説明

電子部品装置のエアリーク検査方法および装置

【課題】従来のエアリーク検査装置では、密閉ケースの内部と外部とを連通する開口部に設けられるフィルタの特性の良否判定を行うことができなかったので、電子部品装置の検査工程が煩雑となっていた。
【解決手段】電子部品が実装された回路基板20を収納する密閉ケース10に、該密閉ケース10の内部空間1aの内部と外部とを連通する呼吸孔12eを形成し、前記呼吸孔12eを液体は遮断し気体は通過可能とするフィルタ16にて閉塞して構成した電子部品装置1のエアリーク検査方法であって、前記呼吸孔12eにおける前記フィルタ16よりも外部側に圧力センサ58を設け、前記内部空間1a内に検査用エアを圧送し、前記検査用エアを圧送したときの前記内部空間1a内の圧力変化を、前記圧力センサ58によりモニターして、電子部品装置1のエアリーク検査とともに、前記フィルタ16の特性の良否判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装された回路基板を収納する密閉ケースに、該密閉ケースの内部と外部とを連通する開口部を形成し、前記開口部を液体は遮断し気体は通過可能とするフィルタにて閉塞して構成した電子部品装置のエアリーク検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のエンジンルーム内に設置される電子部品装置などは、電子部品が実装された回路基板をケース内に収納して構成されているが、装置の被水や、環境温度の変化によるケース内の空気の膨張・収縮が生じるため、回路基板を収納するケースを密閉ケースに構成するとともに、該ケースに内部と外部とを連通する開口部を形成し、前記開口部を液体は遮断し気体は通過可能とするフィルタにて閉塞して、ケース内部に対する防水性を確保するとともに、ケースの内圧と外圧とを平衡化することが可能なように構成している。
【0003】
このように、防水機能を備えた電子部品装置においては、ケースの密閉性を検査するために、ケース内に圧送したエアの漏れを検知するエアリーク検査が行われている。エアリーク検査としては、検査対象となるケース内にエアを圧送した後に、ケース内の圧力降下を圧力計などにより検知する圧力計法や、検査対象となるケース内および基準タンク内にエアを圧送した後に、検査対象となるケース内の圧力降下を、基準タンクとの差圧として検出する差圧計法などが知られている。
【0004】
特許文献1には、密閉ケースの側面に内外を連通する開口部を形成し、この開口部にフィルタを設けた電子制御装置において、前記開口部に機密検査機器を接続して、検査エアにより密閉ケースの機密検査を行うことが開示されている。
【0005】
また、電子部品装置においては、図5に示す電子部品装置1のように、回路基板20を収納する密閉ケース10を、ケースの底面を構成するベース板11、ケースの側面を構成し、前記ベース板11と接合されるハウジング部材12、およびケースの天井面を構成し、前記ハウジング部材12と接合される蓋部材13により構成したものがある。
ベース板11には、接合部11aがハウジング部材12の形状に合わせて突出しており、前記接合部11aに塗布された接着剤14aにより、ベース板11とハウジング部材12の下端面とが接着されている。そして、ベース板11とハウジング部材12との接合部は、前記接着剤14aによりシールされている。
また、ハウジング部材12の上面と蓋部材13との間にはシール部材15が介装されており、このシール部材15によりハウジング部材12と蓋部材13との接合部がシールされている。
このように、密閉ケース10においては、ベース板11、ハウジング部材12、および蓋部材13を互いに密着させて接合することにより、密閉された内部空間1aを構成している。
【0006】
前記ハウジング部材12の一側面には、ベース板11に接合されている回路基板20の外部接続端子となるコネクタ12aが一体的に形成されている。
コネクタ12aは外部機器との接続部12bと、ハウジング部材12を貫通し、前記接続部12bから内部空間1a内にわたって配置される接続ピン12cとを備えている。
【0007】
