説明

電子閃光装置

【課題】閃光放電管の繰り返しの発光において光量のばらつきが少なく、しかも、生産性に優れたものにすること。
【解決手段】トリガー電極16を閃光放電管10の放電管本体11の長手方向に沿って延在する線材により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子閃光装置に関し、更に詳細には、スチルカメラのストロボ(フラシュ)装置等に用いられる電子閃光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子閃光装置は、両端に放電電極を有し内部にキセノン等の希ガスを封入された円筒状ガラス管製の閃光放電管と、閃光放電管の外部に配置されトリガー電極と、閃光放電管の背面側に配置されたリフレクタとを含む。閃光放電管は、トリガー電極に高電圧が印加され、これによって封入ガスがイオン化し、放電電極間のインピーダンスが急激に低下することにより、放電電極間で放電が行われ、閃光を生じる。
【0003】
このような電子閃光装置では、ワイヤ製のトリガー電極が、閃光放電管の外周面に接触して、その長手方向に沿って延在するように配置されたものがある(例えば、特許文献1)。閃光放電管が連続的に繰り返し閃光すると、トリガー電極の温度が上昇し、トリガー電極が熱膨張する。
【0004】
トリガー電極の取り付けのために、トリガー電極の両端部がリングやハンド等によって閃光放電管の外周面に拘束固定されているものにおいて、トリガー電極が熱膨張すると、本来真っ直ぐなトリガー電極が反り返り、熱変形によってトリガー電極と閃光放電管外周面との接触状態が変動することになる。この接触状態が変動すると、トリガー電極による封入ガスに対する電圧印加状態が変動し、閃光放電管の閃光が不安定になったり、発光光量がばらつく等の不具合を生じることになる。
【0005】
このことに対して、トリガー電極を閃光放電管の長手方向で2分割し、各々トリガー電極の外端側に位置する一端のみを閃光放電管に固定し、他端は自由端にして、トリガー電極の熱膨張を拘束しない構造にすることにより、トリガー電極が熱変形することを回避するものがある(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−140656号(JP2008−140656A)公報
【特許文献2】登録実用新案第3014657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先行技術による電子閃光装置は、トリガー電極の熱変形を回避するだけために、部品点数が増え、しかもトリガー電極の取付構造も複雑になる。このような電子閃光装置は、特に、小型カメラのストロボ装置に用いられるような小型の電子閃光装置として、不向きである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、部品点数の増加、取付構造の複雑化を招くことなく、トリガー電極の熱変形によってトリガー電極と閃光放電管外周面との接触状態が変動することを回避し、小型カメラのストロボ装置に用いられる小型の電子閃光装置としても好適なものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電子閃光装置は、両端に放電電極を有し内部にガスを封入された円筒状ガラス管製の閃光放電管と、前記閃光放電管の外部に配置されトリガー電極と、前記閃光放電管の背面側に配置されたリフレクタとを有する電子閃光装置であって、前記トリガー電極は、前記閃光放電管の長手方向に沿って延在する線材あるいは帯状の板材により構成され、前記閃光放電管の外周面の一つの母線方向に沿って延在する直線部と、前記直線部が前記閃光放電管に接触する部位における前記外周面の接線方向に屈曲して延在する部分を含む波形部とを有す。
【0010】
この構成によれば、トリガー電極が熱膨張しても波形部が弾性変形することにより、トリガー電極の閃光放電管外周面に対する接触状態が変動することがない。このことにより、閃光放電管の繰り返しの閃光において光量がばらつくことが回避される。
【0011】
本発明による電子閃光装置は、好ましくは、更に、前記閃光放電管を前記リフレクタの側に付勢する弾性部材を有し、前記トリガー電極の前記波形部は、前記閃光放電管を介して前記弾性部材の付勢力により前記リフレクタに押し付けられている。
【0012】
この構成によれば、閃光放電管とリフレクタとの位置関係が通常使用下では変動しないことが保証され、リフレクタの出射口での光量の変動も少なくなる。
【0013】
本発明による電子閃光装置は、好ましくは、前記トリガー電極は、両端部に前記閃光放電管の外周を取り巻くC形環状部を有し、当該C形環状部が前記閃光放電管の外周に嵌合することにより前記放電電極に装着されている。
【0014】
