説明

電子譲渡債権候補決定システム

【課題】回し手形のような回し債権の支払者、受取者のお互いが、相手が参照している信用力の値が何かを知ることが可能なシステムを提供する。
【解決手段】支払者と受取者が取引をして、支払額や支払期限等の支払条件が決まった場合、この支払条件を支払条件受付機能110で受け取る。譲渡債権算出機能111により、ここで受け取った支払条件と、電子債権DB121にある支払者の電子債権情報と、企業信用力DB120に記憶されている企業信用力から、支払者の参照できる企業信用力に基づいて算出した単位額面あたりの現在価値に対する、受取者の参照できる企業信用力に基づいて算出した単位額面あたりの現在価値の比率が大きいものから優先して、候補となる譲渡債権の種類、組み合わせを算出して支払方法DB123に記憶させ譲渡債権を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二者間の商取引における対価の支払として債権を用いる為の技術に関する。その中でも特に、債務者が保有する第3者が発行した債権を債権者(支払われる側)に譲渡する行為を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
商取引における支払手段として、支払企業が保有する手形(第三者が振り出した手形、いわゆる回し手形)を相手方(納入者)に譲渡することで支払いを行う、ことは以前より行われている。支払側に手持ち資金がない場合でも金融機関から借り入れをすることなく支払が行えるという点で、支払側に大きなメリットがある。
【0003】
回し手形による支払のプロセスは通常以下のとおりである。まず支払者が納入者に対し、譲渡する一つまたは複数の手形を提示する。納入者はそれらの手形の価値が、自身が納入した製品やサービスの対価として妥当であるかを判断し、妥当であれば手形を譲り受ける。妥当でなければ、支払者が改めて別の手形を提示するか、他の支払手段を選択する。
【0004】
このような債権ついて近年、電子記録債権法の施行や日本電子債権機構株式会社の設立等にも見られるように、電子化への移行が進み始めている。それに伴い、上述したような回し手形のような処理を電子債権でも実現することができるようなシステムが望まれている。実際、商取引における電子記録債権による支払を支援する技術に関して、特許文献1では、支払者が納入者に債権を譲渡した場合に納入者が保有する債権との間で相殺可能な債権を抽出し、相殺可能額を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-025986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
取引の対価として譲渡される個々の手形や電子記録債権の現在価値は、支払者と納入者とで異なることがある。例えば、支払者と納入者とでメインバンクが異なる場合、それぞれのメインバンクに対して手形や電子記録債権の割引を依頼したときに対価として受け取れる現金の額は異なる。企業にとっての手形や電子記録債権の現在価値とは、割引で受け取ることのできる現金の額と考えることができるため、当該ケースでの手形や電子記録債権の現在価値は支払者と納入者で異なることになる。
【0007】
それ故、電子債権で回し処理を実現しようとする時、支払者と納入者とで手形や電子記録債権の現在価値が異なるのであれば、支払者にとって現在価値が低く納入者にとって現在価値が高い手形または電子記録債権を優先的に譲渡すれば双方にメリットがある取引を実現できる。しかし、現在のところ支払方法の決定に際して支払者・納入者双方にとっての手形や電子記録債権の現在価値を比較し、双方にとっての上記メリットを最大化するような手形や電子記録債権を抽出する技術は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、譲渡の対象となる電子記録債権の単位額面あたりの現在価値に着目し、支払者にとっての当該値に対する納入者にとっての当該値の比率が大きい債権ほど譲渡した時に両者のメリットが大きくなることを利用して、譲渡する債権を決定する。
【0009】
より具体的には以下の構成をとる。二者間での取引が行われた場合の支払額と支払期限の支払条件を受信する支払条件受信機能と、この受信した支払条件と、支払者や納入者の電子債権を管理する電子債権DBにある電子債権情報と企業信用力を記録した企業信用力DBと企業信用力を参照可能かどうかの情報を記録する利用者DBから譲渡債権算出部により、支払いに使う電子債権(譲渡債権)の候補を算出し、支払方法候補送信機能により、支払方法候補(譲渡債権候補)の送信をする。この支払候補を受け取った債務者、債権者により支払い方法(譲渡債権)が決定されると、決定された支払方法を支払方法受信機能で受信する。その譲渡債権を、外部の電子債権記録機関のシステムに記録依頼を債権記録請求機能により行う。なお、この場合、電子記録債権情報の読み込みは、本装置内の電子債権DBに限定されず、外部の電子債権を管理する電子債券記録機関システムから電子記録債権情報を読み込むとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
二者間の商取引における対価の支払として債権を用いる場合で、その債務者、債権者がそれぞれお互いが参照できる取引相手の信用力を知らない場合でも、債務者、債権者にとって最適な債権の候補を示すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態のシステム構成図。
【図2】本発明の一実施形態における電子債権記録機関接続システム100の機能を実現する情報処理装置200のハードウェア構成を例示する図。
【図3】本発明の一実施形態における企業信用力DB120を示す図。
【図4】本発明の一実施形態における企業信用力DB120を示す図。
【図5】本発明の一実施形態における電子債権DB121を示す図。
【図6】本発明の一実施形態における支払方法決定支援フローを示す図。
【図7】本発明の一実施形態における譲渡債権の算出処理のフローを示す図。
【図8】本発明の一実施形態における新規債権を対象外とした場合の譲渡債権の算出処理のフローを示す図。
【図9】本発明の一実施形態における譲渡債権算出DB122を示す図。
【図10】本発明の一実施形態における譲渡債権算出DB122を示す図。
【図11】本発明の一実施形態における譲渡債権算出DB122を示す図。
【図12】本発明の一実施形態における譲渡債権算出DB122を示す図。
【図13】本発明の一実施形態における支払方法DB123を示す図。
