説明

電子部品用キャリアテープ基材の製造方法

【課題】 キャリアテープの引っ張り強度を維持するとともに、薄い底を有するエンボス凹部を成形する、電子部品用キャリアテープ基材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 加熱軟化したテープ素材(19)を回転金型ローラ(16、18)でエンポス成形するに先立って、エンボス成形されるべきテープ素材19の部分を圧延して薄肉厚部分にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス成形によってテープ素材に形成される、電子部品を収容するためのエンボス凹部の底を、センターホールをより容易にバリなく明けることができるようにするため、テープ素材の厚さよりも薄くし、及び又はエンボス凹部を仕切る隆起壁をより高くする、電子部品用キャリアテープ基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品キャリアテープは、プリント回路基板に電子部品を装着するための自動電子部品装填機に電子部品を供給するためのものであって、キャリアテープ基材にエンボス成形によって形成された一連のエンボス凹部に電子部品を1個ずつ収容した後、電子部品をエンボス凹部に閉じ込めるべくキャリアテープ基材にトップテープ材を溶着又は接着することによって構成される。
【0003】
テープ素材は、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等の合成樹脂材料からなり、加熱部、成形部、冷却部及び穴あけ部からなる成形工程に通される。テープ素材は先ず、加熱部の一対の回転加熱ローラに通されて約200℃程度に加熱軟化され、次いで成形部において、周囲に多数の凸部又は溝形凹部を有する回転金型ロールに通されてエンボス成形され、それにより一連のエンボス凹部がテープ素材に形成される。回転金型ロールは、隣接した凸部の間又は溝形凹部の間に吸引口を有し、加熱軟化したテープ素材が回転金型ロールの周りを通るとき、吸引口からの負圧によって、テープ素材を隣接した凸部間の金型ロール面に、又は溝形凹部間の金型ロール面に引き寄せながら、金型ロールの凸部によりエンボス凹部がテープ素材に形成され、或いは金型ロールの溝形凹部によってそこにテープ素材の部分が入り込むことによって形成された隆起壁間にエンボス凹部が形成されてキャリアテープ基材となる。次いでキャリアテープ基材は冷却部に通されて常温に冷却され、穴あけ部でパンチにより凹部の底にセンターホールがあけられ、且つ送り穴があけられる。図1及び2は、凸部付の金型ロールにより形成されたキャリアテープ基材であって、図1に参照符号1で示されており、2は、図2に拡大して示すエンボス凹部、2aはエンボス凹部2の側壁5に連なる底6に明けられたセンターホール、3は送り穴であり、図4乃至6は、溝形凹部付の金型ロールにより形成されたものであり、図4に参照番号1aで示されており、2aは、図5及び6に拡大して示す、隆起壁4で仕切られたエンボス凹部、2a’はエンボス凹部2aの底6に明けられたセンターホール、3は送り穴である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンボス凹部に収容される電子部品の大きさが1608(0.8×1.6)以下の場合、エンボス凹部は、長さ1.0mm、幅2.0mm程度である。このような大きさのエンボス凹部2では、図2に拡大断面で示すように、エンボス成形後のエンボス凹部2の底6及び側壁5は、成形前のテープ素材の厚さ(0.2mm)と同じ程度の厚さを有し、そのため、下記のような課題が生じている。
【0005】
エンボス凹部の底にあけるセンターホールはφ0.5mm以下になるので、穴あけ部でセンターホールをあける時にパンチの損傷が発生し易く、また、パンチがセンターホールをあけて戻るとき穴の周りに穴バリが発生し易い(図3参照)。エンボス凹部に電子部品を挿入したキャリアテープにおいて、穴バリから剥がれ落ちたカスがエンボス凹部内の電子部品に付着すると、その電子部品が回路基板に装着された際、通電不具合等を引き起こす恐れがある。また、エンボス凹部に電子部品を挿入するテーピングマシンにおいて、穴バリから剥がれ落ちたカスが、エンポス凹部の検知又はエンボス凹部に挿入された電子部品を検知するためのセンサーに付着・堆積することで、異物検知等動作不良を引き起こす事がある。
【0006】
又、溝形凹部付の回転金型ロールによって形成されたキャリアテープ基材では、上記の穴バリ発生の問題の他に、図5に拡大断面で示すように、エンボス凹部2aを仕切る隆起壁4の高さが十分に確保されにくく、そのためエンボス凹部2aに収容される電子部品が隆起壁4に乗り上げて横ずれを引き起こし易くなるといった欠点があった。
【0007】
その様な課題の解決策として、テープ素材の厚さを薄くすれば、成形後のエンボス凹部の底も薄くなるから、パンチの損傷や穴バリの発生を防止することができることが経験的に知られている。しかし、そのようなより薄いテープ素材を使用すると、キャリアテープ全体の引っ張り強度が低下し、切れや伸び等が生じやすく、使用上好ましくない。
【0008】
