記シャッタ羽根14と絞り板15との間の隔離板として配設され、開放絞り径を決める開口13cを有し、ピン11gと支持ピン11fとで位置決めされる隔壁部材13と、後枠11のボールガイド穴11eに挿入されるボール付勢バネ17および絞り板用位置決めボール16とを有している。
【0017】上記後枠11は、撮影レンズ32を保持し、吊り軸8が摺動自在に嵌入する軸穴11aと、装置本体1のガイド1cに嵌入する切り欠き部11bを有し、また、軸穴11aの外方にカムリング2のカム部2cに対して当接可能な焦点調節用被駆動部であるカム当接部11h(図6の鏡枠の縦断面図参照)と、絞り板15を回動自在に支持する支持ピン11dと、シャッタ羽根14を回動自在に支持する支持ピン11fと、上記撮影開口11cと、上記ボールガイド穴11e等を有している。上記前枠12は、撮影レンズ31を保持し、後枠11に取り付けネジ92で固着され、後枠11と一体化されて鏡枠3を構成する。
【0018】上記絞り板15は、軸穴15aにて後枠11の支持ピン11dにより回動自在に取り付けられており、後枠11の光軸O中心に位置する撮影開口11cに対向可能な絞り開放部15d,中絞り穴15e,小絞り穴15fが軸穴15aから等距離の円弧軌跡位置に配置された3段階のターレット絞り構造を有している。また、前枠12との接触面上に摺動抵抗を減じるための円弧状の突起15cが設けられている。
【0019】また、絞り板15には、上記撮影開口11cに対応して絞り開放部15d,中絞り穴15e,小絞り穴15fが対向したときの上記後枠11の位置決めボール16位置にボール係合穴15g,15h,15iが設けられており、各絞り位置でのクリック保持力を与えるようになっている。さらに、前,後枠から外部に露出した位置にカムリング2の突起部2d,2eが当接可能な当接ピン15bが設けられている。この当接ピン15bの長さは、図7の鏡枠3の絞り板周りの縦断面図に示すように鏡枠3が進退移動しても突起部2d,2eが当接可能な所定の長さを有している。
【0020】なお、ズームレンズ等で鏡枠進退量が大きい場合、図7に示すようにカムリング2′が相対的により後方に移動することから、絞り板15の当接ピン15b′を長くすることによって本機構を適用することができる。
【0021】シャッタ羽根14は、撮影開口11cの対向位置にV字状の切り欠き部14cとシャッタ駆動レバー9の駆動ピン9bが嵌入可能な長穴14bを有し、後枠11の支持ピン11fに後枠11の撮影開口11cの面上に回動自在に取り付けられる。
【0022】なお、上記絞り板15と隔壁部材13とシャッタ羽根14の光軸方向の配設位置の順序は、図6の鏡枠縦断面図、または、図7の絞り板周りの縦断面図に示すように、前枠12と後枠11との間に前枠12側から絞り板15,隔壁部材13,シャッタ羽根14の順序で配置されている。
【0023】上記ソレノイド6は、戻しバネ23が装着され、突出,吸引可能な可動鉄心であるプランジャ22を有しており、該プランジャ22には、シャッタ駆動レバー9の駆動ピン9aが嵌入される溝部22aが設けられている。なお、後述の図11に示すようにソレノイド6のオフでプランジャ22は突出位置P22A にあり、オンで吸引位置P22B に吸引される。
【0024】また、上記CCDユニット7は、光学フィルタ25とスペーサ26と撮像素子であるCCD27で構成され、プリント基板28に一体的に組み付けられている。
【0025】次に、絞り板等の光学系部材とソレノイド等の駆動部材の配置について、図8,図9を用いて説明する。図8,図9は、絞り板,シャッタ羽根とソレノイド,ステッピングモータの配置状態を示す図であって、図8は光軸に沿って被写体側から見た断面図であり、図9R>9は、図8のA−A′断面図である。
【0026】図8に示すように鏡枠3の光軸Oの位置は、前記カムリング2の回動中心O′に対して偏心している。このように偏心させることによって、絞り板15をカムリング2の中心寄りに配置することができ、上方に設けられる回動駆動用当接ピン15bをカムリング2の内周部に収める構造を採用でき、カムリング2の小型化を可能としている。
【0027】また、絞り板15とシャッタ羽根11の回動の中心(支持ピン11dと11f)は、それぞれ図8において、光軸O上の撮影開口11cに対して互いに直交する方向の上方(y軸方向)と右方(x軸方向)に位置させている。このように回動中心を設定して、光軸O上での絞り開放部15d,絞り穴15e,15fの切り換え移動方向とシャッタ閉成用切り欠き部14cの移動方向が互いに直交することになる。このように設定することによる効果は、後で説明する。
【0028】シャッタ羽根駆動用のソレノイド6とカムリング駆動用のステッピングモータ5は、図8に示すように被写体側から見て鏡枠3の右側に配置されている。また、光軸O方向の配置は、図9に示すようにソレノイド6が鏡枠3の前枠12側の側面部に配置され、ステッピングモータ5が鏡枠3の後枠11の側方から後方の結像側向けて配置されている。このように配置することは、ソレノイド6としては、その駆動負荷となるシャッタ羽根14が鏡枠3の略中央にあることから好都合であり、また、ステッピグモータ5としても、その駆動負荷となるカムリング2が後枠11の側方にあり、さらに、モータのサイズ等の関係からも好ましい配置となっている。
