説明

電子装置

【課題】電子装置の防水ケースと呼吸フィルタの間のシールが不完全となることを防止し寿命を向上する。
【解決手段】液体の水は通過しないが気体は通過可能な特性をもつフィルタ膜と、フィルタ膜の防水ケース側に配置されフィルタ膜の周縁部と当接する第一のフィルタ膜取付部材と、フィルタ膜の防水ケースから遠い側に配置されフィルタ膜の周縁部と当接する第二のフィルタ膜取付部材とを備え、第一のフィルタ膜取付部材と第二のフィルタ膜取付部材が樹脂製であり、第一のフィルタ膜取付部材および第二のフィルタ膜取付部材がフィルタ膜の周縁部を挟みこむ配置で互いに溶着されてなり、防水ケース本体の少なくとも呼吸フィルタ部11近傍の材質は樹脂製であり、かつ、第一のフィルタ膜取付部材と防水ケース本体の少なくともフィルタ部近傍は一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路が形成された回路基板と、回路基板が収納される防水ケースを具備してなる電子装置に係り、特に、回路基板が収納される防水ケースの内外を呼吸させるために設けられている呼吸フィルタ部の取り付け構造の改善等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置として、エンジンルーム内搭載の車載電子制御装置等で、洗車時や雨天時等水のかかる状況が発生する頻度が高い電子装置においては、回路基板が防水ケース内に収納され、防水ケースに、当該防水ケースの内外を呼吸させケース内外の圧力差を解消するための呼吸フィルタ部が取り付けられているものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1記載の従来の電子装置においては、呼吸フィルタ部は、水等の液体の通過を阻止し、気体のみの通過を許す撥水性の機能繊維材からなるフィルタ膜と、フィルタ膜を覆いかつ防水ケース内外を呼吸させるための通気口が側面に設けられているキャップ部を具備し、さらにこの呼吸フィルタ部が防水ケースと別体に構成され、防水ケースにスナップフィット式に装着され、さらに、Oリングによって防水ケースと呼吸フィルタ部の隙間の気密シールを行っている。
【0004】
また、別の従来の電子装置においては、呼吸フィルタ部が、塵や液体の水は通過しないが気体は通過可能な特性をもつフィルタ膜と、フィルタ膜の防水ケース本体に近い側の面とフィルタ膜の周縁部において当接するケース側フィルタ膜取付部材と、フィルタ膜の防水ケース本体から遠い側の面とフィルタ膜の周縁部において当接する外側フィルタ膜取付部材と、を備え、さらに、ケース側フィルタ膜取付部材と外側フィルタ膜取付部材が樹脂製であり、ケース側フィルタ膜取付部材と外側フィルタ膜取付部材がフィルタ膜の周縁部を挟みこむ配置で互いに溶着されて固定されることによってフィルタ膜周縁部が気密シールされており、この呼吸フィルタ部がアルミニウムダイキャスト製の防水ケースに装着され、Oリングによって防水ケースと呼吸フィルタ部の隙間の気密シールを行っているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−252169号公報(第5頁、図1−図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電子装置では、呼吸フィルタ部と防水ケースとの間の気密シールにOリングを用いていたため、使用が長期にわたると、Oリングが経年劣化を起こして弾性が低下し、気密シールが不完全になることがある。この場合に防水ケース外部で水のかかる状況が発生すると、不完全となったシール部を通して防水ケース内部に水滴が浸入し、錆を生じさせたり、内部の機器の誤動作を引き起こしたりする可能性が生じるため、電子装置の寿命の向上が容易でないという問題点がある。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期の使用においても気密シールが不完全になることが無く、長寿命の電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、電子回路が形成された回路基板と、前記回路基板が収納される防水ケースを具備してなる電子装置であって、前記防水ケースは、その内外で空気を出入可能とする呼吸フィルタ部を備え、前記呼吸フィルタ部は、液体の水は通過しないが気体は通過可能な特性をもつフィルタ膜と、前記フィルタ膜の前記防水ケース本体に近い側に配置され前記フィルタ膜の周縁部と当接する第一のフィルタ膜取付部材と、前記フィルタ膜の前記防水ケース本体から遠い側に配置され前記フィルタ膜の周縁部と当接する第二のフィルタ膜取付部材と、を備え、前記第一のフィルタ膜取付部材および前記第二のフィルタ膜取付部材が前記フィルタ膜の周縁部を挟みこむ配置で固定されてなる電子装置において、前記第一のフィルタ膜取付部材と前記第二のフィルタ膜取付部材が樹脂製であり、前記フィルタ膜の周縁部を挟みこむ配置での前記固定は、前記第一のフィルタ膜取付部材および前記第二のフィルタ膜取付部材が互いに溶着されてなり、前記防水ケース本体の少なくとも呼吸フィルタ部近傍は樹脂製であり、前記第一のフィルタ膜取付部材と前記防水ケース本体の少なくともフィルタ部近傍は一体に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
