説明

電子部品およびその製造方法

【課題】電子部品を低背化するとともに、電子部品の天面に形成されている印字部を確実に判別できるようにする。
【解決手段】電子部品の製造方法は、実装基板16の実装面に電極12および電極13を有する電気素子11をフリップチップボンディングする工程と、電気素子11の上面に印字部17を形成する工程と、印字部17を形成した後に電気素子11を樹脂18で覆う工程と、樹脂18を研削する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品およびその製造方法に関し、特に、電気素子の上面上に印字部を形成した電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2007−311378号公報(特許文献1)には、配線基板上に電気的に接続された半導体チップを搭載し、その半導体チップを樹脂で覆った構造が示されている。
【0003】
上記のような半導体チップを樹脂で覆った電子部品においては、一般的に、樹脂の天面にレーザーマークやインクマークによって、製品番号などを印字する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂の天面にレーザーマークやインクマークを形成することには、次のような課題がある。
【0006】
まず、レーザーマークについては、電子部品の小型化、低背化という近年の流れの中で、樹脂の天面の厚みを薄くする必要があるところ、天面の厚みが薄いと、レーザー光が天面を貫通してしまうリスクがある。仮に、レーザー光が天面を貫通すると、半導体チップがダメージを受けるため、物理強度劣化、電極部の破壊が懸念されるとともに、水分が半導体チップを伝って電極面まで浸入し得ることとなり、これが電極の腐食要因となる。
【0007】
次に、インクマークについては、インクの印字が外部に剥き出しになっているため、印字が消失してしまうリスクがある。
【0008】
また、電子部品を低背化するために、樹脂の天面を研削した後に印字する場合、レーザーマークおよびインクマークともに、研削痕によって印字が判別できなくなることがある。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、電子部品を低背化するとともに、印字部を確実に判別できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子部品は、実装面を有する実装基板と、上面および下面を有し、下面が実装面に対向するように、実装基板上に実装されている電気素子とを備え、電気素子の上面に印字部が形成されており、印字部が樹脂で覆われている。
【0011】
1つの実施態様では、上記電子部品において、印字部の全てが樹脂で覆われている。
1つの実施態様では、上記電子部品において、印字部が金属または金属を含む材料からなる。
【0012】
1つの実施態様では、上記電子部品において、印字部の上部が樹脂から露出している。
1つの実施態様では、上記電子部品において、印字部は樹脂と色が異なる材料からなる。
【0013】
1つの実施態様では、上記電子部品において、樹脂が研削痕を有している。
本発明に係る電子部品の製造方法は、1つの局面では、上面および下面を有する電気素子を用意する工程と、実装面を有する実装基板を用意し、下面が実装面に対向するように電気素子を実装する工程と、電気素子の上面に印字部を形成する工程と、印字部を樹脂で覆う工程とを備える。
【0014】
本発明に係る電子部品の製造方法は、他の局面では、上面および下面を有し、下面に複数の電気素子の電極が形成されているウェハを用意する工程と、ウェハの上面に複数の電気素子に対応する複数の印字部を形成する工程と、ウェハをダイシングして、複数の電気素子を個片化する工程と、実装面を有する実装基板を用意し、印字部が形成されている面と反対側の面が実装面に対向するように、個片化した電気素子を実装基板上に実装する工程と、印字部を樹脂で覆う工程とを備える。
【0015】
1つの実施態様では、上記電子部品の製造方法において、印字部は、スクリーン印刷により形成される。
【0016】
1つの実施態様では、上記電子部品の製造方法において、印字部は、インクジェットにより形成される。
【0017】
1つの実施態様では、上記電子部品の製造方法は、樹脂を研磨する工程をさらに備える。
【0018】
1つの実施態様では、上記電子部品の製造方法において、印字部の上部が露出するまで封止樹脂を研磨する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電子部品を低背化するとともに、電子部品の天面に形成されている印字部を確実に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子部品の製造方法における各工程を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る電子部品の製造方法における各工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0022】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電子部品の製造方法における各工程を示す断面図である。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態に係る電子部品の製造方法は、電子素子11を用意する工程(図1(a))と、実装基板16の実装面に電気素子11を実装する工程(図1(b))と、電気素子11の上面上に印字部17を形成する工程(図1(c))と、印字部17を形成した後に電気素子11を封止する樹脂18を形成する工程(図1(d))と、電気素子11を封止する樹脂18を研磨する工程(図1(e))とを備える。