【図14】本発明の一実施形態における譲渡債権算出DB122を示す図。
【図15】本発明の一実施形態における支払者の端末に表示する支払方法候補画面を示す図。
【図16】本発明の一実施形態における利用者DB124を示す図。
【図17】本発明の一実施形態における納入者の端末に表示する支払方法候補画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム構成図である。
【0014】
電子債権記録機関接続システム100は、企業や銀行が電子債権記録機関に対して電子記録債権に関する記録請求を行うために利用するシステムであるとともに、回しに用いる債権の決定を支援する機能を提供するシステムである。Eコマースシステム170は、商取引において発注企業と受注企業とがネットワーク経由で製品仕様や価格などの取引内容を決定するための基盤システムであり、ネットワーク160を介して電子債権記録機関接続システム100に接続する。企業端末130は、企業が利用する端末であり、複数の企業端末130がネットワーク161を介してEコマースシステム170に、ネットワーク162を介して電子債権記録機関接続システム100に接続する。銀行端末140は、銀行が利用する端末であり、複数の銀行端末140がネットワーク163を介して電子債権記録機関接続システム100に接続する。電子債権記録機関システム150は、電子記録債権の法的に担保された原簿を管理する電子債権記録機関が利用するシステムであり、ネットワーク164を介して電子債権記録機関接続システム100に接続する。
【0015】
ネットワーク160、161、162、163、164は、インターネットや広域イーサネット(登録商標)、VPN(Virtual Private Network)、ISDN回線、LAN(Local Area Network)などのネットワークである。
【0016】
電子債権記録機関接続システム100が有する機能について説明する。支払条件受信機能110は、Eコマースシステム170から特定の商取引の支払条件、具体的には支払額と支払期日に関する情報を受信する機能である。ただし、Eコマースシステムを通さず、企業端末から直接や、ユーザによって決められた支払額と支払期日に関する情報を直接受けるものとしてもよい。譲渡債権算出機能111は、前記支払条件および後述する企業信用力DB120、電子債権DB121、および利用者DB124を参照して、回しに用いる(すなわち支払者(債務者)から納入者(債権者)に譲渡する)電子記録債権の最適な組合せを算出する機能である。支払方法候補送信機能112は、譲渡債権算出機能111が算出した債権の組合せでの回しによる支払を含む、複数の支払方法(回しのほか、債権の新規発行のみによる支払いなど)をEコマースシステム170に送信する機能である。ただし、Eコマースシステムを通さない場合は企業端末130やユーザの端末へ支払方法の候補が送られることになる。支払方法受信機能113は、上記複数の支払方法の中から支払者や納入者によって選ばれた最終的な支払方法に関する情報をEコマースシステム170や企業端末130もしくはユーザの端末等から受信する機能である。債権記録請求機能114は、最終的な支払方法が電子記録債権の発生(すなわち新規発行)や譲渡を伴う場合に、それらを実行するための発生記録請求や譲渡記録請求を電子債権記録機関システム150に対して行う機能である。
【0017】
次に、電子債権記録機関接続システム100が有するデータベース(DB)について詳しく説明する。
【0018】
企業信用力DB120は、様々な企業の信用力に関する情報(与信情報)を格納したDBである。それらの与信情報は電子債権記録機関接続システム100を利用する各銀行によって提供され、銀行ごとに異なる企業信用力DB120が作られる。与信情報は銀行にとっての機密情報であるため、ある銀行が提供した情報によって作成された企業信用力DBは、他の銀行の銀行端末140や企業端末130からは参照できないようにアクセス管理がなされる。
【0019】
図3は、この企業信用力DB120の一例である企業信用力DB(A)300の構成を例示したものである。企業信用力DB(A)300は、企業301、利回り302を含む。企業301は、企業を識別できるものであればIDでもよいし企業名でもよい。利回り302は、企業の信用力を数値化したものであり、企業を債務者とする債権があった時に、その債権の現在価値を算出するために年率何パーセントで割り引くかを表した数値である。数値が大きいほど企業の信用力が低い(信用リスクが高い)ことになる。銀行ごとに異なる企業信用力DB120が作られることは上で述べたが、本実施例において企業信用力DB(A)300は銀行(A)が提供した情報に基づいて作られたこととする。また、銀行(A)は支払者(a)社のメインバンクであり、(a)社にとっての債権の現在価値を算出する際には企業信用力DB(A)300を用いることとする。
【0020】
図4は、企業信用力DB120の一例である企業信用力DB(B)400の構成を例示したものである。本実施形態において企業信用力DB(B)400は銀行(B)が提供した情報に基づいて作られたこととする。また、銀行(B)は納入者(b)社のメインバンクであり、(b)社にとっての債権の現在価値を算出する際には企業信用力DB(B)400を用いることとする。
【0021】
電子債権DB121は、電子記録債権に関する情報を格納したDBである。ただし、本発明で譲渡債権を算出する場合には、電子債権DB121を用いる代わりに、電子債権記録機関システム150に保持されている同等の情報を格納したDBを用いてもよい。
【0022】
図5は、電子債権DB121の構成を例示したものである。電子債権DB121は、債権No.501、債務者502、保証人(1)503、保証人(2)504、債権者505、額面506、譲渡可能額面507、期日508を含む。一つの電子記録債権において保証人は複数存在する可能性があり、電子債権DB121はそれら複数の保証人全てを記録する。債務者502、保証人(1)503、保証人(2)504、債権者505は、企業を識別できるものであればIDでもよいし企業名でもよい。電子記録債権は、その額面の一部または全部を譲渡するための譲渡記録請求が行われた後、譲渡記録が確定するまでの間は、額面の一部または全部が譲渡できない状態になる。譲渡可能額面507は、その譲渡できない額面を額面156から差し引いた額である。したがって、例えば債権No.004の債権は、200万円の額面のうち150万円が譲渡記録請求中であり、残りの50万円が譲渡可能額面ということになる。期日508は、債権の支払期日を表す。