【0029】次に、以上のように構成された本撮影レンズ装置における絞り・シャッタ開閉・焦点調節の各動作について、図10〜図14等を用いて説明する。なお、図10は、鏡枠を被写体側から見た状態での絞り板およびカムリングの動作状態を示す断面図であり、図11は、鏡枠を被写体側から見た状態でのシャッタ羽根の動作状態を示す断面図である。また、図12は、カムリングの展開図である。さらに、図13は、プランジャストロ−ク、または、時間に対するシャッタの光量の変化を示す図であり、図14は、同じく各プランジャストロ−クにおけるシャッタ開口面積の値と開口形状を示す図である。
【0030】まず、カムリング2の回動による鏡枠移動と絞り動作から説明する。カムリング2は、図12に示すように光軸O方向に高さが変化する進退領域2cB と平坦形状の絞りリセット領域2cA ,絞りセット領域2cC で構成されるカム部2cを有しており、ステッピングモータ5によって回動駆動されると、図10に示すように鏡枠3のカム当接部11h(図3,図8参照)が上記カム部2c上の回動範囲R0 を摺動する。
【0031】上記範囲R0 のうち、カム当接部11hが領域2cA に到達したとき、後述するように絞りのリセット動作が行われ、位置P0 にて絞りがリセット状態となる。この位置P0 到達は、フォトインタラプタ29により遮蔽板2fを検出することによって検知される(図1212参照)。また、上記位置P0 から所定範囲回動し、進退領域2cB 上をカム当接部11hが摺動すると、鏡枠3が付勢バネ24に抗して吊り軸8に沿って進退駆動され、AF動作、すなわち、焦点調節が行われる。この進退領域2cB の移動量は、鏡枠のレンズ製造の誤差分を吸収できるように大きく設定されており、実際の組み付け調節時には上記領域2cB の一部の領域、例えば、領域2cE(回動位置P2 からP1 間)が至近〜∞の合焦領域として選択される。また、領域2cC に当接部11hが到達したとき、後述する絞りセット動作が行われる。
【0032】上記絞りリセット動作を行うには、カムリング2を反時計回りに回動させて、カム当接部11hが上記領域2cA の範囲に到達すると、カムリング2の突起部2dで絞り板15の当接ピン15bを反時計回りに回動させる。そして、カム当接部11hが位置P0 に到達したとき、絞り板15は、図10に示すリセット位置P15A に回動しており、鏡枠3の撮影開口11f上に絞り開放部15dが位置する全開放状態となる。
【0033】このとき、絞り板15のボール係合穴15gに位置決めボール16が嵌入し、所定のクリック力で上記絞り板15のリセット回動位置P15A を保持する。このクリック力により、その後のAF動作時等にカムリング2の突起部2dが絞り板15の当接部15bから離れたとしても絞りリセット状態が保持される。
【0034】さらに、上記絞りリセット状態では当接ピン15bがリセット用突起部2dと装置本体1の保持機構である突起1fとで挟持される。この状態でカメラが非使用状態になって、電源がオフされたときでも、ステッピングモータ5のコギングトルクによりカムリング2が保持され、絞り板15が上記リセット回動位置P15A で保持される。従って、カメラの非使用状態で振動や衝撃が作用したときでも絞り板15は上記リセット位置に保持され、位置ずれが防止でき、その後の撮影開始に支障を生じさせないようにし、また、輸送等での光学系部材の破損が防止できる。
【0035】なお、保持機構としての本体1の突起1fは、鏡枠3側に設けてもよく、例えば、後枠11にストッパ11i(図10参照)を設けて絞り板15をリセット位置で保持するようにしてもよい。
【0036】また、絞りセット動作を行うには、カム当接部11hが位置P0 にある絞りリセットの位置から、一旦、カムリング2を時計回りに、絞りセット領域2cC まで回動させる。但し、絞り開放状態のままで撮影を行う場合は上記絞りセット領域2cC まで回動させる必要はなく、鏡枠進退領域2cB での進退駆動が実行される。
【0037】絞りセットが中絞りである場合、カム当接部11hが上記領域2cC まで回動して、セット用突起部2eが絞り板15の当接ピン15bに当接した後、さらに、時計回りに回動させ、中絞り穴15eが鏡枠3の撮影開口11c上に位置したとき、カムリング2の回動を停止させる。この状態で絞り板15は位置決めボール16がボール係合穴15hに嵌入して所定のクリック力で保持され、中絞り状態にセットされる。
【0038】絞りセットが小絞りである場合、同様にカム当接部11hが上記領域2cC まで回動して、セット用突起部2eが絞り板15の当接ピン15bに当接した後、さらに、時計回りに回動させ、小絞り穴15fが鏡枠3の撮影開口11c上に位置したとき、カムリング2の回動を停止する。この状態で絞り板15は、図10の回動位置P15B に位置し、位置決めボール16がボール係合穴15iに嵌入し、所定のクリック力で保持され、小絞り状態にセットされる。
