説明

電子部品およびその製造方法

【課題】電気化学素子の形成後に絶縁材の装着有無及び配置状態を外部視認により良否判別できるようにして電気化学素子の不良品の流出を防止し、低ESRであると共に極めて優れた耐ショート性を安定確保した電子部品を提供する。
【解決手段】引出端子21、22の一方の端部21a、22aを夫々接続した陽極箔24と陰極箔25とを絶縁材27〜30を一部に貼り付けたセパレータ26を介して巻回すると共に、巻回によって形成される端面23aより引出端子21、22の他方の端部21b、22bを外部へ引出したコンデンサ素子23を備えた電解コンデンサにおいて、絶縁材27〜30が少なくとも引出端子21、22の一方の端部21a、22aと対応するセパレータ26の部位を被覆し、かつこの絶縁材27〜30の一端が端面23aを構成している陽極箔24、陰極箔25及びセパレータ26のいずれの端部よりも突出するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用される電子部品とその製造方法に関するもので、特に引出端子を接続した電極箔を巻回する電気化学素子を備えたコンデンサや電池等の電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のデジタル化に伴い、それらの電源出入力の回路、例えば平滑回路や制御回路に使用される電子部品に対して、小型、大容量、そして等価直列抵抗(以下、ESRと略す)の小さいものが求められるようになってきている。
【0003】
ここで、図8は、従来の電子部品の一例である電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図、図9は、同電解コンデンサの構成を示した断面図である。
【0004】
この従来の電解コンデンサは、図9に示すように、引出端子の一方の端部1a、2aをそれぞれ接続すると共に、引出端子の他方の端部1b、2bを外部に引き出した電気化学素子であるコンデンサ素子3と、前記引出端子の他方の端部1b、2bの各々を外部に導出するようにして、コンデンサ素子3を電解質である駆動用電解液(図示せず)と共に封じた外装体11とからなっている。
【0005】
また、前記外装体11は、駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子3を収納した有底筒状の金属製の外装ケース12と、前記引出端子の他方の端部1b、2bをそれぞれ挿通させる貫通孔13a、13bを備えると共に外装ケース12の開口部に配置され、外装ケース12の外周面に設けた絞り加工部12aで絞ることによって外装ケース12の開口部を封止した封口体13とで構成されている。なお、封口体13には、ゴムパッキングが用いられている。
【0006】
また、前記コンデンサ素子3は、図8に示すように、アルミニウム等の弁金属からなる箔をエッチング処理により粗面化しさらにその表面に誘電体である陽極酸化皮膜を化成処理によって形成(図示せず)した陽極箔4と、アルミニウム等の弁金属からなる陰極箔5とを、絶縁性のセパレータ6を介して積層して巻回されており、そして、前記引出端子の一方の端部1a、2aを、陽極箔4と陰極箔5にそれぞれ接続部1d、2dで接続すると共に、前記引出端子の他方の端部1b、2bを、陽極箔4、陰極箔5およびセパレータ6を巻回して形成された端面より引出すようにして構成されている。
【0007】
また、前記セパレータ6には、前記引出端子の一方の端部1a、2aと対応するセパレータ6の部位を被覆するように絶縁材7、8が貼り付けられている。
【0008】
なお、絶縁材7、8は、陽極箔4、陰極箔5に接続した前記引出端子の一方の端部1a、2aを直接被覆するように貼り付けて固定する場合もある。
【0009】
以上のように構成された従来の電解コンデンサでは、ESRの低減を目的として、陽極箔4と陰極箔5との間に介在させるセパレータ6を、より低密度化する場合、その一方で、引出端子の一方の端部1a、2aのカットバリや、これらの引出端子の一方の端部1a、2aが陽極箔4、陰極箔5と夫々接続された接続部1d、2dのバリが、セパレータ6を突き破ってショートの発生を増大させてしまうという課題を生じてしまう。この課題に対し、前記従来の電解コンデンサは、ショート発生の主要因となる引出端子の一方の端部1a、2aと対応するセパレータ6の局部的な部位に、絶縁材7、8を貼り付けた構成とすることにより、低ESRを実現すると同時に、耐ショート性を高め、高信頼化できるというものである。
【0010】
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−286959号公報
【特許文献2】特開平6−45202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記従来の電解コンデンサでは、図8に示すように、引出端子1、2を接続した陽極箔4と陰極箔5とをセパレータ6を介して積層して巻回する事前に、絶縁材7、8は、セパレータ6の表面のうち、引出端子の一方の端部1a、2aと対応すると予測される部位を被覆するようにしてセパレータ6に貼り付けられて固定される。そして、この絶縁材7、8が適正に配置されたかどうかは、一般的にはセンサーを用いて確認している。
【0013】
その後、これらの絶縁材7、8を一部に貼り付けたセパレータ6を介して、陽極箔4と陰極箔5とを積層して巻回し、コンデンサ素子3を作製する。
【0014】
ここで、従来の電解コンデンサで用いられる一般的な巻回方法は、陽極箔4、陰極箔5、セパレータ6の各部材をガイドに沿わせて走行させながら、これらを巻き芯に巻きつけていく方法であるが、その巻回動作の最中、絶縁材7、8には、ガイドとの摩擦や曲げストレスが加わってしまい、絶縁材7、8のセパレータ6への固定状態が十分でない場合、巻回動作の途中で絶縁材7、8が外れてしまう恐れがある。なお、巻回の直径が小さい箇所に絶縁材7、8を配置しようとすると曲率が大きくなるため、絶縁材7、8への機械的ストレスも大きくなり、絶縁材7、8が外れてしまう可能性が高くなる。
【0015】
一方、巻回により形成されたコンデンサ素子3の端面は、その端面より引出された引出端子の他方の端部1bと陰極箔5との接触、引出端子の他方の端部2bと陽極箔4との接触、および、金属製の外装ケース12と陽極箔4との接触を防ぐため、絶縁性のセパレータ6の端部が最も突出した構成となっている。このため、絶縁材7、8を外部より視認することはできない。したがって、コンデンサ素子3が一旦作製されてしまった後には、絶縁材7、8が装着されたかどうか、また、所定位置に配置されたかどうかを判別することができない。つまり、コンデンサ素子3の作製前の時点では、絶縁材7、8がセパレータ6に装着され、引出端子の一方の端部1a、2aと対応すると予測される部位を被覆するように配置されていたとしても、コンデンサ素子3の作製後の時点では、絶縁材7、8がコンデンサ素子3内部に装着されていない、或いは装着されていたとしても配置異常となっている場合が生じてしまう。このコンデンサ素子3の不良品が排除されずに流出してしまい、その結果、従来の電解コンデンサの構成では、耐ショート性を安定して確保できないという課題を有していた。
