説明

電柱用簡易作業足場及びその使用方法

【課題】 軽量かつ簡単な構造で、確実に電柱に安定して取り付けることができ、さらに電柱上での作業性を高めた電柱用簡易作業足場及びその使用方法を提供する。
【解決手段】 電柱Pから突設した第1の足場ボルト16に係合する第1の取付部材3と、第2の足場ボルト17に係合する第2の取付部材4と、電柱Pに対して根元部を当接させて略水平に突設される足場部材2とを有し、足場部材2の根元部の電柱Pとの当接部分には、当接部11が形成され、第1の取付部材3は、当接部11と、第1の足場ボルト16に直接係合する掛け金具5とを連結する連結具6であり、第2の取付部材17は、第2の足場ボルト17に挿通させるための略V又はU字状の係合部材9と、係合部材9を足場部材2の先端部に接続するための連結部材7とからなり、係合部材9を前記第2の足場ボルト17に係合した際に、係合部材9の両端部は、第2の足場ボルト17の両端部に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電柱で作業する作業者の足場となる電柱用簡易作業足場及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電柱の左右には、足場ボルトが突出して設けられている。この足場ボルトは、作業者が電柱を昇降しやすいように、左右の足場ボルトは上下方向に互い違いに形成されている。しかし、電柱上で作業する場合、このように左右の足場ボルトに段差があると、作業者は常にその段差に合わせて片方の足を折り曲げ、他方の足を伸ばして無理な姿勢で作業することになり、作業性が悪いものである。
【0003】
したがって、作業中は左右両方の足場が水平であることが望ましい。作業中に簡易足場を設け、作業者の足場を水平とするための電力柱用携帯簡易足場が特許文献1に記載されている。この電力柱用携帯簡易足場は、角形状の本体の上下に備わるフックと、足場と、電柱に固定するためのバンドで構成され、不自然な姿勢での作業を不要とするものである。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の電力柱用携帯簡易足場では、取り付けられた足場はいわゆる片持ちの状態であるため、不安定であり、作業者の重量に耐えうるだけの強度及び構造が必要となる。したがって、このような機械的強度を得るための材質で足場と本体の連結構造を形成する必要があるので、重量が重くなり、持ち運びに不便である。また、足場が片側でのみ支持され、下側のフックが足場ボルトの一部分のみで支持されることは、作業者にとって不安な要素となる。
【0005】
【特許文献1】実開平5−10642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は上記従来技術を考慮したものであって、軽量かつ簡単な構造で、確実に電柱に安定して取り付けることができ、さらに電柱上での作業性を高めた電柱用簡易作業足場及びその使用方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、電柱から突設した第1の足場ボルトに係合する第1の取付部材と、前記電柱に対して、前記第1の足場ボルトの反対側であって上部に突設した第2の足場ボルトに係合する第2の取付部材と、前記第1の取付部材及び前記第2の取付部材と接続され、前記電柱に対して根元部を当接させて略水平に突設される足場部材とを有し、前記足場部材の根元部の前記電柱との当接部分には、前記電柱の形状に略沿った形状の当接部が形成され、前記第1の取付部材は、前記当接部と、前記第1の足場ボルトに直接係合する掛け金具とを連結する連結具であり、前記第2の取付部材は、前記第2の足場ボルトに挿通させるための透孔部を両端に備えた略V又はU字状の係合部材と、当該係合部材を前記足場部材の前記根元部と反対側の端部である先端部に接続するための連結部材とからなり、前記係合部材を前記第2の足場ボルトに係合した際に、前記透孔部を有する両端部は、前記第2の足場ボルトの両端部に位置することを特徴とする電柱用簡易作業足場を提供する。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記連結具は、前記当接部の左右両端に取付けられることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、前記連結具は、前記当接部の左右両端のいずれか一方にのみ取付けられることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれかの発明において、前記足場部材は、長手方向に対して垂直に切断したときの断面において、上面が逆V字形状又は逆U字形状に形成されることを特徴としている。