【0039】上記各絞りセットを行った後は、カムリング2を反時計回りに回動させ、カム当接ピン11hがカムリング2のAF範囲の領域2cB 内の領域2cE (回動位置P2 からP1 間)にあるとき、撮影レンズの合焦動作が行われ、適正な絞りとピント状態での撮影が実行される。
【0040】撮影後、カムリング2は、さらに、反時計回りに回動され、リセット用突起部2dで絞り板15の当接ピン15bが押圧され、絞り板15は、前記図10のリセット位置である回動位置P15A まで戻される。
【0041】上述のように、撮影レンズ装置101にあっては、カムリング2の回動によって、鏡枠3の合焦のための進退移動と絞り板15の絞り回動位置の設定を行う必要があり、例えば、AF動作を行う場合、最初に露出を決めた後、絞りを設定し、その後、AF動作を行うことから、カムリング2のカム部2cのAF動作範囲内に絞り駆動範囲が設定されていると、AF動作中に絞りが変化してしまうといった不具合が生じる。
【0042】そこで、上記カムリング2は、上述したように鏡枠進退駆動と絞り駆動と独立して作用するように構成している。すなわち、カム部2cの内、鏡枠駆動の実効範囲である鏡枠進退駆動範囲2cB 外の範囲でのみ絞り駆動用の絞りリセット,セット突起部2d,2eが作用するように構成することによって、絞りが正確に行われ、絞りを駆動する機構の配置が容易となる。また、カムリング2に焦点調節と絞り駆動の両方の機構部を別途に備えることにより調節工程や部品が単純化できる。
【0043】さらに、カムリング2をリング形状にして円筒端面カム部により鏡枠3を進退駆動するように構成したことにより、光軸方向の厚みの増加が抑えられる。また、撮影レンズ装置の鏡枠部内に上記カムリング2が埋め込まれ、さらに、カムリング2の内部に後述する鏡枠等の光学部材が収容され、出っ張り部分が少なくなることから、撮影レンズ装置自体もコンパクトになり、上記各部材の収容効率がよくなる。また、カム部が内部に位置することからカム面にごみ等が付着することが避けられ、AF駆動性能の劣化が避けられる。
【0044】次に、ソレノイド6のオンオフにともなうシャッタ開閉動作について説明する。シャッタ羽根14は、図11に示すようにソレノイド6のプランジャ22が突出位置P22A にあるとき、撮影開口11cから切り欠き部14cが退避した開放位置P14A にある。プランジャ22が吸引位置P22B に吸引されると、シャッタ駆動レバー9を介して時計回りに駆動され、撮影開口11cを閉じる閉成位置P14B に移動する。
【0045】撮影終了後、ソレノイド6のオフにより、戻しバネ23の付勢力によりプランジャ22が突出位置P22A に戻され、シャッタ羽根14も撮影開口11cの開放位置P14A に戻される。
【0046】前述したように光軸O上での絞り板15の絞り開放部15d,絞り穴15e,15fの切り換え移動方向(x軸方向)と上記シャッタ羽根14の切り欠き14cの移動方向(y軸方向)が互いに直交している。このような配置を採用することによって、シャッタの開放時間(シャッタ時秒)精度の低下を解消している。
【0047】例えば、絞り穴位置が切り欠き移動であるy軸方向にずれると、ソレノイド6のオフ後、切り欠き14cが上記絞り穴を通過するまでの時間、すなわち、シャッタ秒時が変化し、精度が低下する。
【0048】そこで、上記絞り板15の絞り穴15e,15fの軸心からのy軸方向の距離精度は、単一の部品精度で決定されることから高い精度を保証可能としている。一方、絞り穴移動方向であるx軸方向のクリック保持位置は、後枠11に保持される位置決めボール16の位置精度と絞り板15の穴位置精度とが複合して影響することから多少ずれる可能性がある。
【0049】本装置においては、上述のように絞り板15の絞り穴15e、または、15fのy軸方向の位置精度がよいことから上述のプランジャ22の吸引に伴うシャッタ秒時の精度の低下が避けられる。また、上述したように絞り穴15e,15fのx軸方向の切り換え移動方向の位置決め精度は、必ずしも高精度が得られないとしても、シャッタ羽根14の切り欠き14cとの移動方向と直交する方向にわずかにずれが生じるだけで、シャッタ秒時への影響は少ない。
【0050】なお、上述のような互いに直交する移動方向ではなく、シャッタ機構として絞り板の絞り穴15e,15fの移動方向とシャッタ羽根の切り欠き14cの移動方向が直交せず互いに同じ方向に移動するような構造を採ったとすると、絞り穴の移動方向位置決め精度の低下がシャッタ秒時の精度を低下させることになる。
【0051】上記シャッタ羽根14は、上述したように撮影開口11cの閉成部としてV字状の切り欠き部14cを有しているが、その切り欠き部14cを通過する光量の変化特性について、図13,図14の上記シャッタ羽根による光量変化を示す線図と開口面積変化を示す線図等を用いて説明する。図13は、プランジャ22のストロ−ク、または、経過時間に対する光量の変化を示した線図であり、図14は、プランジャ22の各ストロ−クにに対する開口面積の変化を示した線図である。