【0023】
譲渡債権算出DB122は、譲渡債権算出機能111が回しに用いる電子記録債権の最適な組合せを算出する際に、計算過程を記録するためのDBである。ただし、計算過程は必ずしもDBとして書き出す必要はなく、計算処理中はメモリ上に記憶しておくなどして、計算が終了したらメモリから削除してしまってもよいため、譲渡債権算出DB122は必須ではない。
【0024】
支払方法DB123は、譲渡債権算出機能111が算出した譲渡債権の組合せによる支払を含む、複数の支払方法を格納するDBである。
【0025】
図13は、支払方法DB123の構成を例示したものである。支払方法DB123は、どの支払いに対する譲渡債権かを区別する支払いID1301、譲渡債権の候補毎番号をつけて区別する枝番1302、各譲渡債権候補の支払者1303、譲渡債権の支払先1304、債権を区別する債権No1305、債権の種別(新規発行か、部分譲渡か等)1306、支払期日1307、譲渡額面1308、支払者の受益1309.支払先の受益1310、支払者が選択した譲渡債権について記録する決定フラグ1311等の情報を含む。各項目の詳細については後述する。
【0026】
利用者DB124は、電子債権記録機関接続システム100を利用する企業についての情報を格納するDBである。具体的には、どの企業(ユーザ)がどの銀行の持つ企業信用力DBにアクセスする権限があるかを記録する。
【0027】
図16は、利用者DB124の構成を例示したものである。利用者DB124は、企業1601、および参照可能DB1602を含む。参照可能DB1602は、譲渡債権算出機能111にて支払者・納入者それぞれにとっての債権の現在価値を算出する際に参照する企業信用力DB120を表している。通常はそれぞれの企業のメインバンクが提供した情報に基づいて作られた企業信用力DBが割り当てられる。
【0028】
図2は、電子債権記録機関接続システム100の機能を実現する情報処理装置200のハードウェア構成を例示する図である。情報処理装置200は、CPU(Central Processing Unit)210、記憶装置220、通信インタフェース230、入出力インタフェース240を備える。
【0029】
図6は、商取引における電子債権記録機関接続システム100、電子債権記録機関システム150、およびEコマースシステム170の動作の一例を示すフローチャートである。支払者(ここでは(a)社とする)と納入者(ここでは(b)社とする)がEコマースシステム170を利用して取引を行い、(a)社が(b)社に支払う支払額と支払期日が決定したところから説明を開始する。なお、取引はEコマースシステム上のものに限定されるものではなく、E-コマース以外での取引においても(a)社は譲渡債権の候補を知る為に、支払額、支払期日が決定すればその情報を本システムに送信することができる。
【0030】
Eコマースシステム170は、支払額と支払期日を含む支払条件を電子債権記録機関接続システム100に送信し(600)、電子債権記録機関接続システム100はそれを受信する(610)。この支払条件の受信処理610は、前述の支払条件受信機能110に相当する。本実施例では、支払額は1000万円、支払期日は60日後の2010年9月30日とする。次に、電子債権記録機関接続システム100は、前記支払条件および企業信用力DB120、電子債権DB121、利用者DB124を参照して、回しに用いる電子記録債権の最適な組合せを算出する(611)。この譲渡債権算出処理611は、前述の譲渡債権算出機能111に相当する。
【0031】
譲渡債権算出処理611について、図7・図8を用いて詳細に説明する。まず、電子債権記録機関接続システム100は、回しに用いることができる債権、すなわち譲渡候補債権を、電子債権DB121から抽出して譲渡債権算出DB122に記録する。
【0032】
具体的には、電子債権DB121に記録されている債権のうち債権者155として支払者が記載されている債権で、譲渡可能額面157が0でないものを抽出する。なおこの債権の抽出は、電子債権記録機関システムにある債権のDBから抽出してもよい。つまり、支払者(a)が電子債権で支払うので、支払者(a)が債権者である債権しか支払には使えない。そこで債権者が支払者である電子債権を譲渡債権の選択肢の候補として抽出し、そここから回しにどの電子債権を使用することが最も効率的かを算出する。
【0033】
この譲渡債権抽出の際、支払者を債務者とする新規債権の発行をする場合(図7)としない場合(図8)に分けて順を追って説明する。
【0034】
まず新規債権を発行する場合(図7)について説明する。
【0035】
新規債権を発行する場合は前述のように抽出される債権以外に、支払者を債務者とする新規債権も譲渡債権算出DB122に記録する。なおこの算出処理は、譲渡債権算出DBに書き出さずに、メモリ等の一時記憶できる装置の上で計算してもよい。この新規債権の期日は、支払条件の受信処理610で受信した支払期日とする。このように既存の債権だけでなく新規債権も譲渡債権算出DB122に記録する理由は、支払者が債権者である既存の債権と支払者が債務者である新規債権とを同列に比較することによって、新規債権も含めた最適な譲渡債権の構成を算出するためである(700)。
【0036】
譲渡候補債権の抽出処理700により作成された譲渡債権算出DB122の一例を図9に示す。譲渡債権算出DB122は、債権No.902、譲渡可能額面S903、支払期日904、債権Dの支払者にとっての単位額面あたりの現在価値であるRAX905、債権Dの納入者にとっての単位額面あたりの現在価値であるRBX906、RBXをRAXで割った値907、P908(Pについての詳細は後述する)、実際に譲渡する額面であるJ909、債権Dを譲渡額面Jだけ支払者から納入者に譲渡した後のMAX910およびMBX911(MAX、MBXについての詳細は後述する)を含む。なお、D901は、本実施例の説明のために便宜的に債権に割り当てる記号であるため、実際の譲渡債権算出DB122には含まれなくてもよい。債権No.902と、譲渡可能額面S903、期日904には、それぞれ譲渡候補債権の抽出処理700で抽出した債権の債権No.501、譲渡可能額面507、および期日508から算出した支払期日までの日数を格納する。ただし新規債権については、現時点では存在しない債権であるため、債権No.902、譲渡可能額面S903ともに値を与えなくてよい。
【0037】