【0016】
そこで、本発明は、このような従来の課題を解決し、電気化学素子を形成した後に、絶縁材の装着有無及び配置状態を外部視認により良否判別できるようにして電気化学素子の不良品の流出を防止し、低ESRであると共に、極めて優れた耐ショート性を安定的に確保した高信頼の電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、引出端子の一方の端部をそれぞれ接続した陽極箔と陰極箔とを、絶縁材を一部に貼り付けたセパレータを介して巻回すると共に、巻回することによって形成される端面より前記引出端子の他方の端部を外部へ引き出した電気化学素子を備えた電子部品において、前記絶縁材が、少なくとも引出端子の一方の端部と対応するセパレータの部位を被覆しており、かつこの絶縁材の一端が、前記引出端子の他方の端部を外部へ引き出した側の電気化学素子の端面を構成している前記陽極箔、前記陰極箔および前記セパレータのいずれの端部よりも突出している構成としたものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、前記セパレータに貼り付けられた絶縁材が、前記引出端子の他方の端部を外部へ引き出した側の電気化学素子の端面を構成している前記陽極箔、前記陰極箔および前記セパレータのいずれの端部よりも突出していることにより、電気化学素子の内部に絶縁材が配置されていることが、電気化学素子の外部から視認できるため、一旦電気化学素子を作製してしまった後でも、絶縁材の装着有無及び配置状態の良否判別を行うことができる。この結果、本発明の電子部品は、絶縁材が装着されていない、或いは装着されていても配置異常となっている電気化学素子の不良品を、電気化学素子形成後に外部からの視認によって的確に排除することができ、低ESRであると共に、極めて優れた耐ショート性を安定的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態における電子部品の一例である電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図
【図2】同電解コンデンサの断面図
【図3】同電解コンデンサの製造工程図
【図4】同電解コンデンサの製造工程図
【図5】本発明の実施の形態における電子部品の他例である電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図
【図6】同電解コンデンサの断面図
【図7】同電解コンデンサの製造工程における絶縁材のセパレータへの装着工程とコンデンサ素子作成後の絶縁材の装着有無及び配置の良否判別工程図
【図8】従来の電子部品の一例である電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図
【図9】同電解コンデンサの断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態1、2を用いて本発明の電子部品とその製造方法について説明する。
【0021】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の実施の形態における電子部品の一例である電解コンデンサとその製造方法について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態1における電子部品の一例である電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図、図2は、同電解コンデンサの断面図、図3、4は、同電解コンデンサの製造工程図である。
【0023】
まず、本発明の実施の形態における電子部品の一例である電解コンデンサの構成について図1、2を用いて説明する。
【0024】
図2に示すように、本発明にかかる電解コンデンサは、引出端子の一方の端部21a、22aをそれぞれ接続すると共に、引出端子の他方の端部21b、22bを外部に引き出した電気化学素子であるコンデンサ素子23と、前記引出端子の他方の端部21b、22bの各々を外部に導出するようにして、コンデンサ素子23を電解質である駆動用電解液(図示せず)と共に封じた外装体31とからなっている。
【0025】
また、前記外装体31は、駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子23を収納した有底筒状の外装ケース32と、前記引出端子の他方の端部21b、22bをそれぞれ挿通させる貫通孔33a、33bを備えると共に前記外装ケース32の開口部に配置され、この外装ケース32の外周面に設けた絞り加工部32aで絞ることによって外装ケース32の開口部を封止した封口体33とで構成されている。
【0026】
また、前記コンデンサ素子23は、図1に示すように、アルミニウム等の弁金属からなる箔をエッチング処理により粗面化しさらにその表面に誘電体酸化皮膜を化成処理によって形成(図示せず)した陽極箔24と、アルミニウム等の弁金属からなる陰極箔25とを、絶縁材27、28、29、30を所定の位置に備えたセパレータ26を介して積層して巻回されており、そして、前記引出端子の一方の端部21a、22aを、陽極箔24と陰極箔25にそれぞれ接続部21d、22dで接続すると共に、前記引出端子の他方の端部21b、22bを、陽極箔24、陰極箔25およびセパレータ26を巻回して形成された端面より引出すようにして構成されている。
【0027】
なお、コンデンサ素子23は、陽極箔24と陰極箔25とをセパレータ26を介して積層した後巻回せずに、平面状の陽極箔24と陰極箔25とをセパレータ26を介して積層する構成であってもよい。
【0028】
なお、電気化学素子とは、電気的機能を司る能動、受動素子全般のことを示し、例えば、コンデンサの場合はコンデンサ素子であり、電池の場合は電池素子、半導体の場合は半導体素子などである。
【0029】
また、前記セパレータ26の一部に備えられた絶縁材27、28、29、30は、前記引出端子の一方の端部21a、22aと対応するセパレータ26の部位を被覆するように配置されており、そしてさらに、前記絶縁材27、28の一端が、前記引出端子の他方の端部21a、22aを外部へ引き出した側のコンデンサ素子23の端面を構成している前記陽極箔24、前記陰極箔25および前記セパレータ26のいずれの端部よりも突出している。
【0030】
なお、引出端子の一方の端部21a、22aと対応するセパレータ26の部位とは、陽極箔24と陰極箔25とをセパレータ26を介して積層して巻回した状態、つまりコンデンサ素子23が形成された状態において、陽極箔24、陰極箔25と引出端子の一方の端部21a、22aの各々とが重なっている部分のうち、引出端子の一方の端部21a、22a側で引出端子の一方の端部21a、22aに接触するセパレータ26の部位のことであり、もしくは、陽極箔24、陰極箔25と引出端子の一方の端部21a、22aの各々とが重なっている部分のうち、陽極箔24、陰極箔25側で接続部21d、22dの形成によって生じた凹凸部分に接触するセパレータ26の部位のことである。