また、前記ハウジング部材12の一側面からは密閉ケース10内へ向けて隔壁12dが延出しており、前記隔壁12dの先端部が、ベース板11の接合部11bと接着剤14bにより接着されている。
ハウジング部材12の隔壁12dとベース板11との接合部は接着剤14bによりシールされており、前記隔壁12dとベース板11とで囲まれた空間が、前記内部空間1aとは隔離された呼吸室1bとして構成されている。
前記隔壁12dには、前記内部空間1aと呼吸室1bとを連通する呼吸孔12eが形成されており、前記呼吸孔12eは、液体は遮断し気体は通過可能とするフィルタ16により閉塞されている。前記フィルタ16は、前記隔壁12dの呼吸室1b側の面に貼設されている。
また、前記ベース板11には、前記呼吸室1bと外部とを連通する連通孔11eが形成されている。
【0008】
このように、電子部品装置1においては、前記呼吸室1bが連通孔11eを通じて外部と連通しており、前記呼吸室1bと内部空間1aとを連通する呼吸孔12eがフィルタ16により閉塞されているため、密閉ケース10の内部空間1aと外部との間で、前記フィルタ16および連通孔11eを通じてエアの流入・流出が可能となっているとともに、前記フィルタ16により外部から内部空間1aへ水やほこりが入り込むことを防止することが可能となっている。
また、前記ハウジング部材12の一側面におけるコネクタ12aが形成されている部分のピン12cが貫通している箇所では、内部空間1aと外部(コネクタ12aの接続部12b)との間で若干のエアの流入・流出が可能となっている。
【0009】
以上のように構成される電子部品装置1における密閉ケース10の内部空間1aの密閉性を検査するエアリーク検査は、従来、次のように行われていた。
図6に示すように、エアリーク検査は、密閉ケース10のハウジング部材12に蓋部材13を接合していない状態(ベース部材11とハウジング部材12とが接合され、密閉ケース10の上面が解放された状態)の電子部品装置1に対して行われる。
エアリーク検査を行うエアリーク検査装置150は、密閉ケース10の上面を閉塞する上面閉塞部材151と、コネクタ12aの接続部12bを閉塞するコネクタ部閉塞部材152と、前記ベース板11の連通孔11eを閉塞する連通孔閉塞部材153とを備えている。
【0010】
前記上面閉塞部材151のハウジング部材12と当接する側の面にはウレタンパッドなどのシール部材151aが貼設されており、上面閉塞部材151はシール部材151aを介してハウジング部材12に当接している。これにより、上面閉塞部材151は気密的に密閉ケース10の上面を閉塞している。
また、上面閉塞部材151およびシール部材151aには内部空間1aと外部とを連通するエア導入孔151bが開口している。
前記コネクタ部閉塞部材152のコネクタ12aと当接する側の面にはウレタンパッドなどのシール部材152aが貼設されており、コネクタ部閉塞部材152はシール部材152aを介してコネクタ12aに当接している。これにより、コネクタ部閉塞部材152は気密的にコネクタ12aを閉塞している。
また、コネクタ部閉塞部材152およびシール部材152aには内部空間1aと外部とを連通するエア導入孔152bが開口している。
前記連通孔閉塞部材153の連通孔11eと当接する側の面には、ウレタンパッドなどのシール部材153aが貼設されており、連通孔閉塞部材153は気密的に連通孔11eを閉塞している。
【0011】
また、エアリーク検査装置150は、前記上面閉塞部材151およびシール部材151aのエア導入孔151b、およびコネクタ部閉塞部材152およびシール部材152aのエア導入孔152bに接続され、該エア導入孔151bおよびエア導入孔152bを通じて内部空間1a内にエアを圧送する検査エア印加装置156を備えている。
さらに、エアリーク検査装置150は、検査エア印加装置156とエア導入孔151bおよびエア導入孔152bとを接続しているエア配管157の途中部に接続される圧力センサ158を備えており、該圧力センサ158により、検査エア印加装置156から内部空間1a内にエアを印加しているときの内部空間1a内の圧力を検出するように構成している。