【0052】図14に示すように、閉じ動作の初期においては、切り欠き部14cのV字に傾斜した2辺で開口11cの両側方から遮蔽して行く状態になっている。図2626に示すような従来の直線羽根のシャッタ羽根の場合は、支持軸92回りに回動可能なシャッタ羽根91において、直線状の羽根部91aで開口93を閉じて行く構造になっており、図27の上記従来のシャッタ羽根による光量変化を示す線図のようにプランジャストロ−クに対する光量の変化は、直線的に変化する。
【0053】一方、ソレノイド6は、オン状態になって吸引を開始した場合、通常、プランジャの吸引速度は、プランジャの慣性、または、摩擦力等により駆動始めは遅く、徐々に増加してゆくような変化を辿る。
【0054】従って、上記従来のシャッタ羽根91での経過時間に対する光量の変化としては、図27に示すように経過時間の初期にて、光量変化の遅れが生じ、最初は、遅く、途中から速く変化することになる。シャッタスピ−ドとしては、光量が半分になるまでの経過時間をシャッタスピ−ドとすることから、この従来の場合は、たとえ、シャッタが閉成するまでの時間が同じでも初期が遅れるため、見かけ上のシャッタスピ−ドとしては遅くなってしまう。
【0055】ところが、本実施形態の撮影レンズ装置のシャッタ羽根14によると、図14にて説明したようにV字状の切り欠きにより開口を閉じて行くので、初期動作における開口面積の減少の速度が速く、光量の減少速度も大きくなる。従って、プランジャ22の吸引動作の初期遅れがあったとしても、図13に示すように経過時間に対して直線的に光量を減少させることができ、見かけ上のシャッタスピ−ドを速くすることが可能となる。
【0056】ここで、上述の撮影レンズ装置101がAFカメラに組み込まれた場合の一連の撮影動作について説明すると、まず、レリーズスイッチの1段目がオン操作された場合、露出検出が行われる。そして、一旦、AF動作による鏡枠合焦位置を検出した後、レリーズスイッチの2段目のオンを待つ。該2段目がオンとなった場合、カムリング2を時計回りに回動させ、絞りリセット位置からAFを行う鏡枠駆動範囲を通過し、上記露出検出による絞りにセットするため絞りセット位置、例えば、中絞り位置まで回動させる。その後、カムリング2を反時計回りの回動させ、上記1段目オン時に検出したAF位置(合焦位置)へ鏡枠当接部11hを介して鏡枠3を駆動し、そこで、撮影が実行される。
【0057】このときのカムリング2の回動角は、ステッピングモータ5の駆動パルス数で管理される。但し、ギヤ部2a等のバックラッシュ誤差を考慮する必要があるときには、上記AF位置に鏡枠3をセットする場合、一旦、カムリング2をAF位置を超えて反時計回りに数ステップ余分に戻し、その後、時計回り方向に回動させ、すでに検出されているAF位置に位置させる。このようにカムリング2を駆動することにより高精度のAF処理が可能となる。撮影終了後は、カムリング2を反時計回りに回動させ、絞りリセット状態である絞り開放状態の位置、すなわち、図12に示すように鏡枠カム当接位置11hがカムリングカム部2cに対して位置P0 に戻される。
【0058】上述のように撮影レンズ装置101においては、撮影が終了した時点で絞りを開放状態にリセットすることによって、次の撮影開始時に直ちにAF動作の合焦位置検出動作に入ることが可能となり、準備時間が短縮され、操作性がよくなる。また、常に開放位置でAF動作を行うので、レンズの深度が浅く、精度の高い測距データが得られる。
【0059】次に、撮影レンズ装置101における図12R>2の展開図等に示したカムリング2に対する変形例について説明する。すでに説明したように上記カムリング2は、その回動動作により鏡枠の進退駆動と絞りセット,リセット動作の双方を行うように構成されているが、鏡枠進退領域である領域2cB 内の一部分に設定されている実効進退領域2cE の回動範囲に対して、カム上の領域2cA ,2cC が対応する絞りセット、または、リセット動作を行う回動位置は、上記領域の両端方向にかなり離れた位置であった。
【0060】従って、一連の撮影動作において、カムリング2を絞りリセット位置から鏡枠進退領域に回動させ、測光を行った後、端部の絞りセット位置まで回動させ、その後、鏡枠進退領域に戻し、AF駆動を行うことなるが、上記離間した絞りリセット位置からセット位置までカムリング2を回動させるため、長い回動時間が必要となり、タイムラグが増え、さらに、AF動作を終了するまでの時間も長くなってしまう。
【0061】この変形例のカムリングは、上述の不具合を解決するものであって、図15のカムリング42の展開図に示すように、絞りリセット用突起部43と絞りセット用突起部44がカム部2cの鏡枠進退領域2cB に対して、回動方向に位置調節が可能な構造を有している。すなわち、実際の組立調節工程において、鏡枠3のAF動作に必要な進退位置から鏡枠移動領域2cB の内、実効鏡枠進退領域2cE を設定する。その領域2cE にできるだけ接近したカムリング3の回動位置で絞りリセット、または、セットが行えるように絞りリセット用突起部43と絞りセット用突起部44の位置を調節して固定する。
