説明

電子秤

【課題】A/D変換器における変換速度の設定の自由度を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】電子秤1は、ロードセル11と、サンプルホールド回路13と、A/D変換器15とを備える。ロードセル11は、自身が受けた荷重に応じた荷重信号を間欠的に生成して出力する。サンプルホールド回路13は、ロードセル11から間欠的に出力される荷重信号を保持して、連続的な荷重信号を出力する。A/D変換器15は、サンプルホールド回路13から出力される連続的な荷重信号をデジタル信号に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードセルを備える電子秤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロードセルを備える電子秤に関して様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、荷重を示すアナログ形式の荷重信号を出力するロードセルと、当該荷重信号にフィルタ処理を行うローパスフィルタと、フィルタ処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とが開示されている。
【0003】
特許文献1の技術では、消費電力削減の観点から、ロードセルには間欠的に電流が流れ、ロードセルは、荷重信号を間欠的に出力する。そして、特許文献1の技術では、ロードセルの間欠動作とA/D変換器の変換動作とを同期させることによって、ロードセルから間欠的に出力される荷重信号をデジタル信号に変換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−51526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1に記載の技術では、A/D変換器の変換動作を、ロードセルの間欠動作に同期させていることから、A/D変換器の変換速度を自由に設定することができない。例えば、A/D変換器の変換速度を大きくするために、ロードセルの間欠動作の間隔を短くすると、ロードセルの消費電力が増加してしまうため、A/D変換器の変換速度を自由に大きくできない。
【0006】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、A/D変換器における変換速度の設定の自由度を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、電子秤であって、自身が受けた荷重に応じた荷重信号を間欠的に生成して出力するロードセルと、前記ロードセルから間欠的に出力される前記荷重信号を保持して、連続的な前記荷重信号を出力するサンプルホールド回路と、前記サンプルホールド回路から出力される前記連続的な前記荷重信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを備える。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の電子秤であって、前記デジタル信号に基づいて前記荷重を求める算出部と、前記算出部で求められた前記荷重を表示する表示部と、前記ロードセル、前記サンプルホールド回路、前記A/D変換器及び前記算出部を含む荷重取得部における前記荷重を取得する動作を停止するスリープ制御を間欠的に行うスリープ制御部とをさらに備え、前記スリープ制御部は、前記スリープ制御を間欠的に行う際に、前記算出部が求める前記荷重の変化量が、しきい値よりも小さい場合には、1回の前記スリープ制御を第1の時間行い、前記スリープ制御を間欠的に行う際に、前記算出部が求める前記荷重の変化量が、前記しきい値よりも大きい場合には、1回の前記スリープ制御を前記第1の時間よりも短い第2の時間行う。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の電子秤であって、前記荷重取得部は、前記ロードセルから出力される前記荷重信号を増幅する増幅器と、前記サンプルホールド回路から出力される前記連続的な前記荷重信号に対してフィルタ処理を行うローパスフィルタとをさらに含み、前記サンプルホールド回路は、前記増幅器から間欠的に出力される前記荷重信号を保持して、前記連続的な前記荷重信号を出力し、前記A/D変換器は、前記フィルタ処理後の前記連続的な前記荷重信号を前記デジタル信号に変換する。