前記第一のフィルタ膜取付部材と前記第二のフィルタ膜取付部材が樹脂製であり、前記フィルタ膜の周縁部を挟みこむ配置での前記固定は、前記第一のフィルタ膜取付部材および前記第二のフィルタ膜取付部材が互いに溶着されてなり、前記防水ケース本体の少なくとも呼吸フィルタ部近傍は樹脂製であり、前記第一のフィルタ膜取付部材と前記防水ケース本体の少なくともフィルタ部近傍は一体に形成されてなることにより、呼吸フィルタ部と防水ケースの間に隙間が無い構造であるため、長期の使用においても防水ケース内部への水滴の侵入を防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における電子装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の呼吸フィルタ部の拡大図である。
【図3】図1の呼吸フィルタ部近傍の組み立てた状態での拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図3を参照しつつ説明する。ただし、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0012】
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては同一の部材が示され、適宜説明が省略されている。
【0013】
本実施形態における電子装置は、図1に示すように、電子部品(図示省略)やコネクタ等を実装された回路基板7を防水ケースの内部に収納される構成となっている。防水ケースは、第一のケース3と第二のケース5からなり、第一のケース3と第二のケース5は、ねじ9で互いに適宜固定されて密閉される。第一のケース3と第二のケース5の嵌めあわせ部には、パッキンを挟みシール性を確実に確保する構成としてもよい。
【0014】
第一のケース3には防水ケース内外で空気を出入り可能とする呼吸フィルタ部11が設けられている。
【0015】
なお、本実施形態においては、呼吸フィルタ部の第一のケース上での位置は、周囲に比べ窪んだ部分に設けられているが、本発明の電子装置における呼吸フィルタ部は、ケースの平坦な部分に設けられてもよく、第一のケース上での設置場所は適宜変更可能である。
【0016】
図2は本実施形態における呼吸フィルタ部11を分解状態で拡大して示したものである。また、図3は本実施形態における呼吸フィルタ部11の組み立てた状態における縦断面図を示したものである。呼吸フィルタ部は、第一のフィルタ膜取付部材11a、フィルタ膜11b、第二のフィルタ膜取付部材11cを備えている。
【0017】
第一のフィルタ膜取付部材11aは、樹脂製であり、また、図2および図3に示すように、フィルタ膜11bに対し第一のケース3に近い側に配置されており、かつ、図2および図3に示すように、第一のケース3と一体に形成されている。なお、第一のケース3も樹脂製であり、第一のフィルタ膜取付部材と同一の素材で一体に形成されている。
【0018】
また、第一のフィルタ取付部材11aには、組み立てた状態で防水ケース内部とフィルタ膜11bとの通気を確保する通気路15を備える形状とされている。
【0019】
フィルタ膜11bは、液体の水は通過しないが気体は通過可能な特性を持つ、例えば撥水性の機能繊維材等によりなる。
【0020】
第二のフィルタ膜取付部材11cは、樹脂製であり、また、図2および図3に示すように、フィルタ膜11bに対し第一のケース3から遠い側に配置されており、かつ、図2に示すように、組み立て前はケースと別体に形成されている。なお、組み立てた状態においては、図3に示すように、フィルタ膜11bは、第一のフィルタ取付部材11aと第二のフィルタ取付部材11cがフィルタ膜11bの周縁部(23部)を挟みこむように配置され、第一のフィルタ取付部材11aおよび第二のフィルタ取付部材11cがそれぞれフィルタ膜11bに当接し、この状態で、第一のフィルタ部材11aと第二のフィルタ取付部材11cは、互いに溶着され、固定およびフィルタ膜周縁部でのシールの確保がなされる。
【0021】