【0031】
本実施の形態における電解コンデンサでは、4枚の絶縁材27、28、29、30が、セパレータ26の所定部位の外表面の表側若しくは裏側を被覆するように備えられている。絶縁材27は、引出端子の一方の端部21a側で引出端子の一方の端部21aに接触するセパレータ26の部位を含む範囲を被覆しており、絶縁材28は、引出端子の一方の端部22a側で引出端子の一方の端部22aに接触するセパレータ26の部位を含む範囲を被覆している。絶縁材29は、陽極箔24側で接続部21dの形成によって生じた凸部分に接触するセパレータ26の部位を含む範囲を被覆しており、絶縁材30は、陰極箔25側で接続部22dの形成によって生じた凹凸部分に接触するセパレータ26の部位を含む範囲を被覆している。なお、これらの4箇所の全てを絶縁材で被覆しなくても、いずれか1箇所以上であればよい。
【0032】
また、前記セパレータ26は、その材質として、セルロース、クラフト、マニラ、エスパルト、ザイザル麻、ヘンプ、紅麻、コットン等の他、キュプラ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、レーヨン等の合成繊維系ものや、ガラス質等を含有するもの、或いはこれらの混抄紙を用いることができる。
【0033】
また、絶縁材27、28、29、30は、その材質として、絶縁性のもので、電解コンデンサの特性に影響を及ぼさないものを選択する。
【0034】
また、特に、電解質として駆動用電解液を用いる場合、絶縁材27、28、29、30が電解液を透過しにくいと、陽極箔24、陰極箔25への駆動用電解液の接触を阻害してしまい、静電容量の引き出し率の低下や、ESRの増加を招いてしまう。このため、電解質として駆動用電解液を用いる際に適用できるセパレータ26と同様の材質のものを用いることが好ましい。
【0035】
また、絶縁材27、28、29、30の形状は、引出端子の一方の端部21a、22aの形状、接続部21d、22dの形状に合わせて適宜選択するが、セパレータ26への装着の作業性や配置確認の容易性の点から、方形状が好ましい。
【0036】
なお、絶縁材27、28、29、30は、粘着材によって、若しくは、圧着等によってセパレータ26の所定部位を含む範囲に固定されている。粘着材を用いる場合、その材質としては、電解コンデンサの特性に影響を及ぼさないものを選択する。具体的には、フェノール系、エポキシ系、シアノアクリレート系、ポリイミド系、アクリル系、シリコーン系、ゴム系、或いはホットメルト系などが挙げられる。
【0037】
なお、絶縁材27、28、29、30は、セパレータ26の表面に固定する以外に、陽極箔24、陰極箔25へ直接固定してもよい。
【0038】
また、引出端子21、22には、一般的に、電極材として用いたものと同様のアルミニウム等を含む金属製の基材を適用している。また、この引出端子の一方の端部21a、22aは、陽極箔24、陰極箔25に夫々接続され、陽極箔24と陰極箔25とがセパレータ26を介して巻回されると同時に巻き込まれていくことから、一般的に略偏平状の形状とすることが好ましい。また、引出端子の他方の端部21b、22bは、封口体33に設けられた貫通孔33a、33bを挿通して外部に導出しており、これらの貫通孔33a、33bとの密着性を確保する観点から、丸棒状の形状とすることが好ましい。なお、引出端子の他方の端部21b、22bに、金属ワイヤ21c、22cを接合して回路基板と接続する際の外部端子とすることにより、形状加工やはんだメッキ等を容易にすることができる。
【0039】
また、前記接続部21d、22dは、陽極箔24、陰極箔25に夫々引出端子の一方の端部21a、22aを重ね合わせ、針カシメ接続法、超音波接続法、冷間圧接法等の方法により形成される。これら接続部21d、22dにおいて、陽極箔、陰極箔と引出端子の一方の端部の各々とが、部分的に金属間結合を有した状態となっている。
【0040】
また、駆動用電解液は液体電解質であり、溶媒に溶質を溶解する形で構成されている。一般的に、溶媒材料としては、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン、スルホラン等に代表される有機溶剤が用いられ、溶質材料としては、アジピン酸やマレイン酸等の酸成分とアンモニア等の塩基成分等を含んだ塩が用いられる。
【0041】
なお、駆動用電解液には、ガス吸収、耐電圧の安定化、pH調整、酸化防止等を目的とした添加剤を適宜含むことができる。
【0042】
また、電解質としては、固体電解質を用いてもよく、固体電解質と液体電解質を併用してもよい。固体電解質の好適な具体例としては、ポリチオフェンやその誘導体等の導電性ポリマーなどが挙げられる。なお、この導電性ポリマー中には、ドーパントが取り込まれており導電性を発現する役割を担っており、代表的なドーパント剤としては、p−トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等の酸が用いられる。そして、前記コンデンサ素子23を構成する陽極箔24と陰極箔25との間に、前記ポリチオフェンやその誘導体等の導電性ポリマーからなる固体電解質層(図示せず)を形成するとよい。
【0043】
また、封口体33は、EPTやIIR等のゴム材料のほか、エポキシ樹脂などの樹脂材料を用いることができる。
【0044】
次に、以上のように構成した実施の形態における電子部品の一例である電解コンデンサの製造方法について図1、2、3、4を用いて説明する。
【0045】
まず、陽極箔24、陰極箔25に引出端子21、22を各々接続する。図3、4は、本発明の電解コンデンサの製造工程図であり、工程A図は、引出端子の一方の端部21aを陽極箔24に接続する接続工程の要部拡大図である。この工程A図の(1)に示すように、陽極箔24を一定の幅と長さに切断し、この陽極箔24に引出端子の一方の端部21aを重ね合わせ、針カシメ接続法により接続部21dを形成する。陽極箔24と引出端子の一方の端部21aとが重なっている部分において、引出端子の一方の端部21a側では、工程A図の(1)に示すように、針カシメ接続法により、接続部21dの中心に貫通孔が形成される。そして、陽極箔24側では、工程A図の(2)に示すように、針カシメ接続法により、接続部21dの中心の貫通孔から放射状に引出端子21の一方の端部21aが部分的に折り返され、凸部分を生じる。
【0046】
なお、引出端子21の接続方法としては、針カシメ接続法以外に、超音波接続法、冷間圧接法等の方法により接続してもよい。
【0047】
また、陰極箔25についても同様に、一定の幅と長さに切断し、その陰極箔25に引出端子の一方の端部22aを接続する。
【0048】
なお、陽極箔24の表面は、図示していないが、エッチングや金属粒子の蒸着等によって表面積を適宜拡大され、さらにその表面には、酸化皮膜からなる誘電体層を形成する。この誘電体層は、電極材であるアルミニウム等の弁金属を陽極酸化することにより誘電体酸化皮膜として得られる他、電極材に誘電体層を蒸着や塗布によって形成してもよい。
【0049】