【0025】
図1(a)に示す電気素子11は、たとえば、タンタル酸リチウム(LiTaO :LT)基板やニオブ酸リチウム(LiNbO:LN)基板などの圧電基板からなる弾性表面波素子である。ただし、電気素子11は、薄膜回路素子であってもよいし、半導体素子であってもよいし、その他のものであってもよい。電気素子11は互いに対向する上面および下面を有し、下面に電子部品の機能部を構成する電極12と、電極12に電気的に接続されている電極13とが形成されている。
【0026】
電気素子11が弾性表面波素子である場合、電極12は、Alなどからなるインタディジタル・トランスジューサ(IDT)を含むが、電極12の材料はこれに限定されない。電極12は、例えば、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ni,Ti,Cr,Pdなどの金属や、これらの金属の一種以上を含む合金により形成することもできる。電極13は、たとえばAlなどからなる引き回し配線やパッドを含むが、電極13の材料もこれに限定されない。図1(a)に示すように、電極13のパッド上には、たとえばAuなどからなる外部端子としてのバンプ14が形成されている。バンプ14の材料はこれに限定されず、半田などでもよい。
【0027】
図1(b)に示すように、電気素子11を、実装基板16上にフリップチップボンディングする。より具体的には、電気素子11の下面を実装基板16の実装面に対向させ、電気素子11のバンプ14を実装基板16の実装面に形成されている配線15に接合する。
【0028】
次に、図1(c)に示すように、電気素子11の上面(実装基板16とは反対側の面)に印字部17を形成する。印字部17は、たとえばFeなどの金属をドープしたインクを用いて、インクジェットプリンタにより形成される。印字部17は、たとえば製品番号などを示すものである。
【0029】
なお、印字部17を形成するための素材は、上述のように金属を含む材料であってもよいし、金属であってもよい。また、感光性樹脂であってもよい。印字部17の材料が金属または感光性樹脂である場合、フォトリソグラフィ技術を用いることにより印字部17を形成することができる。
【0030】
次に、図1(d)に示すように、例えばエポキシ樹脂からなる樹脂18で電気素子11を覆う。本実施の形態では、電気素子11が弾性表面波素子であるため、IDTである電極12の下方に空間を有するように、樹脂18で封止されている。しかし、必ずしも電気素子11は樹脂18で封止されている必要はなく、少なくとも印字部17が樹脂18で覆われていればよい。
【0031】
さらに、図1(e)で示すように、樹脂18の天面に研削処理を施し、印字部17が露出する前に研削処理を終わらせる。このようにして製造された電子部品は、樹脂18の天面に研削痕を有し、低背化されている。また、印字部17の全てが樹脂18の中に埋まっているため、樹脂印字部17が消失することもない。さらに、レーザー光によって印字しないため、電気素子11がダメージを受けることもない。
【0032】
なお、本実施の形態では、印字部17が樹脂18から露出していないため、印字部17を目視することはできない。しかし、印字部17が金属を含むインクからなるため、X線を用いることで印字部17を読み取ることができる。これは、金属からなる印字部17を用いた場合も、同様である。
【0033】
また、本実施の形態では、1つの電気素子11を1つの実装基板16にフリップチップボンディングしたが、本発明はこれに限定されない。複数の電気素子11を実装基板16の集合体に実装し、これらをラミネート樹脂シートで被覆し、ラミネート樹脂シートに研削処理を施した後で、ダイシングにより個片化することにより電子部品を製造してもよい。
【0034】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2に係る電子部品の製造方法における各工程を示す断面図である。
【0035】
図2を参照して、本実施の形態に係る電子部品の製造方法は、実施の形態1に係る電子部品の製造方法の変形例であって、印字部27の形成の手順に特徴を有する。すなわち、実施の形態1においては、個片化した電気素子11を実装基板16上に実装した後に印字部17を形成していたのに対し、本実施の形態においては、個片化させる前のウエハ21Aの状態において、ウエハ21A上に印字部27を形成している。(図2(c))。
【0036】