【0062】上述のように絞りリセット,セット用突起部の位置が調節されたカムリング42を適用することにより、絞りセットまでの時間、AF動作終了までの時間、さらに、絞りリセットまでの時間をそれぞれ短縮でき、タイムラグを減らすことができ、素早い撮影が可能になる。また、撮影レンズのフランジバック調節も可能となる。さらに、鏡枠の進退量が制限され、占有スペ−スを少なくすることができる。
【0063】次に、撮影レンズ装置101における図12R>2等に示すカムリング2に対する別の変形例について説明する。この変形例のカムリング45は、その展開図を図16に示し、ゾーンフォーカシングが可能なカメラに適用することが可能な撮影レンズ装置のカムリングである。すなわち、カム部45cとして、カムリング2と同様に両端部に平坦状の絞りリセット,セット領域45cA ,45cC が配設され、中央部に2つの段階状の位置規制部である鏡枠進退領域45cB1,45cB2が配設されている。この領域45cB1,45cB2は、それぞれ無限遠(∞)側フォーカシングの領域と至近側フォーカシングの領域である。
【0064】このカムリング45を用いると、∞側,至近側ともにフォーカシング時の回動位置が多少ずれても鏡枠の進退位置がずれることがなく、段階的な駆動を行うだけでよいのでAF駆動制御が簡素化できる。なお、上記変形例のカムリング45は、進退領域を2段階カム面で構成したが3段階以上のカム面で構成してもよい。さらに、上記段階状の鏡枠進退領域の一部を撮影レンズのマクロ撮影のための進退駆動用とすることも可能である。
【0065】次に、撮影レンズ装置101におけるカムリング2に代えてカム環を適用する撮影レンズ装置について説明する。図17は、上記カム環を組み込んだ撮影レンズ装置の主要部の縦断面図であり、図18は、上記撮影レンズ装置の主要部の斜視図である。上記カム環72は、円筒形状を有し、外周に沿って鏡枠73をカムフォロワ73hを介して進退駆動するための溝カム72cが設けられ、絞りリセット用突起部72dが内周部に設けられている。なお、図示していないが絞りセット用突起部やカム環駆動用のギヤ部等も設けられている。
【0066】この変形例のカム環72を組み込んだ撮影レンズ装置の鏡枠73の進退駆動動作、絞り板15の駆動動作等は、前記実施の形態の装置の場合と同一である。そして、この撮影レンズ装置によれば、カム環72の本体への収容が容易であり、実装効率を上げることができる。
【0067】次に、上記撮影レンズ装置101のカムリング2に対するさらに別の変形例について説明する。この変形例のカムリングは、鏡枠当接部11hを駆動するカム部2cの範囲以外にストロボ発光部回動駆動用のカム部を設けるように構成した変形例である。上述のようにストロボ発光部を回動駆動することによって、マクロ撮影時にストロボの光軸方向を被写体に向けるように変化させることができる。
【0068】図19は、上記変形例のカムリング81を組み込んだ撮影レンズ装置とストロボ装置を被写体側から見た断面図である。図20は、図19のA−A′断面図である。上記カムリング81は、上記カムリング2と同様に、外周部に駆動用ギヤ部81aと、鏡枠3のカム当接部11hと当接可能な、焦点調節するための焦点調節駆動機構を構成する円筒端面カム形状のカム部81cと、絞り板15に当接して駆動可能な絞り駆動機構を構成するリセット用突起部81d,セット用突起部81eと、上記カム部81cの配設領域以外にストロボ駆動用カム部81fとが配設されている。
【0069】一方、ストロボ発光部83は、本体に支持軸83aを介して駆動自在に支持されている。上記ストロボ発光部83は、支持軸82aにより回動自在に支持されるストロボ駆動レバー82の駆動ピン82cを介して回動駆動可能である。
【0070】上記カムリング81のカム部81cには、両端部分に平坦状の領域81cA 、81cB が設けられ、中央部に通常撮影用の鏡枠進退領域81cB1とマクロ撮影用の鏡枠進退マクロ領域81cB2とが設けられている。また、カム部81fには、ストロボ駆動レバー82のカム当接部82bが当接可能であって、上記鏡枠進退領域81cB1に対応する平坦状の領域81f1 と、鏡枠進退マクロ領域81cB2に対応するストロボ駆動用マクロ領域81f2 とが設けられている。
【0071】以上のように構成されたこの変形例のカムリングを適用した撮影レンズ装置で、マクロ撮影を行う場合、カムリング81を鏡枠当接部11hが鏡枠マクロ進退領域81cB2に当接する位置まで回動させ、鏡枠3をマクロ撮影状態に移動させる。そのとき、ストロボ駆動レバー82は、その当接部82bがカム部81bのマクロ領域81f2 に当接する状態になり、ストロボ発光部83を回動させ、照射光軸方向を通常撮影状態での方向DA からマクロ撮影に対応した下方の方向DB に変化させる。
【0072】上述のように本変形例のカムリング81の適用した撮影レンズ装置によれば、マクロ撮影時のストロボ発光部の照射光軸を下方、すなわち、撮影レンズの光軸Oに接近する方向に向けるように変化させることができ、マクロ撮影を良好な配光状態で行うことができる。なお、上記撮影レンズ装置ではストロボの照射方向を変化させるようにしたが、これに限らず、光軸方向が可変のファインダに対してパララックス補正のために、カムリングの回動に伴いファインダ光軸を変化させるようにしてもよい。