なお、陰極箔25の表面は、図示していないが、駆動用電解液や固体電解質層との接触状態をよくするため、必要に応じて、エッチング、酸化皮膜、金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行う。
【0050】
上記の引出端子21、22を陽極箔24、陰極箔25に夫々接続する接続工程を行う一方で、陽極箔24と陰極箔25との間に介在させるセパレータ26の一部に絶縁材27、28、29、30を装着する。この装着工程の詳細説明は、便宜上後ほど行う。
【0051】
次に、絶縁材27、28、29、30を一部に装着したセパレータ26を介在させて、前記陽極箔24と前記陰極箔25とを積層して巻回し、コンデンサ素子23を作製する。図3の工程C図は、巻回後のコンデンサ素子23の断面図である。このコンデンサ素子23は、巻き芯にセパレータ26、陰極箔25、陽極箔24の各部材を巻きつけ、前記セパレータ26を介在させるようにして陽極箔24と陰極箔25とを積層し、引出端子の他方の端部21b、22bを外部へ導出するようにしてロール状に巻回して略円筒形とし、その外周側面を絶縁テープ36で巻き止めるようにして作製する。この際に、前記引出端子の他方の端部21b、22bを外部へ導出するようにして巻回する。そして、この巻回によって形成された端面のうち、前記引出端子の他方の端部21b、22bを外部に引き出した側の端面23aにおいて、絶縁材27、28、29、30の突出部27b、28b、29b、30bを形成するようにする。これらの突出部27b、28b、29b、30bは、端面23aを構成する前記陽極箔24、前記陰極箔25および前記セパレータ26のいずれの端部よりも突出するようにする。
【0052】
ここで、前記絶縁材27、28、29、30は、コンデンサ素子23を作製する工程の事前に、セパレータ26の所定の位置に予め装着しておく。図3の工程B図は、陽極箔24に接触するセパレータ26への絶縁材27、29の装着工程の要部拡大図である。図3の工程B図の(1)に示すように、コンデンサ素子23を作製する工程の事前に、前記絶縁材27は、その一端を前記セパレータ26の端部より所定寸法だけはみ出した、はみ出し部27aを有するようにして、セパレータ26の外表面上に配置されている。なお、セパレータ26の外表面とは、表側、裏側のいずれであってもよい。ここで、前記セパレータ26の端部とは、後の工程でコンデンサ素子23を作製した時に、前記引出端子の他方の端部21bを外部に引き出す側となるセパレータ26の端部である。そしてさらに、前記絶縁材27は、後の工程でコンデンサ素子23を作製した時に、少なくとも前記引出端子の他方の端部21bと対応すると予測される前記セパレータ26の部位を被覆するように配置される。この配置が適正であるかどうかは、センサー等により位置検出することができる。
【0053】
また、図3の工程B図の(2)に示すように、コンデンサ素子23を作製する工程の事前に、前記絶縁材29は、その一端を前記セパレータ26の端部より所定寸法だけはみ出した、はみ出し部29aを有するようにして、セパレータ26の外表面上に配置され、さらに、後の工程でコンデンサ素子23を作製した時に、少なくとも前記引出端子21の他方の端部21bと対応すると予測される前記セパレータ26の部位を被覆するように配置される。
【0054】
前記絶縁材27、29と同様にして、絶縁材28、30も、その一端を前記セパレータ26の端部より所定寸法だけはみ出した、はみ出し部28a、30aを夫々有するようにして、セパレータ26の外表面上に夫々配置され、さらに、後の工程でコンデンサ素子23を作製した時に、少なくとも前記引出端子の他方の端部22bと対応すると予測される前記セパレータ26の部位を被覆するように配置される。
【0055】
また、これらの絶縁材27、28、29、30は、セパレータ26と接触する部分において、粘着材による接着か、圧着によってセパレータ26に固定するようにする。
【0056】
なお、後のコンデンサ素子23の作製工程では、陽極箔24と陰極箔25とセパレータ26とを巻回する際の巻きずれによる組立ばらつきを生じる。したがって、巻回後の突出部27b、28b、29b、30bの寸法を確保するため、はみ出し部27a、28a、29a、30aの寸法は、巻きズレによる組立ばらつきを考慮に入れて決定する。
【0057】
なお、絶縁材27、28、29、30は、陽極箔24、陰極箔25に接続した引出端子の一方の端部21a、22aを直接被覆するように陽極箔24、陰極箔25に貼り付けて固定してもよい。
【0058】
次に、作製したコンデンサ素子23について、絶縁材27、28、29、30の装着有無及び配置の良否の判別を行う。
【0059】
まず、絶縁材27、28、29、30の装着有無について確認する。この確認方法は、コンデンサ素子23の端面23aから突出する絶縁材27、28、29、30の突出部27b、28b、29b、30bの有無を視認することによって行うことができる。
【0060】
さらに、これらの突出部27b、28b、29b、30bを有していたもの、つまり絶縁材が27、28、29、30コンデンサ素子23内部に挿入されていたものについて、その配置の良否判別を行う。
【0061】
ここで、絶縁材27、28、29、30の配置の良否判別において不良とするものは、特に、コンデンサ素子23の巻回方向に対する絶縁材27、28、29、30の配置ずれ、つまり絶縁材27、28、29、30の長さ方向の配置ずれを指している。絶縁材27、28、29、30の配置ずれには、長さ方向の配置ずれと幅方向の配置ずれに分けられるが、幅方向の配置ずれは、巻きずれによる組立ばらつきに起因しているが、巻き取り機のガイドにより制御されており、およそ0.1mm程度であり、影響度として小さい。一方、長さ方向の配置ずれは、陽極箔4、陰極箔5へ引出端子の一方の端部21a、22aを夫々接続する際の接続位置のばらつきや、陽極箔24と陰極箔25とセパレータ26の各部材の巻き込み開始位置のばらつきがあり、影響度として大きい。
【0062】
この絶縁材27、28、29、30の長さ方向の配置ずれの確認方法は、突出部27b、29bと端面23aから引出されている引出端子の他方の端部21bとの位置関係、及び突出部28b、30bと端面23aから引出されている引出端子の他方の端部22bとの位置関係を視認することによって行うことができる。突出部27b、29bが、引出端子の他方の端部21bの長さ(巻回方向の長さ)から割り出される、引出端子の一方の端部21aの長さ(巻回方向の長さ)以上の範囲で、前記引出端子の他方の端部21bと対向していれば良品と判別し、対向していなければ不良品と判別する。同様に、突出部28b、30bが、引出端子の他方の端部22bの長さ(巻回方向の長さ)から割り出される、引出端子の一方の端部22aの長さ(巻回方向の長さ)以上の範囲で、前記引出端子の他方の端部22bと対向していれば良品と判別し、対向していなければ不良品と判別する。そして、不良品と判別されたコンデンサ素子23は、排除し、後の組立工程へ流出させないようにする。
【0063】
また、本発明にかかる電解コンデンサを、高速かつ連続で大量生産する場合、絶縁材27、28、29、30の突出部27b、28b、29b、30bの視認は、画像認識カメラを用いて行うことができる。