【0012】
【特許文献1】特許3763354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように構成された電子部品装置1のエアリーク検査を前記エアリーク検査装置150にて行う場合は、前記呼吸室1bと連通する連通孔11eが連通孔閉塞部材153により気密的に閉塞されており、内部空間1a内に供給されたエアは前記連通孔11eを通じて外部へもれ出すことがないため、内部空間1a内の圧力は、内部空間1aと連通孔11eとの間に介在しているフィルタ16の状態によっては変化しない。
つまり、フィルタ16が破れていて内部空間1a内のエアがフィルタ16による抵抗を受けることなく呼吸室1bへ流入可能な状態にあったり、フィルタ16が詰まっていて内部空間1a内のエアが呼吸室1bへ流入することができない状態にあったりしても、内部空間1a内の圧力は、フィルタ16に破れや詰まりがなく正常な状態にあった場合と比べて変化しない。
【0014】
このように、前記エアリーク検査では、圧力センサ158により検出される内部空間1a内の圧力が、フィルタ16の良否によって変化しないため、フィルタ16が正常な状態にあるか、または破れや詰まりなどの不良が生じている状態にあるかの判断ができない。
しかし、フィルタ16が破れていると、外部から内部空間1a内への前記連通孔11eおよび呼吸孔12eを通じての水の浸入が生じる可能性があり、フィルタ16に詰まりがあると内部空間1a内の圧力と外部の圧力とを平衡化する機能を果たすことができなくなるため、電子部品装置1においてはフィルタ16の良否判断を行うことが必要である。
従って、従来は、フィルタ16の良否を検査する工程がエアリーク検査とは別に必要となり、電子部品装置1の検査工程が煩雑となっていた。
【0015】
そこで、本発明においては、電子部品装置のエアリーク検査を行う際に、密閉ケースの内部と外部とを連通する開口部に設けられるフィルタの特性の良否判定を同時に行うことが可能であり、電子部品装置1の検査工程を簡略化することができる電子部品装置のエアリーク検査方法および装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する電子部品ケースのエアリーク検査方法および装置は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載のごとく、電子部品が実装された回路基板を収納する密閉ケースに、該密閉ケースの内部と外部とを連通する開口部を形成し、前記開口部を液体は遮断し気体は通過可能とするフィルタにて閉塞して構成した電子部品装置のエアリーク検査方法であって、前記開口部における前記フィルタよりも外部側に圧力センサを設け、前記密閉ケース内に検査用エアを圧送し、前記検査用エアを圧送したときの前記密閉ケース内の圧力変化を、前記圧力センサによりモニターして、電子部品装置のエアリーク検査とともに、前記フィルタの特性の良否判定を行う。
【0017】
また、請求項2記載のごとく、電子部品が実装された回路基板を収納する密閉ケースに、該密閉ケースの内部と外部とを連通する開口部を形成し、前記開口部を液体は遮断し気体は通過可能とするフィルタにて閉塞して構成した電子部品装置のエアリーク検査装置であって、前記開口部における前記フィルタよりも外部側に配置される圧力センサと、前記密閉ケース内に検査用エアを圧送するエア印加手段とを備え、前記エア印加手段により前記密閉ケース内に検査用エアを圧送したときの前記密閉ケース内の圧力変化を、前記圧力センサによりモニターして、電子部品装置のエアリーク検査とともに、前記フィルタの特性の良否判定を行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子部品装置のエアリーク検査を行う際に、密閉ケースの内部と外部とを連通する開口部に設けられるフィルタの特性の良否判定を同時に行うことが可能となり、電子部品装置の検査工程を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0020】