【0073】次に、前記図2に示した撮影レンズ装置101が組み込まれ、前記図1に示した構成を有する本実施形態のバリア付き電子スチルカメラ51について説明する。図21は、上記カメラを裏側から見た外観の斜視図である。図22、および、図23は、それぞれレンズバリア52の閉鎖状態と開放状態のカメラの正面図である。
【0074】本カメラ51の前面部には、撮影レンズ31を閉鎖位置P52A 、または、開放位置P52B にスライド移動可能なバリア52を有しており、その開閉動作に連動してカメラに内蔵されたバリアスイッチ105がオンオフする。該バリアスイッチ105の出力信号は、モータ,ソレノイド等の駆動制御を行うシステムコントローラ103に入力される。さらに、カメラ51の前面部には、ファインダ窓53とストロボ窓54が配設されている。
【0075】カメラ51の裏面部には、ファインダ56と、CCD撮像画像のスルー画面である撮影画像や撮像済みの再生画像、または、各種文字情報等を表示するLCDモニタ57と、上記LCDモニタ57のオンオフを指示するスイッチとして働き、上記LCDモニタ57の右側であって、ホールドした右手の親指で操作し易い位置にあるLCDスイッチ58と、画像再生時に再生コマを選択するコマ選択スイッチ59とが配設されている。
【0076】上記カメラ51の上面部には、ホールドした手の人差し指で操作できるレリーズスイッチ55と、マクロ撮影を指示するマクロスイッチ60と、その他の操作スイッチ等が配設されている。また、カメラ左側面部には別のバッテリが接続可能な外部電源コネクタ61と、パーソナルコンピュータ等との通信用コネクタ62とが配設されている。
【0077】なお、このようにカメラの裏面側からみて左側にケーブル類が接続される外部電源コネクタ61や通信コネクタ62が配置されていることにより、ケーブルが接続された状態で右手でカメラをホールディングするときに上記ケーブルが邪魔にならないようになっている。
【0078】上述のように本カメラ51では、バリア52に連動するバリアスイッチ105の出力を用いてバリア52の開閉状態を検出し、バリア52が開いているときは撮影モードが選択され、バリアが閉じており、さらに、LCDスイッチ58がオンされると再生モードが自動的に選択されるため、モード設定がスムーズにしかも簡単に行え、使い易くなっている。なお、LCDスイッチ58を操作することによって、撮影モード、または、再生モードを選択するようにして、LCDモニタ57にCCDで撮像されたスルー画面を表示するか、あるいは、メモリに記録されている画像データの再生画面を表示するかを選択してもよい。
【0079】図24のフローチャートを用いて本バリア付き電子スチルカメラ51の撮影/再生のシーケンスについて説明すると、電池が装填されると、上記シーケンス処理がスタートし、ステップS10でバリア開状態であるかどうかをバリアスイッチ105の出力信号により判別する。バリア閉状態であれば、ステップS11に進み、バリア開状態であれば、撮影画像データをメモリ106に記録する撮影モードが選択され、ステップS16にジャンプする。
【0080】上記ステップS11では、LCDスイッチ58が押圧されているかを判別し、押圧されていなければ、上記ステップS10に戻る。バリア52閉状態では常にこのLCDスイッチ58を常にウォッチングしていることになる。LCDスイッチ58が押圧されていれば、再生モードであるとして、LCDモニタ57をオンとする(ステップS12)。
【0081】再生モードではLCDスイッチ58は、電気的にトグルスイッチとして作用するので、指を一旦離してもLCDモニタ57はオン状態を保つ。そして、最新の撮影済み画像からコマ再生を行う(ステップS13)。LCDスイッチ58がオンである限りコマ再生を続ける(ステップS14)。なお、再生時での再生コマの選択は、コマ選択スイッチ59で行うことができる。LCDスイッチ58がもう一度押圧され、オフとなると、ステップS15に進み、LCDモニタ57をオフにして本ルーチンを終了する。
【0082】一方、撮影モードが選択され、ステップS16にジャンプした場合は、まず、撮影レンズのリセットを行う。ステップS17ではバリアの閉状態をバリアスイッチ105の出力でチェックし、閉じていれば、そのまま本ルーチンを終了する。閉状態でなければ、LCDスイッチ58の状態をチェックする(ステップS18)。
【0083】LCDスイッチ58がオフであれば、LCDモニタ57をオフとし(ステップS23)、後述するステップS24に進み、以後、LCDモニタ57のオフの状態でレリーズスイッチ55のオン操作待ちの状態になる。