本発明の目的は、キャリアテープの引っ張り強度を維持しながら、テープ素材の厚さよりも薄い底を有するエンボス凹部を形成し、及び又はより高い隆起壁を形成しやすくする、電子部品用キャリアテープ基材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記の目的は、加熱軟化したテープ素材を、周囲に等間隔に凸部、又は溝形凹部を有する回転金型ローラでエンポス成形するに先立って、エンボス成形されるべきテープ素材の部分を圧延して薄くする、電子部品用キャリアテープ基材の製造方法を提供することによって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図7及び図8は、本発明によるキャリアテープ基材を形成するための成形工程を示し、成形工程は、加熱部10、圧延部11、成形部12、冷却部13及び穴あけ部14からなる。図7は、成形部12に、周面に凸部15を等間隔に有する金型ロール16(図9参照)を使用したものを示し、図8は、成形部12に、周面に溝形凹部17を等間隔に有する金型ロール18(図10参照)を使用したものを示す。テープ素材19は、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等の合成樹脂材料からなり、先ず、加熱部10の回転加熱ローラ20に通されて約200℃程度に加熱軟化され、次いで一対の回転圧延ローラ21に通されてエンボス成形されるべき部分が圧延されて薄肉厚になる。かかる圧延は、図11に示すように、回転圧延ローラ21に設けた環状凸部22の間で行われ、薄肉厚部分23はキャリアテープ素材19の長さに沿って形成される(図12参照)。圧延の程度は、エンボス成形されるべき部分の厚さがキャリアテープ素材のもとの厚さの1/2程度になるように選択されるのが好ましい。回転圧延ローラ21は、キャリア素材19の加熱軟化を維持するために加熱ローラとして構成されるのが好ましい。次いで、キャリアテープ素材19は、成形部において、周囲に多数の凸部15を有する回転金型ロール16に通され、凸部15によりキャリアテープ素材の薄肉厚部分23がエンボス成形され、それにより一連のエンボス凹部24がテープ素材19に形成される。回転金型ロール16は、隣接した凸部15の間に吸引口25を有し、加熱軟化したテープ素材19が回転金型ロール16の周りを通るとき、吸引口25からの負圧によって、テープ素材19を隣接した凸部15間の金型ロール面に引き寄せながら、金型ロール16の凸部15によりエンボス凹部24がテープ素材に形成されてキャリアテープ基材となる(図9参照)。
【0011】
図8に示す例の場合には、キャリアテープ素材19は、成形部において、周囲に多数の溝形凹部17を有する回転金型ロール18に通され、キャリアテープ素材の薄肉厚部分23にエンボス成形が施され、それにより一連のエンボス凹部26がテープ素材19に形成される(図10参照)。より詳細には、図10に示すように、回転金型ロール18は、隣接した溝形凹部17間に吸引口27を有し、加熱軟化したテープ素材が回転金型ロール18の周りを通るとき、吸引口27からの負圧によって、テープ素材を隣接した溝形凹部17間の金型ロール面に引き寄せ、金型ロール18の溝形凹部17に材料の一部を入り込ませて仕切壁28を形成しするとともに互いに接近したエンボス凹部26がテープ素材に形成されてキャリアテープ基材となる。
【0012】
次いで、いずれの例でも、キャリアテープ基材は冷却部13に通されて常温に冷却され、穴あけ部14でパンチにより凹部24、26の底29、30にセンターホール31、32があけられ、且つ送り穴があけられる。出来たキャリアテープ基材のエンボス凹部24には、図13に断面で示すように、薄肉厚部分23が反映し、その結果、エンボス凹部24の側壁に連なる底29はキャリアテープ素材のもとの厚さに比べて相当に薄くなる。
【0013】
またエンボス凹部26の場合には、エンボス凹部の底をテープ素材の厚さに比して薄くすることができるとともに、エンボス凹部間にできる仕切り壁28をより高くすることができる。
【0014】
本発明によれば、キャリアテープの引張り強さはキャリアテープ素材のもとの厚さによって本来的に維持され、一方エンポス凹部の薄い底は、パンチによる穴あけを容易にし、穴バリの発生を起こさせないし、また仕切壁をより高く成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】在来のキャリアテープ基材の平面図である。
【図2】在来のキャリアテープ基材のエンボス凹部の拡大断面図である。
【図3】エンボス凹部の拡大平面である。
【図4】別の在来のキャリアテープ基材の平面図である。
【図5】図4の在来のキャリアテープ基材の一連のエンボス凹部の拡大長手方向断面図である。
【図6】図5の横断面図である。
【図7】本発明によるキャリアテープ基材を形成するための成形工程の概略図である。
【図8】本発明によるキャリアテープ基材を成形するための成形工程の別の実施形態を示す概略図である。
【図9】図7の成形工程の成形部の拡大断面図である。
【図10】図8の成形工程の成形部の拡大断面図である。
【図11】圧延ロールの平面図である。
【図12】圧延ロールによって形成される薄肉厚部分を示すキャリアテープ素材の平面図である。
【図13】図7の成形工程で成形されたエンボス凹部の拡大断面図である。
【図14】図8の成形工程で成形された一連エンボス凹部と仕切壁を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0016】
10 加熱部
11 圧延部
12 成形部
13 冷却部
14 穴あけ部
15 凸部
16 金型ロール
17 溝形凹部
18 金型ロール
19 テープ素材
20 回転加熱ローラ
21 回転圧延ローラ
22 環状凸部
23 薄肉厚部分
24 エンボス凹部
25 吸引口
26 エンボス凹部
27 吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱軟化したテープ素材を、周囲に凸部を有する回転金型ローラでエンポス成形するに先立って、エンボス成形されるべきテープ素材の部分を圧延して薄くする、電子部品用キャリアテープ基材の製造方法。
【請求項2】
加熱軟化したテープ素材を、周囲に溝形凹部を有する回転金型ローラでエンポス成形を形成するに先立って、エンボス成形されるべきテープ素材の部分を圧延して薄くする、電子部品用キャリアテープ基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−160357(P2006−160357A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358652(P2004−358652)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(597007178)日本ガーター株式会社 (8)
【Fターム(参考)】