電極構造
【課題】 管径が細くても、フィラメントコイルとリード線とが確実に接続され得て、熱的に遮断され得るようにした電極構造を提供する。
【解決手段】 互いに平行に配置された二本のリード線11,12と、長手方向に引き出された接続部13b,13cを有するフィラメントコイル13と、から構成されていて、上記フィラメントコイルの各接続部13b,13cが、それぞれ対応するリード線11,12の先端に対して接続されている電極構造10であって、各リード線11,12の先端が、それぞれ一端14a,15aが被嵌されカシメにより固定されたパイプ連結部14,15を備えており、上記フィラメントコイル13の各接続部13b,13cが、それぞれ対応するパイプ連結部14,15の他端14b,15bにリード線11,12の先端と直接に接触しないように挿入され、カシメ固定されるように、電極構造10を構成する。
【解決手段】 互いに平行に配置された二本のリード線11,12と、長手方向に引き出された接続部13b,13cを有するフィラメントコイル13と、から構成されていて、上記フィラメントコイルの各接続部13b,13cが、それぞれ対応するリード線11,12の先端に対して接続されている電極構造10であって、各リード線11,12の先端が、それぞれ一端14a,15aが被嵌されカシメにより固定されたパイプ連結部14,15を備えており、上記フィラメントコイル13の各接続部13b,13cが、それぞれ対応するパイプ連結部14,15の他端14b,15bにリード線11,12の先端と直接に接触しないように挿入され、カシメ固定されるように、電極構造10を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本のリード線に接続されたフィラメントコイルから成る電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱陰極放電灯,蛍光灯等においては、ガラス管の端部に電極が設けられている。
この電極は、例えば二本のリード線に接続されたフィラメントコイルから構成されており、フィラメントコイルがガラス管内に封止されており、リード線がガラス管内から外部に気密的に引き出されるようになっている。
これにより、電極のリード線からフィラメントコイルに給電され、ガラス管内にて放電が生じて、発光が行なわれるようになっている。
【0003】
ところで、上述した電極は、材質の異なるリード線とフィラメントコイルとを互いに接続するために、例えば図8に示すような電極構造を有している。
即ち、図8(A)において、電極構造1は、二本のリード線2a,2bと、フィラメントコイル3と、から構成されている。
【0004】
上記各リード線2a,2bは、それぞれステム状の導電性金属材料から構成されており、互いに平行に配置されている。
【0005】
上記フィラメントコイル3は、例えばタングステンやドープタングステン等から構成されており、螺旋状のコイル本体3aと、このコイル本体3aの両端から突出した接続部3b,3cと、から構成されている。
【0006】
上記フィラメントコイル3は、図8(A)に示すように、その接続部3b,3cがそれぞれ真っ直の状態のリード線2a,2bの先端に当接した状態にて、各リード線2a,2bの先端を矢印方向に折曲げて、フィラメントコイル3の接続部3b,3cを挟持し、カシメ固定する。
これにより、フィラメントコイル3は、その接続部3b,3cがリード線2a,2bに対して固定・保持されるようになっている。
【0007】
しかしながら、このような構成の電極構造1においては、フィラメントコイル3がガラス管の管径方向に延びていることから、管径が細い場合には、このような電極構造1は採用することが困難である。
【0008】
なおまた、例えば図9に示すような電極構造も知られている。
図9において、電極構造4は、二本のリード線2a,2bと、縦長のフィラメントコイル5と、から構成されている。
上記フィラメントコイル5は、例えばガラス管の長手方向に延びる軸の周りに巻回するように二重の螺旋状に形成されたコイル本体5aと、コイル本体5aから軸方向(図示の場合、下方)に延びる接続部5b,5cと、から構成されている。
【0009】
上記フィラメントコイル5は、真っ直の状態のリード線2a,2bの先端に整列し且つ当接した状態にて、各リード線2a,2bの先端に対して、スポット溶接,レーザ溶接等の溶接により固定・保持されるようになっている。
【0010】
このような構成の電極構造4の変形例が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1の電極構造においては、フィラメントコイル5の接続部5a,5bは、図10に示すように、リード線2a,2bの先端に対して、ヒートタブ6a,6bを介して溶接されている。
これにより、フィラメントコイル5の発熱がヒートタブ6a,6bに対して放熱されるようになっている。
【0011】
また、電球7においては、例えば図11に示すように、フィラメントコイル7aが、リード線7bに対して、パイプ7cを介して溶接されているものがある。
【0012】
特許文献2には、図12に示すように、電極8aを、金属パイプ8bの中に金属粉末及びエミッター粉末の混合物8cを充填し、中央に孔が形成されるようにプレスし焼結させて、金属パイプ8bの後端部を、ガラス管8dの端部を貫通したリード線8eに対してカシメ固定するようにした、蛍光ランプ8が開示されている。
【0013】
また、特許文献3には、図13に示すように、電極(即ち棒電極またはフィラメント)9aとリード線9bとをパイプ(連結部材)9cを介して互いに溶接またはカシメにより固定するようにしたハロゲン電球用マウント9が開示されている。
この場合、パイプ9cは、電極9aを構成する材質であるタングステンより熱膨張係数の大きい材料から構成されており、点灯時にパイプ9cが膨張することによって、電極9aとリード線9bとの間に間隙が生じて、電極9aから直接にリード線9bに熱が伝達されず、その酸化が防止され得るようになっている。
【特許文献1】特開2005−235749号
【特許文献2】特開平04−245161号
【特許文献3】特開平11−297272号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上述した電極構造4においては、リード線2a,2bの先端に対してフィラメントコイル5の両端の接続部5b,5cが溶接により固定されていることから、溶接の際に、特に接続部5b,5cの領域にて、フィラメントコイル5を構成するタングステン等が再結晶を生ずることによって、脆くなってしまう。
このため、衝撃等が加えられたとき、フィラメントコイル5がリード線2a,2bの先端から脱落してしまうことがある。
このような溶接によるフィラメントコイルの脆弱化は、上述した電球7の場合も同様である。
【0015】
また、点灯時にフィラメントコイル3,5で発生する熱がリード線2a,2bに伝達されることから、リード線2a,2bのガラス管の端壁における封止部にも熱が伝達されてしまう。従って、封止部を構成するガラスとリード線2a,2bの材料の熱膨張係数の差により、封止部にてリード線2a,2bとの間に間隙が生ずることになり、ガラス管内の封入ガスがリークしてしまうことになる。