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項2及び請求項3のいずれか一つに記載の電子秤であって、前記スリープ制御部は、前記算出部が求める前記荷重の変化量が前記しきい値よりも小さい状態が、所定時間よりも長く続くと、前記第1の時間を長くする。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか一つに記載の電子秤であって、前記表示部と通信を行って、前記算出部で求められた前記荷重を前記表示部に通知する通信部を備え、前記通信部は、前記算出部において前記荷重が求められたときにだけ前記表示部と通信して、前記荷重を前記表示部に通知する。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項1に記載の電子秤であって、前記サンプルホールド回路から出力される前記連続的な前記荷重信号に対してフィルタ処理を行うローパスフィルタと、前記デジタル信号に基づいて前記荷重を求める算出部とをさらに備え、前記A/D変換器は、前記フィルタ処理後の前記連続的な前記荷重信号を前記デジタル信号に変換する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至請求項6に係る発明によれば、A/D変換器には、連続的な荷重信号が入力されることから、A/D変換器は、ロードセルの間欠動作と独立して変換動作を行うことができる。よって、A/D変換器の変換速度の設定の自由度を高めることができる。
【0014】
特に、請求項2及び請求項3に記載の発明によれば、ロードセルが検出する荷重の変化量が小さく、当該荷重が安定している場合には、1回のスリープ制御が行われる時間が長いため、電子秤の消費電力を抑えることができる。さらに、ロードセルが検出する荷重の変化量が大きい場合には、1回のスリープ制御が行われる時間が短いため、ロードセルが検出する荷重の変化に応じて、表示部が表示する荷重を更新することができる。よって、表示部ではより自然な形で荷重が変化する様子を表示することができる。
【0015】
特に、請求項4に記載の発明によれば、スリープ制御部は、算出部が求める荷重の変化量がしきい値よりも小さい状態が、所定時間よりも長く続くと、1回のスリープ制御が行う時間を長くするため、電子秤の消費電力をさらに低減することができる。
【0016】
特に、請求項5に記載の発明によれば、通信部は、荷重が求められたときにだけ表示部と通信するため、電子秤の消費電力をさらに低減することができる。
【0017】
特に、請求項6に記載の発明によれば、ローパスフィルタは、連続的な荷重信号をフィルタ処理することから、ローパスフィルタから出力される荷重信号では、安定するまでに必要な時間が短くなる。したがって、後段のA/D変換器は、安定した荷重信号をすぐにデジタル信号に変換することができる。よって、正確な荷重をすぐに求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係る電子秤の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る電子秤の動作を示す図である。
【図3】実施の形態に係る電子秤の動作を示す図である。
【図4】実施の形態に係る電子秤の動作を示す図である。
【図5】実施の形態に係る電子秤の動作を示す図である。
【図6】実施の形態に係る電子秤の動作を示す図である。
【図7】実施の形態に係る電子秤の動作を示す図である。
【図8】実施の形態に係る電子秤の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係る電子秤1の構成を示す図である。本実施の形態に係る電子秤1は、ロードセル11と、差動アンプ12と、サンプルホールド回路13と、ローパスフィルタ14と、A/D変換器15と、表示部16と、スイッチ素子17と、これらを統括的に制御する制御部18と、計量皿(図示しない)とを備える。制御部18は、例えば、CPUなどから構成されており、算出部19、スリープ制御部20及び通信部21を機能ブロックとして有する。
【0020】