【0064】
ただし、特に、絶縁材27、28、29、30の材質にセパレータ26に適用できるものを選定した場合、絶縁材27、28、29、30の色がセパレータ26の色と同系色となってしまうことや、外乱光によってさまざまな影ができることから、画像認識カメラの判別精度が低下してしまう。
【0065】
このため、その判別精度を上げるためには、突出部27b、28b、29b、30bに光を照射しながら画像認識カメラで視認するとよい。
【0066】
図4の工程D図の(1)は、巻回後のコンデンサ素子23に光を照射しながら画像認識カメラにより絶縁材27、28、29、30の装着有無及び配置の良否を判別する工程を側面から見た図であり、(2)は、上方から見た図である。
【0067】
具体的には、まず、コンデンサ素子23を固定し、このコンデンサ素子23を中心として、光源34a、34bが互いに対向するように配置する。そして、光源34a、34bより直進性の光を、前記引出端子の他方の端部21b、22bが外部に引き出された側のコンデンサ素子23の端面、つまり端面23aと略平行に照射し、端面23aを構成している前記陽極箔24、前記陰極箔25および前記セパレータ26のいずれの端部よりも突出した絶縁材27、28、29、30の突出部27b、28b、29b、30bと引出端子の他方の端部21b、22bとに前記光を当てて散乱させる。
【0068】
これによって、前記光が散乱した突出部27b、28b、29b、30bおよび引出端子の他方の端部21b、22bと、これら以外の部分、つまり端面23aを構成するセパレータ26、陽極箔24、陰極箔25の端部とのコントラスト差を大きくすることができ、画像認識カメラ35で判別可能なレベルにできる。
【0069】
なお、画像認識カメラ35で判別可能なレベルのコントラスト差とは、相対的に決定されるものであり、視認の対象物に含まれる色の類似状態及び画像認識カメラの性能に応じて、照射する光の色や強度を調整するとよい。
【0070】
なお、光の照射の仕方としては、コンデンサ素子23の端面23aを上方からみた場合に影ができないようにしてコントラストをより明瞭にするのが好ましい。具体的には、コンデンサ素子23の側面の周りを囲むように環状の光源を配置するのがよいが、高速かつ連続で大量生産する場合、コンデンサ素子23をコンベアで搬送する必要があるため、このコンベアを挟んで略対向関係にある2方向から夫々前記直進性の光を照射するようにすると生産性もよくなる。
【0071】
なお、突出部27b、28b、29b、30bの寸法は、下限寸法として0.1mm以上あれば判別可能ではあるが、直進性の光の照射角度のばらつきや、コンデンサ素子23の固定状態のばらつき等があるため、絶縁材の突出部27b、28b、29b、30bおよび引出端子の他方の端部21b、22bのみに確実に光を当てて、高精度の判別を行うには、突出部の寸法が0.5mm以上あると好ましい。一方、突出部27b、28b、29b、30bの上限寸法は、画像認識カメラの条件からは制限されないが、電解コンデンサの全長寸法の規格値等により制約を受ける。つまり、突出部27b、28b、29b、30bの寸法が大きすぎると組立不良となる。したがって、画像認識カメラの安定した判別精度を確保し、かつ電解コンデンサの組立条件に影響を与えない突出部27b、28b、29b、30bの設定寸法としては、ばらつきを考慮すると0.5mm〜0.7mmの範囲が好ましい。
【0072】
なお、直進性の光としては、発光ダイオードを用いるとよい。光の色は、照射する対象物に散乱しやすければよく、白色の発光ダイオードが安価であり利用しやすい。
【0073】
次に、前記光が散乱した突出部27b、29bと引出端子の他方の端部21bとの位置関係、および、突出部28b、30bと引出端子の他方の端部22bとの位置関係を画像認識カメラ35で視認する。この画像認識カメラ35は、コンデンサ素子23の端面23aの上方に設置し、端面23aの全面を視認できるようになっている。
【0074】
そして、このとき、前記突出部27b、28b、29b、30bが、引出端子の他方の端部21b、22bの長さ(巻回方向の長さ)から割り出される、引出端子の一方の端部21a、22aの長さ(巻回方向の長さ)以上の範囲で、前記引出端子の他方の端部21b、22bと対向していれば良品と判別し、対向していなければ不良品と判別する。不良品と判別されたコンデンサ素子23は、排除し、後の組立工程へ流出させないようにする。
【0075】
なお、前記絶縁材27、28、29、30の形状としては、コンデンサ素子23内部で引出端子の他方の端部21b、22bと対応している部分の長さ(巻回方向の長さ)と突出部27b、28b、29b、30bの長さ(巻回方向の長さ)との寸法関係が一定であればよいが、生産性との兼ね合いから、方形状が好ましい。
【0076】
その後、良品と判別したコンデンサ素子23を組立工程へ移す。
【0077】
図2に示すように、封口体33に設けた貫通孔33a、33bにコンデンサ素子23から引出された引出端子の他方の端部21b、22bをそれぞれ挿通させ、コンデンサ素子23に封口体33を装着する。
【0078】
なお、封口体33を装着する前後で、コンデンサ素子23を化成液に浸漬し、引出端子21、22間に電圧を印加することにより、陽極箔24の表面の酸化皮膜を修復化成してもよい。
【0079】
その後、そのコンデンサ素子23の陽極箔24と陰極箔25の間に電解質層を形成する。駆動用電解液に代表される液体電解質の場合、コンデンサ素子23を駆動用電解液と共に外装ケース32に収納する。
【0080】
なお、封口体33のコンデンサ素子23への装着は、電解質層の形成の前後いずれでもよい。
【0081】
なお、コンデンサ素子23への駆動用電解液の含浸方法としては、外装ケース32内に予め一定量の駆動用電解液を注入しておき、コンデンサ素子23を外装ケース32に収納する際に含浸させる他、コンデンサ素子23を、駆動用電解液が蓄えられた含浸槽に浸漬含浸(場合によって真空度を調整する)して引き上げた後に外装ケース32に収納するようにしてもよい。
【0082】
なお、駆動用電解液は、コンデンサ素子23に含浸しきれない余剰分を外装ケース32内に保有してもよい。
【0083】
また、固体電解質の場合、例えば、この固体電解質として導電性高分子であるポリ3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等を用いた場合、形成方法としては、コンデンサ素子23を、PEDOTを分散させた分散体溶液に含浸した後引き上げ、乾燥させることによって形成する。なお、3,4エチレンジオキシチオフェン等のモノマー溶液、p−トルエンスルホン酸第二鉄塩等を含む酸化剤溶液、および溶媒としてエタノール等を用い、これらの溶液にコンデンサ素子23を含浸し、コンデンサ素子23内での化学重合反応でPEDOTを形成するようにしてもよい。
【0084】
次に、外装ケース32の外周側面から巻き締めて絞り加工部32aを形成することによって、外装ケース32の開口部を封止する。
【0085】