【0084】上記LCDスイッチ58のチェックでオンの場合、LCDモニタ57がファインダとして機能する状態での撮影が行われる。なお、このLCDモニタ57は、LCDスイッチ58が押圧されている状態の間だけがファインダ状態、すなわち、被写体像を表示する状態となり、該スイッチ58から手を離すとLCDモニタ57はオフとなる。そのため、該スイッチ58は、前述したようにホールドした右手の親指で操作し易い位置にある。この操作によって、比較的大きい電力を必要とするLCDモニタ57を不必要のときはできるだけオフ状態に保ち、節電を行うことができる。
【0085】その後、ステップS19に進み、前記カムリング2によりパンフォーカシング位置に撮影レンズを移動させ、測光を行い、CCDシャッタ調節を行う(ステップS20,S21)。CCDで撮像されたスルー画像をLCDモニタ57に表示し(ステップS22)、ステップS24でレリーズスイッチ55のオン待ちの状態になる。
【0086】レリーズスイッチ55のオンに伴い、カムリング2が回動し、AF位置に鏡枠3を駆動し、測光を行う(ステップS25,S26)。さらに、カムリング2による絞り駆動が行われ、上記AF(合焦)位置に鏡枠3が駆動される(ステップS27,S28)。その後、シャッタを駆動し、露光を行って(ステップS29)、絞りリセット処理の後(ステップS30)、ステップS16に戻る。なお、そこで、バリア閉が検出されると本ルーチンを終了する。
【0087】以上説明したように本カメラ51によると、従来の電子スチルカメラでは、撮影モード,再生モード切り換え用の操作スイッチが必要であったが、バリアの開閉に連動するバリアスイッチ105を適用することによって、スムーズにLCDモニタ57を再生用、または、撮影用に切り換え、再生モード、または、撮影モードの選択が可能になる。
【0088】なお、カメラ51を左手でホールドすることも考慮し、LCDスイッチ58′をLCDモニタ57の左側に配置して、左手の親指でLCDスイッチ58′を押圧しながら、右手の人指し指でレリーズスイッチ55を操作するように構成してもよい。
【0089】なお、上記カメラがマニュアルフォーカス式の電子スチルカメラであった場合は、図24の撮影シーケンスのフローチャートのうち、ステップS25からS28間での処理が図25のフローチャートに示すステップS31からS33に入れ代えられ、撮影が実行される。
【0090】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の電子的撮像装置によれば、上記電子的撮像装置においては、上記レンズバリアの開閉切り換え動作に連動して撮影モードと再生モードの切り換えが行われるようにしたので、従来の電子スチルカメラのようにモード切り換え専用のスイッチを設ける必要がなく、配設スペ−ス上もコスト上も有利になる。同時に、撮影時には必ずレンズバリア開放動作を行うので、必然的にモードが撮影モードに切り換えられ専用のモード切り換えスイッチを操作するなどの使用者に余分の手間を取らせない。さらに、再生モードの状態であるにもかかわらず、再生画面を見ながらレリーズ釦を押圧してしまうなどの不具合が発生しにくい。
【0091】本発明の請求項2記載の電子的撮像装置によれば、表示器動作用のスイッチ機構の切り換え操作によって、撮影モードと再生モードとが切り換えられるので、専用のモード切り換えスイッチを操作するなどの使用者に余分の手間を取らせない。さらに、再生モードの状態であるにもかかわらず、再生画面を見ながらレリーズ釦を押圧すなどの不具合が発生しにくい。また、専用のモード切り換えスイッチを不要とすることから、スペ−ス上も、コスト上も有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の電子的撮像装置であるバリア付き電子スチルカメラの主要ブロック構成図。
【図2】図1のカメラに組み込まれる撮影レンズ装置の分解斜視図。
【図3】図2の撮影レンズ装置に組み込まれる鏡枠部の分解斜視図。
【図4】図2の撮影レンズ装置のカムリング装着状態の縦断面図。
【図5】図4のA−A′断面図。
【図6】図2の撮影レンズ装置の鏡枠の縦断面図。
【図7】図2の撮影レンズ装置の鏡枠の絞り板周りの縦断面図。
【図8】図2の撮影レンズ装置の絞り板等の光学系部材とソレノイド,モータ等の駆動源の配置状態を示す被写体側から見た断面図。
【図9】図8のA−A′断面図。
【図10】図2の撮影レンズ装置の鏡枠を被写体側から見た状態での絞り板,カムリングの動作状態を示す断面図。
【図11】図2の撮影レンズ装置の鏡枠を被写体側から見た状態でのシャッタ羽根の動作状態を示す断面図。
【図12】図2の撮影レンズ装置のカムリングの展開図。
【図13】図2の撮影レンズ装置におけるソレノイドのプランジャストロ−ク、または、経過時間に対するシャッタの光量の変化を示す図。
【図14】図2の撮影レンズ装置におけるソレノイドのプランジャストロ−クに対するシャッタの開口面積の変化を示す図。
【図15】図2の撮影レンズ装置のカムリングの変形例を示すカムリング展開図。
【図16】図2の撮影レンズ装置のカムリングの別の変形例を示すカムリング展開図。
【図17】図2の撮影レンズ装置のカムリングに代えて適用されるカム環を組み込んだ撮影レンズ装置の主要部の縦断面図。
【図18】図17の撮影レンズ装置の主要部の斜視図。