この電子秤1の概略について説明する。被計量物(図示しない)が計量皿に載置されると、ロードセル11は、計量皿を介して被計量物から荷重を受ける。ロードセル11は、当該荷重に応じたアナログ形式の信号(以下、「荷重信号」と呼ぶ)を間欠的に出力する。差動アンプ12は、ロードセル11から出力される信号を増幅し、それによって得られる信号をサンプルホールド回路13に出力する。サンプルホールド回路13は、差動アンプ12から出力される間欠的な荷重信号を一定時間保持することによって時間的に連続的な荷重信号を生成してローパスフィルタ14に出力する。ローパスフィルタ14は、サンプルホールド回路13から出力される連続的な荷重信号にフィルタ処理を施し、フィルタ処理後の荷重信号をA/D変換器15に出力する。A/D変換器15は、フィルタ処理後の荷重信号をデジタル信号に変換して制御部18に出力する。制御部18では、算出部19が、このデジタル信号に基づいて、ロードセル11が受けた荷重、つまり、被計量物の重量を求める。算出部19で求められた荷重は通信部21から表示部16に通知される。表示部16は、通知された荷重、つまり被計量物の重量を表示する。
【0021】
本実施の形態に係る電子秤1では、A/D変換器15が、ロードセル11の上述のような間欠動作と独立して変換動作を行うことが可能である。以下、このような電子秤1の電子秤1の各構成について詳細に説明する。
【0022】
ロードセル11は、起歪体31と、4つの歪みゲージ32ca,32cb,32ta,32tb(以下、「複数の歪みゲージ32」と呼ぶ)とを備える。電子秤1の計量皿に被計量物が載置されると、起歪体31が当該被計量物の重量に応じて歪む。歪みゲージ32ca,32cbのそれぞれは、被計量物が計量皿に載置された際に、起歪体31において圧縮歪みが発生する箇所に貼り付けられる。一方で、歪みゲージ32ta,32tbのそれぞれは、被計量物が計量皿に載置された際に、起歪体31において引っ張り歪みが発生する箇所に貼り付けられる。複数の歪みゲージ32は、ホイートストンブリッジ回路を構成しており、複数の歪みゲージ32のそれぞれの抵抗値は、起歪体31が歪むと当該被計量物の荷重に応じて変化する。歪みゲージ32ca,32cbの一方端は互いに接続されており、歪みゲージ32ta,32tbの一方端は互いに接続されており、歪みゲージ32ca,32taの他方端は互いに接続されており、歪みゲージ32cb,32tbの他方端は互いに接続されている。
【0023】
互いに接続された歪みゲージ32ca,32cbの一方端にはプラスの供給電圧V0が印加され、互いに接続された歪みゲージ32ta,32tbの一方端には、スイッチ素子17の一端が接続されている。そして、スイッチ素子17の他端は接地されている。これにより、スイッチ素子17がオン状態のときには、互いに接続された歪みゲージ32ta,32tbの一方端が接地され、スイッチ素子17がオフ状態のときには、互いに接続された歪みゲージ32ta,32tbの一方端はフローティングとなる。
【0024】
スイッチ素子17のオン/オフは制御部18によって切り替えられる。制御部18は、本電子秤1の消費電力を低減させるための後述のスリープ制御を行っていない最中には、所定の周期でスイッチ素子17のオン/オフを交互に切り替える。これにより、ロードセル11には間欠的に電流が流れるようになり、ロードセル11が間欠動作を行う。よって、電子秤1の消費電力が低減される。
【0025】
ロードセル11は、互いに接続された歪みゲージ32ca,32taの他方端での電圧と、互いに接続された歪みゲージ32cb、32tbの他方端での電圧とを、一対の出力信号として差動アンプ12に出力する。以後、互いに接続された歪みゲージ32ca,32taの他方端での電圧を「出力信号S1」と呼び、互いに接続された歪みゲージ32cb,32tbの他方端での電圧を「出力信号S2」と呼ぶ。したがって、ロードセル11からは一対の出力信号S1,S2が出力される。
【0026】
スイッチ素子17がオン状態にある場合には、ロードセル11からの一対の出力信号S1,S2のそれぞれの電圧は、起歪体31の歪みに応じた値、つまりロードセル11が受ける荷重に応じた値を示す。そのため、スイッチ素子17がオン状態にある場合には、ロードセル11からの一対の出力信号S1,S2は、荷重信号S10となる。そして、スイッチ素子17のオン/オフは交互に切り替えられるため、ロードセル11は、荷重信号S10を間欠的に出力する。
【0027】
図2は、以上のように構成されるロードセル11の出力信号S1,S2の一例を示す図である。この図において、tONは、制御部18によってスイッチ素子17がオン状態にされている期間(以下、「オン期間」と呼ぶ)を示し、tOFFは、制御部18によってスイッチ素子17がオフ状態にされている期間(以下、「オフ期間」と呼ぶ)を示す。オン期間tON及びオフ期間tOFFのそれぞれは、計量皿に被計量物が載置されてからロードセル11の出力信号S1,S2が安定するまでに必要な時間よりも十分に短く設定されている。図2では、計量皿に被計量物が載置されてからロードセル11の出力信号S1,S2が安定するまでの間の当該出力信号S1,S2を示している。以後、被計量物が計量皿に載置されていない期間を非搭載期間T0、被計量物が計量皿に載置されてからロードセル11の出力信号S1,S2が安定するまでの期間を過渡期間T1、ロードセル11の出力信号S1,S2が安定している期間を安定期間T2とする。なお、後述するように、非搭載期間T0から安定期間T2までの間には、後述のスリープ制御が行われるが、ここでは簡単のため、スリープ制御が行われないと仮定して説明する。
