説明

電子部品の取外し方法

【目的】 基板からの電子部品の取外し工程における突起状の半田残りを確実に防止すること。
【構成】 半田35bの濡れ性を良くするために、まず電子部品34のリード線34aにフラックスを塗布し、次いでパッド35a上に光ビームを照射して加熱し半田35bを溶融させた後、電子部品34を基板35から取り外すとともに、光ビームの照射を継続させた状態で基板35に振動を加えることにより、リード線34aの引き剥しによって生ずる突起状の半田35bを平坦に均すようにした。
【効果】 基板35から取り外した電子部品34を、再度バキュームパッド50の下降によって基板35上に戻すとき、及びNGバッファ61側に基板35上の電子部品34を吸着して移載するために、マウントユニット60が電子部品34に当接する際、半田35bが平坦に均されているため、リード線34aを変形させることなく所定の姿勢を保った状態に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、実装済みの電子部品を基板から取り外す際の電子部品の取外し方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、基板に電子部品を実装した後、導通テストによって導通状態が不良とされた電子部品は基板から取り外され、再度半田付けによる実装が行われている。
【0003】基板からの電子部品の取外し方法として、たとえば図1に示す方法がある。すなわち、基板1上に実装されている電子部品2のリード線3にホットバー4の端部5を押し当てて熱を加えパット6上の半田を溶かす。半田が溶けると、バキュームパッド7が下降して電子部品2を吸着し、基板1から電子部品2を持ち上げる。電子部品2を取り外した基板1に対して再度電子部品2を実装する場合には、半田ゴテを用い、手作業によりリード線3を基板1のパット6上に半田付けする。
【0004】ところが、このような電子部品の取外し方法では、パット6上の半田を溶かす際、図2(a)に示すように、電子部品2のリード線3にホットバー4の端部5を直接押し当てているため、ホットバー4による荷重によってリード線3が変形してしまったり、基板1上のパット6に損傷を与えてしまったりするという不具合があった。
【0005】また、図2(b)に示すように、パット6上の半田7を溶かした後、バキュームパッド7により電子部品2を吸着して持ち上げると、リード線3とパット6との間の半田8が表面張力によって引き延ばされ、双方の半田8が引きちぎられた後ではパット6上の半田8が突起状に固化してしまうという不具合がある。このように、半田8が突起状に固化してしまうと、再度電子部品2を実装する場合にリード線3がその半田8によって押し上げられ、変形してしまう。更には、リード線3の間隔が極めて小さいファインピッチの電子部品2を上述したようにして基板1に再度実装しようとすると、突起状に残された半田8によって各リード線3に短絡が発生してしまうという不具合もあった。
【0006】上記従来例は、基板からの電子部品の取外し方法を説明したものであるが、ちなみに非接触による半田付け方法として、本出願人は、光ビームを用いた加熱加工装置を提案している(実願昭61−47991号)。
【0007】すなわち、図3に示すように、陽極9a及び陰極9bを有したアーク熱光源ランプ9の点光源10から放射状に発生した熱光線は、楕円面反射鏡11によって反射され、光路aを形成した後、4枚の第1平面ミラー12によって4方向に反射されて光路bを形成する。
【0008】光路bの光線は、更に第2平面ミラー13で反射されて光路cを形成しシリンドリカルレンズ14に入射する。シリンドリカルレンズ14は、光路cに対して垂直な角度で、しかも光束を十分に入射可能な位置にセットされている。シリンドリカルレンズ14によって一方向に集光されて線状となった熱光線は、被加工物である電子部品15のリード線16付近に線状スポット17となって照射する。
【0009】このような構成の加熱加工装置では、線状スポットを1つの光源で形成できるので、特にフラットパッケージ型電子部品の4辺の多くのリード線を同時に加熱して半田付けすることが可能となり、その作業時間を大幅に短縮できるとともに、電子部品に対する熱影響が軽減され、異形状のものに対しての対応も可能となっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、実装済みの電子部品を基板から取り外すために、図1に示したホットバー4に代えて図3に示した光ビームによる非接触法を適用すると、電子部品2のリード線3に荷重が加えられないため、リード線3が変形してしまったり、基板1上のパット6に損傷を与えてしまったりするという不具合が解消されるというメリットがある。
【0011】ところが、光ビームにより半田8を溶融させた後、バキュームパッド7により電子部品2を吸着して持ち上げると、図2(b)に示したように、双方の半田8が引きちぎられた後ではパット6上の半田8が突起状に固化してしまうという不具合が依然として残されてしまう。このため、リード線3の間隔が極めて小さいファインピッチの電子部品2を再度実装することも不可能となってしまう。