これに対して、リード線2a,2bを長くして、フィラメントコイル3,5を封止部から離反させる構成も考えられるが、非点灯部分が拡大することになり、例えばバックライトの光源として使用する場合に、発光面の周囲の非発光部分が多くなってしまうことになる。
【0016】
特許文献2による蛍光ランプ8においては、リード線8eの先端に対して、焼結により電極8aと一体化されることにより、電極8aの一部を構成する金属パイプ8bの後端部が、カシメにより固定されている。
従って、金属パイプ8bの電極8aとの一体化のために焼結工程が必要となり、作業が煩雑になってしまう。
【0017】
また、特許文献3による管球用マウント9においては、点灯時にパイプ9cが電極9a及びリード線9bよりも大きく膨張することにより、電極9aとリード線9bとの間に間隙が生ずる。これにより、電極9aからの熱が、この間隙により阻止されることにより、リード線9bに熱が伝達されず、その酸化が防止され得るようになっている。
このため、電極9a及びリード線9bの材質とパイプ9cの材質の膨張係数の差に基づいて、温度上昇時に生ずる僅かな間隙を利用して、熱伝導を遮断していることから、熱伝導の遮断動作が不安定であり、電極9aとリード線9bとの間の接触が不良となることがある。
【0018】
本発明は、以上の点から、管径が細くても、フィラメントコイルとリード線とが確実に接続され、熱的に遮断され得るようにした電極構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、本発明によれば、互いに平行に配置された二本のリード線と、長手方向に引き出された接続部を有するフィラメントコイルと、から構成されていて、上記フィラメントコイルの各接続部が、それぞれ対応するリード線の先端に対して接続されている電極構造であって、各リード線の先端が、それぞれ一端が被嵌されカシメにより固定されたパイプ連結部を備えており、上記フィラメントコイルの各接続部が、それぞれ対応するパイプ連結部の他端に挿入され、カシメ固定されていることを特徴とする、電極構造により、達成される。
【0020】
本発明による電極構造は、好ましくは、上記パイプ連結部が、リード線よりも熱伝導性の低い材料から構成されている。
【0021】
本発明による電極構造は、好ましくは、上記パイプ連結部が、それぞれ他端に向かって先細になるようにテーパ状に形成されている。
【0022】
本発明による電極構造は、好ましくは、上記パイプ連結部が、その中間領域に絞り部を備えている。
【0023】
本発明による電極構造は、好ましくは、上記パイプ連結部が、ゲッター機能を備えている。
【発明の効果】
【0024】
上記構成によれば、フィラメントコイルの各接続部が、パイプ連結部を介して対応するリード線の先端に対して接続される。これにより、リード線を介して給電が行なわれることになる。
この場合、フィラメントコイルの各接続部とリード線の先端がパイプ連結部を介して直線状に整列することになる。これにより、当該電極構造を組み込むべき熱陰極放電灯等のガラス管の管径が細い場合であっても、これらのフィラメントコイルの各接続部とリード線の先端がガラス管の長手方向に整列することから、当該電極構造を確実に組み込むことが可能である。
【0025】
さらに、フィラメントコイルの各接続部は、パイプ連結部に対してカシメによって固定されて。これにより、フィラメントコイルが溶接による再結晶の発生により脆弱化するようなことがなく、確実にパイプ連結部に対して接続されることになる。このため、例えば衝撃等によって、フィラメントコイルがリード線の先端から脱落してしまうようなことがない。
【0026】
また、リード線とパイプ連結部も、カシメにより固定される。このため、パイプ連結部の両端に対して、それぞれフィラメントコイルの接続部及びリード線の先端を同時にカシメ固定することが可能になり、工程が単純化され得ることになる。
これらのフィラメントコイルの接続部及びリード線とパイプ連結部との接続の際に、フィラメントコイルの接続部及びリード線がパイプ連結部の端部内に挿入した状態で、カシメ等が行なわれ、作業が容易に行なわれ得ることになる。
【0027】
上記パイプ連結部が、リード線よりも熱伝導性の低い材料から構成されている場合には、点灯時にフィラメントコイルで発生する熱が、リード線に伝達されにくくなる。このため、ガラス管の封止部において、封止部を構成するガラスとリード線の材料の熱膨張係数の差による間隙の発生が抑制されることになる。
従って、封止部にて、ガラス管内の封入ガラスがリークしてしまうようなことはなく、さらにリード線の放熱のために、ガラス管内におけるリード線を長く保持する必要がない。このため、ガラス管の非発光部を小さくすることができる。これにより、当該電極構造を組み込んだ熱陰極放電灯等を例えばバックライトの光源として使用する場合であっても、発光面の周囲の非発光部分をできるだけ小さくすることができる。
【0028】
上記パイプ連結部が、それぞれ他端に向かって先細になるようにテーパ状に形成されている場合には、パイプ連結部に対してフィラメントコイルの接続部を挿入・カシメ固定する際に、フィラメントコイルの接続部のパイプ連結部に対する位置決めが容易に且つ確実に行なわれ得る。これにより、フィラメントコイルの取付位置精度が向上することになる。
【0029】
上記パイプ連結部が、その中間領域に絞り部を備えている場合には、パイプ連結部の両端からそれぞれフィラメントコイルの接続部及びリード線の先端を挿入したとき、上記絞り部がストッパとして機能する。これにより、パイプ連結部内でフィラメントコイルの接続部及びリード線の先端が互いに直接に接触することがない。
従って、点灯時にフィラメントコイルで発生する熱が、より一層リード線に伝達されにくくなる。
【0030】
上記パイプ連結部が、ゲッター機能を備えている場合には、当該電極構造を組み込んだ熱陰極放電灯等のガラス管内において、このゲッター機能により、ガラス管内の不純物気体分子が吸着される。これにより、ガラス管内における放電状態やスパッタ等が改善され得ることになる。
【0031】
このようにして、本発明によれば、フィラメントコイルの接続部が、当該電極構造を組み込むべきガラス管の長手方向に沿って、パイプ連結部を介してリード線の先端に接続される。また、パイプ連結部に対してカシメ固定されているので、フィラメントコイルとリード線とが互いに確実に接続され、熱的に遮断され得るようにした電極構造が提供されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図7を参照しながら、詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0033】
[実施例1]
図1は、本発明による電極構造の第一の実施形態の構成を示している。
図1において、電極構造10は、二本のリード線11,12と、フィラメントコイル13と、二つのパイプ連結部14,15と、から構成されている。
【0034】
上記各リード線11,12は、それぞれステム状の導電性金属材料から構成されており、互いに平行に配置されている。
【0035】