【0028】
オフ期間tOFFにおいては、ロードセル11は、自身に供給される供給電圧V0と同じ電圧を有する一対の出力信号S1,S2を出力する。
【0029】
一方、オン期間tONにおいては、ロードセル11は、荷重信号S10を出力する。非搭載期間T0においては、荷重信号S10を構成する一対の出力信号S1,S2の電圧のそれぞれは、互いに同じ値となり、この値を基準電圧VSと呼ぶ。ロードセル11が荷重を受けている場合(過渡期間T1及び安定期間T2)には、荷重信号S10では、一方の出力信号S1の電圧は基準電圧VSよりも大きくなり、他方の出力信号S2の電圧は基準電圧VSよりも小さくなる。そして、ロードセル11が受けた荷重が大きくなればなるほど、荷重信号S10では、一方の出力信号S1の電圧はより大きくなり、他方の出力信号S2の電圧はより小さくなる。つまり、ロードセル11が受けた荷重が大きくなればなるほど、荷重信号S10では、一対の出力信号S1,S2の電圧差が大きくなる。
【0030】
図3は、図2に示すロードセル11の出力信号S1,S2が差動アンプ12に入力される際の差動アンプ12の出力信号S12を示す図である。差動アンプ12は、ロードセル11からの一対の出力信号S1,S2を差動増幅し、つまり、当該一対の出力信号S1,S2の差を増幅し、それによって得られる信号を出力信号S12として出力する。
【0031】
非搭載期間T0にロードセル11から出力される、互いに同じ電圧の一対の出力信号S1,S2が差動アンプ12に入力されると、図3に示されるように、差動アンプ12の出力信号S12は零となる。
【0032】
また、荷重信号S10が差動アンプ12に入力されると、差動アンプ12は、荷重信号S10を差動増幅して出力信号S12として出力する。この出力信号S12を「荷重信号S20」と呼ぶ。つまり、差動増幅後の荷重信号S10が荷重信号S20となる。本実施の形態では、荷重信号S10が差動アンプ12に間欠的に入力されるため、差動アンプ12は、荷重信号S20を間欠的に出力する。図3に示されるように、過渡期間T1においては、差動アンプ12から間欠的に出力される荷重信号S20は徐々に大きくなり、安定期間T2においては、差動アンプ12から間欠的に出力される荷重信号S20はほぼ一定となる。
【0033】
図4は、図3に示す差動アンプ12の出力信号S12がサンプルホールド回路13に入力される際のサンプルホールド回路13の出力信号S13を示す図である。本実施の形態に係るサンプルホールド回路13は、差動アンプ12からの荷重信号S20が入力されると、当該荷重信号S20を、次の荷重信号S20が入力されるまで保持し、保持している荷重信号S20を出力する。これにより、荷重信号S20がサンプルホールド回路13に間欠的に入力されると、サンプルホールド回路13は、図4に示されるように、時間的に連続的な荷重信号S30を出力信号S13として出力することになる。
【0034】
サンプルホールド回路13からの出力信号S13には、一般に、電子秤1周辺の機械的な振動等により、ノイズ信号が重畳されている。ローパスフィルタ14は、サンプルホールド回路13の出力信号S13からノイズ信号を除去するフィルタ処理を行う。
【0035】
図5は、図4に示すサンプルホールド回路13の出力信号S13がローパスフィルタ14に入力される際のローパスフィルタ14の出力信号S14を示す図である。一般的に、ローパスフィルタは、入力信号を、それに含まれる高い周波数成分を除去して出力することから、ローパスフィルタからは、入力信号において信号レベルの変化をなだらかにした信号が出力される。したがって、サンプルホールド回路13から連続的な荷重信号S30がローパスフィルタ14に入力されると、ローパスフィルタ14は、当該荷重信号S30において信号レベルの変化をなだらかにした信号を出力する。この信号を「荷重信号S40」と呼ぶ。
【0036】
A/D変換器15は、ローパスフィルタ14からの出力信号S14をデジタル信号に変換して出力する。これにより、A/D変換器15では、ローパスフィルタ14から出力される連続的な荷重信号S40がデジタル信号に変換される。