【0012】このようなことから、基板1からの電子部品2の取外し工程において、パット6上の半田8が突起状に固化して残されてしまうという不具合を解消することができる方法が望まれている。
【0013】本発明は、このような事情に対処してなされたもので、簡単な構成で、基板からの電子部品の取外し工程における突起状の半田残りを確実に防止することができる電子部品の取外し方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、半田付けされた電子部品を基板から取り外す電子部品の取外し方法であって、前記電子部品のリード部にフラックスを塗布するステップと、前記リード部に光ビームを照射して加熱し半田を溶融させるステップと、前記電子部品を基板から取り外すステップと、前記基板のリード部の取付け位置に光ビームを照射した状態で前記基板に振動を加えるステップとを含むことを特徴とする。
【0015】
【作用】本発明の電子部品の取外し方法では、電子部品のリード部にフラックスを塗布することにより、半田濡れ性が良好となる。この状態でリード部に光ビームを照射して加熱し半田を溶融させることにより、電子部品のリード部の半田に対する非接触溶融が可能となる。この状態で電子部品を基板から取り外すとともに、基板のリード部の取付け位置に光ビームを照射した状態で基板に振動を加えると、リード部の引き剥しによって生ずる突起状の半田が平坦に均される。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例の詳細を図面に基づいて説明する。図4は、本発明の電子部品の取外し方法の一実施例に係る加熱加工装置を示すもので、ケーシング20が備えられている。ケーシング20には、空冷塔21が設けられており、光源ランプ23の発生する熱が空冷塔21から供給される風によって冷却されるようになっている。光源ランプ23の点光源23Aを囲む位置には楕円鏡22が配設されており、この楕円鏡22によって点光源23Aからの熱光線が下方に向けて折り返される。
【0017】楕円鏡22の下方には、熱光線を集光させるための集光装置24が配設されている。集光装置24には、第1平面ミラー25、第2平面ミラー26、シリンドリカルレンズ27及び光照射調整装置28が具備されている。集光装置24の下方には、バキュームパッド50によって吸着された電子部品34を実装するための基板35を保持する基板保持装置29が配設されている。
【0018】基板保持装置29の下方には、加振装置30が配設されている。加振装置30には、基板保持装置29のベース板29aの下面側にボルト31及びスプリング32を介して上下動自在に支持された共振板33が設けられている。共振板33の下方には、振動伝達レバー37を有した加振子36が配設されている。振動伝達レバー37の先端部は、共振板33の下面に固定されている。共振板33の端部には、振動伝達金具38が取付けられている。振動伝達金具38の先端部側は、基板保持装置29に保持された基板35の下面側に当接するようになっている。
【0019】基板保持装置29は、支持部材39を介してX−Yテーブル40に支持されている。X−Yテーブル40には、ガイド軸41にスライド自在に支持されたXテーブル42とガイド軸43にスライド自在に支持されたYテーブル44とが備えられている。ガイド軸43は、台座45に支持されている。
【0020】続いて、このような構成の加熱加工装置による電子部品の取外し方法を、図5を用いて説明する。まず、図5(a)に示すように、基板35のパッド35a上にフラックスを塗布する。これは、電子部品34のリード線34aをパッド35a上に固着している半田35bの濡れ性を良くするためである。次いで、同図(b)に示すように、フラックスを塗布したパッド35a上に光ビームを照射する。これにより、電子部品34のリード線34aをパッド35a上に固着している半田35bが熱によって溶融する。
【0021】半田35bが溶融すると、バキュームパッド50が下降し、図5(c)に示すように、電子部品34を吸着して基板35上から引き離す。電子部品34が基板35上から引き離されると、直ちに基板35に対して毎秒60HZ のバイブレーションがかけられる。すなわち、加振装置30の加振子36が駆動され、その振動が振動伝達レバー37を介して共振板33に伝達される。共振板33が共振すると、その振動が振動伝達金具38を介して基板35に伝達されることにより、基板35に対してバイブレーションが加えられる。
【0022】このとき、電子部品34のリード線34aがパッド35aから引き剥される際に半田35bが突起状態とされた場合であっても、上述したようにして基板35に加えられるバイブレーションにより、溶融状態にあるパッド35a上の半田35bがパッド35aの形状に沿って平坦に均される。半田35bが平坦に均された後、図5(e)に示すように、パッド35a上にエアーが約6秒間吹き付けられ、平坦に均された後の溶融状態にある半田35bが冷却される。