【図19】図2の撮影レンズ装置のカムリングの変形例のものを組み込んだ撮影レンズ装置とストロボ装置を被写体側から見た断面図。
【図20】図19のA−A′断面図。
【図21】図1のバリア付き電子スチルカメラを裏面側から見た外観の斜視図。
【図22】図21のカメラのバリア閉鎖状態の正面図。
【図23】図21のカメラのバリア開放状態の正面図。
【図24】図1のバリア付き電子スチルカメラの撮影/再生のシーケンスのフローチャート。
【図25】図24のカメラの変形例であって、マニュアルフォーカスカメラにおける撮影シーケンスの一部。
【図26】従来の撮影レンズ装置の直線状羽根のシャッタ羽根の構造を示す図。
【図27】図26の従来のシャッタ羽根によるソレノイドのプランジャストロ−ク、または、経過時間に対する光量変化を示す線図。
【符号の説明】
31,32……撮影レンズ
52 ……レンズバリア
57 ……LCDモニタ(表示器)
58 ……LCDスイッチ(スイッチ機構)
101……撮影レンズ装置(撮像手段)
102……撮影信号処理部(撮像手段)
104……再生信号処理部(再生信号処理手段)
105……バリアスイッチ(モード切り換え手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】撮影レンズを介して像面に結像された被写体を光電変換して撮像信号処理する撮像手段を動作させる撮影モードと、映像信号を表示器に供給するための再生信号処理手段を動作させる再生モードとを切り換えて動作させるモード切り換え手段を有する電子的撮像装置において、上記モードを切り換え動作を上記撮影レンズを不使用時にカバーをするためのレンズバリアの開閉切り換え動作に連動させて切り換えることを特徴とする電子的撮像装置。
【請求項2】撮影レンズを介して像面に結像された被写体を光電変換して撮像信号処理をする撮像手段を動作させる撮像モードと、映像信号を表示器に供給するための再生信号処理手段を動作させる再生モードとを切り換えて動作させるモード切り換え手段を有する電子的撮像装置において、上記モード切り換え動作を上記表示器を動作させるためのスイッチ機構で行うことを特徴とする電子的撮像装置。
【請求項1】撮影レンズを介して像面に結像された被写体を光電変換して撮像信号処理する撮像手段を動作させる撮影モードと、映像信号を表示器に供給するための再生信号処理手段を動作させる再生モードとを切り換えて動作させるモード切り換え手段を有する電子的撮像装置において、上記モードを切り換え動作を上記撮影レンズを不使用時にカバーをするためのレンズバリアの開閉切り換え動作に連動させて切り換えることを特徴とする電子的撮像装置。
【請求項2】撮影レンズを介して像面に結像された被写体を光電変換して撮像信号処理をする撮像手段を動作させる撮像モードと、映像信号を表示器に供給するための再生信号処理手段を動作させる再生モードとを切り換えて動作させるモード切り換え手段を有する電子的撮像装置において、上記モード切り換え動作を上記表示器を動作させるためのスイッチ機構で行うことを特徴とする電子的撮像装置。
【図1】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図12】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図26】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図25】
【図27】
【図24】
【図3】
【図2】
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【図5】
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【図11】
【図13】
【図14】
【図12】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
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【図26】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図25】
【図27】
【図24】
【公開番号】特開平10−56589
【公開日】平成10年(1998)2月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−212731
【出願日】平成8年(1996)8月12日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【公開日】平成10年(1998)2月24日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)8月12日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
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