説明

電子製品の静電気保護方法およびその構造

【課題】静電気保護回路およびその他の素子を増設せずに電子製品の静電気保護機能を得る電子製品の静電気保護方法およびその構造を提供する。
【解決手段】電子製品の静電気保護構造は、内部に電子部品12が設けられた電子製品に応用し、電子部品12が静電気放電により損壊されることを防ぎ、電子製品のハウジング10の電子部品に対応した位置には、外部に連通した貫通孔11が設けられている。貫通孔11の長さおよび形状は、静電気放電により発生されるアーク200の長さを基に決定される。アーク200の長さに等しいか、それよりも大きい貫通孔11により、静電気放電により発生されるアーク200が電子部品12に達しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気保護技術に関し、特に、電子製品の静電気保護方法およびその構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型通信技術は日々発展しており、携帯電話、ノート型パソコン、PDA、MP3、デジタルレコーダーなどの電子製品が普及している。これらの電子製品は小型かつ薄型である上に機能が高いため、日常生活や仕事において必要不可欠で重要な通信ツールとなっている。これらの電子製品は、動作が安定するように、主に電子部品の回路基板を積層したり並べたりして電子製品のケーシングの中に配置していた。
【0003】
しかし、人々がこれらの電子製品を使用する際、乾燥した環境下で人体の動作、物との接触、分離、摩擦、感応などにより静電気(ESD)を発生させることがあった。電子製品は、静電気が発生させるアークにより、安全性が低下するだけでなく、電子製品自体が損壊してしまう虞もあった。特にハウジングに貫通孔が設けられた電子製品では、静電気が発生させるアークが開口を介し、開口の下方に設けられた静電気敏感性デバイス(Electrostatic Discharge Sensitive Device:ESDSD)を損壊させる虞があった。このような問題が発生しないように、電子製品の製造メーカは、製造工程において静電気をアースしたり静電気遮断回路を設置したりして静電気保護手段を得ていた。例えば、手持ち式電子製品の音源信号の入出力ポートでは、音源信号の入出力ポートの接続線に保護回路を設けて静電気を遮断したり、静電気エネルギを放出したりすることにより、静電気保護の機能を得ていた。この静電気保護機能の効果は、電子製品の生産後に、静電気保護テストで検証される。しかし、通常、生産国毎に規範が異なるため、これらの規範それぞれに基づき、製造メーカは静電ガンの出力エネルギを設定しなければならなかった。さらに、電子製品のハウジングへ静電ガンを直接当ててから静電気を放出するため、この静電気放電が発生させるアークにより、貫通孔の中にある電子部品が損壊してしまう虞があった。
【0004】
上述した静電気保護回路の多くは、音源信号の入出力ルートに設けた抵抗素子またはインダクタンス素子を用いて静電気から保護したり、音源信号の入出力ルートにフィルタトランス(filter transformer)などの素子を設けたりして、静電気が入ることを防いでいた。しかし、静電気保護回路を別に設けた場合、電子製品の製造コストが増大した。さらに、従来の電子製品は、高い機能以外に小型化も求められており、限られた空間内に配置する素子の数を減らすことが求められていた。そのため、静電気保護素子を増設した場合、設計の難易度が高まった。さらに、アースにより静電気を放出する方式の場合、電子製品のサイズが小さくなるに従い、静電気の放出効果が悪くなり、好適な静電気機能を得ることができなかった。
【0005】
そのため、上述した従来技術の問題点を解決することができる電子製品の静電気保護方法およびその構造が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、静電気保護回路およびその他の素子を増設せずに電子製品の静電気保護機能を得ることにより、製造コストを下げる電子製品の静電気保護方法およびその構造を提供することにある。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、体積が小さな電子製品へも応用し易い電子製品の静電気保護方法およびその構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、内部に電子部品を有する電子製品へ応用し、前記電子部品が静電気放電により損壊されることを防ぎ、前記電子製品のハウジングの前記電子部品に対応した位置には、外部に連通した貫通孔が設けられた電子製品の静電気保護方法であって、前記静電気放電により発生されるアークの長さを判断するステップと、前記アークの長さを基に、前記貫通孔の長さおよび形状を決定し、前記アークの長さに等しいか、それよりも大きい前記貫通孔を前記ハウジングに形成することにより、前記静電気放電により発生される前記アークが前記電子部品に達しないようにするステップと、を含むことを特徴とする電子製品の静電気保護方法が提供される。