【0037】
ここで、本実施の形態に係る電子秤1と比較される、図1のブロック構成からサンプルホールド回路13が取り除かれた電子秤(以下、「比較対象電子秤」と呼ぶ)について説明する。このような比較対象電子秤では、差動アンプ12からの間欠的な荷重信号S20(図3)が、ローパスフィルタ14に入力される。そうすると、ローパスフィルタ14は、入力された荷重信号S20において信号レベルの変化をなだらかにした信号を出力する。この信号を「荷重信号S50」とする。
【0038】
図6は図3に示す差動アンプ12の出力信号S12が比較対象電子秤のローパスフィルタ14に入力された際のローパスフィルタ14の出力信号S24を示す図である。図6に示されるように、ローパスフィルタ14からは、間欠的に荷重信号S20が入力されるたびに、荷重信号S20において信号レベルの変化をなだらかにした信号が荷重信号S50として出力される。そのため、後段のA/D変換器15が、荷重信号50をデジタル信号に変換するためには、ローパスフィルタ14が荷重信号50を出力するタイミングに合わせて変換動作を行う必要がある。言い換えれば、A/D変換器15は、ロードセル11の間欠動作に合わせて変換動作を行う必要がある。
【0039】
これに対して、本実施の形態では、A/D変換器15には、フィルタ処理後の連続的な荷重信号S20、つまり連続的な荷重信号S30が入力されることから、A/D変換器15は、どのようなタイミングにおいても変換動作を行うことができる。つまり、A/D変換器15は、ロードセル11の間欠動作と独立して変換動作を行うことができる。よって、A/D変換器15の変換速度の設定の自由度を高めることができる。
【0040】
また、比較対象電子秤のローパスフィルタ14には、荷重信号S20が間欠的に入力されるため、図6に示されるように、荷重信号S20の変化量が大きくなる。したがって、ローパスフィルタ14から出力される荷重信号S50が安定するまでに必要な時間が長くなる。よって、A/D変換器15での荷重信号S50に対するサンプリングタイミングがずれると、十分に安定していない状態の荷重信号S50をサンプリングする可能性が高くなる。その結果、算出部19で求められる荷重の精度が劣化することがある。
【0041】
これに対して、本実施の形態に係る電子秤1では、ローパスフィルタ14には、サンプルホールド回路13で生成された連続的な荷重信号S30が入力されることから、図4に示されるように、荷重信号S30の変化量を抑えることができる。特に、安定期間T2においては、荷重信号S30はほぼ直流となる。よって、A/D変換器15での荷重信号S30に対するサンプリングタイミングがずれた場合であっても、十分に安定した状態の荷重信号S30をサンプリングすることができる。その結果、算出部19で求められる荷重の精度を高めることができる。
【0042】
図1に戻って、A/D変換器15から出力されるデジタル信号は制御部18に入力される。制御部18の算出部19は、A/D変換器15からのデジタル信号に基づいて、ロードセル11が受けた荷重、つまり計量皿に搭載された被計量物の重量を求める。通信部21は、表示部16と通信を行って、算出部19で求められた荷重を表示部16に通知する。スリープ制御部20は、本電子秤1の消費電力を低減するためにスリープ制御を行う。なお、スリープ制御については後で詳細に説明する。表示部16は、通信部21から荷重が通知されると、当該荷重を表示する。これにより、ユーザは、表示部16の表示を確認することによって、計量皿に搭載された被計量物の重量を知ることができる。
【0043】
<スリープ制御>
次に制御部18が行うスリープ制御について説明する。制御部18のスリープ制御部20は、本電子秤1の消費電力を低減するためにスリープ制御を間欠的に行う。以後、スリープ制御部20がスリープ制御を行っていない場合の制御部18の動作を通常動作と呼ぶ。したがって、制御部18では、通常動作及びスリープ制御が繰り返して行われる。また、制御部18においてスリープ制御が解除される間隔、言い換えれば、制御部18が通常動作を行う間隔を「起床間隔」と呼ぶ。本実施の形態では、1回の通常動作が行われる時間(以後、「通常動作時間」と呼ぶ)は常に一定であり、1回のスリープ制御が行われる時間(以後、「スリープ時間」と呼ぶ)は常に一定ではなく変化する。よって、本実施の形態では、起床間隔が変化する。
【0044】