【0011】
また、請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の電柱用簡易作業足場の使用方法であって、前記第2の取付部材の前記係合部材の両端の間の前記第2の足場ボルトに手や足をかけ、あるいは命綱を取付けて作業を行うことを特徴とする電柱用簡易作業足場の使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、係合部材を第2の足場ボルトに係合した際に、その両端部が第2の足場ボルトの両端部に位置することになるので、作業者は第2の足場ボルトの中央部分を利用することができる。例えば、手や足をかけたり、あるいは命綱の取り付けに用いることができるので、作業性が向上する。また、作業者は第1の足場ボルトと足場部材を用いて、両足の高さを揃えて作業することができ、作業性が向上する。このとき、足場部材は一方の端部を第1の取付部材により、他方の端部を第2の取付部材により支持されるため、確実に安定して電柱に取付けることができる。
【0013】
また、この発明の足場部材は、電柱外周に根元部を当接させ、第1の足場ボルトに第1の取付部材の掛け金具(例えばOリングやフック等)を嵌めて第1の取付部材の他端を足場部材の根元部に係止し、第2の取付部材の係合部材を第2の足場ボルトに係合させれば設置が完了し、極めて容易かつ迅速に取付けることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、連結具(例えばベルト、ロープ、ワイヤ等)を当接部の左右両端から電柱に沿わせ、第1の足場ボルトを掛け金具に係合させて確実に安定して足場部材を電柱に取付けることができる。このように電柱の両側から連結具を沿わして固定することにより、作業者は足場部材のどちらの方向から足をかけても、足場部材は安定して電柱に固定されるので、作業性が向上する。
【0015】
請求項3の発明によれば、足場部材を電柱に取り付けた状態では、連結具(例えばベルト、ロープ、ワイヤ等)が電柱に対して半周だけ巻かれた状態であるため、地面から電柱に沿った立ち上がりケーブル等の装柱部材が備わっていても、これと反対側に連結具を取り付けることにより、装柱部材の影響を受けることなく確実に足場部材を電柱に取り付けることができる。また、連結具が電柱の半周だけ巻かれる、すなわち作業者から見れば電柱の片側の面だけで取り付けることができるため、作業者は両手を電柱の後ろ側に伸ばす必要がなく、電柱への装着が容易となり、取り扱い性が向上する。
【0016】
請求項4の発明によれば、作業者が足場部材に足をかけやすくなり、また作業中は作業者は電柱に対して命綱を介して斜めになって作業することが多いため、その体勢をとりやすくなる。
【0017】
請求項5の発明によれば、連結部材の両端部の間の第2の足場ボルトを有効に利用することができ、作業性が向上する。すなわち、連結部材をV又はU字状に形成するので、第2の足場ボルトの中央部分が広く利用でき、ここに手をかけて作業したり、足をかけて電柱を上ったり、命綱のフックを掛けたりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1はこの発明に係る電柱用簡易作業足場を電柱に取り付けた状態の正面図であり、図2は図1の状態における足場部材及び第1の取付部材の平面図である。また、図3は図1の状態における足場部材及び第2の取付部材の側面図である。
【0019】
図示したように、この発明に係る電柱用簡易作業足場1は、足場部材2と、第1の取付部材3と、第2の取付部材4で構成される。第1の取付部材3は、Oリング(掛け金具)5を備えたベルト(連結具)6からなる。第2の取付部材4は、係合部材9と連結部材7からなり、連結部材7は、足場部材2に対して回動可能に取付けられた連結金具8と、ワイヤロープ10で構成される。係合部材9は、上側が開いた略V又はU字形状であり、両端部に第2の足場ボルト17を挿通可能な透孔部13が形成される(図3参照)。足場部材2は、逆向きチャネル部材からなる足載せ部材15と、足載せ部材15の電柱Pに当接する側の端部(根元部)に形成される当接部11で構成される。