また、コンデンサ素子23の突出部27b、28b、29b、30bは、コンデンサ素子23の良否判別後であれば、コンデンサ素子23を封口体33と嵌め合わせた際、またはそのコンデンサ素子23を外装ケース32に挿入し、外装ケース32の開口部を封止する際に、潰れを生じてもよい。
【0086】
なお、外装体31として、エポキシ樹脂等からなる絶縁性の外装樹脂を用い、コンデンサ素子23を被覆すると共に、その外装体31の外部に引出端子の他方の端部21b、22bを導出するようにしてもよい。
【0087】
なお、絶縁端子板(図示せず)を、外装ケース32の開口部に接するように配置し、外装ケース32の開口部を封止した封口体33の外面より導出した引出端子の他方の端部21b、22bに夫々接続した金属ワイヤ21c、22cを、その絶縁端子板に設けた一対の貫通孔(図示せず)に夫々挿通した後、金属ワイヤ21c、22cを、互いに相反する方向へ略直角に折り曲げて、絶縁端子板の外表面に設けた溝部(図示せず)に収納するようにし、面実装タイプの電解コンデンサとしてもよい。
【0088】
なお、外装ケース32の開口部を封止した後、もしくは絶縁端子板を取り付けた後に、適宜、引出端子21、22の間に電圧を印加し、再化成を行う。
【0089】
以上のように、本発明の実施の形態における電子部品およびその製造方法によれば、セパレータに貼り付けられた絶縁材が、引出端子の他方の端部を外部へ引き出した側の電気化学素子の端面を構成している陽極箔、陰極箔およびセパレータのいずれの端部よりも突出していることにより、電気化学素子の内部に絶縁材が配置されていることが、電気化学素子の外部から視認できるため、一旦電気化学素子を作製してしまった後でも、絶縁材の装着有無及び配置状態の良否判別を行うことができる。この結果、本発明の電子部品は、絶縁材が装着されていない、或いは所定位置に配置されていない電気化学素子の不良品を、電気化学素子形成後に外部からの視認によって的確に排除することができ、低ESRであると共に、極めて優れた耐ショート性を安定的に確保することができる。
【0090】
また、特に、ESR特性や静電容量特性の観点から、絶縁材の材質をセパレータに適用できるものから選択した結果、絶縁材の色がセパレータの色と同系色となる、あるいは外乱光によってさまざまな影ができてしまう等、画像認識カメラを用いた外部視認の判別精度が低下してしまうような場合、コンデンサ素子の端面から引出された引出端子の他方の端部と、前記端面から突出している絶縁材の突出部分のみに光を当てることにより、前記端面のその他の部分とのコントラスト差を大きくして判別精度を向上することができ、その結果、さらに低ESR、大容量であると共に極めて優れた耐ショート性を安定的に確保した高信頼の電子部品を提供できる。また、高速かつ連続で大量生産が可能となるため、生産合理化を行うこともできる。
【0091】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の実施の形態における電子部品の他例である電解コンデンサとその製造方法について説明する。
【0092】
図5は、本発明の実施の形態2における電子部品の他例である電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図、図6は、同電解コンデンサの断面図、図7は、同電解コンデンサの製造工程における絶縁材のセパレータへの装着工程とコンデンサ素子作成後の絶縁材の装着有無及び配置の良否判別工程図である。
【0093】
なお、実施の形態1における電子部品の一例である電解コンデンサとその製造方法と同様の構成については、同一符号を付しその説明を省略し、異なる部分についてのみ以下に説明する。
【0094】
まず、本発明の実施の形態2における電子部品の他例である電解コンデンサの構成について図5、6、7を用いて説明する。
【0095】
図5において、図1に示した実施の形態1における電解コンデンサと相違する点は、以下の点である。まず、セパレータ26の所定の部位に備えられた絶縁材47が、引出端子の一方の端部21a側で引出端子の一方の端部21aに接触するセパレータ26の部位を含む範囲を被覆(絶縁材27が被覆していた部位)するのと同時に、陰極箔25側で接続部22dの形成によって生じた凸部分に接触するセパレータ26の部位を含む範囲を被覆(絶縁材30が被覆していた部位)している点である。そして同様に、セパレータ26の所定の部位に備えられた絶縁材48が、引出端子の一方の端部22a側で引出端子の一方の端部22aに接触するセパレータ26の部位を含む範囲を被覆(絶縁材28が被覆していた部位)するのと同時に、陽極箔24側で接続部21dの形成によって生じた凸部分に接触するセパレータ26の部位を含む範囲を被覆(絶縁材29が被覆していた部位)している点である。つまり、実施の形態1における電解コンデンサで用いていた4つの絶縁材27、28、29、30のうち、絶縁材27と絶縁材30を一体として絶縁材47とし、さらに、絶縁材28と絶縁材29を一体として絶縁材48としこれらの絶縁材47、48を備えたセパレータ26を介して陽極箔24と陰極箔25とを積層して巻回し、図6に示したコンデンサ素子43を構成している。
【0096】
次に、以上のように構成した実施の形態2における電子部品の他例である電解コンデンサの製造方法について図7を参照しながら説明する。
【0097】
図7において、図3、4に示した実施の形態1と相違する点は、以下の点である。まず、図7の工程B図に示すように、絶縁材47が、その一端を前記セパレータ26の端部より所定寸法だけはみ出した、はみ出し部47aを有するようにして、セパレータ26の外表面上に配置されると共に、後の工程でコンデンサ素子43を作製した時に、少なくとも、引出端子の一方の端部21a側で引出端子21の一方の端部21aに対応すると予測されるセパレータ26の部位と、陰極箔25側で接続部22dの形成によって生じた凸部分に対応すると予測されるセパレータ26の部位とを被覆するように配置されている点である。そして同様に、絶縁材48が、その一端を前記セパレータ26の端部より所定寸法だけはみ出した、はみ出し部48aを有するようにして、セパレータ26の外表面上に配置されると共に、後の工程でコンデンサ素子43を作製した時に、少なくとも、引出端子の一方の端部22a側で引出端子の一方の端部22aに対応すると予測されるセパレータ26の部位と、陽極箔24側で接続部21dの形成によって生じた凸部分に対応すると予測されるセパレータ26の部位とを被覆するように配置されている点である。
【0098】
以上のように、本発明の実施の形態2における電子部品の他例である電解コンデンサとその製造方法によれば、セパレータに装着する絶縁材の員数を減らすことができるため、絶縁材のセパレータへの装着工程において生産タクトを短縮することができる。その結果、低ESR、大容量であり、優れた耐ショート性を安定的に確保した電子部品を提供できると共に、より高速かつ連続で大量生産することができ、生産性を高めることができる。
【0099】
以下、具体的な実施例1〜8、比較例1について説明をする。
(実施例1)
本発明の実施の形態における電解コンデンサの実施例1として、定格電圧450V、静電容量47μFの巻回形コンデンサ素子タイプの電解コンデンサ(直径φ10mm、長さ50mm)を作製した。