【0009】
また、前記貫通孔の形状は、斜線、曲線、連続折り曲げ、不規則であることが好ましい。
【0010】
また、前記電子部品は静電気敏感性デバイスであることが好ましい。
【0011】
また、前記静電気敏感性デバイスは、スピーカー、マイク、発光ダイオード、湿度敏感性デバイスまたは敏感なICデバイスであることが好ましい。
【0012】
また、前記貫通孔の形成手段は、エッチング、パンチ、射出成形または鋳造成形であることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の形態によれば、内部に電子部品が設けられた電子製品に応用し、前記電子部品が静電気放電により損壊されることを防ぎ、前記電子製品のハウジングの前記電子部品に対応した位置には、外部に連通した貫通孔が設けられ、前記貫通孔の長さおよび形状は、前記静電気放電により発生されるアークの長さを基に決定され、前記アークの長さに等しいか、それよりも大きい前記貫通孔により、前記静電気放電により発生される前記アークが前記電子部品に達しないようにすることを特徴とする電子製品の静電気保護構造が提供される。
【0014】
また、前記貫通孔の形状は、斜線、曲線、連続折り曲げまたは不規則であることが好ましい。
【0015】
また、前記電子部品は静電気敏感性デバイスであることが好ましい。
【0016】
また、前記静電気敏感性デバイスは、スピーカー、マイク、発光ダイオード、湿度敏感性デバイスまたは敏感なICデバイスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子製品の静電気保護方法およびその構造は、電子製品のハウジングに設ける貫通孔の長さを、静電気放電を行うときに発生するアークの長さと等しくするか、それよりも大きくすることにより、電子製品の静電気保護機能を得ることができるため、静電気保護回路およびその他関連する素子を増設する必要がなく、電子製品の製造コストを下げるとともに、静電気保護の設計難易度も下げ、従来技術の様々な問題が発生することを有効に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態による電子製品の静電気保護構造を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態による電子製品の静電気保護構造を示す断面図である。
【図3A】本発明の一実施形態による電子製品の静電気防止構造の曲線状の貫通孔を示す断面図である。
【図3B】本発明の一実施形態による電子製品の静電気防止構造の連続折り曲げの貫通孔を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、これによって本発明が限定されるものではない。
【0020】
本発明の電子製品の静電気保護方法は、内部に電子部品が設けられた電子製品へ応用し、静電気放電により電子部品が損壊されることを防ぐ。本実施形態の電子製品(図示せず)は、携帯電話、ノート型パソコン、PDA、MP3、デジタルレコーダーなどでもよい。
【0021】
電子製品は、電子部品と、電子部品を覆うハウジングと、を有する。このハウジングには、貫通孔が設けられている。電子部品は、静電気により損壊しやすい静電気敏感性デバイスでもよい。この静電気敏感性デバイスは、スピーカー、マイク、発光ダイオード、湿度敏感性デバイス、敏感なICデバイスなどであるが、これらの電子部品だけに限定されるわけではなく、その他静電気の影響により壊れ易い電子部品でもよい。貫通孔は、導音孔、ネジ孔、サーマルビアなどでもよい。
【0022】