図7に戻ってフローの説明を続ける。電子債権記録機関接続システム100は、譲渡債権算出DB122に記録されているすべての債権Dについて、支払者・納入者それぞれにとっての単位額面あたりの現在価値であるRAX、RBXを算出する。このとき、RAXの算出に際しては支払者の利用者DB124にある参照可能DB1602(本実施例では支払者は(a)社なので企業信用力DB(A))を参照し、RBXの算出に際しては納入者の参照可能DB1602(本実施例では納入者は(b)社なので企業信用力DB(B))を参照する(701)。
【0038】
AXは例えば以下のように算出する。債権Dの期日までの日数904をα日とし、債権Dの債務者および全ての保証人について最も小さい利回り302の値をβ%/年とすると、RAX=1−α/365×β/100。つまり、年にβ%の割引率なので、期日までα日時点での割り引かれた後の支払者(a)側から見た現在価値を表している。RBXについても企業信用力DB(B)を参照して同様に算出する。RBXは同様にして、納入者(b)からみた現在価値をあらわしている。なお、RAX、RBXの算出ロジックはこれに限らず、またRAXとRBXとで算出ロジックが同じである必要もない。例えば日割りではなく、月割り等の割引率で計算してもよい。
【0039】
次に、電子債権記録機関接続システム100は譲渡債権算出DB122に記録されている債権Dを、RBXをRAXで割った値に基づいて降順にソートする。ソートした結果の一例を図10に示す。本実施例では、ソートした債権を上から順にD、D、・・・とする(702)。
【0040】
BXをRAXで割った値は、支払者から見た債権Dの価値に対して納入者から見た債権Dの価値がどれだけ大きいかを定量的に表した数値とみなすことができる。したがって、RBX/RAXが大きい債権から優先的に支払に用いることで、支払者と納入者のメリットを最大化することができる。具体的には、例えば額面1円の債権に対して支払者aが2円(RAX=2)、納入者bが0.5円(RBX=0.5)の価値を感じている場合(0.5÷2によりRBX/RAX=0.25)、額面1円の債権を支払者aから納入者bに譲渡すると、支払者aは2円分の価値を払ったと感じ、納入者bは0.5円分の価値を貰ったと感じる。また、額面1円の債権に対して支払者aが1円(RAX=1)、納入者bが1円(RBX=1)の価値を感じている場合(RBX/RAX=1)は、額面1円の債権を支払者aから納入者bに譲渡すると、支払者aも納入者bも1円分の価値を取引したと感じる。また、額面1円の債権に対して支払者aが0.5円(RAX=0.5)、納入者bが2円(RBX=2)の価値を感じている場合(RBX/RAX=4)、額面1円の債権を支払者aから納入者bに譲渡すると、支払者aは0.5円分の価値を払ったと感じ、納入者bは2円分の価値を貰ったと感じる。つまりRBX/RAXが大きい債権ほど、譲渡した時に支払者と納入者の双方がメリットを感じることとなる。
【0041】
それ故、前述したソートにより、上から譲渡債権の候補を選ぶことにより、支払者、納入者互いにとって価値の高い債権から譲渡することができる。
【0042】
ここまでの処理で、支払に用いる既存債権および新規債権の優先順位が決定した。ここからは、それぞれの既存債権および新規債権についてどれだけの額面を支払に用いるかを算出するための一連の処理について説明する。
【0043】
電子債権記録機関接続システム100は、支払条件の受信処理610で受信した支払額および新規債権D(図10ではm=2)の支払者から見た単位額面あたりの現在価値
Amに基づいて、支払者が納入者に支払うべきと考えている価値である譲与価値残の初期値MA0を算出する。また、前記支払額およびRBmに基づいて、納入者が支払者から支払われるべきと考えている価値である譲与価値残の初期値MB0を算出する(703)。
【0044】
A0およびMB0は以下のように算出する。ここでのMA0、MB0は、支払者と納入者との間で合意した支払条件をそれぞれ支払者・納入者の観点から現在価値に直したものと考えることができる。それらはすなわち、支払者を債務者とし、前記支払条件における支払額および支払期日をそれぞれ発行額面および支払期日とする新規債権を、支払者・納入者が参照可能な企業信用力DB120を用いて現在価値に置き換えたものである。つまり、
AmとRBmは新規債権を発行したときのものと同じもので計算する。したがって、MA0、MB0は、支払条件の受信処理610で受信した支払額をγ円、新規債権をDとして、
A0=γ×RAm
B0=γ×RBm
とする。本実施形態では、
A0=1000×0.98=980(万円)
B0=1000×0.99=990(万円)
となる。したがって、支払条件の合意時点で(a)社は現在価値980万円を(b)社に譲与しなければならないと考えており、(b)社は現在価値990万円を(a)社から譲与されなければならないと考えていることになる。
【0045】
次に、電子債権記録機関接続システム100は、i=1とし(704)、譲渡債権算出DBの上からi番目の債権DについてPを算出する(705)。
【0046】
について説明する。このPは、債権Dの譲渡可能額面が無限大と仮定した場合に、D譲渡後の譲与価値残MAiおよびMBiがMAi=−MBiの関係になるようなDの譲渡額面と定義する。ここでいう無限大とはつまり、債権Dによって支払いきることが出来る時のことである。そのようにPを定義した場合、新規債権をDとすると、RBm/RAm≦RBi/RAiであれば(すなわちm≧iであれば)必ず、債権Dを額面Pだけ譲渡した後の譲与価値残MAiおよびMBiはMAi≧0かつMBi≦0となり、かつMAiとMBiの絶対値が等しくなる。つまり、新規債権Dより、支払者と納入者にとってお互い得したと感じられる債権Dがある時、その債権Dで額面Pだけ譲渡して支払きろうとすると、譲与価値残MAiと、譲与価値残MBiの絶対値が等しくなるものが存在する。
【0047】
支払者にとってMAi≧0であることは、当初納入者に譲与すべきと考えていた現在価値MA0を譲与しきっておらず、得したと感じていることを意味する。また、納入者にとってMBi≦0であることは、当初支払者から譲与されるべきと考えていた価値MB0を超えて譲与されており、得したと感じていることを意味する。したがって、MAi≧0かつMBi≦0で、しかもMAiとMBiの絶対値が等しい状態とは、支払者と納入者がそれぞれ同じだけ「得した」と感じている、理想的な結果であることを意味する。Pは、債権Dの譲渡可能額面が無限大と仮定した場合の理想的な譲渡額面ということになる。例えば譲与価値残MAi=10万円とは支払が10万円残っている。つまり10万円分支払わなくてすんだと支払者Aは感じ、譲与価値残−MBi=―10万円とは10万円余計にもらった。つまり10万円得したと感じ、お互い同じ価値だけ得したと感じている状態をいう。つまり、Pはお互いにとって理想的な譲渡債権額といえ、最適譲渡債権額といえる。