上記フィラメントコイル13は、例えばタングステン(W)やレニウムタングステン(W−Re),ドープタングステン等から構成されており、螺旋状のコイル本体13aと、このコイル本体13aから軸方向(図示の場合、下方)に延びる接続部13b,13cと、から構成されている。
図示の場合、コイル本体13aは、例えばガラス管の長手方向に延びる軸の周りに巻回するように二重の螺旋状に形成されているが、これに限らず、任意の構造のコイルとして構成されていてもよく、また例えばC−6またはC−8タイプの自動車用バルブのフィラメントコイルと同様に構成されていてもよい。
【0036】
さらに、上記フィラメントコイル13は、好ましくは、その表面に電子放出物質、例えばバリウム(Ba),ストロンチウム(Sr),カルシウム(Ca)等から成る酸化物が塗布されている。
【0037】
上記パイプ連結部14,15は、導電性材料、例えば金属から構成されており、中空円筒状に形成されている。
ここで、上記パイプ連結部14,15は、前述したリード線11,12の構成材料よりも熱伝導率の低い(例えば熱伝導率が115W/m・K以下)金属材料、例えばニッケル,鉄系金属から構成されている。
【0038】
また、上記パイプ連結部14,15は、好ましくはゲッター機能を備えている。
このゲッター機能は、パイプ連結部14,15自体がゲッター機能を有する材料から構成され、あるいはパイプ連結部14,15の内側または外側にゲッター機能を有する材料が塗布,蒸着等により形成されることにより、付与され得る。
【0039】
なお、パイプ連結部14,15自体がゲッター機能を備える場合、上記パイプ連結部14,15は、例えばチタン系やジルコニウム系の金属材料から構成され得る。
他方、比較的低い導電性を備えたゲッター機能を有する材料がパイプ連結部14,15の表面に形成される場合、一般的にはこの材料は、パイプ連結部14,15の外側面に形成される。
【0040】
上記パイプ連結部14,15は、図2に示すように、その一端(図示の場合、下端)14a,15aが、それぞれ対応するリード線11,12の先端に被嵌され、図3に示すように、側方からカシメられることにより、変形したパイプ連結部14,15の下端14a,15aにより挟持され、固定保持され、即ちカシメ固定される。
なお、リード線11,12の先端とパイプ連結部14,15とは、溶接によって互いに接続され、固定保持されるようにしてもよい。
【0041】
他方、上記パイプ連結部14,15は、図3に示すように、その他端(図示の場合、上端)14b,15b内に、それぞれフィラメントコイル13の接続部13b,13cが挿入され、側方からカシメられることにより、変形したパイプ連結部14,15の上端14b,15bにより挟持され、固定保持され、即ちカシメ固定される。
【0042】
ここで、上記パイプ連結部14,15と、リード線11,12の先端またはフィラメントコイル13の接続部13b,13cの固定保持は、何れが先に行なわれてもよく、また双方とも固定される場合には、同時に行なわれてもよい。
他方、上記パイプ連結部14,15とリード線11,12の先端との固定保持が溶接により行なわれる場合には、好ましくはこの溶接による固定保持が行なわれた後、上記パイプ連結部14,15とフィラメントコイル13とのカシメ固定が行なわれる。これにより、溶接工程におけるフィラメントコイル13に対する熱の影響が確実に排除され得ることになる。
【0043】
本発明実施形態による電極構造10は、以上のように構成されており、組立の際には、上記パイプ連結部14,15の下端14a,15aがリード線11,12の先端に被嵌され、カシメまたは溶接により固定保持される。また、その上端14b,15b内に、フィラメントコイル13の接続部13b,13cが挿入され、カシメ固定される。
【0044】
その際、上記パイプ連結部14,15内に挿入されたフィラメントコイル13の接続部13b,13cは、それぞれパイプ連結部14,15内にて、リード線11,12の先端に当接しないように、図3に示すように、適宜の間隔を画成するように、挿入される。
これにより、電極構造10におけるフィラメントコイル13とリード端子11,12がそれぞれパイプ連結部14,15を介して互いに固定保持されることになる。
【0045】
この場合、フィラメントコイル13は、それぞれパイプ連結部14,15の上端14b,15bに対してカシメ固定されている。これにより、溶接による固定の場合のようにフィラメントコイル13を構成するタングステン等の材料が再結晶し、脆弱化することがない。
従って、衝撃等によって、フィラメントコイル13がリード線11,12の先端から脱落してしまうようなことがなく、電極構造10の信頼性が向上することになる。
【0046】
また、フィラメントコイル13の接続部13b,13cが、それぞれパイプ連結部14,15を介して、対応するリード線11,12の先端に対して接続されている。これにより、これらが、電極構造10を組み込むべきガラス管の長手方向に沿って延びることになり、ガラス管の管径が細い場合であっても、当該電極構造10を容易に組み込むことが可能である。
【0047】
このようにして組み立てられた電極構造10は、例えば図4に示すように、熱陰極放電灯16を構成するパイプ状のガラス管17の一端17aに対して、ビード18を介して、気密的に取り付けられ、ガラス管17内を密封する。その際、ガラス管17内には、封入ガスが封入されるようになっている。
なお、実際には、ガラス管17の他端に対しても、同様に別の電極構造10が対称的に取り付けられる(不図示)。
【0048】
これにより、リード線11,12管に外部から給電が行なわれる。このため、フィラメントコイル13が加熱され、ヒーターとして作用し、ガラス管17の他端(不図示)に取り付けられた同様の構成の電極構造におけるフィラメントコイルとの間に、放電電圧が印加され、ガラス管17内で放電が行なわれる。
【0049】
ここで、上記パイプ連結部14,15が、リード線11,12の材料よりも熱伝導性の低い材料から構成されている。このため、熱陰極放電灯16の点灯時に、フィラメントコイル13で発生した熱は、パイプ連結部14,15を介してリード線11,12に伝達されにくくなっている。
従って、ガラス管17の一端17aにおけるビード18による封止部にて、リード線11,12とガラス管17またはビード18の熱膨張係数の差に基づいて、間隙が発生して、ガラス管17内の封入ガスがリークしてしまうようなことがない。
また、リード線11,12があまり加熱されないことから、リード線11,12の先端が、ガラス管17の端部に対して比較的接近して配置され得る。これにより、ガラス管17の非発光部分を小さくすることができる。これにより、同じ長さのガラス管17を使用する場合には、光量が増大することになる。
【0050】
また、上記フィラメントコイル13に、電子放出物質が塗布されている。これにより、これらの電子放出物質からフィラメントコイル13の加熱によってガラス管17内に電子が放出し、ガラス管17内における放電を促進することになる。
さらに、上記パイプ連結部14,15がゲッター機能を備えている。これにより、ガラス管17内における不純物等の気体分子が吸着され、ガラス管内における放電状態やスパッタ等が改善されることになる。
【0051】