本実施形態では、製品の静電気測定を例に説明する。即ち、静電担持体に静電気が発生してアークが放出されるが、静電気の発生源は限定されるわけではない。つまり、乾燥した環境下における人体の動作、または人体と物体との接触、分離、摩擦、感応などにより静電気が発生する場合、静電担持体は人体でもよいし物体でもよいが、これらだけに限定されるわけではない。静電気放電が発生させるアークの長さと、静電担持体のエネルギとは正比例の関係にある。即ち、静電気により発生されるアークは、静電担持体のエネルギが大きいほど長くなる。
【0023】
本実施形態では、アークの長さに基づき、貫通孔の長さおよび形状を決定する必要がある。貫通孔の長さは、静電気放電が発生させるアークの長さに等しいか、それよりも大きい。アークがハウジングの貫通孔を介して電子部品に入っても、貫通孔の長さがアークの長さに等しいかそれよりも大きいため、静電気放電が発生させるアークエネルギが電子部品に達せず、電子部品は損壊しない。
【0024】
本実施形態のハウジングに貫通孔を形成する手段は、エッチング、パンチ、射出成形、鋳造成形などの加工手段を利用してもよいが、これらの手段だけに限定されるわけではなく、貫通孔の構造を形成することができる限り、他の手段を利用してもよい。貫通孔の形状は、斜線、曲線、連続折り曲げ、不規則にしてもよい。例えば、貫通孔の形状は、L字状、N字状、S字状、U字状、V字状、Z字状などにしてもよい。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による電子製品の静電気保護構造を示す模式図である。図1は、本発明の基本的な構造を示しただけであり、実施する際の構成要素の数、形状およびサイズは、実際の必要に応じて変えることができる上、その構成要素の配置も図1に示した態様だけに限定されるわけではなく、より複雑にしてもよい。
【0026】
図1に示すように、本発明の一実施形態による電子製品の静電気保護構造の電子製品(図示せず)は、携帯電話、ノート型パソコン、PDA、MP3、デジタルレコーダーなどでもよい。電子製品は、電子部品12と、電子部品12を覆うハウジング10と、を有する。ハウジング10は、静電気放電により発生されるアークの長さを基に、長さおよび形状が決定される貫通孔11を少なくとも備える。本実施形態の電子部品12は、スピーカー、マイク、発光ダイオード、湿度敏感性デバイス、敏感なICデバイスまたは静電気により損壊しやすいその他電子部品を含む静電気敏感性デバイスでもよい。本実施形態の貫通孔11は、導音孔、ネジ孔、サーマルビアなどでもよい。
【0027】
図1に示すように、静電担持体20により発生される静電気は、アーク200を放出する。静電気により発生されるアーク200の長さは、静電担持体20のエネルギの大きさに正比例する。つまり、静電担持体20のエネルギの大きさに比例し、発生するアーク200も長くなる。
【0028】
図1に示すように、貫通孔11は、電子部品12に対応した位置で、外部に連通するように電子製品のハウジング10に設けられている。貫通孔11の長さは、静電気放電により発生されるアークの長さに等しいか、それよりも大きくなければならない。アーク200がハウジング10に設けられた貫通孔11を介して電子部品12に入っても、貫通孔11の長さが静電気放電のアーク200の長さよりも大きいため、静電気放電のアークエネルギが電子部品12に達しないため、静電気から保護することができる。貫通孔11の長さが静電気放電のアーク200の長さに等しい状態でも、電子部品12にハウジング10が直接貼り付けられていない上、貫通孔11の両側に設けられた開口に空間があるため、静電気により発生されたアークが電子部品12に達することがない。
【0029】
本実施形態では、エッチング、パンチ、射出成形、鋳造成形などの加工手段により、ハウジング10に貫通孔11を穿設する。貫通孔11は、ハウジング10の両面に位置がずれるように設けられている。ハウジング10が薄い場合には斜めに穿設したり、折り曲げて穿設したりすることにより、十分な長さを得てもよい。即ち、貫通孔11は、傾斜させたり連続折り曲げの構造にしたりしてもよい。このように貫通孔11の長さを静電気により発生されるアークの長さに等しくしたり、それよりも大きくしたりすることができるため、電子部品に静電気が直接入ることがない。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態による電子製品の静電気保護構造を示す断面図である。図1に示すように、貫通孔11はZ字状に折り曲げられた構造である。図2は、本発明の他の実施形態による電子製品の静電気保護構造を示す断面図である。図2に示すように、貫通孔11aは、斜めに形成された構造である。他の実施形態では、貫通孔11aの形状は、L字状、N字状、S字状、U字状、V字状などにしてもよい。