【0048】
ここで、この譲与価値残MAiと、譲与価値残MBi以下の式で表すことができ、
Ai=MAi−1−P×RAi、MBi=MBi−1−P×RBiであるので、Pは以下の式で算出できる。
=(MA−1+MB−1) / (RAi+RBi)
本実施例では、P=(980+990)/(0.97+0.99)=1005.10(万円)となる。
【0049】
図7に戻って説明を続ける。電子債権記録機関接続システム100は、(1)Dが新規債権であるか、(2)Dが新規債権でない場合はPが譲渡可能額面S以下であるか、(3)上記(1)(2)のどちらにも当てはまらないか、を判定する。本実施例の場合、Dは新規債権ではなく、P=1005.10(万円)は譲渡可能額面S=500(万円)を超過しているので、(3)に当てはまる(706)。
【0050】
債権Dを額面Pだけ譲渡できれば支払者と納入者のメリットが大きいが、(3)に当てはまる場合は債権Dを額面S以上譲渡することはできないので、上限いっぱいの額面Sを譲渡額面Jとする。そして譲与価値残MAi、MBiを以下の式により算出 MAi=MAi−1−J×RAi
Bi=MBi−1−J×RBi
本実施例においては以下のようになる。
A1=980−500×0.97=495(万円)
B1=990−500×0.99=495(万円)
債権Dを500万円支払者から納入者へ譲渡することにより、支払者から見た譲与価値残は980万円から495万円へ、納入者から見た譲与価値残は990万円から495万円へ減少することになる。この時点での譲渡債権算出DB122を図11に示す(707)。
【0051】
電子債権記録機関接続システム100は、iに1を加算し(708)、再び譲渡債権算出DBの上からi番目の債権DについてPを算出する(705)。本実施例においては以下のようになる。
=(495+495)/(0.98+0.99)=502.54(万円)
【0052】
電子債権記録機関接続システム100は、1回目のループと同様に(1)Dが新規債権であるか、(2)Dが新規債権でない場合はPが譲渡可能額面S以下であるか、(3)上記(1)(2)のどちらにも当てはまらないか、を判定する。本実施例の場合、Dは新規債権なので(1)に該当する(706)。
【0053】
(1)に該当する場合、新規債権には譲渡可能額面の上限がないため、Pに等しい額面を新規発行して支払者から納入者に譲渡することとする。すなわち、譲渡額面J=Pとする。さらにMAi、MBiを以下の式により算出する。
Ai=MAi−1−J×RAi
Bi=MBi−1−J×RBi
本実施例においては以下のようになる。
A2=495−502.54×0.98=2.51(万円)
B2=495−502.54×0.99=−2.51(万円)
債権Dを502.54万円支払者から納入者へ譲渡することにより、支払者から見た譲与価値残は495万円から2.51万円へ、納入者から見た譲与価値残は495万円からマイナス2.51万円へ減少することになる。この結果、支払者にとっては当初納入者に譲与すべきと考えていた価値980万円のうち977.49万円のみの譲与で済み、一方納入者にとっては当初支払者から譲与されるべきと考えていた価値990万円を上回る992.51万円を譲与されることとなる。この時点での譲渡債権算出DB122を図12に示す(709)。
【0054】
続いて、電子債権記録機関接続システム100は、ここまでの計算結果を支払方法DB123に記録する。支払方法DB123に記録する内容としては、既存債権と新規債権の組合せによる支払方法(すなわち譲渡債権算出DB122に記録された内容)に加えて、新規債権のみでの支払方法も記録する(710)。
【0055】
支払方法DB123の構成を図13に例示する。支払方法DB123は、支払ID1301、枝番1302、支払者1303、支払先1304、債権No.1305、支払の種別1306、債権の期日1307、譲渡額面1308、支払者受益1309、支払先受益1310、決定フラグ1311を含む。支払ID1301は、支払条件の受信処理610における支払条件の単位で付与する。枝番1302は支払ID1301の枝番であり、支払条件を満たす支払方法が複数ある場合に、それらを区別するために付番する。例えば、図12の譲渡債権算出DBで示した、債権No.003を500万円、新規債権を502.54万円の組合せによる支払方法は、図13では支払IDが0001、枝番が2の行で表されている。また、新規債権のみでの支払方法は、図13では支払IDが0001、枝番が1の行で表されている。具体的には枝番が2の場合は新規発行債権と既存債権との組みあわせ、枝番が3の場合は、既存債権のみ、枝番が1の場合は新規発行債権のみで表される。これにより、支払者は新規債権を発行した支払とするのか、既存の債権だけで支払うのか、新規債権と既存債権の組み合わせで支払うのか等の支払方法を選択することができる。
【0056】
支払先1304は納入者と同義である。支払者受益1309には最終的なMAiを、支払先受益1310には最終的なMBiにマイナス1を乗じたものを記録する。決定フラグ1311は、複数の支払方法のうちどれがユーザによって選ばれたかを記録するためのフラグである。
【0057】
図7のフローに戻って説明を続ける。支払条件DBへの記録処理(710)の後、電子債権記録機関接続システム100は、新規債権を除いた条件のもとで再度最適な譲渡債権の算出を行う。これは、条件分岐706で(1)に該当した場合の譲渡債権算出結果は新規債権を含むことになるが、既存債権のみを対象とした場合の最適な譲渡債権の組合せも合わせてユーザに提示することにより、ユーザの幅広いニーズに応えることを可能にするためである。具体的には、支払者がバランスシートの健全化のため負債をこれ以上増やしたくないと考えているケースや、支払者の取引先銀行が、支払者の事業リスク拡大防止のため新規債権発行を抑制しているケースが想定される。この処理については後述する(711)。
【0058】
条件分岐706で(2)に該当した場合は、Dは新規債権ではないので譲渡可能な上限額Sは存在するが、Pがそれを下回る場合である。この場合、Pに等しい額面を譲渡することが可能なので、譲渡額面J=Pとして、譲与価値残MAiおよびMBiを以下の式により算出する(712)。
Ai=MAi−1−J×RAi
Bi=MBi−1−J×RBi
【0059】