図1に示すエアリーク検査装置50は、電子部品装置1における密閉ケース10の内部空間1aの密閉性を検査するエアリーク検査を行うための装置である。
エアリーク検査装置50の検査対象となる電子部品装置1は、従来のエアリーク検査装置150の検査対象である、既に説明済みの電子部品装置1と同じものであるため、電子部品装置1についての説明の多くは、本説明においては省略する。
【0021】
電子部品装置1は、前述のように、ベース板11、ハウジング部材12および蓋部材13により密閉ケース10が構成されている。
密閉ケース10内には回路基板20が収納される内部空間1a、および内部空間1aとハウジング部材12の隔壁12dにより隔離されている呼吸室1bとが形成されている。
【0022】
図2に示すように、ハウジング部材12は、その下面が全周にわたって接着剤14aによりベース板11と接着されており、また、ハウジング部材12の隔壁12dがベース板11と接着剤14bにより接着されている。このように、隔壁12dを接着剤14bにてベース板11に接着することで、前記呼吸室1bが形成されている。
【0023】
前記隔壁12dに形成される呼吸孔12eは、液体は遮断し気体は通過可能とするフィルタ16により閉塞されている。前記フィルタ16は、例えば前記隔壁12dの呼吸室1b側の面に貼設されている。
フィルタ16の隔壁12dへの貼設は、フィルタ16を接着剤により隔壁12dへ接着したり、フィルタ16を隔壁12dに対して超音波接合したりすることなどで行うことが可能である。
【0024】
電子部品装置1の密閉ケース10においては、回路基板20が収納される内部空間1aを密閉構造に構成しつつ、該内部空間1aをフィルタ16を通じて外部と連通することで、内部空間1a内に外部からの水の浸入を防止するとともに、環境温度の変化などにより内部空間1a内の空気の膨張・収縮が生じたときでも、内部空間1a内外の圧力を平衡化することができるように構成している。
【0025】
次に、このように構成される電子部品装置1のエアリーク検査を行うエアリーク検査装置50について説明する。
電子部品装置1のエアリーク検査は、密閉ケース10のハウジング部材12に蓋部材13を接合していない状態(ベース部材11とハウジング部材12とが接合され、密閉ケース10の上面が解放された状態)の電子部品装置1に対して行われ、前記エアリーク検査装置50は、密閉ケース10の上面を閉塞する上面閉塞部材51と、コネクタ12aの接続部12bを閉塞するコネクタ部閉塞部材52と、前記ベース板11の連通孔11eに接続される圧力センサ58を備えている。
【0026】
前記上面閉塞部材51のハウジング部材12と当接する側の面にはウレタンパッドなどのシール部材51aが貼設されており、上面閉塞部材51はシール部材51aを介してハウジング部材12に当接している。これにより、上面閉塞部材51は気密的に密閉ケース10の上面を閉塞している。
また、上面閉塞部材51およびシール部材51aには内部空間1aと外部とを連通するエア導入孔51bが開口している。
【0027】
前記コネクタ部閉塞部材52のコネクタ12aと当接する側の面にはウレタンパッドなどのシール部材52aが貼設されており、コネクタ部閉塞部材52はシール部材52aを介してコネクタ12aに当接している。これにより、コネクタ部閉塞部材52は気密的にコネクタ12aを閉塞している。
また、コネクタ部閉塞部材52およびシール部材52aには内部空間1aと外部とを連通するエア導入孔52bが開口している。
圧力センサ58は、ウレタンパッドなどのシール部材53aを介して連通孔11eが形成されている部分のベース板11と接続されており、連通孔11eと連通している前記呼吸室1b内の圧力を検出可能に構成されている。
【0028】
また、エアリーク検査装置50は、前記上面閉塞部材51およびシール部材51aのエア導入孔51b、およびコネクタ部閉塞部材52およびシール部材52aのエア導入孔52bとエア配管57により接続され、該エア導入孔51bおよびエア導入孔52bを通じて内部空間1a内にエアを圧送する検査エア印加装置56を備えている。
【0029】