スリープ制御においては、ロードセル11、差動アンプ12、サンプルホールド回路13、ローパスフィルタ14、A/D変換器15、及び、算出部19で構成される荷重取得部100(図1参照)での荷重を求める動作が停止される。本実施の形態では、スリープ制御部20は、ロードセル11、差動アンプ12、サンプルホールド回路13、ローパスフィルタ14、A/D変換器15、及び、算出部19のすべての動作を停止させることによって、荷重取得部100での荷重を求める動作を停止する。なお、ロードセル11、差動アンプ12、サンプルホールド回路13、ローパスフィルタ14、A/D変換器15、及び、算出部19の少なくとも一つの動作を停止させれば、荷重取得部100では荷重を求めることができない。したがって、スリープ制御部20は、ロードセル11、差動アンプ12、サンプルホールド回路13、ローパスフィルタ14、A/D変換器15、及び、算出部19の少なくとも一つの動作を停止させることによって、荷重取得部100での荷重を求める動作を停止しても良い。
【0045】
スリープ制御部20は、ロードセル11の動作を停止する際にはスイッチ素子17をオフ状態にする。また、スリープ制御部20は、電源供給を停止するなどによって、差動アンプ12、サンプルホールド回路13、ローパスフィルタ14及びA/D変換器15のそれぞれの動作を停止する。
【0046】
制御部18は、通常動作を行う際に、つまりスリープ制御部20がスリープ制御を行っていない際に、上述のように、ロードセル11を間欠的に動作させて、ロードセル11が受ける荷重を算出する。本電子秤1では、通常動作時間の間に複数回荷重が求められるようになっている。
【0047】
ここで、計量皿に被計量物が搭載されると、ロードセル11が検出する荷重は零から上昇して一定値に落ち着くことになる。この際、スリープ時間が長いと、荷重取得部100では、多くの回数、過渡期間の荷重を求めることができず、荷重が変化する様子を自然な形で表示部16に表示することができない。一方で、スリープ時間を短くすると、スリープ制御による消費電力の低減効果が弱まってしまう。
【0048】
そこで、本実施の形態では、荷重取得部100が取得する荷重の変化量が小さい場合にはスリープ時間を長く設定し、当該荷重の変化量が大きい場合にはスリープ時間を短く設定する。これにより、ロードセル11が検出する荷重が安定している際には本電子秤1の消費電力を大きく低減することができるとともに、荷重取得部100では過渡的な荷重を多くの回数求めることができる。よって、本電子秤1の消費電力を低減しつつ、荷重が変化する様子を自然な形で表示部16に表示することができる。以下に、このことについて具体的に説明する。
【0049】
スリープ制御部20は、制御部18が通常動作を行うたびに、算出部19が求める荷重の変化量を求めて、当該変化量としきい値とを比較する。このしきい値は例えば、0.1gに設定される。そして、スリープ制御部20は、求めた荷重の変化量がしきい値よりも小さい場合には、スリープ時間を第1の時間tLとする。この第1の期間tLは200〜300msecであることが望ましい。一方で、スリープ制御部20は、求めた荷重の変化量が、当該しきい値よりも大きい場合にはスリープ時間を、第1の時間tLよりも短い第2の時間tSとする。この第2の時間tSは、20〜30msecであることが好ましい。なお、荷重の変化量がしきい値と一致する場合には、スリープ時間を第1の時間tL及び第2の時間tSのどちらに設定しても良い。本実施の形態では、荷重の変化量がしきい値と一致する場合には、例えばスリープ時間を第1の時間tLに設定するものとする。
【0050】
図7はスリープ制御部20の動作を説明するための図である。図7では、仮に荷重取得部100が連続動作した場合において、計量皿に被計量物が搭載される際に算出部19で求められる荷重(以後、「検出荷重」と呼ぶ)が変化する様子の一例が上側に示されている。また図7の下側においては、計量皿に被計量物が搭載される際にスリープ時間が変化する様子が、検出荷重の変化に対応付けられて示されている。なお、以下の説明では、被計量物が計量皿に搭載される前においては、スリープ時間が第1の時間tLに設定されているものとする。
【0051】
図7に示すように、時刻T11において計量皿に被計量物が搭載され、その後、時刻T12において、制御部18が、スリープ制御41を終了して通常動作42を開始すると、スリープ制御部20は、この通常動作42において、算出部19で求められる荷重の変化量を求める。そして、スリープ制御部20は、求めた変化量がしきい値以下の場合には、次のスリープ制御41におけるスリープ時間を第1の時間tLとし、しきい値よりも大きい場合には、次のスリープ制御41におけるスリープ時間を第2の時間tSとする。図7の例では、時刻T11においては、検出荷重は過渡的な状態であることから、時刻T11で開始する通常動作42においてスリープ制御部20で求められる荷重の変化量はしきい値よりも大きくなる。よって、時刻T13で開始するスリープ制御41でのスリープ時間は第2の時間tSとなる。