この構成によれば、他の取付部品を必要とすることなく、トリガー電極を閃光放電管の外周に作業性よく装着することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による電子閃光装置によれば、トリガー電極が熱膨張しても波形部が弾性変形することにより、トリガー電極の閃光放電管外周面に対する接触状態が変動することがなく、閃光放電管の繰り返しの閃光において光量がばらつくことが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による電子閃光装置の一つの実施形態を、前面側から見た斜視図。
【図2】本発明による電子閃光装置の一つの実施形態を、背面側から見た斜視図。
【図3】本実施形態による電子閃光装置の縦断面図。
【図4】本実施形態による電子閃光装置に用いられる閃光放電管とトリガー電極との組立体を示す斜視図。
【図5】本実施形態による電子閃光装置に用いられるトリガー電極単体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明による電子閃光装置の一つの実施例を、図1〜図5を参照して説明する。
【0018】
電子閃光装置は閃光放電管10を有する。閃光放電管10は、円筒状の透明ガラス管製の放電管本体11と、放電管本体11の左右両端を塞ぎ、放電管本体11内にて相対向する放電電極12とを有し、放電管本体11の内部にキセノン等の希ガスを封入されている。
【0019】
閃光放電管10の背面側には、より詳細には放電管本体11の背面側にはリフレクタ13が配置されている。リフレクタ13は、左右両端を閉じられた半筒状の放物面による凹面鏡により構成されている。このリフレクタ13の使用では、放電管本体11は、リフレクタ13の焦点位置に配置され、放電管本体11の左右両端は、リフレクタ13の左右両端に形成された開口14を通ってリフレクタ13より左右外方に突出している。
【0020】
リフレクタ13は、閃光放電管10の前側に位置する側が、閃光放電管10の光の出口である四角形状の出射口13Aになっている。リフレクタ13の前部には、出射口13Aを閉じるように、透明樹脂製のフレネルレンズ板15が取り付けられている。
【0021】
リフレクタ13の外側には受光センサ20が配置されている。受光センサ20は、リフレクタ13に明けられた測光孔18よりリフレクタ13内の光量を定量的に計測する。受光センサ20により計測された光量は、閃光放電管10の公知の閃光量フィード制御のフィード補償信号として用いられる。
【0022】
放電管本体11の外周部にはトリガー電極16が配置されている。トリガー電極16は、放電管本体11の長手方向(軸線方向)に沿って延在する細い円形断面の線材により構成されている。トリガー電極16を構成する好適な線材としては、リン青銅、ステンレス鋼、ばね鋼等、ばね性を有している金属製の線材がよい。トリガー電極16の線径は、所要の強度、剛性を有して小さいことが好ましく、実用的な線径は0.1〜1.0mm程度で、最適線径は放電管本体11の外径に応じて設定されればよい。
【0023】
トリガー電極16は、閃光放電管10のトリガー電極として最も有効な部分として、その大部分を、放電管本体11の外周面(ガラス管外周面)の一つの母線(管軸線と平行な線)方向に沿って延在して当該放電管本体11の外周面に接触する直線部16Aとして構成されている。このように、直線部16Aは、放電管本体11の長手方向に沿って直線状に延在し、最適実施例として、放電管本体11の背面側の外周面に直接接触している。この接触は、円形断面の直線部16Aの外周面と円形断面の放電管本体11の外周面との接触により、線接触になる。
【0024】
トリガー電極16の左右両端部には、直線部16Aより90度折曲し、閃光放電管10の外周を取り囲むC形環状部16Bが湾曲形成されている。C形環状部16Bは、リフレクタ13より左右外方に位置する放電管本体11の端部近傍の外周に弾発的に嵌合している。これにより、トリガー電極16は、C形環状部16Bの弾性変形による復元力をもって、他の取付部品を必要とすることなく閃光放電管10に固定される。
【0025】
C形環状部16Bは、270度〜315度程度の回転角範囲に亘ってC形に湾曲し、90〜45度程度の回転角範囲が開口していてよく、開口部16Cを差し込み口として、放電管本体11の径方向の差し込みによって弾性変形しつつ放電管本体11の外周に嵌め込むことができる。これにより、トリガー電極16を、放電管本体11の外周に、作業性よくワンタッチで装着することができる。
【0026】
なお、必要に応じて放電管本体11とC形環状部16Bとの嵌合部に接着剤が塗布され、接着剤によって固定強度を上げる構造が取られてもよい。
【0027】