[実施例2]
図5は、本発明による電極構造の第二の実施形態の要部の構成を示している。 図5(A)において、電極構造20は、図1に示した電極構造10とほぼ同様の構成であるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
上記電極構造20は、図1に示した車両用灯具10とは、以下の点で異なる構成になっている。
即ち、上記電極構造20においては、パイプ連結部14,15が、下端14a,15aと上端14b,15bとの間の中間領域にて、少なくとも内径が小さくなっている絞り部14c,15cを有している。なお、この絞り部は図5(B)に示すように閉塞して接触していても良い。
【0053】
このような構成の電極構造20によれば、上記パイプ連結部14,15の下端14a,15aまたは上端14b,15bに対して、リード線11,12の先端またはフィラメントコイル13の接続部13b,13cを挿入する際に、この絞り部14c,15cがストッパとして機能する。これにより、上記パイプ連結部14,15内で、リード線11,12の先端とフィラメントコイル13の接続部13b,13cとの直接接触が確実に回避され得ることになる。
【0054】
従って、熱陰極放電灯16の点灯時にフィラメントコイル13で発生する熱が、より一層リード線11,12に伝達されにくくなる。このため、リード線11,12の先端が、ガラス管17の端部に対してより一層接近して配置され得る。これにより、ガラス管17の非発光部分をより一層小さくすることができる。
【0055】
[実施例3]
図6は、本発明による電極構造の第三の実施形態の構成を示している。
図6において、電極構造30は、図1に示した電極構造10とほぼ同様の構成であるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
上記電極構造30は、図1に示した車両用灯具10とは、以下の点で異なる構成になっている。
即ち、上記電極構造30においては、中空円筒状のパイプ連結部14,15の代わりに、下端31a,32aから上端31b,32bに向かってそれぞれテーパ状に先細になるように形成されたパイプ連結部31,32が備えられている。
【0057】
このような構成の電極構造30によれば、上記パイプ連結部31,32の上端31b,32bの開口径を、フィラメントコイル13の接続部13b,13cの径に合わせる。これにより、上記フィラメントコイル13の接続部13b,13cが、上記パイプ連結部14,15に対して横方向のずれなく固定保持され得ることになる。
【0058】
従って、図7(A)に示すように、フィラメントコイル13の接続部13b,13cが中空円筒状のパイプ連結部14,15に対して、横方向に距離dだけずれてしまうようなことがない。このため、上記フィラメントコイル13の接続部13b,13cが、上記パイプ連結部14,15に対して、そして上記フィラメントコイル13がリード線11,12に対して、横方向のずれなく高い位置精度で固定保持され得ることになる。
【0059】
上述した実施形態においては、上記パイプ連結部14,15はゲッター機能を備えているが、これに限らず、ゲッター機能を備えていなくてもよい。
また、上述した実施形態においては、上記フィラメントコイル13は、二重螺旋構造の形状を有しているが、これに限らず、コイル本体13aは任意の形状を有していてもよく、例えば図7(B)に示すC−6並びに図7(C)に示すC−8タイプの自動車用バルブにおけるフィラメントコイルの形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明による電極構造10,20,30は、熱陰極放電灯として構成されているが、これに限らず、例えば冷陰極管や蛍光灯等のフィラメントコイルをリード線に接続して構成されるような灯具の電極構造に対して本発明を適用することが可能である。
【0061】
このようにして、本発明によれば、管径が細くても、フィラメントコイルとリード線とが確実に接続され得て、熱的に遮断され得るようにした、極めて優れた電極構造が提供され得ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による電極構造の第一の実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1の電極構造の組立途中の状態を示す概略斜視図である。
【図3】図1の電極構造におけるパイプ連結部を示す拡大断面図である。
【図4】図1の電極構造を熱陰極放電灯に組み込んだ状態を示す部分断面図である。
【図5】本発明による電極構造の第二の実施形態におけるパイプ連結部を示す拡大断面図(A),(B)である。
【図6】本発明による電極構造の第三の実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図7】(A)は図1の電極構造におけるパイプ連結部に対するフィラメントコイルの接続部の横方向のずれを説明する概略斜視図、(B)はC−6タイプ、(C)はC−8タイプの自動車用バルブにおけるフィラメントコイルの形状を示す図である。
【図8】従来の電極構造の一例の構成を示す(A)カシメ前及び(B)カシメ後の状態を示す概略斜視図である。
【図9】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略斜視図である。
【図10】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略断面図である。
【図11】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略断面図である。
【図12】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略断面図である。
【図13】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10,20,30 電極構造
11,12 リード線
13 フィラメントコイル
13a コイル本体
13b,13c 接続部
14,15 パイプ連結部
14a,15a 下端
14b,15b 上端
14c,15c 絞り部
16 熱陰極放電灯
17 ガラス管
18 ビード
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本のリード線に接続されたフィラメントコイルから成る電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱陰極放電灯,蛍光灯等においては、ガラス管の端部に電極が設けられている。
この電極は、例えば二本のリード線に接続されたフィラメントコイルから構成されており、フィラメントコイルがガラス管内に封止されており、リード線がガラス管内から外部に気密的に引き出されるようになっている。
これにより、電極のリード線からフィラメントコイルに給電され、ガラス管内にて放電が生じて、発光が行なわれるようになっている。
【0003】
ところで、上述した電極は、材質の異なるリード線とフィラメントコイルとを互いに接続するために、例えば図8に示すような電極構造を有している。