【0052】
その後、時刻T14において、制御部18が、スリープ制御41を終了して通常動作42を開始すると、スリープ制御部20は、この通常動作42においても、算出部19で求められる荷重の変化量を求める。そして、スリープ制御部20は、求めた変化量がしきい値以下の場合には、次のスリープ制御41におけるスリープ時間を第1の時間tLとし、しきい値よりも大きい場合には、次のスリープ制御41におけるスリープ時間を第2の時間tSとする。図7の例では、時刻T14においても、検出荷重は過渡的な状態であることから、時刻T14で開始する通常動作42においてスリープ制御部20で求められる荷重の変化量はしきい値よりも大きくなる。よって、時刻T15で開始するスリープ制御41でのスリープ時間は第2の時間tSとなる。以後、スリープ制御部20は、制御部18が通常動作を行うたびに、同様にしてスリープ時間を決定する。
【0053】
図7に示すように、時刻T16においては、検出荷重は安定している。したがって、時刻T16で開始する通常動作42においてスリープ制御部20で求められた荷重の変化量はしきい値以下となる。よって、時刻T17で開始するスリープ制御41でのスリープ時間は第1の時間tLとなる。以後、検出荷重は安定していることから、スリープ制御41でのスリープ時間は第1の時間tLとなる。
【0054】
ここで、本実施の形態に係るスリープ制御部20は、荷重の変化量がしきい値以下の状態が所定時間よりも長く続くと第1の時間tLを長くする。具体的には、スリープ制御部20は、荷重の変化量がしきい値以下となると、その時点から所定時間を計測する。そして、スリープ制御部20は、次の通常動作においても荷重の変化量がしきい値以下の場合には、所定時間が経過していないかを確認する。スリープ制御部20は、所定時間が経過していない場合には、第1の時間tLを変更せずに、それを次のスリープ制御41でのスリープ時間とする。一方で、スリープ制御部20は、所定時間が経過している場合には、第1の時間tLを長くして、例えば1.5倍にして、長くした第1の時間tLを次のスリープ制御でのスリープ時間とする。以後、スリープ制御部20は、制御部18が通常動作を行うたびに、同様の動作を行う。
【0055】
図7の例では、時刻T16で開始する通常動作において荷重の変化量がしきい値以下となる。そして、時刻T18で開始する通常動作において、スリープ制御部20は所定時間が経過したと判定する。したがって、スリープ制御部20は、第1の時間tLを長くして、長くした第1の時間tLを時刻T19で開始するスリープ制御41でのスリープ時間とする。よって、時刻T19で開始するスリープ制御41のスリープ時間が長くなっている。
【0056】
なお、以上では、図7を用いて、計量皿に被計量物が搭載される際のスリープ制御部20の動作について説明したが、計量皿から被計量物が取り除かれて検出荷重が小さくなる場合においても、スリープ制御部20は同様にしてスリープ時間を変更する。
【0057】
以上のような本実施の形態に係る電子秤1によれば、ロードセル11が検出する荷重の変化が小さく、当該荷重が安定している場合には、スリープ時間が長いため、電子秤1の消費電力を抑えることができる。さらに、ロードセル11が検出する荷重の変化量が大きい場合には、スリープ時間が短いため、ロードセル11が検出する荷重の変化に応じて、表示部16が表示する荷重を変更することができる。よって、電子秤1が荷重を表示する際に人が通常抱いている印象に合致した自然な形で、表示部16は荷重が変化する様子を表示することができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る電子秤1によれば、スリープ制御部20は、算出部19が求める荷重の変化量がしきい値よりも小さい状態が、所定時間よりも長く続くと、スリープ時間である第1の時間tLを長くするため、電子秤1の消費電力をさらに低減することができる。
【0059】
なお、制御部18の通信部21は、算出部19が荷重を求めたときにだけ表示部16と通信を行って、当該荷重を表示部16に通知することが望ましい。この場合には、スリープ時間が第1の時間tLに設定されて、スリープ時間が長い場合には、通信部21と表示部16との通信頻度を抑えることができる。その結果、電子秤1の消費電力がさらに低減する。
【0060】