【0100】
まず、図5に示すように、酸化アルミ皮膜の誘電体層を表面に有するアルミニウムからなる陽極箔24と、陰極箔25と、セパレータ26とを一定の幅と長さに切断した。
【0101】
なお、セパレータ26の幅は、陽極箔24と陰極箔25の幅より広くなるように設定した。
【0102】
なお、陽極箔24の表面は、エッチング法によって表面積を拡大し、さらに、陽極酸化法により酸化アルミ皮膜からなる誘電体層を形成した。また、陰極箔25の表面も、エッチング法によって表面積を拡大した。
【0103】
なお、セパレータ26の材質には、クラフト系とコットン系との二重紙を用いた。
【0104】
そして、次に、アルミニウム製の一対の引出端子21、22を用意し、それらの引出端子の一方の端部21a、22aを、夫々陽極箔24と陰極箔25とに針カシメ接続法により接続し、接続部21d、22dを形成した。
【0105】
その一方で、絶縁材47を、その一端を前記セパレータ26の端部より所定寸法だけはみ出した、はみ出し部47aを有するようにしてセパレータ26の外表面上に配置した。はみ出し部47aの所定寸法は、後の工程でコンデンサ素子43を作製した時に、コンデンサ素子43の端面43aから突出する絶縁材47の突出部47bの寸法が0.1mmとなるように予め設定した。さらに、絶縁材47を、少なくとも、引出端子の一方の端部21a側で引出端子の一方の端部21aに対応すると予測されるセパレータ26の部位と、陰極箔25側で接続部22dの形成によって生じた凸部分に対応すると予測されるセパレータ26の部位とを被覆するように配置した。
【0106】
同様にして、絶縁材48を、その一端を前記セパレータ26の端部より所定寸法だけはみ出した、はみ出し部48aを有するようにしてセパレータ26の外表面上に配置した。はみ出し部48aの所定寸法は、後の工程でコンデンサ素子43を作製した時に、コンデンサ素子43の端面43aから突出する絶縁材48の突出部48bの寸法が0.1mmとなるように予め設定した。さらに、絶縁材48を、少なくとも、引出端子の一方の端部22a側で引出端子の一方の端部22aに対応すると予測されるセパレータ26の部位と、陽極箔24側で接続部21dの形成によって生じた凸部分に対応すると予測されるセパレータ26の部位とを被覆するように配置した。
【0107】
なお、絶縁材47、48の形状は方形状とし、片面に粘着材を塗布したものを用い、セパレータ26に貼り付けて固定するようにした。
【0108】
なお、絶縁材47、48の材質には、クラフト系の二重紙を用い、粘着材の材質には、駆動用電解液中に溶け出して、電解コンデンサの特性に影響を及ぼさないアクリル系のものを用いた。
【0109】
その後、絶縁材47、48を一部に備えたセパレータ26を介在させるようにして陽極箔24と陰極箔25とを積層し、引出端子の他方の端部21b、22bを外部へ導出するようにしてロール状に巻回して略円筒形とし、その外周側面を絶縁テープ36で巻き止めて固定し、コンデンサ素子43を作製した。
【0110】
次に、作製したコンデンサ素子43について、絶縁材47、48の装着有無及び配置の良否の判別を行った。判別方法としては、絶縁材47、48の突出部47b、48bと引出端子の他方の端部21b、22bのみに直進性の光を照射し、端面43aの上方に設置した画像認識カメラ35を用いて端面43aの状態を視認するようにした。具体的には、コンデンサ素子43を固定し、このコンデンサ素子43を中心として、光源34a、34bが互いに対向するように配置し、光源34a、34bより直進性の光を端面43aと略平行に照射し、絶縁材47、48の突出部47b、48bと引出端子の他方の端部21b、22bとに前記光を当てて散乱させた。
【0111】
なお、直進性の光の光源としては、2.9Wの白色の発光ダイオードを用いた。
【0112】
そして、前記光が散乱した突出部47bと引出端子の他方の端部21bとの位置関係、突出部47bと引出端子の他方の端部22bとの位置関係、突出部48bと引出端子の他方の端部21bとの位置関係、突出部48bと引出端子の他方の端部22bとの位置関係を画像認識カメラ35で視認した。
【0113】
そして、このとき、絶縁材47、48の突出部47b、48bが、引出端子の他方の端部21b、22bの長さ(巻回方向の長さ)から割り出される、引出端子の一方の端部21a、22aの長さ(巻回方向の長さ)以上の範囲で、前記引出端子の他方の端部21b、22bと対向していれば良品と判別し、対向していなければ不良品と判別し、不良品と判別されたコンデンサ素子43は、排除するようにした。
【0114】
なお、突出部47、48とその周辺のコントラスト差が明瞭でないコンデンサ素子43は、不良品として扱い、排除するようにした。
【0115】
次に、良品と判別されたコンデンサ素子43に真空含浸法によってエチレングリコールを主体とした駆動用電解液を含浸させた後、それらのコンデンサ素子43をアルミニウム製の外装ケース32内に挿入した。
【0116】
その後、ゴムパッキングからなる封口体33に設けた一対の貫通孔33a、33bに、コンデンサ素子43から引出された一対の引出端子の他方の端部21b、22bをそれぞれ挿通させてコンデンサ素子43に封口体33を装着すると共に、封口体33を外装ケース32の開口部に配置した。
【0117】
次に、外装ケース32の開口部付近の外周側面から巻き締めて絞り加工部32aを形成し、ゴム弾性体である封口体33に圧縮応力を発生させることによって外装ケース32の開口部を封止した。
【0118】
その後、外部に導出された一対の引出端子の他方の端部21b、22b間に電圧を印加して再化成を行い、実施例1の電解コンデンサを作製した。
【0119】
この実施例1の構成に対し、実施例2〜8は、コンデンサ素子43の端面43aから突出している絶縁材47、48の突出部47b、48bの寸法を変化させたものである。以下にそれらについて詳細を説明する。
(実施例2)
実施例2は、実施例1における突出部の寸法を0.2mmに調整した。これ以外は実施例1と同様とした。
(実施例3)
実施例3は、実施例1における突出部の寸法を0.3mmに調整した。これ以外は実施例1と同様とした。
(実施例4)
実施例4は、実施例1における突出部の寸法を0.4mmに調整した。これ以外は実施例1と同様とした。
(実施例5)
実施例5は、実施例1における突出部の寸法を0.5mmに調整した。これ以外は実施例1と同様とした。
(実施例6)
実施例6は、実施例1における突出部の寸法を0.6mmに調整した。これ以外は実施例1と同様とした。
(実施例7)
実施例7は、実施例1における突出部の寸法を0.7mmに調整した。これ以外は実施例1と同様とした。
(実施例8)
実施例8は、実施例1における突出部の寸法を0.8mmに調整した。これ以外は実施例1と同様とした。
【0120】
また、上記実施例1〜8と比較するための電解コンデンサを作製した。
(比較例1)
比較例1は、実施例1〜8における突出部の寸法が0mm、つまり、突出部がない構成とし、これ以外は実施例1と同様とした。
【0121】