即ち、図8(A)において、電極構造1は、二本のリード線2a,2bと、フィラメントコイル3と、から構成されている。
【0004】
上記各リード線2a,2bは、それぞれステム状の導電性金属材料から構成されており、互いに平行に配置されている。
【0005】
上記フィラメントコイル3は、例えばタングステンやドープタングステン等から構成されており、螺旋状のコイル本体3aと、このコイル本体3aの両端から突出した接続部3b,3cと、から構成されている。
【0006】
上記フィラメントコイル3は、図8(A)に示すように、その接続部3b,3cがそれぞれ真っ直の状態のリード線2a,2bの先端に当接した状態にて、各リード線2a,2bの先端を矢印方向に折曲げて、フィラメントコイル3の接続部3b,3cを挟持し、カシメ固定する。
これにより、フィラメントコイル3は、その接続部3b,3cがリード線2a,2bに対して固定・保持されるようになっている。
【0007】
しかしながら、このような構成の電極構造1においては、フィラメントコイル3がガラス管の管径方向に延びていることから、管径が細い場合には、このような電極構造1は採用することが困難である。
【0008】
なおまた、例えば図9に示すような電極構造も知られている。
図9において、電極構造4は、二本のリード線2a,2bと、縦長のフィラメントコイル5と、から構成されている。
上記フィラメントコイル5は、例えばガラス管の長手方向に延びる軸の周りに巻回するように二重の螺旋状に形成されたコイル本体5aと、コイル本体5aから軸方向(図示の場合、下方)に延びる接続部5b,5cと、から構成されている。
【0009】
上記フィラメントコイル5は、真っ直の状態のリード線2a,2bの先端に整列し且つ当接した状態にて、各リード線2a,2bの先端に対して、スポット溶接,レーザ溶接等の溶接により固定・保持されるようになっている。
【0010】
このような構成の電極構造4の変形例が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1の電極構造においては、フィラメントコイル5の接続部5a,5bは、図10に示すように、リード線2a,2bの先端に対して、ヒートタブ6a,6bを介して溶接されている。
これにより、フィラメントコイル5の発熱がヒートタブ6a,6bに対して放熱されるようになっている。
【0011】
また、電球7においては、例えば図11に示すように、フィラメントコイル7aが、リード線7bに対して、パイプ7cを介して溶接されているものがある。
【0012】
特許文献2には、図12に示すように、電極8aを、金属パイプ8bの中に金属粉末及びエミッター粉末の混合物8cを充填し、中央に孔が形成されるようにプレスし焼結させて、金属パイプ8bの後端部を、ガラス管8dの端部を貫通したリード線8eに対してカシメ固定するようにした、蛍光ランプ8が開示されている。
【0013】
また、特許文献3には、図13に示すように、電極(即ち棒電極またはフィラメント)9aとリード線9bとをパイプ(連結部材)9cを介して互いに溶接またはカシメにより固定するようにしたハロゲン電球用マウント9が開示されている。
この場合、パイプ9cは、電極9aを構成する材質であるタングステンより熱膨張係数の大きい材料から構成されており、点灯時にパイプ9cが膨張することによって、電極9aとリード線9bとの間に間隙が生じて、電極9aから直接にリード線9bに熱が伝達されず、その酸化が防止され得るようになっている。
【特許文献1】特開2005−235749号
【特許文献2】特開平04−245161号
【特許文献3】特開平11−297272号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上述した電極構造4においては、リード線2a,2bの先端に対してフィラメントコイル5の両端の接続部5b,5cが溶接により固定されていることから、溶接の際に、特に接続部5b,5cの領域にて、フィラメントコイル5を構成するタングステン等が再結晶を生ずることによって、脆くなってしまう。
このため、衝撃等が加えられたとき、フィラメントコイル5がリード線2a,2bの先端から脱落してしまうことがある。
このような溶接によるフィラメントコイルの脆弱化は、上述した電球7の場合も同様である。
【0015】
また、点灯時にフィラメントコイル3,5で発生する熱がリード線2a,2bに伝達されることから、リード線2a,2bのガラス管の端壁における封止部にも熱が伝達されてしまう。従って、封止部を構成するガラスとリード線2a,2bの材料の熱膨張係数の差により、封止部にてリード線2a,2bとの間に間隙が生ずることになり、ガラス管内の封入ガスがリークしてしまうことになる。
これに対して、リード線2a,2bを長くして、フィラメントコイル3,5を封止部から離反させる構成も考えられるが、非点灯部分が拡大することになり、例えばバックライトの光源として使用する場合に、発光面の周囲の非発光部分が多くなってしまうことになる。
【0016】
特許文献2による蛍光ランプ8においては、リード線8eの先端に対して、焼結により電極8aと一体化されることにより、電極8aの一部を構成する金属パイプ8bの後端部が、カシメにより固定されている。
従って、金属パイプ8bの電極8aとの一体化のために焼結工程が必要となり、作業が煩雑になってしまう。
【0017】
また、特許文献3による管球用マウント9においては、点灯時にパイプ9cが電極9a及びリード線9bよりも大きく膨張することにより、電極9aとリード線9bとの間に間隙が生ずる。これにより、電極9aからの熱が、この間隙により阻止されることにより、リード線9bに熱が伝達されず、その酸化が防止され得るようになっている。
このため、電極9a及びリード線9bの材質とパイプ9cの材質の膨張係数の差に基づいて、温度上昇時に生ずる僅かな間隙を利用して、熱伝導を遮断していることから、熱伝導の遮断動作が不安定であり、電極9aとリード線9bとの間の接触が不良となることがある。
【0018】
本発明は、以上の点から、管径が細くても、フィラメントコイルとリード線とが確実に接続され、熱的に遮断され得るようにした電極構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、本発明によれば、互いに平行に配置された二本のリード線と、長手方向に引き出された接続部を有するフィラメントコイルと、から構成されていて、上記フィラメントコイルの各接続部が、それぞれ対応するリード線の先端に対して接続されている電極構造であって、各リード線の先端が、それぞれ一端が被嵌されカシメにより固定されたパイプ連結部を備えており、上記フィラメントコイルの各接続部が、それぞれ対応するパイプ連結部の他端に挿入され、カシメ固定されていることを特徴とする、電極構造により、達成される。
【0020】
本発明による電極構造は、好ましくは、上記パイプ連結部が、リード線よりも熱伝導性の低い材料から構成されている。
【0021】
本発明による電極構造は、好ましくは、上記パイプ連結部が、それぞれ他端に向かって先細になるようにテーパ状に形成されている。
【0022】
本発明による電極構造は、好ましくは、上記パイプ連結部が、その中間領域に絞り部を備えている。
