説明

電子部品の熱圧着装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フィルムキャリヤにチップを搭載して形成された電子部品のリードを、基板の電極に熱圧着してボンディングするための電子部品の熱圧着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】パソコン、ワープロなどの各種電子機器の表示パネルとして多用されている液晶パネルは、透明な回路パターンが形成された2枚のガラス板を貼り合わせて形成されている。液晶パネルを駆動するための電子部品としては、フィルムキャリヤにチップを搭載したものが多用されている。フィルムキャリヤには極細のリードが多数本狭ピッチで貼着されており、その一方の側のリードを液晶パネルの縁部に形成された電極にボンディングし、また他方の側のリードを液晶パネル駆動用の基板に形成された電極にボンディングされる。
【0003】基板の電極にボンディングされたリードは、フィルムキャリヤに反りが生じるなどすると、この電極から剥がれやすい。そこでリードの近傍のフィルムキャリヤの下面にメッキ部を形成し、またこのメッキ部に対する基板の上面に半田部を形成し、メッキ部を半田部にボンディングすることにより、リードにストレスが直接加わらないように補強することが行われている。このようにメッキ部を半田部にボンディングすることは、アンカーボンディングと称される。
【0004】以上のように、電子部品はそのリードとメッキ部が基板にボンディングされるが、従来、そのボンディングは、次のようにして行われていた。すなわち、まず第1の熱圧着装置に備えられた熱圧着子により、フィルムキャリヤのリードを基板の電極に熱圧着してボンディングする。次に液晶パネルを第2の熱圧着装置へ送り、この第2の熱圧着装置の熱圧着子により、メッキ部を半田部に熱圧着してアンカーボンディングする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来の方法では、第1の熱圧着装置と第2の熱圧着装置の2台の装置を設け、第1の熱圧着装置でボンディングを行った後、液晶パネルを第2の熱圧着装置へ送ってアンカーボンディングを行わねばならないため、単に長い作業時間を要するだけでなく、2台の熱圧着装置を必要とするため、設備コストが高く、また広い装置の設置面積を要するという問題点があった。
【0006】したがって本発明は、1台の熱圧着装置により、リードの電極へのボンディングとフィルムキャリヤのアンカーボンディングとを短時間で作業性よく行うことができる電子部品の熱圧着装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】このために本発明は、フィルムキャリヤにチップを搭載して成る電子部品の一方のリードが縁部に沿ってボンディングされた液晶パネルおよびこの縁部から外方へ延出するこの電子部品の他方のリードがボンディングされる基板を載置するテーブル装置と、このテーブル装置の上方にあって他方のリードを基板の上面に形成された電極に熱圧着してボンディングする第1の熱圧着子およびフィルムキャリヤの下面に形成されたメッキ部を基板の上面に形成された半田部に熱圧着してアンカーボンディングする第2の熱圧着子と、この第1の熱圧着子と第2の熱圧着子を基板に対して水平方向に相対的に移動させる移動手段とから電子部品の熱圧着装置を構成したものである。
【0008】
【作用】上記構成によれば、電子部品のリードの基板の電極へのボンディングと、フィルムキャリヤのメッキ部の基板の半田部へのアンカーボンディングとを、一連の作業として作業性よく行うことができる。
【0009】
【実施例】次に本発明の実施例を説明する。図1は本発明の第一実施例の電子部品の熱圧着装置の斜視図、図2は同液晶パネルと基板の斜視図、図3は図2のA部分の部分拡大斜視図、図4および図5は同電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部断面図、図6および図7は同要部拡大断面図である。
【0010】図1において、この電子部品の熱圧着装置は、テーブル装置1とヘッド装置10から成っている。テーブル装置1は、Xテーブル2、Yテーブル3、回転テーブル4、基板保持テーブル5を積層して構成されており、また基板保持テーブル5の側方にはサブテーブル6が基板保持テーブル5と一体的に設けられている。またヘッド装置10は、第1ヘッド部11と第2ヘッド部12を備えている。
【0011】第1ヘッド部11は、スライダ13Aと、スライダ13Aの前面に配設されたブラケット14Aと、ブラケット14Aの前面下部に保持された複数個の第1の熱圧着子15から成っている。16Aはスライダ13の前面に装着されたシリンダであり、そのロッド17Aにブラケット14Aが結合されている。したがってシリンダ16Aが作動してロッド17Aが突出すると、ブラケット14Aは下降し、またロッド17Aが引き込むとブラケット14Aは上昇する。