【0020】
当接部11は電柱Pに沿うような形状に形成され、足載せ部材15の根元部から両側に溶着固定された当接部材14と、その両側のバックル12で形成される。これにより、足載せ部材15の根元部から当接部11が左右に張り出した構成とされるので、当接部11の張り出した部分で電柱Pとの接触面積を広げ、足場部材2を確実に支持することができる。バックル12は、ベルト6の一端を通して固定するためのものである。また、足場部材2の足載せ部材15の上面に、滑り止め材20が貼着される(図2参照)。これにより、足場部材2に作業者が足を乗せて作業する際に、足元が滑ることはなく、安心かつ安全に作業をすることができる。
【0021】
足場部材2がその根元部の当接部11を電柱に当てられて、電柱Pに取付けられた状態において、第2の取付部材4は電柱Pから突設した第2の足場ボルト17に係合する。このとき、係合部材9の両端部が第2の足場ボルト17のそれぞれ両端部に位置する構成としているので、作業者は第2の足場ボルトの中央部分を自由に利用することができる。例えば、手や足をかけたり、あるいは命綱の取付けに用いることができるので、作業性が向上する。すなわち、係合部材9を上側が開いた略V字又はU字形状とすることにより、第2の足場ボルト17に取付けた際に、足場ボルト17の利用の自由度が高まり、作業者は係合部材9に気を使うことなく、当該第2の足場ボルト17を用いて通常通りの作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、係合部材9は、ワイヤロープ10及び連結金具8を介して足場部材2の電柱Pに対して遠い側の端部(先端部)と連結される。このため、足場部材2は第2の足場ボルト17に対して第2の取付部材4により固定支持される。この状態において、ワイヤロープ10は、鉛直方向に緊張し、足場部材2の長手方向略中央の上方に位置するため、ワイヤロープ10で足場部材2にかかる作業者の重量をその中央で確実に受けることができる。なお、ベルト6で足場部材2を水平方向に係合させていない場合であっても、第2の足場ボルト17からワイヤロープ10で吊り下げられている状態で、足場部材は水平に保たれ、作業者の重量を受けることができる。連結金具8は足場部材2の先端部に取付けられ、一端上方へ伸びてその後、電柱P側へ折り曲げた屈曲部を設けているので、足場部材2に作業者が足を乗せる際にこれが妨げとなることはない。上述したように、連結金具8は足場部材2に対して回動可能に取付けられるため、これを折りたたんで電柱用簡易作業足場1の持ち運びが可能となり、取り扱い性が向上する。
【0023】
足載せ部材15の上面は長手方向に切断した断面において、上面が逆V字形状又は逆U字形状(図では逆V字形状)に形成される。これにより、作業者が足をかけやすくなり、また作業中は作業者は電柱Pに対して命綱を介して斜めになって作業することが多いため、その体勢をとりやすくなる。したがって、図に示すような断面逆V字状に形成すれば、いずれの側から足をかける際もかけやすくなり、好ましい。足載せ部材15の先端部には、連結金具8を取付けるための取付座金18が備わる。取付座金18にはストッパ19が設けてあり、これにより連結部材8が足場部材2に対して90°以上回動しないように規制している。
【0024】
また、足場部材2が電柱Pに取り付けられた状態において、第1の取付部材3は、第1の足場ボルト16に係合する。このとき、Oリング5が第1の足場ボルト16に挿通され、バックル12によりベルト6の長さを調節して確実に固定される。これにより、足場部材2は第1の足場ボルト16の略軸方向で水平となる。このため、作業者は第1の足場ボルト16と足場部材2に足を乗せることにより、両足の高さを揃えて作業することができ、作業性が向上する。
【0025】
ベルト6は、当接部11の両端に備わるため、電柱Pに対して両側から挟むように巻かれ、固定される。これにより、ベルト6を当接部11の左右両端から電柱に沿わせ、第1の足場ボルト16をOリング10に挿通して確実に安定して足場部材2を電柱Pに取付けることができる。このように電柱Pの両側からベルト6を沿わして固定することにより、作業者は足場部材2のどちらの方向から足をかけても、足場部材2は安定して電柱Pに固定されるので、作業性が向上する。
【0026】