【0023】
本発明による電極構造は、好ましくは、上記パイプ連結部が、ゲッター機能を備えている。
【発明の効果】
【0024】
上記構成によれば、フィラメントコイルの各接続部が、パイプ連結部を介して対応するリード線の先端に対して接続される。これにより、リード線を介して給電が行なわれることになる。
この場合、フィラメントコイルの各接続部とリード線の先端がパイプ連結部を介して直線状に整列することになる。これにより、当該電極構造を組み込むべき熱陰極放電灯等のガラス管の管径が細い場合であっても、これらのフィラメントコイルの各接続部とリード線の先端がガラス管の長手方向に整列することから、当該電極構造を確実に組み込むことが可能である。
【0025】
さらに、フィラメントコイルの各接続部は、パイプ連結部に対してカシメによって固定されて。これにより、フィラメントコイルが溶接による再結晶の発生により脆弱化するようなことがなく、確実にパイプ連結部に対して接続されることになる。このため、例えば衝撃等によって、フィラメントコイルがリード線の先端から脱落してしまうようなことがない。
【0026】
また、リード線とパイプ連結部も、カシメにより固定される。このため、パイプ連結部の両端に対して、それぞれフィラメントコイルの接続部及びリード線の先端を同時にカシメ固定することが可能になり、工程が単純化され得ることになる。
これらのフィラメントコイルの接続部及びリード線とパイプ連結部との接続の際に、フィラメントコイルの接続部及びリード線がパイプ連結部の端部内に挿入した状態で、カシメ等が行なわれ、作業が容易に行なわれ得ることになる。
【0027】
上記パイプ連結部が、リード線よりも熱伝導性の低い材料から構成されている場合には、点灯時にフィラメントコイルで発生する熱が、リード線に伝達されにくくなる。このため、ガラス管の封止部において、封止部を構成するガラスとリード線の材料の熱膨張係数の差による間隙の発生が抑制されることになる。
従って、封止部にて、ガラス管内の封入ガラスがリークしてしまうようなことはなく、さらにリード線の放熱のために、ガラス管内におけるリード線を長く保持する必要がない。このため、ガラス管の非発光部を小さくすることができる。これにより、当該電極構造を組み込んだ熱陰極放電灯等を例えばバックライトの光源として使用する場合であっても、発光面の周囲の非発光部分をできるだけ小さくすることができる。
【0028】
上記パイプ連結部が、それぞれ他端に向かって先細になるようにテーパ状に形成されている場合には、パイプ連結部に対してフィラメントコイルの接続部を挿入・カシメ固定する際に、フィラメントコイルの接続部のパイプ連結部に対する位置決めが容易に且つ確実に行なわれ得る。これにより、フィラメントコイルの取付位置精度が向上することになる。
【0029】
上記パイプ連結部が、その中間領域に絞り部を備えている場合には、パイプ連結部の両端からそれぞれフィラメントコイルの接続部及びリード線の先端を挿入したとき、上記絞り部がストッパとして機能する。これにより、パイプ連結部内でフィラメントコイルの接続部及びリード線の先端が互いに直接に接触することがない。
従って、点灯時にフィラメントコイルで発生する熱が、より一層リード線に伝達されにくくなる。
【0030】
上記パイプ連結部が、ゲッター機能を備えている場合には、当該電極構造を組み込んだ熱陰極放電灯等のガラス管内において、このゲッター機能により、ガラス管内の不純物気体分子が吸着される。これにより、ガラス管内における放電状態やスパッタ等が改善され得ることになる。
【0031】
このようにして、本発明によれば、フィラメントコイルの接続部が、当該電極構造を組み込むべきガラス管の長手方向に沿って、パイプ連結部を介してリード線の先端に接続される。また、パイプ連結部に対してカシメ固定されているので、フィラメントコイルとリード線とが互いに確実に接続され、熱的に遮断され得るようにした電極構造が提供されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図7を参照しながら、詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0033】
[実施例1]
図1は、本発明による電極構造の第一の実施形態の構成を示している。
図1において、電極構造10は、二本のリード線11,12と、フィラメントコイル13と、二つのパイプ連結部14,15と、から構成されている。
【0034】
上記各リード線11,12は、それぞれステム状の導電性金属材料から構成されており、互いに平行に配置されている。
【0035】
上記フィラメントコイル13は、例えばタングステン(W)やレニウムタングステン(W−Re),ドープタングステン等から構成されており、螺旋状のコイル本体13aと、このコイル本体13aから軸方向(図示の場合、下方)に延びる接続部13b,13cと、から構成されている。
図示の場合、コイル本体13aは、例えばガラス管の長手方向に延びる軸の周りに巻回するように二重の螺旋状に形成されているが、これに限らず、任意の構造のコイルとして構成されていてもよく、また例えばC−6またはC−8タイプの自動車用バルブのフィラメントコイルと同様に構成されていてもよい。
【0036】
さらに、上記フィラメントコイル13は、好ましくは、その表面に電子放出物質、例えばバリウム(Ba),ストロンチウム(Sr),カルシウム(Ca)等から成る酸化物が塗布されている。
【0037】
上記パイプ連結部14,15は、導電性材料、例えば金属から構成されており、中空円筒状に形成されている。
ここで、上記パイプ連結部14,15は、前述したリード線11,12の構成材料よりも熱伝導率の低い(例えば熱伝導率が115W/m・K以下)金属材料、例えばニッケル,鉄系金属から構成されている。
【0038】
また、上記パイプ連結部14,15は、好ましくはゲッター機能を備えている。
このゲッター機能は、パイプ連結部14,15自体がゲッター機能を有する材料から構成され、あるいはパイプ連結部14,15の内側または外側にゲッター機能を有する材料が塗布,蒸着等により形成されることにより、付与され得る。
【0039】
なお、パイプ連結部14,15自体がゲッター機能を備える場合、上記パイプ連結部14,15は、例えばチタン系やジルコニウム系の金属材料から構成され得る。
他方、比較的低い導電性を備えたゲッター機能を有する材料がパイプ連結部14,15の表面に形成される場合、一般的にはこの材料は、パイプ連結部14,15の外側面に形成される。
【0040】
上記パイプ連結部14,15は、図2に示すように、その一端(図示の場合、下端)14a,15aが、それぞれ対応するリード線11,12の先端に被嵌され、図3に示すように、側方からカシメられることにより、変形したパイプ連結部14,15の下端14a,15aにより挟持され、固定保持され、即ちカシメ固定される。
なお、リード線11,12の先端とパイプ連結部14,15とは、溶接によって互いに接続され、固定保持されるようにしてもよい。
【0041】