図2(a)に示すように、ウエハ21Aの下面には、複数の電気素子21の電極22,23、およびバンプ24が形成されている。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、ウエハ21Aの上面に、複数の電気素子21に対応した複数の印字部27が形成される。本実施の形態においては、たとえば、スクリーン印刷版29を用いたスクリーン印刷によって、複数の印字部27が形成される。
【0038】
そして、図2(c)に示すように、複数の印字部27が形成された状態で、ウエハ21Aは電気素子21に個片化される。個片化された電気素子21は、図2(d)に示すように、電気素子21の印字部27が形成されている面とは反対側の面が実装基板26の実装面に対向するように実装基板26上にフリップチップボンディングされる。より具体的には、電気素子21のバンプ24が実装基板26の配線25に接合されている。
【0039】
次に、図2(e)に示すように、例えばエポキシ樹脂からなる樹脂28で電気素子21を覆う。
【0040】
さらに、図2(f)で示すように、樹脂28の天面に研削処理を施すことにより、樹脂28を薄化する。樹脂本実施の形態では、図2(f)に示すように、印字部27の上部が露出する厚みにまで樹脂28に研削処理を施す。また、印字部27は、樹脂28と色が異なる材料によって形成されている。これにより、X線を用いなくても、目視または画像識別装置により印字部27を判別することが可能となる。
【0041】
また、予め印字部27の厚みを所定の厚みよりも大きくしておくことで、上記のように、印字部27の上部を露出させたとしても、印字部27の大半は樹脂28の中に埋まっているので、印字部27が消失することはない。
【0042】
なお、上述した事項以外については、実施の形態1と同様であるため、詳細な説明は繰り返さない。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
11,21 電気素子、12,22 電極、13,23 電極、14,24 バンプ、15,25 配線、16,26 実装基板、17,27 印字部、18,28 樹脂、29 スクリーン印刷版。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する実装基板と、
上面および下面を有し、前記下面が前記実装面に対向するように、前記実装基板上に実装されている電気素子とを備え、
前記電気素子の前記上面に印字部が形成されており、前記印字部が樹脂で覆われている、電子部品。
【請求項2】
前記印字部の全てが前記樹脂で覆われている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記印字部が金属または金属を含む材料からなる、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記印字部の上部が前記樹脂から露出している、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記印字部は前記樹脂と色が異なる材料からなる、請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記樹脂が研削痕を有している、請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
上面および下面を有する電気素子を用意する工程と、
実装面を有する実装基板を用意し、前記下面が前記実装面に対向するように電気素子を実装する工程と、
前記電気素子の前記上面に印字部を形成する工程と、
前記印字部を樹脂で覆う工程とを備えた、電子部品の製造方法。
【請求項8】
上面および下面を有し、前記下面に複数の電気素子の電極が形成されているウェハを用意する工程と、
前記ウェハの前記上面に前記複数の電気素子に対応する複数の印字部を形成する工程と、
前記ウェハをダイシングして、前記複数の電気素子を個片化する工程と、
実装面を有する実装基板を用意し、前記印字部が形成されている面と反対側の面が前記実装面に対向するように、個片化した前記電気素子を実装基板上に実装する工程と、
前記印字部を樹脂で覆う工程とを備えた、電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記印字部は、スクリーン印刷により形成される、請求項7または請求項8に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記印字部は、インクジェットにより形成される、請求項7または請求項8に記載の電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂を研磨する工程をさらに備えた、請求項7から請求項10のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記印字部の上部が露出するまで前記封止樹脂を研磨する、請求項11に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−253120(P2012−253120A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123221(P2011−123221)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)