なお、図では2本のベルト6を用いて電柱Pを全周巻いた構造を示したが、ベルト6を当接部11の左右両端のいずれか一方にのみ取付け、電柱Pに対し半周のみ巻く構造であってもよい。半周巻きであっても、足場部材2は安定して電柱Pに固定され、十分な強度を有することが確認されている。このようにすれば、足場部材2を電柱Pに取付けた状態では、ベルト6が電柱Pに対して半周だけ巻かれた状態となるため、地面から電柱Pに沿った立ち上がりケーブル等の装柱部材が備わっていても、これと反対側にベルト6を取付けることにより、装柱部材の影響を受けることなく確実に足場部材2を電柱Pに取付けることができる。また、ベルト6が電柱Pの半周だけ巻かれる、すなわち作業者から見れば電柱Pの片側の面だけで取付けることができるため、取付の際に作業者は両手を電柱Pの後ろ側に伸ばす必要がなく、電柱Pへの装着が容易となり、取り扱い性が向上する。
【0027】
以上の構成から、足場部材2は、一方の端部を第1の取付部材3により、他方の端部を第2の取付部材4により支持されるため、確実に安定して電柱Pに取付けられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係る電柱用簡易作業足場を電柱に取り付けた状態の正面図である。
【図2】図1の状態における足場部材及び第1の取付部材の平面図である
【図3】図1の状態における足場部材及び第2の取付部材の側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1:電柱用簡易作業足場、2:足場部材、3:第1の取付部材、4:第2の取付部材、5:Oリング、6:ベルト、7:連結部材、8:連結金具、9:係合部材、10:ワイヤロープ、11:当接部、12:バックル、13:透孔部、14:当接部材、15:足載せ部材、16:第1の足場ボルト、17:第2の足場ボルト、18:取付座金、19:ストッパ、20:滑り止め材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱から突設した第1の足場ボルトに係合する第1の取付部材と、
前記電柱に対して、前記第1の足場ボルトの反対側であって上部に突設した第2の足場ボルトに係合する第2の取付部材と、
前記第1の取付部材及び前記第2の取付部材と接続され、前記電柱に対して根元部を当接させて略水平に突設される足場部材とを有し、
前記足場部材の根元部の前記電柱との当接部分には、前記電柱の形状に略沿った形状の当接部が形成され、
前記第1の取付部材は、前記当接部と、前記第1の足場ボルトに直接係合する掛け金具とを連結する連結具であり、
前記第2の取付部材は、前記第2の足場ボルトに挿通させるための透孔部を両端に備えた略V又はU字状の係合部材と、当該係合部材を前記足場部材の前記根元部と反対側の端部である先端部に接続するための連結部材とからなり、
前記係合部材を前記第2の足場ボルトに係合した際に、前記透孔部を有する両端部は、前記第2の足場ボルトの両端部に位置することを特徴とする電柱用簡易作業足場。
【請求項2】
前記連結具は、前記当接部の左右両端に取付けられることを特徴とする請求項1に記載の電柱用簡易作業足場。
【請求項3】
前記連結具は、前記当接部の左右両端のいずれか一方にのみ取付けられることを特徴とする請求項1に記載の電柱用簡易作業足場。
【請求項4】
前記足場部材は、長手方向に対して垂直に切断したときの断面において、上面が逆V字形状又は逆U字形状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電柱用簡易作業足場。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電柱用簡易作業足場の使用方法であって、前記第2の取付部材の前記係合部材の両端の間の前記第2の足場ボルトに手や足をかけ、あるいは命綱を取付けて作業を行うことを特徴とする電柱用簡易作業足場の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−18987(P2010−18987A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179767(P2008−179767)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000139702)株式会社安田製作所 (16)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)