さらに、電子債権記録機関接続システム100は、ここまでの計算結果を支払方法DB123に記録する。支払方法DB123に記録する内容としては、既存債権のみによる支払方法(すなわち譲渡債権算出DB122に記録された内容)に加えて、条件分岐706で(1)に該当した場合についても、新規債権のみでの支払方法も記録する(713)。
【0060】
次に新規債権を発行しない場合についての譲渡債権算出処理711の処理について図8に沿って詳しく説明する。まず、電子債権記録機関接続システム100は、譲渡候補債権を抽出する(800)。この処理は、新規債権を対象外とすること以外は譲渡候補債権の抽出処理700と同様である。
【0061】
続いて、電子債権記録機関接続システム100は、全ての譲渡候補債権についてRAX、RBXを算出し(801)、RBXをRAXで割った値に基づき債権を降順ソートし(802)、譲与価値残の初期値MA0、MB0を算出する(803)。これらの処理は、図7の対応する処理と同じである。MA0、MB0は以下のように求められる。
A0=1000×0.98=980(万円)
B0=1000×0.99=990(万円)
【0062】
さらに電子債権記録機関接続システム100は、i=1とし(804)、譲渡債権算出DBの上からi番目の債権DについてPBiおよびPを算出する(805)。なお以下の計算は譲渡債権算出DBに書き出さずに、メモリ等の一時記憶できる装置の上で計算してもよい。
【0063】
ここで、図7の時とは違う、PBiの算出について説明する。
【0064】
図7のケースとは違い新規債権発行がない場合では、必ずしもMAi=−MBiかつMAi≧0かつMBi≦0の関係になるような債権Dが存在するとは限らない。図7のケースつまり、新規債権を発行できるケースでは、最悪でも新規債権のみで支払いを行えばMAi=MBi=0の関係になる最適譲渡債権額を算出することができるが、新規債権の発行の出来ない図8のケースでは、MAi=−MBiかつMAi≧0かつMBi≦0の関係を達成できないパターンについて考える必要がでてくる。その場合で考えられるパターンとは、債権を譲渡することにより、MAiつまり支払者aの譲与価値残が、MBiつまり納入者bの譲与価値残より速く減ってしまい、MBiが0の時に、MAiがすでにマイナスになってしまう状態である。つまり、MBiが0の時点ですでに支払者aは損をしたと感じる状態になっている。MBi=0の時とはつまり、納入者がちょうど価値分だけ支払をしてもらった状態である。仮に納入者bの譲与価値残MBi>0となると、納入者bは債権分の受け取りをすることができず、商取引上未払い金が残ってしまう状態にあるので、最低でもMBi=0の状態で譲渡債権を譲渡するものとして、その時のPBiを考える必要がある。(MBi=0に限定されるものではないので、違う任意の値をいれることとしてもよい。)
つまり、新規債権発行がない場合は、このボトムラインであるPBiを考慮して、PBiもしくはPのいずれがその時の最適譲渡債権額となるかを判断する必要がある。PBiとPどちらが最適譲渡債権額となるかは、その大きい方に限られる。つまり、P>PBiの時とは、Pが最適譲渡債権額となり、P<PBiの時は、ボトムラインであるPBiが最適譲渡債権額となる。具体的な計算方法は以下になる。
【0065】
Biは、債権Dの譲渡可能額面が無限大と仮定した場合に、D譲渡後の譲与価値残MBiが0になるようなDの譲渡額面と定義する。MBi=MBi−1−PBi×RBiであるので、PBiは以下の式で算出できる。
Bi=MBi−1/RBi
また、Pは先の図7のケースと同様に以下の式で算出する。
=(MA−1+MB−1) / (RAi+RBi)
本実施例では、
B1=990/0.99=1000(万円)
=(980+990)/(0.97+0.99)=1005.10(万円)
となる。
【0066】
ここで、P≧PBiのときは、図7のケースと同様に、債権Dを額面Pだけ譲渡した後の譲与価値残MAiおよびMBiはMAi≧0かつMBi≦0となり、しかもMAiとMBiの絶対値が等しくなるため、支払者と納入者がそれぞれ同じだけ「得した」と感じることとなるので、Pを採用する。反対に、P≦PBiのときは、債権Dを額面Pだけ譲渡した後の譲与価値残MAiおよびMBiはMAi≦0かつMBi≧0となってしまい、納入者にとって譲与される価値が当初期待していた価値に満たなくなってしまうため、Pは採用せずPBiを採用する。PBiを採用すると、MAi<0かつMBi=0となり、支払者にとっては納入者に譲与すべきと考えていた価値以上に譲与することとなる一方、納入者にとっては支払者から譲与されるべきと考えていた価値と同等の価値が譲与されることとなる。
【0067】
引き続き、図8に戻ってフローの説明を続ける。電子債権記録機関接続システム100は、PBiとPの大きいほう(以降、MAX(PBi, P)とする)が債権Dの譲渡可能額面S以下であるかどうかを判定する(806)。本実施例では、PB1=1000(万円)、P=1005.10(万円)、S=800(万円)なので、MAX(PB1, P)=P>Sである。
【0068】
MAX(PBi, P)>Sのとき、電子債権記録機関接続システム100は、譲渡額面J=Sとし、譲与価値残MAi、MBiを計算する(808)。本実施例においては以下のようになる。
A1=980−500×0.97=495(万円)
B1=990−500×0.99=495(万円)
【0069】
電子債権記録機関接続システム100は、iに1を加算し(808)、再び譲渡債権算出DBの上からi番目の債権DについてPBiおよびPを算出する(805)。本実施例においては以下のようになる。
B2=495/0.95=521.05(万円)
=(495+495)/(0.97+0.95)=515.63(万円)
【0070】
電子債権記録機関接続システム100は、1回目のループと同様にMAX(PBi, P)が債権Dの譲渡可能額面S以下であるかどうかを判定する(806)。本実施例では、
=800(万円)なのでMAX(PB2, P)=PB2<Sである。
【0071】
MAX(PBi, P)≦Sのとき、電子債権記録機関接続システム100は、譲渡額面J=MAX(PBi, P)とし、譲与価値残MAi、MBiを計算する(809)。本実施例においては以下のようになる。
A2=495−521.05×0.97=−10.42(万円)
B2=495−521.05×0.95=0(万円)
この時点での譲渡債権算出DB122を図14に示す。
【0072】