これら実施例1〜8及び比較例1の電解コンデンサの良品サンプルを100個ずつ作製した。その作製過程におけるコンデンサ素子の良否判別の結果と、完成した電解コンデンサに対して過電圧試験を行った結果を(表1)に示した。
【0122】
なお、前記過電圧試験は、常温で電圧675V、電流1Aを電解コンデンサのサンプルに印加することを試験条件とした。良否判定は、過電圧印加後に、引出端子の一方の端部21bと陰極箔25との接触、若しくは引出端子の一方の端部22bと陽極箔24との接触によるショート発生の有無で行い、ショート発生したものを不良品とした。
【0123】
【表1】

【0124】
(表1)からわかるように、比較例1の電解コンデンサは、コンデンサ素子43を作製した後に、絶縁材47、48が適正に装着、配置されているかどうかを確認することができないため、不良品のコンデンサ素子43があっても、後の組立工程への流出を防ぐことができない。
【0125】
一方、実施例1〜8の電解コンデンサは、コンデンサ素子43の状態において、端面43aより絶縁材47、48が突出して突出部47b、48bを有していることにより、絶縁材47、48の装着有無及び配置の良否を視認することができる。このため、コンデンサ素子43を作製した後においても、不良品のコンデンサ素子を的確に排除することができる。その結果、完成した電解コンデンサに過電圧を印加した場合でも、引出端子の一方の端部21a、22a周辺の絶縁性が確実に確保されており、耐ショート性の高い高信頼性の電解コンデンサを得ることができる。
【0126】
また、実施例1〜3では、突出部47、48があるが、突出寸法が小さいため、直進性の光の照射角度のばらつき等の影響を受けやすく、コントラスト差が不明瞭となる場合がある。この場合、不良品のコンデンサ素子43を後工程へ流出させることはないが、良品であっても不良品扱いとして判別してしまう確率が上昇してくる。判別精度を安定させるには、実施例4〜9に示すように、突出部の寸法を0.4mm以上とすることが好ましいといえる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の電子部品は、セパレータに貼り付けられた絶縁材が、引出端子の他方の端部を外部へ引き出した側の電気化学素子の端面を構成している陽極箔、陰極箔およびセパレータのいずれの端部よりも突出していることにより、電気化学素子の内部に絶縁材が配置されていることが、電気化学素子の外部から視認できるため、一旦電気化学素子を作製してしまった後でも、絶縁材の配置状態の良否判別を行うことができる。
【0128】
この結果、本発明の電子部品は、絶縁材が適正に配置されていない電気化学素子の不良品を、電気化学素子形成後に外部からの視認によって的確に排除することができ、低ESRであると共に、極めて優れた耐ショート性を安定的に確保することができるという特徴を有し、長期にわたる高信頼性が要求されるデジタルAV機器や自動車電装機器の電源出入力の平滑回路や制御回路等に適用される電子部品として有用である。
【符号の説明】
【0129】
21、22 引出端子
21a、22a 引出端子の一方の端部
21b、22b 引出端子の他方の端部
21c、22c 金属ワイヤ
21d、22d 接続部
23、43 コンデンサ素子
23a、43a 端面
24 陽極箔
25 陰極箔
26 セパレータ
27、28、29、30、47、48 絶縁材
27a、28a、29a、30a、47a、48a はみ出し部
27b、28b、29b、30b、47b、48b 突出部
31 外装体
32 外装ケース
32a 絞り加工部
33 封口体
33a、33b 貫通孔
34a、34b 光源
35 画像認識カメラ
36 絶縁テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出端子の一方の端部をそれぞれ接続した陽極箔と陰極箔とを、絶縁材を一部に貼り付けたセパレータを介して巻回すると共に、巻回することによって形成される端面より前記引出端子の他方の端部を外部へ引き出した電気化学素子を備えた電子部品において、前記絶縁材が、少なくとも引出端子の一方の端部と対応するセパレータの部位を被覆しており、かつこの絶縁材の一端が、前記引出端子の他方の端部を外部へ引き出した側の電気化学素子の端面を構成している前記陽極箔、前記陰極箔および前記セパレータのいずれの端部よりも突出している電子部品。
【請求項2】
前記絶縁材の一端が、前記引出端子の他方の端部を外部へ引き出した側の電気化学素子の端面を構成している陽極箔、陰極箔およびセパレータのいずれの端部よりも0.1mm以上突出している請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
引出端子の一方の端部を夫々陽極箔と陰極箔とに接続する引出端子の接続工程と、
絶縁材を一部に備えたセパレータを介在させた前記陽極箔と前記陰極箔とを、前記引出端子の他方の端部を外部へ導出するようにして巻回し、この巻回によって形成された端面のうち、前記引出端子の他方の端部を外部に引き出した側の端面を構成する前記陽極箔、前記陰極箔および前記セパレータのいずれの端部よりも、前記セパレータに備えた前記絶縁材の一端が突出するようにして電気化学素子を作製する工程と、
前記電気化学素子を作製する工程の事前に、前記絶縁材が、その一端を前記引出端子の他方の端部を外部に引き出す側となる前記セパレータの端部より所定寸法だけはみ出すと共に、少なくとも前記引出端子と対応すると予測される前記セパレータの部位を被覆するように、前記セパレータに前記絶縁材を固定する工程と、
直進性の光を、前記引出端子の他方の端部が外部に引き出された側の電気化学素子の端面と略平行に照射して、この電気化学素子の端面を構成している前記陽極箔、前記陰極箔および前記セパレータのいずれの端部よりも突出した前記絶縁材と前記引出端子の他方の端部とに前記光を当てて散乱させ、前記光が散乱した絶縁材および引出端子の他方の端部と、これら以外の部分とのコントラスト差を利用して、前記引出端子の他方の端部を外部に引き出した側の電気化学素子の端面の上方から、前記絶縁材の突出部と前記引出端子の他方の端部との位置関係を画像認識カメラで視認し、前記絶縁材の突出部が、前記引出端子の他方の端部の長さから割り出される、引出端子の一方の端部の長さ以上の範囲で、前記引出端子の他方の端部と対向していない電気化学素子を不良排除する工程とを備えた、電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記直進性の光を2方向以上から照射し、少なくともそのうちの2方向が略対向関係にある請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記直進性の光の光源として、発光ダイオードを用いた請求項3または請求項4に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−169575(P2012−169575A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31587(P2011−31587)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)