更に、トリガー電極16の長手方向中央の二箇所には、直線部16Aが放電管本体11に接触する部位における放電管本体11の外周面の接線方向(上下方向)に延在する部分16Dを含み、直線部16Aより上方に位置する上側反転部16Eと直線部16Aより下方に位置する下側反転部16Fとにより略S字形をなす波形部16Gが屈曲形成されている。これにより、本実施形態では、トリガー電極16の有効部分は、波形部16Gを除き、放電管本体11の長手方向に沿って直線状に延在する直線部16Aとなる。
【0028】
波形部16Gは、略S字形の形状からして、トリガー電極16の長手方向に荷重によって撓み易いばね性、つまり弾性変形し易いばね性を有する。これにより、両端を放電管本体11に固定拘束されたトリガー電極16が熱膨張しても、波形部16Gが弾性変形することにより、トリガー電極16の全体が弓形に反り返えることが回避され、直線部16Aのガラス管外周面に対する接触状態が変動することがない。
【0029】
これにより、トリガー電極16によるトリガー作用が安定し、閃光放電管10の繰り返し発光の光量のばらつきが少なくなる。トリガー電極16は、波形部16Gを含んで1部品であるから、トリガー電極16の部品点数が増えることがなく、トリガー電極16の取付構造が複雑になることもない。
【0030】
このようなことから、小型カメラのストロボ装置に用いられる小型の電子閃光装置として好適な電子閃光装置が得られる。
【0031】
リフレクタ13の外側に位置する放電管本体11の左右端部にはシリコンゴム等の弾性材料製の閉ループのクランプバンド17が掛け廻されている。クランプバンド17は、放電管本体11の左右端部に掛け廻されてリフレクタ13の背面でたすき掛けになっており、放電管本体11をリフレクタ14の奧側(出射口15とは反対の側)に付勢する弾性部材をなしている。
【0032】
これにより、トリガー電極16は放電管本体11と共にリフレクタ14の奥側に付勢させ、放電管本体11の背面側にある波形部16Gが上側反転部16Eと下側反転部16Fの双方をもってリフレクタ14に押し付けられ、当接している。
【0033】
この構造により、放電管本体11がリフレクタ14に接触することなく放電管本体11とリフレクタ14との位置関係が安定し、通常使用下では、この位置関係が変動しないことを保証することができる。
【0034】
このように、放電管本体11とリフレクタ14との位置関係が通常使用下では変動しないことが保証されていることにより、出射口15の光量の変動も少なくなる。
【0035】
なお、トリガー電極16の直線部16Aは、所期のトリガー電極作用を行うことが保証されなら、必ずしも、放電管本体11の外周面に接触している必要はなく、小さい間隙をあけて配置されてもよい。また、トリガー電極16の放電管本体11に対する取り付けは、C形環状部16Bに依らずに、接着等、他の手段、構成により行われてもよい。また、トリガー電極16は、線材に限られず、プレス加工可能な帯状の板材により構成することもできる。
【符号の説明】
【0036】
10 閃光放電管
11 放電管本体
12 放電電極
13 リフレクタ
13A 出射口
14 開口
15 フレネルレンズ板
16 トリガー電極
16A 直線部
16B C形環状部
16C 開口部
16D 接線方向に延在する部分
16E 上側反転部
16F 下側反転部
16G 波形部
17 クランプバンド
18 測光孔
20 受光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に放電電極を有し内部にガスを封入された円筒状ガラス管製の閃光放電管と、前記閃光放電管の外部に配置されトリガー電極と、前記閃光放電管の背面側に配置されたリフレクタとを有する電子閃光装置であって、
前記トリガー電極は、前記閃光放電管の長手方向に沿って延在する線材あるいは帯状の板材により構成され、前記閃光放電管の外周面の一つの母線方向に沿って延在する直線部と、前記直線部が前記閃光放電管に接触する部位における前記外周面の接線方向に屈曲して延在する部分を含む波形部とを有する電子閃光装置。
【請求項2】
前記閃光放電管を前記リフレクタの側に付勢する弾性部材を有し、前記トリガー電極の前記波形部は、前記閃光放電管を介して前記弾性部材の付勢力により前記リフレクタに押し付けられている請求項1に記載の電子閃光装置。
【請求項3】
前記トリガー電極は、両端部に前記閃光放電管の外周を取り巻くC形環状部を有し、当該C形環状部が前記閃光放電管の外周に嵌合することにより前記放電電極に装着されている請求項1また2に記載の電子閃光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127988(P2012−127988A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276619(P2010−276619)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(506075344)日清工業有限公司 (8)
【Fターム(参考)】