【0012】また第2ヘッド部12は第1ヘッド部11と同構造であって、スライダ13B、ブラケット14B、シリンダ16B、ブラケット14Bの前面下部に保持された複数個の第2の熱圧着子18から成っており、シリンダ16Bのロッド17Bが突出すると、ブラケット14Bは上下動する。ブラケット13A,13Bはガイドレール19にX方向(横方向)にスライド自在に装着されており、第1ヘッド部11と第2ヘッド部12は横並びに並設されている。したがって図示しない駆動手段が駆動すると、第1ヘッド部11と第2ヘッド部12はガイドレール19に沿ってX方向に移動する。
【0013】テーブル装置1上には、液晶パネル31が載置されており、またサブテーブル6上には基板32が載置されている。したがってXテーブル2、Yテーブル3、回転テーブル4がそれぞれ駆動すると、液晶パネル31と基板32はX方向、Y方向、θ方向(水平回転方向)に移動し、その位置調整が行われる。図2において、液晶パネル31の3つの辺の縁部には、ドライバである電子部品40が予めボンディングされている。本実施例では、長辺には4個の電子部品40がボンディングされ、また短辺には2個の電子部品40がボンディングされている。また基板32は液晶パネル31の一方の長辺に沿う長板状であり、その上面には電極33がピッチをおいて多数個並設されている。
【0014】図3において、電子部品40は、フィルムキャリヤ41の下面に形成されたリード43,44に、チップ42をインナーリードボンディングして形成されており、一方の側のリード43は図外のアウターリードボンディング装置により、予め液晶パネル31の縁部に沿って狭ピッチで形成された電極にボンディングされている。なお液晶パネル31は、図4、図5に示すようにガラス板から成る上板31aと下板31bを貼り合わせて形成されているが、図が繁雑になるので図1〜図3では上板31aは省略している。フィルムキャリヤ41の他方の側のリード44の両側方の下面にはメッキ部45が薄く形成されている。このメッキ部45は、例えばスズメッキやハンダメッキである。また基板32の上面のメッキ部45に対応する位置には、半田部46が形成されている。後述するように、リード44は電極33にボンディングされ、またメッキ部45は半田部46にアンカーボンディングされる。
【0015】この電子部品40の熱圧着装置は上記のように構成されており、次に全体の動作について説明する。図1において、テーブル装置1を駆動して液晶パネル31と基板32の位置調整を予め行っておく。次に第1ヘッド部11が基板32の上方へ移動する。この第1ヘッド部11は液晶パネル31の長辺にボンディングされた4個の電子部品40に対応するように、4個の第1の熱圧着子15を有しており、各第1の熱圧着子15を各電子部品40のリード44の真上で停止させる。
【0016】次にシリンダ16Aのロッド17Aが突出することにより、第1の熱圧着子15は下降し、図4および図6に示すように第1の熱圧着子15の下面に突設された熱圧着部15aはリード44を基板32の電極33に熱圧着してボンディングする。15bは第1の熱圧着子15に内蔵されたヒータであって、このヒータ15bの発熱により熱圧着部15aは200℃程度に加熱されており、その熱によりリード44は電極33にボンディングされる。
【0017】このようにして、4個の電子部品40のリード44を基板32の電極33に同時にボンディングしたならば、シリンダ16Aのロッド17Aは引き込み、各第1の熱圧着子15は上昇して熱圧着状態を解除する。次に図1に示す第2ヘッド部12が基板32の上方へ移動してくる。次にシリンダ16Bのロッド17Bが突出することにより、第2の熱圧着子18は下降し、図5R>5および図7に示すようにその下面の熱圧着部18aをフィルムキャリヤ41の上面に押し付け、メッキ部45を半田部46にスポット的に熱圧着してアンカーボンディングする。第2の熱圧着子18もヒータ18bを内蔵しており、その熱によりメッキ部45は半田部46に熱圧着される。このようにして4個の電子部品40について同時にアンカーボンディングを行ったならば、シリンダ16Bのロッド17Bは引き込み、第2の熱圧着子18は上昇して熱圧着状態を解除する。なお液晶パネル31の他の辺にボンディングされた電子部品40についても、上述と同様に、リード44の電極33に対するボンディングとアンカーボンディングが行われる。