また、スイッチ素子17のオン/オフを交互に切り替える周期が短いと、歪みゲージ32ca,32cb,32ta,32tbで発生する熱の変動が抑制される。そうすると、荷重信号が変動することできるため、スイッチ素子17の切り替える周期を短くすることが望ましい。
【0061】
また、上記の例では、制御部18が通常動作を行っている際には、ロードセル11を間欠動作させていたが、スリープ制御の利点だけを考慮すれば、制御部18が通常動作を行っている際には、スイッチ素子17を常にオン状態として、ロードセル11を常に動作させても良い。
【0062】
また、図8に示されるように、ロードセル11の複数の歪みゲージを2つの歪みゲージ32cb,32tbだけで構成しても良い。この場合には、歪みゲージ32cb,32tbの接続点の電圧がロードセル11からの出力信号となり、差動アンプ12の代わりに、入力端子が1つであるアンプ22が使用される。
【符号の説明】
【0063】
1 電子秤
11 ロードセル
12 差動アンプ
13 サンプルホールド回路
14 ローパスフィルタ
15 A/D変換器
16 表示部
19 算出部
20 スリープ制御部
21 通信部
41 スリープ制御
100 荷重取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身が受けた荷重に応じた荷重信号を間欠的に生成して出力するロードセルと、
前記ロードセルから間欠的に出力される前記荷重信号を保持して、連続的な前記荷重信号を出力するサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路から出力される前記連続的な前記荷重信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と
を備える電子秤。
【請求項2】
請求項1に記載の電子秤であって、
前記デジタル信号に基づいて前記荷重を求める算出部と、
前記算出部で求められた前記荷重を表示する表示部と、
前記ロードセル、前記サンプルホールド回路、前記A/D変換器及び前記算出部を含む荷重取得部における前記荷重を取得する動作を停止するスリープ制御を間欠的に行うスリープ制御部と
をさらに備え、
前記スリープ制御部は、
前記スリープ制御を間欠的に行う際に、前記算出部が求める前記荷重の変化量が、しきい値よりも小さい場合には、1回の前記スリープ制御を第1の時間行い、
前記スリープ制御を間欠的に行う際に、前記算出部が求める前記荷重の変化量が、前記しきい値よりも大きい場合には、1回の前記スリープ制御を前記第1の時間よりも短い第2の時間行う、電子秤。
【請求項3】
請求項2に記載の電子秤であって、
前記荷重取得部は、
前記ロードセルから出力される前記荷重信号を増幅する増幅器と、
前記サンプルホールド回路から出力される前記連続的な前記荷重信号に対してフィルタ処理を行うローパスフィルタと
をさらに含み、
前記サンプルホールド回路は、前記増幅器から間欠的に出力される前記荷重信号を保持して、前記連続的な前記荷重信号を出力し、
前記A/D変換器は、前記フィルタ処理後の前記連続的な前記荷重信号を前記デジタル信号に変換する、電子秤。
【請求項4】
請求項2及び請求項3のいずれか一つに記載の電子秤であって、
前記スリープ制御部は、前記算出部が求める前記荷重の変化量が前記しきい値よりも小さい状態が、所定時間よりも長く続くと、前記第1の時間を長くする、電子秤。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか一つに記載の電子秤であって、
前記表示部と通信を行って、前記算出部で求められた前記荷重を前記表示部に通知する通信部を備え、
前記通信部は、前記算出部において前記荷重が求められたときにだけ前記表示部と通信して、前記荷重を前記表示部に通知する、電子秤。
【請求項6】
請求項1に記載の電子秤であって、
前記サンプルホールド回路から出力される前記連続的な前記荷重信号に対してフィルタ処理を行うローパスフィルタと、
前記デジタル信号に基づいて前記荷重を求める算出部と
をさらに備え、
前記A/D変換器は、前記フィルタ処理後の前記連続的な前記荷重信号を前記デジタル信号に変換する、電子秤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−185887(P2011−185887A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54036(P2010−54036)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)