他方、上記パイプ連結部14,15は、図3に示すように、その他端(図示の場合、上端)14b,15b内に、それぞれフィラメントコイル13の接続部13b,13cが挿入され、側方からカシメられることにより、変形したパイプ連結部14,15の上端14b,15bにより挟持され、固定保持され、即ちカシメ固定される。
【0042】
ここで、上記パイプ連結部14,15と、リード線11,12の先端またはフィラメントコイル13の接続部13b,13cの固定保持は、何れが先に行なわれてもよく、また双方とも固定される場合には、同時に行なわれてもよい。
他方、上記パイプ連結部14,15とリード線11,12の先端との固定保持が溶接により行なわれる場合には、好ましくはこの溶接による固定保持が行なわれた後、上記パイプ連結部14,15とフィラメントコイル13とのカシメ固定が行なわれる。これにより、溶接工程におけるフィラメントコイル13に対する熱の影響が確実に排除され得ることになる。
【0043】
本発明実施形態による電極構造10は、以上のように構成されており、組立の際には、上記パイプ連結部14,15の下端14a,15aがリード線11,12の先端に被嵌され、カシメまたは溶接により固定保持される。また、その上端14b,15b内に、フィラメントコイル13の接続部13b,13cが挿入され、カシメ固定される。
【0044】
その際、上記パイプ連結部14,15内に挿入されたフィラメントコイル13の接続部13b,13cは、それぞれパイプ連結部14,15内にて、リード線11,12の先端に当接しないように、図3に示すように、適宜の間隔を画成するように、挿入される。
これにより、電極構造10におけるフィラメントコイル13とリード端子11,12がそれぞれパイプ連結部14,15を介して互いに固定保持されることになる。
【0045】
この場合、フィラメントコイル13は、それぞれパイプ連結部14,15の上端14b,15bに対してカシメ固定されている。これにより、溶接による固定の場合のようにフィラメントコイル13を構成するタングステン等の材料が再結晶し、脆弱化することがない。
従って、衝撃等によって、フィラメントコイル13がリード線11,12の先端から脱落してしまうようなことがなく、電極構造10の信頼性が向上することになる。
【0046】
また、フィラメントコイル13の接続部13b,13cが、それぞれパイプ連結部14,15を介して、対応するリード線11,12の先端に対して接続されている。これにより、これらが、電極構造10を組み込むべきガラス管の長手方向に沿って延びることになり、ガラス管の管径が細い場合であっても、当該電極構造10を容易に組み込むことが可能である。
【0047】
このようにして組み立てられた電極構造10は、例えば図4に示すように、熱陰極放電灯16を構成するパイプ状のガラス管17の一端17aに対して、ビード18を介して、気密的に取り付けられ、ガラス管17内を密封する。その際、ガラス管17内には、封入ガスが封入されるようになっている。
なお、実際には、ガラス管17の他端に対しても、同様に別の電極構造10が対称的に取り付けられる(不図示)。
【0048】
これにより、リード線11,12管に外部から給電が行なわれる。このため、フィラメントコイル13が加熱され、ヒーターとして作用し、ガラス管17の他端(不図示)に取り付けられた同様の構成の電極構造におけるフィラメントコイルとの間に、放電電圧が印加され、ガラス管17内で放電が行なわれる。
【0049】
ここで、上記パイプ連結部14,15が、リード線11,12の材料よりも熱伝導性の低い材料から構成されている。このため、熱陰極放電灯16の点灯時に、フィラメントコイル13で発生した熱は、パイプ連結部14,15を介してリード線11,12に伝達されにくくなっている。
従って、ガラス管17の一端17aにおけるビード18による封止部にて、リード線11,12とガラス管17またはビード18の熱膨張係数の差に基づいて、間隙が発生して、ガラス管17内の封入ガスがリークしてしまうようなことがない。
また、リード線11,12があまり加熱されないことから、リード線11,12の先端が、ガラス管17の端部に対して比較的接近して配置され得る。これにより、ガラス管17の非発光部分を小さくすることができる。これにより、同じ長さのガラス管17を使用する場合には、光量が増大することになる。
【0050】
また、上記フィラメントコイル13に、電子放出物質が塗布されている。これにより、これらの電子放出物質からフィラメントコイル13の加熱によってガラス管17内に電子が放出し、ガラス管17内における放電を促進することになる。
さらに、上記パイプ連結部14,15がゲッター機能を備えている。これにより、ガラス管17内における不純物等の気体分子が吸着され、ガラス管内における放電状態やスパッタ等が改善されることになる。
【0051】
[実施例2]
図5は、本発明による電極構造の第二の実施形態の要部の構成を示している。 図5(A)において、電極構造20は、図1に示した電極構造10とほぼ同様の構成であるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
上記電極構造20は、図1に示した車両用灯具10とは、以下の点で異なる構成になっている。
即ち、上記電極構造20においては、パイプ連結部14,15が、下端14a,15aと上端14b,15bとの間の中間領域にて、少なくとも内径が小さくなっている絞り部14c,15cを有している。なお、この絞り部は図5(B)に示すように閉塞して接触していても良い。
【0053】
このような構成の電極構造20によれば、上記パイプ連結部14,15の下端14a,15aまたは上端14b,15bに対して、リード線11,12の先端またはフィラメントコイル13の接続部13b,13cを挿入する際に、この絞り部14c,15cがストッパとして機能する。これにより、上記パイプ連結部14,15内で、リード線11,12の先端とフィラメントコイル13の接続部13b,13cとの直接接触が確実に回避され得ることになる。
【0054】
従って、熱陰極放電灯16の点灯時にフィラメントコイル13で発生する熱が、より一層リード線11,12に伝達されにくくなる。このため、リード線11,12の先端が、ガラス管17の端部に対してより一層接近して配置され得る。これにより、ガラス管17の非発光部分をより一層小さくすることができる。
【0055】
[実施例3]
図6は、本発明による電極構造の第三の実施形態の構成を示している。
図6において、電極構造30は、図1に示した電極構造10とほぼ同様の構成であるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
上記電極構造30は、図1に示した車両用灯具10とは、以下の点で異なる構成になっている。
即ち、上記電極構造30においては、中空円筒状のパイプ連結部14,15の代わりに、下端31a,32aから上端31b,32bに向かってそれぞれテーパ状に先細になるように形成されたパイプ連結部31,32が備えられている。
【0057】
このような構成の電極構造30によれば、上記パイプ連結部31,32の上端31b,32bの開口径を、フィラメントコイル13の接続部13b,13cの径に合わせる。これにより、上記フィラメントコイル13の接続部13b,13cが、上記パイプ連結部14,15に対して横方向のずれなく固定保持され得ることになる。