【0018】次に、本発明の第二実施例を説明する。図8R>8は本発明の第二実施例の電子部品の熱圧着装置の斜視図、図9は同電子部品の熱圧着装置に備えられた熱圧着ツールの斜視図、図10および図11は同電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部断面図である。図9および図10において、この熱圧着ツール50は、本体部51の後側下部に凹設された凹入部52に第1の熱圧着子53を収納している。第1の熱圧着子53の背面にはピン57が突設されており、ピン57は本体部51に開孔されたタテ長の長孔56に嵌入している。図10に示すように、第1の熱圧着子53の上面にはばね材54が介装されており、このばね材54のばね力により、第1の熱圧着子53は上下動自在に弾持されている。
【0019】図9において、本体部51の前側下部は第2の熱圧着子51aとなっており、その下面に熱圧着部51bが2個突設されている。常時は、第1の熱圧着子53の下面は、熱圧着部51bの下面よりも下方位置にある。55は本体部51に内蔵されたヒータである。この熱圧着ツール50は、図10のブラケット14Aの下部に保持されている。図8に示す他の構成は図1と同じであり、同一符号を付すことにより説明は省略する。
【0020】次に動作を説明する。テーブル装置1を駆動することにより、サブテーブル6上の基板32を熱圧着ツール50の下方に位置させる。次にシリンダ16Aのロッド17Aを突出させて、熱圧着ツール50を下降させる。
【0021】すると、図10に示すように、まず第1の熱圧着子53がフィルムキャリヤ41に貼着されたリード44に着地し、リード44を基板32の電極33にボンディングする。このとき、熱圧着部51bは宙に浮いており、フィルムキャリヤ41には着地していない。次に更にロッド17Aが突出して熱圧着ツール50が下降すると、ばね材54は圧縮され、図11に示すように第2の熱圧着子51aの熱圧着部51bがフィルムキャリヤ41に着地し、メッキ部45を半田部46にアンカーボンディングする。次にシリンダ16Aのロッド17Aが引き込むと、熱圧着ツール50は上昇し、ボンディングは終了する。このようにこの第二実施例では、第1の熱圧着子53と第2の熱圧着子51aを一体化しているので、一回の上下動作により、リード44のボンディングとアンカーボンディングを実質的に同時に行うことができる。また第1の熱圧着子53と第2の熱圧着子51aを一体化するこよにより、ヘッド部は1つでよく、装置を小型コンパクト化できる。
【0022】図12は本発明の第三実施例の電子部品の熱圧着装置に備えられた熱圧着ツールの斜視図、図13R>3、図14は同電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部断面図である。図12において、この熱圧着ツール60は、箱形の本体61の後側下部に第1の熱圧着子62を突設し、またその前側下部に第2の熱圧着子63を突設して形成されている。この第1の熱圧着子62と第2の熱圧着子63の間は大きな間隔Dが確保されている。他の構成は第二実施例と同様である。
【0023】次に動作を説明する。テーブル装置1を駆動することにより、サブテーブル6上の基板32を熱圧着ツール60の下方に位置させる。次にシリンダ16Aのロッド17Aを突出させて、熱圧着ツール60を下降させる。
【0024】すると、図13に示すように、まず第1の熱圧着子62がリード44に着地し、リード44を基板32の電極33にボンディングする。図示するように、第1の熱圧着子62の下面は第2の熱圧着子63の下面よりも下方へ突出しており、したがって第1の熱圧着子62がリード44に着地しても、第2の熱圧着子63は宙に浮いてフィルムキャリヤ41には着地しない。
【0025】次にシリンダ16Aのロッド17Aが引き込むことにより、熱圧着ツール60は上昇し、第1の熱圧着子62はリード44から離れる(図13において鎖線で示す熱圧着ツール60参照)。そこでYテーブル3を駆動することにより、液晶パネル31と基板32を矢印Y1方向へ若干移動させ、第2の熱圧着子63をメッキ部45の上方に位置させる。次に再びシリンダ16Aのロッド17Aを突出させることにより、熱圧着ツール60を下降させ、図14に示すように第2の熱圧着子63でアンカーボンディングを行う。このとき、第1の熱圧着子62は後方へ退去しており、リード44や基板32には着地しない。すなわち上記距離Dは、第2の熱圧着子63でアンカーボンディングを行う際に、第1の熱圧着子62がリード44や基板32に接触してアンカーボンディングの障害になるのを回避するための逃げになっている。以上のようにしてアンカーボンディングが終了したならば、シリンダ16Aのロッド17Aは引き込み、熱圧着ツール60は上昇して元の位置に復帰する。