図3に示すように、検査エア印加装置56は、内部空間1a内へ圧送するエアを発生させるための検査エア源60と、前記検査エア源60から発生したエアの圧力を1次圧力P1に調整する1次レギュレータ61と、前記1次レギュレータ61にて調整したエア圧を検出する1次圧力センサ62と、前記1次レギュレータ61により1次圧力P1に調整されたエア圧を、1次圧力P1よりも低い印加圧力P2に絞る電磁比例弁などの電空レギュレータ63と、前記電空レギュレータ63により印加圧力P2に調整されたエア圧を検出する印加圧力センサ64と、印加圧力P2に調整されたエア(以下「検査エア」と記載する)を貯留するためのエアタンク65と、検査エアの内部空間1aへの供給・停止を切り替える検査ソレノイド66とを備えている。
【0030】
電子部品装置1のエアリーク検査は、このように構成されるエアリーク検査装置50により、エア導入孔51b・52bを通じて内部空間1a内に検査エアを圧送したときの、内部空間1a内の圧力変化を、前記フィルタ16を介して測定する(つまり呼吸室1b内の圧力変化を測定する)ものである。
【0031】
具体的には、電子部品装置1のエアリーク検査は、以下のようにして行われる。
図4に示すように、まず、検査ソレノイド66が閉じている状態で、検査エア源60で発生したエアの圧力を1次レギュレータ61により1次圧力P1となる100kpa程度に調整し、さらに電空レギュレータ63により印加圧力P2となる40kpa程度の検査エアに調整する。
次に、検査ソレノイド66を閉状態から開状態に切り替えて、検査エアを、エア導入孔51b・52bを通じて内部空間1a内に印加し、検査エア印加時における呼吸室1b内の圧力を圧力センサ58により検出する。
【0032】
検査エアを内部空間1a内に印加している期間(検査ソレノイド66を開いてから閉じるまでの期間)となる印加区間においては、圧力センサ58での検出圧力P3は、検査エアの印加による衝撃により変動しており、検査エアの印加後、検査ソレノイド66を閉じてから所定の時間が経過するまでの平衡待ち区間では、圧力センサ58での検出圧力P3は徐々に低下していき、平衡待ち区間に続くエアリーク検査区間においては、圧力センサ58での検出圧力P3は一定となる。
【0033】
本リーク検査装置50を用いて行うエアリーク検査では、圧力センサ58でにより検出圧力P3の変化をモニターして、前記印加区間においてフィルタ16の良否判定を行うとともに、エアリーク検査区間において内部空間1aのエアリーク検査を行う。
前記印加区間では、検査ソレノイド66を開いて検査エアの印加を開始すると、圧力センサ58による検出圧力P3が立ち上がり(上昇していき)、最初のピークを迎えた後立ち下る(下降していく)。圧力センサ58による検出圧力P3は、以降、再度の立ち上がりおよび立下りを繰り返し、波打った形状となる。つまり、印加区間における検出圧力P3の値は、電空レギュレータ63のエア圧力の制御精度による変動が生じる。
そして、フィルタ16の良否判定は、検査エアの印加を開始してから圧力センサ58による検出圧力が立ち上がり最初のピークを迎えるまでの立ち上がり時間taの長さに基づいて行う。
【0034】
ここで、内部空間1a内のエアがフィルタ16を通じて呼吸室1bへ通過する際には、フィルタ16による抵抗を受けるため、圧力センサ58による呼吸室1b内のエアの検出圧力P3は、内部空間1aのエアの圧力を直接検出した場合に比べて、立ち上がりが遅くなる。
つまり、検査エアの印加開始時における内部空間1aのエアの圧力は立ち上がりが速いが(図4における「内部空間内圧力P4」を参照)、圧力センサ58による検出圧力P3の立ち上がり時間taは、フィルタ16の抵抗により前記内部空間内圧力P4の場合よりも遅くなる。
従って、圧力センサ58による検出圧力P3の立ち上がり時間taが、予め設定しておいた所定の範囲内にあるか否かによりフィルタ16の良否判定を行うことができる。
【0035】
なお、前記内部空間内圧力P4は、従来のリーク検査装置150のように、検査エア印加装置156とエア導入孔151bおよびエア導入孔152bとを接続しているエア配管157の途中部に接続される圧力センサ158により検出した内部空間1a内の圧力と同等である。