本実施形態において、第一のケース3、第一のフィルタ取付部材11a、フィルタ膜11b、および第二のフィルタ取付部材11cについて以上で説明したような構成とすることによって、呼吸フィルタ部と防水ケースの間に隙間が無い構造とすることができる。従って、従来の電子装置のように呼吸フィルタ部と防水ケースとの間にOリング等の気密シールを用いる必要が無いため、Oリングが経年劣化をおこし弾性が低下することによるシール不完全の発生を防止し電子装置の寿命の向上を実現できるという効果を発揮できる。
【0022】
なお、本発明の電子装置における防水ケース部材は、第一のフィルタ膜取付部材の近傍部で樹脂製でありかつ第一のフィルタ取付部材と一体に形成されていればよく、本実施形態のように第一のケース部材の全体と第一のフィルタ膜取付部材を樹脂で一体に成形する構成に限定される必要はない。例えば第一のケース部材における第一のフィルタ膜取付部材近傍を樹脂とし他の部分を金属等の樹脂以外の材質でなる部材とし公知のインサート成型の技術等によって互いに一体となるようにする構成等、適宜変更可能である。
【0023】
また、図2および図3に示すように、本実施形態の電子装置における呼吸フィルタ部は、さらにフィルタ膜の防水ケース外側を覆う位置に配置されるキャップ部材11dを備えてもよい。
【0024】
キャップ部材11dは、図3に示すように、組み立てた状態で第二のフィルタ膜取付部材11cに固定される構成とされている。また、第二のフィルタ膜取付部材は複数のツメ部21を備える突起部25を持ち、キャップ部材11dはツメが嵌めあわせ可能な溝部27をもち、このツメ部と溝部が嵌めあわされることによって、キャップ部材11dが第二のフィルタ膜取付部材11cに固定されている。このため、キャップ部材が組み立て容易でありかつ取り外し可能な固定方法となっている。また、図3に示すように、第二のフィルタ膜取付部材11cの複数の突起25部の間に空間がある形状とされていることによって、キャップ部材11dが第二のフィルタ膜取付部材11cに固定された状態でキャップ側面方向に通気口13を有する形状に構成されている。このような構成とすることにより、組み立て容易な形状であってかつ他の物がフィルタ膜にぶつかることによるフィルタ膜の破損という事態を防止でき、かつフィルタ膜部分と外気の通気を確保可能となっている。
【0025】
なお、キャップ部材の第二のフィルタ膜取付部材への固定方法としては、接着や溶着による固定等であってもよい。
【0026】
また、キャップ部材が第二のフィルタ膜取付部材に固定された状態でキャップ部材の側面方向に通気口を有するようにする構成としては、例えばキャップ部材側に複数の突起を設けてその間を通気口となす構成、あるいは、第二のフィルタ膜取付部材側とキャップ部材側両方に突起を設けてその間を通気口となす構成等であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 電子装置
3 第一のケース
5 第二のケース
7 回路基板
9 ねじ
11 呼吸フィルタ部
11a 第一のフィルタ膜取付部材
11b フィルタ膜部材
11c 第二のフィルタ膜取付部材
11d キャップ部材
13 通気口
15 通気路
21 ツメ部
23 フィルタ膜の周縁部
25 突起
27 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路が形成された回路基板と、前記回路基板が収納される防水ケースを具備してなる電子装置であって、
前記防水ケースは、その内外で空気を出入可能とする呼吸フィルタ部を備え、
前記呼吸フィルタ部は、
液体の水は通過しないが気体は通過可能な特性をもつフィルタ膜と、
前記フィルタ膜の前記防水ケース本体に近い側に配置され前記フィルタ膜の周縁部と当接する第一のフィルタ膜取付部材と、
前記フィルタ膜の前記防水ケース本体から遠い側に配置され前記フィルタ膜の周縁部と当接する第二のフィルタ膜取付部材と、を備え、
前記第一のフィルタ膜取付部材および前記第二のフィルタ膜取付部材が前記フィルタ膜の周縁部を挟みこむ配置で固定されてなる電子装置において、
前記第一のフィルタ膜取付部材と前記第二のフィルタ膜取付部材が樹脂製であり、
前記フィルタ膜の周縁部を挟みこむ配置での前記固定は、前記第一のフィルタ膜取付部材および前記第二のフィルタ膜取付部材が互いに溶着されてなり、
前記防水ケース本体の少なくとも呼吸フィルタ部近傍は樹脂製であり、
前記第一のフィルタ膜取付部材と前記防水ケース本体の少なくともフィルタ部近傍は一体に形成されていることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136172(P2012−136172A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290640(P2010−290640)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】