続いて、電子債権記録機関接続システム100は、ここまでの計算結果を支払方法DB123に記録する。支払方法DB123に記録する内容としては、既存債権のみによる支払方法(すなわち譲渡債権算出DB122に記録された内容)を記録する(810)。なお、新規債権のみでの支払方法は、既に処理710で記録済であるためここでは記録する必要はない。図14の譲渡債権算出DBで示した、債権No.003を500万円、債権No.001を521.05万円の組合せによる支払方法は、図13では支払IDが0001、枝番が3の行で表されている。
【0073】
図6のフローに戻って説明を続ける。電子債権記録機関接続システム100は、支払方法DB123に記録された支払方法の候補をEコマースシステム170に送信する。これは、譲渡債権の候補がEコマースシステムのみに送られるよう限定するものではなく、企業端末や、譲渡債権の候補の算出をもとめるユーザの端末に送信されるとしてもよい。ここでは、支払条件の受信処理610で受信した支払条件に対応する支払ID1301を持つデータ全てを送信する。例えば図13では、支払IDが0001の5つのデータを送信する。この支払方法候補の送信処理は、支払方法候補送信機能112に相当する(612)。
【0074】
Eコマースシステム170は、電子債権記録機関接続システム100から支払方法の候補を受信し、それらを支払者および納入者の端末に表示する(601)。
【0075】
図15に、支払者の端末に表示する支払方法候補を例示する。枝番1302ごとに、債権No.1305、支払種別1306、債権の期日1307、支払先1304、譲渡額面1308、および支払者受益1309に相当する情報を表示する。また、支払方法を選択するラジオボタン1500、Eコマースシステム170に選択した支払方法を送信するためのボタン1501を表示する。
【0076】
図17に、納入者の端末に表示する支払方法候補を例示する。枝番1302ごとに、支払種別1306、債権の期日1307、支払者1303、譲渡額面1308、および支払先受益1310に相当する情報を表示する。また、支払方法を選択するラジオボタン1700、Eコマースシステム170に選択した支払方法を送信するためのボタン1701を表示する。
【0077】
図6に戻って説明を続ける。Eコマースシステム170は、支払方法を決定する(602)。この決定方法としては、支払者の企業端末から送信された支払方法を採用してもよいし、納入者の企業端末から送信された支払方法を採用してもよいし、あるいは支払者・納入者双方の企業端末から送信された支払方法に基づいてもよい(602)。
【0078】
Eコマースシステム170は、電子債権記録機関接続システム100に対し、決定した支払方法を送信し、処理を終了する(603)。
【0079】
電子債権記録機関接続システムは支払方法を受信し、支払方法DB123の決定フラグ1311を更新する(613)。この処理は支払方法受信機能113に相当する。
【0080】
電子債権記録機関接続システム100は、支払方法DB123を参照し、決定フラグ1311が立っている支払方法を実現するための記録請求を電子債権記録機関システム150に対して行う。例えば、種別1306が新規発行となっているものについては、支払者1303を債務者とし、支払先1304を債権者とする発生記録請求を行う。あるいは、種別1306が部分譲渡となっているものについては、支払者1303から支払先1304への分割譲渡記録請求を行う。さらに電子債権記録機関接続システム100は、額面の一部または全部を譲渡した電子記録債権について、電子債権DB121の譲渡可能額面507を更新して、処理を終了する。具体的には、それまでの譲渡可能額面507から譲渡額面1308を差し引いたものを新しい譲渡可能額面507とする(614)。この記録請求処理は、債権記録請求機能114に相当する。
【0081】
電子債権記録機関システム150は、電子記録債権の記録請求を受け付け、処理を終了する(620)。
【符号の説明】
【0082】
110:支払条件受信機能、111:譲渡債権算出機能、112:支払方法候補送信機能、113:支払方法受信機能、114:債権記録請求機能、120企業信用力DB、121:電子債権DB、122:譲渡債権算出DB、123:支払方法DB、124:利用者DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
債務者と債権者の二者間における対価の支払いに用いる電子記録債権を特定するための電子譲渡債権候補決定システムであって、
前記債務者と前記債権者との間で決められた支払額と支払期日とを含む支払条件の入力を受け付ける支払条件受付手段と、
前記債務者が債権者として登録されている電子記録債権のうち、前記電子記録債権の支払期限を含む前記電子記録債権の属性データから前記債権者に譲渡可能な債権を譲渡可能債権として抽出し、前記譲渡可能債権について、前記債務者が参照することのできる第1の企業信用力に基づいて算出した単位額面あたりの現在価値に対する、前記債権者が参照することのできる第2の企業信用力に基づいて算出した単位額面あたりの現在価値の比率が大きいものから優先的に支払いの債権とする優先順位を決定し、前記優先順位に従って、前記債務者から前記債権者への譲渡債権候補として選択する譲渡債権算出手段と、
前記譲渡債権候補を前記債務者および、債権者へ出力する譲渡債権候補出力手段と、
を備えることを特徴とする電子譲渡債権候補決定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子譲渡債権候補決定システムであって、
前記譲渡債権候補の中から選択された対価の支払いに用いる譲渡債権を取得する支払方法取得手段と、
前記取得した譲渡債権の電子的な原簿の記録請求を電子記録債権の電子的な原簿を管理する電子債権記録機関システムに送信する債権記録請求手段と、
をさらに備えることを特徴とする電子譲渡債権候補決定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電子譲渡債権候補決定システムであって、
前記譲渡債権算出機能は、
前記電子記録債権から、前記債務者を債務者とし前記支払条件の前記支払期日を支払期日とする新規債権をさらに前記譲渡可能債権として抽出することを、
特徴とする電子譲渡債権候補決定システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電子譲渡債権候補決定システムであって、
前記譲渡債権算出手段は、
一番優先順位の高い前記譲渡可能債権を第1の譲渡債権候補として、
新規債権を発行した場合における前記第1の企業信用力に基づいて算出した前記新規債権に対する単位額面あたりの現在価値と前記支払額の積から計算した前記債務者から前記債権者への第1の債権者支払価値残から第1の譲渡額面と前記第1の企業信用力に基づいて算出した前記第1の譲渡債権候補に対する単位額面あたりの現在価値の積を減じた第2の債権者支払価値残と、