【0036】
前記立ち上がり時間taの所定の範囲は、例えば破れや詰まりがなく正常な状態にあることがわかっているフィルタ16が装着されているマスタとなる電子部品装置1に対して検査エアの印加を行い、そのときの圧力センサ58による検出圧力P3の立ち上がり時間taに基づいて設定することができる。
そして、検査対象となる電子部品装置1に対して検査エアの印加を行った際の圧力センサ58による検出圧力P3の立ち上がり時間taが、設定した所定の範囲内にあれば、当該電子部品装置1のフィルタ16が良品であると判断する。
【0037】
また、前記検出圧力P3の立ち上がり時間taが設定した所定の範囲よりも短ければ、すなわち検出圧力P3の立ち上がりが速ければ、フィルタ16に破れ異常の不良があると判断する。逆に、前記検出圧力P3の立ち上がり時間taが設定した所定の範囲よりも長ければ、すなわち検出圧力P3の立ち上がりが遅ければ、フィルタ16に詰まり異常の不良があると判断する。
【0038】
つまり、検出圧力P3の立ち上がりが正常時に比べて速いということは、内部空間1a内のエアがフィルタ16の抵抗を受けることなく呼吸室1b内に流入してきているということであるため、フィルタ16に破れ異常の不良があると判断する。
また、検出圧力P3の立ち上がりが正常時に比べて遅いということは、内部空間1a内のエアがフィルタ16の抵抗以上の抵抗を受けながら呼吸室1b内に流入していきている(フィルタ16の一部に詰まりが生じている場合)、または内部空間1a内のエアが呼吸室1b内に流入していない(フィルタ16が全体的に詰まっている)ということであるため、フィルタ16に詰まり異常の不良があると判断する。
【0039】
また、エアリーク検査区間において行われる内部空間1aのエアリーク検査は、エアリーク検査区間における圧力センサ58による検出圧力P3の低下度合いに基づいて、エアリークの有無が判断される。
具体的には、予め検出圧力P3の低下度合いが、予め設定された所定の閾値よりも大きいか否かによりエアリークの有無が判断され、例えば検出圧力P3の低下度合いが前記閾値よりも大きければ密閉ケース10にエアリークが生じていると判断し、検出圧力P3の低下度合いが前記閾値以下であれば密閉ケース10にエアリークは生じていないと判断する。
【0040】
このように、エアリーク検査装置50では、回路基板20を収納する密閉ケース10に、密閉ケース10における内部空間1aの内部と外部とを連通する開口部である呼吸孔12eを形成し、前記呼吸孔12eをフィルタ16にて閉塞して構成した電子部品装置1のエアリーク検査を行うにあたって、前記呼吸孔12eにおけるフィルタ16よりも外部側に位置するベース板11の連通孔11eに圧力センサ58を接続し、前記密閉ケース10の内部空間1a内に検査エアを圧送し、前記検査エアを圧送したときの前記内部空間1a内の圧力変化を、フィルタ16を通じて前記圧力センサ16によりモニターして、電子部品装置1のエアリーク検査とともに、前記フィルタ16の破れや詰まりなど有無といった特性の良否判定を行うようにしている。
これにより、電子部品装置1のエアリーク検査を行う際に、同時にフィルタ16の特性の良否判定を行うことが可能となり、電子部品装置1の検査工程を簡略化することができる。
【0041】
また、電子部品装置1のように、ハウジング部材12の一側面から延出する隔壁12dをベース板11に接着することにより呼吸室1bが形成されている構成では、隔壁12dとベース板11とが接着剤14によりシールされていなければ(すなわち呼吸室1bが内部空間1aと隔離されておらず、隔壁12dとベース板11との間を通じて連通していると)、連通孔11eから呼吸室1b内に進入した水が隔壁12dとベース板11との間から内部空間1a内に入り込むこととなるため、隔壁12dとベース板11との接着剤14によるシール状態を検査することが重要である。
【0042】