【0031】
図3Aおよび図3Bは、本発明の一実施形態による電子製品の静電気防止構造の貫通孔を示す断面図である。図3Aは、曲線状の貫通孔11bが設けられた状態を示す断面図である。図3Bは、連続折り曲げ状の貫通孔11cが設けられた状態を示す断面図である。なお、貫通孔の形状は、曲線状および連続折り曲げだけに限定されるわけではなく、静電気放電のアーク長さと等しいか、それよりも大きい長さを有する限り他の形状にしてもよい。
【0032】
ここで、静電担持体20のエネルギが大きいほど、発生するアーク200も長いため、静電気の強度に応じて貫通孔の長さを変えることができるということである。即ち、静電気エネルギの大きさに応じ、貫通孔の長さを大きくしてもよいということである。
【0033】
上述したことから分かるように、本発明の電子製品の静電気保護方法およびその構造は、電子製品のハウジングに形成する貫通孔の長さを静電気放電により発生されるアークの長さに等しくするか、それよりも大きくすることにより、電子部品へ静電気が直接達しないようにする。本発明は、静電気保護回路およびそれに関する部品を増設しなくとも、電子製品に静電気保護の機能を持たせることができるため、静電気保護の設計難易度を下げることができる。
【0034】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0035】
10 ハウジング
11 貫通孔
11a 貫通孔
11b 貫通孔
11c 貫通孔
12 電子部品
20 静電担持体
200 アーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電子部品を有する電子製品に応用し、前記電子部品が静電気放電により損壊されることを防ぎ、前記電子製品のハウジングの前記電子部品に対応した位置には、外部に連通した貫通孔が設けられた電子製品の静電気保護方法であって、
前記静電気放電により発生されるアークの長さを判断するステップと、
前記アークの長さを基に、前記貫通孔の長さおよび形状を決定し、前記アークの長さに等しいか、それよりも大きい前記貫通孔を前記ハウジングに形成することにより、前記静電気放電により発生される前記アークが前記電子部品に達しないようにするステップと、を含むことを特徴とする電子製品の静電気保護方法。
【請求項2】
前記貫通孔の形状は、斜線、曲線、連続折り曲げ、不規則であることを特徴とする請求項1に記載の電子製品の静電気保護方法。
【請求項3】
前記電子部品は静電気敏感性デバイスであることを特徴とする請求項1に記載の電子製品の静電気保護方法。
【請求項4】
前記静電気敏感性デバイスは、スピーカー、マイク、発光ダイオード、湿度敏感性デバイスまたは敏感なICデバイスであることを特徴とする請求項3に記載の電子製品の静電気保護方法。
【請求項5】
前記貫通孔の形成手段は、エッチング、パンチ、射出成形または鋳造成形であることを特徴とする請求項1に記載の電子製品の静電気保護方法。
【請求項6】
内部に電子部品が設けられた電子製品に応用し、前記電子部品が静電気放電により損壊されることを防ぎ、前記電子製品のハウジングの前記電子部品に対応した位置には、外部に連通した貫通孔が設けられ、
前記貫通孔の長さおよび形状は、前記静電気放電により発生されるアークの長さを基に決定され、
前記アークの長さに等しいか、それよりも大きい前記貫通孔により、前記静電気放電により発生される前記アークが前記電子部品に達しないようにすることを特徴とする電子製品の静電気保護構造。
【請求項7】
前記貫通孔の形状は、斜線、曲線、連続折り曲げまたは不規則であることを特徴とする請求項6に記載の電子製品の静電気保護構造。
【請求項8】
前記電子部品は静電気敏感性デバイスであることを特徴とする請求項6に記載の電子製品の静電気保護構造。
【請求項9】
前記静電気敏感性デバイスは、スピーカー、マイク、発光ダイオード、湿度敏感性デバイスまたは敏感なICデバイスであることを特徴とする請求項8に記載の電子製品の静電気保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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