【0058】
従って、図7(A)に示すように、フィラメントコイル13の接続部13b,13cが中空円筒状のパイプ連結部14,15に対して、横方向に距離dだけずれてしまうようなことがない。このため、上記フィラメントコイル13の接続部13b,13cが、上記パイプ連結部14,15に対して、そして上記フィラメントコイル13がリード線11,12に対して、横方向のずれなく高い位置精度で固定保持され得ることになる。
【0059】
上述した実施形態においては、上記パイプ連結部14,15はゲッター機能を備えているが、これに限らず、ゲッター機能を備えていなくてもよい。
また、上述した実施形態においては、上記フィラメントコイル13は、二重螺旋構造の形状を有しているが、これに限らず、コイル本体13aは任意の形状を有していてもよく、例えば図7(B)に示すC−6並びに図7(C)に示すC−8タイプの自動車用バルブにおけるフィラメントコイルの形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明による電極構造10,20,30は、熱陰極放電灯として構成されているが、これに限らず、例えば冷陰極管や蛍光灯等のフィラメントコイルをリード線に接続して構成されるような灯具の電極構造に対して本発明を適用することが可能である。
【0061】
このようにして、本発明によれば、管径が細くても、フィラメントコイルとリード線とが確実に接続され得て、熱的に遮断され得るようにした、極めて優れた電極構造が提供され得ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による電極構造の第一の実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1の電極構造の組立途中の状態を示す概略斜視図である。
【図3】図1の電極構造におけるパイプ連結部を示す拡大断面図である。
【図4】図1の電極構造を熱陰極放電灯に組み込んだ状態を示す部分断面図である。
【図5】本発明による電極構造の第二の実施形態におけるパイプ連結部を示す拡大断面図(A),(B)である。
【図6】本発明による電極構造の第三の実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図7】(A)は図1の電極構造におけるパイプ連結部に対するフィラメントコイルの接続部の横方向のずれを説明する概略斜視図、(B)はC−6タイプ、(C)はC−8タイプの自動車用バルブにおけるフィラメントコイルの形状を示す図である。
【図8】従来の電極構造の一例の構成を示す(A)カシメ前及び(B)カシメ後の状態を示す概略斜視図である。
【図9】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略斜視図である。
【図10】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略断面図である。
【図11】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略断面図である。
【図12】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略断面図である。
【図13】従来の電極構造の他の例の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10,20,30 電極構造
11,12 リード線
13 フィラメントコイル
13a コイル本体
13b,13c 接続部
14,15 パイプ連結部
14a,15a 下端
14b,15b 上端
14c,15c 絞り部
16 熱陰極放電灯
17 ガラス管
18 ビード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された二本のリード線と、長手方向に引き出された接続部を有するフィラメントコイルと、から構成されていて、上記フィラメントコイルの各接続部が、それぞれ対応するリード線の先端に対して接続されている電極構造であって、
各リード線の先端に、それぞれ一端が被嵌されカシメにより固定されたパイプ連結部を備えており、
上記フィラメントコイルの各接続部が、それぞれ対応するパイプ連結部の他端にリード線の先端と直接に接触しないように挿入され、カシメ固定されていることを特徴とする、電極構造。
【請求項2】
上記パイプ連結部が、リード線よりも熱伝導性の低い材料から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項3】
上記パイプ連結部が、それぞれ他端に向かって先細になるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電極構造。
【請求項4】
上記パイプ連結部が、その中間領域に絞り部を備えていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の電極構造。
【請求項5】
上記パイプ連結部が、ゲッター機能を備えていることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の電極構造。
【請求項1】
互いに平行に配置された二本のリード線と、長手方向に引き出された接続部を有するフィラメントコイルと、から構成されていて、上記フィラメントコイルの各接続部が、それぞれ対応するリード線の先端に対して接続されている電極構造であって、
各リード線の先端に、それぞれ一端が被嵌されカシメにより固定されたパイプ連結部を備えており、
上記フィラメントコイルの各接続部が、それぞれ対応するパイプ連結部の他端にリード線の先端と直接に接触しないように挿入され、カシメ固定されていることを特徴とする、電極構造。
【請求項2】
上記パイプ連結部が、リード線よりも熱伝導性の低い材料から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項3】
上記パイプ連結部が、それぞれ他端に向かって先細になるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電極構造。
【請求項4】
上記パイプ連結部が、その中間領域に絞り部を備えていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の電極構造。
【請求項5】
上記パイプ連結部が、ゲッター機能を備えていることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の電極構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−166074(P2008−166074A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353194(P2006−353194)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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