本エアリーク検査装置50により、前述のようにエアリーク検査を行う場合は、前記ベース板11の連通孔11eに接続した圧力センサ58により検出圧力P3を検出するように構成しているが、隔壁12dとベース板11との接着剤14によるシールが完全でなく、エアが内部空間1aから隔壁12dとベース板11との間を通じて呼吸室1b内へ流入可能な状態にあれば、内部空間1a内のエアの呼吸室1b内への流入速度は、フィルタ16のみを通過して呼吸室1b内へ流入する場合に比べて速くなるので、前記検出圧力P3の立ち上がり時間taは正常時に比べて速くなる。
従って、検出圧力P3の立ち上がり時間taが正常時に対して短いか否か(例えば、前述の設定した所定の範囲内よりも短いか否か)を検査することにより、隔壁12dとベース板11とのシール状態の良否を判断することも可能である。
【0043】
なお、本例では、検出圧力P3の立ち上がり時間taの長短によりフィルタの特性の良否判定、および隔壁12dとベース板11とのシール状態の良否判定を行うようにしているが、内部空間1a内への検査エアの印加開始時における検出圧力P3の立ち上がりの大小により、フィルタの特性の良否判定、および隔壁12dとベース板11とのシール状態の良否判定を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】電子部品装置のエアリーク検査を行うエアリーク検査装置を示す側面断面図である。
【図2】接着剤が塗布されたベース板を示す平面図である。
【図3】エアリーク検査装置を示す回路図である。
【図4】エアリーク検査における圧力センサによる検出圧力などを示す図である。
【図5】エアリーク検査装置の検査対象となる電子部品装置を示す側面断面図である。
【図6】従来のエアリーク検査装置を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 電子部品装置
1a 内部空間
1b 呼吸室
10 密閉ケース
11 ベース板
11e 連通孔
12 ハウジング部材
12a コネクタ
12d 隔壁
12e 呼吸孔
13 蓋部材
14a・14b 接着剤
16 フィルタ
20 回路基板
50 エアリーク検査装置
51 上面閉塞部材
51b エア導入孔
52 コネクタ部閉塞部材
52b エア導入孔
56 検査エア印加装置
58 圧力センサ
60 検査エア源
61 1次レギュレータ61
63 電空レギュレータ
66 検査ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された回路基板を収納する密閉ケースに、該密閉ケースの内部と外部とを連通する開口部を形成し、前記開口部を液体は遮断し気体は通過可能とするフィルタにて閉塞して構成した電子部品装置のエアリーク検査方法であって、
前記開口部における前記フィルタよりも外部側に圧力センサを設け、
前記密閉ケース内に検査用エアを圧送し、
前記検査用エアを圧送したときの前記密閉ケース内の圧力変化を、前記圧力センサによりモニターして、
電子部品装置のエアリーク検査とともに、前記フィルタの特性の良否判定を行う、
ことを特徴とする電子部品装置のエアリーク検査方法。
【請求項2】
電子部品が実装された回路基板を収納する密閉ケースに、該密閉ケースの内部と外部とを連通する開口部を形成し、前記開口部を液体は遮断し気体は通過可能とするフィルタにて閉塞して構成した電子部品装置のエアリーク検査装置であって、
前記開口部における前記フィルタよりも外部側に配置される圧力センサと、
前記密閉ケース内に検査用エアを圧送するエア印加手段とを備え、
前記エア印加手段により前記密閉ケース内に検査用エアを圧送したときの前記密閉ケース内の圧力変化を、前記圧力センサによりモニターして、
電子部品装置のエアリーク検査とともに、前記フィルタの特性の良否判定を行う、
ことを特徴とする電子部品装置のエアリーク検査装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−135429(P2010−135429A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307882(P2008−307882)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】