新規債権を発行した場合における前記第2の企業信用力に基づいて算出した前記新規債権に対する単位額面あたりの現在価値と前記支払額の積から計算した前記債務者から前記債権者への第1の債務者受取価値残から、前記第1の譲渡額面と前記第2の企業信用力に基づいて算出した前記第1の譲渡債権候補に対する単位額面あたりの現在価値の積を減じた第2の債務者受取価値残にマイナス1を乗じた値とが、等しくなるように前記譲渡額面を決定し、
前記第1の譲渡債権候補が新規債権の場合は、前記譲渡額面を新規債権の発行額として新規債権を譲渡債権候補と決定し、
新規債権ではない場合で、前記譲渡額面が前記第1の譲渡債権候補の譲渡可能額面より小さいもしくは等しい場合、前記譲渡額面分だけ前記第1の譲渡債権候補から分割して譲渡債権候補と決定し、
新規債権ではない場合で、前記譲渡額面が前記第1の譲渡債権候補の譲渡可能額面より大きい場合、前記第1の譲渡債権候補を譲渡債権候補のうちのひとつとして決定し、2番目に優先順位の高い前記譲渡可能債権を第2の譲渡債権候補として、
前記第2の債権者支払価値残から前記第1の譲渡債権候補の譲渡可能額面と前記第1の企業信用力に基づいて算出した前記第1の譲渡債権候補に対する単位額面あたりの現在価値の積を減じた前記第2の譲渡債権候補についての第3の債権者支払価値残を算出し、
前記第2の債務者受取価値残から前記前記第1の譲渡債権候補の譲渡可能額面と前記第2の企業信用力に基づいて算出した前記第1の譲渡債権候補に対する単位額面あたりの現在価値の積を減じた前記第2の譲渡債権候補についての第3の債務者受取価値残を算出し、
前記第3の債権者支払価値残、前記第3の債務者受取価値残から新たな譲渡額面を算出し、
前記第2の譲渡候補債権が新規債権の場合は、前記新たな譲渡額面を新規債権の発行額として前記第2の譲渡候補債権を譲渡債権候補のひとつとして決定し、
前記第2の譲渡債権候補の譲渡可能額面と前記新たな譲渡額面を比較し、新規債権でない場合で、前記新たな譲渡額面が第2の譲渡債権候補の譲渡可能額面より小さいもしくは等しい場合は、前記新たな譲渡額面分だけ前記第2の譲渡債権候補から分割して譲渡債権候補のうちのひとつとして決定し、
新規債権ではない場合で、大きい場合は、前記第2の譲渡債権候補を譲渡債権候補のうちのひとつとして決定し、3番目に優先順位の高い前記譲渡可能債権を第3の譲渡債権候補として、第3の譲渡債権候補に関する譲渡額面を算出し比較していき、同様の方法で次々計算される譲渡債権候補が次々計算される譲渡額面より大きいものがなくなるまでか、譲渡債権候補が新規債権となる場合まで、優先順位に従って譲渡債権候補を変えて繰り返し計算して、次々複数の譲渡債権候補を決定する
ことを特徴とする電子譲渡債権候補決定システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電子譲渡債権候補決定システムであって、
前記譲渡債権算出手段は、
一番優先順位の高い前記譲渡可能債権を第1の譲渡債権候補として、
新規債権を発行したと場合における前記第1の企業信用力に基づいて算出した前記新規債権に対する単位額面あたりの現在価値と前記支払額の積から計算した前記債務者から前記債権者への第1の債権者支払価値残から第1の譲渡額面と前記第1の企業信用力に基づいて算出した前記第1の譲渡債権候補に対する単位額面あたりの現在価値の積を減じた第2の債権者支払価値残と、
新規債権を発行した場合における前記第2の企業信用力に基づいて算出した前記新規債権に対する単位額面あたりの現在価値と前記支払額の積から計算した前記債務者から前記債権者への第1の債務者受取価値残から、前記第1の譲渡額面と前記第2の企業信用力に基づいて算出した前記第1の譲渡債権候補に対する単位額面あたりの現在価値の積を減じた第2の債務者受取価値残にマイナス1を乗じた値とが、等しくなるような前記第1の譲渡額面と、
前記第2の譲与価値残から、前記支払額の第2の譲渡額面と前記第2の企業信用力に基づいて算出した前記第1の譲渡債権候補に対する単位額面あたりの現在価値の積を減じた値が、0になるような前記第2の譲渡額面とのうち、
大きいほうの値を譲渡額面として決定し、
前記譲渡額面が前記第1の譲渡債権候補の譲渡可能額面より小さいもしくは等しい場合、前記譲渡額面分だけ前記第1の譲渡債権候補から分割して譲渡債権候補を決定し、
前記譲渡額面が前記第1の譲渡債権候補の譲渡可能額面より大きい場合、前記第1の譲渡債権候補を譲渡債権候補のうちのひとつとして決定し、2番目に優先順位の高い前記譲渡可能債権を第2の譲渡債権候補として、
前記第2の債権者支払価値残から前記第1の譲渡債権候補の譲渡可能額面と前記第1の企業信用力に基づいて算出した前記第1の譲渡債権候補に対する単位額面あたりの現在価値の積を減じた前記第2の譲渡債権候補についての第3の債権者支払価値残を算出し、
前記第2の債務者受取価値残から前記前記第1の譲渡債権候補の譲渡可能額面と前記第2の企業信用力に基づいて算出した前記第1の譲渡債権候補に対する単位額面あたりの現在価値の積を減じた前記第2の譲渡債権候補についての第3の債務者受取価値残を算出し、
前記第3の債権者支払価値残、前記第3の債務者受取価値残から新たな譲渡額面を算出し、
前記第2の譲渡債権候補の譲渡可能額面と前記新たな譲渡額面を比較し、前記新たな譲渡額面が第2の譲渡債権候補の譲渡可能額面より小さいもしくは等しい場合は前記新たな譲渡額面分だけ前記第2の譲渡債権候補から分割して譲渡債権候補のうちのひとつとして決定し、
大きい場合は、前記第2の譲渡債権候補を譲渡債権候補のうちのひとつとして決定し、3番目に優先順位の高い前記譲渡可能債権を第3の譲渡債権候補として、第3の譲渡債権候補に関する譲渡額面を算出し比較していき、同様の方法で次々計算される譲渡債権候補が次々計算される譲渡額面より大きいものがなくなるまで優先順位に従って譲渡債権候補を変えて繰り返し計算して、次々複数の譲渡債権候補を決定する
ことを特徴とする電子譲渡債権候補決定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−242960(P2011−242960A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113818(P2010−113818)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)