【0023】半田35bが冷却によって固化された後、電子部品34を吸着しているバキュームパッド50が下降し、図5(f)に示すように、電子部品34が先に実装されていた基板35上に戻される。このとき、パッド35a上の半田35bは、パッド35aの形状に沿って平坦に均されており、バキュームパッド50の下降によって電子部品34のリード線34aに荷重が加えられた場合であっも、従来のように突起状に残された半田による無理な力が加わらないため、リード線34aを変形させることなく定姿勢を保った状態で基板35上に電子部品34が戻される。
【0024】基板35上に電子部品34が戻されると、X−Yテーブル40が駆動され、図5(g)に示すように、基板保持装置29に保持されている基板35がマウントユニット60の下方位置まで移動される。基板35上の電子部品34がマウントユニット60の下方位置まで移動すると、マウントユニット60が下降し、図5(h)に示すように、電子部品34が吸着によって持ち上げられる。
【0025】このとき、マウントユニット60が電子部品34に当接する際、電子部品34に荷重が加えられるが、上述したように、半田35bがパッド35aの形状に沿って平坦に均されているため、その荷重によって電子部品34のリード線34aが変形してしまうことなく所定の姿勢を保った状態に維持される。この状態から、図5(i)に示すように、マウントユニット60がNGバッファ61側に移動し、電子部品34をNGバッファ61に移載する。
【0026】このように本実施例では、半田35bの濡れ性を良くするために、まず電子部品34のリード線34aにフラックスを塗布し、次いでパッド35a上に光ビームを照射して加熱し半田35bを溶融させた後、電子部品34を基板35から取り外すとともに、光ビームの照射を継続させた状態で基板35に振動を加えることにより、リード線34aの引き剥しによって生ずる突起状の半田35bを平坦に均すようにした。
【0027】したがって、基板35から取り外した電子部品34を、再度バキュームパッド50の下降によって基板35上に戻すとき、及びNGバッファ61側に基板35上の電子部品34を吸着して移載するために、マウントユニット60が電子部品34に当接する際、半田35bが平坦に均されているため、リード線34aを変形させることなく所定の姿勢を保った状態に維持することができる。また、基板35へのバイブレーションにより半田35bがパッド35aの形状に沿って平坦に均されるため、リード線34aの間隔が極めて小さいファインピッチの電子部品の再実装も可能となる。
【0028】なお、本実施例では、加振装置30の加振子36の振動を振動伝達レバー37を介し共振板33に伝達して共振板33を共振させ、更にその振動を振動伝達金具38を介して基板35に伝達することにより、基板35に対してバイブレーションを加えるようにした場合について説明したが、この例に限らず加振装置30の加振子36の振動を基板保持装置29に伝達することで、基板35に対してバイブレーションを加えるようにしてもよい。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の電子部品の取外し方法では、電子部品のリード部にフラックスを塗布することにより、半田濡れ性が良好となる。この状態でリード部に光ビームを照射して加熱し半田を溶融させることにより、電子部品のリード部の半田に対する非接触溶融が可能となる。この状態で電子部品を基板から取り外すとともに、基板のリード部の取付け位置に光ビームを照射した状態で基板に振動を加えると、リード部の引き剥しによって生ずる突起状の半田が平坦に均される。
【0030】したがって、単に基板にバイブレーションを加えることでリード部の引き剥しによる突起状の半田が平坦に均されるので、簡単な構成で、基板からの電子部品の取外し工程における突起状の半田残りを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の実装済みの電子部品を基板から取り外す方法を示す図である。
【図2】図1の電子部品を基板から取り外した際に、突起状の半田が基板上に残ってしまった状態を示す図である。
【図3】従来の非接触の半田付け方法に係る加熱加工装置を示す断面図である。
【図4】本発明の電子部品の取外し方法の一実施例に係る加熱加工装置を示す半裁断面図である。
【図5】図4の加熱加工装置による電子部品の取外し方法を説明するための工程図である。
【符号の説明】
23 光源ランプ
24 集光装置
29 基板保持装置
30 加振装置
33 共振板
34 電子部品
35 基板
35a パッド
35b 半田
37 振動伝達レバー
38 振動伝達金具
40 X−Yテーブル
50 バキュームパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半田付けされた電子部品を基板から取り外す電子部品の取外し方法であって、前記電子部品のリード部にフラックスを塗布するステップと、前記リード部に光ビームを照射して加熱し半田を溶融させるステップと、前記電子部品を基板から取り外すステップと、前記基板のリード部の取付け位置に光ビームを照射した状態で前記基板に振動を加えるステップとを含むことを特徴とする電子部品の取外し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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