この第三実施例も、第1の熱圧着子62と第2の熱圧着子63を一体化することにより、ヘッド部は1つでよく、装置を小型コンパクト化できる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、フィルムキャリヤにチップを搭載して成る電子部品の一方のリードが縁部に沿ってボンディングされた液晶パネルおよびこの縁部から外方へ延出するこの電子部品の他方のリードがボンディングされる基板を載置するテーブル装置と、このテーブル装置の上方にあって他方のリードを基板の上面に形成された電極に熱圧着してボンディングする第1の熱圧着子およびフィルムキャリヤの下面に形成されたメッキ部を基板の上面に形成された半田部に熱圧着してアンカーボンディングする第2の熱圧着子と、この第1の熱圧着子と第2の熱圧着子を基板に対して水平方向に相対的に移動させる移動手段とから電子部品の熱圧着装置を構成しているので、リードの基板の電極へのボンディングと、メッキ部のアンカーボンディングとを、一連の作業として作業性よく行うことができる。またこのボンディングとアンカーボンディングとを、1台の熱圧着装置により行えるので、設備コストを低減でき、また装置の設置面積を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例の電子部品の熱圧着装置の斜視図
【図2】本発明の第一実施例の液晶パネルと基板の斜視図
【図3】本発明の第一実施例の液晶パネルと基板の部分拡大斜視図
【図4】本発明の第一実施例の電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部断面図
【図5】本発明の第一実施例の電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部断面図
【図6】本発明の第一実施例の電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部拡大断面図
【図7】本発明の第一実施例の電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部拡大断面図
【図8】本発明の第二実施例の電子部品の熱圧着装置の斜視図
【図9】本発明の第二実施例の電子部品の熱圧着装置に備えられた熱圧着ツールの斜視図
【図10】本発明の第二実施例の電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部断面図
【図11】本発明の第二実施例の電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部断面図
【図12】本発明の第三実施例の電子部品の熱圧着装置に備えられた熱圧着ツールの斜視図
【図13】本発明の第三実施例の電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部断面図
【図14】本発明の第三実施例の電子部品の熱圧着装置のボンディング中の要部断面図
【符号の説明】
1 テーブル装置(移動手段)
15,53,62 第1の熱圧着子
18,51a,63 第2の熱圧着子
31 液晶パネル
32 基板
33 電極
40 電子部品
41 フィルムキャリヤ
42 チップ
44 リード
45 メッキ部
46 半田部

【特許請求の範囲】
【請求項1】フィルムキャリヤにチップを搭載して成る電子部品の一方のリードが縁部に沿ってボンディングされた液晶パネルおよびこの縁部から外方へ延出するこの電子部品の他方のリードがボンディングされる基板を載置するテーブル装置と、このテーブル装置の上方にあって前記他方のリードを前記基板の上面に形成された電極に熱圧着してボンディングする第1の熱圧着子および前記フィルムキャリヤの下面に形成されたメッキ部を前記基板の上面に形成された半田部に熱圧着してアンカーボンディングする第2の熱圧着子と、この第1の熱圧着子と第2の熱圧着子を前記基板に対して水平方向に相対的に移動させる移動手段とを備えたことを特徴とする電子部品の熱圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【特許番号】第2850749号
【登録日】平成10年(1998)11月13日
【発行日】平成11年(1999)1月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−58656
【出願日】平成6年(1994)3月29日
【公開番号】特開平7−273435
【公開日】平成7年(1995)10月20日
【審査請求日】平成9年(1997)9月12日
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【参考文献】
【文献】特開 平3−91990(JP,A)
【文献】特開 平5−38833(JP,A)
【文献】特開 平1−135093(JP,A)
【文献】特開 平5−102633(JP,A)
【文献】実開 平4−117471(JP,U)
【文献】実開 平5−72172(JP,U)
【文献】実開 平5−73983(JP,U)